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  • 羽田圭介「走ル」

    ★羽田圭介さんの「走ル」(河出文庫)を読んだ。主人公の高校生が、物置から発掘した競技用自転車に乗って、自宅のある東京から青森まで旅をする話。★野宿を重ねながらの1000㎞。自身の体験があるからか、リアルに描かれていた。★昨日読んだ、諏訪哲史さんの「アサッテの人」が第137回(2007年)芥川賞の受賞作。今日読んだ羽田圭介さんの「走ル」は第139回(2008年)芥川賞の候補作。★この時代、他にどんな候補作品があったのか調べてみた。★第137回受賞作は諏訪哲史さん。候補作は、円城塔さんの「オブ・ザ・ベースボール」、川上未映子さんの「わたくし率イン歯一、または世界」、柴崎友香さんの「主題歌」、前田司郎さんの「グレート生活アドベンチャー」、松井雪子さんの「アウラアウラ」★第138回受賞作は川上未映子さんの「乳と卵...羽田圭介「走ル」

  • 諏訪哲史「アサッテの人」

    ★29日、月曜日の朝日新聞「文化欄」で川﨑秋子さんの「直木賞受賞エッセー」を読んだ。同居している猫の話を中心に、「受賞に伴う事務作業に戸惑う飼い主の事情など考慮せずに猫じゃらしを求めている」猫の姿が印象的だった。★今読書中の、川村元気さんの「億男」(文春文庫)でも、3億円の宝くじが当たって動揺する主人公を横目にいつもと変わらぬ様子で眠っている飼い猫(名前をマーク・ザッカーバーグという)が印象的だった。★さて今日は、諏訪哲史さんの「アサッテの人」(講談社文庫)を読み終えた。斬新な作品だった。★主人公は、失踪した叔父が残した日記を編集して小説家するのだが、まずこの叔父がちょっと風変わりな人で、意味不明の言葉(例えば「ポンパー」)を脈略なく発する。普通の会話をしていて突然大声でこの言葉が出るから、周りの人はびっ...諏訪哲史「アサッテの人」

  • 佐伯一麦「ア・ルース・ボーイ」

    ★青春時代はその最中にいるときは毎日必死で生きている。年をとって振り返ると後悔の山だが、それはそれでかけがえのない季節である。★佐伯一麦さんの「ア・ルース・ボーイ」(新潮文庫)を読んだ。17歳の主人公が18歳になるまでの日々を描いた作品。★主人公・鮮(あきら)は母親とうまくいかず、また年上の男性から幼い頃に受けた性的虐待をトラウマとして抱えている。県内有数の進学校に入学するが、その校風に馴染めず、教師から「ア・ルース・ボーイ(だらしのないやつ)」とレッテルをはられる。遂にキレた彼は高校を中退し、自活の生活を始める。★そんな時、かつて憧れていた女性が他の男の子を身ごもり、出産する。鮮は、その子の父親になることを決意して、仕事にも精を出すのだが。★不満を言いつつも、レールに乗って生きていけば楽ができるのに、そ...佐伯一麦「ア・ルース・ボーイ」

  • 金原ひとみ「蛇にピアス」

    ★今日も中学3年生の日曜特訓。昨日は公立高校前期の過去問をやったので、今日は公立高校中期の過去問。できる子、できない子の差が歴然としてきた。勝利の女神が微笑んでくれることを祈るばかりだ。★さて今日は、金原ひとみさんの「蛇にピアス」(集英社文庫)を読んだ。なかなか刺激的な作品だった。村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」も衝撃的だったが、同様に「性」が赤裸々に描かれている。★主人公の女性がどういう容姿なのか捉えにくい。映画を見ているから吉高由里子さんをイメージしながら読んでしまうが、ちょっと違和感がある。★主人公の女性・ルイは、アマという男性と同棲している。彼は赤髪でピアスをあけ、刺青を施し、何よりも特徴的な「舌」をもっている。その舌に感動したルイは、自らも肉体改造を始める。ルイはアマに連れられてシバとい...金原ひとみ「蛇にピアス」

  • 高野和明「ジェノサイド(下)」

    ★中学3年生の学年末テストが終わり、京都の私立高校入試まであと2週間。ラストスパートに入った。★高野和明さんの「ジェノサイド」(角川文庫)下巻を読み終えた。壮大な舞台、緻密な考証。スケールの大きな作品だった。★アメリカ大統領はある極秘作戦を命じていた。アフリカで発生した感染症を封じ込めるという表の目的の裏で新たに生まれた新人類を滅ぼすという計画だった。この新人類はやがてホモ・サピエンスの脅威になるかも知れない。かつてホモ・サピエンスが他のホモ属を駆逐したように。★アフリカでは軍事会社に所属する部隊が実行に当たる。軍事もアウトソーシングの時代か。たとえ作戦が失敗しても国家の首脳が責任を回避するためか。★一方、日本ではある大学生が父親から託された新薬開発に挑む。アフリカと日本、遠く離れた彼らが不思議な縁でつな...高野和明「ジェノサイド(下)」

  • 絲山秋子「勤労感謝の日」

    ★猛烈な寒波。京都南部でも粉雪が舞う。中学3年生の学年末テストは2日目。寒い中、みんな頑張っている。★さて今日は、絲山秋子さんの「沖で待つ」(文春文庫)から「勤労感謝の日」を読んだ。予想以上に面白かった。★主人公は36歳の独身女性。大手企業に総合職で採用されるが、そこはまだまだ女性が軽視される世界。上司のセクハラに及んで大暴れし、退職を余儀なくされる。目下失業中。失業保険もまもなく切れる。★そんな折、ご近所さんから紹介のあった見合い話。結婚願望はないが、義理堅いのと、万が一イケメンだったらと期待しながら受けたものの、全くの期待外れで途中退席。憂さ晴らしに後輩を誘って飲み歩くという話。★何しろ文章が面白い。アウシュビッツや松岡洋右の国連脱退など高尚な話題が出るかと思えば、犬の糞を踏んだ話、生理の話など。ヤサ...絲山秋子「勤労感謝の日」

  • 牧田真有子「桟橋」から

    ★共通テストの自己採点が終わり、2次試験の申し込みが始まった。★今年の国語、小説は牧田真有子さんの「桟橋」から出題。2017年発表の作品だから非常に新しい。例年は昭和初期頃の私小説がよく出るように感じるので、意表をつかれた。★牧田さんは京都府出身の方のようだが、よく知らなかった。出題された「桟橋」も初めて聞く題名だった。★出題部分は、主人公のイチナの家に8歳年上の「おば」が居候するところ。イチナが幼い頃(おばが中学生だった頃で、彼女は奇想天外な発想と芸達者ゆえ、児童公園で子どもたちの人気を集めていた)の思い出を語り、劇団に籍を置きながら居候を転々とするおばの不思議な存在を考えるというもの。★結構地味な作品だが、前後を読んでみたくなった。残念ながら単行本化されていないし、掲載誌(「文藝2017年秋季号」及び...牧田真有子「桟橋」から

  • 立松和平「金魚買い」

    ★自民党・宏池会(岸田派)は解散するようだ。一方で麻生派は存続するとか。解散する派閥は「旧岸田派」などと呼ばれるようになるだろうが、リクルート後の30年前の繰り返しで、世論の当面の批判をかわすための煙幕か。時がたてばまた再結成されるのは目に見えている。内向きのゴタゴタより、他にすることがあろうに。★さて今日は、立松和平さんの「卵洗い」(講談社文芸文庫)から「卵買い」と「金魚買い」を読んだ。★戦後まだ日が浅い、昭和20年代のある家族の風景のようだ。主人公はまだ幼く、彼の目を通した父母や近隣の人が描かれている。★コンビニなど全くなかった時代。少年の家は小さな食料品店を営んでいた。父親は生産者から卵を仕入れて来てはきれいに藁くずの上に置き店で売っていた。接客など店を切り盛りするのは母親の仕事。食パンの切り売りや...立松和平「金魚買い」

  • 高山羽根子「居た場所」

    ★朝から月に1度の診察。といっても血圧と血糖値を測り、ひと月分の薬をもらうだけ。ドクターが80歳を超えた高齢の方なので、自分の方が元気だなぁと思った。★新規入塾の問い合わせが2件。1月だけで4件目だ。何も宣伝をしていないのに口コミで広がってくれる。ありがたいことだ。★さて今日は、高山羽根子さんの「居た場所」(河出書房新社)を読んだ。比較的短い作品なので読みやすかった。ただ内容はわかったような、わからないような、読者のイマジネーションに委ねられる作品だった。★中国南部かベトナム辺りから介護研修で日本に来た女性。縁あってか日本人の男性と結婚する。入籍の挨拶を兼ね二人は故郷の離島に赴き、それから彼女が初めて一人暮らしをしたという町を訪れる。しかし、町の姿はすっかり変わっていた。★冒頭から出てくるタッタと言われる...高山羽根子「居た場所」

  • 山田詠美「風葬の教室」

    ★塾生を見ていて、小学5年生の女子の人間関係の複雑さを思う。年齢的に不安定な時期なのだろうが、仲良しグループかと思いきや翌日には絶交していたり、絶交したのかと思ったらまた仲良くなっていたり。★よく言えば人付き合いの距離感を学んでいるということだろうが、異性(同学年の男の子はまだ幼い)や教師(好き嫌いの差が激しい)との関係も絡んで揺れ動いている。親同士の人間関係が絡んでいる時もある。★今日は山田詠美さんの「蝶々の纏足風葬の教室」(新潮文庫)から「風葬の教室」を読んだ。★主人公は小学5年生の女子。彼女が転校した日から物語が始まる。初日から値踏みが始まり、いわばお局たちに気に入られなければ、排斥、集団いじめへと発展する。きっかけはごく些細なことでも。★教師は彼女たちを子ども扱いしているが、現実は意外と深刻だ。★...山田詠美「風葬の教室」

  • 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」

    ★冷たい雨が降る。どこにも行けず、中学3年生の「土曜特訓」。来週は学年末テストだ。★疲れた頭には酷だが、円城塔さんの「オブ・ザ・ベースボール」(文春文庫)にチャレンジした。★ある町。退屈この上ない町だが、年に一度(平均的、正規分布的にそうなのらしいが)、空から人が落ちてくる。なぜ落ちてくるのかはわからないが、落ちてくるからには救助しなければならない。ということで、結成された9人の救助隊。★ユニフォームとバットを身に着け、それぞれのポジションに散らばり、落ちてくる人に遭遇したら、バットで空に打ち返すらしい。目下のところ救助できた確率はゼロ。結局は肉の塊となったそれを片付けるのが仕事になっている。★物理法則や確率論が散りばめられ、滔々と語られているが、結局未消化で読書を終える。★小説の世界の奥は深い。こうした...円城塔「オブ・ザ・ベースボール」

  • 山田詠美「生鮮てるてる坊主」

    ★山田詠美さんの「珠玉の短編」(講談社文庫)から「生鮮てるてる坊主」を読んだ。なんか背筋が寒くなる話だった。★登場人物は3人。男一人と女二人。仮に女をA、Bとすると、男と女Aは夫婦で、女Bはこの夫婦の友達づきあいをしている。特に、男とは結婚前からのつきあい。とはいえ、二人に恋愛感情はなく、もちろん性的な関係もなかった。★男の妻である女Aがちょっと変わったタイプで、人間関係で何かトラブルを起こすたび、男と女Bがフォローするといった関係だった。★女Aもこんな男女の「友情」を認めているはずだったのだが・・・。★モノは取りようで、悪意の目で見れば何でも不都合に見えてしまう。理屈の通じない人と付き合うのは大変だ。このしがらみから逃れる唯一の方法は、付き合わない、かかわらないことなのだが。☆ふと気が付くと今年も20日...山田詠美「生鮮てるてる坊主」

  • 中島敦「悟浄歎異」

    ★第170回芥川賞・直木賞の発表から一夜が明けた。芥川賞は前評判通り九段理江さんの「東京都同情塔」だったが、混戦の直木賞は大方の予想がはずれて、万城目学さんの「八月の御所グラウンド」だった。ノミネート6回目の受賞ということで、実力は認められながら「ようやく」といったところか。★京都(あるいは近畿圏)を舞台とした異界モノは「万城目派」と「森見派」に分かれるらしい。森見さんも遠からず直木賞を受賞されるかも知れない。★何はともあれ、権威ある賞は斜陽の出版界には朗報だ。「八月の御所グラウンド」を購入しようと思ったら在庫切れ状態だった。文庫化まで待つか。★手元にあった万城目学さんの「悟浄出立」(新潮文庫)から「序」を読んだ。「序」では作家となった万城目さんが本作を書くに至った動機を書いている。万城目さんが「西遊記」...中島敦「悟浄歎異」

  • 九段理江「東京同情塔」

    ★九段理江さんの単行本「東京同情塔」(新潮社)が届いたので読んだ。あふれんばかりの言葉に圧倒された。★東京都の中心部に建てられた「東京都同情塔」。別名「シンパシータワートーキョー」というが、要は刑務所だ。その設計をした人物が主人公。★巷にあふれるカタカナ語への皮肉。差別語など不適切な言葉をカタカナにすることで何となく納得している現実。今はまだホモ・サピエンスがAIを扱っているが、遠からずAIに屈するような予感。★難解な文脈の狭間に見える「理解できる世界」。私の頭脳で「理解できない世界」と「理解できる世界」を行ったり来たりする奇妙な感覚。★最終盤に至ってそもそも「塔」あるいは人間の手による「造形物」とは何か。それを生み出す人間とは何かと思い至らしめる。★渋谷の「忠犬ハチ公像」や京阪三条駅の「高山彦九郎像」は...九段理江「東京同情塔」

  • 吉村昭「光る藻」

    ★株価が高騰している。バブリーなはずなのにまったく実感がない。1980年代とは明らかに違うなぁ。★冬期講座、模試、英検、共通テストと一連の行事が終わり、次は中学3年生の学年末テスト。そして受験にまっしぐらだ。塾業界にとっては正念場。★今日は吉村昭さんの「遠い幻影」(文春文庫)から「アルバム」と「光る藻」を読んだ。どちらも、人生のある点の一風景という感じ。★「アルバム」は主人公が家を新築するため、古家を解体するシーンから始まる。希望と郷愁が入り乱れた感情。そこで主人公はある男と出会う。彼は廃材をトラックに積んでいた。その風貌から格闘技をしていたようだ。主人公はボクシングが好きだったので男に話しかけると、男はかつて自分が活躍した姿をスクラップしたアルバムを主人公に渡した、という話。★「光る藻」は食べるものがな...吉村昭「光る藻」

  • 小池真理子「千年烈日」

    ★正月、久々にドラマ「恋人よ」(1995年)を観た。男と女のドロドロとした愛憎劇だったが、最終回はセリーヌ・ディオンさんの「ToLoveYouMore」が素晴らしく、とても感動した。★男女関係ということで、小池真理子さんの「玉虫と十一の掌編小説」(新潮文庫)から「千年烈日」を読んだ。★妻と二人の男の子の父親である男、夫と一人の娘の母親である女。この男女がいわゆるダブル不倫に至る。★家族には秘密で付き合う二人。1年間秘密を通せた。男は亡き父母の墓参りに女を誘う。墓に花を供えながら女はある既視感に陥る。★輪廻転生なのだろうか。生と死、生と性。人間の心の深いところをくすぐる作品だった。★二人の行く末が心配ではあるが、それは読者が思い悩んでも仕方のないことだ(笑)。小池真理子「千年烈日」

  • 映画「駅 STATION」

    ★今朝の朝日新聞「天声人語」。先ごろ亡くなった八代亜紀さんへの追悼文のようだった。筆者の気持ちが伝わってきた。★そこで紹介されていたので、映画「駅STATION」(1981年)を観た。以前観たことがあるけれど、あらためて観ると大人の恋が身に染みる。★孤独な男を高倉健さんが、孤独な女を倍賞千恵子さんが演じていた。高倉さんは渋く、倍賞さんは美しく。紅白のテレビを観ながら、日本酒を酌み交わすシーン。そこで流れる八代亜紀さんの「舟歌」。もはや無駄なセリフはいらない。★「間」が心に響く映画を久しぶりに観た。★脚本、監督、俳優、そして歌が揃った素晴らしい作品だと思う。日本酒が飲みたくなった。映画「駅STATION」

  • 今村夏子「チズさん」

    ★年末から続いた冬期講座最終日。わずか10日間だったが、出席した生徒はそれぞれに力をつけてくれたと思う。近隣の小中学校は明日から新学期。朝、ちょっとゆっくり寝れそうだ。★今村夏子さんの「こちらあみ子」(ちくま文庫)から「チズさん」を読んだ。とても短い作品。★「私」の近くに「チズさん」というおばあさんが住んでいたという。このおばあさん、年をとったせいか、身体が曲がりまっすぐに立てない。言葉も「みきお」としか発しない。「みきお」はおばあさんの子どもで離れたところに住んでいるという。★小学生を見れば「みきお」と呼び、おばあさんは認知症が進んでいるのかも知れない。★最初は介護モノかと思いきや、本当の家族がやってきてから雲行きが怪しくなる。★「私」っていったい何者なのか。そもそも現実世界の存在なのだろうか。答えを示...今村夏子「チズさん」

  • 松岡圭祐「高校事変」

    ★今朝は模試だったので7時起き。しばしば眠気に襲われながら、松岡圭祐さんの「高校事変」(角川文庫)を読み終えた。★人気取りもかねて総理大臣が訪れた高校をテロ集団が襲撃する。多くの教員や生徒が犠牲になり、高校が占拠される。★危うく難を逃れた総理大臣。生き残った人々もいくつかの教室に分かれて息をひそめる。そんな彼らにもテロ集団が迫る。★彼らの目的は総理大臣の拉致か。そんな時、ありきたりの武器を手作りし、一人の女学生が立ち上がる。★彼女はかつて大規模な無差別テロを起こした「半グレ集団」の指導者の娘。世間からの偏見にさらされながら、今は普通の女子高校生として日々を送っていた。そんな彼女の幼いころから鍛えられた技術が生かされる。★「ダイハード」のような戦いが始まる。「事変」には黒幕がいた。☆女子高生の生い立ちは大規...松岡圭祐「高校事変」

  • 小川糸「季節はずれのきりたんぽ」

    ★冬期講座はあと1日、8日の成人の日を残すのみ。明日は今年度最後の五ツ木・京都模試だ。今年度ももうすぐ終わる。1年が早い。悔いを残さず、日々を過ごしたいものだ。★小川糸さんの「あつあつを召し上がれ」(新潮文庫)から「季節はずれのきりたんぽ」を読んだ。★この物語に登場する主人公(40代の女性)の父親も体調の不良を訴え、受診すれば即入院。あれよあれよと言う間に亡くなっってしまう。あまりの急展開に主人公自身も母親も現実を受け入れられない様子。★父親は世渡りが下手で、存在感を示せるのは家庭だけ。向田邦子さん描く「父親像」のようで、なかなか気難しそうだ。しかし、そんな気難しさも亡くしてみれば懐かしい。★主人公と母親は、父親を偲んで、梅雨時だというのにきりたんぽ鍋をつくる。しかし、どうも味が変だ。実は・・・という話。...小川糸「季節はずれのきりたんぽ」

  • 笙野頼子「二百回忌」

    ★正月三が日も自習室を開けていたので、受験生たちが連日利用していた。明日からは平常通り。★年明け早々、大地震、航空事故と波乱続きだ。「やばい」という言葉を何度聞いたことだろう。被害に遭われた方々は本当にお気の毒だ。天災、人災、内憂外患と、この1年は荒れるのだろうか。★とはいえ、不安におののいても仕方がない。前向きに進んでいこう。★今日は笙野頼子さんの「笙野頼子三冠小説集」(河出文庫)から「二百回忌」を読んだ。「三冠」とは、野間文芸新人賞受賞作の「なにもしていない」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」、そして三島由紀夫賞受賞の本作だ。★難解だということは覚悟していたが、作品の世界観に入るのはなかなか困難だった。★とある村。そこは本家、分家の格式がやかましく、旧来の封建的な雰囲気が漂っている。その村...笙野頼子「二百回忌」

  • 大江健三郎「奇妙な仕事」

    ★今日は大江健三郎さんの「自選短篇」(岩波文庫)から「奇妙な仕事」を読んだ。1380円+税と高価だが、800ページを超える圧巻の短篇集だ。★「奇妙な仕事」は1957年の作品で、後の大江作品に比べて実に読みやすい。★ある学生がアルバイトをすることになった。その仕事というのは、病院で不要となった犬(病院には飼育する予算もないという)を殺処分すること。3日で150匹を殺すという。★この仕事に年配の男と3人の学生(1人は大学院生で、1人は女子学生、そして主人公である)が当たる。年配の男が撲殺し、学生たちはその前準備や後処理を手伝う。★今まで実験動物として飼いならされ、不要となれば処分される。犬たちは死を前に沈んだ瞳で主人公を見つめる。☆作品を読むうちに飼いならされ不条理に殺される犬は、翻って私たち人間のことではな...大江健三郎「奇妙な仕事」

  • 萩原葉子「天上の花」

    新年明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。★大晦日は4時半で塾を閉め、ゆっくりとテレビを観る。NETFLIXで「ボディガードー守るべきものー」「ハート・オブ・ストーン」。★NETFLIXのコンテンツが益々良くなっている気がする。スパイ組織に所属するエージェントを扱った「ハート・オブ・ストーン」など「007」や「ミッション・インポッシブル」を思わせる。★読書は、萩原葉子さんの「天上の花」(小学館)を読み終えた。「日本近代詩の父」と言われる萩原朔太郎の娘が、父を師と仰ぐ三好達治を描いた作品。★前半は、幼少期の主人公から見た三好。三好は朔太郎の妹・慶子に恋焦がれていた。本来なら叶わぬ恋心であったが、モノのない戦時中ということもあり、慶子は三好の申し出を受け入れ、冬の厳しい日本海の街...萩原葉子「天上の花」

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