ホテルに到着した類。もちろん普段利用するようなホテルではなく簡素なホテルだ。部屋は二人部屋。入ると直ぐに鍵をかける。洗面台へ行き蛇口をひねると勢いの弱い水が出る。もう少し人口が多い都市なら高級ホテルがあるだろうが、ここの州はかなり田舎だ。贅沢は言っていられない。「類様。食事はいかがいたしましょうか?」「ホテル内にレストランはある?」「聞いてみます。」田村はフロントに電話をかけ聞いてみる。すると一階...
3月14日、日曜日あの一件以来、休日に会うのはこれが初めてだと言うのも断熱材の発表を早めた事により、問い合わせが殺到した為だ類は休日返上で資材メーカー担当者と各地を回り説明に明け暮れたその為、ホワイトデーの会議は類抜きで行われたそしてあれから類は毎日つくしに連絡を入れるようになった会えない事よりも心配の方が大きかった成川ではないにしろ、誰かが牧野の家に盗聴器やパソコン操作をした事実は変らない犯人が...
類は午後からマスコミ各社に向け記者会見を行ったそして3月以降建設する建物に使用する旨を伝え、断熱材の商品名、ロゴマークの商標登録、製品に関する特許、実用新案、意匠登録を申請済みであることも合わせた発表したNY司の携帯が鳴り始めたのは、深夜1時を過ぎた頃だやっと布団に入ったところを叩き起こされ、司はかなり不機嫌だしかも相手は西田仕事の話なら明日で十分だろうと言う思いだ「何だ? 俺は今から寝るとこなんだ...
つくしの表情が曇ったのを類は見逃さなかった「牧野? どうかした?」つくしは言うべきか悩むだが成川ならウイルスを入れることが出来ると思うと、隠してはおけないと判断する「実は、、、」つくしは年明けからの経緯を話すその発言に三人は驚きを隠せないその中で一番憤ったのは類だ「どうしてそういう重要な事を早く言わないのさ! それ完全なるストーカーだろ?盗聴にウイルス? それってパソコンから盗撮できるってやつだろ...
「専務。 牧野の言う通り大谷は会社の為に必死で働いています。決して不正を働くような奴ではありません。とりあえず専務のパソコン内のシステムを見せてもらってもいいですか?」「あぁ。 構わないけど、システムとか詳しいの?」「多少は。 まあ情報管理部ほどではありませんが。」と野村は言葉を濁す類の言葉から、自分の仕事内容を詳しく把握していないと感じたからだ「田村秘書室長。 成川のIDを教えていただけませんか?...
類は田村から今日の予定を聞いていたそうしながら成川からの報告書を見ていた先週のやり取りだが夫婦や恋人とのやり取りばかりその中に上司の愚痴も時々含まれており、仕事中によくもまあこれだけの回数を会社のパソコンでするものだと呆れていた少なくとも自分は公私混同はしていない!と自分を引き合いに出しながらも、少し羨ましく感じていたすると大谷の所で手が止まった大谷の所だけチャット記録が添付されていた<牧野さん。...
バレンタインデーが終わった翌月曜日出社したつくしに大谷は満面の笑みで迎える「おはよう。 牧野さん。」「おはようございます。」「貰ったチョコ凄く美味しかった。」「良かったです。 やっぱり花沢のチョコですよね。」「確かにそうなんだけど、普段チョコを買わないからさ。 久しぶりに食べて「うまっ」と思ってさ。 やっぱり愛がこもってるからかな?」「はい! 師弟愛がたっぷりと!」大谷の言葉を巧みに返すつくし室内...
類はつくしの手を取り、白や紅の梅の花を見ながら歩く「牧野に再会するまで、俺はその宿命を粛々と遂行する人生だと思ってた。とりあえず会社が傾かなければ、後はどうでも良いと思っていたからね。でも牧野に魅せられてから欲が生まれた。 好きと言う感情を初めて知った。その人との夢を描くことの楽しさを知った。 それらを手に入れるために、初めて自分で考え始めた。恋愛に指南書なんてないからね。 それぞれの性格、価値観...
皇居平川門付近で、二人は車を降りるそして東御苑へ向かって歩き始めた「皇居に来るのは初めてかも。」「あたしもあまりないかなぁ。 桜の時期は周囲の桜を通りすがりに見るくらいかな?」「桜の時期はつい目がいくよな。 華やかさがあるからかな?」「かもね。 その点、梅は地味?」と話しながら向かうすると枝に白い花や紅い花が付いた木が見えてきた「あれじゃない? 案外見に来ている人もいるね。」「あぁ。 確かに桜に比...
バレンタイン当日つくしは二つのチョコを持ち花沢邸へ向かった土曜日は出張で帰宅は遅いと連絡があったのは木曜日の事その為、日曜日は午後から迎えに行くから皇居の梅を見に行こうと言われたなんでも田村秘書室長から『綺麗だった』と情報を得たらしい確かに桜の花見は有名だが、梅の花見は行ったことが無い気候的に寒い日が多いからもしれないが、人も少なくのんびりできるらしいだったら午前中は、ちょっと買い物に行きたいから...
バレンタインデーが近づく頃、つくしは仕事帰りにショッピングモールへ立ち寄ったそこで特設会場に所狭しと並んであるチョコレートを見る既に完売しているチョコもあり、来るのが遅かったか?と少し後悔するその中でも惹かれたのは可愛いバラの花が散りばめられたチョコ白、ピンク、茶色のバラの花と緑の葉が印象的で、自分が貰うのならこれが良いと思うだが花沢のチョコではないやはり花沢社員に配るチョコが花沢以外だとまずいか...
1月中旬午前中の定例会議は、バレンタイン商戦の内容の為、各担当者と共に情報管理課からはつくしが出席していた既に店舗の一角にはバレンタインコーナーが設置され、花沢のブースの位置や配置されているチョコなどの報告と共に、他社の傾向も紹介されたどこも一口サイズのチョコが詰め合わさった物が主流のようだその中で動物のイラストがプリントされた物、可愛い色使いと形の物が好まれていると報告があったつくしは類から貰っ...
セール品のズボンを諦めたつくし。来年までに痩せれば問題なくズボンが入る!と自分に言い聞かせ、自宅に帰ると早速ネット検索する。「何探しているの?」「えっとね。 一週間でウエスト周りが痩せるって動画。」そんな物がある?一週間だよ?と、類は思うが声に出さない。「あっ、あった。」そこにはスタイルの良い女性がレクチャーしている。その動画を見ながら、つくしは横になった。「えっと、やっぱり腹筋だよねぇ。」と言い...
土曜日、、つくしの引っ越しの為、類はつくしのマンションを訪れた「準備は出来てる?」「うん。」玄関先には段ボールが積み上げられている「これ運んでもいい?」「うん。 よろしくお願いします。」類はボディガードに運ぶよう指示を出す「処分する物は?」「ここに纏めてる。」カーテンや一部の物は捨てることにしたサイズが合わないのが一番の理由だが、カーテンなど外から見えていた品は買い替えたいと思っていたどうしてもス...
つくしは、夏物最終バーゲンに来ていた。と言うのも、ズボンのウエストがきつくなっていた為、新しい物を買おうと思ってだ。「あのさ。 今頃、夏のズボンを買うの?」「そう。 だって70パーセント引きだよ!! 4,000円のズボンが1,200円! お得でしょ?」確かにお得だ。でもかなり数が少ない。「あのさ。 数が少ないし、色や形もマチマチだけど?」「そうなのよねぇ。 もう少し早く来ればよかったかな? 半額の...
類の執務室に田村が入ってきた「情報管理部と成川からの報告書です。」田村が差し出した紙を受け取るまずは情報管理部から目を通すマルチウエアが何度も送られているDOS攻撃もあったようだやはりネット経由で情報を得ようとする者や、コンピューターをダウンさせ営業妨害を図る者、そして個人情報などを詐取しようとする者が多いここ最近は、個人情報を人質に取る悪質極まりないサイバーテロまであるこの時代、サーバーがダウンで...
日曜日類とつくしは花沢の車で一軒目のマンションへ向かったそこから先は、メーカーの人の車で回ることになっているその一軒目のマンションを見て類は驚く花沢系列のマンションだったからだそのマンションの入り口に女性の販売員が立っていた「あっ、賃貸メーカーの方ですか? 牧野です。」「牧野様。 お待ちしておりました。 それでは早速ご案内いたします。」販売員を先頭に二人は中へと入る類は防犯カメラの位置を確認する入...
佐藤とラーメンを食べて帰宅したつくしは、早速パソコンを立ちあげ佐藤から貰た賃貸マンションを検索する今のマンションよりも花沢物産に近く、最寄り駅も徒歩10分以内コンビニやスーパーも近くにあり便利だ家賃は今より高くなるが、その分間取りも広いすると着信音が鳴る表示を見ると花沢類からだ「はい。」『あっ、牧野。 俺だけど仕事はどうだった? 足首とか痛まない?』「うん。 大丈夫。」『なら良かった。 それより今...
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ホテルに到着した類。もちろん普段利用するようなホテルではなく簡素なホテルだ。部屋は二人部屋。入ると直ぐに鍵をかける。洗面台へ行き蛇口をひねると勢いの弱い水が出る。もう少し人口が多い都市なら高級ホテルがあるだろうが、ここの州はかなり田舎だ。贅沢は言っていられない。「類様。食事はいかがいたしましょうか?」「ホテル内にレストランはある?」「聞いてみます。」田村はフロントに電話をかけ聞いてみる。すると一階...
翌日、類は田村とともにナイジェリアへ向かった。アブジャ国際空港に着いた類は、地理的にまずナイジャー州へ車で向かった。かなり道が悪く、しかも両サイドはボディガードが乗り狭い。だが途中で休憩を取る事は出来ず、早く現地へ到着することだけを願った。そしてやっと到着し車から降りたところで、類は背伸びをし体の筋肉をほぐす。そして庁舎と言われる建物の中へ入った。部屋に通され、そこには行ってきた州知事と握手を交わ...
類は会社に戻ると直ぐ『ジャングルハニー』と『ブラックソープ』を調べる。ジャングルハニーの方は希少価値が高く安定した生産が難しい。蜂蜜を取るための巣箱を用意するのではなく、木の上に出来ている蜂の巣を見つけそれを採取しているようだ。これでは安定した生産は出来ない。その為、付加価値も付きかなりの高額で販売されている。味はイマイチらしいが免疫効果が高くアフリカでは傷口に塗ったり治療薬に使われたりするらしい...
類は仕事の合間に総二郎から聞いた桜子の店へ向かった。そこには類の知らない女性がいる。もしかして今日は店に来ていないのか?と不安に思いながらも聞いてみる。「いらっしゃいませ。」「あのっ、西門桜子さんはいらっしゃいますか?」「オーナーですね?失礼ですがお客様のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」「花沢類です。」「少々お待ちください。」店員は電話を手に取ると話し始めた。するとすぐに後ろのドアが開き、桜...
更に5年後、司が結婚することになった。お相手はカーネギー財閥の三女のキャサリンだ。突然の事に類を始めあきらと総二郎は驚いた。だが親友の門出を祝う為NYへ向かった。「驚いたな。突然だよな?」「あぁ。パーティーで何度かエスコートしたのは知っているがあまりにも突然だよな?」「ん。でもまあ、、理由は二つのうちのどちらかだと思う。」類の言葉に、あきらと総二郎もその二つが思い浮かぶ。一つは政略結婚だ。カーネギー...
類は一年半後に無事大学を卒業した。そこから本格的に仕事を始めた。あきらと総二郎は類から遅れ半年後に卒業した。それから更に一年後、類は日本勤務となり久しぶりに日本に戻ってきた。日本を離れてから実に5年の歳月が経っていた。数か月後、司の日本出張を知ったあきらが皆に声をかけ久しぶりに集まる事になった。場所は美作が経営しているレストラン。食材にこだわったレストランで多少値段は高いが、個室になっておりかなり...
つくしは大学の寮に着いた。玄関を入ると管理人のような人がいる。「こんにちは。初めまして。牧野つくしと言います。」「牧野さんね。ちょっと待ってね。」管理人の男性は紙をペラペラと捲り「えっと、牧野つくしさんは301号室だね。鍵を渡すからちょっと待って。」そう言うと一つのカギを持ち管理人室から出てきた。「はい。これがカギ。3階の301号室ね。ここは女子寮だけど3階は医学部の生徒が集まってる。だから同室の人...
つくしは卒業式に臨んだ。そして卒業生代表として答辞を読み上げた。これでつくしの英徳生活は終止符を打つ。色々あった三年間だ。その中で最も濃い時期を過ごしたのが一年半前。司に宣戦布告してから目まぐるしく人生が変わった。もちろんそのおかげで沢山の人達と知り合い、今も交流が続いている。それは自分の人生にとってプラスになる事は間違いない。ただ大学生になる事で、そこにも一線を引くつもりだ。つくしは最後に非常階...
年が明け、つくしは共通テストを受ける。それを自己採点したうえで、国公立大学医学部の二次試験の願書を出した。それは寮が完備されている九州の大学だ。寮費と食事代で月4万円ほど。水道光熱費込みで二人部屋。だが大学から近く交通費がかからない。今住んでいるアパートの家賃と水道光熱費、食費を考えると十分賄えるしお釣りも来る。そのお釣り部分を医学部の施設使用料に回せば奨学金の額を減らせる。特待生になる事を期待し...
つくしは英徳の経済学部、都内の医学部の私学を受験する。すると両方とも合格を勝ち取った。だが特待生になるには、入試試験の上位10人で入学した者のみだ。つまり自分がその特待生になるかどうかは入学手続きをするまでわからない。しかも特待生と言っても授業料の250万円が免除されるだけ、残り施設使用料を合わせた400万円近くはかかる。「凄いな。無事合格できたじゃないか。」「はい。」「英徳は特待生間違いない。こ...
類はあきらからの報告を受け驚いていた。てっきり就職、あるいは専門学校へ行くと思っていた。ところが医学部を受験するとは想定外だ。でも、、、何となく牧野らしいと思ってしまう。いつもいつも自分の前に大きな壁を作りそれに登ろうと必死にもがいていた。実際、それを登り切っていたし、時には俺が引っ張り上げた事もある。でも今度は自分一人。俺に出来る事はここから応援するのみだ。頑張れ!!牧野!!「類君?何かいいこと...
一学期も終わろうとしていた。つくしは個人面談の為担任と向き合っている。「成績は申し分ない。よく頑張っているな。」「ありがとうございます。特待生なので必死です。」「TOEICも786点は流石だ。これなら一流企業にも十分入れる。」「ありがとうございます。」「それでなんだが、、、このまま英徳大学へ進学するのはどうだろう?英徳大学も特待生制度がある。充分特待生になれると思うんだが。」担任は学園長から頼まれてい...
類は母親と共に本屋に来ていた。平日に読む本を選ぶためだ。「電子書籍とかも出始めてるけど、やっぱり紙の本の方が目が疲れなくて好きだわ。」「確かに。」「類君は何系が好き?」「推理小説かな?」「推理小説は一気に読みたくなるのよね。こういう文庫本は文字もこんなに小さな文字で、なかなか読めなくなってきたのよね。認めたくないけど確実に老眼になってきているわ。」「こればかりは仕方ない。いやかもしれないけど老眼鏡...
つくしは高校三年になった。進は終業式後に北海道へ行った。突然家族がいなくなり寂しい気持ちはあるが、逆に言えば自分のペースで勉強が出来る。夜も進に気を遣って明かりの位置を調整する必要はない。その為、のびのびと勉強に打ち込んだ。そしてGWになり、桜子に誘われ久しぶりに総二郎、あきら、滋と食事会をした。「牧野。お前、一回り痩せたんじゃねぇか?」「そうかな?」「うん。やつれてるように見える。ちゃんと食べてる...
プロムから帰宅すると、そこには母親の犬である三沢が待っていた。司は身構える。「お帰りなさいませ。」「なんだ?」「お迎えに参りました。これからNYへ向かいます。」「はあ?」突然の事に司は呆けた声を出す。そして隣の海を見る。海もどういう事?という気持ちだ。「海も一緒か?」「いえ。司様お一人です。」「どういう事だ?」「初めからその約束でございました。日本へは一時帰国でございます。ですが司様が暴漢に刺された...
司と海が出口へ向かうのを見て、二組もダンスが終わると直ぐにフロアの隅へ移動する。あきらと総二郎は、滋と桜子にドリンクを渡す。「ありがとう。」「すみません。」喉を潤した後、、、「あったね。」「ありましたね。」「くっきりとあったな。」「あんな目立つ場所につけるなよな。」四人は海の胸にくっきりと点けられたキスマークをチェックしていた。「という事は昨夜も張り切ったという事だね。」「ですね。」「チェリーだっ...
英徳の卒業式そこにF4の姿はない。類はもちろんだが司、あきら、総二郎もサボった。既に卒業は決まっているし、堅苦しい式は元々参列するつもりはなかった。そして夕方からのプロム。ここには卒業生がドレスアップして参加する。もちろんパートナーは誰でも構わないし、一人で出席してもOKだ。そこに総二郎は滋を、あきらは桜子を同伴して現れた。その姿に生徒達は黄色い声を上げる。卒業式に参列しなかった為、プロムも欠席とばか...
つくしは桜子に連れられ英徳のラウンジに居た。そこであきらの驕りでランチを食べている。「牧野。本当に参加しねぇのか?」「うん。桜子と滋さんを誘ってよ。元々あたしはそんな場所に行きたくないし。」「先輩。お二人のどちらかと参加して道明寺さんの鼻を明かすという方法もありますよ?」「ううん。そんな事したくないし会えば必ず嫌味を言われるでしょ?そうなったら折角のプロムが台無しになるじゃない?だからあたしの分ま...
つくしは相変わらずあまり寝られなかった。そして勉強をつづけた結果、思いのほか好成績を残すことが出来た。それは自分でも信じられない成績だ。その日、担任に呼ばれたのだが、それは特待生に推薦するという話だった。思いがけない話につくしは驚くが嬉しくて仕方ない。英徳には特待生制度がある。つまり一年間の授業料が免除される。ほとんどの学生は特待生に推薦された時点で辞退する。お金持ちの子息ばかりでお金に困っていな...
「類君。ありがとう。」「いや。これくらいどうって事ない。」類は花瓶の水を入れ替え病室に置いたところだ。母親が病気で手術をすると聞いたのはNYから帰国後すぐの事。急いで帰って来いという雰囲気ではなかったが、日本では大河原主導の元、司と牧野の恋を応援するプロジェクトが立ち上がっていた。早々に参加するつもりはないと告げていたが、あのまま日本にいたら二人の状況を逐一報告される。それが嫌でとりあえずフランスへ...
ロスに着いた類は、タクシーに乗り込むと椿の家へ向かった。驚いたのは椿だ。「えっ? 類? どうしたの? 突然。」「牧野は? ここに牧野が居るんだよね?」類は椿に問いかけながらも腕の中に居るアイラをジッと見る。黒い髪にぱっちりとした瞳。椿によく似た愛らしい顔だ。一方のアイラは知らない男性にジッと見つめられ椿にしがみつきながら泣く。その姿は空港で見た牧野と赤ちゃんの姿に瓜二つだ。ここであの時の赤ちゃんは...
ロスに戻ったつくしは、一週間の休暇を貰い家でレオとアイラと遊んだ。子供の相手は体力を使う。おかげで夜は何も考える事無くぐっすり眠れた。そして一週間後、ロバートが一か月の予定表を持ってきた。移動日、仕事日、休養日、そして移動を繰り返している。『つくしの人気がうなぎ登りで、日本の服飾メーカーがスポンサーになった。そこが袴一式を提供してくれる。 すでにホテルへ運んでる。もちろん終わればそこで回収され洗濯...
部屋に入った類は、心穏やかではない。少々佳代が誤解している物の、俺がごみ箱に捨てた指輪とハンカチを牧野に返している。正直に『ごみ箱に捨てていた』と話しただろう。だから牧野は俺はもう牧野の事を思っていないと捉え、昇華という言葉を使った。でも疑問は残る。空港で見た外国人の男性と子供は誰だ?この家にも牧野は一人で来た。もし既に結婚したのであれば、夫と子供も連れてくるはずだ。とにかく総二郎に聞かないと。既...
類はリビングに置いている写真立てを手に取る。そこには袴姿のつくしの姿。場所はどう見てもここフランス邸の玄関だ。そこに使用人がやってきて急いで窓を閉め倒れた写真立てを戻し始めた。『ちょっと教えて欲しいんだけど、この写真は何時撮った?』『約二週間ほど前でしょうか?』二週間前?という事は、牧野はここに居た?袴を着ているが卒業式か?いや、フランスには卒業式という物は無く、卒業の許可が出たら大学に卒業証書を...
フランスに着いた類は、その足で家へ向かった。「いらっしゃい類君。」「ただいま。」ニコニコした笑顔で出迎えた麗だが、類の表情がイマイチであれ?と思う。予定ではニヤニヤした笑みが押さえきれず、ルンルンとした足取りで開口一番『牧野ともう一度付き合うことにした!』と報告すると思っていた。それが全く違い、サッサと自室へ入っていった。つくしちゃんがここに来たとき、類君と会ってみると言っていた。その為、フランス...
つくしは電車を乗り継ぎお台場まで来た。そして自由の女神に向かって歩く。一年半前もそうだが、この付近はやたらとカップルが多い。みんな仲良く手を繋いで歩いている。自分も以前は同じように温かい手をしっかり握っていたのに、、と思うと、今更ながら辛い。ただあの時の自分の選択を後悔したくない。あの気持ちのままでは類に向き合えないし笑う事すらできなかった。けど今の気持ちになるまでに時間がかかりすぎた。西門さんも...
茶道の後、蕎麦屋で昼食を取り、つくしはロバートとレオを連れ葉山の家へ向かった。今、どういう状態になっているのか見たかったからだ。すると管理をしてくれる人が待ってくれていた。麗に任せっきりでどういう人が管理しているのか知らなかったが、気さくな女性で安心する。家も雨戸を開け空気の入れ替えやこまめに掃除をしてくれていた。「ありがとうございます。」「いえ。 どこか気を付けて欲しい所とかありましたらおっしゃ...
道明寺邸に到着すると、タマに出迎えられる。「お帰り。 つくしさん。」「タマさん。 お久しぶりです。 お元気でしたか?」二人はしっかり握手する。つくしの目には、また一回り小さくなったように見えるタマだが、まだメイド服を着て現役のようだ。「あぁ、なんとかね。 それにこんなかわいい子供たちを見られたし、まだまだ長生きしないとね。」「はい。 是非是非。」つくしは客室に荷物を置くと、早速庭からバラの花を数本...
つくしとロバートが羽田空港に到着した。『日本は治安が良くて助かる。 ずっとつくしを気にすることなく観光が出来たから。』『確かにその点は良いよね。 それに親切な人が多いし。』と言いながらゲートを出る。するとそこには椿とレオ、そして椿の腕の中にはアイラがいた。『つくし! こっち! 待ってたよ!!』『つくしちゃ~ん。』手を振る三人の元へつくしは駆け寄る。『お久しぶりです! 椿お姉さん。 レオ君、元気にし...
9月になった。類は、フーと大きく息を吐き、首をコキコキ鳴らす。既に20時を超えそろそろ帰ろうかというところだ。一週間後にフランス出張がある。それまでに国内の仕事を片付けておきたい。その前に北海道出張もある。約三年前にオープンした施設の現状把握だ。既に数店舗空きが出ており、これ以上の撤退は避けたいところだが、新たなテナントは何を誘致すれば良いか、それが纏まらない。とりあえず現地へ行って考えるつもりだ...
つくしは麗と共に花沢邸へ。その車中もロスでのつくしの生活を麗が聞きまくる。椿とその夫によくしてもらい、子どもたちに癒され楽しい日々だと分かりホッとする。言葉の壁も楓が家庭教師を雇い、大学が始まるまでにとりあえず何とかなった事。その大学には留学生が多く、同じように英語に不慣れな学生たちもいた事。その学生たちにアメリカのクラスメイトが手を差し伸べ充実した学生生活が送れ、無事卒業できた事などを伝えた。麗...
フランスに着いたつくしを出迎えたのは麗だ。「つくしちゃん! 久しぶり~!」その声にボディガードがサッとつくしをガードするように前に出る。今回は初めての海外巡り。治安が良くない地域もあるし、少しずつ人気が出てきたつくしのファンが押し寄せる可能性もある為、ロバートは二人のボディガードを同行させた。『大丈夫です。 危険人物じゃありませんから。』それはロバートにも分かる。相手の女性もボディガードが付いてい...
ただいま公開しているイベントですが一部の方で読めない状況となっております。iPhoneを使用している方が多いようなのですが取り急ぎ下記を参考をしてください。お手数をおかけいたします。類誕イベントサイトにお越しの皆様へイベントサイトにお越し下さり、ありがとうございます。今回読者の方より「サイトが見られない」というお話を伺いました。幾つかの原因が考えられますので、下記に方法を記載致します。ご対処いただいたう...
つくしとシンディが友達となったことで、口調は打ち解けた物に代わり、目の前の三段トレーのケーキやスコーンを摘まみながら話は弾む。年齢を聞くとつくしより三歳年上。つまり司より二歳年上だ。だが会話をしていても偉そうな口調は無く、フレンドリーで話しやすい。『つくしは司の友達と付き合ってて別れたと言ったけど何があったの? 浮気?』『浮気というか、、、シンディと同じような感じ?類や道明寺の幼馴染の女性が類と仲...
つくしはロバートと共に、サンフランシスコ、シアトル、ソルトレイクシティ、ミネアポリス、シカゴ、アトランタ、ワシントンと周りニューヨークに着いた。そしてニューヨークのメープルに入った時、司が出迎えた。「よぉ! 牧野! 卒業おめでとう!」手には花束を抱えており、それをスッと渡す。「ありがとう。 それよりどうしてここに?」「三日前に仕事でここに来てよぉ。 その時、お前が来ると知ってさ。何時もレオとアイラ...
今年もこの季節になりましたね。是非楽しんでください。この企画が進行中はまさにWBCで日本が賑わっている頃でした。大谷選手を見ていると我が家のお話の空君を思い出しました。(『青い空』『空は青色』の空君です)まるで大谷選手=空君と言う感じに思え、準決勝、決勝とハラハラドキドキしながら見て拍手喝采を贈りました。久しぶりに明るいニュースで嬉しかったです。今年こそ明るい年になって欲しいですね。boîte à cadeautea...
7月。つくしは大学を無事卒業した。友達も大勢出来、その人達との別れを惜しむ。留学生が多い事から卒業後はそれぞれの国に帰りなかなか会えない。皆はハグしあい涙を流すものまでいる。それ位仲の良い学年だった。『つくし! 絶対ドイツに来たら連絡してね。』『インドに来たときもな!』つくしはウンウンと頷きながら三日後からの予定表を取り出す。そこには日付、国、場所、ホテル名が書かれている。今まではアメリカ国内だっ...
4月になり、類は正式に花沢の社員となった。肩書は取締役課長という物。取り締まりが付くことから会社登記にもしっかり類の名前が記載され、一般社員とは違い責任も伴う。もちろん管理職となる為労働基準法が適用されない。それは仕方ないと受け入れている。とにかくしっかり仕事を熟し、自分の結婚に誰からも何も言われないようにしたい。その為には仕事もしっかりやるのみ。何より優秀な田村という秘書が付いているのはありがた...
2月。椿が元気な女の子を出産した。その二日前から椿は入院しており、レオはつくしと留守番をしていた。夫は立ち合い出産の為、ずっと椿に付きっきりだ。こういう点もつくしは良いなと思う。日本でも増えてきたが、まだまだ立ち合い出産は少ない方だ。生むのは女性しかできないが、生まれたばかりの子供は夫と共に見て感動を味わいたい。ふと自分がベッドに横になり強く手を握り励まされている場面を想像する。その握られている手...