舞台への情熱と創造の拠点(前)~築地小劇場と新劇の誕生~
髷を結い着物に身を包んでいた江戸風俗が歌舞伎に残された一方、文明開化が求めたのは短髪・洋装の普及であり、演劇人たちも新たな時代にふさわしい「近代劇」を模索し始めた。ドイツ・ロシア・イギリス・フランスへ赴き外国の戯曲や舞台から演出法を学び取るとともにその成果を持ち帰った。帝国劇場をはじめとする大劇場において西洋演劇の紹介やそれに伴う演技の模索が続くのだが、明治が終わりいわゆる大正デモクラシーの時代になると、政府による富国強兵のスローガンに反発し人間中心の自由主義を謳歌する空気が沸き起こった。そうした中から一人の先進的な舞台人が「日本独自の近代劇を生み出すためには様々な実験を試みる必要があり、自分たちが自由に使える小劇場が不可欠だ」と考えるようになる。演出家土方与志(ひじかたよし)である。大正12(1923)...舞台への情熱と創造の拠点(前)~築地小劇場と新劇の誕生~
2025/03/31 05:10