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空華ー日はまた昇る https://blog.goo.ne.jp/gogouan1231

小説の創作が好きである。今回のは猫の語り手が吟遊詩人と「アンドロメダ銀河」を旅する話。散文詩 のよ

空華ー日はまた昇る
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2018/05/12

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  • 満月

    満月大理石風の白いカフェーの裏手の入り組んだ石畳の路地には、小さな清流が流れ、そこにひそむ古いレンガ色の三階のマンションの上に一人の若い映像作家がいた。透明な水ところころと響く水音に歩く者は思わず立ち止まる。春と秋にはバラが、梅雨には菖蒲とアジサイが豪華に咲く窓から見る風景は都会には珍しい程の緑と花にあふれた広い公園がある。四方を取り巻くように、ベンチが十個ぐらいある。朝日と夕日と満月は自然の恵みとして、この公園にも顔を出すマンションの三階の窓から、顔を出すのは一人で暮らす若い英彦。コロナが襲った。その時はもう自宅療養の時に移っていた。英彦はベッドに横になりながら、外の風景を見るのが好きだった。猫がいつものように、歩いて彼の方を振り向く自分が貧しく弱く、消えていく存在のように思えた。しかし、彼が見ているの...満月

  • 里山をたたえる

    おお、私とユリの花は兄弟だ自然の中で咲く花と私私は愛する里山の神秘の瞳と唇を里山と花は神仏の現われだ。薔薇よ、深紅の色に潜む宇宙の謎ユリよ、雪のような白さは乙女の姿里山の中で、大自然の詩句を歌っている人も生き物も神仏の現われだ。風がそよぎ、緑の梢は揺れるオオルリの歌が青空に響く自然の中で生き物は、不滅の生を生きている。風の音も鳥の声もいのちの声だこの里山の風景魂に触れる薔薇と百合の花は永遠のいのちの調べ詩人の祈りは神仏に届く、誠実な歌声だ花も昆虫も人も全ては神仏の現われだそれで、何故、戦争がある神仏の現われという真理を忘れ、我執のとりこになるからだ魔はそこを狙うおお、里山の花よ、人を目覚めさせよやがて、大自然の中、人は愛を見つける薔薇とユリの花がいのちの秘密を教える里山の詩、感動する魂は震えているいのちの...里山をたたえる

  • 大自然と街角

    大自然と街角ああ、この音色。悲しくせつない天の声のようだ。どこかに、美しい森があるようだ。小川が流れ、そこで、青い鳥が鳴いているようだ。僕の猫もないている。ああ、何という神秘に満ちた自然美だ。そう、君と僕は大自然と共に神仏の現れだ。太陽が昇り、やがて夕暮れがやってくる。夜には月がのぼる。そして、月日がたつと、満月なんて、美しい花を咲かせる窓からは花がそよ風に揺れ、君の呼び声がする。黄色いふさふさしたドレスを着た淑女の君がニャーと奇妙な声を出すああ、僕はとどまり、再びこの神秘な音色に耳を傾ける。おお、何という美しさに満ちた君の黒い瞳ここはどこだ、道に迷ったようだすると、さっきとは違う音色の呼び声が聞こえる花園があったではないか。おおここは春。丘の緑の見える平原の中に、朝もやが立ちこめ、緑の大地の何という美し...大自然と街角

  • 大自然

    蘇軾【そしょく】という詩人と白楽天という詩人をふと思い出した。蘇軾は大詩人であり、山に入り、滝の音を聞いて悟ったという。白楽天も大詩人と評価され、当時のエリートでもあった。その白楽天が仏教の奥義を優れた禅僧にたずねた所、その禅僧は「悪いことをしないで、良いことをすることだと」答えたそうだ。それで、白楽天は「そんなことなら、三才の子供でも言える」と言ったという。この白楽天の話を道元はとりあげ、「白楽天は仏法」について何もわかっていないとこき下ろした。そんな話を聞き、詩を書くのに優れていることと、禅で悟りの世界を直感することは別次元のことだと言えることが分かるではないか。この話は現代にも応用が利く。どんな優秀な専門家でも、その道に詳しくても、禅の悟りの世界には無知ということはありうる。悟りの世界。つまり、科学...大自然

  • 武器よさらば 【エッセイ】

    この間のショートショートは舞台がイタリアが多かったですね。若い頃、ヨーロッパ旅行に行ったことはありますが、出発点はローマでしたね。バチカンは見る芸術品が圧倒的に多いだけでなく、ミケランジェロを始めとする深みのあるものが多く、時差ボケで二日間で見るには無理があったようです。ホテルの一室を二人で借りたのですが、列車を取材に来た記者の方と一緒になり、大変良い方だったので、夜、二人で散歩しました。二人とも外国の夜は慣れていないので、一緒が良かったのでしょう。バーで一緒にアルコールを入れ、ローマを楽しみましたけれど、何と言っても、短い時間でしたからね。次のフローレンスとヴェニスへの旅が楽しみでした。しかし、それからは一人旅ですから、英語に自信があるわけでないし、イタリア語はまるで知らないのですから、大変です。若さで...武器よさらば【エッセイ】

  • ヨーロッパ 【ショートショート 】

    ヨーロッパ【ショートショート】ローマに到着すると周囲の急激な変化に気持ちも紛れた。バチカンでルネサンスの芸術に宗教的な衝撃を受けた。ここではすべてがキリスト教一色になっていた。露野は西洋の深さが東洋の崇高な仏像の祈りと繋がっていると思った。ミケランジェロの到達した美と仏の賛歌は真理という深い海に船出する二そうの黄金の船に違いなかった。同時に彼は真理発見と実現のためには西と東が手を結ぶことが必要なのだと思い、道元の説く仏性への目覚めの中でこそ理想社会が実現されるのだという確信を強めたのだった。そしてフローレンスへ。町全体が芸術品だった。彼はそこで『文芸の街角』という文芸雑誌をつくるアイデアを心に浮べた。ビデオカメラを持って行ったので彼は花の聖母寺やドゥオーモ広場の魅力的な町角をとった。そしてこれを編集しなお...ヨーロッパ【ショートショート】

  • 道元とマルクス

    道元の考えの核心に触れるには正法眼蔵を読まなくてはなりません。私が四十年前に書いた小説の中に、そういう場面を発見し、自分でも驚いたのですが、少し直しても読者に分かりやすくなっているのか、疑問です。この場面をさらに、面白く読めるようにこれからも、座禅をして正法眼蔵を読み、この場面をさらに面白く読めるように、工夫しなければと思いましたが、今は退院したばかりということで、このレベルで掲載しました。道元とマルクス【ショートショート】「彼女はマルクスの資本論も読んでいる様な女性だからね。頭の良い女だと思うよ。人間は面白いがあの莫大な資産が彼女を駄目にする」その時、露野はキリストの言葉を思い出した。金持ちが天国に行くのは駱駝が針の穴を通り抜けるよりも難しいという昔覚えた文句だ。これは真の信仰生活には莫大な財産が邪魔に...道元とマルクス

  • 明珠の町

    今日は。今回は三十数年前に書いた私の長編小説から拾った散文詩になりそこねた文章の紹介です。脱原発をテーマにしたこの長編は本にして、一流の芸術家武満徹氏から礼状をもらったもので、私にとって、記念碑的作品です。ご紹介する文に至る簡単なあらすじは、主人公が親友のいる明珠の町に来て、その家でしばらく滞在している時の様子を書いたものです。明珠の町彼はお茶の専門店で買った新茶の封を切って急須に入れた。中に絹のような緑茶の若葉がさらさらと音をたてて落ちた。入れ過ぎたかなと思ったが、まあ大丈夫だろうと考え、ちょっと首をかしげた。彼女は、陽気だった。軽い歌が彼女の喉の奥の方で歌われ、それは静かな部屋の中に十九世紀のレコードの様にやさしい音の流れとなって、澄んだ小川を流れる笹舟のような神秘な乗り物となって空気の中をさまよって...明珠の町

  • 森に風鈴は鳴る

    「青春の挑戦」はさらに直し、以前に書いた「危機と大慈悲心」を延長した小説という形にして、推敲して、タイトルは「森に風鈴は鳴る」という小説に衣替えしました。パブ―に電子書籍に無料で出しています。その後、一か月が経過し、いくつかの不備が見つかり、小説「森に風鈴は鳴る」はいくつも直しました。下記に重要な所のみ掲載します。これからも、直し、完璧を目指したいと思います。細かい所を直したのは「大山道長」という人物の描写です。この人は強烈な個性の持ち主で、小説「危機と大慈悲心」で活躍させた人物ですが、「森に風鈴は鳴る」の完成版にまとめる時に「危機と大慈悲心」を半分に削って、完成版の最初の少年版にしたものですから、問題が起こりました。新しい小説「森に風鈴は鳴る」では、大山道長の個性が弱くなり、登場機会も少なくなり、小説を...森に風鈴は鳴る

  • 青春の挑戦 22 (小説)

    22雨もやみ、宇宙人も去った。松尾優紀は車に乗り込んだあと、しばらく銀色の目をしたヒトは本物の宇宙人なのか、という不安にさいなまされたあと、ふと、今晩の通夜にAIロボット律子を連れて行こうと思った。彼は車で、会社に寄り、彼女を連れ出した。松尾は黒の喪服を着ていたけれど、彼女はベージュのスプリングコートだ。それでも、良いと彼は思った。人の死を学習させるのに良い機会ではないかと思った。彼女は小さな箱を持っていた。「その箱は何だい」「インコのロボットよ」「何だ。そんな玩具を持って」彼はアリサ夫人の家にいたインコを思い出した。あれは素晴らしい生き物だったという思いが浮かんだ。「先ほど、船岡常務が来て、『これを松尾さんに渡してくれ』と言われたの。」「船岡常務が。何でそんな玩具みたいなものを。本物のインコのほうがいいじゃな...青春の挑戦22(小説)

  • 青春の挑戦 21 (小説)(悪夢)

    21悪夢ある夜のこと、松尾優紀は悪夢を見た。松尾は何故か、改良型のロボット菩薩に変身していて、町を歩き、困った人はいないか探していた。彼の前を塞ぐように地上の広場に円盤状の形をしたUFOが着陸していた。その周囲にテーブルと椅子を出し、十人ほどのあの丸い銀色に光る目をした宇宙人が酒でも飲んでいい気持ちになっているようだ。一人の宇宙人が松尾の前に立ち、「おい、松尾。原発事故が起きたぞ。」と金属的な声で言った。「お前たちがやったのだろう」と松尾が言った。「事故だよ。先ほど地震が起きたろ。それで、やられたのだ」と宇宙人は答えた。松尾は町を見た。町は放射能にやられ、廃墟となっていた。色とりどりの薔薇だけが燃えるように美しく、町を取り囲んでいるのが異様に思えるほど、沢山の壊れたビルと荒れた人家の中は、人がいない。ゴーストタ...青春の挑戦21(小説)(悪夢)

  • 青春の挑戦 20 (小説)

    20松尾優紀はソファーに座り、テレビの前に釘づけになった。原発事故の状況は中野静子から電話で聞いた印象より悪かった。ただ、不思議なことに、震度六強で、こんな事故がおきる筈がないように設計されているはずだ。大きな津波もおきていない、それに、その事故の直後に、銀色の円盤が原発の屋根の方から、宙に行き、去ったことを目撃した者が三人もいたのだ。原発の敷地にいた二十五名ほどの人間が爆発と放射能で確実に死んだようだ。そして放射能の漏れによる汚染が伊方浜市一帯で心配される状況にあり、伊方浜の周辺にあたる広い地域にも時間と共に悪い影響が及ぼされる恐れが出てきているようだった。死者の名は十二時のニュースになって明らかにされた。堀川善介という名前を見付けた時、松尾優紀はある衝撃を受けた。原発敷地内にいた堀川氏が死んだという思いは松...青春の挑戦20(小説)

  • 青春の挑戦 19 (小説)

    19銀色のドローンは町の空中を滑走路のようにして、とまっている。市民の多くは広場のはじにある花壇の方に退き、驚きの表情でドローンと平和産業の人達のやり方を見守っていた。「真実。何だ。それは。我々は具体的に大地を美しくする人を尊敬する善人だ。我々の惑星のヒトは皆、善人だから特別にうやまう人などいない。自分が善人であれば、良いではないか」というドローンからの声があった。「ふむ。本当に善人なのか」「お前達が地球に何をしてきたというのだ。絶滅危惧種の問題もある。あの強い虎ですら、かって十万頭もいたのに、もう三千頭しかいないというではないか。次々と生き物が滅びようとしているではないか。南極の氷が溶け、温暖化は進み、核兵器は長崎と広島に落とされた。そして軍拡が進んでいる。このまま行けば、やがて近い将来、人類が滅びる危機に直...青春の挑戦19(小説)

  • 青春の挑戦 18 [小説 ]

    18松尾優紀は物語を喋りながら、島村アリサとゴンドラに乗って、旅する様子を空想していた。春の息吹が横溢するゴンドラの上。彼女は愛に満ちた瞳を彼の方に向けながら、やさしい春の光がヴェニスの運河の水を黄金色に縁どる中で、使命を持った伝道者のように、ヴェニスの風景の描写とその感想を織り交ぜながら、真理の到来とユートピアを築こうとする熱情にあふれているようだった。仏性。空、神仏を知れば、人は自然と良いことをしたい、経済格差社会をなくしたい、人類の危機を救いたいという気持ちになるようだと、彼女は言う。核兵器を地球からなくし、同時に世界の軍縮を進めることが当然と思うようになる。そうしたアリサの断片的な言葉だけが、空想の中の美しい詩のように、彼の耳に入ってきた。彼女は首から胸にある赤い花模様の入ったスカーフを整えると、花のよ...青春の挑戦18[小説]

  • 青春の挑戦 17 【小説と詩】

    17「宇宙人のこと、少し耳にしていますのよ。でも、あたし、ああいうの、あんまり信じていませんの。それで、自然とそういう話も私の耳に届かなくなっておりますのよ。何かあったんですか」彼はここで、宇宙人と出会ったショッキングな出来事を話そうという気持ちもあったのだけれど、彼自身にもあれはAIロボットではないかという疑いの心がある。そういう迷いの心の中で、口は先ほど話す準備をしていたウネチア物語に触れるような形で、話を進めていた。平和産業では、この宇宙人対策のために、平和の使者を町に送る準備をしていることを話すのも、何故か躊躇する気持ちがあるのは松尾自身にも不可解だった。「ええ、そのことを話す前に、ウネチア物語の続きを話しましょうよ」と彼はちょっと笑って言った。彼女も微笑した。「今のヴェニスが温暖化問題で、悩んでいるこ...青春の挑戦17【小説と詩】

  • 青春の挑戦 16

    16この町への平和の使者を派遣する準備の作業を進めている間に、松尾優紀はアリサ夫人から、会わないかと声をかけられた。アリサの父の寺の修行で、時々会っていただけに、改めて外でというのは珍しかった。映像詩の制作作業でも色々アドバイスをもらった。それだけに、密会めいた会い方に何か普段とは違うことで話したいことがあるに違いないという感じを持った。山岡市の駅前ビルの喫茶室で松尾はアリサと会った。尾野絵市は松尾の育った町でもあるし、奈尾市はアリサの住んでいる所である。近接したその二つを避けて、Zスカルーラのあるこの場所が会う場所に選ばれたのはやはり意味があることなのだろうかと、松尾優紀は考えた松尾とアリサ夫人の話題はいつも映像詩と文学と禅の話だった。平和への映像詩は平和産業の一部であり、仕事であり、アリサの一番関心を持つ分...青春の挑戦16

  • 青春の挑戦 15

    15次の日の価値観ルームには、黒板の前にある机に花瓶があり、赤い薔薇の花がいけられていた。椅子に座っている中野静子がいけたのだろうと、松尾は思った。この日はAIロボットがいない。松尾は静子を見ると、不思議なことに、何かはっとするものを感ずるのでした。真珠のような瞳というイメージだけでなく、そのイメージに関連して、昔の思春期の頃の色々のことが思い出されるのでした。ただ、その日は若い頃の師である島村アリサにまつわる様々な出来事が絵巻物のように、広がるだけで、何かに焦点化することなく、前の日の続きを喋り始めたのでした。「ユニカーム工業の社員の過労自殺に新しい情報が入りましたね。遺書によると、彼は宇宙人のことをユ―チューブに連載していたようですね。彼によると、宇宙人は人類には理解できない特殊な宗教を持っていたようです。...青春の挑戦15

  • 青春の挑戦 14

    14松尾優紀は長いこと自分が吟遊詩人となって、長い旅の夢を見ていたことを思い出した。これに似た夢は前にも見たことがある。おそらく、アリサの作った映像詩を何回も見たせいだろう。どこの家からか、吹く横笛の音が、夜の闇の中で聞こえてくる家や樹木をなでるように、さわやかな音色は消えていき、再びそよ風にのってわが故郷、尾野絵市の街角に響き渡るこの横笛の音を聞くと仏性を直感したいという恋慕の情が起きるのだろうか。恋の炎のような激しいアリサへの慕情は思春期の病気のようなもので、今はたんたんとしていると、松尾自身は思っているが、心の奥底に恋の火山が眠っているのに、それに表面上は気がつかない振りをしているようでもある。なにしろ、あの人は堀川という弁護士の元に嫁いでいる。彼女には随分とお世話になった。彼女の父の禅の寺にも、もう四年...青春の挑戦14

  • 青春の挑戦 13

    十日後、松尾とロボット菩薩と田島のコンビで出かけることにした。ロボット菩薩にとって、最後の仕事になりそうだ。なぜなら、親会社ルミカーム工業から、さらに改良するので、ボサツを送れという指令が届いているのだ。山のすそ野に広がる深い森の中で、宇宙人がいるとしたら、ドローンの百倍くらいの大きさ、つまり、飛行機を丸くした様なもの、そんなUFOの中にいるのだろうか。ここの山は低いが、森は深い。杉の森なのだが、これは植林されたもので、所々に昔の天然のケヤキがのこっている。それは数は少ないが、たいていかなりの巨木になっている。ここは松尾たちにとって、始めて入る所なので、案内人に連れられて、苔におおわれた丸太階段のある山道を上っていく。樹木の梢の緑の葉の中で、ホトトギスが鳴いているが、姿は見えない。しばらくすると、金木犀の香りが...青春の挑戦13

  • 青春の挑戦 12

    12松尾優紀の耳に奇妙な噂が入った。会社から十キロ離れた森に宇宙人の基地があり、彼らは人類の滅亡を待っているので、平和産業なんていうのは彼らにとっては迷惑、それで平和産業をつぶそうと色々な工作をしているということだった。これは何人かの会社のスタッフが町の中に広がっている噂を聞いてきたのだ。しかし、松尾はそういう話に半信半疑だった。彼とロボット菩薩と田島のコンビの核兵器廃止運動は四年もたち、中学校三校、大学五校、役所二か所と順調に行っていた。それにねたみを持ち、引きずりおろそうとする産軍共同体につながるような邪悪な心を起こすものはどこにもいるものだと、松尾はそんな噂を聞いても驚かなかった。その日、八月最後の日曜日の雨が降っていた。彼はコンビニに買い物があり、外に出たついでに、公園に出た。雨の降りがひどくなっていた...青春の挑戦12

  • 散文詩

    「世相」という名の散文詩1世相の悪を語ったあとは希望と愛を語りませんか核兵器と地球温暖化のことを思うだけで、我々は胸がつぶれそうになるはたして我々は子孫に健康な地球を残せるのだろうかあちこちで、豪雨があって、洪水があってそのたびに人は死ぬ今、生活している人も熱中症で死ぬ子供たちはまだ幼い時期に、車とぶつからない事を学ばねばならないこんなことを考えないで、すむ時代もあった文明は進化しているというけれど、核兵器と地球温暖化という危機も作り出した。それに、SNSの一部の状況に見られるようにいじめや犯罪にも使われる悲しさ若者の自殺が多いのはそれを象徴しているようで悲しい人は満月のように生まれ満月のように死ぬのだその間に生きる人を絶望に追いやるものも悪である。悪を退治するには「言葉」を大切にすることだ「言葉は神なりき」と...散文詩

  • 青春の挑戦 11

    11林原の別荘を夜の十一時頃、解散した。外は満月が美しかった。平和産業は順調にスタートした。熊野と林原は映像課に、田島と飯田と遠藤はロボット課に、平和セールスは松尾に決まったし、会社独自で採用したのは途中採用が多かった。次の平和セールスは大学と決まった。前と同じように、ロボットと松尾と田島のコンビで訪問するスタイルは同じだった。何しろ、まだ実験段階なのだ。遠藤の主張した額から、電波が飛び出るミニロボットは今後のロボット課での研究課題で、親会社のルミカーム工業と協力してやることに決まった。大学に学生の前で、ロボットの演説を見せたいと申し出たら、大学は快く引き受けてくれた。その日は十一月を少し過ぎ、紅葉にはまだというような秋晴れの日だった。車を大学正門前の駐車場前に止め、ロボット、松尾優紀、田島は中に入っていった。...青春の挑戦11

  • 休憩 【映画を見てのエッセイ 】

    平和憲法に基本的人権があるからこそ、我々は安心して暮らしていけるということが、この映画「Thepianist」を見るとよく分かる。この映画を見ると、何故ユダヤ人があれほど差別されたのか。日本人から見れば不可解な感じがするのではないだろうか。ユダヤ人には偉大な人が出ている。アインシュタイン・マルクス・ハイネ・スピノザ・フロイト俗説を聞いたことがある。ユダヤ人は商才があり、富豪がおおかったので、ジェラシイから、憎まれたのではないかと。しかし、殺された六百万人のユダヤ人の多くは普通の庶民だと思われる。そうすると、二千年前のキリストの生きていた時代にまで、さかのぼって考察したくなる、二千年前に、ベツレヘムの馬小屋にキリストは生まれ、成長して十二人の弟子に真実の神について教えたと私の記憶にある。私の高校から大学初期にあた...休憩【映画を見てのエッセイ】

  • 青春の挑戦 10

    10五人の若者は発言したわけたが、ミニロポットをつくるという動機はみな多少の相違があってどのように調節したら良いか、考える所が誰しもあって五人の発言のあとしばらく沈黙が支配した。それは重くるしいというような沈黙ではなく、むしろこの五人でやれそうだという了解を各自の胸にしみこますための時間のようでもあった。そして、この沈黙を破ったのは林原憲一だった。「みなさん、ウイスキイーでも酒でも飲んで下さい。私は、あなたがたがいらっしやる前から一人で飲んでいたんですよ。昼間飲むからといって焼け酒だなんて思わないで下さい。会社をやめてからデザインの勉強しているんですが、デザインのアイデアは少々のアルコールが身体に人っていたほうがわいてくるんですね。あまり飲みすぎてはいけないんですけど、ほろ酔い程度ですといい着想がわいてくるんで...青春の挑戦10

  • 青春の挑戦 9 [ 小説 ]

    9外は秋晴れで、白い雲のかけらがゆったり動いていた。ポプラ並木の歩道を歩きながら、新聞記者の林原が真剣な表情で言った。「松尾さん。今日のことは記事にしますよ。実におもしろい。それであなた方にわたしの家に来てほしいんですよ。岡井さんとこと同じように、私にも息子がいましてね。上の長男と長女は仕事を持っているのですが、一番下の私の息子なんですが、美大を出て広告会社に一度勤めたんですが最近、そこをやめて家でぶらぶら遊んでいるのがいるんですよ。今の話には飛びつくと思いますよ」松尾は一人帰った。一人になりたかったのだ。田島とロボットは車で帰った。林原も車で帰った。松尾は広い公園を歩いたり、ベンチに座りながらこの日の出来事の中で、一番の収穫は何かと思った。核兵器は政治家や軍だけにまかせておくだけでは、軍拡が進むばかり。一人一...青春の挑戦9[小説]

  • 青春の挑戦 8

    8「平和セールスですって。何です?それは。」「これはできれば新聞社の方も協力してもらいたいと思うから言うのですけど、世界平和の問題は我々現代人にとって今、緊急な課題ですね。」「そりやそうですよ。毎朝新聞でも平和の問題は何度も取り組んでいますがね。」ここまで話した時、彼らは警視庁の入り口を出て青空と自動車の往来を見たのだった。新聞記者は急に足をとめて言った。「どうです?ちょと喫茶店にでも。おごりますから。」松尾が同意すると新聞記者はうれしそうに微笑して言った。「警視庁の中に喫茶店があるの御存じですか。そこへ行きましよう。」彼らは再びもどり、さきほど来た廊下とは別の方向へ歩いてしゃれた感じのする店を見つけた。制服を着た警察官が大部分であったが、私服の人も何人かいた。松尾は警視庁の中にこんなしようしゃな美しい店がある...青春の挑戦8

  • 青春の挑戦 7 【 小説 】

    7会社の宣伝部に帰ってくると職場の雰囲気がなんだかいつもと違っていた。いつもより緊張感があり、それでいてあちらこちらにひそひそ話がささやかれているようだった。課長の木下勝次がちょっと沈んだ暗い顔つきをして松尾を手招きした。「どうだね。松尾君。一回目は中学校に行くといっていたけれど成果はあったかね」「最初としてはうまくいった方だと思います。」「そうか。それは良かった。ところで、松尾君、大変なことが会社に起こったよ。広川取締役が警察に逮捕されたんだ。」「え?」松尾はびっくりした。最近、取締役になり、紳士の風格のある広川がいったい何をやったのであろうか。松尾にはとっさに判断がつきかねた。「何でです?」「うん、それがね。会社の金を横領したというんだ。」「そんな馬鹿な。広川さんみたいな潔癖な人がそんなことをするはずがない...青春の挑戦7【小説】

  • 青春の挑戦 6 【小説】

    6映像は残酷な場面があるという教師の指摘の通り、校長と教頭と生徒指導主任の校長室での話し合いでも、全体としては反戦の映像詩になって良い作品ではあるが、一部の映像に中学生には相応しくない所があるので、見せるのは止めて欲しいと結論づけられたようだ。教頭は松尾にそのことを伝え、ロボットと松尾の平和についての話だけにして欲しいと言われた。その間、ロボットは田島に何か言っているようだった。「余計なことは言わんでと言いますが、僕はいつもまじめに答えているつもりです。そうですね。わが社は今後、企業は利潤本位ではやっていけなくなる時が来るし又、利潤本意でやればいずれ破綻が来る。そこでわが社が従来の会社とはちがい人間のための組識であることを示すためにもこの人権と平和問題をとりあげ、もうけようとたくらんでいるのであります。」「おー...青春の挑戦6【小説】

  • 青春の挑戦 5

    5彼は久しぶりの中学校になっかしさと会社とはちがう雑然とした雰囲気にとまどったが、気持を引きしめちょっと緊張した表情で大声を出したのだった。「大山中学校の先生方、私はルミカーム工業の宣伝課の者です。今日はみなさんにルミカーム工業の商品について知ってもらい色々買っていただきたいというお願いよりももっと重要なことでまいりました。実はルミカーム工業では世界平和についてみなさま方にうったえていこうということになりました。会社がこうした問題に深入りするのを不思議に思う方もありましようが、わか社は自社の発展を真剣に考えるならは平和こそ第一条件であるという結論に達したわけです。この平和については、なにもわが社の特権ではありません。むしろみな様職員の方のほうが次の時代の子供達をそだてているのですから、より切実に真剣に考えている...青春の挑戦5

  • 青春の挑戦 4 (小説)

    4松尾優紀は広島で撮った映像詩にみがきをかけた。応接室で映写したのは十五分ほどであったが、完成品は三十分ほどの長さになった。その間、アリサの所に行ってアドバイスも受けた。それから、船岡理恵子との悪魔と妖精の話を伝えたら、アリサは「そういうのは内の寺では、幻と言っているのですよ。あなた自身の中に、不死の仏性という偉大な宝があるのですから、そういうものに惑わされないように」とも言われた。今や、アリサは優紀にとって映像詩の先生であった。彼女がいなかったら、映像にぴったりする音楽を入れることが出来なかったろう。かっての初恋の人という恋慕の情は消え、時々厳しいことを言う師となっていた。彼女の父の住職が言う仏性は難解だった。土曜日には、優紀は、毎週きちんと工場長の家に通って道雄の家庭教師を熱心にやった。道雄は神を素直に信じ...青春の挑戦4(小説)

  • 青春の挑戦 3

    3理恵子は、ちょっと早口に向きになったような表情でそう言った。彼女に抱かれた猫が大きな目を見開いて、松尾優紀の目を見た。「うむ、不思議な目だ」と彼は思った。目の奥に一つの宇宙が広がるという詩的なイメージが松尾の心に浮かんだ。「瞳の奥から、迷い込んできた自然の神秘な光はわが胸を射す」という以前ノートに書き留めた詩句を思い出した。理恵子の母は上品な微笑を浮かべていた。「でも、世界をアニミズム的に見る方なんて、今時、珍しいんじゃない。その点では二人は一致しているのよ。」と彼女は娘の理恵子の方を向いてそう言った。工場長が細い目を大きく見ひらいた。「そうだな。お母さんの言うようにア二ミズムという点では二人は一致している感じがするね。そのことで思い出したんだが、うちの会社でもロポット開発がさかんになってきているんだが、この...青春の挑戦3

  • 青春の挑戦 2 【小説】

    2松尾がそこまで言った時、工場長はちょっと厳しい表情になって話始めた。「松尾君といったな。確かに君の言うとおりだ。核戦争を避けることは、人類史的な大問題だ。だがね、わが社は営利会社なんだ。政治のことに口だしする立場にはないんだよ。会社の利益につながらないことで、会社は行動することはできない仕組みになっているのだ。君がビデオで平和を訴えることにより、何か良いイメージが会社につながるのなら良いんだがねえ。これは、中々むずかしい問題だなあ。確かに、わが社と平和が結びつくことは会社の宣伝効果としては良いだろう。しかし、世の中は複雑で色々な考えの人がこの平和については、色々な角度から意見を言っているんだ。わが社が積極的に平和をとりあげることにより、それかプラスになるかマイナスになるかは簡単には即断できない。君はただ、わが...青春の挑戦2【小説】

  • 青春

    松尾優紀が広島から、帰った日は豪雨だった。梅雨の予報では、梅雨開けは近いと聞いていただけに、この突然のような豪雨には驚いた。広島にいたのは三日間でその間は曇り空で降らなかったし、初日は晴れ間さえ見せていたから、彼も気象庁の言うように、梅雨開けは近いと思っていた。三日目の昼頃から、雨が降り出した。前日の予報で雨が降る予想はしていたから、雨具を手に持って、夕方広島を出れば尾野絵では多少の雨にやられる程度と思っていた。けれど、昼を食べた頃から、ニュースの気象庁の予報は今、広島に降り出した小振りの雨は夕方には豪雨になるという風に変わったので、驚いた。広島の町を移動中は曇り空が多かったから、三日目の小雨が豪雨になるという話はにわかに信じがたかったが、夕方までいる広島の予定を三時までと変えたのは、この予報だった。三時に電車...青春

  • 日はまた昇る

    第一次世界大戦。パリの近くの西部戦線で、二百万の若者がたった四年間に死んだ。凄まじい、愚かな戦争。これによって、ヨーロッパのそれまでの輝かしい価値観が総崩れした。そして、総崩れは戦後長く続き、新しい価値観が模索されている。この価値観の総崩れによって生きる世代をロスト・ジェネレーションと呼ぶならば、欧米から入ってきた価値観が支配的になっている今の日本にもあるような気がするのは思い過ごしだろうか。大地震のように揺さぶられている、かってあった輝かしい価値観とは、ヨーロッパでは、キリスト教と科学。日本では仏教。そうした価値観が総崩れして、新しい価値観が模索されている。「日はまた昇る」というヘミングウェイの小説は大戦直後のパリが主要な舞台。そのせいか、価値観は総崩れした直後のせいで、模索すら行われていないように思われる。...日はまた昇る

  • レベッカ 【エッセイと詩】

    レベッカ【poem】大邸宅をめぐる怪奇な事件大金持ちであることはいいことなのかポーの話もそうだった出だしが友人の大邸宅に向かう陰鬱な美しい文体このレベッカの話もそうだった貧しい新妻を迎える多くの人の冷たい視線禅は貧しさを勧める杜甫も良寛も貧しかったキリストの聖句にもあるしかし、豊かさは人を救うことが出来る貧しくては何も出来ぬ満月を見て、ビルの窓のそばでため息をつくのも生きて息をしているだけで良しとする立場もある。それはそうだ、病気になれば,健康で歩くだけで良いと思うものをレベッカの話もロマンスのあとに、奇怪なダンバース夫人が出る魂がここまで落ちるということがある新妻の幸福を喜ばず、死を願うダンバース夫人のおぞましさ魂は上がったり、下がったりするそしてレベッカの話のようだと、落ちっぱなしになる魂も出る最後は大邸宅...レベッカ【エッセイと詩】

  • 「長崎の鐘」と久里山のコメント

    長崎の鐘【詩になれなかったpoem】長崎という異国のような美しい町に昔、行ったことがある。讃美歌が聞こえ、美しい鐘の鳴る花の町だった。それから、何十年もして、長崎に関する一つの映画を見た。原爆が落とされる前の一人の医師の平穏な生活が映写されていた。卒業間際に、耳に異常が見つかり、聴診器が使えないので、医科大学の放射線科を選んだ。下宿に一人の娘がいた。そこの家はキリスト教徒だった。医師は下宿の家の者に誘われ、教会に行った。医師は戦地に行き、無事に帰ったが、戦場の悲惨さに人間への深い洞察に至った。そして、医師は信者になり、下宿の娘と結婚した。しかし医師を慕う女が看護婦の中にいた。彼女は落胆し、戦地を志願した。医師は止めたが、彼女は戦地に行った。ある時、医師は自分の身体の異変に気づき、検査したら、白血病だった。いのち...「長崎の鐘」と久里山のコメント

  • 「空」という詩と新年のコメント

    「空」という詩【poem】あるビルとビルの間のカフェーで、星空を眺める。満月も見える。公園の樹木から、そよ風が吹いてくる。そんな所で、コーヒーを飲みながら、私は二冊の本をテーブルに置き、友人と語る。友人は宇宙論が得意で、私は臨在禄を読んでいる。友人はこの広大な宇宙が最初は無に近い状態であって、それが爆発して、広がったのだろうと言う。私は友人の言葉で一番引っかかたのは無という言葉だ。無からこんな広大な宇宙、わが銀河系宇宙や美しい一兆の恒星の集団のアンドロメダや無数の銀河がつくられているというのかね。そう言えば、臨在も奇妙なことを言っているぞと私は言う。友人は「何だ」と言う。「つまり、人間の真実の私は無だというのだ」「まさか」と友人は言う。その無が目や耳などの感覚器の働きを借りて、見る、聞くということが行われている...「空」という詩と新年のコメント

  • 映画「THe Birds」と詩

    ヒッチコック監督の「TheBirds」という映画を見たことがある。何故、見たか。私が鳥が好きだということと、前にヒッチコック監督の映画二本ほど見て、面白かったからである。鳥が好きということに関して言えば、カラスが好きで、カラスを題材にして短編小説を書いたことがある。「森の青いカラス」というタイトルでアマゾンで百円です。カラスの大集団は、まだ東京の大きな公園で見ることが出来る。それから子供の頃、伝書鳩を飼ったことがある。カモメは松島に行って船に乗った時、後ろの席にいたのだが沢山のカモメが船を追ってくるのには驚いた。顔は可愛いが、ケッコウ乱暴な所のある鳥らしい。それでも、最近、ネットで多くの方が撮られる小鳥を見て、市街地に私の見たこともない可愛らしい小鳥が沢山いることに、感激したことがある。「銀河アンドロメダの猫の...映画「THeBirds」と詩

  • 「黒いオルフェ」と詩

    映画「黒いオルフェ」この映画を見る前には、どうしても、コクトーの「オルフェ」を思い出してしまう。ある有名詩人が死んだ奥さんを異界に入り、現世に引き戻そうという話である。鏡から、異界に入り、奥さんを連れ戻そうとするが、奥さんの顔を見てはいけないという条件で、異界の裁判官の許可を得る。そして、我々の世界に引き戻そうとするが、約束を破り、後ろを振り返り、失敗してしまうという話だったと思う。これは、ギリシャ神話にヒントを得た話らしが、どちらにしても、死んだ後のあの世があるということが前提になっている。あの世があるかないかは、今の科学では分からない。しかし、科学者であの世を見たという人がいる。スエデンボルグである。この人の名前は「霊界日記」で知られている。この本が出版され、ヨーロッパで話題になった頃、1750年の頃、カン...「黒いオルフェ」と詩

  • いのち

    いのち【poem】1人間の身体にある免疫細胞の働きを知るということはいのちの神秘を知ることになるマクロファージがどん欲に菌を食べてくれる身体を守るために、多くの善の細胞が非自己を区別し悪い菌を退治するために、動いているがん細胞なんてものもしょっちゅう出来ても、免疫細胞が働く我々人間の命令がなくとも、ちゃんと働いてくれるもっとも意志が必要だとすると、我々は大変忙しいことになる。菌やガン細胞を退治するために、たえず見張っていなければならぬそんなことにならないように、免疫細胞は勝手に見事に動いてくれる宗教では、我々は生かされているということがある手一つ、足一つ、自分の意志でつくったものはない生まれて、歩き出したら、ちゃんと足も手も目も鼻もある。不思議と普段思わないが、考えると不思議である。理屈は科学が言っている。六十...いのち

  • たそがれ清兵衛

    映画「たそがれ清兵衛」の見どころはやはり、たそがれ清兵衛が藩命により、果し合いに行く直前だと、私は思います。その日の夕方、お蔵奉行がやってきて、堀将監家老の元にきてくれという。この奉行は人間はよさそうである。しかし、堀家老はひどい奴というのが、人相にも言葉にも出ている。江戸で謀反があり、幕府に知られずに、上意討ちで始末したことは知っておるなと、清兵衛は言われる。そのさい、切腹を命ぜられた善右衛門は忠勤をつくしてきた自分が切腹するのはおかしいと抗議して、屋敷にたてこもり、追手としてきた目付を一刀のもとに切り殺してしまう。なにしろ、善右衛門は藩内に敵なしという一刀流の達人である。清兵衛は、善右衛門を明日、打ち取れと言われる。これは藩命であると。断ると、お役御免、藩外追放であるとも言われる。しかし、清兵衛は昔は少しは...たそがれ清兵衛

  • いのち

    白い花の咲く頃(昭和25年)鮫島有美子Coverいのち【poem】1人間の身体にある免疫細胞の働きを知るということはいのちの神秘を知ることになるマクロファージがどん欲に菌を食べてくれる身体を守るために、多くの善の細胞が非自己を区別し悪い菌を退治するために、働いているがん細胞なんてものもしょっちゅう出来ても、免疫細胞が働く我々人間の命令がなくとも、ちゃんと働いてくれるもっとも意志が必要だとすると、我々は大変忙しいことになる。菌やガン細胞を退治するために、たえず見張っていなければならぬそんなことにならないように、免疫細胞は勝手に見事に動いてくれる宗教では、我々は生かされているということがある手一つ、足一つ、自分の意志でつくったものはない生まれて、歩き出したら、ちゃんと足も手も目も鼻もある。不思議と普段思わないが、考...いのち

  • 男はつらいよ,寅次郎サラダ記念日と良寛

    男はつらいよ寅次郎サラダ記念日山田洋次監督久しぶりに寅さんを見た。サラダ記念日と言えば、短歌が日本中に一大ブームを起こしたことを思い出す。駅前の大きなビルから、短歌の垂れ幕が商売とは無関係のような形で、日本古来の伝統文化を復活させる勢いで、優雅に垂れ下がっていたことを思い出す。個人的には和歌といえば、良寛を思い出す。例えば、【風は清し、月はさやけし、いざともにをどり明かさむ老いの名残りに】寅さんが田舎のバスの停留所で、一時間に一本というバスを待っていると、ふとしたことから、そこで同じように待っている、八十近いお婆ちゃんと知り合う。彼女は夫に先立たれ、息子夫婦は東京に出て、帰ってこないという。お婆ちゃんが御馳走するから、来ないかという。寅さんは迷いながらも、お婆ちゃんのことが心配ということもあり、彼女の家で夕飯を...男はつらいよ,寅次郎サラダ記念日と良寛

  • 映画「少女の髪どめ」

    CryingViolin-AYAKOISHIKAWA/石川綾子-OriginalSong主人公のラティフという十七才の青年がIDカードを使って、買い物をして、彼が働く建築現場まで来ると、現場ではみんなが大騒ぎしている。ナジャフというアフガニスタン人の労働者が仕事の途中で、二階から落ちたのだ。現場監督のメマルは、病院に連れて行くように指示し、「病院に行っても、ここの住所は言わないでくれ。調査が入ると困るから」と言う。最初から、この映画の二つのキーワードが出てくる。イラン人あるいはイラン在中許可の証明書のIDカードと、それを持っていないアフガニスタン難民の労働者が建築現場で秘密裏に働いているということだ。つまり、アフガニスタン難民の経済的に苦しい生活。それを応援しようとするイランの人達と距離を置く人達の問題。四階の...映画「少女の髪どめ」

  • ファウストの嘆き

    ファウストの嘆きダークマターをヒントにそろそろ我々は気がつかねばならないのかもしれないと思った。それはつまり、安全神話を信じている内に、信じられないような恐ろしい原発事故が起きた、それと同じように、科学神話にだまされて、過去と今の偉大な不滅の宝を迷信と片づけていたのではあるまいかと。いのちの神秘だ。これは既に過去の偉大な哲人が解決している。哲人は何人もおられると思うが、一人あげろと言われれば、お釈迦様だと言おう。それに日本の偉人を加えなさいと言われれば、最澄、空海、法然、親鸞、道元、日蓮それから、私の好きな良寛をあげたいと思う。西欧にも、こういう方に匹敵する方はおられる。それなのに、それを科学信仰の故に、子供たちに迷信を教えてはならぬとされてきた。中学、高校の教科書にこれらの偉人の優れた文章が殆ど掲載されていな...ファウストの嘆き

  • 蘇東坡の悟り【休憩】

    SongoftheBirds(ElCantdelsOcells)byNataliyaGudziy/鳥の歌・ナターシャ・グジー悟りの境地を示した宋の有名な詩人「蘇東坡」は、谷川は仏の説法と言っている渓声(けいせい)はすなわち是(こ)れ広(こう)長舌(ちょうぜつ)。山(さん)色(しょく)は清浄(せいじょう)身(しん)に非(あら)ざる無(な)し。夜来(やらい)八方(はちまん)四千(よんせん)の偈(げ)他日(たじつ)いかんぞ人(ひと)に挙(こ)似(じ)せん要は滝の音が仏の説法に聞こえるということであろうか。大自然そのものは仏の説法なのである。いや、全てがそうだ。街を行きかう空の雲も春の風の訪れも、満開の桜の花も、チューリップもすみれの花も、全てが仏の説法。仏が我々に顔を見せているのである。しかし、残念ながら、我々はそれ...蘇東坡の悟り【休憩】

  • 空華の街角 第二部 2 ー 3

    第二部2柳目ラレンサは朝倉香奈枝夫人と別れ、自宅で寝る前に、例のヴェニスの物語に付け足す詩のイメージが湧いたので素直に、ノートに書き記した。このウネチア物語がどんな方向に進むか、自分でも分からないが、アイデアをノートに書くと熟睡する体質になっているので、喜んで、ペンの先は飛ぶように、運び、ヴェニスの風貌がまぶたに浮かんだ。散文詩は次のようなものだった。【エジソン氏は眠そうな顔をして、部屋にやってきた。「何ですか。眠いのに、起こされて、この娑婆世界に呼び出されるとは」僕はコーヒーを差し出して、非礼を詫びた。満月が窓の外の夜の空に見える。僕の部屋には本が山積みだ。「エネルギー問題に悩んでいるのでね」「僕が電球、発明したじゃないか」「今はあれから、百四十年はたっているのですよ、太陽エネルギー、マグネシウム発電、水素社...空華の街角第二部2ー3

  • 空華の街角 第二部 1

    無言歌「ベニスの舟歌Op.30-6」メンデルスゾーンLiederohneWorte「VenezianischesGondellied」Mendelssohn第二部1柳目ラレンサと朝倉香奈枝夫人が学生の頃、付き合っていた頃の話題はいつも文学の話だった。彼女はよくシェイクスピアの話をし、ラレンサはトルストイの貴族批判が面白くて、その話をした。二人とも詩を書いたが、その頃、ラレンサはヴェニスをモデルにした町をテーマとして、小説を書いていてその話を彼女に話していた。結局、その物語は完成することなく、ラレンサが社会に出てからは、忙しさの合間を縫って、少しずつ書いていた。そのためか、朝倉の妻になった香奈枝のことを思い出すと、自然に自分の書いたヴェニスの詩句を口ずさむのだった。ゴンドラが行きかうヴェニスの町古いビルの窓には真...空華の街角第二部1

  • 空華の街角 第一部 7

    IkukoKawai-Kanon(HighQualityAudio)六月に入ったある朝方、ラレンサは永遠平和を願う銀河の夢を見た。自分が銀河アンドロメダ鉄道に乗って、色々な惑星の国々を訪ねる夢だった。そこの惑星はちょうど、戦争の真っ最中だった。両陣営とも、機関銃を持っていた。ラレンサは夢の中で倒れた。そして、詩句が頭に浮かんだ。おれは青い地球に帰る愛するお前と俺をこの銀河列車が引き裂くだろうあれはひどい戦いだった吹雪の中の肉弾戦満月がかかっても、銃弾は雨あられのごとく降り注ぐ生き残る方が奇跡俺は弾に倒れた、意識が遠のき死は目前だった意識を回復した時、乙女が自分を必死になって看病していた。土地の女が自分を助けたのだと知ったやがて、俺は健康を取り戻し、俺はお前を愛した。ああ、銀河列車が出発した。青い地球から、メール...空華の街角第一部7

  • 映画「街の灯」City Lights [休憩 ]

    久しぶりに、映画「街の灯」を見て、ラストーシーンまでくると、ここの場面にこの物語すべてが集約されているという深い感動に私は襲われました。貧相な恰好をした浮浪者チャプリンは酔っぱらった大金持ちから、やっと手に入れた金を目の見えない花売り娘に「目の治療に」と言って渡す。チャプリンは彼女の貧しい家から、すぐに出ていこうとする。「行ってしまわれるのですか」と目の見えない娘は感激して言う。「戻っていらっしゃるわね」そして、チャプリンは町に出ると、お金のことを勘違いされて、刑事につかまり、監獄へ。そして時がたつ。娘は目が見えるようになり、花屋を賑やかな通りで始め、うまくいっているようだ。そこへ、車から降りたシルクハットをかぶった背のすらりとした貴公子が花を届けてくれと言い、去る。娘はあの人が帰ってきたのかという空想にひたる...映画「街の灯」CityLights[休憩]

  • 空華の街角 第一部 5ー6

    雪が降る【訳詞付】-アダモ5数日して、価値観ルームで、柳目ラレンサは何人ものユースの中で、鏡子の瞳にはっとしました。鏡子の瞳は春風の吹く美しい夜、輝く満月が森に囲まれた青色の湖に映ったかのようでした。そうした鏡子は朝倉香奈枝にそっくりのような気がするのです。香奈枝とは大学時代の友人でした。外見的には、友人でしたけれど、ラレンサの心の中は、恋の炎に燃えていたのです。そこへ現われたのが、今市長をやっている朝倉でした。香奈枝は朝倉の妻になったのです。目の前の鏡子は何か寂しげで、かっての香奈枝の底抜けの明るさがないのです。それは、表情で分かります。鏡子「質問!コーチ、消費税は上げられるのですか」ラレンサは予期していない質問に驚いた。この日は別の話すテーマを持っていたから、なおさらだった。それでも、ラレンサは答えた。「税...空華の街角第一部5ー6

  • 空華の街角 第一部 4

    HayleyWestenra-FlowerwillBloom(花は咲く)4柳目ラレンサは歩いている時も詩句が浮かぶことがある。君の好きな音楽がなる時君は何を夢みる海の押し寄せる波か、山の雪か森の鳥のさえずりか、川のせせらぎか僕は城を夢見る城の窓から見る町は緑の樹木と無数の色とりどりの花の群れ人の愉快な足取り、悲しそうな足の歩みそこに世にも奇怪な恐竜が走る君の好きなピアノが鳴る時君は何を見る街路樹に並ぶ赤い花の群れ星の群れのように何という神秘その赤い花から君は何を見る人々の動きだ。流れ行く雲の動きだ喜ぶ人悲しむ人そう、幾万という人生がある人生の中に詩があるその詩の中から君は何を感じるそうだ、この人生の神秘だ神々のいると言われる自然とその町の謎君はその町で何をするおもむろにカフェーに座りコーヒーをすすりながら雄大な...空華の街角第一部4

  • 空華の街角 第一部 1-3

    白い花の咲く頃Shiloihananosakukolo(倍賞千恵子BaishouChieko)ローマ字歌詞付き(WithLyricsinRōmaji)1柳目ラレンサは夢の中で詩句をつぶやいていた。郊外の道で、その人の唇はオレンジ色に輝いている宇宙の中の愛を知っている神秘な唇だこのことを知ることは人生最大の喜びだ何故なら、その人は愛と大慈悲心を歌うことが出来るのだからその人の白い肌は緑の梢に降る雪となろう春の日に降るあたたかい芸術的な雪だその人の黒髪は砂漠に五月の雨を降らせ、肥沃な大地と変えよう酷熱の日に降るやさしい芸術的な雨だその人の通る郊外の道はあたたかき小麦粉であふれ、原色の花がやさしさにふるえているのですああ、何という優美な唇の振動だろうそこから響く音楽は多くの悲しむ人を慰めることだろうオレンジ色の花のよ...空華の街角第一部1-3

  • 空華の街角 プロローグ

    SongoftheBirds(ElCantdelsOcells)byNataliyaGudziy/鳥の歌・ナターシャ・グジー柳目ラレンサがこの本を書こうと思った動機は今、日本と世界中の人々を恐れと困惑の渦に巻き込んでいるコロナウイルスである。ラレンサが以前、書いて自費出版した長編小説は反公害と脱原発がテーマであった。この小説が失敗だったか、ある程度作品としてうまく書けたのか、今持って、結論は出ていない。何故なら、大きな本屋に数件出し、数か月しても売れないと結論ずけたら、あとはいさぎよく本棚の奥にしまい込んでしまったからだ。考えてみれば、宣伝をしていないのだから、売れないのは当たり前である。その頃、ノートパソコンはまだ出ていなかったし、当然、インターネットはなかったわけだから、宣伝しようがない。多くの知人に渡して...空華の街角プロローグ

  • 映画「奇跡の丘」と東洋

    AVEMARIA_NataliyaGudziyナターシャ・グジーこの映画の感想を言う前に、私の宗教に対する姿勢を述べておきたいと思う。私の好きな優れた小説「復活」を書いたトルストイは「アリストテレスなどの哲学者よりも宇宙の真実をきちんと教えているのは多くの民衆の信じる世界に広がる大宗教である」というようなことを言っていたと記憶している。パスカルも言うように、誰でも人は自分が自分として生まれ生きているというのは不思議であり、謎なのである。これを解決するために、私は個人的には学生時代、スピノザ、サルトルなどの西洋の哲学者を文学と一緒に読んだのであるが、今はトルストイも一目置いていた仏教を勉強している。キリスト教は少年時代に触れたので、今も時々新約聖書を見ることがあるが、仏教との類似性に驚くことは「正法眼蔵」の翻訳家...映画「奇跡の丘」と東洋

  • 南京のキリスト【小説と映画 】

    トッカータとフーガ二短調BWV565(バッハ)「南京のキリスト」という芥川龍之介の短編はやはり不思議な感動をともなう物語である。これほど、どん底の貧しい生活を巧みに描きながら、これほど清潔に文章を運び、人間の魂の高貴さを浮き彫りにする物語はドストエフスキーの「罪と罰」ぐらいしか思い浮かばない。芥川龍之介はやはり天才だと思われる。主人公は宋金花という少女。「罪と罰」では、ソーニャという少女。いずれも今なら、相手になる男は逮捕され、国によっては、終身刑になるかもしれない年頃の娘なのだ。そして、二人ともキリスト教徒。宋金花はカトリック。ソーニャはギリシャ正教。二つともキリスト教の最も良質の宗教心を浮き彫りにしている。こういう純粋な宗教心の場面はイギリス文学で有名なジェンエアの孤児院での幼い友人が死ぬ時の場面にも出て来...南京のキリスト【小説と映画】

  • ハムレット詩

    荒城の月Koujounotsuki(倍賞千恵子BaishouCheko)ローマ字歌詞付き(WithLyricsinRomaji)ハムレット詩ぞっとするような冬の寒さの深夜デンマーク城は星と暗闇と静寂で、凍り付いたようだ。天の川が天の花壇のようにホレイショ―の瞑想のように流れていた。そして、彼はハムレットより呼び出しを受けた。王子は悲しみと苦しみの表情だった。ホレイショ―は友として同じ苦しみを味わい、涙を流した。ついこの間、亡くなられた先王の亡霊が現れるとは。ホレイショ―には亡霊を信じる哲学はない、にもかかわらず王子の真剣な眼差しは彼の心を動かした。しかも、深夜、王は驚くべきことに、かって生きておられた凛々しい武人の姿で、ホレイショ―の前に現れた。ハムレットを呼びつける声もかって生きておられた父王の迫力のある響き...ハムレット詩

  • 映画「恋するシェイクスピア 」

    ロミオとジュリエット-ATimeForUs-~coveredby中井智彦~シェイクスピアは劇詩人と言われている。会話が優れた詩になっている。セリフが優れた詩になっているというべきか。私の好きな文句は若い頃、英文で暗記したこともある。しかし、今は多くは忘れた。劇場に集まってくる当時の民衆の人達の耳に心地よく、うっとりさせて物語に引き込まなければならないのだから、シェイクスピアは楽しく、時には必死で書かねばならなかったであろう。その様子がこの映画によく表現されている。例えば、一つ素晴らしい詩を書いてみよう。ロミオが町を離れなくてはならない朝の場面ジュリエットもういらっしゃるの朝はまだまだこなくてよあれはナイチンゲールヒバリではなくてよあなたのおびえていらっしやる耳に聞こえるのは毎晩鳴くの向こうのあのザクロの樹にきて...映画「恋するシェイクスピア」

  • 映画「ミツバチのささやき」

    川井郁子ヒマワリ愛に包まれたアナ映画『ミツバチのささやき』の紹介文に、「愛に包まれたアナ」とタイトルをつけたのは理由があります。あとで、書くように、アナとフランケンシュタインとの出会いは人間の持つ不幸に原因しているので、そちらに目を奪われると、この映画の素晴らしさを見失うからです。アナという少女が1940年ころ、スペインの田舎町に、姉イザベルと両親と家政婦と共に古びた邸宅に住んでいました。しかし、アナを愛する人達は怖ろしいスペイン内戦によって、傷つけられていたのです。内戦では百万人の死者がでています。人民戦線側の政府とヒットラーの応援を受けたフランコ将軍との戦いで、人民戦線側は敗北しました。これはヘミングウェイの小説「誰がために鐘はなる」を読んだり、映画を見た方は、おそらく恋人を逃がした主人公の男がフランコの大...映画「ミツバチのささやき」

  • 魂【poem】とエッセイ

    魂(ポエム)1魂という町があってそこに、澄んだ青い湖と濁った池があり青い湖の周囲には、美しい花が咲くが、池の周りには石ころばかりだった偉人が言うには、湖には美しい魂が来て、池には濁った魂が来る今、コロナで人は困っているけれども、良い行動の人は湖に来て、魂を清め、悪いのは池が誘うという湖で見つけた赤い花の美しいこと池で見つけた汚れた水草偉人が言うにはこの湖のさらに美しい所を行く人池の汚い所にさらに進む人もいるとかそして湖と池の間を行ったり来たりする人もいる僕は魂という町の掲示板を見た掲示板には池には行ってはいけないと書いてある。僕は新聞を読み、ニュースを見た。このコロナの恐ろしい中で、湖に行く人、池に行く人が出ていた。皆が協力して、このコロナ退治をしている皆が美しい花束を集め、もしかしたら、皆、愛と大慈悲心に目覚...魂【poem】とエッセイ

  • 寅さんの愛

    白い翼ナターシャ・グジー/WhiteWingsbyNataliyaGudziy寅さんの映画を見て、ふとドストエフスキーの作品と星の王子様とドンキホーテを思い出す。これはおそらく、私の心の癖なのだろうと思っていた。内容的にはまるで違うのだから。それでも、何故か、四つに共通点のようなものがあるような感じがふとすることがある。そういう感じになることはかなり以前からあったのだが、深く考えたことは全くなかった。ブログを書くということで、少し考えてみたいと思った。その共通点から何か見えてくるものがあるかもしれないと思ったからだ。ドストエフスキーのムイシュキン公爵と寅さんはまるで違う。当たり前である。それに、ドストエフスキーの作品はみな深刻な人生の問題を扱っている。ムイシュキン公爵のセリフ「人は何故このように傷つけあうのだろ...寅さんの愛

  • コロナと戦う(poem)

    アヴェマリアナターシャ・グジー/AveMariabyNataliyaGudziy春の嵐が吹く桜の花は散ってもコロナのウイルスは死なずに人から人へと渡り歩くそして今はあの懐かしき水の都ヴェニスの町混雑した夏の日の夕べビールを傾けたあそこも今は人もまばらどこから聞こえて来るのか、神秘なヴィオロンの音色人々を励ます優しい美しい音色コロナが収束するまでまだ時間がかかる相手は強敵だしかし今世界の人々が協力してコロナ退治をしているいずれ収束するという希望がある自粛そして援助国際的な協力戸惑いとミスはあるかもしれないが、人類は学習しながら、コロナを退治するのだコロナを退治しても人類を脅かす恐ろしいものは他にもある。核兵器軍拡そして格差と貧困そして温暖化世界中の人が手を結ぶ協力の中に愛があるこのコロナウイルスという悪と戦う中で...コロナと戦う(poem)

  • 白鯨

    白鯨【小説と映画】まずメルビィルの「白鯨」という小説を読み、そのあとに映画を見た。この二つはかなり違う。小説は芸術という感じがして、映画はエンターテイメントつまり、楽しむという所に重点の置かれたよく出来た作品という風な感じがした。小説でどうしてそんな風に思ったかというと、まず文章が凄い。まあ、長編の散文詩という感じで、流麗な文章に圧倒される。それから、小説にはエイハブ船長や主人公【イシュマエル】その親友クィークェグ、一等航海士などの登場人物の強烈な個性の描写があると同時に、抹香鯨という生物の克明な説明、さながら人間の解剖学講義のようである。そして、文章に、メルビィルの哲学を感じさせる独特のものがある。これらが一個の小説になった時に、そこには巨大な生命の神秘が読者にひしひしと迫ってくるのである。映画は小説のストー...白鯨

  • 魂という町(poem)

    魂という都市があってそこに、澄んだ青い湖がありその周囲には沢山の花が咲いているそこで、見つけた一輪の赤い花あまりにも美しくて僕はそれを写真に撮り、大切にしてことあるごとに、その花を見詰めていた。魂という町があって僕がそこでコ―ヒーを飲む時にいつも決まって日の当たる椅子に座り、赤い花の写真を見るすると、花が話しかけてくるのだ「あなた、どなた?」魂という草原があってそこの一軒家に泊まることがあるのだがその夕日がとても美しくて僕はうつとり夕日を見ながら写真の花に語りかける「どうだい?あの夕日は」ある夜、黄金の満月がこうこうと照っていて花は喜びに目を輝かして、飛び出てきて天の川の一つの星を指さして「あれが、あたしの星よ」どんな所だと問うと花は「魂の星なのよ。生きているの」ある日。魂という星に向かって僕と花は旅をしたそれ...魂という町(poem)

  • 般若の街角

    琥珀色の麦茶の湖面に突然幻の様に町が現れるそして、祭りの太鼓や笛の音、それに賑やかな人々の声がしばらく続くそして、再び静寂が訪れ、いつの間に町が消えているそして又、幻のごとくに赤と黄色い薔薇の花が咲く花瓶の小さな口から、かすみの様な霧が現れ、深い霧は薔薇を包む霧が晴れると、薔薇は南国の街角に変化するそこには人々の笑い、泣きざわめく音が森の梢のささやきの様に聞こえる私は故郷に帰ってきた人のようにこの町の部屋で呆然と時計の音を聞く音は波のごとく、カチッといって消え、又カチッというそういう風に音が聞こえる時は静寂そのものだ。その時の世界は何かをほしがっている時の自分とは違う静かな不思議な世界だ。テーブルの上のあらゆる物は様々な色をなして、まるで沈黙している生物のようだ。窓の外で、カラスが鳴く全てが変化し、色彩に富み、...般若の街角

  • 魔法をかけられた春の町(poem)

    何かの魔法をかけられて、生まれてきた町、そこには春になる時に、白い家の窓に小麦粉のような大雪が降って冬は終わりを告げる。翌日から、人は春の衣装を着て、楽しそうに歩くのだ。白い道に突き出たカフェーで、コーヒーを飲みながら、心の秘密をささやくカップル。孤独の友と語りあうかのような猫を抱く若い女。そして、銀の箱の中から、パンを出して愛する人の瞳を歌う逞しい男。憂うつな思い出を歌おうパンとジャムよ美しき空の青さに酔いしれて春の風を心に感じて、宇宙のいのちを感ずる緑の梢と愛の宝石キラキラと輝く風の音楽と共に春は緑色の小麦粉をまきちらして、町の中を歩いていく夕闇の中に映る町の影よどこからともなく永遠の町から町へ幸福の吐息が聞こえてくるよああ、永久に墓石の上にとどまる風のため息庭に咲くコスモスの花それによりそう白い腕人の歩く...魔法をかけられた春の町(poem)

  • いのちと愛

    都会に住むと忘れることがある物が愛と慈悲の現われであることを町には愛がないだって君のいる「今、ここに」愛があるじゃないか人が息をしたいと思わなくても空気という愛の塊が人の口に入るではないかいのちを助けるために、喉が渇けば小川が愛の竪琴を奏でるではないか人工のもでも、ペットポトルがある、そこに労働という愛が君の喉の渇きを助けてくれるお腹がすけば人は多くの人の労働によってつくられた食物を口に入れることが出来るこれを愛と言わないのか昔、蘇軾という大詩人が谷川の音を聞いて、そこに仏の説法を聞いたという金を出すから、食物が手に入るその通りではあるが、愛を見落としては、仏の説法を聞けないのでは確かに悪はある。悪はうんざりするほどある。心の中にも外にもある。しかし、悪と戦うことにこそ、魂を磨き、さらに深い愛を知ることになるの...いのちと愛

  • いのちと愛

    都会に住むと忘れることがある物が愛と慈悲の現われであることを町には愛がないだって君のいる「今、ここに」愛があるじゃないか人が息をしたいと思わなくても空気という愛の塊が人の口に入るではないかいのちを助けるために、喉が渇けば小川が愛の竪琴を奏でるではないか人工のものでも、ペットポトルがある、そこに労働という愛が君の喉の渇きを助けてくれるお腹がすけば人は多くの人の労働によってつくられた食物を口に入れることが出来るこれを愛と言わないのか昔、蘇軾という大詩人が谷川の音を聞いて、そこに仏の説法を聞いたという金を出すから、食物が手に入るその通りではあるが、愛を見落としては、仏の説法を聞けないのでは確かに悪はある。悪はうんざりするほどある。心の中にも外にもある。しかし、悪と戦うことにこそ、魂を磨き、さらに深い愛を知ることになる...いのちと愛

  • 春の旅

    外は春の気配が濃厚だ青空と優しい陽射しそれでも身体の痛みとかコロナウイルスとか外の散歩が頭に浮かぶと、春のサタンが邪魔をするふと、聞く美しいヴィオロンの音色今ここに非日常の美がある、浄土がある何も外だけが春ではない家も春なのだ温度計を見てごらん玄関には木蓮の白い花が咲いているそこで私はパソコンを手にとって詩を書き始めた古今東西の大詩人の生涯を想い浮かべながら満月と星そして月と酒を歌った李白旅に出て、家族を思うせつない心の杜甫あちこち放浪し、子供達と遊ぶ良寛あれから、百年、千年と月日がたち今も、私は永遠の列車に乗っているのだろうかあ、藤の花の並ぶ街角が見えるではないかそこから飛び立つ鳥の群れ青空には城のような白い雲あ、落ちるような巨大な銀河が見えるではないかあちこちの闇から、白く輝くUFOが飛び立っているそんな魔...春の旅

  • 夏目漱石 「それから」

    「枕元を見ると、八重の椿が一輪畳の上に落ちている。代助は昨夜床の中で確かにこの花の落ちる音を聞いた。彼の耳には、それがゴムまりを天井裏から投げつけた程に響いた」この最初の場面に出てくる椿の落ちる音というのは何か、この小説全体に響くテーマのようにも思える。そこには、いのちがある。いのちがなければ、そこに花の音が聞こえる筈がないからである。それから、椿の花の音というのは忙しくしている人にはまず聞こえない。彼は寝床で聞いた。あたりが静かなせいもあるが、やはり、この花の落ちる音というのは何か意味深長である。夏目漱石は禅の勉強もしたし、座禅という修行もしたと聞いている。中国の大詩人蘇軾は森の中の谷川の音が仏の説法だと悟ったという優れた漢詩を書いていることでも知られている。禅の優れた僧の中には庭の掃除をしていて、石がどこか...夏目漱石「それから」

  • 美しい町

    夢の中で美しい町を思い出した川のような運河が町の中を流れそこを小舟がゆったりと行くまるでヴェニスのようだ石と緑の町には車の通らない路地が沢山ありいつも温かい陽射しのある町だったその道に突き出たカフェーの椅子に座りコ―ヒーを飲む店の中から、ヴァイオリンの音楽がしっとりと流れてくる格差もなく憎しみもなく、愛と慈悲の町だった。確かそんな夢だった小鳥が窓の外で鳴いているそれが緑の葉に隠れたひばりだの、ナイチンゲールだのとベッドの中の男と女が言っている朝の到来を告げる鐘が何故か悲しげに響いていたそれでも、ひっそりとした心地よい朝だった窓からはブドウ畑や学校やお寺が見える生き生きした労働があり、子供達の喜びの声があり、慈悲の光があった。夢の中の、確かそんな町だったそこで、僕は何をしていたのだろう多分、絵を描くか詩を書くかし...美しい町

  • エッセイ - net中傷

    私は新聞を三つぐらい同じ日に読むことがあるのですが、新聞にはそれぞれ得意分野があるような気がする。読売は人情の機微に関することはよく書けていると思う。【東京新聞は社会の矛盾や権力の分析に優れていると感じています】例えば、2020年1月6日朝刊では、デマ広げるnet中傷のような記事が書かれていて、現代社会の人間模様が赤裸々に書かれていたと思う。インターネットが「煽り」の装置になっているという。東京都内で働く男性は17年の夏、突然ネット上の情報配信サイトにデマを流され、実名で掲載されたという新聞の情報には驚いた。ネット上でデマ情報は拡散、SNSで匿名の中傷が増殖したという。ひどい話だと思い、考えさせられた。さらに読売新聞のその記事の最後には「ネットでは批判の的にしたいと思われたら、誰でも攻撃の対象になってしまう。」...エッセイ-net中傷

  • 春のいのち

    おお、寒いのに、フリージアが咲いている街角にはまばらに雪がちらついているのにおお黄色いフリージアがさっそうと空に伸びているもう梅も咲いているかもしれないや、まだかな、それにしても、もうすぐだ。小鳥の鳴き声には春のかおりがある。小川のせせらぎは澄んで、温かい光が射している柳の木には、緑の芽、桜の木には花のつぼみ春が来たら、何をしようあの香り豊かなおいしい空気を吸ったら、何をしようまず、生きる喜びを感じるだろうきっと、その時にはピアノ・ソナタが鳴るに違いない自然の声に耳を傾け永遠の輪廻の歯車に、畏敬の念をおぼえわれは年をとって、親しい人はこの世から消え去ったしかし彼らのゆく所を私は知っている私は彼らの声と顔をおぼえている。今、ここの浄土にはきっと酒屋があるに違いないもしかしたら、素敵なカフェーがあるかもしれないそこ...春のいのち

  • 雪の中の梅

    町の外を見てごらん白い粉雪が風に舞ってちらついている寂しい孤独の部屋から見てごらん雪の踊りを白い衣装を着て、舞台一面を雪の妖精達が楽しそうに雪の白い刺繍をあむどんな模様ができるやら下界は真白な銀世界町の外を見てごらん広い灰色の空間の中でまるで夢のように美しく乱舞する雪の姿ぶっきらぼうに立った裸の銀杏並木コートに傘をさした人々の行きかいひっそりとした白い屋根白い粉雪がそれらすべての頭上から降りすべてを白一色に変えるふと雪の描く刺繍がなつかしきやさしきピンクの姿の梅となる町の外を見てごらんあたたかい降りつもる雪の童話に耳を傾けてごらん遠い思い出がまるで、復活の日の朝のようになにもかも喜びに満ちて僕の胸にせまるだろう雪の妖精達が寒い荒涼とした僕の心にあたたかい暖炉を送るだろう町の外を見てごらんなにもかも下界は真白な銀...雪の中の梅

  • エッセイーアダモ Adamo「雪が降る 」の思い出と私の解釈

    エッセイ―アダモの「雪が降る」の思い出と私の解釈この歌は私が二十代の時に、勤め先のそばに下宿していた時に、近所のレストランでよく流していた歌でその頃のことは記憶が鮮明である。ともかく若くて独身だったから、あの歌はよく胸に響いたものである。そのアパートには五年ぐらいしかいなかったから、必然の結果として、それ以来、この曲は聞かなくなった。それが、最近ユーチューブで、アダモのこの曲を発見して、感動したものである。若い時に胸に来たあの曲は、やはり凄い名曲だったという思いが感動を呼び起こした。しかし、中身を受け取る、歌詞の解釈は相当違っているのである。若い時は、孤独な青年が恋人によびかけるせつない男女の思いが詰まっていると思ったのであろうと思う。しかし、今の解釈は仏教の「法華経」の解釈が入ってくる。禅の勉強は三十ぐらいか...エッセイーアダモAdamo「雪が降る」の思い出と私の解釈

  • 危機と大慈悲心 17

    松尾優紀は満月を見ながら、ふと思った。自分が今まで小さな自己に従って生きていたのだと思った。中学の時したいたずらや高校に入ってからやってきた色々のことがすべて愚かな間違った行為として頭の中に浮かびあがり何か恥ずかしい気がして血が頭にのぼるのを感じた。特にハンカチを拾ってくれた子がいじめられ自殺した事件の事が頭に浮かんだ時は一種の自己嫌悪的な感情が全身に流れた。自分の力なら助けることが出来たのに、何で助けようとしなかったのだろう。それを思うと、悔恨による心の痛みがあふれるのだった。しかし小さな自己を捨てて大きな自己に生きるといっても、なんとなくわかったようなわからないような釈然としない気分がのこっていた。自分には野心がある。そういう野心をつぶすことが出来るだろうか。出来たとしても、咄嗟の場合に動けるだろうか。普段...危機と大慈悲心17

  • 危機と大慈悲心 16

    2007年の桜の花がすっかり散った頃、優紀は座禅研究会に行く決心がついていた。その頃、ふとしたことから、大山氏の噂を聞いた。彼の活動がボランチア活動を中心にすえたNPO法人の設立で、当分の目標が絶滅危惧種を守るための活動と、足の悪いお年寄りの散歩や買い物の手伝いを始めたとのことだ。ことに、絶滅危惧種を守ろうと声を出したのは山本杏衣だったようだ。アンネの日記を思い起こす名前をつけた祖父の思いが、こういう形で結実したことに、優紀は感動をおぼえた。ユダヤ人を抹殺しようとしたナチス、原爆を彼らが最初に製造したら、歴史はそういう方向に進んだかもしれないと危惧した、当時の科学者の思い。そういう思いが杏衣の中に流れ、蝶々が絶滅すれば、花の雄しべの花粉を雌しべに運んで受粉を助ける自然の流れが壊れ、植物も滅びる可能性があることに...危機と大慈悲心16

  • 危機と大慈悲心 15

    晩秋、紅葉の頃、松尾優紀と彼らが話すチャンスが訪れた。熊野も飯田も遠藤も原爆資料館を見ることには、賛成し、見に行くことは良いことだと言った。核兵器禁止のテーマの映像の話は大きすぎて、そういうことに多くの人が良い反応をして応援してくれるかは未知数だぞ、中には中傷する連中も出る可能性もある。つまりかなりの冒険だという結論だった。熊野だけはそれに、加えて、シナリオがうまく作れていい映像が出来れば、つくることはおおいに結構な話だが、それで核兵器が軍縮の方向に向かうほど、状況は甘くない。それでも、見る者の世界的な広がりがあれば奇跡がおきる可能性がゼロではないかもしれないと言って、微笑した。ただ、そういう難題だから、少し時間をかけて作り、それまでは職場に山積している問題をテーマにした作品を作って欲しいし、こちらの方は現実化...危機と大慈悲心15

  • 休憩ー映画「たそがれ清兵衛」

    映画「たそがれ清兵衛」の見どころはやはり、たそがれ清兵衛が藩命により、果し合いに行く直前だと、私は思います。その日の夕方、お蔵奉行がやってきて、堀将監家老の元にきてくれという。この奉行は人間はよさそうである。しかし、堀家老はひどい奴というのが、人相にも言葉にも出ている。江戸で謀反があり、幕府に知られずに、上意討ちで始末したことは知っておるなと、清兵衛は言われる。そのさい、切腹を命ぜられた善右衛門は忠勤をつくしてきた自分が切腹するのはおかしいと抗議して、屋敷にたてこもり、追手としてきた目付を一刀のもとに切り殺してしまう。なにしろ、善右衛門は藩内に敵なしという一刀流の達人である。清兵衛は、善右衛門を明日、打ち取れと言われる。これは藩命であると。断ると、お役御免、藩外追放であるとも言われる。しかし、清兵衛は昔は少しは...休憩ー映画「たそがれ清兵衛」

  • 危機と大慈悲心 14

    ある朝、優紀が登校した時、二年の靴箱の所で、人だかりができていた。珍しいことなので、優紀も後ろから見て、生徒のうわさ話を総合すると、二年の誰かの答案が貼られているのだった。しかも、零点ということで、いじめではないかという声も小声であった。優紀はクラスも違うこともあり、いつものように、教室に向かった。そういえば、彼の今回の成績はいつもより悪い。いつもは、上位には入らないまでも、ある程度の成績をとれていたのに、今回はビデオサークルの映像に夢中になり、そういう関連の本を読むために、市の図書館に通い、試験勉強をしなかったせいもあるけど、中レベルになっていた。ところが、翌日そのいじめられていたよそのクラスの生徒が自殺したということを教室で聞いた。授業は中止になり、全校集会が開かれ、教師から説明があった。いじめは前からあっ...危機と大慈悲心14

  • 危機と大慈悲心 13

    松尾は今まで考えもしなかったことを顧問教師に指摘されてびっくりした。アリサの寺院には金がたくさんあるということが心にひっかかるのであった。父からは、最近の寺は貧乏だと聞いていたから、一層、その思いを深くした。貧しい者の味方である彼女の寺院が金持であることは何ら矛盾しないと思っていたがその時、松尾はふと疑問に思った。それでその教師に聞いてみた。「先生、あそこの寺院はそんなに金持なんですか?」「そりやそうさ。噂によると、チャプリンの映画に出て来る酔っ払いの大金持ちを連想させるようなグフラワー氏の援助があるというんだよ。その人が禅にこっているという話だ。彼は熱心なクリスチャンなんだけれど、神を信じるのには座禅が有効だと考えているらしい。酔っ払いの金持ちと座禅、おそろしい矛盾だよ」松尾はなんだかわけのわからない感情にな...危機と大慈悲心13

  • 危機と大慈悲心 12

    12松尾優紀は高校二年生になっていた。背は一八四センチ。かっちりした体格で憂愁を帯びた顔つきはちょっと魅力的であった。高山アリサが教師をやめたということを知った時、松尾は驚き、なぜか寂しかった。服装改革に端を発した学園紛争もすでに落ちつき、学園は静かな学習の雰囲気となっていた。田蜜と山本が交際していると聞いていたが、うまくいっているのかどうかということについては、松尾は無関心になっていた。ただ、田蜜が見違えるような良い若者に成長しているという噂は聞いたことがある。田蜜からは特に音沙汰はなかった。松尾優紀はニヒリスト克服同盟には参加することなく、柔道と読書と学習に精を出していた。充実した毎日が続いた。彼がこれほど季節の春を堪能したことは、かってないことであった。彼の心に詩的感情は高まり、いくつかの詩が彼の日記の中...危機と大慈悲心12

  • 危機と大慈悲心 11

    猫を見ていると、猫の頭上の虚空で、アンネ・祖母が賛美歌を歌っているように思えた。それを察知したかのように、アリサは「あなたはクリスマスはやるの」と聞いた。「ええ、やります。親父が内村鑑三を尊敬していますから」「それでは、あなたのお家はクリスチャンということになるの」「いいえ、親父は無教会主義で、母はどちらかというと、無宗教で、本当の母親は実家が浄土真宗です。誰も、自分の主義を注入しようという雰囲気はありませんから、今の日本みたいに、クリスマスがくるとお祭りの一種としてやるだけです」「西欧では、クリスマスは、キリストの誕生した日ですから、大切な日なんです。キリストは私達の座禅の立場から見れば、聖霊が舞い降りた人物であると同時に、悟りをひらいた人と私は解釈しています。修業して、罪に汚れた人間が無我になることにより自...危機と大慈悲心11

  • 危機と大慈悲心 10

    十一月の半ば。田蜜と約束をしてから、二週間たった日曜日の午後、ブルーのカーヂィガンとデニムパンツに身を包んだ松尾優紀はアリサと例の野美公園で会った。アリサはベージュ色の気品のあるトレンチコートを着ていた。青空に白い雲が動いている。桜の木が紅葉している。白っぽくなった地面に落ちている赤い枯葉が美しい。心地よい陽射しの当たるベンチを選んで、二人は座って話をした。「田蜜君にこの間、ここであんみつおごったんですよ」「彼、満足したの」「満足というより、喜んでいましたよ。なにしろ、あんみつには彼の亡くなったおばあちゃんの思い出が埋まっているのですからね。」「そう」「僕だって、おばあちゃんの思い出は懐かしい」「最近は夢を見ないの」「アンネ・祖母の夢は見ますよ。アンネの日記は夜、風呂から出て、寝るまでの間に時々読みますからね。...危機と大慈悲心10

  • 危機と大慈悲心 9

    床の間には漢字で仏教の言葉が書かれた掛け軸がある。優紀には読めないが、見事な筆さばきだけは分かる。花が活けてある。薄紫の菊が上の方に伸び、下に白い菊がうずくまるように、美しい花びらをさらしている。その二つの花の間に野ばらの赤い実が沢山まるで小さくしたミカンの群れのように、空間を埋めている。三人の座る畳の部屋はすっかり静寂に包まれている。時々、小鳥の声が聞こえる。松尾は田蜜の顔を見ると、少年の顔を否定した凄みのある表情にどきりとして、枯山水の庭の方を見る。色即是空空即是色の声が再び耳に響いている。この言葉が聞こえる限り、自分の心は乱されることはないと、優紀は思った。確かに、田蜜は松尾優紀に強い印象を与えた。中学校をひっかきまわすだけあって、かなりのつらだましいをしていると優紀は思った。田蜜は背も一七五センチ近い。...危機と大慈悲心9

  • 小説のテーマと国連次長の談話

    この小説を単なる青春小説で終わらせたくない気持ちは最初からあった。だからこそ、最初の段階で、アンネの日記に主人公が感銘を受けた場面をつくったのである。今の青少年で一番問題になっているのは、激しい受験競争による不安感さらには高い倫理観を志す考える時間を取れないなど、そしていじめの問題、彼らの居場所の問題、大きな所で見た場合はそんな所かもしれない。【まだあるかもしれないが】私の中学生高校生の時は友情というのが大切にされた。今はどうなっているのだろうか、どちらにしても、彼らが大人になる時がいずれ来る。その時に、今、ニュースにもなるような温暖化問題や、核兵器のような人類の存続をおびやかすようなことがさらに、深刻にならないように今の大人が動くのが次の世代へバトンタッチする者たちの責任だろう。この間、ある映像を見て驚いた。...小説のテーマと国連次長の談話

  • 危機と大慈悲心 8

    松尾優紀は一週間岡山で柔道の合宿をした他は夏休みの間中、信州の実母のもとで過ごした。その間、読書と散歩、それから弟と妹と一緒に近くの川で咏ぐこと、こんなことで毎日を過ごしたが、高山アリサのことを忘れたわけではなかった。その間に彼はたくさんの詩を書いた。実母のいる田舎は尾野絵以上に、自然にあふれていた。見知らぬ花を見つけ、スケッチし、夜は満天の星と月を見て自分の心の中に溢れてくる言葉を「生きている自然」というイメージで詩句にした。詩を書くことで、彼の気持は楽になった。そして九月が始まった。私服の登校が始まったのだ。そしてあいかわらずの柔道部の熱心な練習も始まった。松尾は高山アリサに会えないことを半分あきらめかけていた。ところがアリサの方から彼に会いに来たのである。それは城井高の文化祭の一般公開の時であった。十月下...危機と大慈悲心8

  • 危機と大慈悲心 7

    そんな松尾優紀も普段は柔道に夢中になっていた。彼は島村アリサのことを忘れたわけではなかった。彼がアリサと会わなくなったのはちょっとした訳があった。堀川とアリサは結婚し、籍は役所に届けてあった。けれど、式はまだ延ばしていたのだ。五月のゴールデンウィークに二人が結婚式をあげるというニユースを四月に松尾は聞いて、ショックを受けたことが足を遠のけた原因だった。優紀は、アリサと結婚した堀川光信に対して複雑な感情を抱いていた。もともと堀川は松尾の恋のライバルのように思えることもあったのだ。しかし堀川は、優秀な弁護士である。アリサも堀川光信にはほれていたはず。松尾などまだ子供あっかいされていたのだ。それだけに松尾はそうした異性への思いにまつわる複雑な感情を露骨に示したことはなかった。しかしその結婚のニユ―スをかっての中学のク...危機と大慈悲心7

  • 危機と大慈悲心 6

    第二部松尾優紀にとってこれほど希望に満ちた春を迎えた事は、今だかってないことであった。城井高校に入学できたということは、合格発表後十日以上たっても夢のように思われたのだった。彼の中学三年生の時の通信簿を見れば、合格ということが驚きであったことは何も優紀だけにかぎったことではなかった。担任の谷川先生にとっても優紀の合格は、長い教員生活における一つの奇跡であった。県立城井高校のガラスばりの新築校舎はさらに優紀の夢をかきたてた。広い校庭、三階だてのスマートな校舎、緑や花の多い静かな環境、そうした条件が自由な校風とプラスされて魅力的な学園という風に優紀の目に映った。それに優紀には、高校での新しい友人が入学式前にすでに二人もいた。一人は城井中学の岡野光男という秀才少年だった。名門私立高に合格しながら、それをいともあっさり...危機と大慈悲心6

  • 危機と大慈悲心 5

    「あーら、おもしろいわ。私もそんなことを考えたことがあるわ。似たことを考えるのね。優紀さんは」と島村アリサはやわらかい声で言った。「え、そうですか。これはあなたが話をしてくださった普賢菩薩の死ぬ時の様子からヒントを得ているのです」「あーら、そんな話、したかしら」「えー、なんとなく」「普賢菩薩ね。あたしもそんなに詳しくないのよ。お棺のなかに入って、町の人が棺の中をのぞくと、身体はなくなっていて、虚空からチリンチリンという音が聞こえてくるという話よね」「そうです。あの話、SFにしたら面白いと思って」「でも、あの話、棺は地上に残り、身体だけ消えてしまうのよ」「霊だけ虚空に溶け込み、肉体は消えてしまうという風にしても面白いですね」「霊というものを信じなさるの?」「ええ、霊というものはあるような気がするんです」そよ風が吹...危機と大慈悲心5

  • 危機と大慈悲心 4

    城井高校の発表日は冷たい風が吹いていた。春が近いのに、寒さが逆戻りしたようだった。空は雲一つない晴天だった。空の淡い色から、春の気配が感じられていた。暖かくなり始めていた頃だったので、この冷たい風は意表をついた感じだった。だが、若い優紀達にはその風も殆ど感じていなかった。頭の中はやはり合否の不安が渦巻いていたのだ。城井中学の生徒十数名が谷川先生に引率されて歩いていた。松尾優紀は岡野光次と肩をならべていた。「優紀は合格すると思うかい?」「そんなこと、わかる筈ないだろう」優紀は不安感のため、いらいらした調子で突き放すように言ってから、ちょっと後悔した。アンネ・祖母のささやきの声が聞こえたのだ。「もっと落ち着きなさい」優紀は微笑した。彼らが歩く遊歩道の右側の横には小川が流れている。左側は寒椿がいくつも綺麗に咲いている...危機と大慈悲心4

  • 危機と大慈悲心 3

    その時、夕日のさす縁側で十三才ぐらいの少女が本を読んでいるのに彼は気がついた。幻のアンネだ。映画で見たアンネにそっくりだ。祖母が晩年傾倒した仏教の言葉を借りれば、アンネは数十年前、真如の中からこの娑婆世界に生命を宿したのだと思った。それに、松尾優紀自身も今の自分はそのままで、真如なるものの表現なのだと思うと涙があふれてくるのであった。「真如はこの現実世界においてこそ最も美しく表現されるのだ」優紀は小さい声で、そう言ってみた。彼はアンネが静かに本を読んでいる姿を愛情に満ちた目で眺めるのだった。彼があまりに見ているのでそれに気づいたかのように彼女はキラキラ輝く瞳を優紀に向けた。「ナチスってひどいと思わない」松尾優紀はおもわずアンネのすきとおる瞳を見た。ああ、その美しい瞳は、あの瞳に似ている。誰のというのではない。夢...危機と大慈悲心3

  • 危機と大慈悲心 2

    【そんなある日の夜、彼は奇妙な夢を見た】2。松尾優紀は黄金の羽を持った蝶に乗っていた。そして彼は色とりどりの花園をさまよっていた。花園の中はさまざまの美しい花が咲きほこっていた。それぞれの花はまるで女王のように華麗な美しさを誇るかのように、咲いていた。白い花が松尾優紀に呼びかけた。「松尾さん、私の白いお城は、雲の白さよりも美しいでしよう。紙の白さや雪よりも白いこの城に私はあなたを白い食卓に招待しましよう。そしてヨーグルトや牛乳やあらゆる白い料理であなたをもてなしましよう。白い肌の乙女も歓迎してくれましよう。その白い宝石箱には、何が入っていると思います?」優紀がフタを開けると、クリスマスの賛美歌が聞こえてきた。幻のように教会の鐘の音も聞こえ、大きなクリスマスケーキがテーブルの上に置いてあった。しばらくすると、白い...危機と大慈悲心2

  • 川井郁子 Ikuko Kawai チャルダッシュ Chardash [嵐が丘.Live.Concert.Tour.2005]

    尾野絵の町は瀬戸内海の入り江に面している。入り江は海が陸に細長く入り込んでいる。それで、入り江は川のように見える。背後の高台に路面電車が走っている。高台と入り江の間は広大でゆるやかな斜面になっている。そこはゆるい勾配の長い遊歩道に取り囲まれている。それが野絵の町である。この地区の住宅地には路地が無数にからみあっている。電車の背後に城の天守閣と公園がある。海抜三百メートルのその平地からみると、風景は一幅の絵になる。斜面の町の真中に石畳の広場があり、周囲は、ビルや住宅が広がっているが、車は入れない。町の魅力は何と言っても路地が遊歩道のように歩きやすいことである。道は赤レンガを敷きつめた細い通りになっている。通りの真ん中には、細長い花壇が長く続く。そして季節になると、それにふさわしい花が咲くことである。入り江を見下ろ...川井郁子IkukoKawaiチャルダッシュChardash[嵐が丘.Live.Concert.Tour.2005]

  • 映画「大いなる幻影」

    この映画はあまり戦闘の場面は出て来ないのが印象的でした。古い映画なのに、HDマスターで綺麗な映像でした。最初、フランス軍の将校が戦闘機の任務につく所から始まる。ライト兄弟が飛行機の世界初の有人飛行を行ったのが、1903年で、第一次世界大戦の始まりのきっかけをなしたオーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公夫妻の暗殺事件が1914年六月である。この間に、飛行機は改良がなされ、大戦では実践に使われた。最初は敵の地形の偵察や敵軍の位置の確認に使われたが、木製の骨組みに帆布張りが金属へと改良され、武器も機関銃へとエスカレートしていった。後半では、毒ガス、タンクなどが出て来る戦争である。この映画が戦争のどの場面かはっきりしないが、戦争が始まってまだ「すぐ戦争は終わる」と信じていた最初の頃とも考えられるが...映画「大いなる幻影」

  • 故郷という名の童話 後編 5

    彼は飛行機に乗って自分の席につくと様々な思いが起こった。その中で長く心を占領したものに法華経にある火宅のたとえをめぐる思索があった。大きな屋敷の中で戯れている子供、これこそ衆生としての人間である。そして周りに火事が起こる。この火事から子供達を救うために仏はなんとかしてこの屋敷の外に連れ出そうとする。確か、そんな物語だった。安全神話を信じ、経済の繁栄に夢中になっていて、周囲の自然破壊、原発の増加、気象異変に気づかずにいた、玩具に夢中になっている法華経の中の子供達のようなものではなかったか。そして原発の事故が追いうちをかけ、放射能が風や雨と一緒に京佳まで運ばれてくる。あのような恐ろしい破局が来る前に打つべき手がなかったのであろうか。彼はそう自問自答した。『地下水の汚染』や『原発』を防ぐような場合には多くの人の力の応...故郷という名の童話後編5

  • 故郷という名の童話 後編 4

    悪夢柳目ラレンサは悪夢を見た。ラレンサは夢の中で、霊魂となって、薔薇に取り囲まれた京佳市を見た。町は放射能にやられ、廃墟となっていた。色とりどりの薔薇だけが燃えるように美しく、町を取り囲んでいるのが異様に思えるほど、沢山の汚れたビルと荒れた人家の中は、人がいない。ゴーストタウンになってしまったのだ。爆弾でやられた町というのではなく、建物はきちんと立っているが、人気がなく、周囲は草ぼうぼうで、あちこちに大きなゴミや小さなゴミが無数に散らかっている。沢山のカラスだけが飛び立ち、カーカー鳴くのさえ、何か不気味である。壊れた自転車が道端に転がり、草の中にはテレビだの椅子だのがころがっている。病院の中もからで、医師も看護師も患者もいない。工場にも人はいない。無人の市役所。放射能で枯れた水田、茶畑、黄色くなった広場には犬と...故郷という名の童話後編4

  • いのちの海の夢 【散文詩】

    私は奇妙な夢を見た。私は地下鉄に乗っている。その時、私は海の中にいるような気持ちになった。座っている人もいる。吊革につかまりながら立っている人もいる。その人達はみな色々な魚が衣服をつけているようだった。奇妙な錯覚だ。その時の私にとって地下鉄は深い海だった。その深さのためか、魚も眠る時があるせいか、ひどく静かである。背広を着た魚というのは妙なものだ。隣の魚とビジネスについて喋っているらしい。ゴトコドと変な音がかすかに聞こえる。私には遠い海の外で嵐が吹きまくっている激しい波の音のようにも聞こえる。突然、電車が駅にとまった。人々は駅に吐き出される魚の群れの様だった。同時に、衣服を着た魚の群れが入ってきた。この駅の構内は深い海の洞窟の中の宮殿の様だった。私の前に座った魚は眼鏡をかけた中年だ。彼は新聞を広げると熱心に読み...いのちの海の夢【散文詩】

  • 故郷という名の童話 後編 3

    3市長選が終わってから一週間ほどした五月下旬のことだった。この選挙で山里会に対抗する奥谷側が勝ったショックも手伝い、ラレンサは、AIロボットの研究を進めていた。朝倉香奈枝は地下水研究所をつくり、そこのスタッフと共にデータを集めるのに忙しかった。その結果、奈尾市の地下水汚染はある程度、広がっていることが分かった。奈尾市が汚染されれば、ラレンサのいる京佳市もあやうくなる。地下の構造からから、そうなるのだ。ラレンサは自宅に帰ると、ウネチア物語の続きを書き始めていた。書き始めた時には、学生時代に行ったイタリアのヴェニスを思い出した。ゴンドラに乗って、町の中を滑るように行く時のそよ風の心地よさを覚えている。歴史的にも由緒ある古い建物も、この水の中に浮かぶと、不思議と生き物のように思えるのだった。そんな思い出に浸っていた土...故郷という名の童話後編3

  • 映画「奇跡の丘」と東洋

    キリストの生涯が映像化されている。日本人の多くは十二月のクリスマスのお祝いぐらいにしか、キリストの名前を思い出すことがないのではあるまいか。しかし、欧米の文化を理解する上では、キリスト教をぬきにして語ることはできない。文学は勿論、経済に至るまで。そして、最近では、中国に数億人のキリスト教徒が生まれている。かって、太平天国の乱などというキリスト教徒の事件が歴史に大きく刻印されていることを思うと、何かしら不思議な気がする。そして、中東のイスラム国と欧米などのキリスト教国の対立。こうした風に俯瞰してみると、やはり、世界を見る時にキリスト教の知識は必要と言わざるを得ない。文学の上では、タイトルがキリストの言葉のものもある。ノーベル文学賞を取ったジイドの「狭き門」はキリストの「狭き門より入れ」からである。ドストエフスキー...映画「奇跡の丘」と東洋

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