時計の針が19時を回った頃、マンションに司の車が迎えに来た。これから椿さんの家でお父様と話をすることになっている。冬季を一人で置いていけないし、ベビーシッターの花江さんはすでに年末の休みに入っている。どうしようかと迷ったが、お父様が先に「冬
胸ポケットから電話を取り出すと牧野からだった。この時間に俺がパーティーに出ているのは知っている。パーティーが終わったら2人で過ごそうと約束し、このホテルの近くにあるカフェで待たせていた。そんな牧野からメールでもなく電話がかかってくるなんて、
理不尽な噂は牧野の耳にも届いていたようだ。「なんか、わりぃな。」俺がそう言うと、「本当に悪いと思ってんの?」と、即答する俺の彼女。「ああ、俺の耳に入ったら片っ端から否定してやるから。」「でもさー、あながち間違いではないし……。」「あ?」「だ
クリスマスなので甘い小話をお送りします。少しヤバめです。ご了承くださいな笑………………出張明けで2週間ぶりにあたしのマンションに来た道明寺。夕飯を食べてリビングで寛いでいると、スルスル〜っとあたしの背後に周り抱きしめてくるのはいつもの事。大
付き合い始めてから1ヶ月。お互いライバル会社に勤めているから基本仕事のことは話さないようにしている。けれど俺も営業部を離れ、正式に『専務』という立場でババァの下に就くことが決まったので、それは牧野にも伝えた。「専務?」「ああ。」「偉くなるん
牧野から『あんたが、好き』と言われ、全身の緊張が解けてタガが外れる。店に誰も居ないことをいい事に、牧野の身体を引き寄せ俺の膝の上に乗せ濃厚なキス。余裕がなくて、必死で、かっこ悪いのは百も承知だ。けど、今この一瞬だけでもこいつを俺のモノにした
遡ること2時間前。俺は10日ぶりにNY出張から帰国した。タマが出迎える邸に着いたのは20時過ぎ。自室に行き、まずはバスタブに湯をはり、ゆっくりと身体を癒す。そして、バスルームから出たあと、部屋のミニバーにある冷蔵庫からビール缶を1つ取り出し
道明寺から返信が無いまま10日がたった。その間、少なくとも5回以上は電話をかけた。忙しいのだろうか、タイミングが合わないのだろうか、色々自分に都合よく考えたけれど、結局未だに連絡が無いと言うことは、あたしと話したくないという事なんだろう。そ
朝9時に出勤して、夜の19時に退社。気が向けば千石バーによりお酒を少しだけ呑んでマンションに帰宅する。そんな当たり前の日々がまた戻ってきた。でも、ふと気が緩むと時々思い出す、あの人の笑った顔や香水の香り。たった2ヶ月の短い交際だったけれど、
ジューンブライド。昔から6月の花嫁は幸せになるという言い伝えがあるのを、あの滋が無視するはずがない。メープルホテルで盛大に開かれた武田氏と大河原の結婚式。こだわり抜いただけあって、それなりに俺から見てもいい式だった。「こんなすごい結婚式、見
仕事仲間との飲み会。時間通りに店に着くと、「こっちこっち!」と佐々木さんたちが手招きしてくれる。でも、そこには道明寺の姿は無い。あたしには必ず来いと言っておきながら、自分はまさか不参加?と思った瞬間、それを見透かしたように「道明寺さん少し遅
「道明寺、あたし明日仕事だからねっ、外来担当だから忙しいの、それに、もう若くないし、体力もそんなに…………、んっ……」あたしの部屋に戻るなり、道明寺からの熱いキス責めに合う。キスの合間に発したさっきの言葉も聞いてるの聞いてないのか…………。
英德大学のF4専用ラウンジ。そこでスリランカから取り寄せた高級茶葉をつかった紅茶に舌鼓をうつ花の4人組。けれど、いつもと違うところが一つだけある。それは.........、「司、おまえさっきから何読んでるんだよ。」「.........。」「
邸に戻りババァの書斎に直行する。本当は牧野とのデートの余韻に浸りたいけれど、現実から逃げていても仕方がない。コンコン…と軽くノックをして書斎に足を踏み入れると、ババァが珍しくソファでワインを飲んでいた。「どこに行っていたの?」「デート。」素
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時計の針が19時を回った頃、マンションに司の車が迎えに来た。これから椿さんの家でお父様と話をすることになっている。冬季を一人で置いていけないし、ベビーシッターの花江さんはすでに年末の休みに入っている。どうしようかと迷ったが、お父様が先に「冬
なんて私は淫らで不品行でふしだらな女なんだと考えながらも、濃厚に重なる唇の気持ちよさに抵抗もしないまま身を委ねる。司の息遣いとクチュクチュと鳴る音が身体を痺れさせ、ここが普通の部屋なら間違いなくあたしたちは重なり合いその先へ進んでいただろう
「好きで好きで堪らなかった女と離婚して、それでも何年も何年もその女が忘れられなくて、そんな状態で他の奴と結婚なんてできねーだろ。また失敗するに決まってる。だから、懲り懲りだ。俺にはまだ忘れられねぇ女がいるから。」口に出してみると、この何年も
あれから30分がたった。つくしは今、ドクターから冬季の検査結果の詳しい説明を聞くため、救急室から離れた場所へと連れていかれまだ戻ってきていない。俺の頬を引っぱたいたつくしの目は完全に怒っていた。もちろん、騙すようなことをしたのだから殴られて
司様から重大な任務を2つ授かった。ひとつはそれほど難しいものではなく、スピードが重視なので早速取り掛かることにする。この病院から30分ほどのところに道明寺家が所有するプライベートジェット用の滑走路がある。司様の父である社長が、ロスの孫娘に会
冬季のぐったりした様子を見た瞬間、血の気が引き地面がぐらりと揺れるようなふらつきを覚えた。かなり動揺していた。手足が震えるのがわかった。けれど、つくしは違った。携帯を取りだし救急車を呼んだあと、震える声で「大丈夫、今助けに来てくれるからね!
「ママへの誕生日プレゼントでしょ?」冬季にそう言われ、ハッとする。今日は12月28日。つくしの誕生日だ。一瞬気まづそうな表情をしてしまい、「時差で曜日感覚がズレてんだよ、今日が何日か…」と、言い訳をしそうになった俺に、「覚えてる必要なんてな
「この件には口出しするな。」親父からそう冷たく突き放されて、激しい頭痛を抱えながら一夜を明かした。もうロサンゼルスにいる意味が無くなった。つくしとは5年前に終わったのだ。何を今更蒸し返そうとしているのか。何度も自問自答するが、答えは出ない。
どこから漏れたのか、石橋家で開かれたパーティーの写真が流出した。それも、どの角度から撮ったのか…と思わせるような巧妙なアングルで、石橋家の3人と俺とババァがフレーム内に綺麗に収まっている。マスコミが騒ぎ立てるのも仕方がない。ここ数年、婚約の
駐車場の奥から3台目にいつも停めている愛車のSUV車が見えた。遠目からでは中の様子は分からなかったが、近くまで近づくと、助手席に黒い人影が見えた。どうやら大人しく車の中で待っていたのだろう。いつものように運転席を開けると、助手席の人影がビク
3日後、俺はロスへの飛行機に乗っていた。親父が何の目的でつくしの会社を調べていたのか、そして同じ頃、遺伝子情報解析センターで誰のDNAを調べていたのか。親父に聞けば早い。でも、俺はこの目でもう一度つくしの息子である冬季の顔を見たかった。「私
どこから手をつければいいか…と考えると、やはり執事の坂東の周辺を調べるべきだと行き着く。坂東は俺が物心ついた時から道明寺邸で働いていた。歳は50代半ば、親父やババァと同じくらいだろうか。次の日、俺は道明寺邸に関する資料が置かれている書斎に足
石橋家のパーティーを終え道明寺邸に戻ると、スーツを着替えることも無くソファーで目を閉じ、自分の考えに集中させる。坂東と繋がっているのは石橋夫妻ではなく娘の希美だ。だとしたら、何が目的なのか。考えられることはひとつしかない。俺と結婚し、道明寺
婚約して3年目で初めて石橋家の門をくぐった。石橋家は曽祖父の代に石橋産業を創設、その後、祖父は政界にも手を広げ官房長官にまでのし上がった人物だ。曽祖父と祖父で約80年余り日本を代表する企業として名を馳せ、現在はその息子である石橋まことに引き
その一週間後、俺は日本に帰国していた。年末までロスで過ごすと話していたのに、急に日本に帰ると言い出した俺に、「やっぱりあんたに心愛のお守りは無理だったのね。」と、姉ちゃんが呆れて言う。「ちげーよ。やり残した仕事を思い出した。」「リモートワー
「逆にあたしが聞きたい。先に手を離したのはそっちでしょ。信じてたのに、裏切られたのはあたしの方。」静かにそう言ったつくしに、俺はあの頃と同じように言い返す。「自分の浮気を正当化しようとすんじゃねーよ。何度も言うけど、俺は後ろめたい事は一切し
午後2時。幼稚園へ冬李(とうり)君を迎えに行く時間。いつものように部屋を出てマンションの駐車場へ下りると、そこに1人の男性がいた。「あなたは……」「先日はどうも。」深く頭を下げるその男性とは、心愛ちゃんのお母様の弟さんで、つくしさんには「も
「ママっ、ねぇ、ママ聞いてる?」後部座席に座るとうりの声であたしは我に返る。「ん?ごめん。何?」「あのね、僕、ママに怒られることしちゃった。」「怒られること?」「うん。今日、チーズたっぷりのピザを食べたんだ。」いつもなら笑って許すその言葉も
「ピザがいい」男の子のリクエストに応えて、俺はすぐにピザのデリバリーに電話をかけた。アメリカンサイズのピザは想像以上にデカいだろうと予測してMサイズを2枚と、他にもポテトを頼む。「困ります。」と、遠慮するベビーシッターを横目に、「そのままあ
あきらが日本に帰国した。半年後の結婚式を控えて色々と準備が忙しそうだ。あきらの婚約者はアジア系アメリカ人で、仕事の付き合いで3年前に知り合い、その後ゆっくりと関係を深めていった。昔はマダムキラーと呼ばれていたあきらだが、結婚相手として選んだ
あの日以来、俺たち夫婦はお互いを意識しあっている。それもそのはず、あんなに濃厚なキスをしたあと、普通に何も無かったようには暮らせない。正直、近頃はあのキスを思い出し夜も眠れなくなるほどだ。攻めて攻めてこはるの舌を誘い出し、吸い上げ唾液を絡ま
出張最終日の夜。父と夫は経済界の重鎮らが集まるパーティーに招かれていて夕方からその準備でバタバタとしていた。「こはるも一緒に行かないか?」そう父に聞かれ、即座に首を振ってみたけれど、テーブルに置かれた招待客リストを何気なく眺めているうちに、
事故を目の当たりにして、どうやら私たち夫婦は感情のコントロールがおかしくなってしまったようだ。まぁ、こんな事は珍しいことでは無い。病院に勤めていると、生死をさまよう患者やそれを見守る家族らが、時に慰めあったり時に喧嘩をしたり、揺れ動く感情を
次の日、午後から本屋を数件周り最新の医学書を探したり、NYで一番大きなシューマーケットでスニーカーを購入したりしたあと、約束の17時少し前に老舗のデパートであるバーグドルフグッドマンへ向かった。一日中歩き回っていたから足がもうヘトヘトに疲れ
こはるが仕事をやめて1ヶ月がたった。もともと、活発に出歩くタイプでもないし、仲の良い友達が沢山いる訳でもない。だから、この1ヶ月ほぼ邸の中だけで過ごしていると言ってもおかしくない。今までバリバリ働いていたから、さぞかし退屈で憂鬱なのでは…と
読者様から情報提供頂きました。最近『iPhone15が当たりました』などといった詐欺サイトへの誘導が頻繁に出るようです。心当たりのある方はこちらのサイトをご参考までに決して個人情報などは入力しませんように。ブックマークから入ると詐欺サイトが
次の日、6時に目覚めてしまった。今日から仕事は行かなくてもいいのに、そんな日に限ってこんなに目覚めがいいなんて。寝室のカーテンを開けて大きく伸びをする。『今日から自由だぁー』と思わず叫びそうになって思い出した。そうだ、リビングを隔てた向こう
邸に入ると、こんな時間にも関わらずたくさんの使用人たちが出迎えてくれた。「お帰りなさいませ、お嬢様。」「ただいま。……遅くなりました。」申し訳なく思い頭を下げると、一斉に使用人たちも頭を下げる。本当に申し訳ない。グダグダと街を歩き回り帰るの
耳の不調が出るようになってから3ヶ月が過ぎた。初めは耳に何かが詰まったようで聞こえにくい程度だったが、今は右耳はほとんど聞こえない状態にまで悪化している。特に、夜勤が続き疲れていたり、夜眠れずに寝不足で目覚めた翌日は、聞こえる方の左耳にまで
パーティー会場から抜け出した私たちはホテルの前からタクシーに乗った。「楓ホテルまで。」夫がそう告げるのを聞きながら、義母が所有する高級ホテルを思い出す。確か、結婚したての頃はよく楓ホテルのバーで2人でお酒を呑み、そのまま夫のプライベートルー
三吉会長の喜寿のパーティー当日。こはるは病院での仕事を終えてから到着する予定なので、俺は義両親と共に先に会場に入っていた。20時からのパーティー。なかなかこはるは現れない。きっとまた緊急の手術が入って来られないのだろうか。笹倉邸を出てから一
笹倉邸夫が家を出てから5日が過ぎた。父は私たち夫婦が不仲で別居したことを知っているけれど、母は何も知らない。もともとお嬢様育ちの母は、人を疑うということを知らない人だ。だから、夫が道明寺家の仕事の関係で長く出張になったと告げても、明るく『大
緊急で入った手術を終えて、ドクタールームへ戻ろうとしていた時、背後から「笹倉っ!」と、切羽詰まった声で呼び止められた。「本田先生、どうしたんですか?」また急患が来たのだろうか、そう思ったが、本田先生の次の言葉で面食らう。「笹倉、マジでごめん
こはるを勤務する病院まで車で送るようになって2週間が過ぎた。もちろん、夜勤の日もあるから毎日ではないけれど、週4日は一緒に邸を出る。車中では相変わらずほとんど会話はない。その日の手術の確認なのか、タブレットで臓器の生々しい画像を見たり、論文
治療を終えたこはるが部屋に戻ってきた。その腕には白い包帯が巻かれている。「大丈夫か?」「平気。」そう答えて自分の部屋に入ろうとするこはるに俺は直球で言った。「こはる、右耳はいつから聞こえていない?」こはるが驚いた顔で振り向く。「どうしてっ、
昨夜、こはるにメールをしたが既読になったまま返信はない。あいつは家に帰ってくるだろうか、それとも今日もまた病院に泊まるのだろうか。どちらとも分からないまま時間だけが過ぎていき、20時を回った頃、俺たちの部屋の扉が開いた。「……ただいま。」「
結局、昨夜は笹倉邸に帰らず、勤務する大学病院の当直室で一夜を明かした。そして今日、寝不足のまま白衣に着替え病棟に行き、いつものように朝の回診を済ませたあと、コーヒーを片手に病院の屋上にあがった。そして、ベンチに座り空を見上げる。キーーーーン
笹倉家の義父は昔から、国内にある優秀な大学や企業の研究チームを支援するため多くの寄付金を出してきた。そのうちの一つが、こはるが勤める大学病院の新井ドクターのチームで、先日国内初の移植を成功させ世間を賑わせたばかりだ。その祝賀パーティーとも言
午前中に1件、少し休んで午後から1件の手術を終え、体力的にも精神的にもクタクタだ。ドクタールームの「笹倉こはる」というプレートが置かれた自分の席に深く腰を下ろし、ガンガンに張った肩を揉みほぐしながら「はぁーーー」と息を吐く。ここのところかな