映画『長いお別れ』の原作本

『長いお別れ』作：中島京子出版：文藝春秋東昇平。子供は娘3人ですが、独り立ちしており、現在は妻の曜子と二人暮らしです。昇平は静岡の都内の中学校教師をし、校長を務めた後も名誉職として図書館長も勤め上げました。そんな昇平が認知症を発症。最初の5年は進行が緩やかで曜子が介護をしていましたが、ここ2年程進行が加速し、傍目にもそれとわかるようになってきました。手に負えなくなった曜子は初めて子どもたちに助けを求めます。手始めは昇平の誕生日にかこつけて、3人娘を東京に呼び寄せることでした。しかし長女の茉莉（まり）は夫が海外赴任で一家そろって日本にいません。比較的頼みやすいのは次女の奈菜ですが、子供二人に夫の両親と同居のため、早々頻繁に頼むのも気が引けます。三女の芙美（ふみ）は独身で一番融通が利きそうですが、フードコーディネイ...映画『長いお別れ』の原作本

京都お土産『福々だるま』と・・・

京都のお土産、もらいました。舞扇堂さんの『福々だるま』です。かわいい「福だるま」のデザイン。食べてしまうにはもったいないですが。箱の中に添えられていた説明書には『幸せのおすそわけ』というフレーズがありました。いいですね。心ガホコホコしました。お抹茶・チョコ・いちご・紫芋・八ツ橋の5種。頂いたのは抹茶と八ツ橋と紫芋。全部ではなく少しづつシェアしてです。それぞれに味と香りがくっきりと際立っています。ぼんやり、曖昧、甘さ控えめでないところがよいですね。以前、TDLのお土産は外れがなくすべて美味しい、なんて言っていましたが、京都のお土産も当たり外れなく、皆美味しいと感じます。今や日本のみならず世界各国から引きも切らず観光客が訪れる超観光都市ですから、それぞれに皆凌ぎを削って、おごることなく切磋琢磨されているからでしょう...京都お土産『福々だるま』と・・・

初読み・田口ランディさんの小説『キュア』

『キュア』作:田口ランディ出版：朝日新聞出版若手医師の斐川（ひかわ）竜介。大学病院の医局に所属する外科医です。局内では週に3回の5時間越えの手術に雑用、他の病院での掛け持ちバイト（院生扱いなので給料はでません）で、いつも疲弊しています。斐川の手術の腕前は相当なものです。斐川には病院勤務時代「ゴッド・ハンド」とあだ名されていました。斐川は患者の肉体に触れると電気的な感覚が上がります。「メスを持つと全身を流れる血脈が読み取れる。メスがアンテナの代わりになって情報を集めてくる。破壊された細胞の電位は低く、その場所を探せばいいのだ。」そして手術後の患者の回復が驚くほど速いのでした。多くの患者にガンの宣告をし、数えきれないくらい手術を執刀してきた斐川自身も肝臓がんに侵され、余命があと1年であることを知らされます。上司や同...初読み・田口ランディさんの小説『キュア』

今村夏子さんの本『あひる』

『あひる』作:今村夏子出版：角川文庫医療系の資格を取るため、日々勉強にあけくれている「わたし」。実家で両親との3人暮らしです。ある時、父親があひるを1羽連れ帰ってきました。なんでも今まで勝っていた人が手放すことになり、それで引き取ることになったというのです。もともと実家ではニワトリを飼っていたため、「のりたま」と名付けられたあひるは庭に置いてあったニワトリ小屋で暮らすことになりました。アヒルがいるということで、近所の子供たちがやってくるようになり、とても賑やかになりました。両親たちも張り合いができて、活き活きとしてきました。しかしのりたまが家にきて3週間ほどたつと、食欲が落ち、動きが悪くなるなど目に見えて様子がおかしくなってきました。原因は急激な環境変化によるストレス。ある時、父親はのりたまを病院で診てもらうと...今村夏子さんの本『あひる』

ガチャガチャ【こんどはロックだにゃん！！】

うちの代表が時折買っておりました。ガチャガチャのにゃんマイムロックバンド編【こんどはロックだにゃん！！】すべて黒猫で構成されたロックバンド。キーボード・ベース・ドラム・ボーカル・ギターと全5種あります。気づけば4種に。ボーカルは不在ですが、代表曰く「自分はキーボードはボーカル兼用とみなしているから、もう完結なのだ」ですって。ガチャガチャは子供が小さなころ、買い物最中にぐずるのをなだめるために1個やらせて握らせていたのですが、気づけば両親共にドップリハマってアンパンマンシリーズは特に楽しませてもらいました。当時キャラのマグネットは1回100円でできたんです。結構かぶったりしましたが、並べて冷蔵庫の扉につけておくのも楽しかったものでした。時々野菜室から冷え切ったマグネットが出てきたりもしました。冷蔵庫の扉を開けた際...ガチャガチャ【こんどはロックだにゃん！！】

田辺聖子さんご逝去

作家の田辺聖子さんが91歳でご逝去されました。思えば自分の田辺聖子さんの作品との出会いは姉の本棚から。『新源氏物語』（上・中・下巻）。これは紫式部の『源氏物語』の現代語訳ですが、とても読みやすくて、おかげで高校の古典に授業はこれで乗り切れたといっても過言ではありません。あらかじめ内容を知っておけば、もハードルがグンと下がるということを身をもって知りました。『むかしあけぼの』もそうでした。田辺さんの語り口は、清少納言を現代にいきいきと蘇らせてくれている感があります。またシャキシャキのお洒落で元気なおばあちゃん・歌子サンが登場する『姥さがり』シリーズ。ガムを噛みながら読んでいて、おもしろすぎてガムを危うく喉に詰まらせそうになったという思い出があります。芥川賞を始め、菊池寛賞、紫綬褒章、文化功労者、朝日賞など数々の賞...田辺聖子さんご逝去

井上靖さんの『風林火山』

気づけば6月。梅雨入りをためらっていた東海地方もようやく梅雨らしい気候となりました。本を読むきっかけはいろいろありますが、この仕事をしているからでしょうか。ご来店いただけるお客様からお話を聞いて、自分が興味を抱いてトライすることが増えました。例えば井上靖さんの作品もそうです。『風林火山』作：井上靖出版：新潮文庫武田信玄の名軍師・山本勘助。諸国をめぐり、国々の風俗を知り、地理にも精通していると名高い人物ですが、長く浪人生活をしており、駿府へ来ても9年の間、今川家に召し抱えられない日々を送っていました。年齢は50近い。背が低く、色黒で目はすがめでちんば。右の手の中指もなし。しかも無愛想で偏屈もの。そんな勘助もとうとう甲斐の武田家へ、士官することができました。勘助は自分を召し抱えてくれた唯一の若い武将、晴信（のちの信...井上靖さんの『風林火山』

山は神秘『新編 山のミステリー』

山は異界。そのことを痛感させられる1冊です。『新編山のミステリー異界としての山』著：工藤隆雄出版：山と渓谷社山小屋の主人や登山者たちが経験したこの世の減少とは思えない奇妙な36の実話が収録されています。山小屋を切り盛りするとある男性の話。まだ知人が経営する山小屋で修行していた時、夜中に目を覚ますと真冬の山小屋の真夜中に、ストーブにあたっている男性がいます。まだ若いその姿はひどく疲れた感じでした・・・。という真夜中の幽霊山で遭難して悲しくも落命してしまった登山者たちの霊の話だけでなく酷い雨と雷が鳴り響く秋の夕方。どしゃぶりの雨の中、山小屋をノックする音がするため、扉を開けるとそこには雨で長い髪を額に張り付かせ、両手を胸元でだらりとさせた女性の姿が。消え入りそうな声で「助けて・・」という声。ネタバレをしてしまうと、...山は神秘『新編山のミステリー』

原田マハさんの『星がひとつほしいとの祈り』

『星がひとつほしいとの祈り』作：原田マハ出版：実業之日本社文庫物語の舞台は、愛媛県松山市。東京の大手広告代理店で働く文香は売れっ子のコピーライター。著作本も出版するなど仕事面では順風満帆です。しかし恋愛に関しては自分の思い通りにいきません。松山へは直属の上司訪れますが、文香はその上司と不倫中。不倫旅行を楽しむつもりがもくろみが外れ、一人道後温泉へ訪れます。ホテルでマッサージを頼んだところ、約束の時間をだいぶ過ぎてやってきたのは小さな老婆でした。しかし老婆のマッサージの腕は大したもので、態度や言葉遣いも非常に丁寧で育ちの良さが感じられました。老婆に興味を抱いた文香は、老婆の身の上話をせがみます。文かに乞われて老婆は身の上話を語り始めますが、それは非常に情熱的でいちずな恋物語でした・・・。上記の『星がひとつほしいと...原田マハさんの『星がひとつほしいとの祈り』