日本人の死因のトップ3はがん・心臓病・脳卒中です。その中の脳卒中に特化して、脳卒中にならないように、またなったらどうすれば良いのかをわかりやすく解説していきます。
高血圧治療指針が5年ぶりに改訂 日本高血圧学会は4月に高血圧の治療指針を改定しました。 脳卒中や心筋梗塞などは高血圧が主な原因として挙げられます。 そのため今回の改定は血圧を下げる降圧目標を厳しく設定した形になります。 高血圧の診断 医師が高血圧と診断する基準は 「上の血圧は140mmHg以上、下の血圧は90mmHg以上のいずれかに該当」 する場合になります。 この高血圧と診断する基準に関しては従来と変化がありません。 新たな血圧の基準 正常血圧 「上は120mmHg未満かつ下は80mmHg」 正常高値血圧 「上は120~129mmHgかつ下は80mmHg」 高値血圧 「上は130~139mmHg、下は80~89mmHgのどちらか」 これらの正常高値血圧と高値血圧は高血圧手前のグレーゾーンになります。 改訂された降圧目標 今回の改定では、合併症のない健康な75歳未満の成人の降圧目標を最新の研究をもとにして厳しく設定しました。 従来よりも血圧の上の値も下の値も10ずつ引き下げ、 「上は130mmHg未満かつ下は80mmHg未満」 の降圧目標としました。 また、外来で通院できる75歳以上の降圧目標は 「上は140mmHg未満かつ下は90mmHg未満」 と設定しました。 国内の高血圧患者数と治療をしている人、していない人 国内の高血圧患者はおよそ4300万人いるとされています。 高血圧に対して治療をし、従来の指針の降圧目標である上の血圧140未満、下が90未満に達している人は1200万人にとどまり、3割にも満たしていません。 治療をしていない残りの3100万人は ①自分が高血圧だと知らないが1400万人 ②治療を受けているが、降圧目標に達していないが1250万人 ③知っていても治療をしていないが450万人 となっています。 高血圧と診断はされていなくても生活習慣の見直しが必要 新指針では 「上は120、下は80を超えると、脳卒中や心筋梗塞・狭心症に代表される脳心血管病や慢性腎臓病などの罹患、死亡リスクが高くなる」とされています。 そのため高血圧の診断基準である「上は140以上、下は90以上」に該当していなくても、早くから生活習慣を見直していくことが重要になります。
脳梗塞の前兆であるTIAはなぜ一過性の症状がでるのかを解説します!!
TIAはなぜ一過性に症状が生じる? 心臓から脳に通じている血管は内頚動脈と椎骨動脈という血管になります。 これらの血管の動脈が硬くなるとTIAが起きやすいです。 特に内頚動脈の動脈硬化がTIAの原因になります。 血管にできるこぶ「プラーク」が悪者 内頚動脈は首の前の方を通っている左右2対の動脈です。 この内頚動脈に「アテローム」というコレステロールなどが血管の内壁に付着してできたお粥状のこぶのことで、「プラーク」とも呼ばれるものができ、血管の内腔を狭めてしまいます。 血管の壁が弾力性がなくなった動脈硬化の状態の血管にはこのプラークができやすくなっています。 何らかの原因によってこのプラークに亀裂が入ると、この亀裂を修復しようと血小板が集まって血栓を作ります。 この血栓のことを「血小板血栓」といい、この血栓が血流で流れて脳の血管を詰まらせてしまうと脳梗塞が出現します。 血小板は血液を固める効果がありますが、溶けやすいという特徴もあります。 できたばかりの血栓はなおさら溶けやすいために、もし血管が血栓によって詰まって症状が出現しても、すぐにこの血栓が溶ければ、血流は流れるため、症状も消えるのです。 これがTIAの症状が一時的であることの理由なのです。 脳梗塞の危険度を知ろう「ABC²Dスコア」 脳梗塞や脳出血のような脳卒中は、治療をしなければ時間がたてばたつほど後遺症は重くなります。 逆に、早期発見ができすぐに治療ができれば、後遺症は軽く済むということもできます。 ただの体調不良と思わずに、速やかに医療機関を受診することがとても重要です。 TIAが起きた後に実際に脳梗塞が起きるリスクは、患者さんによって異なってきます。 そのリスクの程度を簡単に評価できるものが「ABC²Dスコア」になります。 ・年齢 ・血圧 ・麻痺が体の片側に出現しているか ・麻痺はないが構音障害があるか ・TIAの持続時間 ・糖尿病があるか を確認します。 各項目の点数を合計して点数が高いとリスクが高いことを表しています。 最高点は7点、6点以上がハイリスク、4点以上が脳梗塞のリスクが高いとなります。 このスコアは特別な器具は必要なく、ベッドサイドで簡単に評価することができます。 しかし、4点未満だからといっても脳梗塞を発症する患者さんは多くいます。
脳梗塞の詰まった場所別の症状の出現の仕方、代表的な症状を解説!!
梗塞がおきた脳と反対側の半身に麻痺が出現する 脳は、それぞれの部位によって、手足を動かしたり、見たり、記憶したり、話したり、などの様々な役割が分担されています。 そのため、脳梗塞によって出現する症状は ・詰まった場所や ・梗塞の大きさ ・徐々に詰まったか、急に詰まったか などの梗塞の条件によって症状は様々なものになります。 症状の特徴としては 多くの場合、梗塞が起きた脳の反対側の半身に出現します。 ・右脳で梗塞が起きた場合は、症状は左半身に出現 ・左脳で梗塞が起きた場合は、症状は右半身に出現します。 これは、運動の指令は運動前野からはじまり錐体路とよばれる伝導路を通って脊髄、そして手足に伝達されますが、この錐体路は首あたりで左右に交差しているために、梗塞した脳とは反対側に症状が出現する理由なのです。 脳のどこが詰まるとどんな症状が出現するのか 内頚動脈が詰まった場合 内頚動脈は首の前の方を通っている大きい血管で、左右2本通っており、左の内頸動脈は左の脳を栄養し、右の内頚動脈は右の脳を栄養しています。 この内頚動脈は太い動脈なのであまり詰まることはありません。 もし詰まった場合は、 ・反対側の手足の運動麻痺 ・反対側の顔や手足の感覚障害 ・言語障害 ・嚥下障害 ・失語 などの症状が出現します。 内頚動脈は眼球にも栄養を送っている血管なので、ここが詰まると失明する場合もあります。 中大脳動脈が詰まった場合 中大脳動脈は最も詰まりやすい血管であり、脳梗塞全体の60~70%とされています。 内頚動脈は首から脳に入ると、そこで前大脳動脈と中大脳動脈に分かれます。 中大脳動脈のはじまりの部分で梗塞が起きると様々な症状が出現します。 ・反対側の手足の運動障害 ・反対側の感覚障害 ・失語 ・失読 ・失書 ・失認 ・失行 ・同名半盲 などが出現します。 特徴的なのは利き手の反対側の脳を優位半球(ほとんどが左側の脳)と呼びますが、ここには言語中枢があるため、失語症や失読、失書などの症状が出現します。 前大脳動脈が詰まった場合 前大脳動脈は、内頚動脈が脳に入ってから枝分かれした動脈で、主に前頭葉を栄養しています。 ・反対側の手足の運動障害 ・反対側の感覚障害 ・記憶障害 ・尿失禁 ・注意障害 ・脱抑制
脳梗塞の発症直後は絶対安静!! 急性期では全身状態がそれ以上に悪化しないようすることが重要になります。 そのために発症後24時間はベッド上での絶対安静とし、血圧や呼吸状態、体温、水分のin/outバランスなどの管理を行います。 脳梗塞急性期の血圧のコントロール 脳梗塞の発症直後は脳浮腫による頭蓋内圧亢進などによって血圧が上昇しやすくなっています。 しかし、血圧をこのタイミングで下げるよう降圧治療を行うと、脳への血流が減少してしまい症状の悪化につながるため、原則としては降圧治療は行いません。 血圧は発症後1週間ほどで自然と下がってくることがほとんどです。 しかし、t-PA療法によって血栓溶解療法を行っている場合や心原性脳梗塞のため抗凝固療法を行っている場合は出血性梗塞を予防する目的で降圧治療をすることもあります。 脳梗塞急性期の呼吸管理 意識障害があり呼吸困難のケースの場合はまず気道確保を行います。 それでも気道確保が十分に行えていない場合は、気管内挿管をの処置をします。 意識障害がなかったり、明らかな低酸素血症でない場合は、酸素投与はしないことが原則です。 高濃度の酸素は活性酸素を増やしてしまうために脳組織にダメージを与える危険性があるためです。 脳梗塞急性期の体温管理 急性期には体温が上昇することが多いですが、脳梗塞の場合は体温上昇が1~2℃でも脳損傷を悪化させる危険があります。 たいおんが上昇している場合は、その原因の除去とアイスノンなどを使用して体温を下げる処置が必要になります。 水分補給と栄養補給 脳梗塞の急性期は嘔吐や発汗のために脱水症状を引き起こすことがあります。 体内の水分量の減少は脳血流の減少につながり、症状の悪化を招き、また血液の粘度が高まり新たに血栓ができやすくなってしまいます。 そのため点滴などによって水分補給を行う必要があります。 しかし、水分も摂取すればいいというわけではありません。 過剰な水分補給は脳浮腫の悪化を招くため管理しなければなりません。 水分補給も大事ですが、栄養補給も必要です。 脳梗塞で意識障害や嚥下障害があると食事摂取ができなく栄養補給ができないことがあります。 ・静脈栄養 ・経鼻栄養 ・胃ろう ・経口摂取 これらの栄養摂取の方法を患者さんの状態をみながら選択していきます。
脳梗塞を発症しやすい時間、場所、季節は?それがわかれば対策をとれることも!
脳梗塞が起こりやすい時間帯 脳梗塞は血圧が変動したり、脱水が原因となって起こりやすい傾向にあります。 時間帯で言うと、 ・睡眠中 ・起床時 ・活動開始時 に起こりやすいとされています。 睡眠中は汗をかくためそれにより脱水になりやすく、血圧も低くく血流がゆるやかなために血栓ができやすくなるのです。 脳梗塞のおよそ4割は睡眠中におこるといわれています。 脳梗塞にも種類がありますが、 ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は睡眠中に起こりやすく、 心原性脳梗塞は起床後2時間以内に起こりやすいとされています。 脳梗塞が起こりやすい場所 先ほども説明したように、脳梗塞は睡眠中に起こりやすいです。 そのため自宅にいるときに発症するケースが多いといえます。 自宅といっても様々ですが、 ・寝室 ・浴室 ・脱衣所 ・玄関 が多いとされています。 浴室で発症するケースは、発汗によって多くの水分が失われて、血液の粘度があがり血栓ができやすくなるためです。 脱衣所や玄関で発症するケースは、特に冬に急激な温度変化によって血管が急に収縮し血流が悪くなり血栓ができやすくなるためです。 浴室から脱衣所にでたら寒いという経験は誰しもしていると思いますが、暖かいところにいて血管が拡張しているものが、寒いところにでると急に血管が縮こまるためです。 起こりやすい季節は? 脳出血や脳梗塞を含めた脳卒中は冬に多いというイメージがあります。 屋内と屋外の気温差が大きく血管に負担がかかることが、冬に多く発症するというイメージに結びついているのでしょう。 実際には脳梗塞と脳出血で発症しやすい季節は違います。 脳梗塞は6~8月の夏に多いとされています。 夏に多い理由としては脱水症状が起きやすいことと関連しています。 厚生労働省の統計によると、 夏に次いで多いのは秋(9~11月)、その次に冬(12~2月)、最も少ないのは春(3~5月)という順番になります。 脳出血は、逆に冬に最も多く、夏は少ないとされています。 しかし、これはあくまでも傾向であり、発症の危険性は季節に関わらず常にあると考え予防に努めることが重要です。
脳卒中は日本人の死亡原因の第4位 脳梗塞や脳出血などのいわゆる脳卒中は1980年までは日本の死亡原因の第1位でした。 それ以降は、徐々に減っていき、 1位:ガン 2位:心臓病 3位:肺炎 4位:脳卒中 の順番になっています。 厚生労働省の統計によると 2013年の死亡総数のうち、脳卒中で亡くなった人は11万8347人で、全体の9.3%という報告があります。またそのうち脳梗塞は6万9967人で、脳梗塞は脳卒中で亡くなった人の約6割を占めていると報告されています。 脳卒中は日本人の寝たきり原因の第1位 日本人が寝たきりになる理由はさまざまですが、脳卒中が原因の場合が18.5%を占め、第1位となっています。 2位:高齢による衰弱(13.4%) 3位:骨折・転倒(11.8%) と2013年の国民生活基礎調査で報告されています。 脳卒中の死亡率は低下しているも患者数は増加? 治療法の進歩や高血圧にたいする意識変化などにより、脳出血の発症患者は少なくなっており、死亡率も低下しています。 しかし、食生活が肉食に変化していることや高齢化にともない、脳梗塞の発症患者が増加しており、脳卒中全体の患者数は変化していないのが現状です。 また、脳卒中は加齢による動脈硬化が原因にもなるため、高齢者のほうが発症しやすいです。 そのため、高齢者の数が激増している日本では、今後、脳卒中患者は増えることが予想でき、2020年には患者数は300万人に達するとされています。
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