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2017/04/16

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  • 兎神伝(24)

    兎神伝(24)

    兎神伝紅兎〜追想編(10)只今「亜美姉ちゃん!」朱理の声に、愛は現実に引き戻された。亜美は、相変わらず表情のない顔をして、そこに立っていた。「まあ!来てくれたのね!」愛が続けて声を上げた。やはり表情はない。それでも、此処に来てくれた事、会いに来てくれた事、何より、誰かと関わろうとしてくれた事が嬉しかった。この二年…亜美は誰とも言葉を交わさず、会おうとも関わろうともせず、日がな一日、早苗のお気に入りだった楓の木の下で過ごしていた。そして…兎神子(とみこ)達の身体を目当てに男達が現れれば、取り憑かれたように自分から側に寄って行った。男嫌いで知られ、誰に対しても喧嘩腰な物言いをする亜美は、それはそれで人気があった。どんなに嫌っていても、拒否反応を示しても、所詮は兎神子(とみこ)…訪れる男を拒むことは許されない。...兎神伝(24)

  • 兎神伝(23)

    兎神伝(23)

    兎神伝紅兎〜追想編(9)着物「まだかなー…親社(おやしろ)様、いつお帰りになるんだろう…」漸く愛の着付けを終えた朱理は、部屋中、落ち着きなくウロウロ歩き続けていた。「早く、愛ちゃんを見せたいでごじゃる…」言いつつ、大鏡の前に何度も立ち止まっては、結棉に結い上げた髪や襟元を整え鼻の下を擦り…「エヘヘへ…」っと笑っていた。「アケ姉ちゃんったら…」文金高島田に結い上げられ、花嫁衣装に身を飾る愛は、漸く寝息を立てた赤子を愛しそうに抱きながら、クスクス笑って言った。「そんな事言って、本当は、私じゃなくて、自分じゃないの?」「えっ?」振り向く朱理に…「それも、親社(おやしろ)様でなくて、カズ兄ちゃんにね。」愛は、得意の片目瞬きをして見せた。宮司職(みやつかさしき)に奉職したての私に、八歳で一目惚れして、毎日のように社...兎神伝(23)

  • 兎神伝(22)

    兎神伝(22)

    兎神伝紅兎〜追想編(8)爺じやっぱり、話すんではなかった…私は、厨房を手伝いながら、ずっと後悔ばかりしていた。「おーい、爺じ、そっちの皿と大鉢とってくれー」「おーい、爺じ、天ぷら粉と油が足りねー」私は、社の宮司職(みつかさしき)に就いて以来、うちの兎神子(とみこ)共から、敬意と尊敬と言うものを受けた記憶が全くない…良く言えば、此処に来て程なく親しげに接してくれ…何かと甘えてくる可愛い奴だが…「おーい、爺じ、そっちの食器をあらっとくれー」「おーい、爺じ、希美ちゃんが卵を落としちまったー」しかし…悪く言えば、完全、舐められ切っていたのだ。そう言えば…研究熱心な兎神子(とみこ)達は、いつも、私を使って科学の研究をしてくれたっけ…ある時は…染物の実験で、純白の浄衣を見事な桃色に染め上げてくれ…ある時は…物理学の実験...兎神伝(22)

  • 兎神伝(21)

    兎神伝(21)

    兎神伝紅兎〜追想編(7)恋慕「なーーーるほど!!!!それで、親社(おやしろ)様が爺じと言う訳ですかい!!!」これまでの経緯を事細かに話し終え、政樹がポーンと一つ手を打った途端、厨房は大爆笑の渦に包まれた。私は、やっぱり話さない方が良かったかなと、思わず下に目を伏せる。「爺じ?」漸く機嫌をなおして、いつものようにニコニコ笑ってる希美が、小首を傾げて不思議そうに、俯く私と笑いこける皆の顔を、交互に見比べた。そして…皆が笑いこける中、一人、唇を噛んで俯く由香里に目を留めた。見れば、さっきまでの威勢良さと打って変わって、隅でしおらしく立ち尽くし、時折、里一の方を見ては、また恥ずかしそうに俯いていた。「はい、どーじょ。」希美は、狸を象る大福を取ると、ニコッと笑って、由香里に差し出した。「あらあら、お姉ちゃんにもく...兎神伝(21)

  • 兎神伝(20)

    兎神伝(20)

    兎神伝紅兎〜追想編(6)菓子愛の赤子は、由香里の腕の中で、いつの間にかスヤスヤ心地良さそうな寝息を立てていた。何とも言えない、無防備で邪気のない寝顔。別に何を言うでもなく、するでもないのに、この寝顔を見てるだけで、安らかな気持ちにさせられる。加えて、赤子の柔らかで暖かな温もりと、全身から漂う乳の香りが、甘い微睡を誘いだす。「気持ち良い…お姉ちゃんも眠くなってきちゃった。一緒に寝まちょうかねえ。」由香里が赤子に頬擦りしながらクスクス笑うと…「えっ?誰がお姉ちゃんだって?おばちゃんの間違いじゃーないのかな?」こちらは、赤子と違ってまだ飲みたりないらしい竜也が、雪絵の胸襟に潜り込ませた手を蠢かしながら、丸くした目を由香里に向けて言った。「何だって!」忽ち、赤子と一緒に気持ちよさそうに微睡んでいた由香里が、眉にしわ...兎神伝(20)

  • 兎神伝(19)

    兎神伝(19)

    兎神伝紅兎〜追想編(5)母性大鏡の前で、人形のように立ち尽くす愛に、朱理は丁寧に着付けをしていた。何年ぶりだろう…朱理は感慨に耽る。かつて、毎日のように、着せ替え人形のように、新しい着物を縫っては、愛に着せて遊んでいた頃が懐かしい。『やめるでごじゃる!愛ちゃんに、もう、やめるでごじゃるーーー!!!!』一瞬…朱理の脳裏に、あの夜の光景が蘇った。皮剥…それは、例祭の後、赤兎が最初の穂供(そなえ)を受ける祭祀である。この時、赤兎となる少女は、境内中央に儲けられた祭場で全裸にさせられ、周囲で身守る参列者全員に穂供(そなえ)される事になっている。高らかに祝詞があげられる中…剥役と呼ばれる男が、少女の着物を一枚ずつ脱がせる事になっていた。『愛ちゃんにやめるでごじゃる!私が代わるでごじゃる!私が代わるでごじゃるーーー!!...兎神伝(19)

  • 兎神伝(18)

    兎神伝(18)

    兎神伝紅兎〜追想編(4)八重秀行は、木陰に佇み、宿坊二階を見上げる亜美を見つめていた。亜美の眼差しに精彩はなく、顔は無表情であった。愛の産んだ赤子と、取り巻く兎神子(とみこ)達の笑い声…しかし、本当なら一番喜ぶであろう早苗の声がそこにないのが無性に寂しい。『赤ちゃん、聞こえる?今日ね、カズ兄ちゃんに箱車を作って貰ったんだ。』菜穂が和幸の子を妊娠した時…早苗は、菜穂の寝所に通っては、いつもお腹の子に語りかけていた。『箱車はね、兎さんの形をしていて、紅葉(もみじ)の彫刻がされてるの。凄く可愛いのよ。中は凄く暖かくて気持ちよくて、これに乗せて貰うと、どんなに遠くまで行っても、疲れないんだあ。』当時…早苗は、四人目の子を産んだ後、産後の肥立ちの悪さに加え、無理して神饌共食祭に出始めた事で、日増しに体調を悪化させてい...兎神伝(18)

  • 兎神伝(17)

    兎神伝(17)

    兎神伝紅兎〜追想編(3)前進鱶見本社領(ふかみのもとつやしろのかなめ)に通ずる一本道に入って以来、その気配はずっと私達の後を静かにつけていた。此処に私達が辿り着く事を、いつどのように知ったのだろう…いつもそうだ…彼は、私が思うよりも先に私の思うところを察し、そうなる事を望むよりも先に、それを遂行する。そして…私の向かう所には、必ず私よりも先に辿り着く。但し…私に付き従うのも、行き先で姿を現わすのも、私にとってそうする事が必要だと、彼が感じた時に限られる。『困ったものだな…』私は、その気配を感じながら思う。私の前では、その気配に気づいているのかいないのか、和幸が、希美をあやしながら箱車を押す菜穂を愛しそうに見つめていた。菜穂は、何か話しかけ、ケラケラ笑いだす希美に、巷でよく歌われる旅の歌を、素っ頓狂な声で歌...兎神伝(17)

  • 兎神伝(16)

    兎神伝(16)

    兎神伝紅兎〜追想編(2)難産境内…銀杏の木陰に佇み、亜美は梢を見上げていた。既に葉はなく、代わりに雪が被さっていた。『白い花が咲いている…』早苗の声が、耳奥にこだまする。ふと、隣に聳える楓の梢…『赤ちゃんのお手手、冷たくないかなー。』早苗は、大きく首を反らせて見上げながら、泣きそうな声で言う。『大丈夫よ。ほら、アケちゃんが手袋を編んでくれたわ。』『わあ、小ちゃな手袋がいっぱいだー。』早苗は、亜美が袋いっぱいの小さな手袋を出すと、大喜びで、楓の梢にかけようとする。しかし、届かない。社(やしろ)で二番目に背が低い早苗は、背伸びしても、飛び上がっても、届きはしなかった。『やめとけ、チビ。おまえには、届かねーよ。』何処から見てたのか、不意に貴之がやってくると、袋ごとひったくり、スルスル幹をよじ登って、枝先に次々と...兎神伝(16)

  • 兎神伝(15)

    兎神伝(15)

    兎神伝紅兎〜追想編(1)覚悟兎喪岬を断崖に沿って下って行くと、やがて、浜に出る。かつて、鰐鮫の背を通り、渡ってきた兎達が辿りついた地であるところから、着浜(つくはま)と呼ばれる。或いは、辿り着いた兎達が、二度と帰れぬ故郷を思い、嘆き悲しんだ所から、嘆浜(なげきはま)とも呼ばれている。断崖の頂きから見渡す景色と打って変わって、ここから見渡す海はとても穏やかだ。漣も緩やかなら、頬を掠める風も静かである。暴れ狂う鱶の群れの代わりに、地平線に向かって飛び行く鴎が、物悲しい鳴き声を上げている。「ここまで来れば、社(やしろ)までもうすぐね。」「ああ、もうすぐだね。」菜穂と和幸は、希美を乗せた箱車を仲良く一緒に押しながら、互いの顔を見合わせ、ニッコリ笑う。「社(やしろ)に戻ったら、ちゃんとみんなに謝るのよ。カズ兄ちゃんが...兎神伝(15)

  • 兎神伝(14)

    兎神伝(14)

    兎神伝紅兎〜惜別編(14)名前成る程、菜穂が苦戦するわけだ…和幸の作った箱車を組み立て直しながら思った。明日は、出発。拾里に訪れる日が、再びあるかどうかわからない。仮にあったとしても、今、ここで暮らしてる人々は、もう殆どいないだろう。しかし…小さな祭りの後、皆で設けてくれた送別の宴は楽しかった。ご馳走の山に目を輝かせる希美の為、甲斐甲斐しく料理を取り分ける菜穂を囲んで、誰もが酒を酌み交わして笑っていた。ちなみに、和幸は、最後まで一杯も呑む事が許されなかった。誰かが側で呑み始めると、和幸もどさくさに紛れて一升瓶に手を伸ばしたが…『駄目!』菜穂が素早く横から奪い取り、鬼の形相で睨みつけた。『そんなあ!お願い、ナッちゃん!一杯だけ!一杯だけ!』『駄目ったら、駄目ーーーーっ!!!』菜穂がどやしつけると…『お酒を呑ん...兎神伝(14)

  • 兎神伝(13)

    兎神伝(13)

    兎神伝紅兎〜惜別編(13)紅兎「お父さん。」和幸が寝床に入ろうとすると、希美の隣りで寝ていた菜穂が、目を開け戯けたように声をかけた。「何だ、起きてたのか。」「うん。何か寝付けなくって…」菜穂はまた、希美の寝顔を愛しげに眺めた。「何か、夢みたい。この子、本当にもう何処にもやられないのよね。とられないのよね。ずっと、私達の子なのよね。」「君の子にしては、大きすぎるけどね。もし、本当に君が産んだのだとすれば、五歳でこの子を産んだ事になるんだよ、お母さん。」和幸も菜穂に負けずに戯けて言うと、菜穂は肩を窄めてクスクス笑いだした。「お父さん、お母さん…」希美は、寝言を口走ると、ニコニコ笑いだした。「此処にいるわ。」菜穂は、希美を起こさぬよう、そっと撫でてやった。和幸は、そんな菜穂を見つめながら、過去に二度、菜穂が仔兎神...兎神伝(13)

  • 兎神伝(12)

    兎神伝(12)

    兎神伝紅兎〜惜別編(12)笑顔岩戸屋敷に戻ると、希美は、最高に上機嫌になった。法被の他にも、シゲが用意してくれたお揃いの浴衣を着て、お揃いの団扇をもち、すっかりお祭り気分であった。「来年、お父さん、お母さん、お祭り行く。」希美は、誰かれ構わず、何度も何度も同じ話を繰り返した。「お神輿担ぐお父さん、お母さんと掛け声かける。一緒に踊る。」「そいつは、楽しみだ。」「希美ちゃん、可愛いよ。お人形さんみたいだよ。」「早く、お祭りの日がこないかねー。」岩戸屋敷の住人達も、希美が同じ事を言う度に、初めてその話を聞くような顔をして、同じ答えを言った。無論…その日は永遠に訪れない事を、皆知っている。祭りの日に此処に戻るどころか、鱶見本社領(ふかみのもとつやしろのかなめ)につけば、程なく起き上がる事も出来なくなり、雪解けを待...兎神伝(12)

  • 兎神伝(11)

    兎神伝(11)

    兎神伝紅兎〜惜別編(11)法被智子と束の間過ごした小屋。中断されたムシロ折り機は、そのままになっている。「トモちゃん…さようなら…」和幸は、溜まった埃を払いのけながら呟いた。明日はいよいよ、岩屋谷を去る。次にここを訪れる事があるとすれば、不治の病に倒れた時だろう。十年後…二十年後…三十年後…その時には、ここで共に過ごした人々は誰もいなくなり、和幸と智子の事は忘れ去られている事だろう。当然…智子と二人で暮らしたこの小屋はなくなり、全く知らない誰かが暮らしている事だろう。「本当に、神職(みしき)になるつもりか?」私が、もう一度念を押すように尋ねると…「決意は変わりません。」和幸は静かに頷いた。「私は、君には、ここの看護人(みもりにん)になって貰いたいと思っている。ここで、ナッちゃんが兎神子(とみこ)を解かれるの...兎神伝(11)

  • 兎神伝(9)

    兎神伝(9)

    兎神伝紅兎〜惜別編(10)幻舞凍てつく天安川の川面に薄氷が張り、風に舞う雪が、河原を銀灰に染める。明け方…刺すような風に頬を炙られ、腰まで伸ばした射干玉(ぬばたま)の髪は、荒々しく靡き狂う。雪に煤ける程生白い肌に、繊細な体躯…何より、美しい細面な容貌は…一目見に、彼が男だと、誰が信じられよう。和幸は、両手に一本ずつ握りしめる鉄扇を広げると、ヒラヒラと空を仰ぎながら、右膝を折って前に突き出し、左片足立ちになる。次第次第に吹雪く風が激しさを増す中…一差し舞い始めた。胡蝶の如くはためく天色の水干の袖…湖上に浮かぶ水鳥の如く地を滑る瑠璃紺の長袴…幽玄か…妖艶か…善悪正邪定まらぬ、夢幻の美…もし、そこに誰かが立ち会っていれば、時を忘れて魅入られた事だろう。あるいは…この吹雪く白い闇の中…厳寒を忘却させ、人を凍死させる...兎神伝(9)

  • 兎神伝(9)

    兎神伝(9)

    兎神伝紅兎〜惜別編(9)面影希美は、スヤスヤ気持ち良さそうに眠っている。時々…「お馬ちゃん、パカポコ、お馬ちゃん、パカポコ…」「ハーシ、ハーシ、美味ちいねー」「お父さんのお魚貰った、お魚貰った…」ブツブツ寝言を言いながら、クスクス笑っている。きっと、楽しい夢を見てるのだろう。今夜は、悪夢にうなされて、オネショをする心配はなさそうだ…和幸は、起き上がって、希美の寝顔を覗き込みながら、その頬を撫でてやる。昼間は、殆ど菜穂に独占されてるが、菜穂も眠れば、ほんの少し自分のものにもできる。と…「赤ちゃん!私の赤ちゃん、何処!赤ちゃん、いない!」突然、菜穂が起き上がったかと思うと、何かを抱くような仕草をした両腕の中を見て…「いない…いない…私の赤ちゃんがいない…」見る見るうちに涙ぐみ、シクシクと泣き出した。「ナッちゃ...兎神伝(9)

  • 兎神伝(8)

    兎神伝(8)

    兎神伝紅兎〜惜別編(8)溺水帰り道…いくら菜穂に撫で回されても全く目覚めなかった希美は、岩戸屋敷に戻り、煮物の甘い香りを嗅いだ途端に目を開けた。クンクン鼻を鳴らして、満面の笑顔になる。「おやおや、希美ちゃん、可愛いのに乗っかってるねー。」「お父さんに作って貰ったんかい。良かったねー。」屋敷の住人達が、希美を背負う背負子を見て口々に言うと、希美は得意げに、お腹の部分に嵌められた仔馬の頭を撫でて見せた。「さあさあ、ご飯ですよ。」百合が、食事係の住人達と鍋を抱えて食堂に入ると、皆、てんでに好きな席について、運ばれる御膳を待った。やがて、みんなで昼餉の感謝の祈りを捧げると、食事が始まる。煮物と汁物各一品、漬物一皿…特に代わり映えない献立だが、皆で作り、皆で食べれば、何でも美味しい。「希美ちゃん、よく食べられるように...兎神伝(8)

  • 兎神伝(7)

    兎神伝(7)

    兎神伝紅兎〜惜別編(7)箱車暁七つ半…雪積もる庭先に座して瞑目…静かに呼吸を整える。ヒラヒラと、粉雪が一雫舞い落ちる。一尺離して左脇に置く、鍔無しの居合刀…狸の頭を象る柄に、胴を象る鞘…胴狸に手を伸ばす。刹那…鞘走る白刃の煌めきは息を凍らす風を切り、粉雪は二つに割れて地に落ちた。朧流居合術雫切り…一つ大きく息を吐きながら、既に鞘に収まる胴狸を再び左脇に置く。空を見上げれば、白む空から、粉雪がさらに舞い落ちる。気づけば、此処に来てもう半月…愛はどうしてるだろう…早く帰らねば…年が明けてしまったら…この雪が消えると同時に、あの子達も消えて行く…愛も…愛の産んだ私の子も…『愛ちゃん…』『大丈夫、怖がらないで…』あの夜…愛は、徐に着物を脱いで産まれたままの姿になると、ニッコリ笑って唇を重ねてきた。舌先で私の口の中を...兎神伝(7)

  • 兎神伝(6)

    兎神伝(6)

    兎神伝紅兎〜惜別編(6)重荷「ナッちゃん、親社(おやしろ)様と何かあったの?」岩戸屋敷を訪れ、数日経った夜。希美を挟んで、布団に入ると、和幸は尋ねた。「何もないわ。」言いながら、菜穂は、希美の頬を撫でたり、軽くくすぐったりする。希美は、今夜も、菜穂と和幸と川の字に寝られて、ご機嫌に笑っていた。「そう?何か気まずい感じがしたよ。」「気まずいんじゃないわ。私、怒ってるの。嘘つきだから。」「嘘つき?」「そう、大嘘つきよ。それより、カズ兄ちゃんこそ何かあったの?時々、親社(おやしろ)様と何か変だわ。」「何、親社(おやしろ)様が大嫌い…それだけさ。」「大嫌い?どうして?」「どうしてって…大嘘つきだからさ。」和幸が言うと、菜穂はクスクス笑った。「私も、あんな人、大っ嫌い!大嘘付きで、みんなを悲しませたり、寂しがらせるか...兎神伝(6)

  • 兎神伝(5)

    兎神伝(5)

    兎神伝紅兎〜惜別編(5)拾里岩屋谷奥深く入ると、冥府ヶ岳を背にして、一件の屋敷が建っていた。岩戸屋敷…岩屋谷に暮らす者達の中でも、完全療養を必要とする者達が暮らす所である。庭先には、様々な花の木が植えられているが、今は皆枯れている。新たな葉や蕾をつけるには、年越しの雪解けを待たねばならないだろう。見れば、一人の老婆が愛しそうに木々の手入れをしていた。「おやおや。カズ君、お帰りかい。」「どうも。トヨさん、今日も精が出ますね。」「いやー、ワシはこの子達だけが生きがいじゃからねー。早く、次の花、咲かないかねー。」果たして、彼女がこれらの木々に花が咲くのを見る事ができるかどうかはわからない。もう、内臓を侵す悪性腫瘍は末期状態なのだ。それでも、彼女は次の花を楽しみにしている。「トヨさん、お久しぶり。」私が声をかけると...兎神伝(5)

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