ものがたりジャンキーの主婦が今まで読んだなかで面白かった小説だけ紹介します。多少乱読気味。特に食べ物が出てくる小説が好きです。毎日更新がんばります。
|
https://twitter.com/za41324121 |
---|
『海のふた』よしもとばなな 【感想・ネタバレなし】全編を貫く夏の匂いとまばゆい光に目が眩む、夏が恋しくなる小説。
今日読んだのは、 よしもとばなな『海のふた』です。 ふるさとの西伊豆にささやかなかき氷屋を開く「私」と心に傷を負った少女・はじめちゃんとの夏の日々を描いた爽やかな一夏の小説です。 私は、超インドア派にも関わらず、夏が一番好き!という珍しい人間なのですが、本書は、これから夏を迎える今読むのにピッタリでした! 名嘉睦稔の挿絵も生命力に満ち生々しく、海と夏の匂いを運んでくれます。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 「まりちゃん」のようになりたい 夏の匂い 今回ご紹介した本はこちら よしもとばななの他のおすすめ作品 あらすじ ふるさとの西伊豆で、かき氷屋をはじめた…
『パンダより恋が苦手な私たち』瀬那和章 【感想・ネタバレなし】恋愛に足りないのは野性? 恋も仕事もボロボロの編集者が挑む動物×恋愛コラム!
今日読んだのは、 瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』です。 「動物奇想天外」と「生き物地球紀行」に夢中だった幼少期だったので、タイトルから思わず手に取ってしまいました。 ファッション誌志望だったのにカルチャー雑誌の編集にまわされ、いまいち仕事にノリきれないパッとしない編集者が、突然任された恋愛コラムのライティングにおたおたしながら、自分の夢と仕事に向き合っていく、というちょっと熱いお仕事小説です。 動物のちょっとしたミニ知識も取り入れられてお得感満載でした。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 夢と現実の落差に悩む人へ 人間よ、もっとがんばれ! 今回ご紹…
『ロシア紅茶の謎』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】国名シリーズ第1作品集。毒殺された作詞家のカップに毒を入れた驚くべきトリックとは
今日読んだのは、有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』です。 1994年刊行で、エラリー・クイーンにならった”国名シリーズ”の第1作品集にあたります。 時代は感じさせるものの、今読んでも粒ぞろいの作品で、本格ミステリ好きには素敵なお菓子箱のような作品集です。 それでは、各短編の感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 各短編の感想 動物園の暗号 屋根裏の散歩者 赤い稲妻 ルーンの導き ロシア紅茶の謎 今回ご紹介した本はこちら 有栖川有栖の他のおすすめ作品 あらすじ 毒殺された作詞家のカップに毒を入れた驚きのトリックを火村が暴く表題作をはじめ、動物園で発見された被害者の遺した暗号、殺害されたアパ…
『菩提樹荘の殺人』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】〈若さ〉がもたらす光と闇を書き分ける四つの短編。火村の学生時代のある事件も明かされる
今日読んだのは、 有栖川有栖『菩提樹荘の殺人』です。 2013年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です あとがきによると、 本書に収録した四編には、〈若さ〉という共通のモチーフがある。 探偵役の火村の学生時代や、有栖の高校生時代の思い出などが散りばめれていて、ファンとしては嬉しい要素満載です。 もちろん、本格推理小説としても、相変わらず冴えたロジックと著者の善良さが伺える物語性が楽しめます。 個人的には、このシリーズでは珍しい”人の死なないミステリ”である「探偵、青の時代」が好きです。 それでは、各短編の感想など書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 各短編の感想 アポロンのナイフ…
『アムリタ』吉本ばなな 【感想・ネタバレなし】生きることはおいしい水をごくごく飲むこと
今日読んだのは、吉本ばなな『アムリタ』です。 何かのあとがきで、著者自身はこの作品をあまり気に入っていないというようなことを書いていた記憶があるのですが、私はすごく気に入りました。 母親が離婚したり、父親の違う弟がいたり、妹が自殺したり、階段から落ちて記憶喪失(?)になったりヘンテコな人生を送っている女性の話なのですが、色々悪いことが起こっているのに妙に呑気な感じの雰囲気が好きです。 不遜ながら、主人公の妹(激烈美人!)にすごく感情移入してしまいました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 思い出に浸透していく力 ちょっと変わった家族の物語 今回ご紹介した本…
『スイス時計の謎』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】論理パズルのような悪魔的推理が暴露する青春時代に男たちが立てた熱い誓い
今日読んだのは、有栖川有栖『スイス時計の謎 (講談社文庫)』です。 所謂「作家アリスシリーズ」の短編集で、刊行は2003年です。 表題作となっている「スイス時計の謎」は、推理小説というより論理パズルのようで、詐欺師の騙されているのに反論できないような奇妙な感覚が味わえます。 また、いけすかないエリート気取りの集まりへの印象が、謎が解き明かされることで一転するという小説的面白さもあって、そこも好きです。 それでは、各章の感想など書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 各短編の感想 あるYの悲劇 女性彫刻家の首 シャイロックの密室 スイス時計の謎 今回ご紹介した本はこちら の他のおすすめ作品…
『狩人の悪夢』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】狩人とは一体誰だったのか。シリーズの愛読者には嬉しいサプライズが最後に待つ。
今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『狩人の悪夢』です。 2017年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です。 本シリーズは御手洗潔とは異なり、探偵の火村と有栖は年を取らないシステムなので、シリーズ初期では、携帯もなく、ワープロ(!)やフロッピーディスク(!)で仕事をしていた有栖も、2017年にはスマホを持ち、パソコンで仕事をしています。 このシステムは、登場人物の設定に色々障害はあるものの、その時々の時代が感じられて、結構好きです。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 34歳の名探偵と助手へ 狩人とは誰か 今回ご紹介した本はこちら 有栖川有栖の他のおすすめ…
『朱色の研究』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】人を狂わせる魔的な夕焼けが支配する。意外な犯人とそこに至る精緻なロジックに驚嘆する本格推理小説。
今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『朱色の研究』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編で、1997年に刊行されたものです。 バブル崩壊直後の、あ~なんか不景気やな~、という落ち込んだ退廃的な雰囲気と、カミュ『異邦人』を思わせる世界の終わりのような焼け付く夕焼けが重なって得も言われぬ情緒が感じられる小説です。 また、著者の本格推理小説に寄せる哀しみに近い想いが、登場人物の口を通して語られる興味深い作品でもあります。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 本格推理小説に寄せて 不条理な焼け付くような夕景 今回ご紹介した本はこちら 有栖川有栖の他のおすすめ作品 あ…
『スウィングしなけりゃ意味がない』佐藤亜紀 【感想・ネタバレなし】どんな残酷な現実でも、スウィングするように自由に生きてやる。ナチ政権下のドイツを強かに生きる不良少年たちの輝かしい青春。
今回ご紹介するのは、佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』です。 ナチ政権下のハンブルクで、敵性音楽のジャズに夢中になる少年たちの危うくも輝かしい青春と、何もかもを台無しにする戦争の滑稽さと狂気。 あの狂気の時代にも、自分の感性と力をもって生きようとした若き命があったことが瑞々しく退廃的な文章と、登場するジャズのナンバーから伝わってきました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 輝かしい不良少年たち 奪うものへの憎悪 今回ご紹介した本はこちら その他のおすすめ作品 あらすじ 1940年、ナチ政権下のドイツ、ハンブルク。軍需会社経営者の父を持つブルジョワの…
『異類婚姻譚』本谷有希子 【感想・ネタバレなし】夫婦という名のぬらぬらした生き物が日常の浅瀬をうごめく
今回ご紹介するのは、本谷有希子『異類婚姻譚』です。 「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた」専業主婦の日々を軽妙なタッチで描いた話です。 結婚してまだ日が浅い身からすると、「夫婦」という名のもとにぐちゃぐちゃと混じり合っていく二人の描写にゾッとしてしまいました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 結婚という不可解な活動 日常に潜む異世界 今回ご紹介した本はこちら あらすじ 「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた」専業主婦4年目の私は、ある日夫と自分の顔がそっくりになっていることに気付く。夫は「俺は家で…
『ミシンの見る夢』ビアンカ・ピッツォルノ 【感想・ネタバレなし】お針子の少女が垣間見る上流階級の秘密と真実。”縫う”という技術一つで力強く生きる女性の姿を描く。
今回ご紹介するのは、ビアンカ・ピッツォルノ『ミシンの見る夢』 です。 著者のビアンカ・ピッツォルノはイタリアの児童文学の第1人者で、大人向けの作品は本書で3作目とのことです。 そのせいか、”19世紀末のイタリア”という異世界を描いた作品ながら、その語り口は夢と優しさに包まれ、上質のファンタジーを読むように、すっと物語に引き込まれてしまいました。 階級社会の色濃く残る社会で、貧しいお針子の少女が上流階級の家庭で垣間見た人々の秘密や、滑稽で残酷な真実を通して、一人の少女の成長と”縫う”という創造性がもたらす自由のすばらしさを描ききっています。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ …
『乱鴉の島』有栖川有栖 【感想・ネタバレなし】王道の孤島ミステリ。精緻なロジカルと当時の最先端技術に寄せる著者の倫理的態度が融和する傑作
今回ご紹介するのは、有栖川有栖『乱鴉の島』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編にあたり、孤島もののミステリに位置づけられます。 年代が2000年代初頭なので、携帯電話が一般的に普及しはじめたけれど、スマホはもう少し先、パソコンでインターネットを使用している人も半々という過渡期で、そこがまた味となっています。 孤島に引きこもる孤老の天才詩人とその崇拝者たち。 迷い込んだ探偵と助手。 ちらちら垣間見える秘密。 満を持して起きる事件。 これぞ、ミステリファン垂涎の王道の作品です。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント ネットの普及と孤島ミステリ クローン技術に…
『JR高田馬場駅戸山口』柳美里 【感想・ネタバレなし】子供を守ろうとすればするほど行き場所を無くしていく女。居場所のない魂が行き着く先とは
今回ご紹介するのは、柳美里『JR高田馬場駅戸山口 (河出文庫)』です。 2020年度全米図書賞(National Book Awards 2020)の翻訳部門を受賞した『JR上野駅公園口』が連なる山手線シリーズの一作です。 そちらの感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com 本書は2012年に『グッドバイ・ママ』というタイトルで刊行、新装版にあたり現在のタイトルとなりました。 夫は単身赴任中で子どもと二人、育児ノイローゼに陥った母親の辿る孤独と悲劇を描いた小説です。 ごく普通の母親が足元の暗闇に飲み込まれていく様子は、ゾッとするものがありますが、同時に著者の”居場所のない人々”へ…
『台北プライベートアイ』紀蔚然 【感想・ネタバレなし】台湾発のハードボイルド探偵が連続殺人事件を追いかける。この面白さは読まないと分からない!
今回ご紹介するのは、紀蔚然『台北プライベートアイ』です。 原題は『私家偵探』。 台湾人が書く私立探偵小説なんて、面白そうな予感しかしない!とビビっときて、そのまま夢中になって一気に読み上げました。 ジャンルを問われれば、”ハードボイルド”としか言いようがないのですが、著者の描く台北の街の描写や、シニカルな台湾人観が混じり合い、イギリス的でもアメリカ的でも日本的でもない、独自の世界観が広がっています。 また日本をはじめとする諸外国の犯罪者と台湾の犯罪者の比較など興味深いトピックスもあり、一粒で何粒も美味しい小説でした。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント キャ…
『ウエストウイング』津村記久子 【感想・ネタバレなし】雑居ビルのデッドスペースで交錯する年齢も性別もバラバラの3人の人生。
今回ご紹介するのは、津村記久子『ウエストウイング』 です。 津村記久子の物語は、就職氷河期世代真っ盛りといった風の全体的に未来の見えないどんよりした気怠さ全開の雰囲気なのに、独特のユーモアとシニカルさにニヤリとさせられ、何故か読み終わると、「明日もまあがんばろうかなあ」なんて励まされてしまう、という不思議な魅力があります。 本書もそういったお話です。 年齢も性別もバラバラの3人が一つの場所を共有しながらすれ違い、思わぬ災厄にあったり、知らず助け合ったり、面白い小説でした。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント お互いの顔も知らぬまま始まる関係 日常に突然訪れる…
『JR品川駅高輪口』柳美里 【感想・ネタバレなし】携帯電話で自殺掲示板を眺める女子高生は品川駅から約束の場所へ向かう。毎日毎刻生きることを選択し続ける、その尊さを温かな雨が濡らす
今回ご紹介するのは、柳美里『JR品川駅高輪口 (河出文庫)』です。 2020年度全米図書賞(National Book Awards 2020)の翻訳部門を受賞した『JR上野駅公園口』が連なる山手線シリーズの一作です。 そちらの感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com 本書は2011年に『自殺の国』というタイトルで刊行、2016年に『まちあわせ』と改題して、文庫化された作品の新装版にあたり現在のタイトルとなりました。 死に引き寄せられる女子高生が立つ断崖のようなプラットホームから見渡す景色を克明に描いた作品です。 『JR上野駅公園口』が死者の物語なのだとしたら、本書は生者の慟哭…
『さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい』古内一絵 【感想・ネタバレなし】マカン・マランシリーズ第4作。
今回ご紹介するのは、古内一絵『さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい (単行本)』です。 おしまい、ということは、もうこれがシリーズ最終作となるということですね。 ちょっと残念です。 でも、これまでのシャールさんに掬い上げられてきた各話の主人公らが一挙に登場するのはシリーズの愛読者としては、とても嬉しかったです。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 これまでのシリーズの感想はこちら↓ あらすじ おすすめポイント 各章の感想 第1話「さくらんぼのティラミスのエール」 第2話「幻惑のキャロットケーキ」 第3話「追憶のたまごスープ」 第4話「旅立ちのガレット・デ・ロワ」 今回ご紹介し…
『男ともだち』千早茜 【感想・ネタバレなし】異性の友人というややこしさを喝破する潔さに心洗われる、古い友人に会いたくなる一冊
今回ご紹介するのは、 千早茜『男ともだち』です。 これまで読んだ著者の本のなかで(エッセイも含めて)、著者の内臓に一番深く触れる小説だった気がします。 それだけに表現としての小説というより、良い意味でも悪い意味でも何かの吐露のような、洗練さよりは荒削りで無骨な突き上げるような魅力を感じました。 「男女の友情は存在するか」というのは、永遠のテーマですが、本書はこの永遠のクエスチョンに対し、一定の答えを弾き出していると思います。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 浮気に罪悪感を覚えるか問題 ”ともだち”というややこしさ 今回ご紹介した本はこちら 千早茜の他のお…
『ガーデン』千早茜 【感想・ネタバレなし】自分だけの密やかな庭に引きこもる植物系男子の生態
今回ご紹介するのは、千早茜 『ガーデン』です。 千早茜さんの小説は、もしかして自分のことを書かれてる?と思ってしまうほど、水が合うところがあります。 特に『男ともだち』などは、どこかで監視されているんじゃないかと思うくらい、ぴったり自分に嵌ってちょっと怖かったです。 もしかすると著者のファンは全員このように思っているのかもしれません。 さて、今回ご紹介する『ガーデン』には、小学生のほとんどをアフリカで過ごしたという著者の経験がふんだんに生かされています。 ”帰国子女”というレッテルに振り回されないよう気を配り、自分だけの居心地いい庭に引きこもる超植物系男子・羽野くんの生態が描かれています。 羽…
『きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび』古内一絵 【感想・ネタバレなし】マカン・マランシリーズ第3作。あのシャールさんがはじめて料理を分け与えない相手が登場
今回ご紹介するのは、古内一絵『きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび (単行本)』です。 大人気の「マカン・マランシリーズ」の第3弾! マカン・マランはインドネシア語で「夜食」の意味。 ドラァッグクイーンのシャールさんが営む夜食カフェ「マカン・マラン」訪れる人々に現れる美味しい奇跡描いた人気シリーズですが、何と今回、はじめてシャールさんが訪れた客に料理を提供しないという話が登場します。 どんな人でも受け入れてきたシャールさんでも、料理をつくることのできなかった相手とは? それでは、あらすじと感想を書いていきます。 これまでのシリーズの感想はこちら↓ あらすじ おすすめポイント 各章の…
『JR上野駅公園口』柳美里 【感想・ネタバレなし】漂泊する死者の独白によって浮き彫りにされる私たちの歴史の影と死者への祈り
今回ご紹介するのは、柳美里『JR上野駅公園口 (河出文庫)』 です。 2020年度全米図書賞(National Book Awards 2020)の翻訳部門を受賞した作品です。 日本の歴史の影を具現化したかのような一人の男の生涯を、漂泊する魂の独白と雑踏から聞こえる無数の声によって語らせる詩的な小説です。 読み終わった後、文字通り何もかもを波がさらっていったかのような虚脱感に襲われました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 無かったことにされる人々の無念 地方に押し付けられた貧しさとリスク 目を開いて自分の立っている場所を見よ 今回ご紹介した本はこちら 柳…
『無暁の鈴』西條奈加 【感想・ネタバレなし】仏は、浄土は、何処におわすのか。飢餓と貧困の世に一人の男の辿り着く遥かなる境地とは。
今回ご紹介するのは、西條奈加『無暁の鈴 (光文社文庫)』です。 著者は2021年に『心淋し川』で直木賞を受賞しています。 今作は受賞後の初文庫化作品とのことで、気になり手に取ってみました。 自らも殺人に手を染め、飢餓と貧困の地獄図を目の当たりにした僧の一生を迫力ある筆致で描いた作品です。 生半可の覚悟では読み切れないと思い、エイヤっと気合を入れて一気に読破しました! それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 宗教は何のためにあるのか 生への執着 今回ご紹介した本はこちら あらすじ 武家の庶子・行之助は生母の身分の低さ故疎まれ、寒村の寺に預けられていたが、そこでも兄…
『女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび』古内一絵 【感想・ネタバレなし】マカン・マランシリーズ第2作。戻ってきたシャールさんの小さな美味しい魔法
今回ご紹介するのは、古内一絵『女王さまの夜食カフェ - マカン・マラン ふたたび』です。 大人気の「マカン・マランシリーズ」の第2弾! 第1作の感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com マカン・マランはインドネシア語で「夜食」の意味。 ドラァッグクイーンのシャールさんが営む夜食カフェ「マカン・マラン」に訪れる人々は大なり小なり人生の苦しみを背負う人々ばかり。 そんなとき、シャールさんのつくる優しい料理とちょっとした言葉が、背負ったものを少しだけ軽くしてくれます。 持ち込まれる”悩み”がバラエティ豊かで、「へー!」と驚いたり、「うんうん」と感情移入したりできるのも楽しみの一つです…
『おれたちの歌をうたえ』呉勝浩 【感想・ネタバレなし】あの日確かに繋がった歌声をおれたちは今に運べるか、昭和と令和を行き来する骨太の大河ミステリー
今回ご紹介するのは、呉勝浩『おれたちの歌をうたえ』です。 昭和51年と令和元年を行き来する骨太のミステリーというかピカレスク。 無邪気であれた幼い日々と残忍な今の容赦のない対比やめまぐるしい展開、暴力描写、圧倒的な物量に押しつぶされそうになりながら夢中で読みました。 最近は古内一絵の「マカン・マランシリーズ」など優しい物語を多く読んでいたので、こういうバイオレンスな小説を読むとその落差に眩暈がするようです。それもまた楽しい。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 元刑事とチンピラのコンビ 無邪気な過去と冷酷な真実 そんなものをおれたちは、人生とは呼ばない 今回…
『透明な夜の香り』千早茜 【感想・ネタバレなし】渡辺淳一文学賞受賞、古い洋館に棲む調香師が暴くヒトのどうしようもない欲望と秘密
今回ご紹介するのは、 千早茜『透明な夜の香り』です。 生々しく官能的かつ荒々しい著者の文章にすっかり魅了されてしまい最近乱読しています。 食の描写が特に素晴らしい著者ですが、第6回渡辺淳一文学賞受賞作の本書は官能的で荒々しい「香り」についての物語です。 過剰な嗅覚故に孤独を強いられる青年と忘れ難い過去を抱えた女性が送る不穏で静謐な日々は、どこか小川洋子の書く異形の人間たちの物語を彷彿とさせます。 そういえば、デビュー作「魚神」でも「匂い」についての描写が大きな意味を持っていました。 五感全てを試されるような、もしくは自分の真の欲望を試されるような、スリルかつラストは何かが満たされるような不思議…
『アレグリアとは仕事はできない』津村記久子 【感想】何故か滅茶苦茶笑えるお仕事小説、怠惰なコピー機と闘う滑稽なOLの姿が、ズルい奴らへの怒りを浮き彫りにする
今回ご紹介するのは、津村記久子『アレグリアとは仕事はできない (ちくま文庫)』です。 アレグリアという欠陥複合機を相手に孤軍奮闘するOLの姿が、淡々と描かれている滑稽な小説です。 冷静に読むと結構暗い現実を書いているのに、はじまりから、クスクス笑ってしまうのは、作品の根底を流れる一種のユーモアのせいでしょう。 しかし、読み進めていくうち、機械相手に本気で怒っているアホな女の話が、いつの間にか、人の利益を優先させる人のなかで自分だけ甘い汁を吸おうとする、ズルい(、、、奴らへの怒りと逆襲の物語へと逆転していきます。 嫌な話なのに、何故か笑えて何故かスカッとする。何故何故だらけのお仕事小説です。 そ…
『グラスバードは還らない』市川憂人 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ3弾!爆破テロによりタワーに取り残されるマリア!透明な迷宮に閉じ込められた4人の男女を襲う惨劇と哀しき硝子鳥の秘密
今回ご紹介するのは、市川憂人『グラスバードは還らない』です。 シリーズ第4作『ボーンヤードは語らない』が2021年6月に発売されるのに合わせ、精緻に編み込まれた本格ミステリである本シリーズの魅力をご紹介したいと思います。 第1作目の感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com 第2作目の感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com 第3弾となる本書では、マリアと漣がはじめて単独行動することになります。 ガラスの迷宮に閉じ込められた4人の男女と世にも美しい《硝子鳥(グラスバード)》の秘密。 名探偵コナンの映画ばりの連続ビル爆発とそれに巻き込まれるマリア、冷静な仮面が剥がれ…
『ブルーローズは眠らない』市川憂人 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ第2弾!青いバラ咲き誇る密室には切り落とされた首と縛られた生存者が
今回ご紹介するのは、市川憂人 『ブルーローズは眠らない』です。 シリーズ第4作『ボーンヤードは語らない』が2021年6月に発売されるのに合わせ、精緻に編み込まれた本格ミステリである本シリーズの魅力をご紹介したいと思います。 類まれな美貌と怜悧な頭脳(とだらしがない性格)を持つ警部、マリアと冷静な部下、漣のコンビが活躍するシリーズの第2弾です。 前作に引き続き”密室”と大がかりな”ミスディレクション”が仕掛けられます。 ここまで気持ちよく騙してくれる本格ミステリは、なかなか他に見つけられないんじゃないかと思います。 少し残念なのは、本シリーズは一作目から読むことを念頭に置いて書かれているふしがあ…
『マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ』古内一絵 【感想・ネタバレなし】マカン・マランシリーズ第1作。ドラッグクイーンのつくる優しい料理が心に美味しい
今回ご紹介するのは、 古内 一絵『マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ』です。 マカン・マランはインドネシア語で「夜食」の意味。 ドラッグ・クイーンのシャールさんが営む夜食カフェと、そこに訪れる人々を描いた連作短編集です。 シャールさんのつくるマクロビオティックに基づいた身体に優しい料理が、疲れ傷ついた人々に小さな温もりを与えていきます。 読み終わったとき、何も解決していなけど何だかすこしだけ光を分けて貰ったような気分になる物語です。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 誰しもに訪れる試練 ごく個人的な奇跡 吉本ばなな『キッチン』のえり子さん 今回ご紹介…
『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ第1作目にして第26回鮎川哲也賞受賞作
今回ご紹介するのは、市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』 です。 著者のデビュー作にして、21世紀の『そして誰もいなくなった』と選考委員に絶賛された本格ミステリです。 著者のマリア&漣シリーズの第1作目でもあります。 シリーズ第4作『ボーンヤードは語らない』が2021年6月に発売されるのに合わせ、精緻に編み込まれた本格ミステリである本書の魅力をご紹介したいと思います。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 個性的なバディもの 80年代アメリカのパラレルワールド的世界観 精緻な構成と緻密なトリック 今回ご紹介した本はこちら マリア&漣シリーズの続刊はこちら …
「ブログリーダー」を活用して、zaさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。