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手術室にて
手術台に正一郎は乗せられた。まな板に載せられた鯉の気分である。頭上の蛍光灯の明かりが眩しい。 突然、顔にカーバーがかぶせられた。目の目は真っ暗である。 「今日は三人目か、朝飯前だよ。軽い、軽い」とドクターの話し声。 「ちょつと眠くなるよ」 突然、足の下から痛みが駆け上ってきた。全身麻酔である。黒い渦が頭…
2019/01/30 14:25
東京の病院
患者同士の会話と言うものがない。同じ病室にいてもカーテンを下ろしているので隣に誰がいるのかもわからない。 それが九州から来た人間には冷たく映る。この冷たさは大都会の病院の宿命かもしれない。 他人なんかどうでもいい。自分さえ良ければ。自分に対する関心だけである。人間なんかそんなものだと言ってしまえば、それまでであるが。 人間は一人で生まれて一人で死んでゆくのだから一人ぼっちは当たり前だ、寂しい気持…
2019/01/25 22:14
病室の孤独
向こうから患者用の車がやってきて正一郎の車に激しくあたった。これには正一郎も驚いた。 「あらごめんね」とみよちゃんの友達が言った。 こういう荒っぽさは九州の病院にはない。九州の病院はもっと穏やかだし、せかせかと急いだりしない。東京の病院のように人、人で ざっと雑踏することもない。東京の病院は個人主義に徹している。 a id="&blogmura_banner" href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking…
2019/01/23 15:18
みえちゃん
地下室の手術室に降りて車椅子から患者用の車に乗り移る時、みえたちゃんが「ここで私の友達が働いているのよ」と言った。 やがてみえちやんの友達が現れて、「もうちょっと待ってね」と言った。 みえちやんは正一郎の耳元で、「あの人、美人でしょう」と囁いた。けれどもその女友達、口元に大きなマスクをしてまるでアラビヤ…
2019/01/19 12:54
手術室へ
嫌な気分である。地獄へ向かっていくような気分。手術への恐怖心が強くなっていく。エレベーターの前で看護婦が一人立って正一郎が来るのを待っている。正一郎の腕に彼女はいきなり注射を刺した。それはとても痛かった。これは東京スタイルであって、田舎の病院ではこんな乱暴なことはしない。 a …
2019/01/16 14:15
服を着かえると車椅子に乗せられて地下の手術室に降りていく。 長い廊下を車椅子はがたがたと音をたてながら進んでいく。車椅子は片方がおかしくてガタガタと音をたてる。 すれ違うは人、人、人。さすがは東京の大病院。人の多さに驚く。なぜか痛く無常を感じながら正一郎は手術室に向かう。 a id="&b…
2019/01/14 11:02
8月10日 午後4時、秋田から来た見習いの看護婦が「いよいよ手術よ」と言って正一郎のパジャマを脱がせる。 手術用の服に正一郎は着かえる。この見習の看護婦、患者たちには人気があって、みんな、「みえちャん、みえちゃん」と彼女の事を呼んでいる。 何人かの患者は彼女にお菓子などプレゼントする。みえちゃんは背が低いが可愛くてよく働く。患者たちの世話をよくする。 a id="&blogmura_banner" href="//novel.blo…
2019/01/13 16:08
家族控室にて
世の中にはいろんな病気があるもんだと正一郎は驚いた。 いろんな人が難病で苦しんでいるのを目撃したわけである。難病で苦しんでいる人たちがたくさんいるわけだから、自分なんかまだいい方だと 正一郎は思った。不幸だと自分の事を思っていたが自分よりもっと立場が悪く、絶望的な境遇にある人が多いと言うことは、新しい発…
2019/01/12 20:53
若い男
家族控室でお茶を飲んでいると、若い男が入ってきた。顔を見て正一郎は驚いた。目の縁に黒い粒粒が広がっていた。 「どうしたのですか?」と正一郎は聞いた。 若い男は聞いたこともないような病名を言った。 「治るのですか?」と正一郎はまた聞いた。 「器械で削り取ってしまうのです」と若い男はにこりともせずに答えた。…
2019/01/11 10:16
東京の風景
最後に手術同意書に印鑑を押してくれと言うので正一郎は押印した。午後から何もすることがないので病院の屋上に 上がった。東京の空はどんより曇っていた。周囲の風景と言うものはビル、ビルの乱立で、人工都市と言うか、悪く言えば、コンクリートの塊の街であった。 九州の田舎の風景を思い出していた。山あり川あり、森あり…
2019/01/06 13:16
先生と手術の打ち合わせ
8月9日 午前中、先生と正一郎は手術の打ち合わせをする。皮膚を移植すると手の色が変わる。皮膚を剥いだお尻の部分はケロイド状になることがある。 2カ月ほど手はギブスをはめた状態で動かせない。そんな説明があった。正一郎は黙ってうなずく。 こちらからいろいろ言うと手術を断れる恐れがあるからだ。
2019/01/05 18:37
まだら怪人氏
まだら怪人氏が目の前を通った時、正一郎の恐怖は最高調に達した。これが人間の顔か。化け物じゃないか。 胃の中のものを吐き出したくなるような気分である。まだら怪人氏の登場は正一郎の気分を最高に悪くした。 正一郎の心は激しく揺れる。人間が人間の顔に恐怖を持つ。それは許されざる感情かもしれないが。 正一郎の動揺…
2019/01/04 10:17
まだら怪人
向こうのベツトにいたまだら怪人氏はゆっくりと起き上がった。それから頭を掻くような仕草をしてベツトから降りた。 まだら怪人氏は前屈でこちらに歩いて来る。顔はあっちこっち皮膚移植したのか、まだらになっていてとても人間の顔とは思えないている。 唇は膨れ上がり、片目はつぶれ額の上の方は火傷で禿げている。 a id="&blogmura_banner" href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking.html">
2019/01/03 09:59
体が震える。
どんな人間でも愛さなければならないが、その論理は分かるが、感情は逆である。嫌悪で体は震えている。 だらしないと思いながら体の震えは止まらない。そんな自分に正一郎は困惑する。 a id="&blogmura_banner" href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking.html">
2019/01/02 18:39
まだら人間
向こうに見える顔は悪魔の顔である。顔がまだらの、まだら怪人。人間の顔ではない。正一郎は動揺する。 冷たい戦慄が体を走り抜ける。人間にあらざる人間。いや、まさしく彼は人間なのだ。たとえ顔がまだらでもである。 嫌悪したり反撃したりしてはならない。それは人間としては許されない行為である。 …
2019/01/01 09:39
2019年1月 (1件〜100件)
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