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リエミブログ https://riemiblog.blog.fc2.com/

不思議な展開をみせる、オリジナル小説、 ほんのり奇妙な短編・ショートショートや、 中編小説を書いています。

◆小説一覧リスト https://riemiblog.blog.fc2.com/blog-entry-2.html  読んで感じたこと、思ったことなど、  ひとことでもいいので、  作品へのご感想をお待ちしています。

リエミ
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2017/10/28

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  • ソレイユの森 9 傍観者

    警官たちの黒い帽子が、夕日に艶やかに照らされている。 西日の赤い光の中で、主人のいなくなった家の中や周辺を、彼らはアリのように行ったり来たり、せわしく動き回っていた。 ソレイユは暖炉の部屋の窓際に、椅子を横向きにつけて座っていた。 この位置なら、午後からの長い陽を浴び、十分に充電することができる。 以前の失敗を活かす、自身の学習機能の結果だった。 警官たちは、ラボや温室から草花を採取したり、暖...

  • ソレイユの森 8 命令

    丸本はしばらく身動きが取れなかった。 すべては、一瞬のようでいて、またスローモーションのようにも見えた。 頭の中で疑問と恐怖が入り混じる。 滑落した。周一さんが、事故に遭った……。 丸本は慎重に、ゆっくりと崖に近寄って行って、下を見た。 吸い込まれるような落差があった。その底で、うつ伏せに倒れている周一が、動かない。「周一さん!」、丸本が何度か叫んだけれど、答えは返ってこなかった。 携帯電話を取...

  • ソレイユの森 7 約束

    薬は、二つ用意した。 親指ほどの、小さなガラス瓶に入れ、一つを資料と一緒に、鞄の中にしまった。 紛失を恐れて、もう一つは、ここに残して行くことにする。 もともと生えていた桜の木が、庭先やレンガの道に、柔らかな絨毯を敷いた。 暖かい日差しを浴びながら、周一はソレイユと並んで、家の回りを歩いた。 これから、しばらく留守にする。こうして二人で歩くのは、当分ないだろう。 歩きながら、家に隠した薬の場所...

  • ソレイユの森 6 目覚め

    ここのところ降り続いた雨が、冷えて雪に変わった。 降り積もる音は静寂だったが、気配で分かった。 家は白い幕に包まれ、空気が冷蔵庫のように、部屋中を低い温度で漂った。 大きな暖炉の前に、あぐらをかいて座り込み、資料をめくっていた周一の耳に、遠くの方で、ゴトン、という何かが倒れる音がした。 スリッパをはいた足音を響かせて廊下を曲がり、音の正体を探す。 中庭の温室で、水やりを任せていたソレイユが、床...

  • ソレイユの森 5 日光浴

    ここに来て二度目の秋が訪れた。 木々は鮮やかに紅葉し、木枯らしに落ち葉がカラカラと舞う。 少し肌寒くて、人恋しくなるような季節だった。 周一は髪を切り、白髪を黒く染め、軽くクシを入れた。 髭も剃り、薄い白衣の代わりに、薄茶色のコートを羽織った。 小奇麗にする必要はなかった。しかし、毎日会う男の風貌が、自分とは不釣り合い過ぎた。 黒い、タイトなスーツを着こなす、青い眼のソレイユ。ソーラーパネルの...

  • ソレイユの森 4 マネキン

    丸本は毎日同じ時間にやってきた。 周一の日常に食い込んでくる、丸本という男の存在。 何度「必要ない」と帰しても、次の日にはまた現れる。 その男の素性が、知りたくもないのに周一には分かってきた。 都会で生まれ育った。機械工学にたずさわってきた。物作りが好き。ビールをよく飲む。 手土産にビールの缶を何本か持ってくることもあった。 ふもとの町まで、買い出しに行かなければ手にできないので、唯一、周一に...

  • ソレイユの森 3 訪問販売

    「ごめんください」 来客の訪問は突然だった。 長い間、誰とも話さず一人だったため、周一は声の出し方を忘れていた。「……はぃ、なんで、しょうか」 声はかすれていたが、なんとか出るということが分かってほっとした。 実験記録用のレポート用紙を、周一は小脇に挟んだまま、天井の高い玄関ホールで、久々に人と会話した。 髪は耳より下に伸び、白髪も目立ち、白衣は土に汚れている。 そんな主人を見ても、訪問者の顔はに...

  • ソレイユの森 2 温室栽培

    山奥の開けた土地に、その廃墟を発見したのは、偶然だった。 人通りのない獣道を通って、山頂付近まで歩くと、突然、視界が開けた。 雑草が生い茂る地面の所々に、赤茶けたレンガが埋もれていた。 レンガの道のその先に、崩れかけの古びた洋館が建っていた。 外国人の別荘のようだが、すでに住居として使われていないようだった。 ツタが伝った壁や屋根は、コケに黒く汚されている。 窓は割れ、ボロボロに擦り切れたカー...

  • 月のライン 8-4

    オープンカフェで紅茶を飲みながら、町の通りを見ていると、じつにさまざまな人が行き交っていることに、気がついた。 杖をついたお爺さんや、にぎやかにたわむれる子供たち。 木材を運ぶ大工。 釣竿を下げた漁師。 肌の色の違う人々。 写真を撮っていく人。 スケッチをする人。 知り合いと出会い、急に立ち話をし始める人……。 同じような毎日でも、1日として同じ日はない。 見ていて飽きないな、とメルは思った。 ...

  • 月のライン 8-3

    リカはレジカウンターの前に立ち、商品の在庫表に目を通していた。「店長、そろそろイースターエッグを仕入れたほうが、よくないですか?」 店長は店のすみに、大きな全身鏡を置き、自分に似合う服はどれか、店中の洋服をあてて見ていた。 足もとには色鮮やかな布や、たくさんのハンガーが散らばっている。「うーん? 3月まであと2ヶ月もあるのにー?」 伸びたような声を聞き、リカは額に手を当てた。「季節の先取りをして...

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