「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「今夜は最高の夜でした。何だかいつも以上に忙しかった仕事が終わってココが元気になってしまって困っていたのです。聡がお眠りだったら一人でこっそりと処理しようと思って帰って来たのですけれども……。天国のような悦楽を与えて下さって有難うございました」 繋がりを
「あのう、呉先生にお電話を替わって頂いても宜しいでしょうか?」 最愛の人が遠慮がちな感じで言葉を紡いでいる。『はい。それは構いませんが……』 電話の向こうで「香川教授がお話したいそうです。その代わりスマホ貸してください」という声が微かに響いてきている。『
繋がった箇所から淫らで湿った音が奏でられる。 祐樹が腰を進めるとその音がより一層の熱を帯びてきた。「聡の凝った蕾……。先端部分に当たってコリコリとした感触が……堪らなく良いです……」 比較的浅い部分で抜き差しを繰り返すと、最愛の人が自ら弄っていると思し
『田中先生のお気持ちも分かるのですけれども、出来ることと出来ない……えっ?どうしてそんなに怒って……?』森技官の困惑した感じの声がスマホ越しに聞こえた。「怒って」というのは祐樹のことではなくて恋人の呉先生のことだろう。祐樹はお願いしただけで全く怒ってはい
「ゆ……祐樹っ……ソコはっ……とてもっ……感じっ」 上半身に纏っているシルクよりも艶やかな声が寝室に響いている。 花園の中の凝った蕾を軽く強く指で叩くとしなやかな背筋が反ってシーツの上に上半身が触れる格好になる。そして凝った蕾と直結している尖りをシーツに
「お電話替わりました。田中です。西ケ花さんは森技官もご存知のように――その節はご協力頂きまして有難うございました。心よりお礼申し上げます――」 ムッとしたような雰囲気がスマホ越しに漂ってきた。 弱みを握って交渉を有利に進めるのは森技官の得意技だけれども、
今でこそ思ったことや感じたことを言葉で表現してくれる最愛の人だけれども、初めて結ばれた時には言葉が極端に少なかった。だから強引に身体を開いて我を忘れさせて本音を紡がせようと必死だった。 後で聞いたら、何を言えば全く分からなかったという不器用さのせいだっ
「こういうふうになったからには、一気にけりを付けたいのです。西ケ花桃子さんが黒に果てしなく近いグレーですよね。最初は定時上りで貴方と一緒に行動出来る良い機会だと思って引き受けたのも事実なのですが……」 向かい側に座った人は白皙の頬が薄紅色の微笑みを浮かべ
猫がミルクを舐めているような音が静謐な寝室に濡れた彩りを添えていく。 サラリとした髪の毛の感触も捨て難かったものの、やはり祐樹の最も敏感な場所を舌で愛して貰っている快楽と、そして心の充足感の方が勝ってしまっている。 最愛の人が大きく頭を動かしてくれて前
「電話をして確認しますね。えっと」 スマホを出して資料の紙の束を探そうとしたら最愛の人の唇が仕事モードといった感じで知性的な怜悧な感じを漂わせている。「番号なら覚えているので今から言う……」 こういう点「も」祐樹が敵わないと思っている。「お願いします。と
「これはマズい……」 午前三時の病院の職員専用の門の所で立ち止まって踵(きびす)を返して灰皿の有る所まで戻って取り敢えず煙草を吸った。 底冷えの京都の街しかも雪まで降っているので早く最愛の人が待つマンションへと帰りたかったのだが、今夜は息つく暇もないほどの
花園の中の凝った蕾を指で愛したせいだろうが、直結している尖りが可憐に存在を主張している。 ただ、直接愛撫したわけではないので普段の愛の交歓時のような深紅ではなく桜色なのが初めての夜を想起させてとても良い。 薄紅色の肢体とかすっかり育った花芯の先端から水
「コレステロールの二つの数値に注目して見てくれたら、分かると思う」 最愛の人ほどの卓越した暗記力を持ち合わせていないため、応接用の机にプリントアウトした紙を並べて見比べた。「えと、異常値が突出して多いのが奇数月ですね……。逆に偶数月は低くなっているという
「やっと、二人きりになれましたね……」 客室の木の扉が音もなく閉まったのを合図に最愛の人の花よりも綺麗な唇に口づけを落とした。 何時ものように舌を絡ませるわけでもなくて薄紅色の唇が紅色に煌めくように、やや薄い唇を甘くきつく吸い上げる。重なった唇が奏でる濡
赤字部門を埋めるために果たした通称香川外科の功績は大きい。それは病院の誰もが認めている事実だ。 それだけでも次期病院長選挙では充分な票を集めることが出来ると踏んでいたけれど、付加価値としても充分にあるだろう。経費削減は必要だが医師や看護師に負担を強いる
大輪の花のような風情(ふぜい)の恵まれた容姿を持っている人なだけに黙っているだけで声を掛けられるだろうと踏んでいた。そして二人のような性的嗜好を持っている人達はクローズドの世界の中では割と奔放に振る舞っている人間が多いのも祐樹は知っていたし、聞いた話では
先ほどから最愛の人は自分の考えに沈んでいるという感じだったのは直哉さんと瑠璃子さんに何らかの不審な点でもあったのだろうか?「お言葉に甘えて良いのでしょうか?」 最愛の人の大好物なので貰う気は満々だったけれども、一応遠慮してしまう。「どうぞ、ご遠慮なく。
空気を読んだのか、それとも森技官の好みの男性を口説きたいと思っているのか謎だったけれども、最愛の人は先ほどの言葉に酔ったような感じで上の空といった風情だった。 祐樹は別に深く追求する積りもないし。そういうことに過敏に反応するタイプの最愛の人の関心は森技
「そうですか。まあ、亡くなったからこそ美点も見えてくるかと思います」 それにもう瑠璃子さんに対して酷いことも出来ないので直哉さんにとってはプライベートでも安心だろうし、会社の経営も思うようにリーダーシップが執れるようになるのだから良いコトなのだろう。しか
「えと。お酒を奢る意味はもう既にお分かりでしょう?あわよくばと狙っている男性が貴方には15人、あちらの方は6人です」 祐樹の噛んで含めるような説明を聞いて杉田弁護士が心の底から可笑しそうな声で笑っている。これほどまでに明確なエビデンスが出されないと自分の
まあ、愛人を囲う――祐樹はそういう行為をしようとは全く思っていないけれども――お金は普通、お小遣いから出すモノで会社の経費で落とそうとは思わない。 病院内のウワサでは愛人を囲っている某教授とかが実(まこと)しやかなに流れるけれども、給料の中とか実家の資産
「取り敢えず、この店の客であり、かつ男性から声を掛けやすい男性で香川教授と似たようなタイプを選びました。あそこの男性です」 黒髪の森技官は見慣れていたものの、黄色寄りの茶色の頭とかネクタイをワザとだらしなく崩してエジプトのツタンカーメンを彷彿(ほうふつ)と
最愛の人は沈思黙考をしていたのかは祐樹にも読めない。祐樹好みの端整で優し気な容貌の持ち主だが、表情はあまり変わることがなくて――それでも以前よりはかなり表情が豊かになったのは確かだけれども――難しい症例の手術(オペ)などの具体的手順を熟考中なのかと思いき
「15杯と記憶している……」 そんなに呑んだのかと――しかも各々が異なったお酒を奢ったのは何となく分かる――所謂(いわゆる)チャンポンは酔いが回る可能性が高いし、祐樹と第二の愛の巣でのデートでは最愛の人はシャンパンならシャンパンで統一しているので酔いが回っ
この件を無茶振りした森技官も実家は産婦人科のクリニックで、後継ぎだと目されて教育は受けたらしいし、性格はともかく頭が良かったためにТ京大学の医学部に入学したと聞いている。クリニックと自宅が離れた所にあったために父親の仕事が具体的にどういうものか分からず
懐かしい扉を開けると、今日はパーティとかイベントの日か?と思うほど広い店内は大入り満員といった感じだった。 この店がゲイバーとしてどの程度の知名度なのかは知らないが、女性客がうっかり来店すると店のスタッフも客も冷たい対応しかしないので、そそくさと退店し
「それはそうだと思いますよ……。実は病院を管轄する厚労省に知人が居まして、その人に太田医院のことは書面にして提出したいと思っています」 最愛の人にしてみれば同業者の恥といった感じなのだろう。だから部外者というか患者さんのご遺族に対して「内輪の恥」というよ
パラリーガルだか事務員だか知らないけれども、杉田弁護士は女性の耳を気にしていることだけは確かだ。「元カレ」と言いかけて慌てて言葉を変えたのもそのせいだろう。スピーカー機能で話しているのなら祐樹の声もその事務員の女性には筒抜けのハズで、男性の祐樹の元カレ
「その使い込みが発覚したのは何時でしょうか?」 最愛の人も気になったらしくて直哉さんに怜悧な眼差しを向けている。「それが……父の急死する10日前でして……。トラブルを最小限に留めるために色々と奔走している最中(さいちゅう)にあんなことになってしまって。です
『寄っても良いが、一体どういった風の吹きまわしかな?』 杉田弁護士の飄々(ひょうひょう)とした声に僅かに不審さが混じっている。 最愛の人をゲイバー「グレイス」から遠ざけてきたのは――そして必然的に祐樹も随分とご無沙汰している――他ならぬ祐樹自身だったので、
「貴方、お義母様からそういうのは絶対に控えるようにと厳命されていたでしょう……。貴方が60歳で亡くなったらと思うと心配で心配で……。絶対にダメです!!」 瑠璃子さんが断固とした表情と口調でまるで判決文を言い渡していると裁判官といった感じで宣言している。
時計を見ながらイライラと会話をした。会話というか交渉という方(ほう)がこの通話には相応しい気がした。取り敢えず祐樹の提案が妥結した時には掌の汗でスマホが滑るくらいになっていた。 もう一本電話をしたいところだが、もうタイムアウトだ。仕方ないので手術(オペ)が
「最初は主人にも言えなかったのですけれども、信頼関係が出来たと判断した時点で打ち明けましたの。 でも、子供はなかなか授からなくって一緒に病院に参りました。原因は私ではなくて主人の方(ほう)にあると分かってからお義母様にはそう伝えました。ただ、全く授からない
「今夜久しぶりに街でデートをしませんか?カウンター割烹のお店、予約出来たら良いのですが……」 最愛の人が患者さんから差し入れられた豪華な仕出し弁当の箸を止めて祐樹の顔を嬉しそうな笑みを浮かべている。「良いのか?今夜は救急救命室勤務だと思っていたが……」
「その件ですの……。遅くして授かったものですから、とてもとても残念でしたし、気落ちもしましたけれど……、直哉さんもお義父さんも特に何にも言わずに労わってくれたので随分救われた思いでした。それに昔は女性側に問題が有ると言われて来たのですわよね?」 直哉さん
「お節(せち)料理は既にお重箱(じゅう)に詰めているので、お雑煮だけ作ればいいのだが……」 一応新年に相応しい身支度を済ませてからキッチンへと向かった。 新年用のお箸を――ちなみに名前は最愛の人の流麗な筆跡で既に書いてあった――並べていると小さな鍋にお餅が煮
「あのう、私考えたのですけれども、その西ケ花さんに弱みでも握られていたのではないかしら……と思うのですが……」 一斉に視線の集中砲火を浴びた瑠璃子さんはそれでも怯(ひる)まずに三人を見渡している。 こういう凛とした態度で自説を述べる人なので故長楽寺氏の非道
「その小説の作者の虚構(フィクション)も入っているとは思うのだが……。愛人というのはそんな考えを持ちながら抱かれているのだなと……。私は私とは全然異なるなと思いながら読んでいたので、殊(こと)更(さら)に印象深い記述だった。私は年越し蕎麦を一緒に食べている時と
「それが妥当でしょうね。ただ、税務署の監査が入った場合は認められないことの方が多いです。接待交際費は1万円前後が妥当だとの見解が確か税理士協会のガイドラインに載っていましたから。色々突(つつ)かれると厄介なことになりませんか?」 最愛の人がそんな知識も持って
「脚……そんなに開いて痛くないですか?」 本来ならばこの愛の姿勢は向き合って求め合うには向いていない。だから聞いてみたのだけれど……。「大丈夫……。とても悦(い)いっ……普段……届かない所まで……愛してっ……貰えるのでっ……」 腰を緩く回すと繋がった場所か
「瑠璃子、もう毒を食らわば皿までだ。今まで言っていなかったことを経済や会社経営にも詳しそうな香川教授と田中先生の前で言ってもいいかな?会社のことは家庭に持ち込みたくなくてさ、瑠璃子には伝えていなかった……」 祐樹まで経済や会社経営に詳しそうというカテゴリ
赤と白という新年の寿ぎに相応しい色に最愛の人の肢体を染め上げたいという欲求が昂(たかぶ)ってくる。「承りました。愛する聡の尖りもルビーよりも紅く染めて差し上げます」 慎ましやかに存在を主張する小さな尖り全体を舌で宥めるように転がした。もう片方は指で優しく
直哉さんはそれなりに整った顔をしているので、女性が放っておかないレベルだしK應大学生・商社マンというブランド力も相俟ってモテたことは容易に想像出来る。「ただ価値観がこんなにぴったりと合ったのは瑠璃子だけです。父が嬉しそうに写真を見せてくれた時には、正直
「分かった……。ただ、これはそれほど美味しくはないし……匂いも……。私にとっては最高に美味なのだが、それは主観的というか……。祐樹のだからで……」 優秀な外科医の適性でもある即断即決の最愛の人が珍しく言い訳じみた言葉を紡ぐのも祐樹の前だけだと思うと愛しさ
「幼稚舎からですか……。しかし、ウチの母校にも医学部は有りますけれど……?幼稚舎組は資産家とか政治家とかの比率もとても高いのでハイブランドが当たり前という風習は根強いものがあるといった印象を受けましたけれど……」 直哉さんが疑問に思うのも尤もだった。もし
最愛の人が床に跪いてベッドに腰を下ろした祐樹の半ば育った欲情と愛情の象徴を紅に染まった唇が括(くび)れの部分を挟み込んで舌全体が先端部分を満遍(まんべん)なく舐めてくれる。 その健気で淫らな奉仕に視覚と触覚が紅色の火花を散らすような錯覚を覚えた。小さな、そ
「色々有りますが、父の第一の問題点は経費の使い過ぎが目に余るほど酷かったことですね……。あの人の経費乱用をまず止めて銀行に融資を頼むならまだマシだったのですが、そういう経営のスリム化を一切せずに拡大路線でしたから。銀行に対してウチの会社は与信枠がかなりあ
「お節(せち)料理は元旦の朝に祝うものだと思っていた……」 最愛の人が幸せそうに善哉(ぜんざい)の中に入っているお餅を薄紅色の唇へと入れて美味しそうに食べている。 善哉の上に載っていたせいで小豆(あずき)色に染まっていない白いお餅と花のような唇のコントラストに
多分、実母の佳世さんの紹介とはいえ初対面の人間二人にこう明(あ)け透(す)けに直哉さん夫婦が他聞を憚(はばか)る話をしてくれたのは、誰にも言えない類いの話でもやはり誰かに言ってしまって心を軽くしたいという気持ちからなのだろう。 それに最愛の人や祐樹は職業柄か
「祐樹お待たせして申し訳ない」 最愛の人が大きめのトレーを持ってリビングに入って来た。「いえ、私こそお手伝い出来なくて申し訳ありません」 キッチンに手伝いに行こうとしてつい画面を見てしまって弄っていたスマホをテーブルの上……ではなくソファーの肘掛けに置い
「心の中で思うのは個人の自由ですからね」 最愛の人が怜悧な口調で淡々と相槌を打った。ただ相手が何らかの感情で心に荒波を立てている時は事務的に話を進める方(ほう)が良いと経験則で知っているのだろう。「それは確かにその通りです。しかし父の場合は接待で遅くなった
「いや、感謝をしてから今年はこういうことをしますから見守ってくださいとお願いするのが最も神様に喜ばれるお祈りの方法だと書いてあった。だから多分祐樹のお願いは聞いて下さるだろうな……。それはそうと何をお祈りしたのだ?」 無神論者の祐樹だったが、そう言われる
すみません、とうとうブログ更新用に使っているパソコンが壊れたっぽいのです😭新年早々すみませんが、小説だけはWordで書いているので更新出来ません🙇♀️🙇♀️なるべくネカフェとかで更新したいと思いますが、今夜から明日の午後までネカフェ行けません。気長に待っ
「初めまして。いらして頂けて光栄です。香川教授、田中先生」 マンションのオートロックを解除してくれた瑠璃子さんが玄関先で笑みを浮かべている。「こちらこそお会い出来て光栄です」 最愛の人が笑顔で挨拶しているやや後ろに立って瑠璃子さんを見た祐樹は強い既視感を
「ねぇ、神様にお年玉をたくさん貰えますようにって祈ったら叶うんかなぁ」 子供のはしゃいだ声が静謐な夜の闇を弾んだものに換えている。「いい子にしてたら考えんでもないな。あ、明けましておめでとうございます」 家族三人でお詣りに来たという感じの父親に声を掛けら
「……それほどストレスの多い仕事ではないので、故長楽寺氏とは異なるかも知れないが……」 最愛の人がようやく考えが纏まったという感じで言葉を紡いだ。 祐樹的には最愛の人だって文字通り他人の命を預かっている仕事なのでストレスは甚大ではないかと密かに思ってしま
大学時代から京都市内に住んでいるが、同級生と年越しをするといっても単に飲み会をする程度だったし、ゲイバー「グレイス」に通うようになった後は単なるお祭り騒ぎのカウントダウンパーティで盛り上がった後に意気投合した相手と「姫初め」と称した欲望の発散をしてきた
旧年中は小説を読みに来てくださったり、ランキンポチで応援頂きまして有難うございました。今年もなるべく休載などせずに更新を頑張りますので変わらぬご愛顧を切にお願い致します。読者様の今年のご多幸をお祈り致しております。 こうやま みか拝にほんブログ村小説(
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「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
祐樹を魅了してやまない端整で理知的な顔が曇っている。 もし仮に二人きりでこんな表情を浮かべられたら、あたふたと原因を探すだろう。そして大輪の花のような笑みを浮かべて貰うために何だってする。 祐樹は最初こそ彼の見た目に強く惹かれていたが、付き合いが長くな
最愛の人は白く長い指で繊細なロイヤルコペンハーゲンのコーヒーカップを持っているだけで絵になる。白と濃いブルーの模様がしなやかな指を精緻に彩ってくれているので。「済みません、説明不足でしたね」 コーヒーの湯気が頬を薄紅色に染めていくような気がした。 遠藤
その手が有ったかと刮目してしまった。 特に舞妓さんや芸子さんの料金、確か「花代(はなだい)」と言ったような気がするが定かではない。 ともかく彼女達を呼ぶには莫大なお金が掛かりそうで、あの時はチームとして機能するようにと必死にテンションを上げていて、その場
「医学部生は国際公開手術のスタッフとして動員されていたみたいです。正装でもあるアカデミックガウン着用という命令が出ていたみたいですね。 そう言えばオックスフォード大学に格別の思い入れがある黒木准教授に手術成功の報と共にアカデミックガウン姿のルイス君と撮っ
ただ、彼女の部屋で同棲を始めて引っ越していって家賃を浮かそうとした人がいたり、極端な例では生きた化石のようなマルクス主義を標榜する共産党員にいつの間にか傾倒してしまって共産党員と共同生活をするために部屋を引き払ったりしたと聞いた、あくまでもウワサだった
「なるほど……。景気があまり宜しくない日本経済を回すための外貨獲得のために頑張って耐えたということなのですね。 レセプション会場で協会長などに顔を売るために森技官は鋼(はがね)の精神力で耐えたというわけですか……。そして手術が終わって気が抜けてトイレに駆け
「教授執務室に参りましょう。長くお待たせするのは失礼ですから。 その封筒やパンフレットなど参考になりそうなモノは全て持って行かれることを強くお勧めします」 いくら手技がイマイチだと言ってもそれは香川外科に所属しているからで、公立病院なら執刀医になれるポテ
「億単位の大きな買い物は営業マンの言い分だけではなくてセカンドオピニオンを受けてみられては如何でしょうか? 尤も私にとって億単位のお金を動かすなどということは、Ai(死亡時画像診断)センターのMRIなどしか縁がないのですが、相(あい)見積(みつ)もりを取るよう
今は祐樹も外科医として至高とまでは行かないがそこそこのレベルには達している。いるのだけれども医局のムードメーカーとして振る舞うように心掛けているし、香川外科では一介の医局員に過ぎないので声は掛けやすい。 医局員が後日問題になりそうな言動をした場合は厳然
「なるほど、良く分かりました。河川敷とか堤防は確かに景観を損ないますよね。 ビックベンと国会議事堂のごく近くまで川が流れているのには驚きましたが……」 嘘を見抜かれていないことに安堵した。 普段の祐樹だったら気付くだろうことを、術者に選ばれてからスルーし
遠藤先生とは業務連絡と当たり障りのない世間話をするだけの祐樹だけれども、香川外科の一員だ。 それに最愛の人も業務以外の相談も歓迎すると言っていた。祐樹がそれほどの知識を持っていながら勿体ないとアドバイスをしたことが切っ掛けで。 遠藤先生の手技は香川外科
「私も貴方の隣に座っている森技官は緊張の余り幻覚でも見たのかと思いましたよ。 といっても貴方の幻覚なら大歓迎ですけれども、森技官が出て来るとはまさに『心外』といった感じですけれどね。 しかし、あの場に居たのは驚愕でした。手術に集中しないといけないのでチラ
「香川と一緒に吞んでいた時に資産運用の具体例とか、投資用のマンション購入はよくよく考えた方(ほう)が良いとか言っていたような気がするのだが、あいにく酔っぱらっていたので良く覚えていない……」 頭を掻いて恥ずかしそうな表情を浮かべている。 最愛の人と柏木先生
祐樹はより一層輝く笑みを浮かべて真っ直ぐに自分を見てくれている、とても優しい眼差しで。 それだけでこのホテルに来て良かったとしみじみと思った。「このホテルの規約上、どうなっているか良く分からないのですが……、今夜一晩貴方が一緒に居て下さる方(ほう)が私も
「田中先生、お疲れ様。病棟の患者さんについて俺に報告すべきことはなかったか?」 医局に戻った祐樹に医局長の柏木先生がのんびりとした声を掛けてくる。 夜勤・宿直や救急救命室に行く医師達も居るが、一日の仕事を終えたという弛緩した空気が漂っている。「特にないで
「このままキスを続けたいのは山々なのですが、次のステップに移りたくなってしまいます。 生憎、呉先生と森技官もいずれは来るでしょうし。 続きはレセプションが終わってからの最高の私のご褒美として取っておきます、ね?」 昨夜リッツホテルで最愛の人と二人きりにな
ただ、祐樹が嬉しそうな、そして太陽の輝きにも似た笑みを浮かべているのを見て心の底から安堵した。 そして太陽に照らされて咲く花のように笑みを浮かべてしまう、祐樹の笑みにつられたように。「いえ、絶対ロンドンにはいらっしゃれないものだと諦めていた……。いえ最
ただ、鬼の情緒というか気持ちには恋愛感情も含まれているのだろうか?主人公が最初に対峙した強い鬼は家族愛に飢えていた。それに遊郭に居た鬼の妹はどうやら鬼のボスに対して特別な感情を抱いていた感じで描かれていたし、懐いた感じで寄り添っていた記憶がある。 ただ
山科さんと目の高さが同じになるように腰を屈めて真摯な笑みを浮かべた。「以前は心臓の手術というだけで命が危険だという固定観念が有りましたけれども、息子さん世代の場合はインターネットでも情報が入手出来ますし、それに何よりウチの香川の素晴らしいとしか言いよう
「あら、田中先生。昨日はLINEをわざわざ有難うございます」 午後の手術(オペ)の執刀を無事に済ませて医局へと戻るべく廊下を歩いていると長岡先生からそう挨拶された。LINE……ああ、そう言えば森技官からスタッフさんの機嫌を取れというミッションを受けて長岡先生を紹介
祐樹はしていないがSNSだと「同好の士」が集まって話す機会がたくさんあるらしい。 小林さんも祐樹同様にそういうネットの使い方はしていないようだった。だからこの時とばかりに話して来るのだろう。 中間管理職は部下からも上からも色々言って来て大変だという程度
「病棟に行って来ますね」 医局のスライドドアを開きながら医局長の柏木先生に届くように声を張り上げた。手術(オペ)も無事に終了した医局には小さな達成感という感じの空気が流れている。 といっても祐樹は午後の手術は最愛の人の第一助手だった。ただ執刀医も務めている
このマンションはファミリー向けの物件だ。 彼は祐樹に振られる前提で帰国していたと後から知った。このマンションは帰国前の引継ぎなどで多忙を極めていたせいで長岡先生に任せていたら「手頃な広さ」と言われて契約したらしい。 まあ、家の値段ですか?と突っ込みたく
いつも読みに来て下さって有難うございます!!先程、操作をミスってしまいまして明日未明(1時半)に予約投稿しようとした記事がうっかり「公開」になってしまいました。LINEで通知が行った読者様やにほんブログ村・人気ブログランキングの新着にも載ってしまった(現
「大丈夫ですか?」 知らない人が声を掛けて彼に傘を差しだしてくれた。「有難うございます。うっかり凍結した場所を踏んでしまったようですがもう大丈夫です。ご心配とご迷惑をお掛けして申し訳ないです」 親切な人と最愛の人に向かってそれぞれに頭を下げた。「あのう、
「ああ、そう言えば患者さんに山科さんっていらっしゃいましたよね、私が主治医の。あの人は京都でかなりの影響力を持つ人らしいです。久米先生が『患者さんでなければ、畏れ多くて話も出来ないほど偉い人』と教えてくれました」 至って普通の人という感じの患者さんだった
「祐樹、お帰り」 静謐で暖かな部屋に最愛の人の明晰な声が闇に溶け込んでいくように小さく響いた。「祐樹が帰宅する午前三時頃には自然と起きてしまう」と言っていた人はやはり目覚めていてくれていた。そういう細かな心遣いもとても愛おしい。眠って体力を回復して欲しい
「私が出来ることなら喜んで祐樹のお願いは聞くが? それはそうと、祐樹は車を持っているという点を病院では内緒にしているのではなかったか?」 最愛の人が降りしきる雪の中で春の陽射しのような笑みを浮かべている。 以前の彼は直球勝負というか全く嘘が吐(つ)けない人
「私は不調法なので茶道を嗜んでいないのですけれど……」 最愛の人も高校時代までは経済的に恵まれていなかったと聞いている。 全国模試の結果は――本人が匿名を希望しない限り――受験者に配布されて、上位の人間の名前と高校名は載るというシステムだ。祐樹も別に匿名
今年のホワイトデーは平日なので、直近の土日に大阪のホテルを予約しよう。 豪華客船の映画を二人で観に行った時に交わした会話を思い出した。ソファーだか寝(カ)椅子(ウチ)だかに横たわってヌードの絵を描かせたヒロインのことを肯定的に言及していた最愛の人なので、ヌ
「祐樹、この見事な岩と雪が降りしきる様子を画像に撮って内田教授や浜田教授にも是非見せたいのだが……?」 最愛の人がいかにも重大なことを相談するといった風情で聞いてきた。ちなみに主人公の羽織(はおり)を着た青年は――ただ、アニメではこの岩を斬った段階で隊士で
「わぁ……。桜の木が見えないのに、こんなに桜の花びらが舞い散っていて……。しかも藤の花の紫との調和が……。何だか夢のような景色だな……。着物の模様みたいでとても綺麗だ……」 二個目の「おかか」つまり鰹節(かつおぶし)のおにぎりを唇に運びかけている状態で手を
「あれ?支払ってくれるのか?なんかさ、田中先生にそんなにたかって良いのかな?とは思っていたんだけど……」 ケーキを奢ると言ったのは紛れもなく祐樹だ。だから自分の発言には責任を持ちたい。「いえ、ここは私が支払い……」 嵩張る紙袋を二つ取り出そうとした分、身
降りしきる雪が割れた岩に幻想的かつ荘厳なイメージを付け加えている。 鬼退治のアニメでは一年中藤の花が狂い咲くという山に――そんな山が本当に有るのかどうか祐樹は知らないし、多分ないだろうなとも思う――弱い鬼がたくさん生け捕りにされて閉じ込められているとい
祐樹が最も気に入っているコンビニのロゴが付いたポリ袋に目を留めた人が満面の笑みを浮かべている。 この神社はこんなに人が来ないのに、経営(?)が成り立っているのが不思議なくらいだ。祐樹にとっては、人が居ない点が気に入っているのだけれども。最愛の人の細い髪
「そうか。だったらピザを取らないか?『ピザーラスタイル』のさ『チーズ&ハニー』が食べたいな……」 祐樹はそのピザを食べたことはない。ないけれども、医局の細やかな催し物の際(さい)にダイエット中にも関わらず久米先生がオーダーしていた。 チーズがドバっと掛かっ
ちなみに羽織を着た若者は岩の近くで自撮りをしている。SNSにでも投稿するのだろう。 そういうコアなファンのコミュニティが有ることを小児科の浜田教授から聞いた覚えがある。その他の観光客は社会現象とまで評されたように年齢はまちまちだった。 これならば成年男