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2018/03/05

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  • ここに幽霊が

    ここに幽霊が ! 1 なんの風の吹き回しで、音楽教師があんな話をしたのかもう覚えていない。その時の風が物狂おしかったせいなのか、その増田先生の経験した少年時代とほぼおなじような気象状況におかれ、それで話しだしたのかもしれなかった。普段そんな話などはしない人であったのだが、授...

  • ここに幽霊が !

    ここに幽霊が ! 1 なんの風の吹き回しで、音楽教師があんな話をしたのかもう覚えていない。その時の風が物狂おしかったせいなのか、その増田先生の経験した少年時代とほぼおなじような気象状況におかれ、それで話しだしたのかもしれなかった。普段そんな話などはしない人であったのだが、授...

  • 青の婦人たち

    青の婦人たち 妙なものだった。考古学者の上尾(ウエオ)は、イラクリオン博物館に来られ、今、現実に線上A文字の粘土版を目にしていると言うのに、少しも感動出来なかったのだ。まして身銭を切って、上尾はこのギリシア、エーゲ海の最南端のクレタ島に来たのに。 だが...

  • 朝の回り逢い

    朝の回り逢い 1 モンテーニュは静かな美しい音楽で、朝は起こされている。なんと恵まれた目覚めであることか。そんな記述を麗子は少女時代にエセーで読んだ記憶がある。ところが留学生として念願のヨーロッパにやっと住めるよ...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 6

    6 エンジンの振動音が止み、ドアの閉められる音が聞こえた。 百姓を含めた四人のポーランド人の注意は納屋の外に集中した。彼は、逃げるなら今だろうな、とぼんやりと考えた。もちろん、実行に移るほどの気力も勇気もない。ヤンケルも地べたに腰をついて、げんなりとして去勢した表...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 5

    5 黄色いジャガイモと脂肪の浮いた熱いスープの食事を、百姓は家畜の糞や干草の臭いの充満する納屋に用意してくれた。 「仕事はそれからだ」 と言って、親切な百姓は納屋を出て行った。途端に小男の彼が、非難がましい口を開いた。彼らは二人っきりになる機会を待っていたのだった...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 4

    4 どのくらいの間、絶望の淵にぼんやりと座っていただろうか? 長い時間が過ぎたようでもあったが、一時間ぐらいのものであっただろう。 「こんな所に蹲っていてもはじまらない。運を天に任せてやってみるしかないようだ・・」 とにかく彼は、木々の太く湾曲した根に足を取られ転...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 3

    3 彼とヤンケルは、村落から村落へと狭い路を歩いて行った。もちろん多くの百姓家によっては「仕事をさせて貰えないか? 何でもする」と訊ねて行った。・・が、誰も二人を雇ってはくれなかった。 百姓たちと直接かけあったのは、骨太のどんな重労働にも使えそうなヤンケルのほうだっ...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 2

    2 冬はもう近かった。小男の彼とヤンケルは曇天下、暖炉に篭る燻った炎のような、夕陽の焦がす森林伝いに、濡れて滑り易い大楓や白樺、菩提樹の黄色や褐色の枯葉に転びながら移動していった。・・生き抜くための距離を少しでも稼ごうと。 そして遅い昼下がりに、人気のない農家を発...

  • 逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 1

    逃亡者たち【フリュヒトリンゲ】 弓削部 濁 1 どのくらいの道程を走って来たのか、また、どのくらいの時間が経過したのか? 彼には皆目見当もつかなかった。とにかく、自分の小さな体をこんなに走らせ、酷使したのは久々のこ...

  • 人種差別解放ウィルス

    人種差別解放ウイルス 「大体、われわれ白色人種が寛大過ぎたのですね。アジアやアフリカの低能劣悪な土俗に近代文明を齎し、夕食人種を人種と認めたから、我々がこんな玉石混交とも言える世界に生きなければならない羽目になったんですよ鼻めどのでっかいゴリラどもや黄色い猿どもが我々の妻や...

  • 織田信長に捧ぐ

    織田信長に捧ぐ 「白田さん。タイム・マシーンがやっと完成しました。…約束通り、母を返して下さい」 「待て、まだマシーンがまともに動くか、また、俺に復讐するために奇妙な細工が施されていないか、確認しなければならない」 それまで皆勤賞も頂戴するほど真面目に勤めてきた、ほぼ...

  • 女の子の魅力

    女の子の魅力 「美枝子、私がどんなに君を慕ってきたか・・・やっと二人っきりになれたね・・・」 私は思わず彼女の甘い黒髪に触れ、その妖しく魅惑的な輝きを持つ瞳の上にキスした。 美枝子は何も言わず、私のするままになっている。私の与える刺激をそっと受け止め、味わっているかの...

  • 差別

    差別 「エイッ、ヤッ!」 僕の体は空中で、風を切って鮮やかに三回転し、揺るぎない堂々たる着地もやってのけた。 段違い平行棒は、僕のもっとも得意とする種目なのだ。特に、着地には誰にも負けない自信があった。 だけど、教師が 「いいぞ! ツカハラと競い合えるほど決まって...

  • 我が若き日を想う

    我が若き日を想う 「サヨナラ、センセー」 「ああ、元気でね」 長い黒髪をふさふさと揺らせて、女の子は退院して行った。 ドクターと呼ばれずに、センセーと言われた事が、鈴木文太郎の気に障った。が、それもほんの一瞬のことであった。若い世代は常にどこか軽薄であるのを知っている...

  • 同郷の女

    『同郷の女』 ロンドンの郊外に学生寮はあった。私は霧雨の流れる中、四、五人も立てない狭く錆びれたバス停の小屋根に駆け込んでいった。ここもロンドンの一部のはずなのにペンキの色は剥げているし、改修でもするべき停留所であった。 冷たい滴をぽとぽと落とす庇の下には、先客がいた。...

  • 小粒なソムリエたち 6

    或る晩、就寝前に歯を磨いていたが、白く分厚くできている洗面台の上や 縁に、唾液と歯磨き用の白いペーストに混じって歯茎からでた赤い血が口から ぼたぼたと垂れ落ちた。イチゴミルクみたいだと思ったのは本人だけで、妻か らこの零れ落ちたたくさんの斑点が嫌がられるのは自明のことで...

  • 小粒なソムリエたち 5

    妻と隣の婦人との間で、まだこのフルーツ愛好家たちについての推論が交わ されているようであった。その一部を妻が語ってくれていて、そこからおおよ そ婦人たちがどんなことを話しているのか理解できた。 彼女たちの討議の結果は、冬の間に暖かいガス湯沸かし器の内側に産卵して 待機し...

  • 小粒なソムリエたち 4

    以前、居間で本も開かず、テレビを視ていると、妻の悲鳴が案外近いところから上がったことがあった。また、なんだろう、たぶん大したことではないだ ろうと想像しながら妻のもとによって、その視線と突き出された白い指先の方 を見ると、トイレ兼バスルームの窓の下の、隅に置いてある石鹸や...

  • 小粒なソムリエたち 3

    この年の夏もお天気の良い日が続いていた。ラジオからは温暖化が進んでいる ニュースが流れていた。耳を更に傾けているとシューッ、シューッと奥の台所のほうから湿り気のある重い音が聞こえてきて、すぐにドアが慌てて閉められ たような音が鈍く続いた。様子を見に行こうとした結城と妻は台所...

  • 小粒なソムリエたち 2

    ふと目が覚めた。窓外はまだ明るい。テレビから叫び声かなにかが聞こえ、 それで起こされたらしかった。いつのまにかいつものように寝入っていたらし かった。赤ワインとか呑むようになってからこういう不規則な仮眠が時たま襲 う。動かずにパンや米のご飯などの炭水化物も食べるのであるか...

  • 小粒なソムリエたち 1

    ちょび髭を鼻の下に蓄えたヒットラーが顎を動かし腕を振るって演説する姿に続いて、感激と昂奮に頬を涙で濡らし、怒涛のように一体となって、ハイル ・ヒットラーの敬礼をする婦人たち、そして黒いロボットのように整列し黒い 軍靴を高く蹴りあげて行進する親衛隊の姿が画面いっぱいに展開し...

  • 石楠花の蔭にて 7

    棺が締められる前に最後の別れをダークマーとすることができた。 私が選んだ樫の木の棺に彼女は横たわっていた。静かに、穏やかに横たわっていた。もう彼女に触れても、私から黴菌が移るようなこともなかった。私は彼女の白いウエディングドレスのような、ネグリジェのようにも見える服の上...

  • 石楠花の蔭にて 6

    欲しいものは何でも叶えてもらってきたベン。三十七歳まで碌に仕事もせずに私とダークマーのシャーロッテンブルク区の住居に住んでいて、女の子も呼び寄せては幾晩も好き放題におくっていたベン。自分では稼ぐこともせず貯金もないのに、エジプトとヨルダンへの長い旅行や、アメリカ合衆国のデ...

  • 石楠花の蔭にて 5

    ベンは初めっから私を無視していた。欧米人は話すときには相手の顔を見るものだが、ベンが私と会話をすることはなかったし、私は彼にとっては異質の他人であり、小学生のときにはヤパーナ(日本人)という綽名をつけられていたようで、それがさらに私を毛嫌いする原因にもなっていたようだった...

  • 石楠花の蔭にて 5

    タクシーは今さっき見えた建物や橋を再び通り過ぎた。 だが、なぜそちらに戻るのか私には彼の考えていることが分からなかった。 やってきたのは五階建ての各バルコニーに赤や白い花の並ぶ白とベージュ色に塗装された趣のあるアパートだった。窓には小さな屋根が付けられ煉瓦作りの、世界...

  • 石楠花の蔭にて 4

    そのルートがダークマーの母親だった。そして私の義母になる人だった。 ゲアーチェンは外人警察で私を威嚇したあと、無理やりその巨体でシャンパンカラーのタクシーに一緒に乗り込ませ、西ベルリンの玄関であるテーゲル空港に私を連行しようとした。 「イビツァを知ってるか? とても良...

  • 石楠花のもとに ―ドイツの父と母 3

    ゲアーチェン。妻ダークマーの継父で腰周りが殊に肥満した肩幅の広く図体の大きい一見役人風の彼のことを私たちはそう呼んでいた。正式な名前はゲアト・レブシャトだった。分厚く四角い金縁のフレームの眼鏡をつけていたので余計、気難しそうな管理職クラスの役人のように感じられた。 私は...

  • 石楠花のもとに ―ドイツの父と母 2

    十年前のことだった。 妻のお葬式の際に葬儀屋から義父母の墓地の権利が切れていることを言われた。愛妻を失った悲しみで胸が詰まっていてこれから先どうして良いのかなにも分からなくなっている状態の私に葬儀屋の男が事務的に伝えるのであった。私はお葬式にやってきてくれていた義理の弟...

  • 石楠花のもとに ―ドイツの父と母 1

    石楠花のもとに ―ドイツの父と母 愛妻の葬られる場所は、旧西ベルリン内の南方のリヒターフェルデ区の、彼女の両親が眠る同じ墓地を私は選んでいた。私が呼吸をとめたら、彼女の隣に埋葬される予定だ。それまでは独りで淋しくないように彼女の親と同じ場所で私をまっていて貰いたいと思...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 8

    老人の住居に背を向けてとぼとぼとちょっと名残惜しく歩きだすと、ヒルデスハイムの市街を貫くメイン通りのような道に再び戻った。左の小高く細い坂道を選べば、確かその先には今晩の宿泊先のユースホステルがあるはずだった。小路の先は両側から深く被さる街路樹で見えない。緑のなかに薄い黄...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 7

    毎年、冬も深まりクリスマスシーズンが近づくと、クリスマス・ソングはもちろん、教会の鐘の音も気のせいかよく耳にする。その音色は私が日本人なので、日本の寺社の鐘が荘厳で思索的な音と深い余韻を残すと感じるのに対し、時に圧迫するように大きすぎる響き、時に、尊く厳かだが、美し過ぎる...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 6

    気の遠くなるような時間が経過したあと、ハノーヴァーに仕事で向かうという車が停まってくれたのは、およそ四十五分間ほどの時間が経過したころだった。短い待つ苦しみを、味わっただけで車が止まってくれた。これは大変ラッキーなことだった。 青と紺の縞模様のネクタイを締め暗色の背広を...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 5

    リュックサックを背負ってドイツから一度出て、そして再び言語を学ぶためにドイツに入国するわけだが、できるだけお金を使わないでおくために、州道とかアウトバーンの入り口で親指を突き立ててヒッチハイクをする。できるならやりたくはない旅行方法だが、やむを得ない。強靭な精神を持つとは...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 4

    「日本人は真面目で勤勉だとか思われてんだよ。だからユースとかに行ったら大変なんだよ。すっごく働かされることになるんだ」 ミュンヘンの近くのユースホステルでアルバイトをした経験のある料理人のサブがそんなことを語ったことがある。だから僕が辞めたいとこぼした時、この日本レスト...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 3

    ニーダーウルツン 数十平方キロメートルに広がって屹立と密に並び立つ常緑の針葉樹のために、この町には朝夕の斜光は殆ど差し込むことはなかった。陽が高くなって初めて、鬱蒼と広がる森林の幹や枝葉の隙間を縫って陽光のシャワーが数条にもわたって地面に滴り落ちるのだった。その時間帯にア...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 2

    ◇ 路肩に立ってヒッチハイク。できるならそんなことはやりたくない。危険が伴うからだ。でも、貧乏な僕には他の選択肢はなかった。 小さな町から都会に移動する車は比較的多い。それでもヒッチハイクする外国人の青年を乗せてくれるような運転手は稀だ。女の子だったら頻度は高いのだろう...

  • ヒルデスハイム 千年の薔薇 1

    「うるさい! 俺に話しかけるな!」 その男から跳ね返ってきた反応は、むしろ侮辱を受けた者の憤りだった。 「お前らの様な劣等なよそ者に、なぜ自分が話しかけられなければならないんだ。目の前から消えろ! さもないと」 と握られた拳が威嚇しているようでもあった。 琥珀色 ...

  • ギリシャ神話。食べたりなくて眩暈。見失った作品を再発見

    ワープロを4台以上も持っている。文字も粗い原始的な二台を数に入れれば6台にもなろうか。残念ながらそれらすべてのコードを引っ越しの時に纏めておいたのだが、それがそっくりどこかに消えてなくなってしまった。そのために全く使えない。 それでも、電池を入れる場所が機器の裏側にあっ...

  • 2024-09-02 月曜日 一か月ぶりの日記

    2024-09-02 月曜日 一か月ぶりの日記 久しぶりの日記だ。 自分の日常を書き記していったい何の意味があるという疑問に捉われ、この日記専門のアソスのノートブックのスイッチを入れる気持ちになれなかった。もちろん、仕事があったということがもっと大きな原因だったと思う。...

  • 2024-09-01 日曜日

    2024-09-01 日曜日 この日にはアルテスミュージアムに録音機を持って行く積りだった。もうすでに数日前から行く積りだった。最初の目的は本を購入する積りであった。だが、考えてみると、月の第一日曜日は無料で、しかもオーディオガイドも無料だとI村氏から聞いたことがあった...

  • 2024-08-29 Air Port One Point Service

    2024-08-29 Air Port One Point Service 飛行場に行って、離陸のチェックインのアシスタントの業務を行うという仕事はおよそ30年間のガイドと通訳業務で初めての体験だった。 わたしは幾度もK社から送られたアイテナリーをチェックしとにかく、午...

  • 2024-07-31 水曜日

    2024-07-31 水曜日 昨日の午後にプチパン二つに、スモークドサーモンや茹でソーセージの細いのを二本とか挟んで芥子でたべたせいだろう、この炭水化物のお蔭でぐっすり眠れた。ベットでは中島美嘉作品の雪の華を歌心りえさんの歌声で聞きながら眠った。 そして今日の起床は、ま...

  • 2024-07-28 日曜日 薄青い空 ほぼ曇天

    2024-07-28 日曜日 薄青い空 ほぼ曇天 21度。風強め。 数日前から気が付いていたことだが、もう午前4時頃に夜が白み始め、朝が訪れるということはなくなった。それも急速に夏らしい早い朝が無くなり始めている。午前5時になってもまだ暗い。最初は曇天だからだろうと思っ...

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