高校卒業後、少しでも収入が良く自分の可能性を拓くような職場を求めて二度転職した結果、当時は贅沢だった大学進学に舵を切ることになった。入学費用はこの苦学生に差し伸べられた手にすがり、学費は日本育英会の奨学金で、(食・住以外の)毎月の生活費は種々のアルバイトで賄った。1960年代後半、世界は冷戦下における戦争と社会変革の嵐が吹き荒れていた。日本国内では<ベトナムに平和を、市民連合!>のデモが知識人を中心に繰り広げられていたし、大学構内では「学費学館闘争」を旗印に大学当局への異議申し立てが叫ばれ、立看板とバリケードが林立していた。「この時代をどう生きるか、自分はどうあるべきか」―この時代思潮は当然のごとく芸術にも変化をもたらし、文学・美術・音楽は既成の表現とは全く別の手法が追求された。演劇においても古典劇・近代...人生の基盤構築~私の場合(後)