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創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「それは是非ともお願い致します」 内田教授は革命の闘士に相応しい鋭い目つきだったが若干の逡巡(しゅんじゅん)を感じた。祐樹は自分のスマホをタップして最愛の人にLINEを送った。「値段を聞いてください」祐樹が「知り合いでもない」杉田弁護士と直接話すわけにはい
祐樹の時はもれなく嫌味がついてくるが。お育ちが良いので感謝の言葉は必ず告げるのが森技官だが、こんなに心の籠った「有難うございました」は聞いたことがないような気がする。「一応呉先生の様子を見てから夕食の買い物に出かけよう」 通話終了のボタンを細く白い指が
細く長い指が優雅な所作で動いて画面を見ている。「ああ、やっぱり森技官だ」 常識的に考えて呉先生の家出先はこのマンションだと推測するだろう。「祐樹、何か言うべきことを思いついたら教えて欲しい」 最愛の人に頼りにされるほど嬉しいことはない。「今は呉先生が私
「当職」というのは弁護士の仕事上の一人称で、裕樹は受け取ったことはないものの弁護士からの内容証明郵便に必ず書いてあるとゲイバー「グレイス」で杉田弁護士から聞いたことがある。多分だけれども、弁護士として強く勧めるという意志を表現したのだろう。 最愛の人は
しかも、その三種類のシートは丁寧に手で切って空になったプラスチックだかの薬包はポケットに入れている。呉先生は繊細そうな見かけとは異なってかなり大雑把な性格をしていることは知っている。祐樹も人のことは言えないが。ただ、普段の呉先生なら飲み終わった空のシー
「呉先生にも相談して動いた方(ほう)が良いと思います。現状維持で充分だと考えていらっしゃるみたいですし、嫌々ポストに就くのも……」 呉先生待望論は精神科で根強いと清水研修医に聞いている。また何時(いつ)になるかも分からないが次期病院長選挙で真殿教授は絶対に最
最高に美味なコーヒーを飲んでいた祐樹は立ち上がって救急箱を取りに行った。「昨夜、お風呂から上がった時…確か午前一時頃に帰宅したんです。その時間に帰宅するのは珍しくないのですが、珍しいことに泥酔していまして、そして抱き着いてきたというか倒れこむようにオレ
「救急救命室(・)の北教授が教授のポストに就いたのは地震大国の日本が発生時にどういった医療体制を想定しているかなどの講演依頼が山のように来たせいで教授でなければ恥ずかしいとの病院長判断です。まあ、杉田師長という救急救命室の鬼とも天使とも言うべき名物師長の存
「いえ、作り置きしていたものです。お口に合えば良いのですが…」 呉先生に向かって「頑張って普段通りです」といった微笑を浮かべているのが愛おしい。次期病院長選挙に備えて病院にいる間は如才ない会話と笑みを浮かべることが出来たようになった最愛の人だがマンション
内田教授は何だか不本意そうな表情だった。「私は救急救命室に行ったことはありませんが、プライバシーが担保されない場所だということは知っています。普段はそれで良いと思いますし、某教授が水商売の女性に貢いでいる程度のウワサの域を出ない会話なら雑談を交わすのも
「その具体的な内容は望まないプレイを強要されたとかですか?例えばSMプレイとか?」 最愛の人にはまるっきり理解出来ないというか知らない愛の行為の形なのでそういうことは耳に入れたくなかった。呉先生は顔どころか耳まで真っ赤になっている。「そんなんじゃないです
「私が出来ることは救急救命室で清水研修医に真殿教授に反発を抱いている医師の名前を聞いてリストアップすることです。これは急務ですね。清水研修医は京都一の私立病院の御曹司だけあって、人を見る目が確かです。今、真殿教授に追従(ついしょう)している医師でも、次期教
呉先生と森技官は「表向き」には広すぎる屋敷や土地を余らせておくのが勿体(もったい)ないために同居人を探して一緒に住んでいることになっている。呉先生の薔薇屋敷がある町は昔から住んでいる人が多い地域のためにご近所付き合いも密接だ。最愛の人と祐樹が住んでいるマ
「教授、わざわざ作って頂き誠に有難うございます。心して頂きますね」 内田教授はカフェオレのカップを恭しい感じで口に運んで一口飲んだ。「どこの店よりも美味しいです!教授があの見事な手技をお持ちでかなったら喫茶店経営を勧めるレベルです!きっと行列が出来る喫茶
「最も芝居っけがあってノリも良い友達五人を誘って『先生の部屋ご馳走パクり計画』を作成しましたよ」 最愛の人は祐樹の横顔を感嘆めいた眼差しで見つめているし、呉先生は後部座席から身を乗り出している。「要するにそれはお刺身とかのお皿をパクって来るという作戦です
「ちなみに真殿教授には愛人が居て、どこかのマンションに囲っているらしいです。だからこそ『男の甲斐性』発言ですが看過する積もりはないです。あれだけ派手に喧嘩を売って来られたのですからきっちり買って差し上げないと無作法というものです」 先ほどの疲労(ひろう)困
「そういえば、救急救命室は忙しい時は息つく暇がないほどですが、暇な時は休憩室でテレビやスマホを見たり、ひたすらゴロゴロしたりしています。そういう時は高校の修学旅行のノリに似ています。ウチの医局の研修医の久米先生が『じゃがりこ』に『とろけるチーズ』を入れて
内田教授にも秘密にしている最愛の人と祐樹の真実の関係は、凱旋帰国を快く思わない人間たちによって斉藤病院長に漏れている。その時、斎藤病院長が出した結論は「誰にも露見しないようにすること」だった。「胸の内にしまっておく」とも言っていた。祐樹も細心の注意を払
「ファミリーレストランも行ってみたいような気が…。ミラノ風ドリアも食べてみたい」 祐樹の記憶が正しければミラノ風ドリアはサイゼリヤだと思う。後で調べておこうと心にメモした。 最愛の人は心臓病のお母様の容態を気にして遊びに行くということもなかったと聞いて
「どうか入室して下さいね。心も身体もお疲れでしょうから」 最愛の人も内田教授と真殿教授の舌戦を聞いていたに違いないが淡々とした声だった。「失礼します。田中先生、お手数をお掛けして申し訳ないですが、私も梅昆布茶をお願いします」 憤然とした表情の余韻を即座
「どうかしましたか?」 高い場所に置いてある本を取るために準備されている脚立に寄りかかって、まあまあ美味しいコーヒーを飲む。最愛の人はカフェオレを唇に運んで満更でもない感じの笑みの小さい花を咲かせていたのできっと彼の中の合格点には達していたのだろう。「そ
「文字通りの粗茶ですので、心の準備をして飲んでくださいね」 一応缶に貼ってある分量とお湯の温度は守ったが、お湯呑みに何cc入るのかが裕樹には分からない。彼ならきっと目分量で正確に計ることが出来るだろうが、あいにく裕樹にそこまでの高等技術はない。祐樹の真剣
「その通りです。ごゆっくりお過ごしください」 二人してカウンターを離れると最愛の人が無垢で無邪気な表情を祐樹に向けてくれた。「ポテトチップスとかのお菓子類や文房具とか爪切りなんかも置いてあった。あれは別料金を支払って買うのだろうな……」 何だか祐樹が学生
教授大好き♡様・しょうこ様・ゆき様いつもいつも、何か有るたびに送って頂いて本当にありがとうございます!!今日届きました。読みに来てくださっているだけでも嬉しいのに差し入れしていただけると作者冥利に尽きます!!また、身内の入院でリアル生活がバタバタしていま
先程の医局の適度の親密さに満ちた雰囲気はとても良い「打ち上げ」だったと思いつつ最愛の人の若干華奢な肩から腰のラインを見詰めた。教授職と一介の医局員という立場なので他人の目のある場所では三歩下がって歩くのが病院内での習慣だ。そのせいで理想的なパランスの肢
「森技官と喧嘩をしたということだけれども……今回は呉先生が家出をしたという点が以前とは異なるので気掛かりだ」 走行する車の助手席に座った最愛の人が憂いを帯びた表情をしているのを横目で見た。「私も同じことを考えていました。一人で悶々(もんもん)と考えてネガテ
「そういえば思い出したのですが、大学の同級生で卒業後は実家の病院を継いだ知り合いが不倫の末に離婚したと噂で聞いたんです。慰謝料は何と驚きの三千万円だそうですよ。養育費は月に二十万円をお子さんが大学、もしくは院を卒業するまで支払うという条件で……」 ……養
「もちろんです。困った時に助け合うのが友達ですから。呉先生は今どこにいらっしゃるのですか?」 どうせ犬も食わない夫婦(?)喧嘩をしただけだろうが、森技官が薔薇屋敷を叩き出されるのがいつものパターンだと聞いているが、その逆は初めてなのが気になった。彼がスマ
祐樹最愛の人は祐樹がゲイバー「グレイス」で男性に口説かれているのを偶然見てしまって、そのショックの余り渡米して外科医としての名声を得た過去がある。その後大学病院から招聘を受けて凱旋帰国したのは医局の皆も知っている事実だ。しかし、実際は職員名簿で祐樹が病
「祐樹、お早う。今日も気持ちの良い朝だな」 朝の身支度を済ませてキッチンに入ると生れたての朝日を浴びた薄紅色の薔薇のような笑みで迎えられた。休日の朝は一際健康な魅惑に富んでいる彼に自然と笑顔になった。「お早うございます。相変わらず美味しそうですね」 テー
「駄目……か?」 細く長い指で輪を作って祐樹の根元から先端部分までを柔らかく締めながら動いている。「いえ、とても嬉しいですし、とても悦(い)いです。聡の花園の中も極上ですけれども、手で愛されるのも、大好きです、よ?」 右手の指の付け根だけ祐樹の舌と唇で愛し
三好看護師がおずおずといった感じで長岡先生と視線を合わせている。先ほどから看護師が入って来ては、主治医の元に行って一言二言言葉を交わした後にそそくさと医局を後にしているのも見て来たが。いくら打ち上げ会の最中(さいちゅう)とはいえ、病棟は普段通りに動いてい
「祐樹の熱い迸りを載せた頬……何だか愛の交歓の余韻という感じで良いな……。それに、二人で夢中で愛し合ったせいか、身体が熱い……。かまくら(・・・・)の外に顔を出して風に当たっても良いか?」 愛の交歓の後の彼の肢体は甘く香っている。しかも行為の痕がそこかしこ
ただ、医局の懇親とそして不倫は駄目だということに釘を刺そうというのが祐樹の密かな目的だった。黒木准教授に限って主題とは異なる話をしないだろうけれども、乾杯の音頭を取ってもらわないと困る。尤も乾杯といってもコーヒーなのは院内禁酒だから仕方ない。「黒木准教
「黒木准教授お疲れ様です」 最愛の人が会釈した後に挨拶をしている。旧態依然のヒエラルキーがまかり通っている大学病院では、いかに年上だったとしても教授職が准教授に「ご苦労様」と言うのが「常識」だと聞いているが、祐樹最愛の人は丁寧な口調で「お疲れ様」と言って
薄紅色の双丘の間を広げると紅く熟れた花園の門が、咲かせてもらうのを待っている花のように期待に震えているのも最高の眺めだった。祐樹の熱く滾った切っ先でツンツンと突く。待ち構えていたとしてもやはり準備は必要だろうから。「あ……っ、ゆ……祐樹……っ欲し……っ
何となく言いたいことは分かった。雄弁な眼差しが期待に煌めいていたし。「この中で愛の交歓をお望みですか?」 澄んだ瞳の光も紅色に艶めいている。「駄目、か?充分暖かいし、行為をすれば肌の温かみも加わるので凍傷にはならないだろう?」 艶めいた眼差しが揺れてい
きっと責任者の内田教授か長尾准教授が指示しているだろう。今回は協力者の立場で内田教授と同席したが、大学病院の不文律である内政不干渉が基本だ。だから責任者である教授が「これはウチの医局のことですから」と言い張った場合、嘴(くちばし)を突っ込むことは出来ない
彼は心の底から驚いた感じで切れ長の目を瞠っている。「祐樹に嫉妬されるなんてとても嬉しいな。愛されているのは充分に分かっているけれども、嫉妬の感情と祐樹が結びつかないので……」 それは最愛の人が一途(いちず)に祐樹を愛してくれて、他の男性に一切の、そして微
スマホの画面を細く長い指でスクロールしていた彼は自室ではなくてエレベーターホールへと優雅に歩みを進めている。責任説明、いや彼が当事者でもないし、上司でもないので説明は不要のような気もする。香川外科の医局員が不倫の当事者でもなかったので説明責任は内田教授
「それはおじ(・・)や(・)だな。雑炊は水洗いしたお米を使うので」 器用かつ慣れた仕草で卵を割り入れながら最愛の人が教えてくれる。「そうなのですね。また雑学(トリビア)が増えました。有難うございます」 薄紅色の指でお鍋に蓋をしている人に笑いかけた。「そうそう、
「そうです。それ以降は……ウワサとしてご存知でしょうが……アメリカ時代に貯めたお金のことで弁護士視点に立って……アドバイスを頂いています。顧問料と言いましても……対企業だと莫大なお金が必要らしいのですが、個人の場合それほど必要はないのです」 少しぎこちな
「そうですね。香川教授の仰る通りです。後の祭りにしないための方針として、先に院内LANでのお詫びの文書を載せてしまえば、病院長の隠蔽(いんぺい)も効果がなくなります。柳田先生と山看護師の仕出かしたことはW不倫で言い訳の余地はないです。そして杉田弁護士とその
「専門家ではないので、貴方が気に病むことではないと思いますよ?」 滑らかな肌に眉を寄せて考えている彼にフォローした。「そうだな……ただ、レシピをざっと思い返してみたのだけれども、干した椎茸(しいたけ)を出汁にする件については多数有った。しかし生の方(ほう)は
「これは昔の銭湯で入浴後に飲む定番だったみたいですよ」 フルーツ牛乳を二つ買って一つを最愛の人に手渡した。「そうなのか?私は見慣れないが……」 最愛の人は何の変哲もないオレンジ色と乳白色の混ざった瓶を興味深そうに眺めている。「私もこうして実物を見るのは初
思わぜぶりに咳払いをしてから口を開いた。「柳田さんが杉田弁護士で、山さんは杉田弁護士が紹介する弁護士ということになりました」 きっと杉田弁護士も内心「優良顧客ゲット」とか思っているだろう、横顔はごくごく誠実な表情だが。「分かりました。謝罪とある程度の経
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「祐樹……、この二人だけの愛の空間……。本当にこの屋上が最も高いのだな……。祐樹の高校の屋上もこんな感じだったのか?」 キスの合間に紡がれた、艶やかな中にも無垢さを含んだ言葉が紡がれている。最愛の人の高校時代も教室から出ることもなく読書をしているか、定期
いつもご覧いただきありがとうございます。これまでブログの更新はパソコンで行っていたため、スマホでの表示について深く意識していませんでした。ところが先日、珍しくスマホから自分のブログを見てみたところ、うっかり広告をタップしてしまい、まったく興味のない外部
「あ!オレ、いや私までも真殿教授は、とても不本意そうな顔で、『なぜFacebookをしないのか』と言ってきたことがあります。まだ医局にいた頃です。大喧嘩をする前も一触即発といった感じが漂っていたのですが、それでも誘ってくるのですから、イエスマンばかりの医局員は皆F
「――先に答えを言ってしまったら、興が削がれるでしょう?」 最愛の人の薄紅色の唇を祐樹の唇で封印した。そしてサマーセーターを着ていても先ほどピーチフィズを零したせいで可憐に尖った胸を指先で弾いた。愛の交歓の前奏曲としてはちょうどいいだろう。このエレベータ
そういえば、最愛の人も祐樹も「心臓外科」の医師一覧に載っているが、同じような「理知的で誠実な、そして控え目な笑みを浮かべてください」と広報室の人に言われた記憶がある。だからきっと同じ指示が医師全員に行き渡っているのだろう。「私が特定不可能な以上、森技官
確かにその通りだろうなと思った。脳外科のアクアマリン姫こと岡田看護師と付き合ったことで、久米先生はゲームという二次元から普通の恋愛にシフトしていて、以前ほどのめり込んではいない。しかし、顔は清楚なのに胸が異様に大きい美少女のセーラー服を一枚一枚脱がして
「別に私はガンジーのような非暴力主義者ではない。祐樹が久米先生の頭を叩いているのを見た時、その行為を彼自身が喜んでいると判断したので、敢えて干渉しようとは思わなかった。医局員全員も、あれは『愛のあるイジり』だと理解していると柏木先生が言っていた」 柏木先
「ウチの病院のサイトに、精神科所属の医師の顔写真は載っていましたっけ?」 最愛の人が淡い笑みを浮かべて頷いている。誰が聞いているかも分からない職員用の食堂で呉先生を揶揄する医師二人は、たとえ親真殿派ではなくても呉「教授」に反対するはずだ。 二人で暮らして
うっかり布地越しとはいえ、胸の尖りを晒してしまった最愛の人のリアクションも非常に気になった。そういう情事に触れられると、普段の最愛の人は顔を紅色に染めて目を伏せていた。しかし今夜はそうではなかったので内心、意外だった。 祐樹と二人きりの時には、大輪の紅
特筆すべきは最愛の人の麗しい筆跡のみで、祐樹には縁のない名前の羅列に過ぎない。森技官が、あたかも国家機密のように大切に抱えていたその紙を、祐樹はテーブルに広げ、何の演出もなくスマホで撮影し、LINEで清水研修医に送信した。一応「極秘でお願いします」とだ
「また始まった」 呉先生がぼそりと漏らした。諦めと愛情が絶妙なバランスで同居した、乾いた呟きだった。しかし、それ以上何かを言うことなく、呉先生は無言で森技官に視線を向けていた。祐樹もつられて視線を向ける。 森技官が言う「備考欄」には、最愛の人の達筆が静か
最愛の人はどこか誇らしげなセピア色の口調とまなざしだった。杉田弁護士は極上の生クリームを心行くまで舐めたチェシャ猫のような表情だ。何しろ祐樹に「香川教授が今『グレイス』に来ていて、多数の男たちから奢られている」と知らせてくれたのは彼だった。「グレイス」
四個の洋菓子は既に食べてしまっている。呉先生は最愛の人よりも華奢な身体なのにどこに収まったのだろうか?まあ、洋菓子効果で呉先生の決意がさらに固まったなら祐樹としては喜ばしいのでスルーしよう。「――新しいかどうかまでは分からないですよ。ただ、その看護師が
最愛の人も男性器は見慣れているはずだ。といっても大学の講義の一環や医学部生の時にボランティアとして参加していた救急救命室での経験に限られていただろう。身体を重ねた相手は祐樹が二人目で祐樹のソレはともかく初めての相手のはそうまじまじと見ていないような気が
「教授教えて下さって有難うございます。あ!お前が軽躁の入り口に立っているかと思った。本気大道芸だったからな、あれはさ」 森技官は一瞬だけアルマーニがこよなく似合う肩を落とした。恋人の言葉は妙に効くらしい。祐樹に言われたなら、きっと三倍返しで皮肉を返してい
最愛の人の怜悧な声は相変わらず淡々としていて、まるで「地球は丸いのです」という自明すぎることを話しているようだった。その静謐な口調が胸の奥に染み入り、祐樹の心は、まるで水面に沈んでいく光の粒のように最愛の人の言葉に全て吸い込まれていく気がした。ただ、二
最愛の人は固まり、呉先生は呆れ果てたスミレの花といった感じで単に咲いている。祐樹は身体を動かすと笑いの発作が再発しそうで、身じろぎすら出来なかった。 精神的には一時間、実際には五分くらいだろうか?ナゾの空白の時間だけが、ただ過ぎていった。 最愛の人がし
ナツキは一瞬だけスマホに目を落とした。多分、両親の待つ家に帰ろうかと思ったのだろう。しかし、今の祐樹は「グレイス」の常連ではない。 今宵訪れたのは最愛の人とのデートの一環で、こんなに長居をするつもりもなかった。最愛の人も祐樹に誘われたから足を運んだだけ
祐樹が洗面所で顔を拭きながら深呼吸を一つ二つと行い、ようやく笑いの発作を収めてキッチンに戻った瞬間、祐樹は一瞬、時空が歪んだのかと思った。 テレビの中でしか見たことのないはずの――学生運動、アジ演説、安田講堂の熱狂。それなのにそこに居たのは、アルマーニ
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託
「ウチの田中」と呼んでくれたのはとても嬉しいし何だか新鮮な感じだった。しかも所有権を主張されたような気がする。しかも「出来なくはない」とゴール医師に言っている。「大学病院長兼医学部長の斎藤に貴方の上司から正式な要請のメールか手紙を出して下さるようにお願
「特に不思議に思ったことはないですね。強いて言えば、刃(やいば)の色が初めて握った剣士によって変わるという点でしょうか?『呼吸』の適性が分かるという刀の色は、最終選別を突破して分かるモノですよね。例えば主人公は『水の呼吸』の修行をしていても『滅多に見ない』
「店舗を構えているとなると人件費の問題が出てくるだろう?窓口の女性や営業の人など一店舗で10人以上を配置しなくてはならない。それにオフィスビルの家賃とか光熱費その他諸経費を考えるとそれらを手数料で賄わなければならなくなる」 なるほどと思ってしまう。「最近
「そうなのか?それは少し興味があるな」 若干弾んだ声と艶やかな眼差しが夜の空気に煌めいている。ポケットからスマホを出して検索した。「この旅館ですね」 施設案内という部分をタップした。「本当だ……確かに似ているな」 彼は祐樹との距離を詰めて来てくれるのがと
「麻酔医自身がクローズアップされることだろうか。森さんが日本で面白い催し物を開催予定しているらしいな。田中先生もこうして皆に祝福されたら外科医をしていて良かったとしみじみと思うだろう?麻酔医だって同じだと思う。そういう意味で、日本の催し物で外科医が脇役、
「プラチナや金(ゴールド)は今高価らしいですよね。柏木先生の奥さんが千切れたネックレスとか片方だけになったピアスをリサイクルショップに持って行ったら驚きの価格で買い取ってくれたとホクホクしていましたよ」 柏木看護師は手術室のナースなので手術(オペ)後に雑談す
「仙台結界(コロニー)と言っても、一般人には黒い壁としか認識出来ない物だろう?行ってもいいけれども呪いが見えない私達には単なる道路だろう」 月明かりに照らされた最愛の人の顔は苦い笑みを浮かべている。この人がこういう表情を浮かべるのは珍しいので心の中のシャッ
最愛の人は手術(オペ)を一日二件こなしている上に医局の責任者としての事務仕事を完璧にこなしている。有能な秘書が居るのは確かだが、事務処理能力は祐樹が知る限り最も優れている。森技官の無茶振りで不本意ながら捜査だか調査を二人して頼まれた時に彼の文書作成能力に
「そうなのですか。それは何故ですか?そんなにモルガンスタンレー銀行にお金が有ったら心強いと思いますが?」 思わず背筋を伸ばして彼の複雑そうな表情をまじまじと見詰めた。恋人同士の甘い時間はホテルの客室で過ごすことにして、このバーでは病院関係者の資産運用の話
弁護士の必要性は皆無なような気がするのだけれどもどうもそう単純なモノでもなさそうな表情を最愛の人は浮かべている。「祐樹の場合だと……家で二人きりの時には何の問題も生じないだろうな。いや、嬉しそうな表情で出勤して医局で正直に言った場合は異なるかもしれない
最愛の人は滑らかな白い肌に睫毛の影が綺麗なコントラストを作っている。夜に咲き誇る薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながら祐樹の話を興味深そうに聞いてくれているのも愛おしさが募る。「高価なお酒が呑み放題というのに釣られてしまっていてモトを絶対に取ってやる!
「保険って契約するもので作るものではないと思っていました。ただ、今まで全く気付かなかったのですが、保険商品が山のようにありますから作っている人も居るのでしょうけれども、ね?」 話しを促してみた。「日本人の平均寿命が年々延びているだろう?厚労省や色々な研究
「流石は祐樹のお母さまらしい用心だな。それはともかく若者よりも高齢者の方(ほう)が現金を持っている確率は高い。しかも老後のことを考えてあまり出費はしない傾向にある。例外は子や孫で、それに対して援助しやすいようにと税額が変わるのだ」 すとんと腑に落ちた気がし
「え?どういうことだ……?高専を卒業して第一線で働くことが出来るかという祐樹の質問なのだろうか……」 隣に座った彼は明眸(めいぼう)皓歯(こうし)のお手本のような、瞠った目と和洋折衷菓子を白い歯で挟んで切っている。それはそれで目の保養になっているのだけれど怪
杉田弁護士という知り合いは居るが税理士の知己はいない。確定申告はさして難しいモノではないので専門家に頼まずに自分で確定申告をしている祐樹には税理士の知り合いはいない。 「太陽のたまご」というらしいマンゴーを銀のフォークを使って優雅な動作で魅惑的な微笑み
最愛の人は計ったように二等分、しかもナイフとか正式名称は祐樹も生憎知らないが和菓子の時に使う木の小さなナイフめいた物を使ったかのように切ってあった。スマホのライトに照らされて、皮部分と中央の生クリームと思しき物に挟まれた鮮やかな緑色の色は真珠の中に翡翠
「麻酔医の大切さは良く知っていました。アメリカ時代は当たり前の一手術に一人の麻酔医だったのですが、日本ではそうでないと聞いていたので……私は日本の大学病院に招聘された身の上です。ですから多少の我が儘が効いて専属の麻酔医を指名出来たのですが、あくまで少数派
ポケットを探ると直ぐに手に当たったスマホを取り出してライトをオンにした。パッと明るくなって最愛の人のやや紅色の頬や楽しそうな煌めきを宿す澄んだ眼差しがとても綺麗だ。「こちらが『ずんだ生クリーム味』ですね。ああ、先にペットボトルのお茶の蓋(ふた)を外してお
オレンジ色に煌めくマンゴーをナイフとフォークを優雅に動かして薄紅色の花のような唇に運んでいる最愛の人の煌めく微笑を浮かべている。「投資信託も売り出している会社によって異なるけれども一週間後くらいには現金で出金出来るシステムだ。株式も売却申し込みをして約