アメノヒボコの自伝 6 朝、目覚めると、そこに妻の姿はなかった・・・ わたしは焦った 妻はどこへ行ったのだ・・・ ‥そういえば・・ 昨日、妻は「祖国に帰ります」とか言ってたな・・・まさか・・・ 私はすぐに従者に命じて、妻を探させた。すぐに報告が上がってきた。しかし、その結果は、わたしを絶望させた・・・ 「お妃さまは、海辺の漁師から小舟を調達し、海原に出ていったということです」 従者からの報告が上がってきた・・・妻は一人で海に・・いったい、妻が言ってた、祖国とはどこなのだ・・・ 「なに、海に・・・それで妻は、どこに行ったのだ!?」 「はい、漁師によれば、日本に向かうとお妃さまは申されていたそうで…
アメノヒボコの自伝 5 赤い玉は娘の姿となり、わたしの妻となった。 娘は素晴らしい妃となった。わたしによく仕え、一切のわがままなど言わず、わたしの言うことは何でも聞いてくれたのだ ・・・しかし・・・ そんな妻と一緒にいるうちに、わたしの心には慢心が生じてしまっていたのだ・・・今考えると、なんであんなことをしたのだろう・・ わたしは従順な妻を前に、なにか些細な気に入らないことがあると、妻に当たるようになってしまった。 酒を飲んで酔っては罵詈雑言を浴びせ・・時には手が出ることもあった・・ ・・それは日々、激しくなっていったのだ・・・私の心の中には、何をしても妻は許してくれる・・いや、それを妻は望ん…
アメノヒボコの自伝 4 男の話が終わったが、わたしは半信半疑だった・・ しかし、この玉は神秘的な光を放っていた・・ただものではないことは確かなようだ・・ わたしは男を許して解放した。男が持っていた赤い玉は王宮に持ち帰ることにした。 持ち帰った玉は、寝床の枕元に置いておいた。真紅のその玉の赤い光を見ていると、不思議に気分が落ち着き、よく眠れるような気がした。 そんなある日のことである。いつものように赤い玉の光に包まれて寝入り、そして目が覚めると・・・ 私の枕元に、見知らぬ一人の若く美しい娘が立っていた! 「なんだ!?そなたは!!」 わたしはびっくりして飛び起きた 娘は落ち着いて、静かに言う 「わ…
アメノヒボコの自伝 3 わたしが捕らえようとしたその男は、懐から赤い玉を取り出した。その真紅の玉は、神々しい光を放っていた。まるで、この世のものではないようだ・・・わたしはその光に魅せられ、あたかも光に誘われ玉の中に引き込まれるような思いだった・・ 「王子様・・・いかがなされました?」 従者の声でふっと我に返った。わたしは男の方を振り返り、聞いた。 「どうしたのだ、この玉は?」 「へえ、それは・・・」 男はその玉を入手した経緯を語り始めた。男の話によると・・・ 新羅国内にアグヌマと呼ばれている沼があった。この沼のそばを男が通りがかったとき、不思議な光景を見たそうだ。 沼のほとりでは、一人の少女…
アメノヒボコの自伝 2 わたしは馬の上から男を呼び止めて言った 「おい、お前、どこに行く?」 「へい、わたくしは今から、田畑で仕事している人たちに弁当を作って届けに行くところでございます」 「お前が引いているその牛はどうしたのだ?」 「これは、生まれてすぐのころにわたくしが譲り受けて、大事に育ててきた牛でございますが・・・」 「黙れ!!」 「へえ・・・?」 「貴様、牛を盗んで来たな!!」 「え・・・滅相もない!この牛は私のものでございます」 「黙れ!!貴様のような貧乏人が、こんな立派な牛を持っているはずがない! おい、この者に縄をかけろ!」 わたしは従者に命じで、その男を捕らえようとした 従者…
アメノヒボコの自伝 1 わたしの名はアメノヒボコ。元は朝鮮、新羅国の王子であった。 しかし今は日本に来て、日本で暮らしている。 わたしが新羅国に居た頃のことであった。 わたしは馬に乗って、領内を見回っていた。都を出て、田舎の方に出てきたときのことである。 その日は暖かい春の日が照っていて、田畑では農民たちが作業に精を出していた。 そしてそんな田畑をすぎて、峠道に差し掛かった時のことである。 通りの向かい側から、牛を引いてくる男に出会ったのだ。 その男・・・来ている衣類からしてみずぼらしく、いかにも貧しい貧農の男といった体であった。 しかし、男が引いている牛はというと、がっしりとした体つきで、毛…
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