「人間の行動や意思決定で、自ら選び取っているものは案外少ない」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(5)ー診察ー』(山内義雄訳)
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(5)ー診察ー』(山内義雄訳) 時は1913年。第4巻から3年の月日がたった。 32歳になったアントワーヌは医師として充実した日々を過ごしていた。第5巻はそんなアントワーヌのある一日を描写したものとなっている。アントワーヌの自宅兼診療所には、診察を求めて次々と患者が訪れる。この巻に弟のジャックは登場しない。彼は難関エコル・ノルマルに優秀な成績で合格したにもかかわらず、学校には行かず、そのまま行方不明となってしまった。なぜ再び家出をしてしまったのか。その理由はまだ明らかにされていない。 5.診察『チボー家の人々』第5巻のあらすじを紹介する。上記のと…
「暴力で女を支配する男と、ダメ男ぶりで女を支配する男」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(4)ー美しい季節Ⅱー』(山内義雄訳)
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(4)ー美しい季節Ⅱー』(山内義雄訳) 4.美しい季節Ⅱ『チボー家の人々』第4巻のあらすじを紹介する。チボー家の長男アントワーヌは29歳。彼は、父親の秘書シャール氏の娘(血縁関係はないが)に人生初の大手術を施し、命を救うことができた。たまたまアントワーヌの手術の助手を務めたことがラシェルはユダヤ系の美女で26歳だ。この手術が縁で、ふたりは恋に落ちる。ラシェルは、アントワーヌが今まで見たことのない世界に住む女性だった。 ラシェルの半生はかなり特殊だ。彼女には実際のモデルがいるのだろうか?彼女は天涯孤独といっていい身の上だ。オペラ座で衣装係をしていた…
「恋はそれぞれ、その当事者に似る」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(3)ー美しい季節Ⅰー』
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(3)ー美しい季節Ⅰー』 「恋はそれぞれ、その当事者に似る」は、巻末の店村新次氏の解説による。ジャックとアントワーヌがふたり暮らしをするようになってから5年がたった。ジャック20歳、アントワーヌ29歳。「ふたり暮らし」といっても、どうやらふたりは父親と同じ建物に住んでいるらしいのだ。チボー氏は上の階、ジャックとアントワーヌは下の階だ。チボー氏は地元の名士で金持ちなので、ものすごい豪邸に住んでいるのかと思いきや・・・いや、パリに住んでいること自体がすでに金持ちの証しなのかもしれない。 3.美しい季節Ⅰ『チボー家の人々』第3巻のあらすじを紹介する。少…
「ハラハラドキドキの展開。少年園の<特別室>に入れられたジャックに何が起こったのか?」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(2)ー少年園ー』(山内義雄訳)
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(2)ー少年園ー』(山内義雄訳) 第2巻はまるでサスペンスだ。感化院の<特別室>に入れられたジャックの様子がおかしい。いったい何が起こっているのか?兄のアントワーヌは感化院にジャックの様子を探りに行くシーンは、ハラハラドキドキさせられる。施設は清潔だし、園長は愛想がよくて親切だ。ジャックの体にも虐待のあとは見られない。しかし、園長のことばの端々ににじみ出る施設の様子や、ジャックの不自然な受け答えから、徐々に施設の実態が明らかになってくる。「アントワーヌよ、頼むから気付いてくれ!ジャックをここから早く救ってやってくれ!」と祈る気持ちにさせられる。ま…
「『大人たちの束縛から逃げ出せ!やつらに何がわかる!』 二人の少年の家出事件から物語は始まる」/ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 『チボー家の人々(1)ー灰色のノートー』(山内義雄訳)
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(1)ー灰色のノートー』(山内義雄訳/白水Uブックス) 面白い。面白すぎて止まらない。この本はチボー家の次男、ジャック・チボーをめぐる群像劇だ。しかしほとんどの本屋には置いていないので、日本ではほとんど読まれていないのではないだろうか。そこで、1冊ごとにあらすじを記すことにした。「こんな話だったのか」と少しでも興味を持ってもらえるとうれしい。 1.灰色のノート 『チボー家の人々』は、カトリック系の中学校に通うジャック(14歳)とダニエル(14歳)の家出事件から始まる。ふたりの家出の二日前、ビノ神父はジャックの机から「灰色のノート」を発見した。この…
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