chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
akira_shuji’s diary https://akira-shuji.hatenablog.com

男性として生きるトランス男性(FtM)なら、男性学で考えてみては? トランス当事者の本や、男性ジェンダーに焦点を当てた映画の紹介もします。

Hi, I'm a trans man in Japan. Akira Shuji.

周司あきら
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2021/10/09

arrow_drop_down
  • 『トランスジェンダー男性のきみへ』読書メモ

    明石書店から『トランスジェンダー男性のきみへ 性別移行した19人からの手紙』が刊行されました。"Letters For My Brothers: Transitional Wisdom in Retrospect"の邦訳です。私(周司あきら)は日本語版の解説を書きました。 www.akashi.co.jp 本書は、性別移行を経ておよそ7年以上経ったトランス男性(FtM)たちが、過去の自分や仲間に伝えたいことを綴った手紙です。トランスジェンダーの話といえば、「納得する性別で生活できるようになるまで」で物語が終了することが多く、それ以降の生活(性別移行後)が描かれることは数少ないので、このような本…

  • 『男性学入門 そもそも男って何だっけ?』の各章紹介

    こんにちは、周司あきらです。 先日『男性学入門 そもそも男って何だっけ?』が光文社新書から発売となりました。徐々に店頭に並んでいるようです。おそらく「ジェンダー」や「社会学」関連の棚ではなく「(光文社)新書」コーナーにあるかと思います。 books.kobunsha.com これまで日本の男性学がやってきたこと(とやってこなかったこと)をまとめた一冊なので、私個人の見解は控えめです。その分、構成にはこだわったつもりです。 全部で6章あるのですが、ここで1章ずつ簡単な紹介をしていきます。 第1章 男って何だっけ? 男性学とは、男性の当たり前を問う学問。とはいえ、「男性」といったとき、その指示対象…

  • 大月書店から『ラディカル・マスキュリズム 男とは何か』出版します。

    6月末に大月書店から『ラディカル・マスキュリズム 男とは何か』刊行予定です。 こちらは、無名ながら出版に至った一冊目『トランス男性による トランスジェンダー男性学』と同じ編集者さんに再びお世話になりました。 www.otsukishoten.co.jp www.otsukishoten.co.jp 大月書店HPより、『ラディカル・マスキュリズム』の内容紹介と目次です。 「男」とは自明視されるほど確固たる存在か。男らしさ、身体、男性運動、ヘゲモニー、ミサンドリーの視点から「男」に徹底的に向き合い、男性たちが性差別構造を解消し、自分の性/生を豊かにするための思考・実践を探究する。 第1章 男らしさ…

  • 光文社新書から『男性学入門 そもそも男って何だっけ?』出版します。

    「最近は女性やLGBTQの話題が多いけど、男性向けの取り組みって何かないの?」 「女たちはフェミニズムを頑張ってきたけれど、男たちはいったい何をしてきたの?」 「男性学って30年前に聞いたことあるけど、今はどうなってる?」 「SNSでは“弱者男性論”とか出てくるんですけど......」 「男性学って結局マジョリティ学みたいで、マイノリティの男性は疎外されているなぁ」 などなど、さまざまな疑問にお答えできる、とりあえずこれ読んで!と勧めたくなる、そんな一冊を目指して本を書きました。 2025年5月以降、光文社新書から『男性学入門 そもそも男って何だっけ?』という本が出ます。書いたのは私、周司あき…

  • 『空間の男性学』読書メモ

    2009年初版、地理学への関心からジェンダーの課題に直面するようになったという村田陽平さんの本。個人的に、とても好みの本だった。 『空間の男性学 ジェンダー地理学の再構築』 www.kyoto-up.or.jp 本書は、空間がジェンダー化されているという実態を、ミクロな空間を題材に華麗に暴き出していく。まず取り上げられているトピックがどれも興味深い。そうそう、それ気になってました!と言いたくなる。 【第1章】男性建築家が新しい建築に「ジェンダーの視点」をきちんと取り入れようとして女性設計者に頼んだが、住民からは居住性に問題があると指摘された県営住宅。【第3章】中年シングル男性が阻害される空間。…

  • 『韓国、男子』書評が載りました。

    共同通信で、チェ・テソプ『韓国、男子 その困難さの感情史』(みすず書房)の書評を書きました。2月1日(土)以降、各地の地方紙に載る可能性があります。 www.msz.co.jp すでに掲載されている、山陰中央新報デジタルのURLはこちら。↓ www.sanin-chuo.co.jp 『韓国、男子』は、朝鮮王朝時代まで遡り、女性嫌悪(ミソジニー)の源泉を辿る謎解きのような男性史でした。 韓国独自の文脈が濃縮されていて、私は終始興奮しました。韓国フェミニズムに関しては何冊か読んだことがありましたが、その元となる男性の動きについて、よくまとまっている一冊です。とくに、韓国(朝鮮)社会は「武人よりも、…

  • 『女性から虐待されている男性へ』読書メモ

    明石書店の新刊。読めて良かったです。 アン・シルバース『女性から虐待されている男性へ 女性はなぜ傷つけ、男性はなぜ留まってしまうのか』 www.akashi.co.jp タイトル通り、女性から男性への虐待について書かれた希少な本。著者曰く、そういう研究をしていると他者に説明しても、「そんなことが現実にありうるの?」と信じてもらえなかったり、「男性から女性への虐待? 私も男性から虐待されたことがあります」と逆に伝わっていたりするそう。 本書の内容は、ごく身近な男女の関係に限定されているので(夫婦や恋人関係)、その点は物足りなかったが、その情報すら不足している現状なので邦訳はありがたい。 虐待レベ…

  • 男性学・男性性研究の論文の感想1

    過去にSNSで呟いた論文の感想をまとめておきます。大体2024年6月〜12月に読んだものです。 山下慶「韓国の徴兵制が徴兵経験者に与える影響 : 「男になる」という言葉を中心に」 韓国の徴兵制が徴兵経験者に与える影響 : 「男になる」という言葉を中心に CiNii Research 韓国社会では「軍隊に行くと男になる」という言説が当たり前に使われてきたが、実際に兵役を経験した(軍畢)20代男性はどう捉えているのかという調査。「男になる」、関連する「大人になる」「責任感がつく」という言説の捉え方は、人によってけっこうバラバラだった。 私はそれを救いに感じた。やはり、軍隊に所属する2年間だけで…

  • 「「覇権的な男性性」概念を再考する」の論点

    覇権的な男性性(ヘゲモニックな男性性:Hegemonic Masculinity)という概念は、ジェンダー研究に多大な研究を与えた。と同時に、批判もされてきた。オーストラリアの社会学者レイウィン・コンネルは、『ジェンダーと権力』『マスキュリニティーズ』などで、男性性には複数あること、それらに階層性があることを論じた。そのうち、覇権的な男性性は家父長制を理解するキー概念であった。 日本の男性学・男性性研究においても、覇権的な男性性の説明が度々用いられてきた。たいていは「その時代、その社会で最も称揚されている男性性」や、「支配的な」「理想的な」男性性、と理解されることが多かったと思う。 しかし、そ…

  • 2024年男性学関連イベント・講座まとめ

    2024年に行われた男性学やメンズリブ、男らしさ関連の(単発)イベントをまとめました。私が見つけられた範囲です。なお、メンズリブの例会は含めていません。 2024年12月18日 伊藤公雄 Wom-tech主催オンラインイベント「近代=男性主導社会の黄昏を前に―メンズ・クライシス(男性危機)からジェンダード・イノベーションへ― 2024年12月14日 前川直哉、虎岩朋加、現場の教師たち 雑誌『教育』11月号 学校の「男性性」を まなざし、語る会 2024年12月13日 小林美香×木津毅 『「男らしさ」の広告観察』パネル展開催記念 世の中の男性性を見つめる@MoMoBooks 2024年12月13…

  • 逆を向くフェミニズムと男性学の行方

    今後フェミニズムと男性学はそれぞれ逆方向へ行くだろうと予想している。 フェミニズムは「個人的なことは政治的なこと」だと性差別構造を明らかにしてきたが、もう第四波の限界も見えてきて、オンラインの政治ではマイノリティ女性への差別に加担しかねないし、プラットフォーム自体も破綻した。だから一旦「個人的なことは個人的なこと」に立ち戻り、「今、ここ」での単発的な運動に代わっていくだろう。 一方で男性学は、それまで人間の代表ヅラをしてきた男性が、一人の男性・自分に戻り、「政治的なことを個人的なことへ」する過程だった。どこかで政治的なことへ向かっていく必要もあったが、その試みはサボってきた(育休や男女共同参画…

  • 済東鉄腸×周司あきらトークイベント「どうすれば男性を「豊か」にできるのか?──自罰的な男性学を超えて」開催します。

    こんにちは、周司あきらです。済東鉄腸(さいとう てっちょう)さんの新刊『クソッタレな俺をマシにするための生活革命』の刊行を記念したトークイベントに、私もお声かけいただきました。三鷹のユニテで開催します。 unite-books.shop 【日時】 2024年12月8日(日)18:30-20:00 【主催・会場】 本と珈琲の店 UNITÉ(東京都三鷹市下連雀4-17-10 SMZビル1F) オンライン参加は1,320円です。イベント終了後2ヶ月間のアーカイブ視聴できます。 済東鉄腸さんといえば、1作目『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家に…

  • 性別適合後に「普遍論争」を拓き、引き裂かれる経験

    初出:「周司あきらの自省録」2022年2月2日 読了時間: 7分 トランスジェンダーとしての体験と、中世スコラ哲学における「普遍論争」の話をしよう。 ※頼さんの邦訳「社会的に構築された概念としての性別(Jeffrey Lockhartさんのブログ記事"sex as a social construct"の日本語訳)」からひらめきを得たものです。直接的な脈絡はないかもしれませんが、ありがとうございます。※ ●普遍論争とは何か? 「普遍」はあるのか、それとも普遍は存在せず「個物」があるだけなのか、という議論は古代からありました。とりわけ11世紀以降、西方教会のキリスト教神学者・哲学者らによって巻き…

  • 『異性愛という悲劇』読書メモ

    レズビアンでありフェミニストの著者ジェーン・ウォードの本"The Tragedy of Heterosexuality”が、『異性愛という悲劇』というタイトルで邦訳されました。 www.ohtabooks.com 表紙がチカチカするほどのビビッドピンクなのですが、カバーを外すと原著に近いシックな黒色に銀タイトルなので、そちらの方が落ち着いて読めました。 以前小山エミさんが紹介していて、邦訳を待ち望んでいた一冊。 books.macska.org 過去には、一緒に往復書簡(『埋没した世界』)を刊行した五月あかりさんと、これをもじって「シスジェンダーの悲劇」という対談をしたこともあります。 aki…

  • トランス男性の「社会的弱者になりかねない不安」を考える

    ホルモン治療への葛藤を綴った、トランス男性のブログを読んだ。 【FTM】ホルモン治療開始をめぐる葛藤③「社会的弱者になりかねないことへの不安?」 ameblo.jp 言おうとしていることはすごくわかる気がする。 望み通り社会的・身体的に男性になれたとして、未来は想像できない。どうにかシス女性らしく生きられていたときには経験しなくて済んだ「社会的弱者になる」とは一体どういうことなのか。 例えば、医療や社会保障からこぼれ落ちる。非規範的な身体を引き受けなくてはならない。人間関係を刷新する必要がある。これが、シスではなくトランスとしての人生を歩めば起こりうることだ。 それとは別に、いわゆる弱者の男性…

  • 2024年おつかれさまでした。

    あと2ヶ月後には2025年です。こわっ。 寒くなってきたので、気分的には今年がもう終わってしまった感覚です。なのでこのブログを書くことにしました。2024年、お疲れさまでした。 今気づいたのですが、Hatena Blogを始めたのは2024年1月からだったようです。どの運営元のブログであっても、信頼に足ることはないのが心苦しいですが、書きやすいのでしばらくここで続けると思います。 2024年は主にこの3つを書きました。 【Web記事】集英社新書プラス『トランスジェンダー入門』刊行記念イベントレポートvol.6〜時を超えた バックラッシュ〜 【出版】高井ゆと里さんとの共著『トランスジェンダーQ&…

  • 『季刊セクシュアリティNo.118』に寄稿しました。

    性教育に長年携わっている、”人間と性”教育研究協議会(性教協)の機関誌『季刊セクシュアリティNo.118』が2024年10月に発売です。 テーマは、「男子ってなんでそうなの?どうしたらいいの?」。男性の性が特集になるのは、2006年以来3度目だそうです。 出版物データベース エイデル研究所 私(周司あきら)も「トランスジェンダーと男性が解放される日」と題した文章を寄稿しました。 女子生徒だけ残された体育館で生理(月経)の説明がなされた昔のエピソードから始まり、のちにそのほとんどが成人男性となる男子たちには、正面から性教育を受ける機会がなかったこと。それは全ての人にとって望ましくないことであ…

  • 『モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち』読書メモ

    ウランバートルへ発つ朝、成田空港の書店でゲット。ウランバートル市内と東ゴビ砂漠は非常に充実していたので本を読む気は起きず、主に空港で読んだ。 楊海英『モンゴル帝国 草原のダイナミズムと女たち』講談社現在新書、2024年7月 bookclub.kodansha.co.jp 遊牧民によってユーラシア世界が統一された結果、情報の伝達と交易が飛躍的拡大、それによってはじめて「世界史」が生まれたとみる考えかたは常識となりつつあります。また、遊牧民の世界は定住農耕とはまったく別の論理に基づく社会システムであって、そこに優劣はありえないことを多くの人が理解しはじめており、なかでも女性の役割がきわめて大きかっ…

  • 『知的障害のある成人男性の性的欲求と支援』読書メモ

    著者は、知的障害のある成人に対する性教育を実施しているボランティア団体のメンバーである石黒慶太さん。博士論文が元となり、書籍化に至ったそう。全7章(+序章と終章)のうち、第1章から第5章は具体的なエピソードの記述と、それへの考察が中心となる。 『知的障害のある成人男性の性的欲求と支援 語りと連帯が変えてゆく、まわりの人々との関係』(明石書店) www.akashi.co.jp あまり考えたことのなかったことを考えさせられる内容で、本書が目指していたという「社会的強者とされるマジョリティにとって非常に都合のいいもの」になっている社会規範を読み手に認識させ、省察を迫る本になっていた。その社会規範と…

  • トーマス・キューネ編『男の歴史』読書メモ

    星乃治彦さんがドイツ語から邦訳した『男の歴史 市民社会と<男らしさ>の神話』は、トーマス・キューネの本という印象が強かったですが、全10章をそれぞれ別の人が執筆している一冊でした。10人分の論文(?)を一人で訳すのはなかなか大変そうです。1996年に原著“Männergeschichte-Geschlechtergeschichte(男の歴史―性の歴史)”が刊行され、97年に日本語版が出ました。 www.kashiwashobo.co.jp 各章はおおよそ時代順に掲載されており、古い時代から始まって、現代に近づいて終わる構成でした。 序 性の歴史としての男性史 トーマス・キューネ第1章 家庭の…

  • 『バトラー入門』読書メモ

    藤高和輝さんの『ノット・ライク・ディス』に続き、 akira-shuji.hatenablog.com 『バトラー入門』もめちゃくちゃ熱い。 ひたすら『ジェンダー・トラブル』を軸にバトラーの思想を追っていくので、他の著作も詳しく知りたかった読者は拍子抜けするかもしれない。が、ツボ押しマッサージのように、一部から全体に効いていく構成は心地よかった。 第一章の初っ端から、『ジェンダー・トラブル』の脚注の一単語に注目して、バトラーではない人物(ニュートン)を追っていく。一気にタイムスリップし、レズビアンのブッチ/フェム、トップ/ボトムの話が始まる。ワクワクした。 読みながら、男性の権力をどう内部崩壊…

  • 五月あかり&周司あきら対談まとめ

    こんにちは、周司あきらです。 トランスジェンダーへのヘイト溢れるオンライン空間に飽き飽きしたところで、こちらの対談ブログでも読みます? 五月あかり:都内のOL。いつの間にか生活が男性から女性になった人。性同一性は「無」。Aセクシュアル。 周司あきら:主夫、作家。生活が女性から男性になった人。性同一性はないが、性別を聞かれたら「男性」でいい。パンセクシュアル。単著に『トランス男性による トランスジェンダー男性学』(大月書店)。 ※二人で往復書簡を交わし、本になりました。上記は2023年4月『埋没した世界』刊行時点のプロフィールです。 www.akashi.co.jp 1、なぜ『梨泰院クラス』のト…

  • あかり&あきら対談「久しぶりに性別の話でもどう?」

    久しぶりに、トランスジェンダーふたりの雑談です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【犬の性別まで気にされる日々】 B:最近どう?あかりさんには去年(2023年)『エトセトラ』の男性学特集に寄稿してもらったけど、それ以来音沙汰ないから。A:そっか。あれ1年前くらいだよね、書いたの。B:そんなに経つか。11月発売で、書いてもらったのはもっと前だもんね。 A:懐かしいわ。最近のわたしは、仕事が忙しい。B:うん、知ってる。仕事が忙しいときって性別…

  • 『トランスジェンダー入門』刊行から1年間のこと

    2023年7月12日、ryuchellさんの訃報が流れてきた。 その2日後、集英社新書から私(周司あきら)と高井ゆと里さんの書いた『トランスジェンダー入門』が発売となった。 ryuchellさんに対する誹謗中傷には、トランスジェンダーの人々が浴びせられてきたのと同種の内容が多く含まれていた。このタイミングで本が売れるのは悔しかった。本などなくても、他者に妨害されず求めている情報が自然と入ってきて(シスジェンダー・異性愛向けの情報と同じように)、すなおに息が吸える世の中であれば、必要ないものだった。私も書きたくなかった。 でも、仕方ないのだろう。第一回の刊行記念イベントでは、作家の李琴峰さんと話…

  • トランス男性へのルッキズム

    トランスジェンダーへのバッシングが酷くなると、擁護する側も立派に「パスしている」トランスパーソンを提示したくなるらしい。他人の写真を勝手に使って「ほら、トランス男性はこんなにも男に見えますよ」と“トランス擁護”する行為はプライバシーの侵害なのでやめるべきだと思うが。 それにしても興味深い点があるとしたら、シス男性とは違った仕方でトランスパーソンは「男であること」を見出されているということだ。 トランスジェンダーに対するルッキズムを広く「トランスルッキズム」と呼ぼうと提案していた人もいたが、より固有の形態のルッキズムがあるのだろう。 ameblo.jp トランス女性に対しては外性器が念頭に置かれ…

  • トランス差別の裏側ーーー男性性とペニス

    『地平』(2024年8月)の「特集2:奪われるフェミニズム」を読んだ。菊地夏野さんがちらっと述べている「トランスヘイトの動きが、どうしてトランス女性に多く向かっているのか」(p.131)という問いは、フェミニズムの課題であるだけでなく、男性性とペニスの文脈からも考えた方がいいと思った。 ①男性を、ペニスのある人として規定しておきたい→この規範は「ペニスのないトランス男性は男性ではない」という帰結を導く ②ペニスのある人を、男性として規定しておきたい→この規範は「ペニスのあるトランス女性は女性ではなく男性とみなす」という帰結を生む 私はその境遇上、①の圧を感じていた。 だがトランス女性への差別は…

  • 『男たちの意識革命』が記録するアメリカの男性解放運動

    アンチフェミニズム的な男性運動やバックラッシュについて調べていて、朝日新聞の編集委員を務めていた下村満子さんの『男たちの意識革命』(『アメリカの男たちは、いま』)は抜群にいい資料だと感じました。 1970・80年代のアメリカの男性解放運動について書かれた本。とにかく人に会って話を聞き、日時・場所・固有名詞を記録してくれているのだからありがたい!検索の仕方が悪いのでしょうけれど、その頃の情報はほとんど見当たらないので……。 男性の権利を求める運動=Men’s Rights Activism(MRA)といえば、今ではトランス差別の文脈で使われる”TRA”(トランスの権利活動家を反フェミニズムだと表…

  • 男性学との距離

    男性学とは、男性の当たり前を疑う学問、だと思う。 他の著名な研究者は異なる説明をしてきたけれど、少なくとも私はそんなふうに捉えている。 もともと、私は男性学という分野を遠い存在だと感じていた。というより、縁がなかった。女性学やフェミニズムの対になる存在(または補填的な存在とでもいおうか)としてそういうジャンルがあると知ったとき、端的にいえば私はまだ「女」領域で自分を捉えていたし、その後性別移行をしている最中も、お金がなくて治療のことで頭がいっぱいだった。 ようやく男性学というものに必要を感じたのは、だから私が一通り身体的な治療を済ませて、これ以上無理な節約をしなくても良さそうだと思えてからであ…

  • トランスジェンダー男性(FtM)の自伝の一人称調べ

    タイトル通り、トランス男性(FtM)の自伝やエッセイの一人称を調べました。 すぐに確認できたのは、全部で14冊でした。記者・研究者・医師らのインタビューで成り立つ本は除外したので、意外と少ない。なお、一人で複数冊刊行している場合(虎井まさ衛さんや杉山文野さんなど)は、一冊だけ取り上げました。 【俺/オレ/おれ】 なんと0人でした! 幼少期の回想シーンで「おれは、男だ」などと自覚する場面では登場するのですが、自伝全体で「俺」を使っている人は見つからなかったです。 【僕(漢字)】8人 岩村匠『性別不問。―――「性同一性障害」という人生』成甲書房、2003年 山本ヒカル『ニューボーイ』文芸社、200…

  • 『ロスジェネのすべて』読書メモ

    雨宮処凛さんが同年代の4名と対談した『ロスジェネのすべて 格差、貧困、「戦争論」』を読みました。 ロスジェネのすべて – あけび書房 「ロスジェネ」は、1970年から1984年ごろに生まれ、バブル崩壊後の1993年〜2004年に学校卒業期を迎えて就職活動をおこなった世代。 本書の冒頭は、ロスジェネと右傾化の話が繰り広げられる。雨宮さん自身が右翼団体に入ったエピソードが語られる。 「頑張れば報われる」という神話が崩壊し、「自分はいらない人間なのだ」と実感させられる日々で、何もないからこそ、国家というストーリーに流れ着いたという。ちなみに、左翼団体は専門用語ばかりで何を言っているのか分からなかった…

  • 「男性性」概念の拡張

    「男性性」とは何か。使用者によってバラバラなのが現状である。 男性性は、「masculinity」の訳語として「男らしさ」と同一視される機会が多く、例えば「覇権的(ヘゲモニック)な男性性(Hegemonic Masculinity)」という語を、「覇権的な男らしさ」と表記する媒体も見かける。 とはいえ、少なくとも私は「男性性」と「男らしさ」はそれぞれ別のものを指していると考えているし、男性学の研究者でも分けている人が多いように見受けられる。 平山亮さんは『男性学基本論文集』で、男性性とは 「男性に関するリアリティのつくられ方」ないしは「男性に関するリアリティ」 だと述べる。この捉え方だと、確か…

  • 性的応対力という尺度【改】

    他者を交えた性的関係において、「性的応対力」と呼べるような尺度が導入されると、もっと話がしやすいのになーと思うことがあります。これは、性愛感情や性的指向や性欲などとは直接的な関係のない、性の話です。これについて書いた前回のブログはとても大雑把でしたから、今回は考え方のベースとなった歴史的背景を踏まえてもう少していねいに書きました。全部で5見出し、6000字強あります。 1、性的応対力とは 性的応対力 ・・・自分が積極的に望むわけではなくとも、相手の求めに応じて、性的サービスを提供する力。その有無や程度。 ※なお、前回のブログでは「性的サービスを提供できる能力」と記述したのですが、それでは「能力…

  • 性的応対力という尺度

    他者を交えた性的関係において、「性的応対力」と呼べるような尺度が導入されると、もっと話がしやすいのになーと思うことがあります。これは、性愛感情や性的指向や性欲などとは関係のない、性の話です。 性的応対力 ・・・自分が積極的に望むわけではなくとも、相手の求めに応じて、性的サービスを提供できる能力。その有無や程度。 これを指す言葉として、性的対応力、性的応対力、性的接待力、性的適応力などを思いつきました。「接待」の場合は、「客をもてなすこと」のニュアンスがしっくりきたのですが、「性的接待」という語になると女性コンパニオンが金持ち男性の性的なリクエストに応じる、といったニュアンスが強い気がしたのでや…

  • ジュンク堂書店池袋本店で『トランスジェンダーQ&A』刊行記念フェア

    ジュンク堂書店池袋本店5階で『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと』(明石書店)×『トランスジェンダーQ&A』(青弓社)刊行記念フェアを開催中です(2024年6月2日現在)。 トークイベントも6月16日(日)14:00-15:30にあります。私は出演しませんが、なかけんさん、三宅大二郎さん、高井ゆと里さんがお話しします。 6/16 なかけん×三宅大二郎×高井ゆと里『いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと』『トランスジェンダーQ&A:素朴な疑問が浮かんだら』出版記念トークイベントonline.maruzenjunkudo.co.jp ちなみに、私(周司)は5冊に…

  • 『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』読書メモ

    藤高和輝『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』(以文社)を読みました。 www.ibunsha.co.jp 全編通して、置き去りにされてきたトランスジェンダーの蓄積の破片を拾い集める作品になっています。読んでいる最中は非常に胸が熱くなったのですが、時間が経つとじっくり考え込んでしまいます。これまで、私はいったい何を読んで(読まされて)きたのだろう? トランスジェンダーの存在が徹底的に無視される世界。 トランスジェンダーの語りが、せいぜいシスジェンダーの尺度でしか解釈されない世界。 序章では、映画『マトリックス』とトランスジェンダーの世界観の類似を見、しかしトランスジェンダー…

  • 『男性学基本論文集』読書メモ

    2024年1月に刊行された『男性学基本論文集』(勁草書房)は、今の日本(の男性/男性学)に欠けている視点をたくさん含んだ論文集です。読んでいる期間、ずっと刺激的で幸せでした。 日本型男性学では、ついつい男性の非抑圧性や男らしさの話に終始してしまう風潮がありますが、背筋を正すにはちょうどいい一冊だと感じました。 www.keisoshobo.co.jp ヘゲモニック(覇権的)な男性性が、ドミナント(支配的)な男性性と混合されて使われすぎという指摘があります。以前から平山亮さんが指摘していたはずなのですが、私もすっかり忘れていました。二度と忘れません。 ヘゲモニックな男性性は、性の不平等を正当化す…

  • 婚姻制度(異性婚)で男性が得る利益

    フェミニズムでは、女性が婚姻制度のもとでいかに抑圧されているか言及されてきた。 例えば、 ・婚姻制度のせいで女が分断されている。妻である女性は守るべき「正しい女」扱いする一方で、それ以外の女(非婚の女、レズビアン、セックスワーカーなど)は「悪い女」として懲罰を受ける ・資本主義経済では、妻が無償の家事労働を担うことが前提である ・夫に性的に尽くすべきだという規範がある などが、女性側の不利益として挙げられる。 では、婚姻制度に乗っかる男性は、いったい何の利益を得ているのか。 男性学や批判的男性研究(CSM)ではこの部分を分析するべきなのだろうな。 ・心理的・経済的な側面では、「働いていればいい…

  • アンチフェミニズムな男性の女性認識

    アンチフェミニズム的な男性が、女性(やフェミニズム)に対してどのような認識を持っているのか、簡易的な分類をした。そうした男性の中には、そもそもフェミニズムの意味を理解していないために、単に「女性がむかつく」といった八つ当たりを含んで意識形成している場合もある。 少なくとも4つに分類できると考えたが、他にもあったら教えてほしい。 1、この社会は女尊男卑である 女性が尊ばれ、男性が虐げられているという認識。だから、フェミニズムのせいで女性が活躍し出したり成果を出したりするのは許せない、という主張につながる。 2、この社会はすでに男女平等である 今や男女は対等に生活できているはずなのに、これ以上女性…

  • トランス男性とシス男性の「男らしさ」認識

    トランスジェンダーの男性とシスジェンダーの男性では、「男らしさ」への認識が異なるように見受けられる。このあたりは、いずれきちんと調査されると良いのですが。 ・トランス男性の「古さ」 トランス男性(FtM)コミュニティにおいて、いまだに(肉体)労働者階級の男らしさが重視されているように見える。いかに筋力が強く、ホモソーシャルなノリに馴染め、下半身含めて男社会に溶け込めるかという基準が採用されている。 しかし、社会全般では、こうした男らしさは「古臭い」ものに見えるはずである。 現代では、どちらかというとホワイトカラーや資本家のような、いわゆるエリート層のほうが「男らしさ」では上位に位置付けられる。…

  • 父親運動とインターセクショナリティ

    離婚後の共同親権を可能にする民法などの改正案が参院本会議で審議入りしたとのこと。夫婦がうまくいかない状況で、ただでさえ忙しい家庭裁判所が仲介するメリットがわかりません。歴史的に、男性の父権・夫権(ダブルふけん)は並々ならぬ権力を持ってきましたが、その範疇なのでとても嫌な気持ちです。 社会におけるマジョリティ側の性別である男性は、集団としての男性運動を展開することが難しいと言われます。確かに、その通りです。女性運動やフェミニズムが担ってきたほどには、”男性であることによる”生存の危機を感じていないので、男性たちは主体的に変化を起こそうとしません。 ただ、今せっかく制度における「父親」の意義や定義…

  • 『トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら』完成しました。

    タイトル通り、本が出来上がりました。 青弓社さんから出る本は、基本的に大きめサイズで帯ナシのようです。 例に漏れず、本書もその規格です(最近だと『宗教右派とフェミニズム』なんかが同じサイズ)。 www.seikyusha.co.jp 手に取った感想、 とても読みやすい!意外と軽い。文字のフォントがやさしげ。 とても良いじゃないですか。 『トランスジェンダー入門』をもう読んだ人にも、読んでいない人にも勧めたいです。 第2章ではトランスジェンダーにまつわる基本情報をまとめているので、本書がトランス関連で最初の一冊だという人でも読みやすいのではないかと。 第3章と4章はトランスヘイト言説っぽい、「素…

  • あきらから(n通目)ニューハーフの誕生

    五月あかりと周司あきらという二人のトランスジェンダーが出会って、往復書簡を初めて、もう随分経ちました。2022年春から夏にかけて交わした手紙は、『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』という書籍になっています。 www.akashi.co.jp ちなみに、その後もペースを落としながら往復書簡は続いています。 続編が刊行されるかはわかりませんが(売上次第?)、今回のブログではその一部を公開します。周司あきらから五月あかりさんへの手紙です。 五月あかり:男性から女性に同化していったノンバイナリー。Aセクシュアル。 周司あきら:女性から男性に同化していったトランス男性(FtM)。パンセク…

  • 青弓社から『トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら』出ます。

    これでこの話は終わらせよう、というつもりで書きました。 『トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら』という本が青弓社から出ます。 発売予定日は、2024年4月25日です。 www.seikyusha.co.jp 第1部 性別の重み 第2部 基礎知識 第3部 性別分けスペース 第4部 「トランス差別はいけないけれど気になる」疑問 全部で4部構成です。 大きな疑問に対して、派生する細やかな質問が64個並んでいます。どれも大事な話ですが、今たくさん読まれるべきなのは「第3部 性別分けスペース」なのでしょう。 以前、高井ゆと里さんがトランスジェンダーとトイレに関して「問われているのは、排除」と…

  • 読書メモ『ゼロへ そこから先がオレの人生』

    『ゼロへ そこから先がオレの人生』読了。 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907873080 この本は私が読む機会なさそうと思っていたが手に取りました。元毎日新聞記者の著者が、ひとりのFtMとその周囲の人間を取材した記録。「トランス男性」というより、「前略プロフィール」で「真のFtM」を探し求めた、ザ・FtMという感じ。 主人公の智輝は、「FtM狩り」と称して自分より「男らしくない」「中途半端な」FtMに暴力を振るって、傷害容疑で告訴された。 (私はFtM狩りされる側の人間だろうな、と思っていたので積極的に読む気がしなかった。) FtMという集団内部にお…

  • 『エトセトラVOL.10』男性学選書フェア

    こんにちは、周司あきらです。 2023年11月に発売した『エトセトラVOL.10』にあわせて、エトセトラブックス(東京都)の店内で選書フェアを開催していました。 etcbooks.co.jp そのとき選んだ25冊と、選書コメントを公開します。希少な本も取り扱っていただいた、エトセトラの皆さんに感謝します。 「あらためて“男性”を考えるために~キーワードから選ぶ古書・新刊書~」 『はじめて語るメンズリブ批評』 蔦森樹編(東京書籍) メンズリブの活動が日本で認知されておよそ10年(本書刊行は1999年)。メンズリブが女性問題に無関心なメンズクラブになっているのではないかという編者の問題意識に始まり…

  • トランスジェンダーや男性学関連で今後やりたいこと

    やりたいことというよりは、やるべきことも含まれますが。 ・2024年中に男性学の本を出す :今書いてます。男性(学)全般の話になる予定です。「男性運動」といったときに、男性学でよく参照されるような「家事・育児系」と「メンズリブ系」の運動だけでなく、好ましくないけれどアンチフェミ的な「男性運動」も広く含んで考える必要があるよなーーやりたくはないけれど、という感じ。 ・『トランスジェンダー男性学2』を考えたい :上記とは別で。トランス男性が男性学にどう政治的に組み込まれていくか、あるいは既存の男性学を少しだけ批判・解体するか、Trans manを中心に考えていく必要もある。「トランス男性の参加者も…

  • 『トランスジェンダー入門』5刷決定

    2023年7月に発売した『トランスジェンダー入門』5刷が決定しました。ありがとうございます。 トランスジェンダー入門/周司 あきら/高井 ゆと里 集英社 ― SHUEISHA ― 性同一性障害特例法が施行されてから20年の間に性別を変更したトランスジェンダーの人の数よりも、ずっと多くの人がこの本を手に取ったということですね。 じんぶん大賞3位もいただきました。 2024年2月より全国の紀伊國屋書店にてフェア開催されるようです。 store.kinokuniya.co.jp 発売から早くも半年以上経ったわけですが...... 本書を読んだトランスの人のなかには、「女らしさや男らしさに苦しんで…

  • トランス差別の「素朴な疑問」あるある

    (初出:2023年3月7日)https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/idea_trans_discrimination 面倒くさいからパッと書きました。とりあえず3問だけです。私はトランスの男性に該当する、周司あきらといいます。 これはあまり熟考せずに回答した私の考えにすぎないので、当然別の回答をする人もいると思います。そりゃあそうですよね、ある集団全体の意思を反映するなんて不可能ですもの。それに第一、答える必要などないとも思います。テキトーに相手がつくり出した土俵に、なんで上がらなければならないのだ。 Q、トランス男性は男子トイレや男湯に…

  • トランス男性が被るトランスミサンドリー

    (初出:2023年6月9日) https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/trans_misandry ●パレットークで描かれたエピソードから 先日パレットークで、実際にトランス男性(トランスジェンダーの男性、FtMのこと)に起きた体験談がマンガ化されていた。 Instagram前編 https://www.instagram.com/p/CsvzaAlPTrl/?igshid=MzRlODBiNWFlZA== Instagram後編 https://www.instagram.com/p/Cs_HB8hSAdl/?igshid=MzRlODB…

  • 『エトセトラVol.10』で男性学特集をやります。

    (初出:2023年8月17日) https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/etc_danseigaku こんにちは、周司あきらです。 2019年5月にVol.1が発売となったフェミニズム雑誌『エトセトラ』が、次号はVol.10を迎えます。2023年11月発売予定です。特集のテーマは、「男性学」。 フェミニズム系の雑誌や論文集で「男らしさ」や「男性学」がメイントピックになることは度々ありましたが、今回私の希望で「男性学」をやらせていただくことになりました。めちゃくちゃ楽しみです。 私はこれまで共著を合わせて3冊の本を出させていただいているのです…

  • 『男らしさの歴史2』旅を男のものとする理屈

    (初出:2023年1月31日) https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/histoire_de_la_virilite2 藤原書店から出ている邦訳『男らしさの歴史』(アラン・コルバン他)全3巻から、とくに興味深かった章をまとめる。 www.fujiwara-shoten-store.jp ●フランスは無理して「男になる」? 私が好きなのは、2巻の「第5部 男らしさを訓練する異国の舞台」ー「第1章 旅の男らしい価値」(p.415-)だ。以下、引用ページはすべて2巻より。 どの巻も600ページ〜800ページほどある充実っぷりで、1巻は古代ギリシ…

  • トランスジェンダーを知ろうとしても、『埋没した世界』は誰も逃さない。

    (初出:2023年4月15日) https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/maibotsushita_sekai こんにちは、周司あきらです。 五月あかりさんと交わした『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』が、早いところではもう発売しています。ありがたいです!Amazonでは2日後の4/17発売のようです。私(たち)の元を離れて本が独り立ちした今、色々と思うところを書き残しておくことにします。 ●初っ端からトランスジェンダーのペースで話を始めたかった 明石書店さんには、書き手である私たちの意向を汲んでたくさん力を尽くしていただき…

  • 【新聞比較】経産省女性トイレ使用制限への判決

    (初出:2023年7月16日) https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/newspapers_toilet_judgment 2023年7月12日(水)の朝刊を比べてみた。個人の感想です。 朝日新聞、東京新聞、毎日新聞、日本経済新聞、読売新聞、産経新聞の6社。 朝日新聞と東京新聞は「トランスジェンダー」と表記し、他は「性同一性障害」での報道だった。 「戸籍上の性別を変更していない性同一性障害職員の女性トイレ使用を経済産業省が制限した問題で、最高裁の第三小法廷(今崎幸彦裁判長)は7月11日、使用制限は「違法」とする判決を言い渡した。」 判決全…

  • 【新聞報道比較】10月25日最高裁による不妊化要件違憲判決

    (初出:2023年10月26日)https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/newspapers_gid1025 2023年10月25日、最高裁大法廷が「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法)の第3条4号の、不妊化(生殖不能)要件へ違憲判決を出しました。裁判官15名全員一致の判断でした。これまでの裁判に関わってきた皆さま、本当にお疲れ様でした。 5号の外観要件は差し戻しのため、申立人の性別変更は叶っていないままですが、いずれ同じ理由で5号も違憲となるのではないでしょうか。……それまで辛抱は続きます。 判決→ 令和2年(ク)第…

  • 周司あきらの2023年総括

    プライベートなことではなく、対外的なことをまとめたいのですが、とはいえ私自身の変化も大きい1年でした。 自身の希死念慮が強すぎるときは、他者が死のうが殺されようが正直どうだってよかったのです。「社会」と呼ばれるもののすべてに無関心でした。色々考えられるようになってきたのは、自身の性別違和がほとんど解消されて、金銭的な切迫感から少しばかり距離を取れるようになったからです。しょうもないシステムだな、とようやく憤っています。 さて、2023年は、力不足でありながらフライングで色々やらせてもらいました。 4月に『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店)発売。それに先立って「あかり…

  • FtM陰茎形成手術を問い直す『Hung Jury』

    この記事は、洋書『Hung Jury: Testimonies of Genital Surgery by Transsexual Man』の紹介です。 『Hung Jury』は、2012年にTransgress Pressから出版されています。 主要な著者は、Trystan Theosophus CottenさんとBrice D. Smithさんです。 Amazonリンクはこちら。 ●なぜ『Hung Jury』を紹介するのか タイトルの“Hung Jury”という英語を調べると、「評決不能陪審」と出てきます。審議を重ねても一致しなかった評決、を指すそうです。これだけでは意味がわからないですが…

  • あかり&あきら対談「ホルモン治療って何のため?」

    初出:2023年8月1日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/hormone_akariakira トランスジェンダーの人が性別への違和感を軽減させ、その後は体調維持のために使うことのある性ホルモンについて、話し合います。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【男性ホルモンが好き!】 B;私は男性ホルモン(主にテストステロン)を愛している。 A:急にどうしたの?わたしは別に、女性ホルモ…

  • あかり&あきら対談「身体の性ってなんだろう?」2

    初出:2023年5月7日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/what_is_sex2 前回の対談に引き続き、「身体の性ってなんだろう?」と話し合います。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【脱毛しようとしたら】 B:あかりさん、最近脱毛してるんだって? A:急にプレイベートやめて。去年はトランスだって理由で脱毛サロンに入会拒否されたんだから。 B:ひどいね、ほんとひどい。今回あれで…

  • あかり&あきら対談「身体の性ってなんだろう?」

    初出:2023年4月28日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/what_is_sex 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、トランスジェンダーを説明する時に使われがちなフレーズ「身体の性」っていったい何だろう?という疑問です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【ホルモンの地味な変化】 B:あかりさん、最近冷え症なんだって? A:そうなの。指先とかキンキンに冷えちゃう。…

  • あかり&あきら対談「心の性ってなんだろう?」

    初出:2023年4月10日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/what_is_gender_identity 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、トランスジェンダーを説明する時に使われがちなフレーズ「心の性」っていったい何だろう?という疑問です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【トランスジェンダーの定義の曖昧さ】 A:なんだっけ?今日のテーマは「心の性」? B:私…

  • あかり&あきら対談「トランスYouTuberの功罪」

    初出:2023年4月2日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/youtube_akariakira 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、トランスジェンダーの個々人に大きな影響力をもち、シスジェンダーの視聴者も多くいるであろうYouTubeです。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) ※会話では、MtF=トランスジェンダー女性(トランス女性)、FtM=トランスジェンダー男性(…

  • あかり&あきら対談「シスジェンダーの悲劇」

    初出:2023年3月27日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/thetragedyofcisgenderism 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、シスジェンダーの悲劇です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) 【きっかけの1冊:The Tragedy of Heterosexuality】 A:今日は「シスジェンダーの悲劇」について話す会だね。 B:やりたかった! A…

  • あかり&あきら対談「トランスジェンダーが直面するルッキズムと不能感」

    初出:2023年2月12日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/lookism_akaritoakira 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、トランスジェンダーが直面する(トランス女性/MtFの)ルッキズムと、(トランス男性/FtMの)能力の問題です。 A:五月あかり(出生時に男性を割り当てられたが、現在は女性に埋もれて生きている。トランスジェンダー) B:周司あきら(出生時に女性を割り当てられたが、現在は男性をやっている。トランス男性) トランス女性(MtF)のルッキズム A:最近さ、ふたりの往復書簡でルッキズムの話して…

  • あかり&あきら対談「性別変更するための特例法ってどう思う?」

    初出:2023年1月6日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/gid-akaritoakira 今回、五月あかりと周司あきらの二人で話し合うのは、性別に違和がある人々(トランスジェンダー)が戸籍上の性別変更をするための法律について。 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。 一 十八歳以上であること。(年齢要件) 二 現に婚姻をしていないこと。(非婚要件) 三 現に未成年の子がいないこと。…

  • あかり&あきら対談「なぜ『梨泰院クラス』のトランスジェンダー表象が下手くそなのか⁉︎」

    初出:2022年9月2日 https://ichbleibemitdir.wixsite.com/trans/post/drama-review-itaewon-class 韓国ドラマ『梨泰院クラス』では、トランスジェンダー女性役のヒョニという役が出てきます。でもなぜか、トランス女性(MtF)ではなく、最初トランス男性(FtM)にしか見えませんでした。他にも、作中でトランスジェンダー役を描くにあたってツッコミどころが満載です。 トランス当事者の2人で『梨泰院クラス』を一気観して、感想を語り合います。日本版リメイク『六本木クラス』に届くことは期待していませんが、映像作品の作り手に届いてくれ〜。 …

  • 周司あきらの活動一覧

    周司あきらの活動をまとめています。 主に男性学、トランスジェンダー、フェミニズムに関する文章を書いています。 お仕事募集中です。顔出し、個人情報の提供はしておりません。 連絡先:ichbleibemitdir@gmail.com 2023年 4月 【出版】五月あかりさんとの共著『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店) 7月 【随想】『すばる8月号 特集 トランスジェンダーの物語 』「家父長の城」 【出版】高井ゆと里さんとの共著『トランスジェンダー入門』(集英社新書) 【トークイベント】代官山蔦屋書店 李琴峰さん、高井ゆと里さんとの鼎談『トランスジェンダー入門』(集英社新…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、周司あきらさんをフォローしませんか?

ハンドル名
周司あきらさん
ブログタイトル
akira_shuji’s diary
フォロー
akira_shuji’s diary

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用