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2018/07/29

  • アニミズム時代

    『アニミズム時代』(法蔵館文庫・岩田慶治著)、は、ほとんど読んでいませんが、ふとアニミズムと一切草木悉皆成仏は似ていると思いました。一切悉有仏性でもそうですが、「仏」という理想的世界によって統一されているが、アニミズムは、いのちのありようがバラバラになっているので、そのいのちに接する人の情念によって、悪になった善になったりするのかも知れません。以下、少しですが本から転載します。朝、庭におりたって木々にあいさつする。「今口は、木蓮さん」、「今日は、泰山木さん」。もちろん、木は返事をしない。しかし、泰山木の枝にぶらさがり、木蓮の肌に触れていると、ゴツゴツした、ザラザラした肌ざわりをとおして、木々の返事がかえってくる。自然のなかの応答、感覚のやりとり、そこにアニミズムの出発点があるのではなかろうか。あの枝にカミ...アニミズム時代

  • 新時代の浄土真宗

    宗派から『新時代の浄土真宗』(浄土真宗本願寺派総合研究所編集、浄土真宗本願寺派情報メディアセンター本部編集)が送られてきました。PHPからの発刊です。ざっと目を通しましたが、みな宗報に掲載されていたことで、そう目新しいものがありませんでした。目新しいと言えば、読者「この商品をレビュー」つ次のようにありました。言い得ています。有難い指摘です。本願寺派は歴史と信用のある組織。ゆえに、親鸞の説く教義をもとに、時代に合う理念や行動が語られる本だと想像して、購入。しかし、読んでみると、社会経験が少ない教団のトップが、時代に合うわけでもない、仏教でもない事を語っている内容だと感じました。教団としては、行動理念を大谷光淳門主説かれる各言葉とし、念仏者の社会活動を模索したいようです。社会活動の内容として、地球温暖化、孤独...新時代の浄土真宗

  • 土門拳のこどもたち

    土門拳の埋葬されている八柱霊園のお墓にご縁を頂いている。墓碑に「昭和22年8月土門真菜」とあり、それから浄土真宗とのご縁が出来たのではないかという話を書いた。土門拳は滅多にわが子のことを記していない。そのような興味から図書館から『土門拳のこどもたち』という写真集を借りてきた。以下、二つのことが記されていた。土門拳と「こども」の写真岸哲男(写真評論家、二松学舎大学名誉教授)の最後に、次の様にある。終戦直後の昭和21年-もう遠いむかしのことになったから、書いてもよかろう。当時6歳のかわいいさかりだった上門拳の次女の真菜ちゃんが、築地明石町の自宅近くの防火川水池で、あやまっておぼれ死んだ。その忘れようにも忘れられない不幸な思い出が、こどもにカメラを向けずにはいられない土門拳の深層意識下にきっとあるにちがいない。...土門拳のこどもたち

  • 悪さをしない子は悪人になります④

    引き続き『悪さをしない子は悪人になります』(新潮新書・2023/1/18・廣井亮一著)からの転載です。子どもの攻撃性を肯定的行動につなげるそれでは、子どもの攻撃性を肯定的行動につなげていくためには、親や教師の関わりとして何か求められるのでしょうか。子どもの攻撃性の肯定的側面をもっとも強調したストー「『人間の攻撃心』は、親は子どもが外界の危険や内部の攻撃的感情を適切に処理することができるという確信を持って養育すべしと述べています。つまり、子どもを「信じている」かどうかということです。これらの学説を一言でくくれば、家裁調査官と非行少年との関わりをテーマにしたNHKドラマ『少年たち3』(2002年8月放送)で上川隆也演じる家裁調査官が語った、゛”信じること、希望を持つこと、人間はつながっている”という台詞に集約...悪さをしない子は悪人になります④

  • 築地本願寺の花まつり

    4月9日(日)、中仏通信の講義で築地本願寺へ行くと「今日は花まつりで駐車できません」とのこと。何とか入れて貰いましたが、境内は1000位の人がいて、出店も「広島お好み焼き」など、屋台の出店と違って、本格的な店が20店舗くらい出店していました。大型の消防車も2台来ていて、お子さんを運転席に乗せて写真を撮るコーナーが人気でした。30年前の築地本願寺の「花まつり」は、銀座三越から築地本願寺まで、作り物の像を引いてのパレードと、子ども向けイベントをしていましたが、人を集めるのには、今の様な飲食を提供することが一番効果的なようです。「やっぱり人は、飲食など煩悩を満たしてくれるものが流行る」と思いながら境内をウロウロしてきました。築地本願寺の花まつり

  • 悪さをしない子は悪人になります③

    引き続き『悪さをしない子は悪人になります』(新潮新書・2023/1/18・廣井亮一著)からの転載です。「悪」と攻撃性子どもの「悪」は、やんちゃ、いたずら、わるさ、反発、反抗などの攻撃性として表れます。ここで、「悪」と攻撃性について説明します。「攻撃」は意図的になされる危害行為で観察可能であり、「攻撃性」はその行動が生じる心理的な過程であると説明されることがあります。このように定義する限り、攻撃性は「悪い行為を生じさせる心的過程または心的エネルギー」となります。値かに、凶悪事件、粗暴事件などの反社会的非行は他者に危害を及ぼす攻撃行動であり、自傷、薬物乱用、援助交際などの非社会的非行は自分を傷つける攻撃行動です。非行、犯罪やいじめなどの問題行動のほとんどは、攻撃性の歪んだ発動によるものです。そして、それぞれの...悪さをしない子は悪人になります③

  • 悪さをしない子は悪人になります②

    『悪さをしない子は悪人になります』(新潮新書・2023/1/18・廣井亮一著)からの転載です。悪理学「悪」について説明します。動物行動学、生態学をもとにしながらさまざまな観点から「善」と「悪」について考察したL・ワトソン(『ダーク・ネイチャー悪の博物誌』は、善良なものが腐敗して邪悪なものに転じる契機を「悪理学の三原理」として次のように提示しています。第1原理一よいものは、場所を移されたり、周囲の文脈からはずされたり、本来の生息環境からはずされりすると悪いものになりやすい。どのようなことであれ、もっともよく生きられる場所から移動させられたり切り離されたり遠ざけられたりすると、よいものの安定性が乱され悪くなりやすいのです。そし、元の場所にも移された場所にも問題が生じてきます。ものにはそれぞれに応じた「居場所」...悪さをしない子は悪人になります②

  • 「新しい領解文」について、問題点

    『中外日報』(2023.3.31日号)に本願寺前執行長の武田昭英しが「新しい領解文」について、問題点を投稿していた。新しい「領解文」が全の僧侶・門信徒の間で念が沸き起こっています。宗会でも議論になったようですが、将来の本願寺教団の法義相続に大きな禍根を残すことに気いていたのは、一部の議員のみだったようです。いや、気付いていても、人事権を持った総長の気配りがあったのでないかと思われます。しかし、宗祖親鸞聖人のみ教えが捻じ曲げられることこそが一大事であり、浄土真宗にとって致命的なことです。宗会がこれを座視したことは今後の宗門の衰退に拍車をかけることになる可能性を危惧します。新しい「領解文」の問題点を簡潔に指摘してみます。「後生の一大事」という響きがない。「後生の一大事」は浄土真宗の要です。る。②機の深信が欠如...「新しい領解文」について、問題点

  • 悪さをしない子は悪人になります①

    『悪さをしない子は悪人になります』(新潮新書・2023/1/18・廣井亮一著)、興味深いタイトルの本です。図書案内に次の様にあります。「悪」は排除するべきものではない。悪と善は相対的なものに過ぎない。大事なのは、総体としての生身の人間の中に「悪」を正しく位置づけることだ。罪を犯し、非行に走った少年であっても、「悪」を正しくその子の中に位置づけてやれば、それは人生をプラスの方向に導くためのエネルギーともなるのだ以前、このブログで〝ハトの喧嘩〟について紹介したことがあります。http://satukirou.hatenablog.jp/entry/2013/10/03/202215転載。鳩を籠に入れて喧嘩させると、際限なく殺し合う。相手が無様に倒れ伏してもその皮を剥ぎ続け、容赦のない追撃を加える。これが平和の...悪さをしない子は悪人になります①

  • お母さんの宝物

    未明、目が覚めてウオーキングには早いので、法話を聞いていたらあった話です。助産婦として33年、2600人以上の赤ちゃんの出産に立ち会ってきた内田美智子さんの言葉「お母さんの宝物」33年間出産に立ち会ってきた助産師さんの言葉 いいね!ニュース(iinee-news.com)からの転載です。自分の目の前に子どもがいるという状況を当たり前だと思わないでほしいんです。自分が子どもを授かったこと子どもが「ママ、大好き」と言ってまとわりついてくることは、奇跡と奇跡が重なり合って、そこに存在するのだと、知ってほしいと思うんですね。そのことを知らせるために、私は死産をした一人の、お母さんの話をするんです。そのお母さんは、出産予定日の前日に、胎動がないというので来院されました。急いでエコーで調べたら、すでに赤ちゃんの心臓は...お母さんの宝物

  • 健常発達症候群

    『普通という異常健常発達という病』(講談社現代新書・2023/1/19・兼本浩祐著)からです。「健常発達症候群」光岡英棯と福森仰の二人が、ある対談のなかで、アメリカ自閉症協会有志が健常発達の人について作成した興味深い定義を紹介しています。以下のようになります。健常発達は、ここではニューロティピカルジという言葉に当たるのですが、直訳すれば「神経組織として定型的な」とでもなるのでしょうか。「はじめに」で紹介しかように、価値判断から中立的な定型発達に当たる用語が当然ながら用いられています。いずれにしても健常発達的心性を持つ人たちを「健常発達症候群」という障害としてみて、つぎのような健常発達の人の疾病的特性を挙げています。二人の対談記事をもとに紹介してみましょう。(1)ニューロティピカル症候群は遺伝的に発生すると...健常発達症候群

  • 新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明

    新しい領解文問題が『京都新聞』2023年3月27日にも掲載され大騒動になっています。下記の声明が出されたためです。「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(一)このたび御正忌報恩講におけるご門主さまの「ご消息」のなかで、「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」(以下「新しい領解文」)]が発布された。従来の「領解文」(大谷派では「改悔文」)は、真宗法義の模範的領解を言語化したものとして、本願寺派、大谷派において、ながらく門信徒の指針となってきたが、時代の変化に応じて平易な言葉を用いた現代版の領解文として、新しく発布されたものである。しかし、これについては勧学寮から『本願寺新報』二月一日号において、長文で難解な解説が掲載され、『中外日報』二月十日号には、「真宗教義に沿った解釈を基礎に持たないと誤解が生じる...新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明

  • 意味を生み出す言葉

    私が執筆者無記名にて連載している本願寺新報社「大乗」2023.4月号が送られてきました。以下転載します。フオーカス仏教ライフ意味を生み出す言葉愚かな私の存在があるゆえ言葉が新しい意味が生み出すということがある。日本語の「イネ」「コメ」「ゴハン」は、英語でライス(rice)という。ライスがご飯と訳されるとき、食物としてのライスという新しい意味が生まれる。コメだと、穀物としてのライスだ。英語のbrotherもそうだ。英語では出生順に関係なく用いる。しかし兄弟という言葉は、兄か弟であるかという区別が付加される。これは「ご飯」という言葉が生まれる背景に、その言葉が生まれる環境があったことであり、兄弟も、兄であるか弟であるかを重要視する社会があったということでもある。仏は覚者のことだが、阿弥陀が誕生することによって...意味を生み出す言葉

  • 新しい領解文、続報

    『中外日報』(2022.3.24日号)に「活動方針をめぐり活発議論―本願寺派布教団連合」―新しい「領解文」現場の疑義、背景に以下転載します。浄土真宗本願寺派の全国の布教使らで組織する布教団連合の総会が14日に開かれ、宗派が提案した新しい「領解文」浄土真宗のみ教えを中心とする布教団の2023年度活動方針・活動計画案に対して、変更を強く求める声が上がった。1月16日の発布以降様々な議論を呼んでいる新しい「領解文」について、現場を担う布教使らの間でも疑義が生じていることが背景にあるとみられる。宗派は、第321回定期宗会で可決された23年度活動の基本方針にのっとり、布教団の活動方針・活動計画案を策定した。総会に先立ち常任委員会で議論され、「新しい『領解文』の消息をいただき自信教入信の実践を通して自らが真実信心に生...新しい領解文、続報

  • 記憶なく、欲望なく、理解なく

    『普通という異常健常発達という病』(講談社現代新書・2023/1/19・兼本浩祐著)からです。「記憶なく、欲望なく、理解なく」「記憶なく、欲望なく、理解なく」という、精神分析家ビオンの有名な言葉があります。この言葉は精神療法をおこなう場合に、めざすべき姿勢を凝縮した標語のようなものです。「記憶なく」というのは、相手がこれまでに言ったことや他の人とのやり取りのなかで見知ったこと、あるいはそれまで学んできた理論などから目の前の人の気持ちを安易に類推してはいけないといった意味です。「欲望なく」というのは、相手に早くよくなって欲しいとか、私がこの人をよくしてみせるといった自分の願望を相手に押しつけてはいけないという意味です。「理解なく」というのは、記憶なくとかぶりますが、相手の気持ちを簡単にわかったと思ってしまわ...記憶なく、欲望なく、理解なく

  • 「ない」ことが思える

    『普通という異常健常発達という病』(講談社現代新書・2023/1/19・兼本浩祐著)、興味深かったのは「ない」という意識の特異性です。下記の通りです。私たちは何かが「ない」という感覚にあまりにも慣れてしまっていて、何かが「ない」ということは普遍的に成立すると思い込んでいるところがあります。実際にはそれが私たち人間に特有の後天的に習得された特異な認知の型であることを見失ってしまっているのです。しかし、基本的には動物には「ない」ということは少なくとも大規模には成立していません。というのは、「ない」ということが成立するためには、時空を超えて今、目の前にないものが、目の前になくても存在しつづけているのだという感覚、つまり非在の現前が成立している必要があるからです。ですから、クラインが赤ちゃんには「ない」がないこと...「ない」ことが思える

  • 大事なこと

    『中外日報』(2023.3.22日号)に「次の世代を担う」というコーナーがあり「無力さの自覚が大切自死向きあう関西僧侶の会福井智行氏」というインタビュー記事が掲載されていました。「いいこというなー」と思ったので、その部分だけ転載します。大阪府門真市の福井智行・真宗興正派称名寺住職(48)は「自死に向きあう関西僧侶の会」の設立メンバーの一人だ。自死問題に関わる姿勢について「二人の何もできない人間」と自覚することを大切にしている」と話す。(中略)活動を通して痛感するのは、宗教者として「人を救いたい」と思うことの危うさだという。長く活動していれば「福井さんのおかけ」などと感謝されることもある。それは喜びだが、「油断すると、だんだんとその気持ち良さを理由に活動するようになったり『私か救った』という虚栄心が出てきた...大事なこと

  • 未来倫理

    『未来倫理』(集英社新書・2023/1/17・戸谷洋志著)、新刊本コーナーにあった本です。未来倫理学という学問があることを初めて知りました。この本では、倫理的指針を六つ紹介している。契約説、功利主義、責任原理、討議倫理、共同体主義、ケア倫理の六つです。そのあたりのみ転載してみます。木来倫理の理論は、自由、幸福、責任、美徳、ケアのいずれを尊重するかによって、その方向性が大きく変わってくる。そしてそれは、それぞれの価値が衝突するとき、重要な問題になる、例えば、ある出来事が、それによって人間の自由を守ることになるが、その引き換えに人間を不幸にすることがあり得るかもしれない。人間が自由に行為した結果、無秩序や混乱が引き起こされ、それまでの共同体の美徳が失われるかもしれない。このようなとき、私たちがそれでもその行為...未来倫理

  • 珍しく法話会が続きました。

    昨26日14時から「中央仏教学院通信教育の集い」(築地本願寺にて)「老病死ー思い通りにならない世界」、聴衆は30名程度、ネット配信でした。先ずらしく今週は、法話が重なりました。21日西方寺、22日、杉田製線、24日、石神井公園の寺院、そして昨日でした。昨日も、葬儀を済ましてからの東京で、13時~築地での常例法話を聞くことが出来ました。当時の総代も聴きに来てくれていました。食事でもと誘われましたが、車で法衣姿、帰りに墓地の管理事務所に寄らなければならなかったので、すぐ帰宅しました。帰院して「やえれやれ」で、一杯飲んで9時に消灯。お陰で午前2時に起きて、ネット検索していました。法話は、話すだけならば、気楽ですが、何度も同じ場所で話しているので、何を話すかの準備に時間が取られます。珍しく法話会が続きました。

  • 親切の人類史③

    『親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか』(2022/12/20・マイケル・E・マカロー著)のつづきです。歴史を通じて湧き上がってきた、他者を援助するさまざまな理由は、三つの異なるタイプに分類することができる。第一のタイプは、あからさまに自己利益に訴えるものだ。わたしが今日あなたを助けることで、あなたは将来わたしに厚意を返さなければいけないと思うようになる、あるいはわたし自身が傍観者から称賛の目で見られたり、ギロチンを回避したり、神の祝福を得られたりすると気づいたとき、わたしがあなたを助ける動機は自己利益の増大であり、助けることで自分の信じる目標に近づけると考えるからだ。恩返しや尊敬を期待して援助するのは、直接的および間接的な互恵性を好む生得的な本能に動機づけられていると考えたくなるのはもっ...親切の人類史③

  • 講演会のご案内

    3日の当寺法話会の折、「住職、26日築地で講演会ありますね」と言われ、何のことだか分からず、「???」でしが、しばらくして「中央仏教学院通信教育の集い」のことから理解しました。3月26日(日)14時~築地本願寺の講堂の開催です。一般の人も来るようなので、話しの内容のつめは本日です。3日前、「レジメはどうしますか」と事務局から問い合わせがあり、内容をつめていなかったので「なしで」と返答しましたが、レジメくらい作ってあげればよかったと後悔しています。「老病死」のテーマは事務局から来たので、内容が余りにも広いので、そのままにしておきました。「思い通りにならない世界」は、わたしがチラシを作る時に告げました。講題「老病死ー思い通りのならない世界」講師西原祐治です。講演会のご案内

  • 親切の人類史②

    『親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか』(2022/12/20・マイケル・E・マカロー著)のつづきです。人間の「利他の心」の存在はどのように説明できるだろう?一筋縄ではいかないこの問いに、進化生物学と慈善の歴史という観点から挑みかかる。「利他行動」は生物学の難問の一つだ。ヒトをはじめ、他個体を利する行動をとる動物は実際に存在する。だがしかし、寛大にも他者を思いやる個体の遺伝子は、狡猾な個体に出し抜かれて繁殖機会を奪われ、淘汰されてしまうのでは?生物学者たちはこのことにおおいに悩み、利他行動を説明できる理論を求めて奮闘してきた。ただし、人間の利他の心は、生物学だけで完全に説明することはできない。社会福祉制度や慈善活動などの方法で、血縁や地域を超えた「完全な赤の他人」にまで援助の手を差し伸べる...親切の人類史②

  • 喚びたまふ 仏の御声のなつかしや

    昨日は、2年ぶりに墨田区の杉田製線での法話会。会社の会議室よこの仏間でのい開催でした。コロナ前に毎月、会社社員、地域の人が参加して法話会が開催されていましたが、コロナの為、中断、そして再開となりました。17時30分開催でした。先々代は富山県出身の方で、今年50回忌を迎えると社長さんが挨拶をされていました。富山から出てきて、法話会を開くために会社を起こしたそうです。初代の頃は、有名な布教使さんをまねていていたようです。祖父の遺品として多量の書や絵が残っており、過日、整理のためにその筋の業者に来て貰って引き取ってもらった。仏教関係の品もあり、2つ受け取って貰えますかと頂戴した。その一つが、写真の梅原真隆(1885-1966)先生の短冊でした。「喚びたまふ仏の御声のなつかしや天と地とに響く鐘の音眞隆」とありまし...喚びたまふ仏の御声のなつかしや

  • 親切の人類史①

    『親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか』(2022/12/20・マイケル・E・マカロー著)、図書館の新館コーナにあった本です。本書は、人間の利他行動の列挙から始まる。埋解を深めるため、チンパンジーにできないことを列挙してみよう。もっとも近縁の霊長類とは対照的に、米国では毎年。150人以上、英国でも100人近くが、赤の他人に腎臓を提供している。エルサレムにある世界ホロコースト記念顫は、ホロコーストの惨禍の中、死や投獄のリスクを侵してまでユダヤの人々を助けた、27.362人もの非ユダヤ人の栄誉を称えている。力-ネギー財団は、他人の命を救うため、覚悟の上で自ら重大な危機のなかに身を投じた米国の一般市民を、これまでに1万人以上も表象している。。カーネギーメダル受賞者の五人に一人は、死後に賞を授かっ...親切の人類史①

  • 領解文ー本願寺派4僧侶が議論

    『中外日報』(2023.3.15日号)よりの転載です。大谷派住職がオンラインシンポ本願寺派4僧侶が議論浄土真宗本願寺派で1月16日に発布された「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)についての消息」を巡って、SNS上で疑問や批判の声が上がり、意見書の提出や署名運動をする動きが見られるなど波紋が広がっている。「門主批判につながりかねない、かつてない事態」という声も聞こえてくる中「冷静に議論できる場を」と真宗大谷派の瓜生崇・玄照寺住職がこのほどオンラインでシンポジウムを開き、4人の本願寺派僧侶が領解文の意味や教学的問題、今後の展望など多岐にわたって議論した。現在もアーカイブで視聴でき、累計視聴者数は1・8万人を超えて増え続けており、大きな反響を呼んでいる。(渡部梨里)シンポジウム「『新しい領解文』を考えるー組織...領解文ー本願寺派4僧侶が議論

  • 資本主義の本質①

    『資本主義と危機―世界の知識人からの警告―世界の知識人が、欲望、再配分、エコロジーなどの論点から、危機の原因とその克服の可能性を語る』(岩波書店・2021/05/28)からの転載です。マルクス・ガブリエル「資本主義の本質」からの一部転載です。今日は資本主義の問題を中心にお話を伺いたいと思っています。よろしくお願いします。ああなたはNHKの番組「欲望の資本主義二〇一八年―闇の力が目覚める時」(二〇一八年一月三日放映)のなかで、ドナルド・トランプ大統領〔当時〕を「ショーマン」であり、資本主義の本質はショーであるという興味深いテーゼを立てていらっしやいました。その点についてご説明いただけるでしょうか。MG資本主義の本質は、本来そこには存在しない何かを見せることにあります。つまり、資本主義とは本質的に錯覚を作り出...資本主義の本質①

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑥

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。このマズローのモデルは一般的に三角形かピラミッド型で表され、第一の、つまり最下層のレベルは、「生理的」欲求を示している。具体的には呼吸、食物、水、睡眠、性などのことだ。その上の階層は「安令」の欲求である。これは財産、肉体的な安全、生計を件るための仕事、健康、住居などである。3番目は、「所属」の欲求。つまりコミュニティとの一体感、家族、友情、愛などだ。4番目は「承認」欲求。これは自信、自尊心、他所からの尊重、達成感などである。そして最後、5番目のレベルであるピラミッドの頂点は「自己実現」で、マズローによると創造性や問題解決、共感、道徳、至高体験などの欲求だという...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑥

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑤

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。生まれて間もない赤ちゃんが親と一緒にいるときに、これと同じようなことが起きる。赤ちゃんには親のふるまいを真似るなど、自分が見ている行動を「模倣」する性質が生まれつき備わっている。オーストリアの動物学者で、ノーベル賞受賞者でもあるコンラート・ローレンツは動物行動学、つまり生物の行動の研究分野を切り開いたひとりだ。ローレンツが特に興味を持ったの、動物のアイデンティティはどのように形成されるのか、また、生まれてからどのように親から「刷り込み」がなされるかについてだった。これをローレンツが、さまざまな実験の中で明らかにしたことは有名である。その中でもよく知られているの...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか⑤

  • 本願寺派定期宗会 特報「新しい領解文」

    『中外日報』(2023.3.10日号)に「浄土真宗本願寺派定期宗会特報」が掲載されていました。長いですが、全文転載します。浄土真宗本願寺派第321回定期宗会が2月22日~3月3日に開かれ、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を巡り様々な議論が繰り広げられた。宗会議員らは、一般寺院やSNS等でも疑問視する声が上かっていると指摘、制定や勧学寮の同意の経緯、総局の打ち出す拝読・唱和を主とする普及策等について追及し、見解を求めた。(渡部梨里)「全勧学寮員の同意」は解説付した理由問う制定の経過開会に当たり大谷光淳門主は、教団が戦争協力差別に関わってきた歴史とその責任を忘れてはならないことに言及し、浄土真宗の教えの肝要が広く次の世代に確実に伝わるよう、新しい「領解文」の消息を発布したと述べた。そして「伝える伝道」から...本願寺派定期宗会特報「新しい領解文」

  • 宗会での「新しい領解文」についての議論①

    『中外日報』(2023.3.8日号)に、本願寺派宗会での「新しい領解文」についての、議論の内容が掲載されていました。以下転載です。浄土真宗本願寺派第321回定期宗会は3日、2023年度宗務の基本方針案と各種会計歳計予算案の合議案を可決し、閉会した。議論となった新しい「頷解文」(浄土真宗のみ教え)の拝読・唱和について、時間的な猶予を求める請願書が提出されたが否決され、今後は総局の示す宗務の基本方針にのっとり普及策が進められる見込みだ。(渡部梨愚)請願者は富山教区善巧寺(富山県黒部市)の雪山俊隆住職で、宗会議員15人が紹介議員となり、園城義孝議長宛てに提出された。請願書では、新しい「領解文」について「違和感を持つ声が多数上がっており、内容が理解できていないのに唱和しなければならないことへ困惑の声が散見される」...宗会での「新しい領解文」についての議論①

  • 資本主義の本質②

    マルクス・ガブリエル「資本主義の本質」の続きです。貨幣MGここにひとつの問題があるとしましょう。資本主義は、それに対する解決策を示すことによって欲望が満たされると言うのです。しかし、何かを価値あるものと見なすことにも有効期限があるため、当然のことながらこうした解決策はそう長くは続きません。このことが意味するのは、本来そこには何もなかったわけですから、こうした方法で生み出された価値はすぐに消えてなくなるということです。消えてしまえば、あらゆるものが消えてなくなってしまうのです。ここには資本主義的エントロピーがあります。あらゆるものが構造の不明暸さのなかでたちまちのうちに消えてなくなります。そうした価値がすぐになくなってしまわないために、いまでは〔その価値が〕安定したものであるという印象をも売り出されなければ...資本主義の本質②

  • どうする家康

    『中外日報』(2023.3.8日号)、真宗大谷派の情報コーナに「どうする家康」のドラマについて記されていました。NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」の第7~9話は、愛知県安城市の本證寺を主な舞台に三河一向一揆と対峙する徳川家康の苦闘を描く。3話分の制作には近松誉本廟部長や安藤弥・同朋大教授が時代考証に関わった。このうち近松部長は本證寺の仏具などのしつらえや、住職の空誓らの所作・勤行の指導、衣体の考証など作を担当した。同部長によれば、真宗の装束は南北朝時代の絵詞や桃山時代の絵像などは難しかったという。当時の読経の実態もほぼ不明。ドラマ中の正信偈の読経は大谷派の節を用いたが、本願寺の東西立前だったことも踏まえ、大谷派の独自性があまり出ない、抑揚の少ない真読の読法にした。ドラマでは本證寺の境内で歩き巫女の...どうする家康

  • 矛盾する多様性

    『産経新聞』(2023.3.12)も「愛という名の下にー矛盾する多様性」イスラム思想研究者・麗澤大学客員教授飯山陽氏が寄稿していました。興味深い記事なので、全文転載します。愛という名の下にいいやま・あかり昭和51年生。上智大学文学部史学科卒業、東京大大学院人文究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得退学。博士(文学)。上智大学研究所客員所員など歴任。本紙コラム「新聞に喝」執筆メンバー。著書に「イスラム教の倫理」(新潮新書)など、最近の共著に「騙されないための中東入門」(ビジネス社)がある。自由主義諸国では「多様性を認め合う社会を目指す」のが正しいことだとされている。日本でもあらゆる政党やメディアがそうあるべきだと主張している。岸田文雄総理も2月17日。「政府としては、多様性が尊重され、すべての人々...矛盾する多様性

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか④

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。それから2500年のあいだ、私たちは理性を崇拝してきた。私たちが口癖のように繰り返す言葉を見れば、この理性という言葉がどれほど私たちの頭に根づいているかがよくわかる。「ちゃんと理性で考えてるか?・感情的になりすぎてないか?」だが、蓋を開けてみれば、私たちは「理性的どころか、むしろ感情的」にものごとをとしえていたわけだが、その感情が欠けていても、ものもとを明確に考える本来の能力が損なわれてしまうようだ。これについては、著名な神経科学者のアントニオ・ダマシオが、『デカルトの誤り情動、理性、人間の脳」で論じている。この本の中でダマシオは、「エリオット」という患者との...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか④

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか③

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。私は、イスラムの神秘主義スーフィズムの古い言い伝えを聞いたことがある。それは、間違った場所で真実を探すことについて語った民話である。その民話の主人公はナスレッディン・ホジャといい、13世紀のトルコの有名なトリックスターとして知られている。どういう話か説明しよう。このナスレッディンは、隣国から国境を越えて故郷の国に帰るうとしていた。彼は、ロバを綱で引きながら歩いていた。ロバの背には、藁が山と積まれていた。国境の見張番は、ナスレッディンが巧みに人を驅すという噂を聞いており、何かを密輸しているに違いないと思ったので、不正をあばいてやろうと彼を呼び止め、尋問した。「お...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか③

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか②

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)からの転載です。ジョー・ハンデルスマンは、ハワード・ヒューズ医学研究所の分子細胞生物学、およびイェール大学の発生生物学の教授で、ホワイトハウス科学技術政策局の科学担当次長も務めている。このハンデルスマンと研究チームは、男女の科学者の能力差が何世代にもわたって縮まらないのは何らかの力学によるものではないかと考えた。そして研究室のスタッフを雇うときにジェンダーが影響をおよぼすかどうかを調べるため、いささか単純な実験を企画した。この単純といえば単純な試みにおいて、ハンデルスマンは私立大学3校と公立大学3校の科学の教授と連絡を取り、ラボマネージャーの職を希望する新卒者の評価を依頼した...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか②

  • なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか①

    『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(2021/10/15・ハワード・J・ロス)、図書館の新刊コーナーになった本です。興味深い実験が多数掲載されています。イギリスのレスター大学の心理学科で音楽関係の研究を行っているエイドリアン・ノースとデイヴィッド・ハーグリブズ、ジェニファー・マッケンドリックは、人が買い物いものをするときに音楽の影響を受けるかどうか実験を行った。彼らは、ごく普通のスーパーマーケットの棚に8本のワインを置いた。4本はフランス産で、4本はドイツ産である。置かれた場所が実験に影響しないように、ワインの瓶は4段の刪にそれぞれ隣り合わせに置かれた。値段と糖度はどれも同じにした。瓶のそばには原産国の旗が添えられた。そして、店内には日替わりでフランス...なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか①

  • 神話研究の最先端

    『神話研究の最先端』(笠間書院2022.12.5刊),分厚い本ですが、ほとんど興味がないものでした。仏教研究の方法と神話師茂樹一方で、仏教が様々な説話、神話、伝承の宝庫であることもまた広く知れており、盛んに研究されている。インドで仏教が創始されて以後、仏弟子たちによって、ブッダの偉大さを示すため、様々な神話的エピソードが彩られた仏伝や前生譚(ジャータカ)が作られた。また経典では、難解な教理を伝えるために様々な譬え話が用いられているが、『百偸経』など、譬え話を用いた説法を集めたアンソロジーも作られている。そのなかには、神話的な内容のものも少なくない。ブッダ入滅後、仏教教団は部派に分裂するが、各部派はそれぞれに経を保持していたので、そのなかに説かれる神話的エピソードなども部派ごとに少しずつ変化していった。中に...神話研究の最先端

  • ベルクマンの法則とアレンの法則

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりにもう一つ転載します。ベルクマンの法則寒冷と熱帯のように対比的な気候と関係して、古くからいかれてきた法則にベルクマンの法則とアレンの法則というものがある。ベルクマンの法則というのは、一八四七年にクリスティアン・ベルクマンが発表したもので、恒温動物では同じ種の中で、または近縁な種同士において寒冷な地方に生息している動物ほど大型になるというものである。一方アレンの法則は、ジョエル・アレンが一八七七年に発表したもので、恒温動物の同種または近縁な種において、寒冷な地方に生息している動物ほど耳・首・足・尻尾などの突出部が小さくなるという法則である。ベルクマンの法則にしたがって、同じクマの仲間でも、ホッキョクダマの仲間は体長約二・五メートル...ベルクマンの法則とアレンの法則

  • 女児100に対して男児105

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりにもう一つ転載します。世界人口の中で男女は半々であり、生まれてくる数も半々だと思われがちであるが、実はそうではないい。一説によると生まれてくる人の数は、おおよそ女児100に対して男児105であり、男児のほうが五パーセント分多いといわれる。ただし、女性より男性のほうの寿命が短いため、総人口としてはだいたい男女は半々か、むしろ女性のほうが若干多いことになる。例えば日本では2011年の出生性比は105であるが、総人口の男女比は九五程度であった。男性の寿命が短いのは、労働やストレスによるからといわれることもあるが、欧米諸国や日本などをみると、生まれた時から一貫して女性よりも男性のほうで死亡率が高いとされ、大人の労働云々だけのことでは説明...女児100に対して男児105

  • うつ病と人間の進化

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりに、2つ転載します。うつ病と人間の進化うつ病は、生物としての進化が背景にあったことが指犒されている。NHKが2013年10月20日に放送した『病の起源第3集うつ病』という番組と、その書籍はさまざまな視点からこのことに迫った。番組においては、脳にある扁桃体という部分が、ストレスに対して反応しやすくなることが、うつ病を発症するメカニズムであるとした。そして、実験的に外敵の恐怖などのストレスをうけ続けたゼブラフィッシュが、うつ病のような症状を引き起こしたことを紹介して、うつ病の存在は生物進化のかなり初期に罹るることも指謫した。また長期間仲間か遊離されたチンパンジーにも、うつ病のような症状がみられた例も出された。そのうえで、同番組では東...うつ病と人間の進化

  • 言葉―7秒間の記憶

    「大乗」(2023.3月号)掲載の、執筆者無記名の、私の原稿です。言葉―7秒間の記憶近代言語学の父・ソシュール私たちにとって、なくてはならないものの一つに「言葉」がある。言葉と言えば、「近代言語学の父」とも称されるソシュール(1857-1913)が有名だ。自ら言語観や言語思想の論文を発表することなく、1907年から1911年にかけてソシュールの授業を受講していた学生が書き留めたノートを、本人の死後に編集して出版された『一般言語学講義』(1916)が一冊あるだけだ。それが言語学のコペルニクス的転回を遂げたと称されるほどの功績を成し遂げた。通常、私たちは「言葉とはモノや概念の呼び名である」と思っている。ソシュールは「世界ははじめから個別の事物があるのではなく、言葉によって世界は認識されていく」と説いた。浄土真...言葉―7秒間の記憶

  • 人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念②

    『人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念』(2022/12/14・ブルース・フッド著)からの転載です。手放したくない所有物を放棄しなければならないときも、精神的な打撃を受ける場合がある。このモノを手放したがらないという思い切りの悪さは、人間というもの、また人間と所有物の関係を赤裸々に物語る特徴の一つだ。戦後二十数年間の消費主義を経て、1960年代末から人気か出始めたとトランクルーム業を考えてみよう。年々より多くの人が、持ち物を処分せずにトランクルームに保管するようになっている。現在、アメリカではマクドナルドの支店数よりもトランクルーム施設のほうが数が多く、利用者の六五%は自宅にガレージがあるにもかかわらず、トランクルームを借りているという。いまや多くのガレージに車の姿はなく、家に収ま...人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念②

  • 人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念①

    『人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念』(2022/12/14・ブルース・フッド著)からの転載です。所有の前には占有があった。占有は単に、持つ、運ぶ、座るなどして、資源を思いどおりに物理的に利用できる状態を指す。前章で見たように、対象物を占有し、占有し続けようと努力する動物は数多い。子どもの発達過程でも、所有の概念が生まれる前に、やはり占有が存在する。占有的なふるまいの発達を分析した心理学者リターファービーは、世界中のだれにでも当てはめられる、占有の二原則を考案した。5歳の子どもから50代の成人までの被験者に聞き取り調査をした結果、第一に、「占有とは何かを好きなようにコントロールできることだ」という点に全員が同意した。第二に、「占有は自分のアイデンティティーの一部になりうる」という...人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念①

  • 女性と漢字

    昨27日、未明目が覚めるとラジオのスイッチを入れた。『深夜便』明日へのことば、「頭木弘樹(文学紹介者)・〔絶望名言〕紫式部」を放送中でした。ラジオのスイッチを入れたとき、丁度、「一」という漢字を書くにも憚った。そこまで隠さないといけなかったことを紹介していた。この時代、男性が理解できることは立派なことだけれども、女性だとからかいや反感の種になるので、紫式部は屏風に書かれた漢字も読めないふりをしていたという。平安時代に、ひらがなが発明されて、女文字を言われていた。「源氏物語」はひらがなで書いたが、直筆は残っていない。「兄の式部丞が子供の時分に史記を習っているのを、そばで聞き習っていて兄のよく覚えなかったり、忘れていたりするところを自分が兄に教えるようなことをしたので、学問好きな父は残念なのはこの子を男の子に...女性と漢字

  • ホモ・サピエンスの15万年

    『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりに、一つ転載します。このような原人が進化して、例えば北京原人が進化して現在の東アジア人になり、ジャワ原人が進化してインドネシア人になったという考え方もかつてはあったが、今では否定されている。否定する恨拠となった研究の一つに、カリフォルニア大学バークレー校のレベッカ・カン博士やアラン・ウイルソン教授らによって。1987年に科学誌「ネイチャー」に公表された論文がある。この研究チームが世界中の女性から集めた、ミトコンドリアDNAという遺伝子を分析して比較したところ、女性らは皆、計算上は約二〇万年前にアフリカカにいた一人の女性から生まれてきた、という結論になったのである。この研究に対しては、科学の世界でさまざまな議論が行われたが、考古学...ホモ・サピエンスの15万年

  • 欲望の経済を終わらせる②

    『欲望の経済を終わらせる』(2020/6/5・井出英策著)からの転載です。本書、最後の提案は、弱者の自由の条件をかたる、旧未型の「レトロリベラル」から、すべての人たち自由の条件をかたる、末末志向の「プロリベラル」へとリベラルの思想を転換することである、それは、繰りかえし述べたように、「批判」を目的化するのではなく、新自由主義を「無効化」するための戦略である。これまでに述べてきた議論をもとに、プロリペラルの指針を図式的にしめしておこう。1)「自己責任」⇒「満たしあい」プロリベラルは、格差是正や弱者支援を第一義的な目的とはしない。経済成長によって自己責任で生き、一部の弱者を救済すればよい時代は終かった。ベーシック・サービスをつうじたすべての人びとの「尊厳ある生活保障」を柱に「品位ある命の保障」を組みあわせ、人...欲望の経済を終わらせる②

  • 欲望の経済を終わらせる①

    来年、ビハーラ全国集会で慶應大の井出英策先生をゲストとするとのことで、図書館から『欲望の経済を終わらせる』(2020/6/5・井出英策著)を借りてきました。承認欲求と自由人間の基礎的な生存・生活保障、そして「よりよい心」を追いもとめる自由、これらが形づくる「頼りあえる社会」のベースにあるのは、人間である以上は、すべての人が他行から承認されたと感じられなければならないという信念である。政治哲学者アクセル・ホネット(1945~)は、人間の「承認欲求」を3つの領域に分類した。『アクセル・ホネット承認をめぐる闘争』)。ひとつめは、「愛」「ケア」の領域である。この領城では、家族や友人の関係にみられるように、おたがいの欲求やニーズをみとめあい、たがいが依存しあうなかで、それぞれが個別のニーズを持った存在として承認され...欲望の経済を終わらせる①

  • 利己的な遺伝子

    物行動学者リチャード・ドーキンスの、『利己的な遺伝子(TheSelfishGene)』(1976)、『生物個体は、利己的な遺伝子を永続的に継承させていく“遺伝子の乗り物”であり、遺伝子保存を究極目的として盲目的な行動をとるプログラムされたロボットである』、古い本ですが一応、借りてきました。少しだけ転載しておきます。動他物は多細胞体に進化し、あらゆる細胞に全遺伝子の完全なコピーが配分された。いつ、なぜ、独立に何度、このようなことが起ったのかはわからない。ある人々はコロニーにたとえて、体を細胞のコロニーだという。私は体を遺伝子のコロニー、細胞を遺伝子の化学工場として都合のよい作用単位、と考えたい。あるものが、友のために生命を捨てることが利他的であることはあきらかだが、友のためにわずかな危険をおかすこともやはり...利己的な遺伝子

  • 江戸時代は老人が多かった。

    『江戸病草紙―近世の病気と医療』(立川昭二著)に江戸時代の諸々が記されています。江戸時代は老人が尊敬されたのは、儒教の影響もあるが、老人そのものが少なかったからではないかという疑問を持ち、この本を入手しました。結論から言えば「江戸時代の平均寿命は30歳」なのは、乳幼児の死亡率が非常に高かったからです。そして結構、年寄りも多かったよいうことです。11代将軍家斉(いえなり)には、55人の子女があったが、この55人中2人が流・死産、二歳未満の死亡は二十一人。十五歳以上まで生きだのが二十一人、それも四十を越えた者は、12代将軍家慶を含めてわすか七人。五十二人の平均死亡年齢は、なんと十四歳であった。将軍・大名の子女ですら、平均死亡年齢はこのように低かった。一方、江戸時代の戸籍といえば人別帳がある。速水融は信州諏訪地...江戸時代は老人が多かった。

  • 刷り込み

    『ニュートン新書基礎からわかる動物行動学』(2022/5/18・トリストラム・D・ワイアット著)刷り込み動物行動学者のコンーフート・ローレンツの後ろをついて回るハイイロガンの雛の群れの写真は、動物の行動に関する最も有名な画像として知られている。孵化直後の感受期に初めて見た大きな動くものがローレンツだったハイイロガンの雛は、彼を親と認識し、愛着をもつようになった。刷り込みと呼ばれるこの行動は、多くの哺乳類や鳥類の初期の発達段階に見られる学習の一種だ。野生のガンの場合、雛が最初に目にする動くものは、コンラート・ローレンツではなく、母烏である。このような「親子間の刷り込み」機能の目的は、生後問もない動物が他の成体ではなく自身の親の後ろをついて回れるように、確実に親を認識することだろう。それは親子間の強い社会的絆...刷り込み

  • 旃陀羅表記②

    旃陀羅、変成男子のついて、『宗報』(2019.7月号)で、岩本先生の娘さん岩本智依氏が「経典から差別の現実を学ぶということ」を執筆されておられます。https://www.hongwanji.or.jp/news/upload_img/jinken_shuhou_1907.pdf「おわりに」の部分だけ転載します。親鸞聖人は阿闍世や韋提希など『観無量寿経』の登場人物について、その社会で差別をし、差別をされるという苦しみの中で生き、み教えに差別・陂差別から解放され救われていった存在だと見ておられます。そのため経典の中には「栴陀羅」に関わる身分差別や「女人往生」という性差別、さらには『無量寿経』第四一願に関わるようないわゆる「根欠」といわれた障害者差別など、赤裸々な差別の現実が説かれています。しかし決してそれは...旃陀羅表記②

  • 旃陀羅表記①

    2月8.9日の鹿児島の連区の布教団研修会、旃陀羅について、同朋会研修会講師岩本孝樹氏の講義もありました。「旃陀羅や変成男子」の事についての講義がありました。「水平社宣言」のなかにも「エタ」という背別用語もある。差別用語の言葉があるからと言って、ただちにそれは「差別表現」だとするものではない。とこ事でした。以下参考になるので、別資料ですがアプしておきます。真宗教団連合公開講座テーマ「是栴陀羅と差別問題について」 文化時報プレミアム(bunkajiho.co.jp)真宗教団連合公開講座テーマ「是栴陀羅と差別問題について」真宗教団連合公開講座『観無量寿経』にある「是旃陀羅」は、王舎城の悲劇を扱った部分で、父を殺した阿闍世王が母をも殺そうとした時、「母を殺せば、旃陀羅と同じだ」と大臣がいさめた事柄として載っている...旃陀羅表記①

  • 世界で一番古い企業

    『謙虚で美しい日本語のヒミツ』からの転載です。東京商エリサーチが世界41力国で行った調査によれば、世界には200年以上の歴史をもつ企業が5586件あるそうです。そのうち、なんと6割近くの3146社が日本企業です。また、日本には企業から1000年以上経っている企業が7社もあります。その筆頭が、いまから1400年以上前、聖徳太子の時代に創業された「世界で一番古い企業」といわれる、大工集団・金剛組です。では、歴史や伝統を大切にしている印象の強いヨーロッパを見てみましょう、最も老舗が多いドイツでは、200年以上の歴史をもつ企業が837社あるそうです。続くオランダには196社あります。一方、建国から250年ほどしか経っていないアメリカでは14社。そして、歴史と伝統を重んじる印象の中国では9社しかないのだそうです。で...世界で一番古い企業

  • 日本語のヒミツ④

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です。常に自らを反省する思いをもち、受動態を多用する日本人受動態の問題は重要なので、さらに突っ込んで解説しようと思います。例えば相手に室に入ってほしくない場合、韓国語なら「私の部屋にあなたが入ると困るよ」と言います。一方、日本語では「あなたに入られると困るよ」と受動態で伝えます。同じような意味に感じるかもしれません、が、物亊のとらえ方は大きく違います。韓国語の場合は、あなた、が悪い・私は悪くないという意識が強く含まれています。一方の日本語では、「私か困る」と、視線を自分のほうに引きつけているのです。つまり能動態の韓国語は、あらゆる言葉が相手の責任であり自分の責任ではないという形になっています。一方、受動態の日本語...日本語のヒミツ④

  • 日本語のヒミツ③

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です日本語は心のなかでへりくだる気持ちを含んでいる言葉日本人が受動態を頻繁に使うことは、私にとって大きな謎でした。ところが、私は、人前でスピーチをする機会が増えた頃に、「受動態で表現することは、日本人の性格と深く関わっているのではないか」と気付いたのです。受動態を意識しながら「日本人とは何か」を探っていくのはとても面白くなりました。スピーチで冒頭の挨拶をするとき、韓国語なら「皆さんが見ているから、緊張しています」と言うでしょう。一方、日本語なら「皆さんに見られて、緊張しています」と話すのが自然です。「皆さんが見ているから」という言い方は、直線的です。これに対し、「皆さんに見られて」という受動態で話すたびに、私は体...日本語のヒミツ③

  • 「弔い直し」心残り解消

    昨日(2023.2.15)の『産経新聞』に、葬儀についての記事が掲載されていました。「弔い直し」心残り解消新型コロナウイルス禍で身内を亡くした遺族らが、十分なみとりや葬儀を行えないことで後悔を感じる「弔い不足」という言葉が注目を集めている。近年の葬儀の簡素化は新型コロナ禍で加速したが、参列したくてもかなわなかったケースなど、亡き人への心残りを抱えたままの人は多いという。葬儀業界では葬儀とは別に、改めてお別れ会を行うなど、「弔い直し」ともいえる解決策を図る動きが出ている。(深津響)(前略)30.6%が「後悔」葬祭大手「メモリアルアートの大野屋」(東京)は昨年10月、5年以内に親族、友人らを亡くした400人に、葬儀後の心情に関するアンケートを実施。後悔や心残りに感じていることはあるかという質問に対し、喪主や喪...「弔い直し」心残り解消

  • 日本語のヒミツ1①

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載ですが、よくご往生された深川倫雄和上が「お土産を頂いたではなく、お土産を下さった」と相手中心の会話をすべしというご法話がありました、まさにそのことが記されていました。以下転載「先生が叱った」と「先生に叱られた」の違いは大きい韓国人の場合、来日以後、比較的短期問で、生活習慣や文化の違いを乗り越え、日本でスムーズに暮らせるようになります。ところが、滞在が1年を過ぎて日常会話が使えるよになった頃には、別の問題が起きてきます。「日本語の言い回し」に混乱するようになるのです。すでにお話ししたように、日本論と韓国語は語順が同じです。また、文法もきわめて似ています。来日1年日くらいまでに覚える簡単な日常会話くらいまでなら、すん...日本語のヒミツ1①

  • 日本語のヒミツ②

    『韓国人には理解できない謙虚で美しい日本語のヒミツ』(2022/10/3・呉善花著)からの転載です。ところで、現代の近代文法でいう受け身(受動態)とは、通常「あるもの、が他のものに働きかける動作を、受ける側を主役(主語)」にして述べることです。つまり、「叱る」「押す」「蹴る」「打つ」など、明らかに他のものへの働きかけの動作を示す言葉について、受け身という位置があるのです。だからたいていの言語では、受け身はもっぱら他動詞についてのみ使われます。しかし日本語では、自動詞でも受け身で用いられること、がしばしばあるのだから不思議です。「見る」「食べる」「飲む」もみな自動詞です。外国語では受け身がつくれない自動詞なりに、日本語でごく普通に受け身で使っているのです。すでに紹介したものも含めていくつか例を挙げてみましょ...日本語のヒミツ②

  • 絵葉書とeメールどちらがエコか?

    ウエッジ2023.2月号にデジタル=エコの虚構―エネルギーの大量消費を見直せ(ギヨーム・ピトロン記述)からの転載です。「へー、そうなんだ」という記事です。「いいね」を押すのは無料ではない私か指摘したいのは、フェイスブック、アマゾン、グーグルなどのスマートなロゴの背後にはインフラストラクチャーが存在するということだ。ツイッターで「いいね」を押すのは決して無料ではない。それを可能にするためには巨大なデータセンター、海底ケーブル、そしてデジタル機器などの物質が必要となる。デジタルは実際には膨大な環境へのフットプリントを残している。そういう実態を目に見える形で伝えることは重要だ。絵葉書とeメールどちらがエコか?ところで、絵葉書を送るのとeメールを送るのではどちらが高コストなのか?絵葉書を送るには、紙を作るために木...絵葉書とeメールどちらがエコか?

  • 「伝わる伝道研究室」設置

    宗教業界紙『中外日報』(2023.2.8日号)に「総合研究所改編へ」「伝わる伝道研究室」設置という記事が出ていました。リム化を図る。現在の教団総合研究室、教学伝道研究室、仏教音楽・儀礼研究室の3研究室を「現代教学・課題研究室」と「伝わる伝道研究室」の2室に整理する。「現代教学・課題研究室」では宗勢基本調査、現在的諸課題や総局が指示した教学諸問題の調査・研究、儀礼の研究などをこう。「伝わる伝道研究室」では、現代に即応する真宗教学の再構築及び調査研究、伝わる伝道の研究、真宗聖典の普及、仏教音楽の研究と創作、普及などを手掛ける。真宗聖典の編纂事業は終了し、仏教音楽・儀礼については人々の生活や生き方に関わる宗教儀礼を総合研究所が掌握、勤式儀礼や声明などは本願寺式務部と僧侶養成部勤式担当が取り組むとする。職員制度は...「伝わる伝道研究室」設置

  • 21 Lessons ; 21世紀の人類のための21の思考

    『21Lessons;21世紀の人類のための21の思考』(河出文庫・2018年(米)、2019年(日)ユヴァル・ノア・ハラリ著)は、現実を生きるための21の提言です。冒頭の言葉です。Lesson1幻滅:先送りにされた「歴史の終わり」ファシズムの物語は、異なる国家間の闘争として歴史を説明し、他のあらゆる人間の集団を力ずくで征服する一つの集団によって支配される世界を思い描いた。共産主義の物語は、異なる階級問の闘争として歴史を説明し、たとえ自由を犠牲にしても平等を確保する、中央集権化された社会制度によって、あらゆる集団が統一される世界を思い描いた。自由主義の物語は、自由と圧政との闘争として歴史を説明し、あらゆる人が自由に平和的に協力し、たとえ平等はある程度犠牲にしても中央の統制を最小限にとどめる世界を思い描いた...21Lessons;21世紀の人類のための21の思考

  • 鹿児島別院でした

    7.8日は鹿児島別院でした。連区(九州地区)の布教団研修会、百数名の参加でした。この4ヵ月、気に掛かっていたので、その重圧から解放されました。私に与えられたテーマは「現代社会と浄土真宗」80分と60分、そしつ40分の質疑応答でした。80分は、話そうと思っていた内容を詰め込みすぎて、65パーセントくらいしか伝えられず、内容はぎりぎり60点、60分の講義は、80点くらいの内容でした。勉強になりました。参加者へ御礼。鹿児島別院でした

  • 本多正信の供養塔

    『中外日報』(20223.2.1日号)に「本多正信」のことが掲載されていました。家康を支えた名参謀本多正信真宗門徒らしく供養塔のみ愛知県安城市野寺町の真宗大谷派本流寺には、今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」の主人公・徳川家康を支えた名参謀として知られる本多正信(1538~1616)の供養塔がある。本證寺は三河地方を代表する有力真宗寺院の一つで、戦国時代には一揆勢の拠点にもなった。正信は本證寺近くの小川(現同市に小川町)の門徒武士として生まれ、幼い頃から同寺に参拝していたという。1563年~64年の三河一向一揆で一揆側に加担したが、家康に敗れて三河を退去。約20年後に帰参するまで三河には戻らなかった。三河退去中の動向は不明だが、帰参後の正信は大名政策や外交、宗教政策など様々な分野で家康を支えた。本願寺の...本多正信の供養塔

  • 新しい領解文②

    昨6日は京都での会議、日帰りで22時過ぎの帰宅でした。会議中、臨席のH氏は、本願寺勧学寮に質問すると「新しい領解文」の解釈について、かなりの文字の質問書を書いていました。各地の住職方が「?」の声を上げたいる様で、本日、明日と連区の布教団研修会で鹿児島へ行きますが、きっとこの話題が上がるに違いありません。むしろ「上げてください」をお願いしようと思っています。写真は6日午前9時新幹線の中から撮ったものです。新しい領解文②

  • 新しい領解文

    『中外日報』(20223.2.1日号)に本願寺派の「新しい領解文」のことについての会議の内容が掲載されていました。法要で拝読・唱和を浄土真宗本願寺派は第6回企画諮問会議を1月25日に開き、2023年度の宗務の基本方針と具体策案、宗派各種会計予算案などを諮問した。「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)」について、各法要や研修会等での拝読・唱和や全教区・特区での学習会開催などの具体的な普及策が示され、委員からは厳しい意見も出た。23年度の宗務の基本方針は「新しい『領解文』(浄土真京のみ教え)に学び、行動する~『伝わる伝道』の実践」とし、特に注力する7項目の一つ目にも、その学びと実践を掲げた。総局は普及の方向性について「宗門内全般にわたり、法要儀式や日次勤行、法座をはじめ各種研修会等の機会に、拝読、唱和いただけ...新しい領解文

  • 文字の発明

    『産経新聞』(2022.2.4)に「文字の発明―脳の外で記憶知識を無限に蓄積」という記事が掲載されていました。最初の部分だけ転載します。文明の大躍進人間の知的活動の源泉は言語にある。その誕生は約10万年前ともいわれ、話し言葉によって始まった。書き言葉である文字が登場したのは5千年ほど前で、20万年に及ぶ人類史の中では最近のことだ。耳で聞いていた言葉を、目に見える記号と結び付けた画期的なテクノロジーは、人類に何をもたらしたのだろうか。文字の最大の利点は知識の保存にある。話し言葉は消えてしまうので、古代の人々は知識を歌や語りで伝承してきた。だが文字によって記録媒体に保存できるようになり、これが文明の大躍進を生んだ。筑波大の池田潤教授(言語学)は「人間の脳の記憶容量には限界があるが、文字の獲得によって脳の外に記...文字の発明

  • フレーミング効果

    『バイアスとは何か』(藤田政博著)、本からの転載です。フレーミング効果「朝三暮四」という故事成語があります。猿が好きな狙公(そこう)が、猿を飼っていました。エサの栃の実の与え方について、猿に対して「朝は3つ、暮れには4つ与える」と言ったら猿はそれでは少ないと言って怒りました。そこで狙公か「じゃあ、朝に4つ、暮れに3つにする」と言ったら喜んだ、という話です。この話の解釈として、「一日に7つなのは同じなのに、目先の違いに囚われることは愚かなことだ」というものがあります。朝三暮四はわかりやすい話なので猿のおかしさもすぐにわかるのです、か、もう少し複雑になると、同じような過ちをとかしてしまう現象があります。それがフレーミングの問題です。それがフレーミングは枠をつける、というような意味で、同じ問題や情報でも、提示の...フレーミング効果

  • ペロスペクト理論

    『バイアスとは何か』(藤田政博著)、本からの転載です。ダユエル・カーネマンとエイモスートヴァースキーです。ともにイスラエル出身の心理学者で、バイアスの研究を精力的に行いました。カーネマンとトヴァースキーの研究結果は、それまでバイアスの存在を考慮していなかっか経済学の理論を書き換えるものとなったのです。そして、「認知心理学、特に不確実性下における意思決定匚関する基盤的研究からの洞察を経済学に統合し、それによって新しい分野を切り開いた」という功績で、カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞しました(残念ながらトヴァースキーはその前に亡くなっていました)。それではまず、彼らの研究でもっとも有名なものとなった、プロスペクト理論を紹介しましょう。ペロスペクト理論―喜びと悲しみの非対称性バイアス研究の巨人の業績...ペロスペクト理論

  • 広域強盗事件に思う

    各地で相次ぐ広域強盗事件が報道され、「キム」や「ルフィ」といった強盗の指示役とされる人物が日本へ送還されるという新聞記事を読んでいて、ふと何日か前にアップした『近代とホロコースト』(ちくま学芸文庫・2021/4/12・バウマン著)の記述が思われた。同書では、ホロコーストがサディストや狂信者による激情的犯罪ではなく、有能・忠実な官僚による行政的犯罪であり、合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任と道徳を周縁に押しやる官僚制、合理主義、進歩主義、分類といった近代的諸要素が、暴力を独占し、社会的制約を受けない権力のもとで結びついたものだったということです。今、報道され得ている広域強盗事件も、指示する者がいて、直接、犯罪を犯す人間は、合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任...広域強盗事件に思う

  • イングルハート仮説

    2023.2月号大乗に、執筆者無記名で原稿を書き掲載されています。昨年4月号からの連載です。以下転載。フォーカス仏教ライフ「イングルハート仮説」歴史観の相違「イングルハート仮説」をご存知だろうか。アメリカの政治学者であるロナルド・イングルハート(1934.9.5~2021.5.8)が提唱したもので、人類は、時と共の文化的に進化していくという仮説だ。世界価値観調査という、世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較している国際調査がある。イングルハートは、この1980年から100か国・40年におよぶ調査に基づき、「社会が豊かになるにつれて、人びとの価値観は物質主義から脱物質主義にシフトしていく」と説き、価値観が、「生存重視の価値観」から「自己表現重視の価値...イングルハート仮説

  • 天気の子

    「君の名は。」は新海誠が監督・脚本ですが、それから2年後に「天気の子」を発表している。ストーリーです。神津島で暮らしていた高校一年生の森嶋帆高は、家出を決めフェリーで東京にやってきた。身寄りがなく高校生の帆高は、フェリーで知り合った須賀啓介と連絡をとり彼が経営する小さな編集プロダクションで住み込みのお手伝いを始める。関東の夏は、異常気象で毎日雨の天気が続いていた。そんな中、帆高は祈ることで晴天を生むことができる「晴れ女」天野陽菜と出会う。陽菜が祈ると必ずその周辺一帯は、一時的に晴れになった。二人は、「晴にします」という広告を出すと、評判は瞬く間に拡散され依頼が殺到する。一方、陽菜は度重なる祈りによって疲弊してく。陽菜は自身が「晴れ女」になってしまった経緯を話す。母親が死ぬ直前、帆高と出会った廃ビルの屋上に...天気の子

  • 出会いの不思議

    昨日の続きですが、何気ない2人の出会いの背後には、重々無碍な因縁の世界がある。その因縁の世界の一つを、一つの物語で示したのが「君の名は。」だということです。海で一匹の鯛(他の鯛と区別された固定魚)を釣る確立と、その鯛を海に逃して、もう一度、その鯛を釣る確率は同じです。そのようなことは現代では不可能なので、釣った鯛に発信器を付けて、世界中の船が協力してその鯛を探す。それでもその鯛をつることは不可能でしょう。しかしその鯛が釣れるとして、その鯛を釣るためのエピソード・物語を一つの象徴的な物語としてビジュアル化する。同ます。鯛を釣ったという結果が、「君の名は。」で「2人が住宅地の階段にすれ違い、振り返り、2人は同時に「君の名は。」と告げ」た場面です。その鯛を釣るためのエピソード・物語を一つの象徴的な物語としてビジ...出会いの不思議

  • 「君の名は。」

    2016年8月26日公開、アニメ映画「君の名は。」をアマゾンの無料配信で見ました。田舎暮らしの宮水三葉と東京の街で父と暮らす高校生の立花瀧。出会ったこともない2人がある日夢の中でお互いの身体が入れ替わっていることに気付く。戸惑いながらもお互いの生活を体験する2人、しかし、ある日を境にその入れ替わりは無くなってしまう。三葉の身を案じた瀧は、おぼろげな記憶を頼りに山奥にある糸守町にたどり着く。三葉はたしかにそこで暮らしていたが、3年前に巨大な隕石の直撃を受けたことで町はクレーターと化し、住民500人以上が犠牲になっていた。瀧は3年前の三葉とつながっていたのだ。そして三葉の住んでいた社を訪ね、三葉が仕込んだ、口噛み酒を手に取り飲むと、目が覚めると三葉の心の中にいました。それは、この町に隕石が落ちる前でした。今後...「君の名は。」

  • あらゆるものは毒である

    『「いただきます」の人類史:ヒトの誕生から生活習慣病の現代まで』(2022/10/31・蒼井倫子著)から一題転載します。あらゆるものは毒であるこれは、研修医だった頃に経験した症例です。もうすぐ1歳になる男の子が、けいれんで病院に救急搬送されてきました。小さい子どもの場合、熱がある「熱性けいれん」は多く見られますが、熱のない場合は、様々な原因が考えうるので診断は難しくなります。男の子に熱はなく、血液検査で血液の中のナトリウム(塩分濃度)がかなり低くなっていることはわかりました。しかし、その原因かわかりません。改めて、お母さんに話を聞くと、最近ミルクを飲むのをやめた代わりに、ミルクと同じ位の量の水を哺乳瓶であげていたことがわかりました。診断がつきました、「水中毒」です。水の飲み過ぎで血液が薄まっていたことが、...あらゆるものは毒である

  • 餓死者よりも肥満が原因の死者の方が多い?

    最近読んだ本の中に「餓死者よりも肥満が原因の死亡者のほうが多い」とあった。どの本か忘れてネットで検索してみました。世界の饑餓人口は「国連報告書」世界の飢餓人口年4600万人増え8億2800万人2021年2007年「シリーズ国際協力1飢え食べものをつくり不公平をなくそう」(リブリオ出版)p34には、「「飢え」が原因となって死んでいく人は毎年2000万人いて~」との記述があり。肥満人口は年代が違いますが、BMI(肥満指数)が25以上の過体重の成人や子どもの数は、全世界で2015年の時点で約22億人、全人口の30%を占めており、全世界のBMIが30以上の肥満の人口は、小児で1億770万人、成人で6億370万人に上る。そして、2015年には、肥満が関連する疾患により400万人が死亡し、全死因の7.1%を占めている...餓死者よりも肥満が原因の死者の方が多い?

  • さようならの言葉②

    『日本人のものの見方―〈やまと言葉〉から考える』(2015/9/29・山本伸裕著)続きです。英文学者の荒木博之(一九二四一一九九九)は、『やまとことばの人類学』という本の中で、「さらば」には、それまでの「こと」が終わって、これから新しい「こと」に立ち向かうのだといった心構えが表現されているとの見方を示しています。「日本人が古代から現代に至るまで、その別れに際して常に言葉して、「さらば」をけじめとする、「そうであるならば」という意のご言い方を使ってきたのは、日本人がいかに占い「こと」から新しい「こと」に移っていく場合に、必ず一度立ち止まり、古い「こと」と訣別しながら、新しい「こと」に立ち向かう強い傾向を保持してきたのかの証拠」だ、と言うわけです。なるほど言われてみれば、確かに日本人は、口々「さらば」を口にし...さようならの言葉②

  • さようならの言葉①

    『日本人のものの見方―〈やまと言葉〉から考える』(2015/9/29・山本伸裕著)からの転載です。「さようなら」についてです。一日のうちになすべきことを仕来たして別れる際には、しばしば「さようなら」という言葉が使われてきました。「さよう」は「そのよう」、「なら」は「ならば」の「ば」が省略されたかたちです。したがって、「そのよう(である)ならば」というのが、この挨拶言葉によって直接的に表現されてきた意味だと理解されるのですが、こうした言葉を別れ際に交わすことに、日本人はいったいどのような意義を認めてきたのでしょうか。世界中の言語には、それぞれに固有の別れ言葉が存在します。それらを大別すると、おおよそ次の二系統に分類できるように思われます。一つは、神の加点を祈る「ご加駿系」の別れ言葉、もう一つは、再会を期する...さようならの言葉①

  • 自己実現主義

    少し古い本ですが『日本の新たな「第三の道」』(2009/11/28・アンソニ-・ギデンス著)を借りてきました。少し転載しておきます。21世紀の新しい社会モデルである低炭素産業社会においては、ポストモダン的価値観の一部は持続するが、他の部分は変化する。つまり脱物質主義、自己実現主義、反権威主義、自然共生主義といった性向は析しい社会モデルと方向性を具有している。しかし獲得型個人主義、権利主張主義といった性向は低炭素産業社会の新しい社会契約とは相容れないで、撤収を求められることになるだろう。さらに低炭素産業社会では、自然共生主義が強力な性向となるであろう。持続する価値観・‐-自己実現主義価値観のポストモダン化現象の一つの重要な局面は、人々の仕事や組織に対する考え方の変化である。その中心的な要因が、自己実現主義の...自己実現主義

  • 『サピエンス全史』をどう読むか③

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、『サピエンス全史』の大いなる掲示長沼毅神を相手にしない宗教がある。共産主義や資本主義、自由主義などのイデオロギーを修辞的心に「宗教」と呼ぶのと似たもあるが、もうワンランク上の話である。「サピエンス全史」では、第12章「宗教という超人間的秩序」において、神を相手にしない宗教という点で仏教を特別視した。本文から引用すると「仏教の中心的存在は神ではなくゴータマーシッダールタという人問だ」(下P27)、「仏教は神々の存在を否定しないが…宇宙の神々が全員揃っても、その人を苦しみから救うことはできない」(下P31)と解説している。さらに第19章「文明は人間を幸福にしたのか」でも、下巻P237~240の4ペーシにわたって、仏教の考え方か...『サピエンス全史』をどう読むか③

  • 『サピエンス全史』をどう読むか②

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、認知革命派ゆっくりと進行した福岡伸一認知革命は突然変異か?ただ私か少し不満なのは幻想や虚構をつくり出す能力がサピエンスをしてサピエンスたらしめたという主張です。それを彼は認知革命と言って、だいたい七万年くらい前に起きたのではないかと考えています。七万年くらい前に人間はアフリカから出て世界中に広がり出して、そのときからいろいろな文化活動を急速に広めたので、このときに大きな転換があったのではないかということです。その転換は幻想、虚構をつくる能力を身につけたということによってもたらされたとハラリさんは考えます。そこで彼は「たまたま遺伝子の突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにないかたちで考えたり、まったく新...『サピエンス全史』をどう読むか②

  • 『サピエンス全史』をどう読むか①

    「『サピエンス全史』をどう読むか」(2017/11/27・河出書房新社編集部編集)、冒頭の池上彰とユヴァル・ノア・ハラリの対談や、大澤真幸氏、福岡伸一氏らが『サピエンス全史』に対する批判・別視点からみた疑問点が書かれている。興味深い所を拾ってみます。池上彰とユヴァル・ノア・ハラリの対談から池上お金自体は単なる紙です。例えば日本なら一万円と書いてあれば、これが単なる紙であるにもかかわらず私たちは一万円と信じています。私はよく、学生たちにこれは共同幻想であると教えます。みんながお金はお金だと思っているからお金なんだよということです。論理学でいうとトートロジーです。お金というのは非常に不思議なものですね。今のお話しですと、「これはお金だよ」と言っている人たちは詐欺師ということになりますか?ハラリいいえ、詐欺では...『サピエンス全史』をどう読むか①

  • サピエンス全史②

    『サピエンス全史(上)(下)文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)仏教について記述しているので、その部分を転載します。なかでもとくに興味深いのが、仏教の立場だ。仏教はおそらく、人間の奉じる他のどんな信条と比べても、幸福の問題を重要視していると考えられる。二五〇〇年にわたって、仏教は幸福の本質と根源について、体系的に研究してきた。科学界で仏教哲学とその瞑想の実践の双方に関心が高まっている理由もそこにある。幸福に対する生物学的な探究方法から得られた基本的見識を、仏教も受け容れている。すなわち、幸せは外の世界の出来事ではなく身体の内で起こっている過程に起因するという見識だ。だが仏教は、この共通の見識を出発点としながらも、まったく異なる結論に行き着く。仏教によれば、たいていの人は快い感情を幸福とし、不...サピエンス全史②

  • サピエンス全史①

    『サピエンス全史(上)(下)文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。世界で1200万部売れた本だ。2011年ヘブライ語でイスラエルで初めて出版され、2014年に英語版が発売され、日本では、2016年9月に発売された7万年前にホモ・サピエンスに起きた「認知革命」によって、架空の事物について語る能力を身につけた、人間は大規模な協力体制を築き、急速に変化する環境に対応できるようになった。その後、「農業革命」と「科学革命」が起きた。「認知革命」とは、「現実には存在しない虚構(フィクション)を信じ、語ることのできる能力」で、次々と新しい神話やイデオロギー...サピエンス全史①

  • ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常③

    『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)の続きですが、ほんの最後に「解説」として山田陽子氏が、本の内容を要約しあります。本書は、新自由主義的資本主義社会において「幸せ」の追求がもつ意味やそれが権力を行使する仕方について分析しているる(「序」)。一九九〇年代の終わりに登場した「幸せの科学」、別名「ポジティブ心理学」、「幸せ」を「誰もが追求する目的、測定可能な概念」とみなし、「健康で社会的に成功し、最適に機能する個人のしるし」であるとした(第1章)。高水準の心の知能指数、自主性、自尊心、楽観主義、レジリェンス、自発性、感情のセルフコントロールなどは、活躍する人びとに共通の心理的特徴である。「幸の科学」は...ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常③

  • ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常①

    『ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)解説に次の様にあります。「幸せの追求はじつのところ、アメリカ文化のもっとも特徴的な輸出品かつ重要な政治的地平であり、自己啓発本の著者、コーチ、[…]心理学者をはじめとするさまざまな非政治的な関係者らの力によって広められ、推進されてきた。だが幸せの追求がアメリカの政治的地平にとどまらず、経験科学とともに(それを共犯者として)機能するグローバル産業へと成長したのは最近のことだ」(「序」より)。ここで言及される経験科学とは、90年代末に創設されたポジティブ心理学である。「幸せの科学」を謳うこの心理学については、過去にも批判的指摘が数多くなされてきた。本書はそれらをふま...ハッピークラシー―「幸せ」願望に支配される日常①

  • ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常②

    『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(2022/11/4・エドガー・カバナス原著・ヱヴア・イルーズ原著、高里ひろ翻訳、山田陽子解説)、「ポジティブ心理学」の何が問題なのかという記述です。以下転載。ポジティブ心理学者が幸せを概念化し測定する方法がそもそも個人主義ベースなのだから。実際、人の幸せを測るうえで境遇が果たす役割をまったく無視することはなくても、それを軽視することは、ポジティブ心理学が生まれてからずっと、この分野の顕著な特徴だった。彼らが文化の異なる対象を研究する場合や、幸せを数値化する測定方法の多くに、その特徴が見うけられる。たとえばよく知られた人生満足感尺度(SWLS)では、質問が個人主義的また主観的な要素を過度に強調し、社会や経済、文化そして政治などのより客観的な要素がその分過...ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常②

  • 近代とホロコースト

    『近代とホロコースト』(ちくま学芸文庫・2021/4/12・バウマン著)数百万人の殺害には激情にかられた暴徒ではなく、合理的な意思決定を行う官僚が必要である。ホロコーストがサディストや狂信者による激情的犯罪ではなく、有能・忠実な官僚による行政的犯罪であったことは今日では常識となっている。官僚制を特徴づける合理主義や効率主義、社会工学的思考、組織的分業は個々人の責任と道徳を周縁に押しやり、大量殺戮を技術的に可能にする。バウマンはこうした点をふまえながら、ホロコーストが前近代的な野蛮への退却ではなく、近代そのものの必然的な帰結であったと主張するのである。近代文明こそ、ホロコーストの必要条件であったー。官僚制、合理主義、進歩主義、分類といった近代的諸要素が、暴力を独占し、社会的制約を受けない権力のもとで結びつい...近代とホロコースト

  • 日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?

    『日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?』(平尾昌宏著・2022年9月)日本語の「です・ます」と「である」について、〈です・ます体〉は「その本質において二人称に対する語りかけの文体である」と述べ、両者の本質的な差異を「二人称の読者を認めるか認めないかであ」るととらえ、ここから二つの異なった世界・原理というとらえかたに展開していく。そして、最終章は「私の言おうとしていることは伝わっていますか?」という著者の〈です・ます体〉での呼びかけで終わる。本から転載します。「『です・ます』を用いているから紀要に載せられない」とするものであった。つまりここには、「です・ます」では学術論文にならないとの前捉があることになる。このことは重大である。簡単におさらいしておこう。話し甘葉の〈です・ます目...日本語からの哲学―なぜ〈です・ます〉で論文を書いてはならないのか?

  • 根源的自尊感情

    昨日「自尊心には、条件的自尊感情と、基本的自尊感情と、根源的自尊感情があるようです。条件自尊感情とは、社会的優越性からくる自尊感情であり、基本的自尊感情とは、常に私を認めてくれる人があるという自尊感情であり、根源的自尊感情とは、認めてくれる、くれないという感情の劣化性を打ち砕いて見いだされる自尊感情です。」と書きました。根源的自尊感情とは、私の造語ですが、浄土真宗の信心によって恵まれる自尊感情です。以前、『不登校児が教えてくれたもの―3000超の症例が発する日本の父母へのメッセージ!。』(森下一)を紹介したことがあります。強(ツヨシ)君は中学1年の時から不登校に傾き、森下先生の診療所を訪ねました。真面目すぎるほど真面目な彼は、登校できない自分を卑下し苦しみます。中学卒業後の仕事も長続きせず自殺を考えるよう...根源的自尊感情

  • 孤独と居場所の社会学

    『孤独と居場所の社会学~なんでもない〝わたし″で生きるには』(2022/10/21・阿比留久美著)からの転載です。書評に次の様にあります。社会は「自由」で「多様」なはずなのに、なんでこんなに息苦しい?能力主義と自己責任、家族の多様化、ジェンダー不平等、承認欲求とアイデンティティ……。現代の閉塞感に風穴をあけ「誰もが息のしやすい社会」を構想する希望の論考。(以上)私たちは自分自身裸のまま何もない自分では価値がないと思っているからこそ、なんでもない自分ではなくて、「OO大学出身のわたし」だとか「素敵なパートナーがいるわたし」というかたちで、価値のある人間になるための様々な努力を四方八方におこなってしまいます。そして、時には「どのように生きたいか」ということよりも「どのような人間に見えるか」、「うらやましいと思...孤独と居場所の社会学

  • 自尊心の構造②

    『自尊心の構造』森口兼二著、かなり古い本(1993.2)です。少し転載してみます。1.半社会的(家族的)自尊心発達初期の自尊心は、自己評価の基準の空間的な出所および代表者が、保護者に代表されるごく狭い範囲に限られているとともに、時間的には依存する他者の存在やその場の批評に直接左右される即時的な短さを特徴とし、また、他律的なものであること、そのことから、安定も著しく低いものであるような姿で出発する。自尊心は、人間の成長とともに、評価基準の時間的・空間的代表性においても、内面化(他行性⇒自律性)の程度や安定性についても、発達をとげるが、これら発達初期の特性は、何も家族の中の幼児についてのみ通用する類型と考える必要ない。たとえば、成人でも、生活空間か著しく限定されていたり、社会変化が極めて急激である場合、その代...自尊心の構造②

  • 自尊心の構造

    『自尊心の構造』森口兼二著、かなり古い本(1993.2)です。少し転載してみます。筆者が自尊心と呼ぶのは、「自己の全体、もしくは、みすがら価値を認める自己属性について、自己評価を維持し、高めたいと欲する心」である。このようか自己評価の維持・向上を危うくするようなことは「自尊心が許さない」のであり、現実にみずから、あるいは他者によって、このような自己評価にひびを入らせるような結果を招いたとき、自尊心は傷つけられるるのである。ところで、すでに述べたように、自己評価は他者に認められ、評価されることの必要に関連して発達し、また、自己評価は原則的に他者の前に自己をさらし、他者から受ける反応を確認機会とし、これらの反応を介して得られるものである。したがって、先に定義した自尊心は、しばしば、「全体としての自己、もしくは...自尊心の構造

  • 見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出

    『見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出』(2022/10/7・細谷功著),今年、初めて購入した本です。一日で読み切りましたが、あまり興味を持てない内容でした。ただ「VUCAの時代」という初めて接する用語が出て来ました。下記のネットからの引用です。VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと:i-Learning株式会社アイ・ラーニング現代は、新型コロナウイルス(COVID-19)といった感染症などの疾病や台風、地震などの災害、AI技術の急激な進化により世の中の変化を予測しにくくなっています。この先もどのように変化していくのか、予測が難しい状況といえるでしょう。このように今後の予想がしにくい状況をVUCA(ブーカ)という言葉で表すことがあります。VUCAとは、Volatilit...見えないものを見る「抽象の目」-「具体の谷」からの脱出

  • 自己責任の時代

    『自己責任の時代―その先に構想する、支えあう福祉国家』(ヤシャ・モンク著)著者は、ユダヤ系ドイツ人の政治学者です。著者は、新自由主義的な政策の背景にあるのは「自己責任」を絶対視する考え方でありう、そこには「自分の責任で困難な状況に陥った人は救わなくてもよい」「自己責任以外の理由で困難な状況に陥った人だけを救済すればよい」という発想があるという。本からの転載です。近年の改革が支払った主要な代償の一つは、誰がどれほど受け取るかではなく、各人は何をすれば理論上受給資格のある給付を得られるのかという問いに関係している。責任に以前より大きな役割を与えたため、国家は、「責任ある」行動をとったと思しき人と「無責任に」行動したと思しき人とを峻別するように求められている。その結果、責任追随的な諸制度はつねに、福祉申請者に対...自己責任の時代

  • 上級国民/下級国民④

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。「リベラル化」が進んだ後期(再帰的)近代では、労働者は一人ひとりが自由な意思を持つ「個人」になり、自分を「労働者階級」とは見なさなくなります。そうなると、経済的な成功と同じく失敗(失業)も個人の責任で、かつてのプロレタリアートは階級や社会階層を構成しない「プレカリアート」と呼ばれるようになります。経済的な苦境は個人の生き方の問題とされ、本人たちも「自己責任」を内向化していきます。「社会」から「個人」へと視点が変わる再帰的近代では、「自己」を正しく把握・管理することが重要になってきます。これが「自己分析」「自己コントロール」で、自己の価値の最大化を目指すのが「キャリアビルディング」です。このように現代社会のさまざまな現象は、「自分...上級国民/下級国民④

  • 上級国民/下級国民③

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。リベラルな社会の負の側面は、自己実現と自己責任コインの表裏あることと、自由が共同体を解体することです。リベラルは、人種、出自、宗教、国籍、性別、年齢、性的志向、障がいの有無などによるいっさいの差別を認めません。なぜならそれらは、本人の意思や努力ではどうしようもないことで自己実現を阻むからです。しかしこれは逆にいうと、「本人の意思(やる気)で格差が生じるのは当然だ」「努力は正当に評価され、社会的な地位や経済的なゆたかさに反映されるべきだ」ということになります。これが「能力主義(メリトクラシー)」であり、リベラルな社会の本質です。自己分析と自己コントロールイギリスの社会学者アンソニー・ギデンスは1990年に『近代とはいかなる時代か?...上級国民/下級国民③

  • 上級国民/下級国民②

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)からの転載です。第二次世界大戦後の西側諸国は、アメリカを中心とする自由主義諸国間の貿易によって空前の繁栄を実現します。1960年代になると、ごくふつうの庶民まで、数百万年の人類の歴史のなかで王侯貴族ですら想像できなかったようなとてつもないゆたかさを手にすることとなりました。こうして、ゆたかさを背景に価値観の大きな転換が起こります。それを一言でいうなら、「私の人生は私が自由に選択する」です。「そんなの当たり前じゃないか」と思うでしょうが、それは私たちが「後期近代」に生きているからです。中世や近世はもちろん、日本では戦前(前期昭和)ですら、「人生を選択する」などという奇妙奇天烈な思想を持つひとはほとんどいませんでした。長男は家業を継ぎ、次男や三男は...上級国民/下級国民②

  • 超高層のバベル③

    『超高層のバベル見田宗介対話集』(講談社選書メチエ・2019/12/12・見田宗介著)からの転載です。見田今の学生は、物心ついた頃にはバブルが崩壊していて、それ以来ずっと日本は不景気。二〇〇〇年代前半の好景気も、人々が恩恵を感じられるようなものではありませんでした。彼らにとっては、一九八〇年代の華やかな文化は、神話的な夢なんですね(笑)。三浦私などは、インストゥルメンタル(手段的)に働くよりも、コンサマトリー(自己充足的)に働くほうが楽しいと思って生きてきましたが、そもそもコンサマトリーな生き方には(ウツーがなく、自分で生き方を見つけるしかない。ゆとりのあった時代には若者の試行錯誤を許容できたのですが、コンサマトリーに生きたい人は「自己責任でがんばって」となる。他方、今は割り切ってインストゥルメンタルな生...超高層のバベル③

  • 上級国民/下級国民①

    『上級国民/下級国民』(小学館新書・橘玲著・2019/8/6)を興味深く読みました。「人口爆発」と「ゆたかさの爆発」だとしたら、紀元前1万年前後の「農業革命」は人類になんの変化ももたらさなかったでしょうか。もちろんそんなことはありません。農業は、サピエンスの生存環境に劇的な変化をもたらしました。それは「人口爆発」です。諸説あるものの、10万年前の世界人口は現生人類(サピエンス)とユーラシアの旧人類やネアンデルタール人などを合わせて50万人ほどしかいなかったとされます。それが、農業という巨大なイノペーションでカロリー生産量が急激に高まったことで、紀元前1万年から西暦1年までのあいだに世界人口は100倍まで増加します(推定値は40~170倍)。これにともなって世界全体の富は大きく増えましたが、そのぶんだけ人口...上級国民/下級国民①

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