温熱の関門越えて薄暑かな薄暑
桜花誰よりうまく見たと自負桜花
いつの日か見たことのある冬景色優しい絵
寒波来て震へてマリンタワーかなマリンタワー
超弩級寒波の前の暖かさ寒波の前
寒空を凌いでうどんにありつけるうどん
ぬつと出て追ひかけてくる冬の月追いかけてくる月
ありとある可能性上げ息白し息白し
青春もエントロピーや萩の花萩の花
彼岸花幾重の悲しみ昇華して彼岸花
台風に飛ばされですむ櫓かな風の盆
台風が来る前の夜そればかり台風
我のいぬ世界もあらむ原爆忌原爆忌
万緑や苦手の道を走りきる苦手の道
日常に負けて木下影に行く木下影
薔薇園で一番花と認定す薔薇園
木斛を見上げる先の日差しかな木斛
後先の分からぬ若葉連なられり新緑
春眠といふ言ひ訳で捗らず春眠
繋がりは強いることなく春寒し繋がり
クリスマスツリーむなしく待ち続け聖樹
張り付きし襟の薄さよ冬の朝冬の朝
やり残すことあまたあり春寒し春寒
ダイヤ変わり会ふ人変はる春浅しダイヤ改正
新しき年と拳を挙げてみる新年
語りたきことのあるらし秋の空秋空
静止してコマ送りして枯葉飛ぶ枯葉
方方に散らばる木の実踏まず行く木の実
始まらぬこと多くして梅雨明けぬ梅雨明け
梅雨の雨集めて飾る車窓かな車窓
とどまらぬ流れ幾筋霖雨かな霖雨
宇宙人めいて青田をながめたる宇宙人
緑陰の中を突き抜け走りゆく緑陰
親猫や微動だにせず探らせる母の愛
旅行雑誌三枚めくり青嵐青嵐
躑躅花ただ背景となるまでに躑躅花
鉄線の花が隣家を一変す鉄線
閉店の時間の早さ春の星春の星
小綬鶏や目覚まし時計の前に鳴き小綬鶏
人並みの途絶え囀り園に満つ囀り
藤の花見る人もなき空き家かな藤
春嵐一気にぺージをもつていき非常事態宣言の中、自由に外出できない日々が続いている。気晴らしのために外出し人気の少なくなった公園ベンチで文庫本を広げる。すると一陣の風がしおりを吹き飛ばしてしまった。まだ少し肌寒い風が吹きすぎる。春嵐
積み残すものあまたあり卒業す卒業
志半ば崩れて春の雪春の雪
疫神や収まりたまへ桜花散る疫神
花見する心を誰か止め得む恩田川沿いにて
土筆伸ばす風の強さや道の脇土筆
親呼べず心尽くしの卒業式卒業式
恐れては何もできない桜咲く恐れては
ひとりでは繰り返すだけ春の夢ひとり
口元の見えぬ人たち春浅しマスク
知らぬ町信号待ちや梅の花梅の花
寒牡丹覗き見る人列をなし寒牡丹
初雪や窓際の子に地の利あり初雪
斜め右向いて黙考大試験大試験
新年の思ひは高く遠くあり新年
子らの目にまだ光あり暮れやすし子らの目に
偽りの星とは知れど聖なる樹偽りの星
万感の物語閉ぢ落ち葉舞ふ落ち葉
テールランプ以外は静止冬の夕冬の夕
マフラーの巻き方あの頃若い頃マフラー
木枯らしやあまりに明るく吹き飛ばす木枯らし
コート着てやや上流の人気取るコート
坂道の陽を集めたる秋の朝秋の朝
秋雨に濡れてはならない贈り物秋雨
台風に吹き飛ばされぬ思ひあり台風
公園へ続く細道彼岸花ヒガンバナ
秋の空医院に母を連れて行く秋の空
秋の雨濡れるに任せ荷を守る秋の雨
満員の上り電車や内に汗汗
夏の湖トランペットの腕上がり夏の湖
猛暑でも過ぎれば侘しくなるばかり過ぎれば
猛暑日のライブ拳の波と波猛暑日
梅雨明けて何からやるか男の子梅雨明け
終末の話ばかりや梅雨の闇梅雨のうっとうしさは精神に働きかけるのかもしれない。かの人は先ほどから悲観論を展開し一向に好転する気配はない。窓の外は降ったりやんだりの雨が続いている。それをとどめることはできないのと同じように、かの人の話も止まるところがない。梅雨の闇
梅雨寒やややためらひてペダルこぐ梅雨寒
父母の介護に向かふ五月晴れ五月晴れ
紫陽花の誇れるがごと線路脇紫陽花
梅雨に入る日は明日かと陽の厳し梅雨入り直前
六月の影長く伸び動かざる六月
万緑を激しき雨が叩きたり万緑
青嵐過ぎて待ち人いまだ来ず青嵐
輪郭を作るが如くつつじ垣つつじ花
大女優の名に恥じず咲く薔薇の話バラの銘
一株の牡丹にシャッター鳴り続く牡丹
主なき宿に鉄線咲きにけり鉄線
鉢植えのバラの蕾や休息日バラの蕾
運動会何とか終はる春時雨春時雨
孝行といへぬ帰省や桜散る落花
花びらに追い越されゆく通学路花びら
新しき教室桜花びら迷い込み戸惑い
入学式震え止まぬは師も同じ緊張
父母の一歩前ゆく新入生入学
春の雨けんかの意味は分からない春雨
大声で桜が咲いたと叫ぶ子ら咲いた
ふんわりとオナガ桜を揺らしけりオナガ
何一つよいことなくて朧月朧月
流れゆく時に任せる身にあれば何を惜しまむとは思へども—斉藤小門(@SaitoKomon)2019年3月13日-19:323月13日(水)のつぶやき
春光やビルの隙間を通り抜け春光
復興の進む港の梅の花震災忌
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