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  • 『妹の力』私見

    私のスタンスは、国語とか民族語とかいう概念は近現代の虚構である、という立場である。従来古語とされるようなやまとことば、さらに縄文語や弥生語とされるような再建も、まったく国民国家の便のためにあるようなもので、古典教養がコミュニケーションとして機能していた時代の実情というのは知られえないものだとつくづく思うのである。 だから、戦後よく議論された日本語何とか語起源説というのは、戦前の大日本帝国や大東亜共栄圏の版図の域を越えず、その時代の時代認識、地域認識を映す以上のものではない(いわゆる「南島イデオロギー」というものであろうか)。特に厄介なのは、戦後の経済的秩序、政治的秩序による境界線にとらわれてい…

  • 研究方針:神話学と錬金術、あるいは家電の説明書はなぜ長く読みづらいか

    現在わたしが取り組んでいる研究を端的に言えば、「西洋錬金術と道教煉丹術、および日本神話の比較と、その言語的表象の研究」である。 ここ半年の実験的な原稿から、やっとこさ何か成果ができそうになった。基本的には以下の記事を膨らませたものである。どこか大学で勉強できる環境があればいいのだが、たぶんどこでも受け付けてくれないのではないかと思う。 matsunoya.hatenablog.jp matsunoya.hatenablog.jp 従来、錬金術や煉丹術は吉田光邦『錬金術』(中公新書)におけるように、単なる絵空事とか荒唐無稽な虚構のようにかんがえられている。一応、前者は化学元素の発見や実験器具の発…

  • 理想の文化‐文法事典

    ことばが具象的な表象から抽象的な表現に移行する過程を、一冊の本にまとめてみたい。 神話上の神格や怪物が、卑俗な昔話、迷信を経由して、日常的な科学知識や現象に移行する過程は、文法の大衆化、文語から口語への選好の変化と軌を一にする。長いスパンの変化を記憶するための文法から、より瞬間的な表現法への移り変わりは、たとえば並列的に確実性の所在をあきらかにする接続法や仮定法が失われつつあり、より単純で直列的な、過去・現在・未来の系列へと再編される傾向によって見て取ることができる。 これは、事象が「ある」こと、またその対極として「ない」とされることについての性質の変化とも見なせる。この言語上の特質を考慮に入…

  • マレビト補論:「説き語り」の系譜学

    言語を研究するには、伝えるための文法構造と伝えてきた文化体系とを総合的に見ていかなければ、全体像をつかめない。 およそ世に行われている研究は、どちらかを間に合わせで補い成り立っている。科学という文化でも、政治経済という文化でも、それを伝えてきたことばの構造は、翻訳の過程で有耶無耶にされてしまう。対して、文法や概念の構造などを考える哲学的な分野においても、他領域の文化知は「通説」の段階にとどまるように見える。 否、翻訳までもがないがしろにされつつある。生硬な文体、未消化の外来語によるジャーゴンが罷り通る学問を、はたして「受容した」と言えるだろうか。さまざまな社会集団がアクセスすることが可能で、異…

  • 歌謡発生の後景――男子の本買いと、そこからの着想

    今回の男子の本買い 古橋信孝『万葉歌の成立』、講談社学術文庫、1993年(原著1985年) アンドレ・ヨレス『メールヒェンの起源』、講談社学術文庫、1999年 やはり講談社学術文庫やちくま文庫は、古書に限る。 『万葉歌の成立』は、万葉集の歌を沖縄の神謡や古代中国の詩経と比較しながら、その独自のジャンル性を忘れずに解説した書である。なんで今まで手に取らなかったんだろう?と思ってしまうくらい、現在の研究に役立ちそうな本だ。とくに「生産叙事」のアイデアは、農耕や巡行、歌垣など、万葉文化の表出としてのうた、かたりという立場を思い出させてくれる。 その文化は、現代を生きるわれわれと隔絶している、とは書か…

  • 言語:文化と文法

    このブログでは何度か言語について取り上げてきた。「ポスト・オリエント学」「情報文化圏交渉比較環境人文学」といういささか皮肉めいた題名で研究してきたことは、歴史や文学のみならず、人間の行動の規範となる科学全般が、いかに社会集団の地域的、通時的交流に依存されるか――シルクロードや海上交易的なつながりを例にして、錬金術や祭祀呪術、神話の拡がりをまとめてみようという試みであった。 吉野裕子(陰陽五行説)、伊藤義教(ゾロアスター教研究)井本英一(イラン学から東西説話交渉史)、佐藤任(インド密教史・錬金術史)、白川静(中国古代史)、澤田瑞穂(道教・中国説話研究)、吉野裕(古事記から冶金史)若尾五雄(物質民…

  • 即効性、瞬間風速、最大震度……

    持続的、持続性、持続可能性ということが煩く言われるようになって久しいが、実現されているところを見たためしがない。それどころか不思議と、どの界隈においても持続すればするほどボロが出る。もっとも、政治家がよく不快なくらい繰り返すようにそれを「驕り」とか「緩み」などと精神論的に片づけてしまうと、事態はもっとこじれてしまう。 文明国に追いつき追い越せ、戦後復興、先進国の仲間入りという目標のもと、科学技術を取り入れていくと、しぜん「即効性」が高いものばかりが選び取られることとなる。大学教育も人材育成も、「即戦力」となりうる人間を求め、海外からもかき集める。そればかりか、観察に時間の掛かったり、比較を要す…

  • 一億総博知時代

    タイトルははっきり言って皮肉である。SNSとかあっても、使う人間が8割が凡庸、2割が怠け者なものだから、じつはスマートにもソーシャルにもなっていないのである。 コロナ禍以来、「若者の消費」を抑えろ、抑えろという論説が目に付くようになった。送別会やコンパが「クラスター」となった経緯があるからで、大学はそのあおりで閉鎖が続いているのはわかっている。しかし、以前は「若者の消費」はむしろ馬鹿にされるくらい低調なものだったことを忘れてはならない。ああ、こうして嘘が嘘で塗り固められていく。「ジュリアナ東京」がバブルの象徴のように喧伝され、ユダヤ人が陰謀論で迫害される。新聞やテレビが言い出したらレッドネック…

  • #『市民ケーン』が最高の映画とかいう風潮に抗議します

    もし大学の講師だったらこんな授業をすると思う。 www.businessinsider.jp 2020年になってもなお『市民ケーン』が史上最高の映画だそうだ。 こういう「映画通」の選ぶ映画というのは、ご多分に漏れず「懐古」や「思い出補正」が入っているし、最新の映画を推したは推したで「ミーハー気質」や「業界のお手盛り」などを差し引いて考えなければならない。テレビや雑誌でごり押される映画は、たいてい放送法かなんかで「番組」として放映されることを条件に宣伝されている。アニメやマンガが原作のコスプレ学芸会を有難がって見ている連中もいる。 ハリウッド映画も似たり寄ったりで、さほど変わることはない。近頃は…

  • 人文学的「情報機関」について

    人文学はただ専門的に研究されるだけではなく、それを総合的に集約し、分析する場を必要としている。 再三述べてきたことだが、文系学部の知識は役に立たないといわれる。歴史や哲学、文学は、娯楽や教訓くらいにしか認識されていない。大学院に進学し、専門の研究を行うキャリアパスも存在するが、日常生活とは徹底的に無縁の領域と見なされている。こうした無関心のため、大学院生や研究者の苦境、資金や出版などの環境の悪化は、改善される気配がない。 それは、第二次世界大戦以前の人文学的教養が、西洋文明に追いつくための模倣と、その反動としての国粋的、東洋的なものの賛美という極端な二極化傾向にあったことと無関係ではない。科学…

  • フォークロアの研究――いわゆる「都市伝説」「集団幻覚」から

    「科学文明社会」を生きる人間においては、迷信におちいることは恥ずべきこととされている。その一方で、全体主義や都市伝説、疑似科学など、およそ現代人とは似ても似つかない迷信的な信仰をもつ人びとを、近現代の狂騒は生み出してきた。 現今の「コロナ禍」や、その他の流行現象もそうした迷信に分類される日が来るだろう。いくらウイルスの飛沫感染が防げるとはいえ、繊維よりもはるかに微細なウイルスをマスクで防御するといった発想は迷信的である。しかしそれでもマスクは買い占められて店頭から消えた。ウイルス感染を実効的に防ぐというより、我われがウイルスからいかに隔離されて清浄かということを「表象する」ことに重きが置かれ、…

  • 自粛の黙示録(Apocalypse Nowadays)

    出口の見えない自粛がつづく。テレビを見ていてもSNSを眺めていても、誰々はこうして我慢している、だからお前らも自粛しろだのとやせ我慢の見せ合いになってしまっている。あるいはお国のためにと見栄を張り、マスクやガウンづくりに精を出す。 すっかり戦時中のあり様だ。8月の戦争特集で東京裁判や大本営発表について偉そうなご高説を垂れていた新聞テレビが、兵隊さん頑張れの調子で医療従事者を激励し、徴用工や慰安婦問題にあれだけ良識ぶりながら、水商売の女性や外国人労働者の苦境を美談に仕立て上げる。ずいぶん呑気なダブル・スタンダードである。歴史認識は都合のよい金稼ぎの手段であり、全く現実に応用のきかない代物であるこ…

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