「香川教授や田中先生が、私の同席している今この時とばかりに、この話題をなさった理由が理解出来ました。要するに他国立大学の医局内クーデターの成功例が知りたいというお考えですね」 まさに目から鼻に抜けるというお手本のようだった。ただ恰好は、頭にかぶったコンビ
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「私も離婚します!!もう、女の影に怯える結婚生活にはウンザリですから!!しかし、弁護士の知り合いはあいにく居ないのです!!杉田先生に依頼することは可能でしょうか?」 必死な声と表情だった。「そんな!私も是非先生にお願いしたいです!!丸投げに最も適した先生
「ただ、東日本大震災の時の急落は、被災者の方(かた)が当座の現金欲しさに保有していた株式を売却して生活資金とか避難先を確保するために使ったという側面もある。しかし、その当時の日経平均株価は幾らだったと思う?」 そんなことを聞かれても祐樹は全く分からない。今
「山さんはトラウマになりそうな画像は直視しないことを強くお勧めします。鬱状態になって不眠や食欲減退などの症状が出る可能性はかなり高そうです。そうなった場合にはお仕事に障りますよ?もちろん私が責任を持ってカウンセリングや投薬をしますが、そうならない方(ほう)
しかも、外国人に「The温泉」とでもアピールしたいのだろう。雪の程よく積もった岩々で露天風呂を分断しているし面積も広いのでグループ毎に固まっていて二人に注意を払っている人はいなかった。国際公開手術のせいで親しくなった外国の人はお湯に肩まで漬かるという風
「お水を飲めば少しはご気分も良くなります。胃の辺りを押さえていらっしゃいましたが痛みなどの異常は有りますか?」 蓋を優雅な仕草で取って彼女に渡している。「香川教授にまでこのような取り乱した姿を見せてしまい誠に申し訳ありません。一瞬ズキっとした痛みは有りま
きっと「健全」路線に軌道修正したいのだろう。祐樹にとってもその方(ほう)が有難いが。「大正時代の入浴事情は良く知りませんが、あの妹は鬼にされて以降精神年齢が低くなっていますよね。『無限列車』では鬼の血(けっ)鬼術(きじゅつ)で主人公達の意識全体が己(おのれ)の
「更に生々しいモノがあるのですよね?そのう……不貞行為の現場がはっきりと映っている物が?」 柳田夫人は卓上に置かれている飲み物を一口飲んだ後に覚悟を決めたという表情で言い募っている。「有りますが……。ご覧になるのは、かなり勇気が必要かと……」 内田教授の
元旦を特別な場所で過ごそうという人たちも多いのか他の客も20人は居る露天風呂だったが、広さがかなりあるのでグループごとに点々としている。そういえば最愛の人が祐樹のためにピアノを演奏してくれたホテルも「ホテルで迎えるハッピーニューイヤー」と銘打ったイベン
「『鬼退治アニメ』では原作漫画と異なって主人公の妹が太陽を克服するまで歌が挿入されたり回想シーンが挟まったりしたので、日光に焼けて塵(ちり)になって消滅してしまうのかとドキドキしたな。兄妹も両親もいない私としてはあの漫画でそういう愛情を学んでいる、な」 祐
「精神科助手の呉と申します。今から内田・香川両教授から詳しい説明をお受けになると思いますが、精神的なダメージを伴う危険性を考えて香川教授の要請を受けて同席致します。精神やお身体に変調を来(きた)した時には遠慮なく仰って下さい」 親身な笑みと言葉だったが柳田
「この辺りは気流が読み易(やす)いらしいです。詳しいことは分からないのですが。だから大阪からヘリコプターでやって来るお客さんを見込んでいるらしいですよ。貴方もご存知かも知れませんが、カジノは富裕層の遊びといった側面と、一山(ひとやま)当(あ)てた人がハイテンシ
落ち着かない気持ちといっても最愛の人が謝罪するのを見たくないという要素がかなり大きい。尤も彼の落ち度は長岡先生の鍵をある意味野放しにしていたことだけなので監督責任は内田教授に比べるとかなり低いだろう。祐樹はお通夜に行った時のようにしめやか(・・・・)な(・
「具体的にそういう薬かどうかは内田教授が後で確かめて下さい。薬事法違反の可能性は有りますが、無許可販売の方(ほう)が罪も重いので購入者は見逃されることが多いのが実情です。それよりも、不貞行為が少なくとも三か月は継続していると見做される会話が続いていることの
最愛の人の晴れやかな笑顔を見ると祐樹の心が春風に吹かれたように温かくなる。「そうだな。それはとても楽しみだ!ココアにマシュマロを入れて溶かして飲むというのは時々するのだけれども、焼いて食べたことはないので、どんな味なのだろう!?かまくら(・・・・)の中で
「本当にここだけの話でお願いします。最悪の場合、このバッチを外さなければならないほどのことですので。香川教授や田中先生のことは信頼していますが、内田教授や長尾准教授そして呉先生はそこまでの関係性を築いてはいないのも事実です」 杉田弁護士は祐樹がかつて見た
「今日の宿はここです」 車を停めると助手席の最愛の人は一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべた。和洋折衷の割と豪華な旅館だが、この程度の宿には泊まり慣れているので「形の残らない贈り物」という今回の趣旨に反しているのではないかと思っているのだろう。そういうネガティ
言うまでもなく、人間に対しては「交尾」という言葉は使わない。内田教授は柳田先生の供述が上手くいかなかったことにご立腹のようだった。山看護師を事情聴取した最愛の人も全く意味不明の答えを返していたが、彼は外科医としても人間としても気が長いタイプなのでそこま
「有名な登山家のエッセーを読んだのだのだけれども、指などの身体の末端部分が凍ってしまって指がない人が大多数だと」 え?と思った。何を見ても平気な祐樹だが最愛の人が壊死(?)だか何かで彼の黄金の指が欠損してしまうのは耐えられない。祐樹は救急救命室勤務で色々
「先生のご厚意は非常に感謝しています。そんな時に勝手を申して本当に申し訳ないのですが……」 内田教授は外科医ではないからなのか、それとも本当にはっきり言うことに躊躇(ちゅうちょ)があるのかの二択、もしくは両方だろう。外科医なら単刀直入に切り出すに違いないが
恵まれない生育環境で育った彼はたこ焼きや綿あめなどの屋台系ジャンクフードも大好きだ。「まだ駄目です。もう少し経ってからでないと大変ですよ」 人がいないとはいえ公共の場で最愛の人に祐樹が食べさせる機会はそうそうあるわけではないが、たこ焼きは要注意だ。「何
内田教授が憤怒(ふんぬ)の形相で立っていた。確か不動明王像だったと記憶しているが、その像を彷彿とさせる。温厚そのものの内科医という顔と革命の闘士としての顔を持っているのは知っていたが、こんな一面があるとは思わなかった。まあ、医局員が不倫騒動、しかも勤務時
「貴方がカレー味を選ぶのは新鮮ですね」 と言っても料理の得意な彼は自宅でカップ麺を食べることはない。そして職場では患者さんからの差し入れがない日には教授職用に準備された定食を食べていると聞いている。だからカップ麺自体を食べるのは珍しいのだが。「そうか?外
「山看護師は物事を深く考えない人だと思います。ですから誕生日の元号かなと思いました」 書類を持った呉先生が成る程といった感じで頷いている。「令和はまだ一桁ですけど、今だったら06とか上に0を付けますよね。ま、年齢的に言って元号が二桁なのは間違いないですけ
「店に入れば暖房も効いていると思いますのでコートをはだけるとかマフラーを取るといった対応をなさって下さいね。私はあそこにあるトイレに行ってきます」 言わずもがなの注意をして「お手洗い」と達筆で書かれた場所へと向かって歩みを進めた。と言ってもトイレには差し
「そうだな、大好きな『午後の紅茶』だが隣に祐樹が居て、しかも窓の外は積もった雪を見ながら飲むとより一層美味しい」 ペットボトルを傾けたついでに顔を上げたせいで滑らかな喉がくっきり見えた。嚥下する喉の動きは視線が釘付けになるほど魅惑的だった。最愛の人を横に
「これは山看護師の物です。脱衣篭(かご)に『うっかり』置き忘れていましたのよ」 長岡先生の口調と誇らしげな様子からして「うっかり」ではないのだろう。長岡先生はセレブなお友達も多い。小学校から高校まで慶応だし、大学は高校の担任から「成績は問題ないがその不器用
「頂きます」 左手を出すと白い指が何の変哲もない緑のプラスチック瓶を振ってくれた。細くしなやかな指のせいかエメラルドで出来た瓶のように見えるのも愛する者の贔屓目(ひいきめ)かも知れない。「こんなに雪が積もっているのを見たのは初めてだ……」 錠剤のようにも見
「この文書、読ませてもらって良いかね?」 画像ではなくて文書なのか?と不審に思った。杉田弁護士が真剣そうな表情を浮かべている。といっても普段の飄々とした雰囲気も持ち合わせているのであくまで比較の問題だが、祐樹の主観では。杉田弁護士の今の表情は患者さんやそ
「これで全部です。Cでも逆上して不倫した夫や妻に殴りかかろうとするリスクはありますが……」 呉先生は一仕事終わったという笑みを浮かべている。「不倫した妻でも殴ったら慰謝料を取ることが出来なくなるからね。その点は注意して欲しい。私も当然止めるが、同席する人
黒木准教授は朴訥で温和な性格そのままの容姿だし、年のせいで若干お腹も出ている。准教授まで出世を果たしたのだから、院内政治力が優れているだろうし、医局員のほとんどがそうであるように実家が裕福だと漠然と思っていた、特に研修医の頃は。しかし、実際に話すように
呉先生はそういう配偶者に「見せてはならないもの」を分別(ぶんべつ)しているのだろうが、AとBの区別は素人目では分からなかったが、専門医に任せよう。きっと呉先生なりの専門知識で選んでいるのだから。「香川教授、内田教授と配偶者に会うのだろう?その時には代理人
何しろサンタクロースが持っているような大きさの袋を花束のように抱えている。そしてその顔は無邪気で無垢な笑みを浮かべていて、とても綺麗だった。「その麻袋みたいな袋の中は、ドライブのお供ですか?」 彼が愛用しているフランスの老舗ブランドのカバンを買ったら付
「庶民的なお店ですよ?いやしくも教授職にいらっしゃる貴方にはそれなりの恰好でいて下さらないと困ります。スーツも今のブランドで良いです!というより今のブランドを死守してください!教授が量販店で売っているスーツを着ていたら医局員はそれ以下の物しか着ることが出
杉田弁護士も離婚問題を扱っているので証拠としてこういうモノも見慣れているに違いないのに驚いたような表情を浮かべている。「これはこれは、証拠としては完璧だね。動画と音声データも有るんだろう?」 彼がごくごく平静な表情で頷いている。呉先生もだが、最愛の人は
「例えば、京都に来ている政府要人とか国賓などが狙撃されるなどの重傷を負って一刻を争う事態の場合にウチの病院に搬送が間に合わないということにでもなれば事務局長も考えを改めるのではないか?」 絶妙に柔らかいお餅が出汁と絡み合ってとても美味しい。「ああ!なるほ
「呉先生の不定愁訴外来は予約制なのです。学会に出席するためとかで休診も有りますよね?また、的外れかも知れませんが先生の事務所に相談に来る人って勤め帰りとかが多そうですけれど?それにアポイントメントを取ってから来るのが一般的ではないでしょうか?」 世界一美
「祐樹、おはよう」 唇に味見をしていたと思しき塩味と出汁(だし)の香りのする唇が重なったなと思った瞬間に深い眠りから一気に覚醒した。「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」 親しき中にも礼儀ありだと思って挨拶をした。 「祐樹、明けまして
その向かいに腰かけている祐樹の前には薫り高いホットコーヒーが、そしてその隣に座っている呉先生にはアイスコーヒーを手際よく並べている。「さてと……」 冷コーなるモノを一口飲んだ杉田弁護士は居住まいを正した。「話を戻すが、精神科医としてのご意見を是非お伺い
明けましておめでとうございます。旧年中は拙ブログに遊びに来て頂いて、そしてコメントやポチまで下さって有難うございました。コメント返せないのですが、とてもとても励みになっています!!色々差し入れをしてくださった方も本当に本当に有難く思っています。今年も出来
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「香川教授や田中先生が、私の同席している今この時とばかりに、この話題をなさった理由が理解出来ました。要するに他国立大学の医局内クーデターの成功例が知りたいというお考えですね」 まさに目から鼻に抜けるというお手本のようだった。ただ恰好は、頭にかぶったコンビ
彼の長い睫毛が微かに揺れ、頬に一刷毛朱を加えたようになった。その唇は、押しとどめることなく微笑が咲いていた。祐樹の言葉を反芻するように目を伏せたその横顔には、誇らしさと愛おしさ、そして甘やかな驚きが入り混じっている。ああ、こんなにも素直に喜んでくれるの
「僕もさ、もうちょっと…ちゃんと腕、磨こうかなって…。あ、誤解しないで欲しいんだけどさ、別に張り合おうとかじゃないからね?」 言い訳めいた言葉にどこか照れがにじむ。けれどそれは真っすぐな気持ちの裏返しのような気がした。祐樹は、言葉にせず、ただ頷いた。祐樹
「本意のズレですか。私は何も明日教授のポストに就けとは言っていませんよね。実際問題としても不可能です」 怜悧で理知的な声が諭すような静けさがあった。「いっそのこと、真殿教授の常備薬にジゴキシンを混ぜるというのは如何でしょう?」 森技官が水を得た魚のような
ナツキの問いに、祐樹の胸が微かに疼いた。ナツキ自身もまた、この社会における少数派としての不安を抱えているはずなのに、そしてまだ専門学校に通っている年齢にも関わらず――彼はまず、最愛の人と祐樹を気遣ってくれた。 隣に座っている最愛の人はグラスを静かに置い
「弥助問題が顕在化した時に、ネット上では人々が細かい情報まで掘り起こしては、次々に共有し合っていたらしい。弥助の記述をしたのは『tottori tom』Facebookに『鳥取在住』と顔写真と共に載っていた。例の日大の准教授の名前はトーマス。Wikipediaの自己紹介欄
森技官は不格好な兜(かぶと)のような氷嚢(ひょうのう)も、頬に貼った冷えピタも何だか激戦場で怪我を負いながらも勝利した武将のように祐樹には見えるから不思議だ。 もしかしたら呉教授を最も待望していたのは祐樹たちではなく森技官かも知れない。「厚労省に言いたいこ
彼の言う通り例えば呉先生のような、血液や内臓が生理的に無理で、視覚・嗅覚でそれらを捉えると嘔吐してしまうような外科医は不要だ。尤も呉先生はそのことをきちんと自覚しているので、嘔吐を催すような場所には絶対足を踏み入れない。「男女の差は関係あるかね?」 杉
日大は大学の名前だろうし、タックルは見たままの行動だろうけれども、二つの単語が重なると意味が分からない。「『黒人侍が存在した』と主張したのは日本大学の准教授なのだ。歴史学ではなく法学が専攻分野で、しかもイギリス人だ。そして、彼は奴隷制度が日本でも一般的
「そうですね。少し話は逸れますが、私も救急救命室の凪の時間にスマホでYouTubeを見ることもあって。その広告に『東大病院の医師が勧めるぽっこりお腹をすっきりさせる薬を、この動画が流れている間に注文してください。なお、この動画は一回きりしか流れません』と
「医師や看護師などがストライキ権を行使――医師だって労働者なのでストライキをする権利はありますよ。しかし、監督省庁としてはあってはならないことです。病院だけでなく警察や消防もストライキを起こしたら、国民の不満が爆発しますよね。もしも、警察官のストライキは
救急救命室でトドのように横たわってスマホの画面を凝視している久米先生は「葵ちゃん、次はセーラー服を脱ごうか?」と、一人でほざきながらクレカの番号(?)だかを入力していた。「なんで、リボンだけなんだよ――!!??」大声を出して仮眠室ではなく休憩室で寝てい
「医師会長の陳情を厚労大臣や厚労省もむげに出来ないのですよね?」 医師会は開業医が所属する団体だ。最愛の人や祐樹は大学病院勤務なので入会資格はない。何しろ医師は影響力が大きいのでその団体の長となれば大臣を次の落選させることも理論上は可能だ。「それはもう。
「もともと『いろは歌』には不思議な点がたくさんあって、誰が作ったのかも分かっていない。空海が作ったとされていたが、空海の時代には使われていなかった文字も含まれている点から否定されている。しかし、空海は聖徳太子同様に神格化された人物だろう。真言宗の熱心な信
「そっか…僕の人を見る目が足りてなかったとばっかり思ってたんだけど、『密室ノワール』がそういう店だったんだ…。もう絶対に行かない!杉田先生有難う」 ナツキは忌まわしい思い出を頭から出そうとでも思ったのかぶんぶんと頭を振っている。「この店だったら、大体の客
「確かに不平等ですよね。社保や国保に加入している人にはジェネリック医薬品を強く勧めながら、生活保護受給者には無条件に先発医薬品を出しますよね?先発医薬品の方が値段も高いのは言うまでもないです。何しろ薬の開発にも莫大なお金が必要でしょうし、特許も保持してい
「ただ、誰もが本当のことを語るとは限らない」 最愛の人は、淡い灯を帯びたままの瞳をゆるやかに伏せた。「祐樹が言った通り江戸時代に幕府を批判するというのは、死を選ぶのに等しい行為だった。だからこそ、真実は物語の衣を幾重にも纏い、仮名や仮託という形式の陰に隠
「そうか、とても勉強になったよ」 杉田弁護士とナツキの話を聞いていた最愛の人が腕を上げた。会話に参加したいとの意思表示だろうが、羽のように軽やかで、静謐な意思だけがそこに宿っているようだった。「ナツキさんにお伺いしたいのですが、そのう…フツメン同士の同性
「いえ、俺が調子に乗りすぎたのがいけなかったのです。辞書通りに説明すれば、彼もこんな感情的にはならなかったと。姉にはこの人も手ひどい言葉を投げつけられたことがあって」 森技官が戸惑いを見せ、遠慮がちな口調になるのも初めてだった。いつもは腹の据わった確信を
「もちろんです。貴方との会話は脳を刺激して心地よくしてくださいます。聡との素肌の交わりとは異なった悦楽です。両方私にとってはなくてはならないものなのです」 陶器を彷彿とさせる肌に怜悧でいながらもどこか艶っぽい絵が描かれたような風情だった。「先ほど祐樹が寺
頭を下げてもコナーズ先生がその価値を見出していなかった場合は徒労に終わる。けれども話の流れでそうはならない気がしていた。 海外の学会に講師として招待されるレベルに達しているのは救急救命室の北教授しか今の大学病院に存在しない。救急救命室の采配をしなければ
何だっただろう?危機(リスク)回避(ヘッジ)というからには資産運用関係だろうと思うのだけれども……。きっと脳が一時的に忘れてしまっているだけなので、この際、今日あったことを話していけば思い出すだろう。「そういえばウチの医局の三好看護師がNISAについて詳し
副会長のコナーズ先生に身元保証を頼んだのは最愛の人自身の判断だろうが、それなりに親しかったのだろう。 と言っても、祐樹は世界レベルの医師の世界をほとんど知らない。この国際公開手術に成功するまでは一介の大学病院勤務の医師だ。 最愛の人はアメリカ時代にその
「タワーマンションが好きな人を否定する積りはなかったのだけれども……。 私の場合、祐樹と明石海峡大橋が眼前に見えるホテルに泊まったりこのホテルのクラブラウンジや部屋から大阪城を見下ろしたりするのは好きだ……。ただ、そういう特別で格別な景色は特別な日だけで
コナーズ先生は暗い顔をしている。やはり含むところがあるのかも知れない。「田中先生ここだけの話なのだけれどもね……」 深刻そうな表情で祐樹を仮設っぽい応接室スペースに誘った。 ステッキを見て英国貴族のようだと思っていたが、コナーズ先生は途中の机に置いてあ
祐樹が内心を「ある意味」偽って、いや優しい嘘かもしれない表情を、煌めく眼差しで見つめている最愛の人は見透かせなかったようで安心した。 容姿端麗、しかも祐樹好みの大輪の花のような風情だ。そして祐樹の知る限り最高に頭脳明晰な人なのだけれども、想像力に欠ける
グリフォンさんやミズ・パラダイスだけでなくその場に居た皆が直立不動で立っているからには物凄く偉い人なのだろう。 そんなことを考えながら背筋を伸ばして立っていると何だか厳(いか)めしい顔に貴族的な感じの笑みを浮かべて祐樹を見ている。 この慌ただしく職員が動
「貴方の仰(おっしゃ)りたいことが分かりました。 海の近くというのはロマンティックで良いですし、レインボーブリッジも綺麗で……部屋からそういう眺めが見えるというのは何というか……、日本のお城だと天守閣みたいな特別な場所という印象です。 けれども、海が近いと
わざわざ最愛の人がイギリスにまで持って来てくれた祐樹にとって世界一美味しいコーヒー、きっとあのコーヒーを国際公開手術前に二人で飲んだからこそ祐樹は成功したのだろうとまで思ってしまう。 そして、最愛の人が桂離宮で教えてくれた茶道のようにお茶碗の良し悪しで
「それが……エレベーターの性能など色々あるのだけれども、相場は一基で一億円とも二億円とも言われている。 タワーマンションでも普通のマンションでも変わりはないのだけれども、25年から30年で耐用年数が切れてしまう。 その時に新しい物に替えるかどうかは建築の
「田中先生カッコ良いです!何だか撮影に向かう雑誌のモデルさんみたいです!」 呉先生も森技官との恒例の口喧嘩だか痴話ケンカの混じったものを休戦させて祐樹の方(ほう)へ軽やかに歩み寄ってしげしげと見ている。 そして祐樹最愛の人のスーツに包まれた肩を細い綺麗な人
最愛の人もバターに拘(こだわ)って選んでくれているが、多分このバターは空気に触れさせる時間が少ないのだろう。滋味豊かな芳醇な味だった。 パンは二個しか保温用の厚い布にくるまれて入っていない。そしてパンを食べすぎるとお腹がいっぱいになってしまい後の料理を味
胸中は薫風の8割くらいサッパリしたのだけれども、まだまだ森技官への怨念がカスミのように燻(くすぶ)っている。 もう昔のことだし、祐樹は過去のことは綺麗さっぱり忘れるようにしているのだが、最愛の人のこと絡みの件については別格だ。 というか最愛の人がそれこそ
「このお時間はお二人の貸し切りで御座います」 貸し切りでなくともテーブルとテーブルの間は充分な距離を取っているので恋人としての語らいには格好の場所なのに貸し切り状態とはとてもラッキーだ。 とはいえ、このレストランが閉店して貰っては困るので経営は大丈夫かと
今日届きました!教授大好き♡様しょうこ様ゆき様有難うございます!!薔薇のフィナンシェです!フィナンシェといってもスフレの優しい甘さがとても美味でした!こういう薔薇を再現したお菓子もあるのですね。和菓子なら割と目と口で二度楽しむ物はありますが、洋菓子は初め
夜間の高速道路も何だか独特の特別感がある。 それはともかく、思春期の頃に少数派の性的嗜好の持ち主だと自覚があったと聞いている彼は院長先生のバカ娘の「結婚して病院の跡継ぎになることと、これまで以上の自由で贅沢な生活を送らせて欲しい」という要望を呑んだ。
「ウチの医局は外国人の患者さんも多いです。ゆ……田中先生を」 森技官は物言いたそうにアルマーニがこよなく似合う肩を優雅に皮肉そうに竦めている。 最愛の人が「ゆ……田中先生」とつい口を滑らせたことに対する反応だろう。 祐樹が同じような間違いめいたことをすれ
「森技官と同じ大学だ。祐樹も知っている通り筆記試験しかないので。 その……彼女の場合あまりにも手先が不器用なので高校の先生から医学部への推薦は出来ないと言われたとか……。 推薦入学の場合は高校の校長先生が厳選した学生にお墨付きをつけて大学に送り込むという
「はい、一円です」 スーツのポケットから小銭と千円札はたくさん入っている財布を出して中を探った。 肝心な時に目当ての小銭がないという事態も危惧したが、幸いなことに発見出来た硬貨を出した。「しかし、このボールペンの相場は良く分かっていますので私が物凄く得を
「いつものイチゴのショートケーキほどではないのだけれども、これはこれでとても美味しい。 ベリー類だと思うのだけれども……。何だかクセになる味だな……」 彼が最も好む兵庫県の芦屋に本店のある洋菓子店は京都のデパートの食品売り場にも出店している。 ただ、本店