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  • 恐れていたもの

    8月8日 午前11時、入院する。パジャマを着てベットの上に座る。冷房がきいて暑くはない。八人部屋である。 ふと向こうの端のベッドに視線を移したとき、正一郎はあっと思ったのである。 心の底で一番恐れていたもの、悪い予感、自分の美意識を壊すもの。自分を憂鬱のドン底に落とすもの。 そんな馬鹿な。正一郎は激しく動揺する。

  • 東京の病院へ行く

    しかし、それが何であるか分からないが、真剣に考えていかなければならないと正一郎は思うのである。 東京の病院からはなかなか連絡が来なかった。7月になって8月8日に入院してくれと連絡のハガキが来た。 九州の病院ではこんなに待たせはしないが。8月7日に正一郎は熊本を発った。 寝台車の切符が取れず、バスで別府まで行き、別府港より関西汽船で神戸へ。神戸より新幹線で東京へ。

  • 思ったこと

    この不幸な人たちの事を思うと、自分は何かをせねばならぬと思うのである。 それは流れ星のようなものかもしれないが、輝いていなければならぬと正一郎は思うのである。 このまま何もせずに終わりたくない。大きなことはできないかもしれないが、小さいことでもいい 何かこの世に役立つことがしたいのである。

  • 鼻のない女性

    鼻のない女性が幸せになれるか。顔に大やけど負った少年に未来はある。この人たちの未来を思うと陰鬱になる。 これが人生か。あまりにも悲惨である。鼻のない女性とすれ違った瞬間、彼女には微笑みさえあった。あの微笑は何を意味するか。 彼らに比べれば自分はまだ幸せである。街中を歩いていく自由がある。

  • 出会った若い女性

    恐らくは22、23歳の年齢の女性なんだろうが、顔に鼻がないのである。ひどい火傷で鼻の肉がないのである。 火傷で鼻の高い部分が溶けてしまったのであろう。とてもそれは人間の顔ではなかった。 鼻の穴が直接見えると言うか、骨が露出した状態なのである。 正一郎はショツクで色を失ってしまっ…

  • 〓診察室です

    移植手術に関して詳しい説明があったので、正一郎は納得した。手術が成功をするか失敗するかはわからないが 手慣れた感じが安心を呼んだ。ここで手術を受けようと決心する。 診察室から正一郎が出ようとしたとき、若い女性とすれ違った。その女性の顔を見て正一郎は仰天した。

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誰も読まなかった幻の小説、「片端者」
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