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2018/07/29

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  • 親切の人類史①

    『親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか』(2022/12/20・マイケル・E・マカロー著)、図書館の新館コーナにあった本です。本書は、人間の利他行動の列挙から始まる。埋解を深めるため、チンパンジーにできないことを列挙してみよう。もっとも近縁の霊長類とは対照的に、米国では毎年。150人以上、英国でも100人近くが、赤の他人に腎臓を提供している。エルサレムにある世界ホロコースト記念顫は、ホロコーストの惨禍の中、死や投獄のリスクを侵してまでユダヤの人々を助けた、27.362人もの非ユダヤ人の栄誉を称えている。力-ネギー財団は、他人の命を救うため、覚悟の上で自ら重大な危機のなかに身を投じた米国の一般市民を、これまでに1万人以上も表象している。。カーネギーメダル受賞者の五人に一人は、死後に賞を授かっ...親切の人類史①

  • 領解文ー本願寺派4僧侶が議論

    『中外日報』(2023.3.15日号)よりの転載です。大谷派住職がオンラインシンポ本願寺派4僧侶が議論浄土真宗本願寺派で1月16日に発布された「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)についての消息」を巡って、SNS上で疑問や批判の声が上がり、意見書の提出や署名運動をする動きが見られるなど波紋が広がっている。「門主批判につながりかねない、かつてない事態」という声も聞こえてくる中「冷静に議論できる場を」と真宗大谷派の瓜生崇・玄照寺住職がこのほどオンラインでシンポジウムを開き、4人の本願寺派僧侶が領解文の意味や教学的問題、今後の展望など多岐にわたって議論した。現在もアーカイブで視聴でき、累計視聴者数は1・8万人を超えて増え続けており、大きな反響を呼んでいる。(渡部梨里)シンポジウム「『新しい領解文』を考えるー組織...領解文ー本願寺派4僧侶が議論

  • 資本主義の本質①

    『資本主義と危機―世界の知識人からの警告―世界の知識人が、欲望、再配分、エコロジーなどの論点から、危機の原因とその克服の可能性を語る』(岩波書店・2021/05/28)からの転載です。マルクス・ガブリエル「資本主義の本質」からの一部転載です。今日は資本主義の問題を中心にお話を伺いたいと思っています。よろしくお願いします。ああなたはNHKの番組「欲望の資本主義二〇一八年―闇の力が目覚める時」(二〇一八年一月三日放映)のなかで、ドナルド・トランプ大統領〔当時〕を「ショーマン」であり、資本主義の本質はショーであるという興味深いテーゼを立てていらっしやいました。その点についてご説明いただけるでしょうか。MG資本主義の本質は、本来そこには存在しない何かを見せることにあります。つまり、資本主義とは本質的に錯覚を作り出...資本主義の本質①

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑥

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。このマズローのモデルは一般的に三角形かピラミッド型で表され、第一の、つまり最下層のレベルは、「生理的」欲求を示している。具体的には呼吸、食物、水、睡眠、性などのことだ。その上の階層は「安令」の欲求である。これは財産、肉体的な安全、生計を件るための仕事、健康、住居などである。3番目は、「所属」の欲求。つまりコミュニティとの一体感、家族、友情、愛などだ。4番目は「承認」欲求。これは自信、自尊心、他所からの尊重、達成感などである。そして最後、5番目のレベルであるピラミッドの頂点は「自己実現」で、マズローによると創造性や問題解決、共感、道徳、至高体験などの欲求だという...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑥

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑤

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。生まれて間もない赤ちゃんが親と一緒にいるときに、これと同じようなことが起きる。赤ちゃんには親のふるまいを真似るなど、自分が見ている行動を「模倣」する性質が生まれつき備わっている。オーストリアの動物学者で、ノーベル賞受賞者でもあるコンラート・ローレンツは動物行動学、つまり生物の行動の研究分野を切り開いたひとりだ。ローレンツが特に興味を持ったの、動物のアイデンティティはどのように形成されるのか、また、生まれてからどのように親から「刷り込み」がなされるかについてだった。これをローレンツが、さまざまな実験の中で明らかにしたことは有名である。その中でもよく知られているの...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑤

  • 本願寺派定期宗会 特報「新しい領解文」

    『中外日報』(2023.3.10日号)に「浄土真宗本願寺派定期宗会特報」が掲載されていました。長いですが、全文転載します。浄土真宗本願寺派第321回定期宗会が2月22日~3月3日に開かれ、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を巡り様々な議論が繰り広げられた。宗会議員らは、一般寺院やSNS等でも疑問視する声が上かっていると指摘、制定や勧学寮の同意の経緯、総局の打ち出す拝読・唱和を主とする普及策等について追及し、見解を求めた。(渡部梨里)「全勧学寮員の同意」は解説付した理由問う制定の経過開会に当たり大谷光淳門主は、教団が戦争協力差別に関わってきた歴史とその責任を忘れてはならないことに言及し、浄土真宗の教えの肝要が広く次の世代に確実に伝わるよう、新しい「領解文」の消息を発布したと述べた。そして「伝える伝道」から...本願寺派定期宗会特報「新しい領解文」

  • 宗会での「新しい領解文」についての議論①

    『中外日報』(2023.3.8日号)に、本願寺派宗会での「新しい領解文」についての、議論の内容が掲載されていました。以下転載です。浄土真宗本願寺派第321回定期宗会は3日、2023年度宗務の基本方針案と各種会計歳計予算案の合議案を可決し、閉会した。議論となった新しい「頷解文」(浄土真宗のみ教え)の拝読・唱和について、時間的な猶予を求める請願書が提出されたが否決され、今後は総局の示す宗務の基本方針にのっとり普及策が進められる見込みだ。(渡部梨愚)請願者は富山教区善巧寺(富山県黒部市)の雪山俊隆住職で、宗会議員15人が紹介議員となり、園城義孝議長宛てに提出された。請願書では、新しい「領解文」について「違和感を持つ声が多数上がっており、内容が理解できていないのに唱和しなければならないことへ困惑の声が散見される」...宗会での「新しい領解文」についての議論①

  • 資本主義の本質②

    マルクス・ガブリエル「資本主義の本質」の続きです。貨幣MGここにひとつの問題があるとしましょう。資本主義は、それに対する解決策を示すことによって欲望が満たされると言うのです。しかし、何かを価値あるものと見なすことにも有効期限があるため、当然のことながらこうした解決策はそう長くは続きません。このことが意味するのは、本来そこには何もなかったわけですから、こうした方法で生み出された価値はすぐに消えてなくなるということです。消えてしまえば、あらゆるものが消えてなくなってしまうのです。ここには資本主義的エントロピーがあります。あらゆるものが構造の不明暸さのなかでたちまちのうちに消えてなくなります。そうした価値がすぐになくなってしまわないために、いまでは〔その価値が〕安定したものであるという印象をも売り出されなければ...資本主義の本質②

  • どうする家康

    『中外日報』(2023.3.8日号)、真宗大谷派の情報コーナに「どうする家康」のドラマについて記されていました。NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」の第7~9話は、愛知県安城市の本證寺を主な舞台に三河一向一揆と対峙する徳川家康の苦闘を描く。3話分の制作には近松誉本廟部長や安藤弥・同朋大教授が時代考証に関わった。このうち近松部長は本證寺の仏具などのしつらえや、住職の空誓らの所作・勤行の指導、衣体の考証など作を担当した。同部長によれば、真宗の装束は南北朝時代の絵詞や桃山時代の絵像などは難しかったという。当時の読経の実態もほぼ不明。ドラマ中の正信偈の読経は大谷派の節を用いたが、本願寺の東西立前だったことも踏まえ、大谷派の独自性があまり出ない、抑揚の少ない真読の読法にした。ドラマでは本證寺の境内で歩き巫女の...どうする家康

  • 矛盾する多様性

    『産経新聞』(2023.3.12)も「愛という名の下にー矛盾する多様性」イスラム思想研究者・麗澤大学客員教授飯山陽氏が寄稿していました。興味深い記事なので、全文転載します。愛という名の下にいいやま・あかり昭和51年生。上智大学文学部史学科卒業、東京大大学院人文究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得退学。博士(文学)。上智大学研究所客員所員など歴任。本紙コラム「新聞に喝」執筆メンバー。著書に「イスラム教の倫理」(新潮新書)など、最近の共著に「騙されないための中東入門」(ビジネス社)がある。自由主義諸国では「多様性を認め合う社会を目指す」のが正しいことだとされている。日本でもあらゆる政党やメディアがそうあるべきだと主張している。岸田文雄総理も2月17日。「政府としては、多様性が尊重され、すべての人々...矛盾する多様性

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか④

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。それから2500年のあいだ、私たちは理性を崇拝してきた。私たちが口癖のように繰り返す言葉を見れば、この理性という言葉がどれほど私たちの頭に根づいているかがよくわかる。「ちゃんと理性で考えてるか?・感情的になりすぎてないか?」だが、蓋を開けてみれば、私たちは「理性的どころか、むしろ感情的」にものごとをとしえていたわけだが、その感情が欠けていても、ものもとを明確に考える本来の能力が損なわれてしまうようだ。これについては、著名な神経科学者のアントニオ・ダマシオが、『デカルトの誤り情動、理性、人間の脳」で論じている。この本の中でダマシオは、「エリオット」という患者との...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか④

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか③

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。私は、イスラムの神秘主義スーフィズムの古い言い伝えを聞いたことがある。それは、間違った場所で真実を探すことについて語った民話である。その民話の主人公はナスレッディン・ホジャといい、13世紀のトルコの有名なトリックスターとして知られている。どういう話か説明しよう。このナスレッディンは、隣国から国境を越えて故郷の国に帰るうとしていた。彼は、ロバを綱で引きながら歩いていた。ロバの背には、藁が山と積まれていた。国境の見張番は、ナスレッディンが巧みに人を驅すという噂を聞いており、何かを密輸しているに違いないと思ったので、不正をあばいてやろうと彼を呼び止め、尋問した。「お...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか③

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか②

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。ジョー・ハンデルスマンは、ハワード・ヒューズ医学研究所の分子細胞生物学、およびイェール大学の発生生物学の教授で、ホワイトハウス科学技術政策局の科学担当次長も務めている。このハンデルスマンと研究チームは、男女の科学者の能力差が何世代にもわたって縮まらないのは何らかの力学によるものではないかと考えた。そして研究室のスタッフを雇うときにジェンダーが影響をおよぼすかどうかを調べるため、いささか単純な実験を企画した。この単純といえば単純な試みにおいて、ハンデルスマンは私立大学3校と公立大学3校の科学の教授と連絡を取り、ラボマネージャーの職を希望する新卒者の評価を依頼した...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか②

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか①

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)、図書館の新刊コーナーになった本です。興味深い実験が多数掲載されています。イギリスのレスター大学の心理学科で音楽関係の研究を行っているエイドリアン・ノースとデイヴィッド・ハーグリブズ、ジェニファー・マッケンドリックは、人が買い物いものをするときに音楽の影響を受けるかどうか実験を行った。彼らは、ごく普通のスーパーマーケットの棚に8本のワインを置いた。4本はフランス産で、4本はドイツ産である。置かれた場所が実験に影響しないように、ワインの瓶は4段の刪にそれぞれ隣り合わせに置かれた。値段と糖度はどれも同じにした。瓶のそばには原産国の旗が添えられた。そして、店内には日替わりでフランス...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか①

  • 神話研究の最先端

    『神話研究の最先端』(笠間書院2022.12.5刊),分厚い本ですが、ほとんど興味がないものでした。仏教研究の方法と神話師茂樹一方で、仏教が様々な説話、神話、伝承の宝庫であることもまた広く知れており、盛んに研究されている。インドで仏教が創始されて以後、仏弟子たちによって、ブッダの偉大さを示すため、様々な神話的エピソードが彩られた仏伝や前生譚(ジャータカ)が作られた。また経典では、難解な教理を伝えるために様々な譬え話が用いられているが、『百偸経』など、譬え話を用いた説法を集めたアンソロジーも作られている。そのなかには、神話的な内容のものも少なくない。ブッダ入滅後、仏教教団は部派に分裂するが、各部派はそれぞれに経を保持していたので、そのなかに説かれる神話的エピソードなども部派ごとに少しずつ変化していった。中に...神話研究の最先端

  • ベルクマンの法則とアレンの法則

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりにもう一つ転載します。ベルクマンの法則寒冷と熱帯のように対比的な気候と関係して、古くからいかれてきた法則にベルクマンの法則とアレンの法則というものがある。ベルクマンの法則というのは、一八四七年にクリスティアン・ベルクマンが発表したもので、恒温動物では同じ種の中で、または近縁な種同士において寒冷な地方に生息している動物ほど大型になるというものである。一方アレンの法則は、ジョエル・アレンが一八七七年に発表したもので、恒温動物の同種または近縁な種において、寒冷な地方に生息している動物ほど耳・首・足・尻尾などの突出部が小さくなるという法則である。ベルクマンの法則にしたがって、同じクマの仲間でも、ホッキョクダマの仲間は体長約二・五メートル...ベルクマンの法則とアレンの法則

  • 女児100に対して男児105

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりにもう一つ転載します。世界人口の中で男女は半々であり、生まれてくる数も半々だと思われがちであるが、実はそうではないい。一説によると生まれてくる人の数は、おおよそ女児100に対して男児105であり、男児のほうが五パーセント分多いといわれる。ただし、女性より男性のほうの寿命が短いため、総人口としてはだいたい男女は半々か、むしろ女性のほうが若干多いことになる。例えば日本では2011年の出生性比は105であるが、総人口の男女比は九五程度であった。男性の寿命が短いのは、労働やストレスによるからといわれることもあるが、欧米諸国や日本などをみると、生まれた時から一貫して女性よりも男性のほうで死亡率が高いとされ、大人の労働云々だけのことでは説明...女児100に対して男児105

  • うつ病と人間の進化

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりに、2つ転載します。うつ病と人間の進化うつ病は、生物としての進化が背景にあったことが指犒されている。NHKが2013年10月20日に放送した『病の起源第3集うつ病』という番組と、その書籍はさまざまな視点からこのことに迫った。番組においては、脳にある扁桃体という部分が、ストレスに対して反応しやすくなることが、うつ病を発症するメカニズムであるとした。そして、実験的に外敵の恐怖などのストレスをうけ続けたゼブラフィッシュが、うつ病のような症状を引き起こしたことを紹介して、うつ病の存在は生物進化のかなり初期に罹るることも指謫した。また長期間仲間か遊離されたチンパンジーにも、うつ病のような症状がみられた例も出された。そのうえで、同番組では東...うつ病と人間の進化

  • 言葉―7秒間の記憶

    「大乗」(2023.3月号)掲載の、執筆者無記名の、私の原稿です。言葉―7秒間の記憶近代言語学の父・ソシュール私たちにとって、なくてはならないものの一つに「言葉」がある。言葉と言えば、「近代言語学の父」とも称されるソシュール(1857-1913)が有名だ。自ら言語観や言語思想の論文を発表することなく、1907年から1911年にかけてソシュールの授業を受講していた学生が書き留めたノートを、本人の死後に編集して出版された『一般言語学講義』(1916)が一冊あるだけだ。それが言語学のコペルニクス的転回を遂げたと称されるほどの功績を成し遂げた。通常、私たちは「言葉とはモノや概念の呼び名である」と思っている。ソシュールは「世界ははじめから個別の事物があるのではなく、言葉によって世界は認識されていく」と説いた。浄土真...言葉―7秒間の記憶

  • 人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念②

    『人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念』(2022/12/14・ブルース・フッド著)からの転載です。手放したくない所有物を放棄しなければならないときも、精神的な打撃を受ける場合がある。このモノを手放したがらないという思い切りの悪さは、人間というもの、また人間と所有物の関係を赤裸々に物語る特徴の一つだ。戦後二十数年間の消費主義を経て、1960年代末から人気か出始めたとトランクルーム業を考えてみよう。年々より多くの人が、持ち物を処分せずにトランクルームに保管するようになっている。現在、アメリカではマクドナルドの支店数よりもトランクルーム施設のほうが数が多く、利用者の六五%は自宅にガレージがあるにもかかわらず、トランクルームを借りているという。いまや多くのガレージに車の姿はなく、家に収ま...人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念②

  • 人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念①

    『人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念』(2022/12/14・ブルース・フッド著)からの転載です。所有の前には占有があった。占有は単に、持つ、運ぶ、座るなどして、資源を思いどおりに物理的に利用できる状態を指す。前章で見たように、対象物を占有し、占有し続けようと努力する動物は数多い。子どもの発達過程でも、所有の概念が生まれる前に、やはり占有が存在する。占有的なふるまいの発達を分析した心理学者リターファービーは、世界中のだれにでも当てはめられる、占有の二原則を考案した。5歳の子どもから50代の成人までの被験者に聞き取り調査をした結果、第一に、「占有とは何かを好きなようにコントロールできることだ」という点に全員が同意した。第二に、「占有は自分のアイデンティティーの一部になりうる」という...人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念①

  • 女性と漢字

    昨27日、未明目が覚めるとラジオのスイッチを入れた。『深夜便』明日へのことば、「頭木弘樹(文学紹介者)・〔絶望名言〕紫式部」を放送中でした。ラジオのスイッチを入れたとき、丁度、「一」という漢字を書くにも憚った。そこまで隠さないといけなかったことを紹介していた。この時代、男性が理解できることは立派なことだけれども、女性だとからかいや反感の種になるので、紫式部は屏風に書かれた漢字も読めないふりをしていたという。平安時代に、ひらがなが発明されて、女文字を言われていた。「源氏物語」はひらがなで書いたが、直筆は残っていない。「兄の式部丞が子供の時分に史記を習っているのを、そばで聞き習っていて兄のよく覚えなかったり、忘れていたりするところを自分が兄に教えるようなことをしたので、学問好きな父は残念なのはこの子を男の子に...女性と漢字

  • ホモ・サピエンスの15万年

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりに、一つ転載します。このような原人が進化して、例えば北京原人が進化して現在の東アジア人になり、ジャワ原人が進化してインドネシア人になったという考え方もかつてはあったが、今では否定されている。否定する恨拠となった研究の一つに、カリフォルニア大学バークレー校のレベッカ・カン博士やアラン・ウイルソン教授らによって。1987年に科学誌「ネイチャー」に公表された論文がある。この研究チームが世界中の女性から集めた、ミトコンドリアDNAという遺伝子を分析して比較したところ、女性らは皆、計算上は約二〇万年前にアフリカカにいた一人の女性から生まれてきた、という結論になったのである。この研究に対しては、科学の世界でさまざまな議論が行われたが、考古学...ホモ・サピエンスの15万年

  • 欲望の経済を終わらせる②

    『欲望の経済を終わらせる』(2020/6/5・井出英策著)からの転載です。本書、最後の提案は、弱者の自由の条件をかたる、旧未型の「レトロリベラル」から、すべての人たち自由の条件をかたる、末末志向の「プロリベラル」へとリベラルの思想を転換することである、それは、繰りかえし述べたように、「批判」を目的化するのではなく、新自由主義を「無効化」するための戦略である。これまでに述べてきた議論をもとに、プロリペラルの指針を図式的にしめしておこう。1)「自己責任」⇒「満たしあい」プロリベラルは、格差是正や弱者支援を第一義的な目的とはしない。経済成長によって自己責任で生き、一部の弱者を救済すればよい時代は終かった。ベーシック・サービスをつうじたすべての人びとの「尊厳ある生活保障」を柱に「品位ある命の保障」を組みあわせ、人...欲望の経済を終わらせる②

  • 欲望の経済を終わらせる①

    来年、ビハーラ全国集会で慶應大の井出英策先生をゲストとするとのことで、図書館から『欲望の経済を終わらせる』(2020/6/5・井出英策著)を借りてきました。承認欲求と自由人間の基礎的な生存・生活保障、そして「よりよい心」を追いもとめる自由、これらが形づくる「頼りあえる社会」のベースにあるのは、人間である以上は、すべての人が他行から承認されたと感じられなければならないという信念である。政治哲学者アクセル・ホネット(1945~)は、人間の「承認欲求」を3つの領域に分類した。『アクセル・ホネット承認をめぐる闘争』)。ひとつめは、「愛」「ケア」の領域である。この領城では、家族や友人の関係にみられるように、おたがいの欲求やニーズをみとめあい、たがいが依存しあうなかで、それぞれが個別のニーズを持った存在として承認され...欲望の経済を終わらせる①

  • 利己的な遺伝子

    物行動学者リチャード・ドーキンスの、『利己的な遺伝子(TheSelfishGene)』(1976)、『生物個体は、利己的な遺伝子を永続的に継承させていく“遺伝子の乗り物”であり、遺伝子保存を究極目的として盲目的な行動をとるプログラムされたロボットである』、古い本ですが一応、借りてきました。少しだけ転載しておきます。動他物は多細胞体に進化し、あらゆる細胞に全遺伝子の完全なコピーが配分された。いつ、なぜ、独立に何度、このようなことが起ったのかはわからない。ある人々はコロニーにたとえて、体を細胞のコロニーだという。私は体を遺伝子のコロニー、細胞を遺伝子の化学工場として都合のよい作用単位、と考えたい。あるものが、友のために生命を捨てることが利他的であることはあきらかだが、友のためにわずかな危険をおかすこともやはり...利己的な遺伝子

  • 江戸時代は老人が多かった。

    『江戸病草紙―近世の病気と医療』(立川昭二著)に江戸時代の諸々が記されています。江戸時代は老人が尊敬されたのは、儒教の影響もあるが、老人そのものが少なかったからではないかという疑問を持ち、この本を入手しました。結論から言えば「江戸時代の平均寿命は30歳」なのは、乳幼児の死亡率が非常に高かったからです。そして結構、年寄りも多かったよいうことです。11代将軍家斉(いえなり)には、55人の子女があったが、この55人中2人が流・死産、二歳未満の死亡は二十一人。十五歳以上まで生きだのが二十一人、それも四十を越えた者は、12代将軍家慶を含めてわすか七人。五十二人の平均死亡年齢は、なんと十四歳であった。将軍・大名の子女ですら、平均死亡年齢はこのように低かった。一方、江戸時代の戸籍といえば人別帳がある。速水融は信州諏訪地...江戸時代は老人が多かった。

  • 刷り込み

    『ニュートン新書基礎からわかる動物行動学』(2022/5/18・トリストラム・D・ワイアット著)刷り込み動物行動学者のコンーフート・ローレンツの後ろをついて回るハイイロガンの雛の群れの写真は、動物の行動に関する最も有名な画像として知られている。孵化直後の感受期に初めて見た大きな動くものがローレンツだったハイイロガンの雛は、彼を親と認識し、愛着をもつようになった。刷り込みと呼ばれるこの行動は、多くの哺乳類や鳥類の初期の発達段階に見られる学習の一種だ。野生のガンの場合、雛が最初に目にする動くものは、コンラート・ローレンツではなく、母烏である。このような「親子間の刷り込み」機能の目的は、生後問もない動物が他の成体ではなく自身の親の後ろをついて回れるように、確実に親を認識することだろう。それは親子間の強い社会的絆...刷り込み

  • 旃陀羅表記②

    旃陀羅、変成男子のついて、『宗報』(2019.7月号)で、岩本先生の娘さん岩本智依氏が「経典から差別の現実を学ぶということ」を執筆されておられます。https://www.hongwanji.or.jp/news/upload_img/jinken_shuhou_1907.pdf「おわりに」の部分だけ転載します。親鸞聖人は阿闍世や韋提希など『観無量寿経』の登場人物について、その社会で差別をし、差別をされるという苦しみの中で生き、み教えに差別・陂差別から解放され救われていった存在だと見ておられます。そのため経典の中には「栴陀羅」に関わる身分差別や「女人往生」という性差別、さらには『無量寿経』第四一願に関わるようないわゆる「根欠」といわれた障害者差別など、赤裸々な差別の現実が説かれています。しかし決してそれは...旃陀羅表記②

  • 旃陀羅表記①

    2月8.9日の鹿児島の連区の布教団研修会、旃陀羅について、同朋会研修会講師岩本孝樹氏の講義もありました。「旃陀羅や変成男子」の事についての講義がありました。「水平社宣言」のなかにも「エタ」という背別用語もある。差別用語の言葉があるからと言って、ただちにそれは「差別表現」だとするものではない。とこ事でした。以下参考になるので、別資料ですがアプしておきます。真宗教団連合公開講座テーマ「是栴陀羅と差別問題について」 文化時報プレミアム(bunkajiho.co.jp)真宗教団連合公開講座テーマ「是栴陀羅と差別問題について」真宗教団連合公開講座『観無量寿経』にある「是旃陀羅」は、王舎城の悲劇を扱った部分で、父を殺した阿闍世王が母をも殺そうとした時、「母を殺せば、旃陀羅と同じだ」と大臣がいさめた事柄として載っている...旃陀羅表記①

  • 世界で一番古い企業

    『謙虚で美しい日本語のヒミツ』からの転載です。東京商エリサーチが世界41力国で行った調査によれば、世界には200年以上の歴史をもつ企業が5586件あるそうです。そのうち、なんと6割近くの3146社が日本企業です。また、日本には企業から1000年以上経っている企業が7社もあります。その筆頭が、いまから1400年以上前、聖徳太子の時代に創業された「世界で一番古い企業」といわれる、大工集団・金剛組です。では、歴史や伝統を大切にしている印象の強いヨーロッパを見てみましょう、最も老舗が多いドイツでは、200年以上の歴史をもつ企業が837社あるそうです。続くオランダには196社あります。一方、建国から250年ほどしか経っていないアメリカでは14社。そして、歴史と伝統を重んじる印象の中国では9社しかないのだそうです。で...世界で一番古い企業

  • 日本語のヒミツ④

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です。常に自らを反省する思いをもち、受動態を多用する日本人受動態の問題は重要なので、さらに突っ込んで解説しようと思います。例えば相手に室に入ってほしくない場合、韓国語なら「私の部屋にあなたが入ると困るよ」と言います。一方、日本語では「あなたに入られると困るよ」と受動態で伝えます。同じような意味に感じるかもしれません、が、物亊のとらえ方は大きく違います。韓国語の場合は、あなた、が悪い・私は悪くないという意識が強く含まれています。一方の日本語では、「私か困る」と、視線を自分のほうに引きつけているのです。つまり能動態の韓国語は、あらゆる言葉が相手の責任であり自分の責任ではないという形になっています。一方、受動態の日本語...日本語のヒミツ④

  • 日本語のヒミツ③

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です日本語は心のなかでへりくだる気持ちを含んでいる言葉日本人が受動態を頻繁に使うことは、私にとって大きな謎でした。ところが、私は、人前でスピーチをする機会が増えた頃に、「受動態で表現することは、日本人の性格と深く関わっているのではないか」と気付いたのです。受動態を意識しながら「日本人とは何か」を探っていくのはとても面白くなりました。スピーチで冒頭の挨拶をするとき、韓国語なら「皆さんが見ているから、緊張しています」と言うでしょう。一方、日本語なら「皆さんに見られて、緊張しています」と話すのが自然です。「皆さんが見ているから」という言い方は、直線的です。これに対し、「皆さんに見られて」という受動態で話すたびに、私は体...日本語のヒミツ③

  • 「弔い直し」心残り解消

    昨日(2023.2.15)の『産経新聞』に、葬儀についての記事が掲載されていました。「弔い直し」心残り解消新型コロナウイルス禍で身内を亡くした遺族らが、十分なみとりや葬儀を行えないことで後悔を感じる「弔い不足」という言葉が注目を集めている。近年の葬儀の簡素化は新型コロナ禍で加速したが、参列したくてもかなわなかったケースなど、亡き人への心残りを抱えたままの人は多いという。葬儀業界では葬儀とは別に、改めてお別れ会を行うなど、「弔い直し」ともいえる解決策を図る動きが出ている。(深津響)(前略)30.6%が「後悔」葬祭大手「メモリアルアートの大野屋」(東京)は昨年10月、5年以内に親族、友人らを亡くした400人に、葬儀後の心情に関するアンケートを実施。後悔や心残りに感じていることはあるかという質問に対し、喪主や喪...「弔い直し」心残り解消

  • 日本語のヒミツ1①

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載ですが、よくご往生された深川倫雄和上が「お土産を頂いたではなく、お土産を下さった」と相手中心の会話をすべしというご法話がありました、まさにそのことが記されていました。以下転載「先生が叱った」と「先生に叱られた」の違いは大きい韓国人の場合、来日以後、比較的短期問で、生活習慣や文化の違いを乗り越え、日本でスムーズに暮らせるようになります。ところが、滞在が1年を過ぎて日常会話が使えるよになった頃には、別の問題が起きてきます。「日本語の言い回し」に混乱するようになるのです。すでにお話ししたように、日本論と韓国語は語順が同じです。また、文法もきわめて似ています。来日1年日くらいまでに覚える簡単な日常会話くらいまでなら、すん...日本語のヒミツ1①

  • 日本語のヒミツ②

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です。ところで、現代の近代文法でいう受け身(受動態)とは、通常「あるもの、が他のものに働きかける動作を、受ける側を主役(主語)」にして述べることです。つまり、「叱る」「押す」「蹴る」「打つ」など、明らかに他のものへの働きかけの動作を示す言葉について、受け身という位置があるのです。だからたいていの言語では、受け身はもっぱら他動詞についてのみ使われます。しかし日本語では、自動詞でも受け身で用いられること、がしばしばあるのだから不思議です。「見る」「食べる」「飲む」もみな自動詞です。外国語では受け身がつくれない自動詞なりに、日本語でごく普通に受け身で使っているのです。すでに紹介したものも含めていくつか例を挙げてみましょ...日本語のヒミツ②

  • 絵葉書とeメールどちらがエコか?

    ウエッジ2023.2月号にデジタル=エコの虚構―エネルギーの大量消費を見直せ(ギヨーム・ピトロン記述)からの転載です。「へー、そうなんだ」という記事です。「いいね」を押すのは無料ではない私か指摘したいのは、フェイスブック、アマゾン、グーグルなどのスマートなロゴの背後にはインフラストラクチャーが存在するということだ。ツイッターで「いいね」を押すのは決して無料ではない。それを可能にするためには巨大なデータセンター、海底ケーブル、そしてデジタル機器などの物質が必要となる。デジタルは実際には膨大な環境へのフットプリントを残している。そういう実態を目に見える形で伝えることは重要だ。絵葉書とeメールどちらがエコか?ところで、絵葉書を送るのとeメールを送るのではどちらが高コストなのか?絵葉書を送るには、紙を作るために木...絵葉書とeメールどちらがエコか?

  • 「伝わる伝道研究室」設置

    宗教業界紙『中外日報』(2023.2.8日号)に「総合研究所改編へ」「伝わる伝道研究室」設置という記事が出ていました。リム化を図る。現在の教団総合研究室、教学伝道研究室、仏教音楽・儀礼研究室の3研究室を「現代教学・課題研究室」と「伝わる伝道研究室」の2室に整理する。「現代教学・課題研究室」では宗勢基本調査、現在的諸課題や総局が指示した教学諸問題の調査・研究、儀礼の研究などをこう。「伝わる伝道研究室」では、現代に即応する真宗教学の再構築及び調査研究、伝わる伝道の研究、真宗聖典の普及、仏教音楽の研究と創作、普及などを手掛ける。真宗聖典の編纂事業は終了し、仏教音楽・儀礼については人々の生活や生き方に関わる宗教儀礼を総合研究所が掌握、勤式儀礼や声明などは本願寺式務部と僧侶養成部勤式担当が取り組むとする。職員制度は...「伝わる伝道研究室」設置

  • 21 Lessons ; 21世紀の人類のための21の思考

    『21Lessons;21世紀の人類のための21の思考』(河出文庫・2018年(米)、2019年(日)ユヴァル・ノア・ハラリ著)は、現実を生きるための21の提言です。冒頭の言葉です。Lesson1幻滅:先送りにされた「歴史の終わり」ファシズムの物語は、異なる国家間の闘争として歴史を説明し、他のあらゆる人間の集団を力ずくで征服する一つの集団によって支配される世界を思い描いた。共産主義の物語は、異なる階級問の闘争として歴史を説明し、たとえ自由を犠牲にしても平等を確保する、中央集権化された社会制度によって、あらゆる集団が統一される世界を思い描いた。自由主義の物語は、自由と圧政との闘争として歴史を説明し、あらゆる人が自由に平和的に協力し、たとえ平等はある程度犠牲にしても中央の統制を最小限にとどめる世界を思い描いた...21Lessons;21世紀の人類のための21の思考

  • 鹿児島別院でした

    7.8日は鹿児島別院でした。連区(九州地区)の布教団研修会、百数名の参加でした。この4ヵ月、気に掛かっていたので、その重圧から解放されました。私に与えられたテーマは「現代社会と浄土真宗」80分と60分、そしつ40分の質疑応答でした。80分は、話そうと思っていた内容を詰め込みすぎて、65パーセントくらいしか伝えられず、内容はぎりぎり60点、60分の講義は、80点くらいの内容でした。勉強になりました。参加者へ御礼。鹿児島別院でした

  • 本多正信の供養塔

    『中外日報』(20223.2.1日号)に「本多正信」のことが掲載されていました。家康を支えた名参謀本多正信真宗門徒らしく供養塔のみ愛知県安城市野寺町の真宗大谷派本流寺には、今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」の主人公・徳川家康を支えた名参謀として知られる本多正信(1538~1616)の供養塔がある。本證寺は三河地方を代表する有力真宗寺院の一つで、戦国時代には一揆勢の拠点にもなった。正信は本證寺近くの小川(現同市に小川町)の門徒武士として生まれ、幼い頃から同寺に参拝していたという。1563年~64年の三河一向一揆で一揆側に加担したが、家康に敗れて三河を退去。約20年後に帰参するまで三河には戻らなかった。三河退去中の動向は不明だが、帰参後の正信は大名政策や外交、宗教政策など様々な分野で家康を支えた。本願寺の...本多正信の供養塔

  • 新しい領解文②

    昨6日は京都での会議、日帰りで22時過ぎの帰宅でした。会議中、臨席のH氏は、本願寺勧学寮に質問すると「新しい領解文」の解釈について、かなりの文字の質問書を書いていました。各地の住職方が「?」の声を上げたいる様で、本日、明日と連区の布教団研修会で鹿児島へ行きますが、きっとこの話題が上がるに違いありません。むしろ「上げてください」をお願いしようと思っています。写真は6日午前9時新幹線の中から撮ったものです。新しい領解文②

  • 新しい領解文

    『中外日報』(20223.2.1日号)に本願寺派の「新しい領解文」のことについての会議の内容が掲載されていました。法要で拝読・唱和を浄土真宗本願寺派は第6回企画諮問会議を1月25日に開き、2023年度の宗務の基本方針と具体策案、宗派各種会計予算案などを諮問した。「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)」について、各法要や研修会等での拝読・唱和や全教区・特区での学習会開催などの具体的な普及策が示され、委員からは厳しい意見も出た。23年度の宗務の基本方針は「新しい『領解文』(浄土真京のみ教え)に学び、行動する~『伝わる伝道』の実践」とし、特に注力する7項目の一つ目にも、その学びと実践を掲げた。総局は普及の方向性について「宗門内全般にわたり、法要儀式や日次勤行、法座をはじめ各種研修会等の機会に、拝読、唱和いただけ...新しい領解文

  • 文字の発明

    『産経新聞』(2022.2.4)に「文字の発明―脳の外で記憶知識を無限に蓄積」という記事が掲載されていました。最初の部分だけ転載します。文明の大躍進人間の知的活動の源泉は言語にある。その誕生は約10万年前ともいわれ、話し言葉によって始まった。書き言葉である文字が登場したのは5千年ほど前で、20万年に及ぶ人類史の中では最近のことだ。耳で聞いていた言葉を、目に見える記号と結び付けた画期的なテクノロジーは、人類に何をもたらしたのだろうか。文字の最大の利点は知識の保存にある。話し言葉は消えてしまうので、古代の人々は知識を歌や語りで伝承してきた。だが文字によって記録媒体に保存できるようになり、これが文明の大躍進を生んだ。筑波大の池田潤教授(言語学)は「人間の脳の記憶容量には限界があるが、文字の獲得によって脳の外に記...文字の発明

  • フレーミング効果

    『バイアスとは何か』(藤田政博著)、本からの転載です。フレーミング効果「朝三暮四」という故事成語があります。猿が好きな狙公(そこう)が、猿を飼っていました。エサの栃の実の与え方について、猿に対して「朝は3つ、暮れには4つ与える」と言ったら猿はそれでは少ないと言って怒りました。そこで狙公か「じゃあ、朝に4つ、暮れに3つにする」と言ったら喜んだ、という話です。この話の解釈として、「一日に7つなのは同じなのに、目先の違いに囚われることは愚かなことだ」というものがあります。朝三暮四はわかりやすい話なので猿のおかしさもすぐにわかるのです、か、もう少し複雑になると、同じような過ちをとかしてしまう現象があります。それがフレーミングの問題です。それがフレーミングは枠をつける、というような意味で、同じ問題や情報でも、提示の...フレーミング効果

  • ペロスペクト理論

    『バイアスとは何か』(藤田政博著)、本からの転載です。ダユエル・カーネマンとエイモスートヴァースキーです。ともにイスラエル出身の心理学者で、バイアスの研究を精力的に行いました。カーネマンとトヴァースキーの研究結果は、それまでバイアスの存在を考慮していなかっか経済学の理論を書き換えるものとなったのです。そして、「認知心理学、特に不確実性下における意思決定匚関する基盤的研究からの洞察を経済学に統合し、それによって新しい分野を切り開いた」という功績で、カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞しました(残念ながらトヴァースキーはその前に亡くなっていました)。それではまず、彼らの研究でもっとも有名なものとなった、プロスペクト理論を紹介しましょう。ペロスペクト理論―喜びと悲しみの非対称性バイアス研究の巨人の業績...ペロスペクト理論

  • 広域強盗事件に思う

    各地で相次ぐ広域強盗事件が報道され、「キム」や「ルフィ」といった強盗の指示役とされる人物が日本へ送還されるという新聞記事を読んでいて、ふと何日か前にアップした『近代とホロコースト』(ちくま学芸文庫・2021/4/12・バウマン著)の記述が思われた。同書では、ホロコーストがサディストや狂信者による激情的犯罪ではなく、有能・忠実な官僚による行政的犯罪であり、合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任と道徳を周縁に押しやる官僚制、合理主義、進歩主義、分類といった近代的諸要素が、暴力を独占し、社会的制約を受けない権力のもとで結びついたものだったということです。今、報道され得ている広域強盗事件も、指示する者がいて、直接、犯罪を犯す人間は、合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任...広域強盗事件に思う

  • イングルハート仮説

    2023.2月号大乗に、執筆者無記名で原稿を書き掲載されています。昨年4月号からの連載です。以下転載。フォーカス仏教ライフ「イングルハート仮説」歴史観の相違「イングルハート仮説」をご存知だろうか。アメリカの政治学者であるロナルド・イングルハート(1934.9.5~2021.5.8)が提唱したもので、人類は、時と共の文化的に進化していくという仮説だ。世界価値観調査という、世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較している国際調査がある。イングルハートは、この1980年から100か国・40年におよぶ調査に基づき、「社会が豊かになるにつれて、人びとの価値観は物質主義から脱物質主義にシフトしていく」と説き、価値観が、「生存重視の価値観」から「自己表現重視の価値...イングルハート仮説

  • 天気の子

    「君の名は。」は新海誠が監督・脚本ですが、それから2年後に「天気の子」を発表している。ストーリーです。神津島で暮らしていた高校一年生の森嶋帆高は、家出を決めフェリーで東京にやってきた。身寄りがなく高校生の帆高は、フェリーで知り合った須賀啓介と連絡をとり彼が経営する小さな編集プロダクションで住み込みのお手伝いを始める。関東の夏は、異常気象で毎日雨の天気が続いていた。そんな中、帆高は祈ることで晴天を生むことができる「晴れ女」天野陽菜と出会う。陽菜が祈ると必ずその周辺一帯は、一時的に晴れになった。二人は、「晴にします」という広告を出すと、評判は瞬く間に拡散され依頼が殺到する。一方、陽菜は度重なる祈りによって疲弊してく。陽菜は自身が「晴れ女」になってしまった経緯を話す。母親が死ぬ直前、帆高と出会った廃ビルの屋上に...天気の子

  • 出会いの不思議

    昨日の続きですが、何気ない2人の出会いの背後には、重々無碍な因縁の世界がある。その因縁の世界の一つを、一つの物語で示したのが「君の名は。」だということです。海で一匹の鯛(他の鯛と区別された固定魚)を釣る確立と、その鯛を海に逃して、もう一度、その鯛を釣る確率は同じです。そのようなことは現代では不可能なので、釣った鯛に発信器を付けて、世界中の船が協力してその鯛を探す。それでもその鯛をつることは不可能でしょう。しかしその鯛が釣れるとして、その鯛を釣るためのエピソード・物語を一つの象徴的な物語としてビジュアル化する。同ます。鯛を釣ったという結果が、「君の名は。」で「2人が住宅地の階段にすれ違い、振り返り、2人は同時に「君の名は。」と告げ」た場面です。その鯛を釣るためのエピソード・物語を一つの象徴的な物語としてビジ...出会いの不思議

  • 「君の名は。」

    2016年8月26日公開、アニメ映画「君の名は。」をアマゾンの無料配信で見ました。田舎暮らしの宮水三葉と東京の街で父と暮らす高校生の立花瀧。出会ったこともない2人がある日夢の中でお互いの身体が入れ替わっていることに気付く。戸惑いながらもお互いの生活を体験する2人、しかし、ある日を境にその入れ替わりは無くなってしまう。三葉の身を案じた瀧は、おぼろげな記憶を頼りに山奥にある糸守町にたどり着く。三葉はたしかにそこで暮らしていたが、3年前に巨大な隕石の直撃を受けたことで町はクレーターと化し、住民500人以上が犠牲になっていた。瀧は3年前の三葉とつながっていたのだ。そして三葉の住んでいた社を訪ね、三葉が仕込んだ、口噛み酒を手に取り飲むと、目が覚めると三葉の心の中にいました。それは、この町に隕石が落ちる前でした。今後...「君の名は。」

  • あらゆるものは毒である

    『「いただきます」の人類史:ヒトの誕生から生活習慣病の現代まで』(2022/10/31・蒼井倫子著)から一題転載します。あらゆるものは毒であるこれは、研修医だった頃に経験した症例です。もうすぐ1歳になる男の子が、けいれんで病院に救急搬送されてきました。小さい子どもの場合、熱がある「熱性けいれん」は多く見られますが、熱のない場合は、様々な原因が考えうるので診断は難しくなります。男の子に熱はなく、血液検査で血液の中のナトリウム(塩分濃度)がかなり低くなっていることはわかりました。しかし、その原因かわかりません。改めて、お母さんに話を聞くと、最近ミルクを飲むのをやめた代わりに、ミルクと同じ位の量の水を哺乳瓶であげていたことがわかりました。診断がつきました、「水中毒」です。水の飲み過ぎで血液が薄まっていたことが、...あらゆるものは毒である

  • 餓死者よりも肥満が原因の死者の方が多い?

    最近読んだ本の中に「餓死者よりも肥満が原因の死亡者のほうが多い」とあった。どの本か忘れてネットで検索してみました。世界の饑餓人口は「国連報告書」世界の飢餓人口年4600万人増え8億2800万人2021年2007年「シリーズ国際協力1飢え食べものをつくり不公平をなくそう」(リブリオ出版)p34には、「「飢え」が原因となって死んでいく人は毎年2000万人いて~」との記述があり。肥満人口は年代が違いますが、BMI(肥満指数)が25以上の過体重の成人や子どもの数は、全世界で2015年の時点で約22億人、全人口の30%を占めており、全世界のBMIが30以上の肥満の人口は、小児で1億770万人、成人で6億370万人に上る。そして、2015年には、肥満が関連する疾患により400万人が死亡し、全死因の7.1%を占めている...餓死者よりも肥満が原因の死者の方が多い?

  • さようならの言葉②

    『日本人のものの見方―〈やまと言葉〉から考える』(2015/9/29・山本伸裕著)続きです。英文学者の荒木博之(一九二四一一九九九)は、『やまとことばの人類学』という本の中で、「さらば」には、それまでの「こと」が終わって、これから新しい「こと」に立ち向かうのだといった心構えが表現されているとの見方を示しています。「日本人が古代から現代に至るまで、その別れに際して常に言葉して、「さらば」をけじめとする、「そうであるならば」という意のご言い方を使ってきたのは、日本人がいかに占い「こと」から新しい「こと」に移っていく場合に、必ず一度立ち止まり、古い「こと」と訣別しながら、新しい「こと」に立ち向かう強い傾向を保持してきたのかの証拠」だ、と言うわけです。なるほど言われてみれば、確かに日本人は、口々「さらば」を口にし...さようならの言葉②

  • さようならの言葉①

    『日本人のものの見方―〈やまと言葉〉から考える』(2015/9/29・山本伸裕著)からの転載です。「さようなら」についてです。一日のうちになすべきことを仕来たして別れる際には、しばしば「さようなら」という言葉が使われてきました。「さよう」は「そのよう」、「なら」は「ならば」の「ば」が省略されたかたちです。したがって、「そのよう(である)ならば」というのが、この挨拶言葉によって直接的に表現されてきた意味だと理解されるのですが、こうした言葉を別れ際に交わすことに、日本人はいったいどのような意義を認めてきたのでしょうか。世界中の言語には、それぞれに固有の別れ言葉が存在します。それらを大別すると、おおよそ次の二系統に分類できるように思われます。一つは、神の加点を祈る「ご加駿系」の別れ言葉、もう一つは、再会を期する...さようならの言葉①

  • 自己実現主義

    少し古い本ですが『日本の新たな「第三の道」』(2009/11/28・アンソニ-・ギデンス著)を借りてきました。少し転載しておきます。21世紀の新しい社会モデルである低炭素産業社会においては、ポストモダン的価値観の一部は持続するが、他の部分は変化する。つまり脱物質主義、自己実現主義、反権威主義、自然共生主義といった性向は析しい社会モデルと方向性を具有している。しかし獲得型個人主義、権利主張主義といった性向は低炭素産業社会の新しい社会契約とは相容れないで、撤収を求められることになるだろう。さらに低炭素産業社会では、自然共生主義が強力な性向となるであろう。持続する価値観・‐-自己実現主義価値観のポストモダン化現象の一つの重要な局面は、人々の仕事や組織に対する考え方の変化である。その中心的な要因が、自己実現主義の...自己実現主義

  • 『サピエンス全史』をどう読むか③

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、『サピエンス全史』の大いなる掲示長沼毅神を相手にしない宗教がある。共産主義や資本主義、自由主義などのイデオロギーを修辞的心に「宗教」と呼ぶのと似たもあるが、もうワンランク上の話である。「サピエンス全史」では、第12章「宗教という超人間的秩序」において、神を相手にしない宗教という点で仏教を特別視した。本文から引用すると「仏教の中心的存在は神ではなくゴータマーシッダールタという人問だ」(下P27)、「仏教は神々の存在を否定しないが…宇宙の神々が全員揃っても、その人を苦しみから救うことはできない」(下P31)と解説している。さらに第19章「文明は人間を幸福にしたのか」でも、下巻P237~240の4ペーシにわたって、仏教の考え方か...『サピエンス全史』をどう読むか③

  • 『サピエンス全史』をどう読むか②

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、認知革命派ゆっくりと進行した福岡伸一認知革命は突然変異か?ただ私か少し不満なのは幻想や虚構をつくり出す能力がサピエンスをしてサピエンスたらしめたという主張です。それを彼は認知革命と言って、だいたい七万年くらい前に起きたのではないかと考えています。七万年くらい前に人間はアフリカから出て世界中に広がり出して、そのときからいろいろな文化活動を急速に広めたので、このときに大きな転換があったのではないかということです。その転換は幻想、虚構をつくる能力を身につけたということによってもたらされたとハラリさんは考えます。そこで彼は「たまたま遺伝子の突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにないかたちで考えたり、まったく新...『サピエンス全史』をどう読むか②

  • 『サピエンス全史』をどう読むか①

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、冒頭の池上彰とユヴァル・ノア・ハラリの対談や、大澤真幸氏、福岡伸一氏らが『サピエンス全史』に対する批判・別視点からみた疑問点が書かれている。興味深い所を拾ってみます。池上彰とユヴァル・ノア・ハラリの対談から池上お金自体は単なる紙です。例えば日本なら一万円と書いてあれば、これが単なる紙であるにもかかわらず私たちは一万円と信じています。私はよく、学生たちにこれは共同幻想であると教えます。みんながお金はお金だと思っているからお金なんだよということです。論理学でいうとトートロジーです。お金というのは非常に不思議なものですね。今のお話しですと、「これはお金だよ」と言っている人たちは詐欺師ということになりますか?ハラリいいえ、詐欺では...『サピエンス全史』をどう読むか①

  • サピエンス全史②

    『サピエンス全史(上)(下)文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)仏教について記述しているので、その部分を転載します。なかでもとくに興味深いのが、仏教の立場だ。仏教はおそらく、人間の奉じる他のどんな信条と比べても、幸福の問題を重要視していると考えられる。二五〇〇年にわたって、仏教は幸福の本質と根源について、体系的に研究してきた。科学界で仏教哲学とその瞑想の実践の双方に関心が高まっている理由もそこにある。幸福に対する生物学的な探究方法から得られた基本的見識を、仏教も受け容れている。すなわち、幸せは外の世界の出来事ではなく身体の内で起こっている過程に起因するという見識だ。だが仏教は、この共通の見識を出発点としながらも、まったく異なる結論に行き着く。仏教によれば、たいていの人は快い感情を幸福とし、不...サピエンス全史②

  • サピエンス全史①

    『サピエンス全史(上)(下)文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。世界で1200万部売れた本だ。2011年ヘブライ語でイスラエルで初めて出版され、2014年に英語版が発売され、日本では、2016年9月に発売された7万年前にホモ・サピエンスに起きた「認知革命」によって、架空の事物について語る能力を身につけた、人間は大規模な協力体制を築き、急速に変化する環境に対応できるようになった。その後、「農業革命」と「科学革命」が起きた。「認知革命」とは、「現実には存在しない虚構(フィクション)を信じ、語ることのできる能力」で、次々と新しい神話やイデオロギー...サピエンス全史①

  • ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常③

    『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)の続きですが、ほんの最後に「解説」として山田陽子氏が、本の内容を要約しあります。本書は、新自由主義的資本主義社会において「幸せ」の追求がもつ意味やそれが権力を行使する仕方について分析しているる(「序」)。一九九〇年代の終わりに登場した「幸せの科学」、別名「ポジティブ心理学」、「幸せ」を「誰もが追求する目的、測定可能な概念」とみなし、「健康で社会的に成功し、最適に機能する個人のしるし」であるとした(第1章)。高水準の心の知能指数、自主性、自尊心、楽観主義、レジリェンス、自発性、感情のセルフコントロールなどは、活躍する人びとに共通の心理的特徴である。「幸の科学」は...ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常③

  • ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常①

    『ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)解説に次の様にあります。「幸せの追求はじつのところ、アメリカ文化のもっとも特徴的な輸出品かつ重要な政治的地平であり、自己啓発本の著者、コーチ、[…]心理学者をはじめとするさまざまな非政治的な関係者らの力によって広められ、推進されてきた。だが幸せの追求がアメリカの政治的地平にとどまらず、経験科学とともに(それを共犯者として)機能するグローバル産業へと成長したのは最近のことだ」(「序」より)。ここで言及される経験科学とは、90年代末に創設されたポジティブ心理学である。「幸せの科学」を謳うこの心理学については、過去にも批判的指摘が数多くなされてきた。本書はそれらをふま...ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常①

  • ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常②

    『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)、「ポジティブ心理学」の何が問題なのかという記述です。以下転載。ポジティブ心理学者が幸せを概念化し測定する方法がそもそも個人主義ベースなのだから。実際、人の幸せを測るうえで境遇が果たす役割をまったく無視することはなくても、それを軽視することは、ポジティブ心理学が生まれてからずっと、この分野の顕著な特徴だった。彼らが文化の異なる対象を研究する場合や、幸せを数値化する測定方法の多くに、その特徴が見うけられる。たとえばよく知られた人生満足感尺度(SWLS)では、質問が個人主義的また主観的な要素を過度に強調し、社会や経済、文化そして政治などのより客観的な要素がその分過...ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常②

  • 近代とホロコースト

    『近代とホロコースト』(ちくま学芸文庫・2021/4/12・バウマン著)数百万人の殺害には激情にかられた暴徒ではなく、合理的な意思決定を行う官僚が必要である。ホロコーストがサディストや狂信者による激情的犯罪ではなく、有能・忠実な官僚による行政的犯罪であったことは今日では常識となっている。官僚制を特徴づける合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任と道徳を周縁に押しやり、大量殺戮を技術的に可能にする。バウマンはこうした点をふまえながら、ホロコーストが前近代的な野蛮への退却ではなく、近代そのものの必然的な帰結であったと主張するのである。近代文明こそ、ホロコーストの必要条件であったー。官僚制、合理主義、進歩主義、分類といった近代的諸要素が、暴力を独占し、社会的制約を受けない権力のもとで結びつい...近代とホロコースト

  • 日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?

    『日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?』(平尾昌宏著・2022年9月)日本語の「です・ます」と「である」について、〈です・ます体〉は「その本質において二人称に対する語りかけの文体である」と述べ、両者の本質的な差異を「二人称の読者を認めるか認めないかであ」るととらえ、ここから二つの異なった世界・原理というとらえかたに展開していく。そして、最終章は「私の言おうとしていることは伝わっていますか?」という著者の〈です・ます体〉での呼びかけで終わる。本から転載します。「『です・ます』を用いているから紀要に載せられない」とするものであった。つまりここには、「です・ます」では学術論文にならないとの前捉があることになる。このことは重大である。簡単におさらいしておこう。話し甘葉の〈です・ます目...日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?

  • 根源的自尊感情

    昨日「自尊心には、条件的自尊感情と、基本的自尊感情と、根源的自尊感情があるようです。条件自尊感情とは、社会的優越性からくる自尊感情であり、基本的自尊感情とは、常に私を認めてくれる人があるという自尊感情であり、根源的自尊感情とは、認めてくれる、くれないという感情の劣化性を打ち砕いて見いだされる自尊感情です。」と書きました。根源的自尊感情とは、私の造語ですが、浄土真宗の信心によって恵まれる自尊感情です。以前、『不登校児が教えてくれたもの―3000超の症例が発する日本の父母へのメッセージ!。』(森下一)を紹介したことがあります。強(ツヨシ)君は中学1年の時から不登校に傾き、森下先生の診療所を訪ねました。真面目すぎるほど真面目な彼は、登校できない自分を卑下し苦しみます。中学卒業後の仕事も長続きせず自殺を考えるよう...根源的自尊感情

  • 孤独と居場所の社会学

    『孤独と居場所の社会学~なんでもない〝わたし″で生きるには』(2022/10/21・阿比留久美著)からの転載です。書評に次の様にあります。社会は「自由」で「多様」なはずなのに、なんでこんなに息苦しい?能力主義と自己責任、家族の多様化、ジェンダー不平等、承認欲求とアイデンティティ……。現代の閉塞感に風穴をあけ「誰もが息のしやすい社会」を構想する希望の論考。(以上)私たちは自分自身裸のまま何もない自分では価値がないと思っているからこそ、なんでもない自分ではなくて、「OO大学出身のわたし」だとか「素敵なパートナーがいるわたし」というかたちで、価値のある人間になるための様々な努力を四方八方におこなってしまいます。そして、時には「どのように生きたいか」ということよりも「どのような人間に見えるか」、「うらやましいと思...孤独と居場所の社会学

  • 自尊心の構造②

    『自尊心の構造』森口兼二著、かなり古い本(1993.2)です。少し転載してみます。1.半社会的(家族的)自尊心発達初期の自尊心は、自己評価の基準の空間的な出所および代表者が、保護者に代表されるごく狭い範囲に限られているとともに、時間的には依存する他者の存在やその場の批評に直接左右される即時的な短さを特徴とし、また、他律的なものであること、そのことから、安定も著しく低いものであるような姿で出発する。自尊心は、人間の成長とともに、評価基準の時間的・空間的代表性においても、内面化(他行性⇒自律性)の程度や安定性についても、発達をとげるが、これら発達初期の特性は、何も家族の中の幼児についてのみ通用する類型と考える必要ない。たとえば、成人でも、生活空間か著しく限定されていたり、社会変化が極めて急激である場合、その代...自尊心の構造②

  • 自尊心の構造

    『自尊心の構造』森口兼二著、かなり古い本(1993.2)です。少し転載してみます。筆者が自尊心と呼ぶのは、「自己の全体、もしくは、みすがら価値を認める自己属性について、自己評価を維持し、高めたいと欲する心」である。このようか自己評価の維持・向上を危うくするようなことは「自尊心が許さない」のであり、現実にみずから、あるいは他者によって、このような自己評価にひびを入らせるような結果を招いたとき、自尊心は傷つけられるるのである。ところで、すでに述べたように、自己評価は他者に認められ、評価されることの必要に関連して発達し、また、自己評価は原則的に他者の前に自己をさらし、他者から受ける反応を確認機会とし、これらの反応を介して得られるものである。したがって、先に定義した自尊心は、しばしば、「全体としての自己、もしくは...自尊心の構造

  • 見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出

    『見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出』(2022/10/7・細谷功著),今年、初めて購入した本です。一日で読み切りましたが、あまり興味を持てない内容でした。ただ「VUCAの時代」という初めて接する用語が出て来ました。下記のネットからの引用です。VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと:i-Learning株式会社アイ・ラーニング現代は、新型コロナウイルス(COVID-19)といった感染症などの疾病や台風、地震などの災害、AI技術の急激な進化により世の中の変化を予測しにくくなっています。この先もどのように変化していくのか、予測が難しい状況といえるでしょう。このように今後の予想がしにくい状況をVUCA(ブーカ)という言葉で表すことがあります。VUCAとは、Volatilit...見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出

  • 自己責任の時代

    『自己責任の時代―その先に構想する、支えあう福祉国家』(ヤシャ・モンク著)著者は、ユダヤ系ドイツ人の政治学者です。著者は、新自由主義的な政策の背景にあるのは「自己責任」を絶対視する考え方でありう、そこには「自分の責任で困難な状況に陥った人は救わなくてもよい」「自己責任以外の理由で困難な状況に陥った人だけを救済すればよい」という発想があるという。本からの転載です。近年の改革が支払った主要な代償の一つは、誰がどれほど受け取るかではなく、各人は何をすれば理論上受給資格のある給付を得られるのかという問いに関係している。責任に以前より大きな役割を与えたため、国家は、「責任ある」行動をとったと思しき人と「無責任に」行動したと思しき人とを峻別するように求められている。その結果、責任追随的な諸制度はつねに、福祉申請者に対...自己責任の時代

  • 上級国民/下級国民④

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。「リベラル化」が進んだ後期(再帰的)近代では、労働者は一人ひとりが自由な意思を持つ「個人」になり、自分を「労働者階級」とは見なさなくなります。そうなると、経済的な成功と同じく失敗(失業)も個人の責任で、かつてのプロレタリアートは階級や社会階層を構成しない「プレカリアート」と呼ばれるようになります。経済的な苦境は個人の生き方の問題とされ、本人たちも「自己責任」を内向化していきます。「社会」から「個人」へと視点が変わる再帰的近代では、「自己」を正しく把握・管理することが重要になってきます。これが「自己分析」「自己コントロール」で、自己の価値の最大化を目指すのが「キャリアビルディング」です。このように現代社会のさまざまな現象は、「自分...上級国民/下級国民④

  • 上級国民/下級国民③

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。リベラルな社会の負の側面は、自己実現と自己責任コインの表裏あることと、自由が共同体を解体することです。リベラルは、人種、出自、宗教、国籍、性別、年齢、性的志向、障がいの有無などによるいっさいの差別を認めません。なぜならそれらは、本人の意思や努力ではどうしようもないことで自己実現を阻むからです。しかしこれは逆にいうと、「本人の意思(やる気)で格差が生じるのは当然だ」「努力は正当に評価され、社会的な地位や経済的なゆたかさに反映されるべきだ」ということになります。これが「能力主義(メリトクラシー)」であり、リベラルな社会の本質です。自己分析と自己コントロールイギリスの社会学者アンソニー・ギデンスは1990年に『近代とはいかなる時代か?...上級国民/下級国民③

  • 上級国民/下級国民②

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。第二次世界大戦後の西側諸国は、アメリカを中心とする自由主義諸国間の貿易によって空前の繁栄を実現します。1960年代になると、ごくふつうの庶民まで、数百万年の人類の歴史のなかで王侯貴族ですら想像できなかったようなとてつもないゆたかさを手にすることとなりました。こうして、ゆたかさを背景に価値観の大きな転換が起こります。それを一言でいうなら、「私の人生は私が自由に選択する」です。「そんなの当たり前じゃないか」と思うでしょうが、それは私たちが「後期近代」に生きているからです。中世や近世はもちろん、日本では戦前(前期昭和)ですら、「人生を選択する」などという奇妙奇天烈な思想を持つひとはほとんどいませんでした。長男は家業を継ぎ、次男や三男は...上級国民/下級国民②

  • 超高層のバベル③

    『超高層のバベル見田宗介対話集』(講談社選書メチエ・2019/12/12・見田宗介著)からの転載です。見田今の学生は、物心ついた頃にはバブルが崩壊していて、それ以来ずっと日本は不景気。二〇〇〇年代前半の好景気も、人々が恩恵を感じられるようなものではありませんでした。彼らにとっては、一九八〇年代の華やかな文化は、神話的な夢なんですね(笑)。三浦私などは、インストゥルメンタル(手段的)に働くよりも、コンサマトリー(自己充足的)に働くほうが楽しいと思って生きてきましたが、そもそもコンサマトリーな生き方には(ウツーがなく、自分で生き方を見つけるしかない。ゆとりのあった時代には若者の試行錯誤を許容できたのですが、コンサマトリーに生きたい人は「自己責任でがんばって」となる。他方、今は割り切ってインストゥルメンタルな生...超高層のバベル③

  • 上級国民/下級国民①

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)を興味深く読みました。「人口爆発」と「ゆたかさの爆発」だとしたら、紀元前1万年前後の「農業革命」は人類になんの変化ももたらさなかったでしょうか。もちろんそんなことはありません。農業は、サピエンスの生存環境に劇的な変化をもたらしました。それは「人口爆発」です。諸説あるものの、10万年前の世界人口は現生人類(サピエンス)とユーラシアの旧人類やネアンデルタール人などを合わせて50万人ほどしかいなかったとされます。それが、農業という巨大なイノペーションでカロリー生産量が急激に高まったことで、紀元前1万年から西暦1年までのあいだに世界人口は100倍まで増加します(推定値は40~170倍)。これにともなって世界全体の富は大きく増えましたが、そのぶんだけ人口...上級国民/下級国民①

  • ご門主の行為

    昨年12月7日、本願寺のご門主がご臨席で午後6時からの拓心会(首都圏居住の若手リーダー)、翌7日午前8時からの聞真会(国会議員の聞法会)、17時から、あすなろ会(首都圏居住の財界人の集い)での法話をしたことはご紹介しました。その折りのご門主の行動が記憶にあります。いづれもお勤めは正信偈です。私は講師なので、特別席に着座、相対してご門主な総長、宗務長が座っておられました。ご門主の行為が立派だと思ったのは、正信偈の経本を参拝者と一緒に頂き、開いて読まれたことです。私を初め本願寺の者は、正信偈は無本です。覚えているので開く必要は無いからです。ご門主も、本願寺のお勤めでは無本なので、もちろん覚えています。そこを敢えて、参拝者と一緒に経本を見ながらお勤めされた。,自分の事よりも、いまどう振る舞う事がご自身の役割かと...ご門主の行為

  • 謹賀新年

    謹賀新年今年もよろしくお願い申し上げます。6時からの「正信偈六首引」の勤行を終え、総代さんの車に乗せていただき、6時53分、手賀沼大橋の上から、日の出を拝しました。写真を撮ろうとすると「ライトプロテクト」と表示され、シャッターが押せない。帰って来て調べると、sbメモリーが書き込み禁止になっていた。したがって写真は撮れませんでした。アップした写真は昨年撮影した写真です。帰りは寒風の中80分かけて歩いて帰ってきました。8時20分帰宅です。今年もよろしくお願いします。西原祐治拜謹賀新年

  • 超高層のバベル②

    『超高層のバベル見田宗介対話集』(講談社選書メチエ・2019/12/12・見田宗介著)からの転載です。近代合理主義はなぜ揺らいでいるのか三浦ところで、そもそも若者のあいだで近代合理主義が揺らいでいる理由は何だとお考えですか。見田今の若い世代は、極限まで近代化が進んだ一九七〇年代以降の社会に生まれ育ちました。それゆえに、かえって現在の科学では説明できない事態に対する感覚が鋭敏になっているのではないで宮沢賢治に「唯物論二与シ得ザル諸点」という短い走り書きの文章があります。唯物論は、人間が経験したり、理論的に確かめられたりするものだけを信じる主義だが、そもそも唯物論の教えによれば人間は宇宙の中の小さな粒にすぎず、そんな人間にどうして宇宙が分かるのか、という趣旨です。確かに、自然界には人間の五感を超えた驚くべき感...超高層のバベル②

  • お釈迦様から親鸞聖人へ

    昨29日『大乗』平成5年1月号が送付されてきました。「フオーカス仏教ライフ」は、執筆者無記名ですが私の執筆です。以下転載。画讃(がさん)お釈迦様から親鸞聖人へ「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗850年慶賛法要」がつとまる記念の年が始まった。親鸞聖人のご廟所である大谷廟堂の親鸞聖人のご影には讃が讃が記されている。その讃を画讃といい、報恩講などのときに声明の音律にのせておつとめされている。韜名愚禿畏人知(とうべいぐとくいじんち)「名を愚禿に韜(かく)して人のしるをおそる」高徳弥彰澆季時(こうとくみしょうぎょうきじ)「高徳、弥彰(いよいよ)彰(あら)わる澆季の時」誰了如来興世意(すいりょうにょらいこうせいい)「だれか了(しら)ん如来興世の意」直標淨典囑今師(ちょくひょうじょうてんぞくこんし)「直ちに淨典を標して...お釈迦様から親鸞聖人へ

  • 超高層のバベル①

    『超高層のバベル見田宗介対話集』(講談社選書メチエ・2019/12/12・見田宗介著)からの転載です。「あの世」、「奇跡」を信じる若者の背景にあるもの三浦二〇〇七年に、一九八五年から九二年生まれまでの世代の若者を「ジェネレーションZ」と名づけ、調査を行いましたが、大変興味深い現代の若者像が浮かび上がりました。それは見田先生が近年ご指摘されていることと共通のものでした。つまり、一九五八年生まれの私の世代には生まれた時から刷り込まれている「近代合理主義」、「進歩」、「夢」、「未来」といった価値意識が、ジェネレーションZにおいては溶解している。そのことを『日本溶解論』(プレジデント社、二〇〇八年。のち、『ニッポン若者論』ちくま文庫、二〇一〇年)という本にまとめました。見田先生が一九七三年の調査開始以来、協力され...超高層のバベル①

  • 父からの手紙

    昨日届いた本願寺新報元旦号、一面、執筆者無記名の「赤色白色」は、私の執筆です。元旦号の同コラムは4.5年依頼されています。転載します。数年前の元旦、届いた年賀状を見ていた妻が「珍しい人から届いていますよ」と言う。その年賀状は、すでに往生した父からのものだった。実は、私か書いたものだ。というのも毎年、元旦には「今年は何を大切にして過ごすか」を考えている。そこで年末に「そうだ、元旦の願いを父からの年賀状として自分に届けてみよう」と思ったのだ。▼年賀状は、謹賀新年から始まり、最後に「父より」と締めくくった。いつもの年なら元旦の願いをすぐに忘れてしまうのだが、その年は忘れることなく、時々思い出しては、父に励まされているような豊かな時間をもつことができた。▼これは、小林一茶の有名な『おらが舂』に記された逸話をまねた...父からの手紙

  • 未来のための江戸学①

    『未来のための江戸学』(2009/10/1・田中優子著)を借りてきました。本の紹介。江戸学者による、過去と未来をつなぐ新講義江戸文化の本質は江戸趣味として表面に現れるものだけでなく、「循環(めぐること)」の価値観であり、「因果(原因と結果)」を検証しながら物事を決めてゆく方法である。これらを失ったことによって、近代日本人は勝ち負けを考えることに力をそそぎ、欧米依存的となった。働くことを賃金でしか判断できなくなり、モノの価値を値段でしか理解できなくなった。自らが行った行為が必ず自らに戻ってくる、という感覚を失ったとき、目の前の富のためなら、文化も自然も破壊することを厭わなくなる。(本文より)競争原理主義の行き過ぎによる貧困や格差の拡大に対する怒り、未曾有の経済危機の前に立ちすくむ日本の経済、政治システムに対...未来のための江戸学①

  • 降りる思想―江戸・ブータンに学ぶ

    『降りる思想―江戸・ブータンに学ぶ』(田中優子、辻信一著)からの転載です。本書でぼくと対話する田中優子は、江戸時代の研究者としてかねがね、「前向き」という言葉の危険性に警告を発してきた。なぜなら、それは「直線的な価値観」というマインドセットを象徴する言葉だから、と。―人類は「進化」し歴史は「進歩」している、という考えを導き出しているのも、直線的発想である。「前向き」はまるで戦場での激励のようだ。後ろを振り返るな、ひるむな、逃げるな、ひたすら前に向かって明るく前進せよ、そうすればその先にご褒美が待っている、というわけだ。このような直線的時空観念の支配によって、私たちは江戸時代までの日本を忘れてしまった。(『未来のための江戸学』二三八~二三九頁)この言い方にならえば、「経済成長」という〈上向き〉で〈前向き〉な...降りる思想―江戸・ブータンに学ぶ

  • 未来のための江戸学②

    『未来のための江戸学』(2009/10/1・田中優子著)の続きです。江戸時代の人々は「自己」をどう考えているのだろうか?これは私か江戸文化に関心を持ち始めた理由である。江戸時代の、特に都市部に暮らす商人や武士は、同時にいくつもの名前を持つ傾向があった。仕事上で名乗る名、狂歌を詠むときの狂名、俳諧のときの俳名、絵画を描くときの雅号、文章の執筆に使う名前などであるが、文章はジャンルによって随筆の場合、黄表紙の場合、読本の場合など、活動によって使い分け、あるいは所属する連によって使い分けていた。これは都市の現象ではあるが、おそらく自己意識という斜向では、時代に共通した特性があると思われる。その特性とは、アイデンティティの不在だ。アイデンティティは「自己同一性」と訳される。つまりは一貫性であり、他者との違いの認識...未来のための江戸学②

  • ポジティブ心理学③

    『ポジティブ心理学科学的メンタル・ウェルネス入門』(講談社選書メチエ・2021/1/12・小林正弥著)からの転載です。「第2波ポジティブ心理学」ポジティブ心理学はいまやポジティブな感情や体験だけを扱っているわけではない。一部には何でもポジティブな状態が良いことであり、常に明るく前向きでさえあればうまくいくという単純化した言説が見られ、ポジティブ心理学がそれを正当化する学問であるかのよう戯画化する誤解や批判さえ見かける。だが、近年のポジティブ心理学の主要な関心の一つは、ネガティブな経験を善福(エウダイモニア的幸福)に至る道筋の中に正しく位置付け直すことにある。その潮流の到達点とも言えるのが、イタイ・イヴザァンらの『第2波ポジティブ心理学―人生の暗黒面を包み込む』(2016年)である。回復力(レジリェンス)や...ポジティブ心理学③

  • ポジティブ心理学②

    『ポジティブ心理学科学的メンタル・ウェルネス入門』(講談社選書メチエ・2021/1/12・小林正弥著)からの転載です。「幸せ」に向かう螺旋階段--「拡大―構築理論」ポジティブ感情はどのようなメカニズムで成功や幸福へと結びついていくのだろうか。その因果関係を理論化し、実験を通して実証したのがバーバラ・フレドリクソン(ノースカロライナ大学教授)である。彼女が科学的実験を通して打ち立てたのが、今ではポジティブ心理学の最も基本的な考え方の一つとして定着している「拡大―構築理論(拡張―形成理論)」だ。フレドリクソンは、大学生の二つのグループに、それぞれポジティブ感情とネガティブ感情を引き起こす映像を見せ、その後に広い領域と局所のどちらに視線が向くかがわかるように工夫された図を見せて、注意の向く先を調べた。すると、ポ...ポジティブ心理学②

  • ポジティブ心理学①

    『ポジティブ心理学科学的メンタル・ウェルネス入門』(講談社選書メチエ・2021/1/12・小林正弥著)からの転載です。近現代の心理学は、うつ病などのネガティブ(マイナス)な心理状態や精神疾患に目を向けてきた。これまでの心理学はそれらを治すこと、つまりネガティブな心の状態を中立的なゼロ地点に戻すことに主眼を置いてきたのだ。例えば、広くそのその名を知られる精神科医フロイトは、心理的な問題で悩んでいる人の深層心理を解明することでコンプレックスを軽減できるという理論を打ち立てた。その理論を出発点としてカウンセリングや精神分析を用いた治療法がいくつも派生し、うつ痼などを抱えた人の治療に用いられてきた。だが、それらが目指すのは、あくまでも悪化した心の状態を元に戻すことにある。ゼロ地点を超えた先にある「幸せ」やこれは「...ポジティブ心理学①

  • 現実への逃避

    現実逃避という言葉があります。「現実への逃避」という言葉があります。見田宗介氏の言葉だそうです。『親ガチャという病』(宝島社新2022/3/10・中島義道他)を読んでいたら、そういうことかと理解しました。この本は、近年特にSNS上で話題となっている、「親ガチャ」「無敵の人」「キャンセルカルチャー」「ツイフェミ」「正義バカ」「ルッキズム」「反出生主義」というワードについて、「親ガチャ」についてのみ土井隆義氏が論考を寄せ、それ以外について六人の人物にインタビューが行われたものがまとめられた本です。本から転載します。近年、「親ガチャ」という。言葉をよく耳にするようになりました。実はこの言葉の流行もまた、以上のような居場所の喪失と大きく関わっている現象といえます。そもそもガチャとは、オンライングームで希望のアイテ...現実への逃避

  • 物語の重要性

    『考えるあなたのための倫理入門』(2022/8/18・メアリー・ウオーノック著)からの転載です。物語の重要性です。全ての子どもに想像力を触発し発達させる主要な方法が1つある。それは、物語を読んだり語ったりすることである。物語は、あることが別のことに続いて起こるという単なるナラティブではなく、恒久的で、理解可能で、そして何よりも共有さている価値の詰まったものとして自らを提示するからである。C,S.ルイスは例えば「物語について」という論文で「ジャックと豆の本」の物語は、その中心的な価値として、ある種の恐怖、怪物的なものに対する恐怖について伝えていて、それは物語でしか伝えられないが、[物語の形であれば]すぐに理解できるのだと論じている。この物語には核心があり、この核心は大男の観念なしには成立しない。われわれが実...物語の重要性

  • ポジティブ心理学

    『実践につながる新しい教養の心理学』(大浦賢治編者)からの転載です。悩むことを心理学では、下記のように解釈するようです。以下転載私たちの日常では,外的・内的に発生するさまざまな衝動によって私たちの「意識」を構成している「自我」が脅かされます。精神分析学では「防衛饑制」とよばれる心のバランスの均衡を保つための防衛システムが生来的に備わっていると説明されます。(以上)心理学では自我を肯定する視点から考えるようです。でも心理学の世界も流行が有るようです。以下転載。ポジティブ心理学は21世紀の心理学です。20世紀までの心理学は人間のネガティブな側面を重視してきました。20世紀は第一次世界大戦,第二次世界大戦ベトナム戦争など,戦争の世紀でした。戦争で心も身体も傷ついた人々を不安や抑うつ,甚大なストレス反応などのネガ...ポジティブ心理学

  • ミラーニューロン

    『言葉の誕生を科学する』(小川洋子・岡ノ谷一夫)、からもう一題転載します。岡ノ谷そこで出てくるのが「心の理論」と「ミラーニューロン」なんです。まず「心の理論」から説明しますけど、これはそもそも変な用語ですよね。「心の理論」という理論なんですよ。「セオリー・オブ・マインド」というセオリーなんですよ。これじたい理論なんです。小川「心の理論」理論なんてすね。岡ノ谷これはもう今や発達心理学のもっとも大切な理論とされていて、「心の理論」というものをいつ子どもは獲得するのかというのが問われている。それで「心の理論」とはどういうものかというと、他者の行動に内的過程を仮定して、それに基づいて他者の行動を理解する。小川大事な能力ですね。岡ノ谷それで自閉症というのは……。小川それができないって言いますね。岡ノ谷そこに障害があ...ミラーニューロン

  • 浄土宗850年記念の広告記事

    『読売新聞』(2022.12.14)に、浄土宗の浄土宗開宗850年記念の広告記事が掲載されていました。座談田中優子(法政大学名誉教授)井上広法(浄土宗僧侶)戸松義晴氏(浄主総合研究所副所長)笑い飯・哲夫氏(漫才師)哲夫田中さんは江戸文化がご専門ですが、「江戸時代と幸せ」についてお話しいただけますか。田中幸せでなくなる大きな原因は戦争ですが、戦争のない社会こそ江戸の社会の目標で、実際に、永きにわたって戦争のない時代でした。それは「経世済民≒勿体ない」という考えに基づく自給自足で無駄のない循環型社会で、人々は好奇心旺盛で教育熱心でした。絵に描かれた寺子屋の子ども達の様子は、どれも幸せそうです。幕末以降に来日した多くの外国人の手記には、「日本人は幸せそうで、よく喋りよく笑う」と異口同音に書かれています。哲夫井上...浄土宗850年記念の広告記事

  • 言葉を失うと未来を失う

    『言葉の誕生を科学する』(小川洋子・岡ノ谷一夫)、以前紹介したことのある本ですが、亦借りてきたら興味深い記述がありました。「言葉を失うと未来を失う」という事は、以前書いたことがありますが、その関連です。岡ノ谷パットマイムって、言葉を使わない劇で、あれが唯一できないことが時問らしくて、それでパントマイムに詳しい人から聞いたんですけど、パントマイムって「きのう」とか「あした」ことか表現できないそうです。そこでそのときだ「きのう」っていう言葉を出しちゃうらしいんですよ、カードに書いて。小川そうなんですか。じゃあものすごく特殊な言葉ですね、「きのう」「あした」つて。岡ノ谷そうそう。だから「さて三日後……」とかいうのはパントマイムでは表現できないんだって言うんです。小川時間を発見し、それに言葉をつけた人間はやっぱり...言葉を失うと未来を失う

  • この店で一番売れている豆を下さい

    今日の(2022.12.11)『産経新聞』に「」正義をふりかざす日本人―藤原正彦」の寄稿文が掲載されていた。最後の部分だけ転載します。戦後、アメリカニズムが我が国に導入され、幸せを最大にするには自由を最大にすること、自由を最大にするには選択肢を最大にすること、という考えが主流となった。この中で人々は途方もない数の選択肢を前に、絶えず決断を迫られている、選択するには土台となる知識や教養が必要だし、自分でよく考えることも必要だ。しかも選択した結果には責任が伴う。選択とは苦痛なのである。独裁者がなくならない一因だ。私だってコーヒー豆を買うときにはモカ、コロンビア、ブルーマウンテン、キリマンジャロなどと面倒だから、「この店で一番売れている豆を下さい」と言うことにしている。人々は選択が辛いからすぐにメディアやSNS...この店で一番売れている豆を下さい

  • 親鸞の回心は、死ぬ苦しみからの解放である

    昨12月9日(金)14:00より、第1連区ビハーラ研修会・東京教区社会福祉推進協議会教区研修併修会が開催されました。当協議会主催の連区行事でございますので、出来る限りご参加くださいますようお願いいたご講師元国立がんセンター中央病院医師の種村健二朗師で「親鸞の回心は、死ぬ苦しみからの解放である」、オンライン(zoom)開催で、後日録画動画をYouTubeにて限定配信されます。久しぶりに種村先生とお会いしました。親鸞の回心は、死ぬ苦しみからの解放である

  • 聞真会での朝食

    昨日8日(金)10時~京都で会議、17時から東京で忘年会があるので、京都から東京向かっていると、新幹線の中で熟睡していたのであろう「ゴー」という音の中で目を覚ました。意識は地響きのような振動と共に轟音、意識は「これは大きな地震が来たぞー」と目を覚ました。すぐに新幹線がトンネルの中を走行中で、地響きと轟音はその音だった。6日深夜のサッカーから、6午後の婦人会のズーム会議、6時からの拓心会(首都圏居住の若手リーダー)の御門主ご臨席での法話、7日午前8時からの聞真会(国会議員の聞法会)で法話、10時半からの寺での建築の打ち合わせ、17時からのあすなろ会(首都圏居住の財界人の集い)での法話、そして昨日の午前6時から京都への出発と、最近では珍しく過密なスケジュールであったので、新幹線内の熟睡となったようです。写真は...聞真会での朝食

  • 別の次元の意識

    二ヶ月くらい前から、わたしの中で「認識の主体は認識出来ない」ということが、ひかっかっています。ネットで検索しても、その意見が大半です。人間のメタ認知機能には、「認識のしゅかいが認識される」と言うことがあって良いのではないか。浄土真宗で語る悪の自覚の、認識に主体が悪として洞察されることなのでという思いを持っていました。図書館で借りてきた『ニュー・アース』(2008/10/16・エックハルト・トール著)、著者は、2008年にはニューヨーク・タイムズが「アメリカで最も人気のある精神世界分野の著者」と評した。2009年までに、北米だけで三百万部売れた本です。アメリカ屈指のスピリチュアルマスターと言われている。その本の中に、次の様にあります。デカルトの誤りからサルトルの洞察へ近代哲学の祖とみなされている17世紀の哲...別の次元の意識

  • 縛られる日本人

    『縛られる日本人-人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか』(中公新書2715・2022/9/20・メアリー・C・ブリントン著)、社会的側面から日本の少子化の原因を探ろうとしており、男女の役割に対する思い込みや、それが反映する企業の休暇制度などの改変を提言する内容のほんです。一つだけ転載しておきます。人生に対する満足度と、家庭生活および子育てとの関係について簡単に論じたい。なぜ、この点に着目するのか。ほかのポストエ業社会(注)に比べて、日本の人たちは人生への満足度か低い。そして、国際的な研究により、人生への満足度か高し人ほど、子どもをもうける確率が高いという強力な実証データが得られている。この点は、日本の政策立案者にとって重要な意味をもつ。日本政府は、どのように社会を変革するかは、二〇~四〇代の人たちの人...縛られる日本人

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