神功皇后の自伝 5 夫の天皇の遺体は、殯宮(もがりのみや)に移された。そして、わたしは禊のために日本の国中の犯罪を徹底して取り締まるよう、命令を出した。 何しろ日本の国を治める天皇がこんな形で突然死に至ったのである。国中に穢れがまとわりついているといても過言ではない。 命令は日本の各地で実行された。 生きたまま獣の皮をはいだもの、逆さにして獣の川をはいだもの、田を壊したもの、水路を埋めたもの、神域での放糞、近親相姦、獣姦・・ ありとあらゆる罪の取り締まりが行われた。こうやって日本の国の穢れを払ったのである。 そして、それらの一連の儀式が済んだある夜、再び詞志比宮(かしいのみや)の神庭にわたしと…
神功皇后の自伝 4 夫の天皇が亡くなった・・・わたしが占いをし、神がわたしの身体に降臨している間に・・・ わたしが意識を取り戻し、重臣の建内宿祢(たけうちのすくね)からそれを聞かされた時、驚きとともに言いようのない不安感が襲ってきた・・・ 愛する夫の死・・・それだけでもわたしにとっては耐えがたいことだった・・・しかもその夫は、日本の国を治める天皇なのだ! ああ・・・日本の国はどうなるのだろう・・・ わたしは放心したように座り込んだ・・・涙さえも出なかった・・・何も考えられなかった・・・ その時、建内宿祢がわたしに言った 「オキナガタラシヒメさま・・・心中、お察しいたします。 しかし・・・気を確…
神功皇后の自伝 3 「オキナガタラシヒメさま・・・陛下が・・・天皇陛下が・・・崩御されました!!」 わたしは建内宿祢(たけうちすくね)の言葉に衝撃を受けた! 「え!?・・・タケウチ!それはどういうことです!?」 何しろ夫の天皇は、わたしに神が降臨して気を失うまで、何事もなく神琴を弾いていたのだ! ・・・建内宿祢が語ったところによると・・・ わたしに神が降臨し、わたしが正気を失った後、神はわたしの口を借りて次のように言ったそうだ 「熊襲を攻めても何の得にもならないであろう・・・それより西の国を攻めよ! 西の方には金銀はおろか、目が輝くような数々の珍しい財宝を持つ国がある。 その国を支配下に置くが…
神功皇后の自伝 2 その年、夫の天皇とわたしは、大和から遠く離れた筑紫の詞志比宮に来ていた。先述の通り、朝廷に反乱を起こした熊襲を討つためである。 大和から詞志比宮についたその夜のことである。 その日、臣下の間で不穏な空気が漂っていた。というのは、その日の夜、空に大量の流星が見えていたのである。 ≪画像は写真ACより≫ 流星は古来より不吉の象徴とされている。それがこれだけ大量に流れるということは・・・臣下のものが不安に思うのも無理はない。まさか、熊襲征伐に敗退するようなことがあれば・・・ そこで、夫の天皇は熊襲征伐の成否を占うことにし、わたしに神の降臨を命じた。 実は、わたしは巫女として神を自…
神功皇后の自伝 1 わたしの名前はオキナガタラシヒメ。 父・オキナガスクネと母・カヅラキノタカヌカヒメの間に生まれた。父は第9代開化天皇を祖先に持ち、また母はその祖先をたどると新羅国王のアメノヒホコにたどり着く。 つまりわたしは、日本国天皇と朝鮮国王の両方の血筋を受け継いでいる。 夫はタラシナカツヒコ、今は亡き仲哀天皇である。わたしは夫とともに、朝廷に反乱を起こした熊襲を討伐するために筑紫の詞志比宮(かしいのみや)に来ていたが、そこで夫は亡くなった。 その後はわたしは夫に代わり、皇軍を率いて朝鮮まで遠征に行ったのである。 熊襲征伐に来たはずなのに、なぜ朝鮮への遠征に変わったかというと・・・ 今…
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