満月大理石風の白いカフェーの裏手の入り組んだ石畳の路地には、小さな清流が流れ、そこにひそむ古いレンガ色の三階のマンションの上に一人の若い映像作家がいた。透明な水ところころと響く水音に歩く者は思わず立ち止まる。春と秋にはバラが、梅雨には菖蒲とアジサイが豪華に咲く窓から見る風景は都会には珍しい程の緑と花にあふれた広い公園がある。四方を取り巻くように、ベンチが十個ぐらいある。朝日と夕日と満月は自然の恵みとして、この公園にも顔を出すマンションの三階の窓から、顔を出すのは一人で暮らす若い英彦。コロナが襲った。その時はもう自宅療養の時に移っていた。英彦はベッドに横になりながら、外の風景を見るのが好きだった。猫がいつものように、歩いて彼の方を振り向く自分が貧しく弱く、消えていく存在のように思えた。しかし、彼が見ているの...満月