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池窪弘務
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2019/03/26

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  • 1946 31

    1946 31

    194631花見今年も桜は去って行った。僕の散歩コースに、野ざらしの地蔵に覆い被さるように、雷に二つに裂かれた桜の老木がある。桜が地蔵を守ったのか?地蔵が桜を守ったのか?老木は今年も瑞々しい花を咲かせた。【一句】肩並べ地蔵と二人花見かな194631

  • 1946 30

    1946 30

    194630父の帰還また父のことです。1946年に僕が生まれました。「お父ちゃんが行ったから、戦争に負けたんや」アホな息子は言ってました。リアルに覚えています。それと母が言っていたことが一つあります。父はトマトが嫌いだったけれど、帰還した父は畑のトマトにかぶりついたそうです。僕もトマトが苦手です。【一句】「父帰還」しやぶりつきたるトマトかな194630

  • 1946 29

    1946 29

    194629雑踏久し振りに難波に出た。何年ぶりだろう。補聴器は用をなさない。【一句】雑踏に老いの場所なし春愁ひ(はるうれひ)194629

  • 1946 28

    1946 28

    194628三角コーンいつもの散歩コース。もうウォーキングとは言わない。いつもなら右に曲がって池の地蔵さんに手を合わせてUターンする筈が、舗装された道が続いている。「三角コーン」が置いてある。三角コーンは家に帰って調べてみました。妻となら「赤いあれ」で通じますが(実際通じました)。通じなければ、工事現場なんかの赤い三角。結構そんな言葉を使っている気がします。三角コーンは言い得て妙ですね。「言い得て妙」も言い得て妙。後日三角コーンは端に寄せられていたので行ってみました。道は途切れ、同じ田んぼの風景でした。なんで道を作ったのだろう。【一句】道の果てに道の生まれし春野かな194628

  • 1946 27

    1946 27

    194627言葉の断片父は寡黙な人だった。何を話したかあまり覚えていない。父の思い出は断片的な言葉として蘇ってきます。102才で去年亡くなった義母を最後にみんな亡くなりました。もう僕の親の世代はいない。【一句】亀鳴くや父の言葉のひとつづつ194627

  • 1946 26

    1946 26

    194626ランドマーク二上山(にじょうざん)は西のランドマークです。三七年間通勤の車窓から眺め続けた山でもあります。雄岳と雌岳が寄り添う姿は間違いようがなく、方向音痴な僕にはありがたい山です。朝のウォーキングの友達です。霞がかかると、仲のよい夫婦みたいな影になります。当方は金婚式。あちら様は何婚式?【一句】二上山夫婦の影の薄霞194626

  • 1946 25

    1946 25

    194625スイッチ24の続きです。朝からかなり強い雨。傘が嫌いな僕は早足で歩きます(走れない)。皮膚科で処置をしてもらった後あちこちで濡れました。それにしても補聴器が効かないなあ。引きこもり老人はひと月分ほど喋ったのに。病院でもサンドイッチを買ったパン屋さんでも。改札を通った時も。これは音が出ないのか?。なんか出たような気もするし……。駅は暗く、静かでした。「この補聴器あかんなあ」あかんのは僕でした。寝る前に補聴器のスイッチを切ったままでした。【一句】補聴器のスイッチオフに春の雨194625

  • 1946 24

    1946 24

    194624時々老人性の疣(いぼ)が出来ます。今度は頭に出来たみたい。見えない。仕方ないなあと言う感じ。少し悩んで「先生に診てもらおう」と決心します。昔。右頬にほくろがありました。いや実は疣(いぼ)だった。先生に窒素で焼いてもらって消えました。兄弟が集まった時「ねえねえ、わしの顔変わってへん?」と、意気込んで訊きました。兄弟は「わからへん」と一言。「しっかり目をつむって下さいね」と先生の声。【一句】疣(いぼ)を焼く女医の気配や春の雨194624

  • 1946 23

    1946 23

    194623サボテントイレ掃除をしていたら、窓辺にごく小さい鉢がある。何か植わっている。妻に訊いた。「これなんや?」「サボテン」「サボってんの」久し振りの駄洒落なのに妻は笑わない。現役の時は、僕のおやじギャグは若い子に人気があった。「そろそろ言うぞ」そこで間一髪間を置いてのたまう。どーと笑いが来る。「生きてんの?」「生きてるよ」「水は?」「たまーにやってる」あの時10滴ほど水を遣った。【一句】サボテンのミリの成長厠かな194623

  • 1946 22

    1946 22

    194622お鈴(おりん)仏壇が我が家にやって来て三ヶ月ほど経ちます。同じ部屋で寝ています。光明真言を三度唱え次ぎに南無大師遍照金剛と三度唱えます。その合間に叩くのがお鈴(おりん)。そう呼ぶのを知りませんでした。「おりん」の響きは清々しいですね。三月句会に投句しました。1点入りました。その1点が嬉しかった。【一句】春雨やお鈴の音の少し濡れ194622

  • 1946 21

    1946 21

    194621心電図左胸が痛い。循環器内科の定期診察に妻に付き添ってもらった。「胸が痛くって」「いつどのように?」しどろもどろの僕に、「しょっちゅう言うてます」と妻が一言。心電図を取ることになった。さっさと動く妻について行くのが精一杯。「病気になりそう」一つしか違わないのに。お婆ちゃんはお爺ちゃんより元気なのだ。「正常です三年前と全然変わってないですよ」胸の痛みもましになったような気がする。【一句】年寄りの不安死ぬこと桜咲く194621

  • 1946 20

    1946 20

    194620寒造(かんづくり)父のことをよく思い出す。自分だけ一品酒の肴を作ってもらって、一合の日本酒を飲んでいた。【一句】晩酌は父の至福や寒造194620

  • 1946 19

    1946 19

    194619スーパー歩いて五分ほどの所に大きなスーパーマーケットが五年ほど前にできました。「ここにスーパーが出来ます」と不動産屋が言っていたのを思い出します。五十年近く前です。自転車を取り上げられたお爺さんは、買い物難民を免れました。【一句】可愛い子のレジを選んで木の芽時194619

  • 1946 18

    1946 18

    194618「ドラえもん」「ドラえもん」のび太と空の理想郷(ユートピア)を観ていた。少しわくわくする。孫と観たのは「アンパンマン」。長女と観たのは「スーパーマン」。字幕だった。必死に説明するアホな若い父。今度会ったら覚えているか聞いてみよう。家族で観たのは、「ジュラシック・パーク」三人の娘は大人になっていた。梅田の北野劇場だったと思う。超満員だった。【一句】「ドラえもん」一人鑑賞春灯(はるともし)194618

  • 1946 17

    1946 17

    194617つげ義春『ネジ式紅い花』つげ義春著すごい本だ。高価なのだが十分値打ちがある。想像以上だった。つげ義春の絵も好きだ。僕の青春の全てがあった。言うほどのものではないけれど。三十年以上も前、ラジオドラマの入選者が名古屋に集まったことがあります。話している内にみんながつげ義春フリークだと分かって大笑いした。人生は旅だなあって思います。僕は旅行が好きではなかった。土台が外されたみたいて、不安になるのです。旅はいつも不安と道連れ。旅行の帰路で「ああ帰ってきた、よかった」って言ったら、「お前とは絶体旅行に行かない」と言われたことがあったなあ。でも彼とは、それからも何度も職場の旅行に行った。二人とも友達がいなかった。「せつない」は『紅い花』ではなくて、『もっきり屋の少女』だった。「だめです私はせつないです」見...194617

  • 1946 16

    1946 16

    194616チューリップ【一句】どこにでもいる子がいいねチューリップ大谷くんおめでとう。194616

  • 1946 15

    1946 15

    194615ほうれん草前の冷蔵庫はドアにマグネットが使えたのに、新しいのは引っ付かない。白板(ホワイトボード)を側面につけて使っている。冷蔵庫の見た目は良くなった。本当はピーマンと書いてあった。ピーマンの方が走書きに合う。でも、ほうれん草もいいなあ。書いとかないと、忘れる。【一句】白板にほうれん草と走書き194615

  • 1946 14

    1946 14

    194614春一番「オヤスミ」と、妻は二階へ。僕は一人で気楽に過ごす。【一句】毎日が別れと出会ひ春一番194614

  • 1946 13

    1946 13

    194613額突然大きな音がした。地震。蛍光灯の紐を見つめたが動いていない。額が落ちていた。妻を呼んだ。こういう時の僕は危険だ。硝子の破片が飛び散っていた。大きな破片を取って、後は掃除機で吸い取る。手際よく片付いた。「気いつけや」と、僕は言うばかり。額の中身は、薬剤師免許妻と二人分。その他卒業証書等。「もうええねえ」と妻が言った。丸めて賞状筒になおした。飾っていることもないか。【一句】額落ちる割れた硝子の余寒かな194613

  • 1946 12

    1946 12

    194612『東京都同情塔九段理江著』途中から分からなくなったので最初から読み返した。現代版・バベルの塔という評も読んだ。言葉の通じなくなった世界。ロシアとウクライナの戦争を思い浮かべる。ウオーキングで池のそばにある地蔵に手を合わす。「おんかかかびさんまえいそわか」を3べん唱える。「かかか」は笑い声。地蔵の後の桜は真っ二つに裂けている。花芽がいっぱいついているのに気づいた。【一句】雷に裂けし桜の芽立かな194612

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