雨の日、キュッキュッと耳障りな音がする方向を見ると、初老の男性が歩く音だった。濡れたフロアタイルに足を引きずって歩くせいで摩擦が不快な音を立てる。不思議なことに同じ人ではなく、何人かの男性が音を立てるのを聞いた。私が知らないだけで、足を引き摺って歩く人は多いのかもしれない。赤ちゃんの泣き声なんかよりもよっぽど不快だった。わたしが読書にフードコートを選んだのがそもそもの間違いなのかもしれないが。 本を読んで知らない言葉を知るのはこんなにもこころが震えるのに、どうして毎日本を読むことが出来ないのだろうか。文字を頭に入れたいのに、ただ目で撫でるだけになってしまう。ページを閉じるとばらばらの言葉が散っ…