「はい、一円です」 スーツのポケットから小銭と千円札はたくさん入っている財布を出して中を探った。 肝心な時に目当ての小銭がないという事態も危惧したが、幸いなことに発見出来た硬貨を出した。「しかし、このボールペンの相場は良く分かっていますので私が物凄く得を
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
足の指から膝の裏まで微細に舌を動かしながら強く吸う動きに焦れたのか、最愛の人は花芯から幹へと水晶の雫を零している場所を紅色の指で示している。「聡がお望みなら……。ただその前に……」 両の足を大きく開く。「少し腰を上げてください……」 祐樹の淫らな唆(そそ
それに目の前には最愛の人が作ってくれた年越し蕎麦がホカホカと幸せそうな湯気を立てている中で他愛のない会話を交わすのが心が弾んでしまう。そして紅白歌合戦を見ながら食べていた蜜柑の香りも懐かしさと爽やかさを二人の親密な空間に彩りを加えるようだった。「324
最愛の人が楽しみにしていた帰省がなくなったわけだし、今年は旅行の予約もしていなかったのでお正月のイベントは皆無になってしまった。そして今から予約を取ろうと試みても人気の有る旅館とかホテルは埋まっているだろうし。「いや、お母さまに会えないのは残念だけれど
「掛けても良いですか?」 一応許可を取って通話をタップした。『聡さん本当に申し訳ないと思っています』 最愛の人のライン通話で掛かって来たのだから祐樹が電話したとは思っていなかったのだろう。何だか凄く申し訳なさそうな声が聞こえてきた。「母さん、重大な話って
最愛の人が愛の交歓の余韻を微かに残した薄紅色の首を優雅に縦に振っている。どうやら合っていたようで何となく嬉しい。「銀行保有分が5%と佳世さんは言っていたけれど、担保として株を持っているだけで株主総会の議決権は付与されていないのが普通だな。万が一付与され
予めイメージしていた執刀の手順――こういうイメージトレーニングが重要だと教えてくれたのは言うまでもなく最愛の人だ――よりもスムーズに手術(オペ)は終了した。「お疲れ様です。皆様がお気づきの点が有りましたら是非ともお教え下さい」 第一助手から順番に表情を見
「謝って欲しいわけでは全くないです。貴方の笑顔を拝見するだけで一晩の疲労など吹っ飛んでしまいます。それに私が好きでしていることなので……。それはそうと、夫婦で共有出来ない類いの問題は愛人の西ケ花桃子さん関係でしょうか?」 仮の話として祐樹の浮気を出したこ
弾んだ声と表情で聞いて来る最愛の人を惚れ惚れと見詰めてしまった。「いえ、京都ではこんな雪は体験出来ないでしょうから、お連れしただけですよ。愛の交歓で身体が温まったとはいえ、急に冷やし過ぎるのも風邪の元だと思います。もう人が居ない時間だと思われますので一
「祐樹!雪が降っている……!!」 最愛の人のフルートグラスを持った薄紅色の指に祐樹が見惚れていると弾んだ声が空気を金色に染める感じで知らせてくれる。「え?本当ですか?」 祐樹もガラスに目を遣ると確かに牡丹雪が風に舞っている。しかもこのクラブラウンジは高層
「私は祐樹とこういう行為をするのが至上の悦びなので……、祐樹が憂さ晴らしの積りでいてもそれは構わないのだけれど。野上さんは二年前、長楽寺氏に普段以上に関係を強いられたと言っていただろう?あれがずっと引っ掛かっていて。祐樹が太田夫人から受けたストレスは多分
最愛の人の下半身はパレオ状態にしたスカーフで隠されていて、しどけなく開いているであろう花園の門すら見えない。 見えないからこそ余計に想像力が増して良いが。「あっ……」 最愛の人の小さくそして淫らな声がペルシャ絨毯の上に零れたかと思うと先端部分を一気に迎
祐樹の気持ち、いや欲望を見抜いたように甘く蕩けた言葉を紡いでくれた。「聡の口とか喉『も』絶品ですからね。是非お願いします……」 リビングのソファーに身を横たえながら言った。こんなことならベッドで……とも思ったが窮屈(きゅうくつ)な分だけ密着感も味わえるし
「私自身が……綺麗かどうかは……分からない……。けれど、スカーフと、そして、祐樹に……愛されている身体だと……思うと……とても愛おしくて……嬉しいとは……思う……」 面食いだと自他共に認める祐樹が一目惚れした最愛の人だし、誰が見ても恵まれた容姿だと思うだ
「取り敢えず、今日分かったことを整理してみますね。貴方も隣に座って下さい。その方(ほう)がノートも見やすいでしょうから」 最愛の人手作りの食事を済ませて薫り高いコーヒーを一口飲んでノートを広げる。「そうだな……。それはそうと長楽寺佳世さんが淹れてくれた紅茶
少なくとも10枚以上のシルクのスカーフが入っていた。 しかも赤い薔薇模様が大きく描かれているスカーフが圧倒的に多い。「祐樹のリクエストに応えてみた……。ただ、どうやって身に纏えば良いのか分からないので、その点は任せるけれども……」 最愛の人は祐樹の首に
パティシエさんがラム酒と思しきモノを掛けると青い炎がぼわっと上がる。そしてクレープの表面には「メリークリスマス」の英文が濃いキツネ色で浮かび上がった。 どういう仕組みになっているのかサッパリからないけれど。「まさにクリスマススペシャルですね……」祐樹が
「うん!美味しい……!!」 最愛の人がフォークとナイフを器用かつ優雅に使ってサーモンを切り分けて薄紅色の唇に収めると弾んだ声で言った。 重厚でシックな部屋の空気も二人の醸し出す親密な空気でクリスマスカラーに染まっているような感じだった。「美味しいですね。
電話でアポイントメントを取るよりも佳世さんからの紹介の方が良いような気がした。それに直哉氏だって母親を苦しめた愛人と相続額が同じというのは納得し難いモノがあるに違いないし。「分かりました。少し失礼して……」 眼鏡を――おそらく老眼鏡だろう――ケースから
ベルベッドと思しき箱を開けるとプラチナのシンプルな指輪が入っていた。 小さいが極上の煌めきを放つダイヤが一つと控えめなブランドの頭文字が金色で刻印されている点がアクセントになって指輪の高級感を増しているような感じだった。「嬉しいですし是非身に着けたいと
「これは紅茶のリキュールが入っているのか……。美味しいし身体が温まるな……。祐樹有難う」 満足そうな笑みの花が唇から零れている。「リキュールと言っても紅茶と変わらない味だとお店の人が言っていましたが、ちなみにこれもリキュールです。それほど好みではないので
「二年前ですか?有りましたわ。瑠璃子さんが待望の赤ちゃんを授かったのですが、残念ながら流産してしまって……」 直哉さんの妻の瑠璃子さんは現在34歳だと森技官から貰った記録にあった。 ということは32歳の年の出来事だ。「それは……お察し致しますとしか申し上
「長岡先生曰(いわ)く『普段はお高くとまっているディスプレイもクリスマスカラーの天鵞絨(ビロード)とかリボンに飾られることによって客に媚びを売っているように見えてとても面白い』と。そういう着眼点は全くなかったので……」 最愛の人は祐樹を見上げるようにして話し
「お待たせ致しまして申し訳ありません」 最愛の人が応接室の扉をノックした後に開けて深々とお辞儀をしている。家族性高脂血症持ちの佳世さんにとっては――今のところは血液検査でも正常値の範囲内らしいが――最愛の人の手技のお世話になる可能性が他の人よりも高いので
「それでしたら、このホテルから大阪駅に向かう道の途中も綺麗です。更に大規模なのは阪急梅田駅の近くの阪急インターナショナルホテル近辺も見応えが有りますね」 最愛の人はバリバリの京都弁ではないものの大阪の人のアクセントとは若干異なるので――東京の人には区別が
「祐樹、珍しく荷物が多いな……」 クリスマスイブの土曜日の前日は救急救命室に搬送される患者さんの数もキャパオーバーではないかとここの勤務に慣れている祐樹なども思ってしまうほどの大混雑だった。 忘年会とか学生の飲み会などは不況にも関わらず――いや不景気だか
経済的に恵まれた生活を粉砕された上に望まない関係までを強いられて野上さんが故長楽寺氏に恨みを抱いていた可能性は捨てきれない。 コレステロールの高い食べ物などは調べれば直ぐに分かるだろうからそういう物を作って食べさせていたとしたら殺意までは抱かなくても、
「どうやら男性同士が……こういうコトをしている場面だったみたいで……。大きなルビーを中央にセットしたダイヤモンドのネックレスを……そのう……」 そういう類いの本が女性向けに売られていることは知っていた。そして性的な描写が有ることも。そして最愛の人が言いた
野上さんの場合、他の支払いがなければ丸々25万円が好きに使える身分だ。 彼女は相当裕福な家庭に生まれたようなので本人的には不満だらけなのかも知れないが。だから佳世さんへの細(ささ)やかな当てつけとしてハリーウィンスト〇の指輪が買えたのかも知れない。 まあ
「いつもながらとても感じた……」 祐樹の胸元に紅色の頬を寄せて最愛の人が咲き切った花のような満足げな声がした。 祐樹は愛の交歓の余韻ですっかり湿った髪にチュッとキスした後に汗の雫を纏った若干華奢な肩を抱き締める。「愛しています、聡。堪能したのは肢体だけで
野上さんは最愛の人の言葉が進むにつれて大粒の涙から、滝のように流れる涙へと変わっていって最後は肩を震わせながらの大号泣といった感じだ。 幾らこの屋敷が広いとはいえ、佳世夫人の耳に入ったら大変なことになると判断してドアを固く締めた上に祐樹の身体で防音の役
「是非参りましょう。ただ、こういう場所は気軽に行けないですよね……。停年後ということになりますが……」 最愛の人が潤んだ眼差しで祐樹と視線を合わせている。「その歳になった場合、貴方への愛は変わらないと約束出来ますが、身体では聡を満足させられるかどうか分か
「そうよっ!!奥様には絶対内緒という口止め料も兼ねてね。お金だけじゃ足りない時はあのアクセサリーを貰ったわ。長楽寺の先代のお嫁さんの遺品で……。奥様はアクセサリーとか宝石に興味のない人だから先代が亡くなった時に『要らない』って言って放置されていたモノをリ
「言葉では上手く表現出来ないな……。この世の物とは思えないほど綺麗な青い色と白い塩の結晶がどこまでも広がる世界なのだけれども……」 そんな場所が有るなら是非行ってみたい、もちろん最愛の人と一緒に。「ドキュメンタリー番組を録画してあるのだけれど、デザートを
「これらは何ですか?」 最愛の人の細く長い指が野上さんの手首を掴んでいる。しなやかな指だが世界的な認知度を誇る心臓外科医だけあって握力は人並み以上だ。 造花が引き抜かれた大きな花瓶が転がっていて、その中にはダイヤやルビーなどの指輪やネックレス、そして一万
「自宅に送って頂くか紙袋はこの百貨店のものに変えられませんか?」 ブランドに興味の有る人が見れば一目瞭然の紙袋を持って歩くのは避けたい。何だかこんな嵩(かさ)高いオレンジの紙袋を持って歩くのはチンドン屋並みに目立ってしまうだろうし、ナースなどに見られたら病
「あれは直哉が瑠璃子さんとの結婚が決まってからです。瑠璃子さんのことを大変に気に入ったあの人が『うちにお嫁に来るからには相応の家を建てないと』と珍しく張り切りまして……。瑠璃子さんに相応しい瀟洒(しょうしゃ)かつ豪華な家にしたいと……。元々あそこはあの人の
ただ、内心の葛藤を表情に出すのは祐樹自身の矜持が許さないので、周囲の席に視線を転じた。「あの、このスケジュール帳の来年の分はまだ有りますか?」 心配そうに割と大振りの革の手帳をバッグから出している女性が居た。外側はそのままで一年ごとに中身を入れ替えるこ
「……ただ一つだけ心当たりがあると申しますか……、杞憂かも知れないのですけれど」 佳代さんが言いにくそうな感じで口を開いていたので視線を転じた。野上さんの不審な点は後で聞こうと気持ちを切り替えた。「あの人と直哉さんの間で確執(かくしつ)が有ったのは事実です
扉の外で並んで店内の様子を見ている時にはスタッフが名刺を出している場面は一切見なかった。 それなのに名刺入れから完璧なビジネスマナーで出して恭しく差し出されると祐樹も出さないといけないのかと真剣に悩んでしまった。Aiセンター長になってから医療機器メーカー
「心臓に負荷が掛かるような出来事が最近ありましたか?」 祐樹が唇に手を持っていく時にはどういう心境かを知悉している最愛の人が怜悧な口調で尋ねている。「会社を経営していると色々な厄介ごとは日常茶飯事ですけれど……。私(わたくし)が連帯保証人になることで銀行か
なんだかワクワクしている感じと恐怖みたいな表情を浮かべた女性が店員さんに話し掛けると、店員さんはバックヤードと思しき所に消えていく。そして直ぐに戻って来たかと思うと申し訳なさそうな表情でその女性に何かを告げている。お礼を言ったと思しき女性は落胆めいた、
「あれは確か五年前だったと思います。私(わたくし)の記憶だけでは心もとないので野上さんを呼びますわ……」 佳代さんが銀のベルを優雅に振った。こういう点がこの豪壮なお屋敷に相応しい。最愛の人にだけ読めるように念のため英語の筆記体で書いた「彼女の装身具に注意し
柏木先生は――今の奥さんとの結婚式と披露宴で判明したが――良家の子弟だ。だから色々な観光地を訪れているに違いない。そういう人が言うのだから説得力はある。停年後の楽しみとして取っておく方(ほう)が良いのかも知れない。一か月もの休みを取ることは今のところ不可
眉間の皺(しわ)がより深くなった。存在すらも許せない愛人に湯水のようにお金を使われたとか、それ以上に遺産相続の権利を与えた故長楽寺氏が許せないのだろう、多分。「納得出来るわけがないでしょう……。ただ、弁護士と税理士の先生方も遺言書がなければどうしようもな
「はい。お言葉有難うございます。香川教授もお健やかに。お先に失礼します。田中先生も相変わらずお元気そうで何よりです」 そう言って足早に去って行く中村先生は何か急ぐ用事とか仕事があるのだろう。「よ、ご両人。相変わらず仲が良いな」 聞き覚えが有り過ぎる声が背
「あの人は割と大雑把な人でしたの。会社の住所が記されたクレジットカードの明細書兼請求書を他の書類に紛れ込んでいたのを気付かずに家に持ち帰ったのです。そして瑠璃子さん――長男の嫁ですが、当時から別居しておりました――名義の家族カードの明細には信じられない額
「愛する祐樹とイブの時間を過ごせれば良いので、部屋は特にこだわりがないな……」 健気な言葉を紡ぐ最愛の人に口づけを落とした、クリスマスプレゼントは何が良いだろうなと思いながら。最愛の人の場合は金額の多寡(たか)などではなくて、そしてブランドなども関係なく、
「ざっくり言うと時給計算だ。一時間5千円を支払っているが、スタッフさんにはどの程度の時給が支払われるのかは分からない。ただ、秘密厳守だし、部屋にある貴重品が――といってもウチにはそんなに値が張るものも置いていないが――無くなるようなことは一切ないとの折り
すみません!!リアル生活(仕事)多忙で先ほど帰宅しました。今から原稿を書きますので、更新は二時間後になります。お待たせして申し訳ありませんが何卒ご容赦頂くようにお願い致します。 こうやま みか拝にほんブログ村小説(BL)ランキング
「玄関のクリスマスリース、お作りになったのですか?」 ホクホクと甘いカボチャのポタージュスープとか目にも鮮やかなサラダやこんがりと焼けたトーストの上にバターが黄金色に溶けていく様子を目と口で楽しみながら聞いてみた。 野戦病院さながらの救急救命室勤務が終
「いえ、あの日は私と野上さんが――先ほど挨拶した家政婦ですが――キッチンで三時のお茶を嗜んでいる時に書斎で物が倒れるような大きな音がしまして駆け付けましたの。来客が居ないのも確認していますし、キッチンからは全て見える家の構造ですからこっそり呼んでも直ぐに
「お早うございます」 実際のところ30分程度早く目覚めて祐樹の胸に頬を預けた格好で満足そうな笑みを浮かべて寝入っている人を飽かずに眺めていたのだが、昨夜の愛の交歓の余韻の残る薄紅色の目蓋(まぶた)が動いたのでそう告げた。「祐樹……お早う……」 昨夜の行為が
最愛の人と祐樹にこんな無茶振りをしてきた森技官の恋人の呉先生は優秀な精神科医で親しい友人の一人だが――もしかしたら類は友を呼ぶ的なモノかも知れない――血を見るのが苦手で学生の頃には嘔吐したという黒歴史を持っている。 祐樹がメンタルを病むことは多分ないだ
「相変わらず素敵でした……。いや私が愛する聡の極上の花園に丹精を込める度に開花をどんどん無垢かつ淫らになって咲き誇って行くようです……」 息が収まると、紅色の唇や首筋そして耳朶(じだ)にキスの雨を降らせた。後の戯(たわむ)れも愛の交歓の愉しみの一つだったので
「え?」 長楽寺佳世さんは唐突な質問に少女のような感じで目を見開いている。眉間の深い皺(しわ)さえなかったら、筋肉質っぽいスリムな体形と溌溂とした動作で実年齢よりも遥かに低く見積もられる印象なだけに、尚更(なおさら)そういう印象が強くなる。 昨夜会った西ケ花
「ゆ……祐樹っ……悦(い)っいっ」 甘く蕩けたやや高い声が紅色の唇から零れて部屋の湿度を高めていく。 二つの尖りを根本から先端まで強く弾くと花園の凝った蕾がより強度を増して祐樹の最も敏感な部分に当たっている。人体の仕組みは当然良く知っているが、最愛の人との
最愛の人の淹れてくれるコーヒーは世界一だと思っているが、祐樹は断然コーヒー党なので紅茶はそれほど飲まないのを知っている最愛の人は家でも紅茶は淹れない。だから思わず言ってしまったのは本音だった。最愛の人も美味しそうに嗜んでいるし。「お口に合って本当に良か
申し訳ありません。それでなくとも更新時間がまちまちになって読者様には要らない手間をかけ続けているというのに、土曜日更新は全然出来ておりません。リアル生活でバタバタしており、その上寒暖差に身体が付いて行かずで……発熱(37℃8ですけれど、平熱が35℃程度なので
「初めまして。K大附属病院の香川と申します。夜分にお邪魔致しまして誠に申し訳ありません」 門を開け放ったので、敷地内の様子がハッキリと分かる。邸宅と呼ぶのに相応しい洋館が同じ敷地に二軒も建っていて、植木屋さんを頻繁に入れているのだろう、イングリッシュガー
最愛の人の極上の花園は祐樹の丹精込めた愛の交歓を重ねたせいで魔性を秘めた場所に変化している。 祐樹も一晩きりとか数か月程度の「職業・住所を明かさない」恋人は居た。しかし、そういう人に「放出するのが早い」と言われたことは皆無だった。 最愛の人の極上の花園
「西ケ花さんのキッチンの棚にはウエッジウッ〇のピーターラビットのマグカップとかがセットで置いてあった。マイセンは小花模様のモノしかなかったな……。彼女が使っていた灰皿も小花模様だった。付け加えるほどの情報かどうかは祐樹が判断して欲しいのだが……」 幾分あ
部屋に入って二人きりになるや否やキスを交わしながら帯(おび)を解(ほど)いて床に落とした。 紅色の素肌に紅葉の赤が映えてとても綺麗だった。それに普段よりも更に紅さを増して尖った二つの尖りが蠱惑的なルビーの煌めきを放っているのも最高にそそられる。「ベッドで良
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「はい、一円です」 スーツのポケットから小銭と千円札はたくさん入っている財布を出して中を探った。 肝心な時に目当ての小銭がないという事態も危惧したが、幸いなことに発見出来た硬貨を出した。「しかし、このボールペンの相場は良く分かっていますので私が物凄く得を
「いつものイチゴのショートケーキほどではないのだけれども、これはこれでとても美味しい。 ベリー類だと思うのだけれども……。何だかクセになる味だな……」 彼が最も好む兵庫県の芦屋に本店のある洋菓子店は京都のデパートの食品売り場にも出店している。 ただ、本店
「『不動産投資の話』ですか……」 一読してから最愛の人を見た。遠藤先生に語ったことが骨子として読みやすく書かれていた。「内容は良いと思いますよ。 しかし、文書のタイトルは『悪質な営業マンの言いなりになって億単位のローンを背負うリスクを取りますか?』とかそ
「ああ、遠藤先生にとってとても重要なことだから……な。 最も良いのは一ドル170円になった時だろう。ただ、個人的な意見なので責任は持てないけれども?」 静謐な執務室にコーヒーの香ばしい薫りが揺蕩(たゆた)って定時を回った寛いだ時間に相応しい雰囲気だ。「ひゃ
「私たちは専門学校や短大稀に大学卒と様々ですけど、皆が看護師や助産師になっているので交友関係も知識も偏ってしまっています」 確かに看護学部に入ってしまえば友達は皆が看護師志望だ。 医学部もそうだったけれども他学部の友達を作るためには部活動をするしか方法は
ああそうだ……、きっと黒木准教授が案じていた医師のちっぽけなプライドが祐樹にも備わっているのだと身に沁みて思った。 そして博覧強記の最愛の人ですら知らないことは知らないとハッキリ言っている。 ここは強がったりせずに素直に言うべきだろう、最愛の人に倣って
「教授のお手を煩わすことになってしまいますが……。 営業マンの甘い言葉に乗せられてしまう病院関係者が一人でも減るように、そしてプライドの高さが災いして誰に相談して良いのか分からない人が救われるような積極的な情報発信を内田教授と共にお願いしたいと思います。
そういえばパーティの時間が遅れているのも手術(オペ)のリアルタイム動画を見た外科医が続々と集まって来ているからだと他人事(ひとごと)のように思いを馳せた。「そうですね、ただ挨拶を考えないといけないので、食べながら考えます」 ハムと胡瓜(きゅうり)だけが挟んで
「医師は高収入で社会的ステイタスも高いと言われていますよね。銀行の融資では『属性』も重要だと仄聞しています……」 医局内はガランとしていたが、黒木准教授は辺りを憚(はばか)る感じで話している。 この件(くだり)は聞いているかも知れない人間が皆医師なのでそれほ
「お待たせいたしました。他科の准教授からの電話が丁度掛かって来まして」 黒木准教授は香川外科の縁の下の力持ち的存在だが、他科の准教授からとても信頼されているらしいし、親身に相談にも乗ると聞いている。「いえいえ、わざわざご足労をお掛けして誠に申し訳ありませ
祐樹のスマホに声が入らないように配慮してくれたのか呉先生の素朴な疑問も森技官の回答もひそひそ声だった。『はい。セカンドフロアにいらして下されば直ぐにお分かりになると思います。 ご足労をお掛けしますが宜しくお願いします』 電話の向こうの喧噪とは裏腹に丁重
祐樹も本日の業務は全て終わっている。 後は黒木准教授を待つだけなので、オフィシャルな会話を医局で彼と通話していても誰も不自然に思わないだろう。 何せ「香川教授の懐刀」とか「香川外科の小姑(こじゅうと)」とか言われているし、「例の地震」やその後の共著や地震
「ご説明する前に教授に連絡しても宜しいでしょうか? 病院の看板教授、しかも手術(オペ)を一日二件も行うのに医局の総責任者としての教授職なのに定時で上がる稀有な教授として感心されていらっしゃいますよね? 勿論黒木准教授の強力なフォロー有ってのことだと医局中知
仲の良い喧嘩友達を果たして友人と言って良いのかに関しては熟慮を要すると思いつつ。『そうなのですか?では私からもそういう申し出が有ったことをお伝えします。本題に入りますが宜しいでしょうか?』 電話越しに数人の大声らしきものが聞こえてきた。きっと時間変更で
「タワマンですか……。流石は准教授ともなるとグレードがアップしますね」 きっと気になるお値段も比例して高くなっているのだろうなと思ったが。 遠藤先生はこれ見よがしといった感じで腕時計を見ている。「遠藤先生、黒木准教授に報告すべきことはありますか?」 助け
「丁度あと一時間後ですね」 呉先生のスミレの花のような笑みがこの国の貴族の私室を彷彿とさせる客室に彩りを添えている。「ああ!運営側からの電話ですので出ても構わないでしょうか?」 祐樹のスマホに万が一の場合にと登録した番号を表示した着信があった。 ダメだと
遠藤先生は納得したような表情で祐樹を見上げてくる。「そんなモノなのですね……。教授職ともなれば鹿威(ししおど)しがカポーンと鳴るような料亭が普通かと思っていました。 意外と庶民的なのですね」 ……祐樹はこの病院の医師としては庶民育ちだ、最愛の人もそうだけ
「どうぞ、荷解(にほど)きは済ませて有るので、そんなに見苦しいことはないかと思いますが」 祐樹がドアを開けてくれて、客室へと入った。祐樹も割と几帳面なタイプなので客室はキチンと整頓されていることは想定内だった。 けれども、本で読んだベルサイユ宮殿の「夫婦の
「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
「はい。小児科のハロウィンのイベントに駆り出されたのが切っ掛けでした。 その後『難しい話は抜きにしてアニメやマンガの話題だけ』という主旨の呑み会を行っていますね」 納得した感じで頷いている。「ああ、ハロウィンの催し物は『呪いが廻る戦い』の最強戦士が田中先
「分かった。救急救命は祐樹の方(ほう)が既に詳しいだろうから全て任せる」 狭心症の発作がニトロで治まったのは僥倖だった。そのことは最愛の人も分かっているのだろう。 そして今直面している問題は低体温症で、専門分野の心臓外科ではない点から最愛の人は祐樹に任せて
「お寺で僧侶の手を借りて行うのが正式な落飾(らくしょく)なのだけれど中宮定子の場合は自ら髪を切った。 しかし、それでも出家には違いないので、尼僧として生活を送らないといけない。 つまりは男女というか夫婦の行為は出来ないにも関わらず、一条帝とはその後二人の子
「当時の皇室では濁音の付いた名前は忌み嫌われていたらしくて……。江戸城に居た時には和子(かずこ)姫と呼ばれていたのを入内に際して漢字は替えずに読み方を工夫したらしい」 なるほど、たしかに「か『ず』こ」の「ず」は濁音だ。「ただ、漢字だけが残っている歴史上の人
かねてから入院中の親戚が亡くなりました。申し訳ありませんが最短で二日間、もしかしたらその後も動員されて「みか(当然実名ですが、そちらは古くからの読者様しか知らない)ちゃんはFP(ファイナンシャル・プランナー)とか相続診断士の資格持っているから色々相談に乗っ
五分経過して発作が寛解しないようならば、救急車を呼んで――といっても、この奈良の山奥なので何分掛かるか分からない。某カルト宗教集団に銃撃された警察庁長官が命を取り留めたのは場所が東京だったせいで救急搬送が迅速になされた結果だ。ご本人もそのことを良く理解
「関係しているな……」 最愛の人の笑みが赤い牡丹の花よりも瑞々しく煌めいているのが目を射るようだった。「分かったような気がします。日本の国の流行り病は中国由来が多いですよね。中国の人との接触をした大宰府に居た人がまず感染し、九州で猛威を振るった後に西日本
「中華風のケーキと貴方がお好きな洋風というか、日本人向けに作られているケーキは何が異なるのですか?」 祐樹の注文した燕(つばめ)の巣は独特の歯ごたえが特徴的だ。ゼリーよりも硬くて木耳(キクラゲ)よりは柔らかいという感触だった。最愛の人はケーキが好きなので今後
最悪の場合は無理やり口を開けるしかないなと思いつつ声を掛けると、弱弱しい感じで口が開いた。この際贅沢は言っていられないので素手で舌を掴んでその下に押し込む。「お祖父(じい)ちゃんっ!!大丈夫っ!?」 最愛の人がゆっくりとタカシ君の身体を下ろした後に泣きな
「それは平安時代の貴族達がむやみやたらに怖がった、全てが『怨霊』の仕業に違いないとか思っている話ではなくて、現代人の私達も納得するようなことですか?」 呪いだの呪霊だの鬼などはフィクションで楽しむ分にはむしろ大歓迎だ。「呪いが回る戦い」の話は続きが気にな
「なるほど……納得です。麻(マー)婆(ボー)豆腐(トウフ)の味には一切山椒の味がしなかったように思います。山椒の親戚かつ辛いのが『花椒(かしょう)』というスパイスという理解で大丈夫ですか?」 祐樹もそれほどグルメというわけではない。ただ、目の前で赤ワインの入った
彼が声を掛けたのは三人の子供達の中で最も年長と思しき子だった。人によるかもしれないけれども、年齢が上の方(ほう)が状況説明も的確さも増すので妥当な判断だろう。 この人口も少なそうな町なので誘拐などは起こりそうにない。散々遊んでいて失礼な言い方かも知れない
「夜は、そのう……恋人同士の行為をするだろう……。流石にこの桂離宮ではそういうことをするのも憚(はばか)られて……」 薄紅色に染まった唇が恥ずかしそうな感じで言葉を紡いでいる。確かにデートの夜に――場合によっては昼でもだけれども――愛の交歓を期待しているこ
「この鮑(あわび)と帆立もとても美味しそうですよね……。ああ、ワイングラスが空になっているので頼みますか?」 花のような笑みを満面浮かべた最愛の人が頷いている。そして祐樹が密かに期待していた通り、店内にはお客さんがちらほら集まって来てメニューを見て何かを話
帰宅したら届いておりました�箱を開けると季節限定でしかも和風🌸嬉しいです😂これ、大切に食べます✨✨このお礼は小説でお返し出来れば良いのですが💦いつもいつも差し入れ有難うございます!!取り急ぎ御礼まで。 こうやまみかにほんブログ村小説(BL)ランキング
「あれはアニメの中だからですよ。鬼退治アニメでも黄色と赤の髪をしたキャラとか、桃色と緑色の髪をしている女性とか居ますよね。あれは地(じ)毛(げ)らしいですけれど、実際に居たらビックリしますよね……。 まあ、現代ではYouTube配信者さんで金色と黒の髪の毛に綺麗に染
「そうなのですか?自然科学にもお詳しいのですね」 白く滑らかな素肌も若葉色に包まれていて瑞々しくて鮮烈なイメージだった。薄紅色の唇が可笑しそうな極上の笑みを浮かべている。「自然科学ではなくて古典の知識だな。十二単(じゅうにひとえ)の色彩一覧に載っていた。こ
「正解です。しかし良く分かりましたね……」 前菜と共に白ワインが運ばれて来たのでワインを一口呑んで気分を落ち着かせる。「祐樹の天賦(てんぷ)の才は手術(オペ)の助手を務めて貰った時から気付いていた。それに手技の出来映えについて祐樹の目を見て確かめていただろう
またまた、色々画像頂いてしまいました(^^♪色々注文を付けてしまって申し訳ないです……。何度もTwitterのDMで「ここはこんな感じに変えることって出来ませんか?」とワガママ言ってしまって済みませんでした。今までは、色々と贈って頂いたり挿絵を下さった方には直接お礼
そう言えばそんなシーンが有ったような気がした。 ただ鬼退治アニメの蜘蛛鬼は生まれつき身体が弱くて歩くだけでも苦しかったと過去回想の独白で述べられていた。歩くのが苦しい点や走ることが出来ないという点から祐樹は先天性の心疾患だろうと勝手に判断していた。 ア
彼が好きな方(ほう)を選べるようにと緑茶とほうじ茶を買って戻った。「では順路に沿って散策をお楽しみください」 そう言って通用門を閉めてくれた。一般開放の日はその横の大きな門も開け放つに違いない。 国賓とかお忍びで来日したVIPがいらした場合はどちらの門を