会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。
デイビッドのアルペジオがクリスマスイブにしみわたる 僕が歌い終わってしばらくおかずをつまんでいると、デイビッドが彼の持ち歌「ハレルヤ」をギターで爪弾き始めた。僕は昼間に彼と二人でいるときに、お互いどんな曲を弾くのかを見せ合っていた。そのときに一番だけ聞かせてもらっていたが、フルコーラスを聞くのはそれが初めてだった。 I‛ve heard there was a secret chord (この世には秘密のコードがあるらしい) That David played and it pleased the Lord (それをダビデが奏でて、神様が喜んだんだ) But you don‛t really …
もはや僕にとってホストファミリーとなったステファニー家族 そして二曲目はマルコ・アントニオ・ソリスというメキシコ人歌手の「トゥ・カルセル」を選んだ。二十年以上も前の曲だけど、メキシコで大ヒットした曲は、いつまでもラジオで流れ続けるから世代を超えて愛されている。この曲もその一つだ。 Te vas amor, si así lo quieres qué voy a hacer (やっぱりいってしまうんだね、だったら僕には何もできない) Tu vanidad no te deja entender (見栄っ張りの君には分からない) Que en la pobreza se sabe querer (…
丸太で作られた長いテーブルの全席が埋まった みんなが注目して静まりかえる中、僕は坂本九の「見上げてごらん夜の星を」を一曲目に歌うことにした。オリジナルバージョンはほとんど聞いたことがないのだけれど、平井堅がカバーしているのを聞いて、自分でも歌うようになった曲だ。 「この曲は、日本で一九六〇年代にヒットした曲で、夜空の星が僕らの小さな幸せを照らすということがテーマになっている。ここの夜空の星が曲のイメージにぴったりだし」 その場で日本語が分かるのは僕だけだから、そんな風に英語で少し解説してからギターを弾き始めた。 見上げてごらん、夜の星を 小さな星の、小さな光が ささやかな幸せを、歌ってる 見上…
巻きずしは子供たちがあっという間に平らげた 辺りが暗くなり始めた頃、「メリークリスマス」という乾杯でディナーは始まった。すでにワインを飲みながら準備をしていたので、がやがやとにぎやかだ。クリスティーナは英語が話せないし、サムエルのスペイン語はかなりブロークンだ。だから間にステファニーやその娘たちが入って、フランス語を含めた三言語が混ざり合う、まさに言葉のボーダレス状態に入った。 子供たちは運動会のかけっこの号砲が鳴ったときみたいな勢いで、寿司の奪い合いを始め、皆に用意されたお箸――なぜかきれいな日本の塗り箸が用意されていた――で、鼻息荒くほおばっている。 あっという間に二枚の皿からは少し形のゆ…
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