chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
かずら
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2016/10/28

  • 【政府組織の中で反貧困を唱え続ける】清水康之・湯浅誠『闇の中に光を見いだす 貧困・自殺の現場から』

    あらすじ・概要 自殺対策に関わってきた清水康之と、貧困対策に関わってきた湯浅誠。政府の貧困政策のこれまでとこれからについて、対談形式で語り合う。政府内部から貧困・自殺の政策を打ち出そうとしてわかったことは、官僚や政治家たちの貧困への理解のなさだった。 政府内部から社会を変えようとするのは大変 タイトルから想像したのとは全く違う内容でした。面白くはありましたが。 著者ふたりは、反貧困の活動をする中で政府と関わることになります。政府中から社会を変えようとしますが、貧困に陥る人々への無理解に苦しみます。 活動家が政府と関わるとき、「政府と関わって牙を抜かれてしまった」ということを言う人はいますが、そ…

  • 【ジョジョを怪奇映画へ換骨奪胎】『岸辺露伴ルーヴルへ行く』

    あらすじ・概要 漫画家、岸辺露伴は漫画の取材でオークションに行き、そこで真っ黒な絵を買い求める。露伴は、初恋の人、七瀬に「この世で最も黒い絵」について説明されたことを思い出す。フランス、ルーヴルに向かった露伴は、キュレーターの助けを借りてそこで最も黒い絵を探し出す。 面白かったけれどTVシリーズより展開が遅め 面白かったけれど私はTVシリーズの方が好きだなという感じです。理由は後述します。 最近ではこれほどスケールの大きな日本映画をなかなか見ないので、それだけで楽しくなってしまいます。 ルーブルに実際に行って撮影したのももちろんですが、小道具ひとつ、衣装ひとつから手間がかかってていいですね。 …

  • 【家父長制が否定されなくて怖い】ディズニーアニメ『ライオンキング』

    あらすじ・概要 サバンナの王、ムファサの息子として生まれたシンバは、やんちゃな少年ライオンとして育っていた。しかしムファサを妬んだ王弟、スカーの策略によりムファサは死んでしまう。自分のせいでムファサが死んだと勘違いしたシンバは、故郷を離れてジャングルにたどり着く。 家父長制が否定されなくて怖かった ごりごりの家父長制なのに、そこにツッコミを入れるキャラがいなくてつらかったです。 シンバは父親が自分のせいで死んだということを気に病んでいますが、当時シンバは子供だし、スカーに騙されていた経緯があるのでそこは責任を取らなくてもいいだろうと。 しかも大人になったシンバに、周りの雌ライオンたちが当たり前…

  • ジャック・オ・蘭たんの『喧嘩番長乙女』の実況を見たメモ

    おそらく自分ではプレイしないゲームの実況を見よう、というわけで『喧嘩番長乙女』の実況を見ていました。 まず「喧嘩番長乙女」がどういうゲームなのか説明します。意中のキャラクターとの恋愛を目指す、いわゆる乙女ゲームです。しかし舞台が不良学校でヒロインはそこに男性として入学し、学校を「シメる」ことを要求されます。ヒロインは子どものころから格闘技を習い、けんかがめっぽう強いのです。これだけでも「どういう乙女ゲーム?」という気分になってきますね。 けんかのシーンはリズムゲームになっていて、上手くボタンを押すと攻撃が入るようになっています。 「喧嘩番長」というアクションゲームの姉妹編のような立ち位置らしい…

  • 【間違っててもやろうという申請の仕方】とこり『確定申告アレルギーの漫画家・イラストレーターに捧ぐ 簿記1級経理実務経験5年の漫画家がやってる確定申告のアレコレ』

    あらすじ・概要 確定申告が苦手だったが、簿記を学ぶなどして確定申告について知った著者。確定申告初心者のために、納税のしくみ、確定申告のためにまずやるべきことを解説する。「経費」とは何か、どうやって控除を受ければいいのか……。 よくわからなくてもやろう 副業で稼ぐほどではないのですが、同人誌が思ったより売り上げがあったり、他人の手伝いをしてお小遣いをもらったりということが増えてきたので読んでみました。 結論から言うと「よくわからないから……」と後回しにせずとにかくやれという本でした。失敗してもいい、間違っていてもいいという主張に安心します。 「何はともあれ店に行ったら必ずレシートをもらえ」という…

  • 【ジーニーやジャスミンの解放を描く】ディズニーアニメ『アラジン』

    あらすじ・概要 とある国の泥棒、アラジンは、王国の姫ジャスミンと出会う。逮捕され洞窟に放り込まれたアラジンは、魔法のランプを手に入れる。そこから現れたジーニーは、アラジンに三つの願いを叶えると持ちかけた、ジーニーの力で大金持ちの王子になったアラジンは、ジャスミンに求婚するが……。 執着を捨てるシーンが印象的だった 搾取する側が搾取される側への執着を捨てるシーンが印象的な作品でした。アラジンはジーニーの力で王子様となり、ジャスミンとの婚約にこぎ着けますが、ジーニーの力を失うことを恐れジーニーを自由にしません。最初に「最後の願いではジーニーの自由を願ってあげる」と言ったのに。 アラジンがジーニーの…

  • 【ファンタジーとしてはいいけどミステリとしては物足りなかった】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの逡巡 アウレスタ神殿物語』

    あらすじ・概要 聖女ヴィクトリアは、皇帝を決める選挙を見届けるために王宮に上がる。皇位継承者の投票により、私生児として育った騎士、アドラスが皇帝に選ばれてしまう。皆が投票のやり直しを要求する中、二番目の皇位継承者、レーゼ皇女が投票のやり直しに同意しなかった。皇位継承者の全員の同意がないとやり直し投票ができないため、ヴィクトリアたちはレーゼの望み通り皇帝の死について調べることとなる。 ミステリとしてはちょっとずるだった 面白くはありましたが、謎解き部分にはひっかかるところがありました。以下、ネタバレを含むのでネタバレをされたくない人はブラウザバックをお願いいたします。 いくらつじつまが合っていた…

  • 【老いを描いたシリーズ外伝短編集】上橋菜穂子『流れ行く者 守り人短編集』

    あらすじ・概要 祖国カンバルから逃れ養父ジグロと旅をしているバルサ。バルサはあるときタンダの村に滞在し、死者の幽霊騒ぎを聞く。その死者は、タンダがなついていたおじさんだった。 老いの哀しみと人生を振り返る瞬間と あとがきによると、短編集全体のテーマが「老い」であるらしいです。どれも哀愁漂う、切ない話でした。 「浮き籾」はバルサがタンダの村に滞在する話。 タンダとバルサが日常生活を送っているだけでしみじみとしてしまいます。過酷な旅をしてきたバルサが「普通の生活」に戸惑い、いろいろ考えてしまって他人の親切をうまく受けとることができないのが印象的でした。 「だめ人間だが一部の子どもには人気のあるおじ…

  • 【京橋のキャバレーで昭和と平成を舞った女】高殿円『グランドシャトー』

    あらすじ・概要 義父と結婚させられそうになって逃げだしてきたルーは、京橋のキャバレーグランドシャトーにたどり着く。ルーはそこのホステスとして働くことになった。キャバレーのナンバーワン、真珠はどこか不思議な魅力を持つ女性だった。ルーは寮で真珠と同居することになる。 美しいがどこか危うい女と女の友情 恋愛ではなく、主人公ルーとグランドシャトーのナンバーワン、真珠の家族愛とも友情とも取れない関係を軸に話が進んでいきます。 ルーが真珠に母親を投影する姿は、一見微笑ましく見えても危うさが伴います。ルーが実質的に家族を失い、孤独になってしまってからはその危うさが加速します。 寮でチキンラーメンを食べ、自炊…

  • 【作品内の倫理観がガバガバすぎる】ディズニーアニメ『ヘラクレス』

    あらすじ・概要 ヘラとゼウスの息子、ヘラクレスは、ハデスヘラクレスは、ハデスに人間になる薬を飲まされ人間として生きていくこととなる。自らの出自を知ったヘラクレスは、英雄となり神の一員となることを目指した。そんな折、蠱惑的な美女メガラ(メグ)と出会い、ヘラクレスは好意を抱くが……。 倫理的なツッコミどころが多い ギリシャ神話の世界はもともと現代人の感覚からすると倫理のない社会ですが、神話の倫理と現代人の倫理とのすり合わせができていない作品だと感じました。 例えばヒロインのメグは蠱惑的なキャラクターですが、男にセクハラされて困っていたりハデスに一方的に支配されていたり、男性社会の被害者です。 メグ…

  • 【ハッピーエンドとは思えない結末にやるせなくなる】ミナモトカズキ『怪獣になったゲイ』

    あらすじ・概要 自分がゲイだと自覚する高校生、安良城貴は、ひそかに恋心を抱いていた教師、黒田にゲイという存在を否定しているところを聞いてしまう。それ以来、安良城の顔は醜い怪獣の形になり果ててしまう。黒田も含め、周囲は安良城の顔を元に戻す方法を探るが、黒田にゲイであることを受け入れてもらえない安良城は悩み……。 自分のことを振り返らない人間もいる 徹頭徹尾きつい話であり、自分のことを振り返ってしまう内容でした。しかし、自分のことを振り返らない人間は、永遠に振り返らないという話でもあります。 主人公はゲイではありますが、それ以外では一般的な男子学生です。劣等感にさいなまれることもあれば、怒りを感じ…

  • 【カクヨム発、サスペンスと魔法のファンタジー】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語』

    あらすじ・概要 聖女に選出された理由が不当であると追放されかかった聖女ヴィクトリアは、アドラスという騎士に出会う。彼は、幽霊や精霊が見えるヴィクトリアに「自分が皇子でないことを証明してほしい」と頼んだ。アドラスとともに行動しながら真実を調べるうちに、ヴィクトリアは皇位継承の問題に巻き込まれていく。 展開が早く情報を出し惜しみしない、説明が上手い 展開が早く、情報を出し惜しみしません。そして同時にキャラクターの言動が説明的になりすぎないところが上手でした。 読み始めて20%くらいで、ヴィクトリアとアドラスの倫理観の強い性格、彼らの行動理由、皇位継承のごたごたについて読者に説明し、その上ストーリー…

  • 【別れることも相手への愛情だと受け入れる】草柳和之『ドメスティック・バイオレンス 新版―男性加害者の暴力克服の試み』

    あらすじ・概要 ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)はごく一部の人の不幸ではなく、社会でありふれた問題である。加害男性に暴力をやめさせるには、何ができるのだろうか。暴力を嗜癖のひとつとして、メンタルヘルスの視点で加害への依存をやめる方法を探る。 別れを受け入れることも支援成功である 結論から言うと加害男性に対して劇的に効果のある支援は未だに存在せず、なかなか難しいです。 著者は加害男性の過去のトラウマや虐待経験に着目し、カウンセリングや他の男性との対話から認知の歪みを取っていくことを目指しています。 新鮮な意見だったのは、「加害男性の支援のゴールが離婚でも成功である」という点です。 加害…

  • 【親を世話する苦しみとおかしさをブログにつづる】カータン『健康以下、介護未満 親のトリセツ』

    あらすじ・概要 著者の父はある日視力を失い、母はその視力を失った父を支えていた。しかし介護する・支えられるという関係のストレスからか、ふたりに認知症の傾向が現れる。著者は姉と協力して、思うようにいかない親夫婦を通いで介護するようになる。介護の日々の苦しみとおかしさとは……。 今まで好きだった親が衰えていく姿 ブログの書籍化。 描写はコミカルですが、つらいシーンも多かったです。今まで好きだった親が、認知症によってできないことが増えていくつらさ。そして親夫婦を支える大変さが描かれていました。 認知症になったのにプライドが高く、福祉サービスを受け入れられない母に、著者とその姉は手を焼きます。 ヘルパ…

  • 【現代と地続きゆえにジェンダー観の違いがきつい】ディズニーアニメ『101匹ワンちゃん』

    あらすじ・概要 ダルメシアンを飼うカップルが結婚し、そのダルメシアンポンゴとパーディタもカップルとなり子犬を産む。しかし毛皮に目がない女性、クルエラにその毛皮の美しさを目につけられ、子犬たちは連れ去られてしまう。ポンゴとパーディタは、子犬たちを連れ戻すために大冒険に向かう。 女性を品定めするシーンや良妻賢母像がつらい ディズニーの2Dアニメマラソンをしていますが、その中でもジェンダー観の古さがきつかったです。なんだかんだ昔話をテーマにした作品は「昔に作られた話だから」「王公貴族の話だから」と流せますが、現代社会と地続きの話だとつらさが増しますね。 悪役のクルエラは派手好きで空気が読めなくて残酷…

  • 【鼻・白・杜子春】YouTubeで芥川龍之介の朗読を聞いたので感想を10本まとめた

    久しぶりに朗読が聞きたくなり、YouTubeで青空文庫の朗読を漁っていました。 芥川龍之介の文章の朗読をいろいろ聞いたのでその感想メモです。 ちなみにこちらの朗読プレイリストから視聴しています。 youtube.com 大きな鼻を持つ男が劣等感に苦しむ「鼻」 悪魔の歪んだ愛情とは「悪魔」 煙草をもたらした悪魔の架空伝説「煙草と悪魔」 人の思い込みに関するちょっと不思議な話「貉」 怪物も幽霊も出てこないけれど嫌な気分になる「妙な話」 エンタメっぽい俗っぽさ「アグニの神」 犬が黒犬になって大冒険「白」 カフェの女給の恋における一抹の日常「葱」 仙人に弟子入りした男の価値観「杜子春」 人を見た目で判…

  • 【普通ではない人間が搾取から逃れる結末】ディズニーアニメ『ノートルダムの鐘』

    あらすじ・概要 醜い外見に生まれついたカジモドは、ノートルダムの鐘つき男として人と接せず暮らしていた。しかしジプシーの女性、エスメラルダと出会い、恋心を抱いたことから少しずつ変わっていく。同時に、カジモドの保護者であるフロロー判事は、エスメラルダに歪んだ欲望を抱きはじめていた。 偶然醜い姿を持った人間が人生にあがく 呪いをかけられたわけでもなく神罰でもなく、ただ偶然人と異なる外見に生まれついたカジモド。彼が劣等感にさいなまれながらも努力をして自分の人生を肯定していくところがよかったです。 最終的に搾取から逃れ、自分の人生を歩んでいこうとするカジモドの姿は好きでした。 メディアやフィクションに取…

  • 【なぜ私はカルトな世界を信じられないのか?】村田沙耶香『信仰』

    あらすじ・概要 スピリチュアルな何かを信じられず、「現実」ばかりを見ている主人公は、「カルトをやらないか」という誘いに乗ってみる。表題作ほか、他者に馴染めない、どこか心ここにあらずな人々を描いた短編&エッセイ集。 全体的に「普通」に生きられない人々の物語でした。私自身も世の中に大して居心地の悪さを感じているタイプなので、共感しながら読みました。 表題作『信仰』は、現実に近い世界観だけれどもどこかおかしいです。鼻のホワイトニングが流行っていたり、50万円もするお皿のブランドが流行っていたり。主人公はそういう怪しげなものを一蹴しますが、心のどこかで「スピリチュアルなものにハマれない自分の方がおかし…

  • 【仕事とストレスに疲れた日には染みる】白野アキヒロ『社畜OLと悪魔ショタ』感想

    あらすじ・概要 ブラック企業に勤めるOLは、思い詰めるあまり悪魔を召喚してしまった。しかし現れたのは年若い少年の姿の悪魔だった。悪魔ながら優しく親切で、自分のことを大事にしてくれる彼に、OLは癒されていく。 ご都合主義の作品だけど漫画がうまい 徹頭徹尾ご都合主義の話ですが、それでも楽しめました。演出が面白いです。 漫画は基本はモノクロで描かれているのですが、悪魔がかわいいことを言ったり優しい言葉を言う決めゴマのみ、カラーで着彩されています。 紙の書籍でも演出は再現されているんですかね。 ここぞというときに悪魔の顔のアップと、カラーイラストによる繊細な表情の描写が出てくるので、どきっとしてしまい…

  • 【ガストンのキャラ設定に考えさせられる】ディズニーアニメ『美女と野獣』

    あらすじ・概要 本が好きで夢見がちのベルは、父親が森に住む野獣の怒りを買ったことから、野獣の城に閉じ込められてしまう。野獣はかつて呪いをかけられた王子で、愛し愛されなければ呪いは解けない。野獣の侍従たちはベルに野獣を愛してもらおうと奔走する。 男らしさにこだわるガストンが印象深い ディズニー映画連続視聴祭りをしていて思いましたが、2Dアニメではかなり脚本やプロットが完成されています。 実写リメイク版を先に見ているのでストーリーは知っていますが、今見てみると悪役であるガストンが印象的でした。 ガストンは男らしさにこだわり、美しいベルをトロフィー扱いしますが、実際のところガストン自身も周囲にトロフ…

  • 難病になった準看護師が漫画を描くまでに回復する―たむらあやこ『ふんばれ、がんばれ、ギランバレー!』

    あらすじ・概要 準看護師だった著者は、突然謎の体調不良を起こす。大きな病院でギランバレー症候群と診断され、過酷な治療が始まった。特効薬もなく、必ず効く治療法もないまま、病に苦しむ。果たして著者は退院することができるのか。 コメディタッチだけど勇気づけられる 状況の過酷さのわりに、描写はコメディのようにで気楽に読める本でした。 もうこれ以上よくならないと告知され、健常者に戻れないと気づいても、できる範囲でやりたいことをやろうと決意する著者がかっこよかったです。 「よくならない」というのか科学的な意味であって、工夫をしたり慣れたりすればできることは増えるかもしれません。実際に、著者は好きだった絵を…

  • 父がアルコール依存症だった著者が依存症当事者や回復施設を取材する―菊池真理子『依存症ってなんですか?』

    だっしゅ あらすじ・概要 アルコール依存症の父を持ち、苦労してきた著者。彼女はアルコール依存症や薬物依存症について調べることとなる。依存から脱却して酒を飲まない生活を続けているミュージシャンや、依存症の支援施設を取材するうちに、著者は改めて自分の過去と向き合わざるを得なくなる。 ひどい目に遭ってもアルコール依存症について知りたいと思える著者はすごい 同著者の『酔うと化物になる父がつらい』を読んだ後だと、依存症の人たちと話し合い共感を示す著者に驚きます。依存症の父親にさんざんな目に遭わされていましたから。 「お酒は悪いものだ。アルコール依存症の人はクズだ」という結論にはならず、なるべく多面的に人…

  • わりとしっちゃかめっちゃかな日本神道と仏教―義江彰夫『神仏習合』

    あらすじ・概要 日本において、神道と仏教は混じり合っていった。これを神仏習合と言う。時の権力者において、神道と仏教はどういうもので、いかにして神と仏は同一視されるようになったのか。朝廷や貴族社会、武士の社会と権力の移り変わりとともに、日本人の宗教観の変遷を追う。 権力に利用されながらも「ひっくり返す」ことを怖れられていた宗教 日本において神道と仏教は混じりあっていきましたが、かといって完全に同化したわけではありませんでした。その微妙な距離感がわかる本だと思います。 面白いのは時の権力は宗教を利用していましたが、同時に民衆の新しい信仰も恐れていたと言うことです。宗教には人を団結させる力があります…

  • 海の哺乳類を解剖する生物学者の日常と、生き物の不思議―田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する~海の哺乳類の死体が教えてくれること』

    あらすじ・概要 日本には、実は多くの海の生き物が漂着(ストランディング)している。海の哺乳類を解剖し研究することが仕事の著者が、解剖の仕事や海の生き物の不思議を紹介する。生物学者は何のために解剖をし、どのように体の中を観察するのか……。 科学をやっていると泥臭い仕事もある 大阪にやってきた迷いクジラ、「淀ちゃん」のニュースを見て読んでみた本です。 内容としては面白かったですが、一冊の本として見ると足りないところもありました。 著者は解剖や標本作成を専門とする海獣学者であり、漂着、つまりストランディングした海の生き物を解剖して調べています。 野生の動物の死体を扱う仕事ゆえ、作業は悪臭にまみれてい…

  • 冴えないおじさんが機械の力を手に入れて自己同一性に悩む―奥浩哉『いぬやしき』

    あらすじ・概要 冴えないおじさん、犬屋敷は、ガンで余命宣告をされ、自分の人生を省みていた。そんなとき突然機械の体を手に入れ、自分が自分ではない心境に陥る。犬屋敷は人を助けると自分が自分でいられることに気づき、強大な力を使って人を救うようになる。 自分が自分であるためにいいことをしたいのはわかる気がする この漫画のようにスケールの大きい話ではなくても、「自分が自分であることのためにいいことをしたい」という価値観はわかる気がします。 主人公、犬屋敷は、機械の体を持ったことで自分の同一性に不安を抱き、「いいことをすると、自分が自分でいられる気がするから」という理由で人を助けます。 心がむしゃくしゃし…

  • 打ち切りらしいけれどまあ悪くない終わりだったかな―喜多みどり『亜夜子と時計塔のガーディアン 約束のチョコレート』

    あらすじ・概要 英国に留学してきてレイのフォグ(下僕)としてこき使われている亜夜子。ある日、レイの親友が「切り裂きジャック」の容疑者として候補に挙がってしまう。調べるうちに判明した、切り裂きジャックの正体とは……。 男女バディものとして面白かった 相変わらず積極的で正直な亜夜子が話を引っ張ってくれるのでストレスが少ないです。だらだら伏線回収を引き伸ばしたり、もどかしい表現を入れてうじうじしたりしません。 レイも亜夜子もお互いを意識しているようですが、ふたりともどこかずれているので噛み合わないのが面白かったです。相手のことが好きだと思いつつ、恋愛的な結論には至らない亜夜子がよかったです。このふた…

  • 人魚の姫が陸に上がって王子の心を射止めようとする―『リトル・マーメイド』

    あらすじ・概要 人魚の王トリトンの娘アリエルは、人間の世界に憧れていた。ある人助けた男性に恋をするが、人間と人魚の恋は禁忌であるためトリトンに認められない。アリエルは魔女アースラの力を借り、人間の足を手に入れ陸に上がった。 ディズニーの2Dアニメの中ではシナリオが洗練されてきた 最近見たディズニーの2Dアニメの中ではかなりストーリーが洗練されていました。無駄なシーンが少ないです。 アリエルも、今まで見たディズニーヒロインの中では自我があってよかったですね。アースラに頼るという方法は悪いですが自分から行動して王子のハートを射止めようとするところはいいです。 それだけに、アースラが「女性は無口な方…

  • 男女バディミステリかと思ったら百合要素がすごかった―喜多みどり『亜夜子と時計塔のガーディアン』

    あらすじ・概要 イギリスに渡り、スタグフォード校に通うことになった亜夜子。スタグフォード学園の優等生であるレイモンドに助けてもらうが、彼は命の恩人であることを盾に亜夜子をフォグ(下僕)にしてしまう。レイモンドにこき使われるうちに、亜夜子は学校内での殺人事件について知っていくことになる。 男女バディだと思ったら終盤の百合に持っていかれた 男女バディミステリか~面白いなと思っていたら終盤の百合展開に全てを持っていかれました。何これ? 命の恩人であることを盾にファグになることを要求してくるというあまり性格のよろしくないヒーローなのですが、自分が悪いと思ったら謝る柔軟さを持っているのがいいですね。 主…

  • シンデレラと王子の話というよりシンデレラとねずみの話だ―『シンデレラ』

    あらすじ・概要 継母と暮らしているシンデレラ。義姉にはこき使われる、継母にはつらく当たれれる毎日を送っているが、ねずみたちと希望を失わずに暮らしていた。そんな中、シンデレラの家にお城から手紙が届く。王子の結婚相手探しのために、国中から年頃の娘を集めるのだという。シンデレラもそれに行きたいと願うが……。 ねずみが猫に追いかけれられるシーンが多すぎ 王子とシンデレラの話に関係のないシーン、特にねずみに関するシーンがやたらと多いので、もうシンデレラとねずみの話に改題したほうがいいのではないかと思いました。 序盤と最後の方に長々とねずみと猫の闘いがあるんですけど、これはもうシンデレラ関係ないよね、と。…

  • 「公認不倫」で幸せな家庭のはずなのに、悩み惑うのはなぜなのだろう―渡辺ペコ『1122』

    あらすじ・概要 一子と二也は仲のいい夫婦。しかし二也は外に不倫相手がおり、一子はそれを公認している。セックスレスが原因で不倫を認めることにした一子だが、徐々に己の性欲を自覚し、また幸せそうに恋をする二也を見て懊悩する。一方二也も、今の関係に疑問を抱き始めていた。 自分の心も他人の心もコントロールできないから迷う いい年した大人が不倫したりしなかったりしながらうじうじ悩む漫画。なのにちゃんと面白いからすごいです。 結婚して何年か経って、相手と性的接触をするのが煩わしくなった。だから不倫を許した。だけどこの心の中のわだかまりは何? という話を延々とやっています。 面倒くさいしお前が決めたんだろと思…

  • 大好きな人と合体したまま配信者魔術師と対決する羽目になってしまった―橘公司『王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔』

    あらすじ・概要 もうひとつの魔術師養成機関<楼閣>と交流戦をすることになった<庭園>だったが、そこに魔術師向けの動画サイトで活躍する喰良という少女が現れる。無色のことを「彼ピ」と宣言した喰良は彩禍に勝負を挑む。しかし今無色は喰良と合体しているわけで……。 女の子の敵に打ち勝ってもマウントで終わらないところがいいよね 配信者のヒロインというのは今どきだなあと思いつつ、その設定を生かした展開で面白かったです。 喰良がなぜ配信をして目立とうとするのか、理由がわかった瞬間ぐっときました。そしてその前座としてトンチキ配信をしていたことも笑えます。超有能なのにかっこつけずに面白配信をためらわないところ、配…

  • アルコールとメンタルヘルスから見る男性のジェンダー―松本俊彦『アルコールとうつ・自殺―「死のトライアングル」を防ぐために』

    あらすじ・概要 女性よりも圧倒的に高い男性の自殺率。それにはアルコール依存症、もしくは依存症とは言えないまでも無軌道な飲酒行為が関係していた。アルコールとうつ、そして自殺の関連性を紐解きながら、アルコールと適度に付き合う重要性について語る。そして、制度の方からできることとは……。 アルコールを過剰摂取し無頼な振る舞いをすることがいいことなのか タイトルだけ見て手に取ったら、かなり男性のジェンダーの話で驚きました。女性より男性の方が自殺率が高いのは有名な話ですが、その自殺率の高さにはアルコールが強く関係しているという話です。 アルコール依存症が自殺率を高めるのはもちろんですが、依存症というほどで…

  • グリム童話踏まえても倫理がなさすぎてびっくりだよ―『白雪姫』

    あらすじ・概要 美しさを求める継母に虐げられ、姫君でありながらぼろを着て生活していた白雪姫。魔法の鏡で白雪姫が世界で一番美しいことを知ってしまった継母は、狩人に命じて白雪姫を殺そうとする。しかし白雪姫は狩人に逃がされ、7人の小人が暮らす小屋にたどり着く。 昔の作品見ると倫理の変遷について考えさせられる ここ最近昔のディズニーアニメを立て続けに見ているんですが、その中でも大分倫理がなく、気持ち悪い描写も多かったので笑ってしまいました。 まず7人の小人が結構白雪姫を性的な目で見てるのが引きましたね。キスのシーンが特に。白雪姫が現代で言うと思春期の少女なのでよけい背徳感が増します。 「それって要する…

  • 合法ショタと喫茶店のお姉さんが繊細な恋物語を繰り広げる―みやびあきの『珈琲をしづかに』

    あらすじ・概要 18歳の受験生だが、小柄で中学生にも間違えられる主人公、貴樹は、喫茶店のマスターの女性紫都香(しづか)に恋をする。年の差に悩みながらも、喫茶店で勉強を続け、紫都香のことを知りたいと思う。喫茶店で言葉を交わすうち、お互いの心に変化が現れていった。 恋愛がわからないことを否定しないラブストーリー 小柄な18歳という合法おねショタ。犯罪であることを気にしなくていいので楽です。 読み進めていくうちに、紫都香は「人を好きになることがよくわからない」「人を好きになるのが怖い」「でも人を好きになったり好かれたりしたい」という葛藤を抱えている女性だとわかります。その原因はDVをしていた父親で、…

  • あるがままでは生きられない人々が行う「告白」―高殿円『カミングアウト』

    あらすじ・概要 援助交際をする女子高生、ロリータファッションを卒業するか悩むアラサーOL、セックスレスに悩む主婦、夫の定年退職に何かをたくらんでいる妻。葛藤を抱えるキャラクターたちが、起こした「カミングアウト」とは 告白することが人生を変える 「ありのままでは生きられないが、かといって他人の望むようにも生きられない」という葛藤が一貫して書かれている小説で、面白かったです。 登場するキャラクターたちは善人ではなく、ちょっとしたことで他人を見下したり、偏見にとらわれていたりします。でも他人は自分自身の鏡であり、登場人物はまた己に呪いをかけています。 タイトル『カミングアウト』の名の通り、自分の言葉…

  • 壁の向こう側には過酷な現実を生きる街がありました―りえぞう『パレスチナに行ってみた』

    あらすじ・概要 イスラエルを観光した著者は、その後パレスチナ自治区へ向かう。イスラム教徒たちが暮らすはずのその場所は、イスラエル軍による厳しい監視がなされていた。著者は宗教施設や歴史的な場所を巡りつつ、パレスチナの今について考える。 ただ町を歩くだけでもひりつく緊張感 イスラエル編にて予告されていたパレスチナ自治区編。観光と言いつつも、ふたつの民族が対立する町を歩くさまは、ひりつくような緊張感があります。 著者はパレスチナ自治区にある宗教施設や、歴史的な場所を巡りますが、どこに言ってもイスラエル軍兵士に出くわします。イスラエルの兵士はパレスチナ人を厳しく監視しています。 歴史的、文化的な施設に…

  • 双極性障害同士の夫婦が躁うつの波とともに共同生活する―リョコモコ『躁うつ夫婦』

    あらすじ・概要 それぞれ別に双極性障害を発症した著者と著者の夫は、インターネットで出会い、恋をし結婚に至る。ときに躁でハイテンションになり、ときにうつで家に閉じこもりながらも、夫婦で助け合って生きていた。精神疾患とともに生きる結婚生活をユーモラスに描くコミックエッセイ。 明るい内容だがところどころに悲しみが見える 語り口はあっけらかんとしており、コメディに見えるほどですが、ところどころに双極性障害に対する悲しみを感じさせる漫画です。 双極性障害同士の男女がインターネットで出会い、恋愛をし、結婚をするというのはどうしても共依存的になってしまうのではとか、共倒れになってしまうのではとか心配になりま…

  • 神々や動物が語る、アイヌの生活、信仰、世界観―知里幸惠編訳『アイヌ神謡集』

    あらすじ・概要 アイヌ民族でありクリスチャンでもあった知里雪惠は、アイヌの人々が歌い継いできた神謡をローマ字で表し、さらに日本語訳した。神々や動物たちが語る、アイヌの人々の生活、そして信仰や世界観とは……。

  • ヒロインと王子以外の方がキャラ立ってる―『眠れる森の美女』

    あらすじ・概要 長く子どもが生まれなかった王家に生まれたオーロラ姫は、マレフィセントによって呪いをかけられる。16歳の誕生日、糸車の針に刺されて死んでしまうと。よい妖精たちによって死を眠りの呪いに書き換えられたオーロラ姫は、妖精たちと森の奥に隠れ住む。 オーロラ姫と王子よりマレフィセントや父親の方がキャラ立ってる 見終わって最初に思ったことは、「オーロラ姫って眠ってわりとすぐ目覚めるんだ……」ということです。お城のみんなも一緒に眠るけれどやっぱりさくっと目覚めます。何なら城がいばらに覆われるシーンもありません。原作での「眠りについて長い長い時間が経った」という話をやらないんですね。 それからよ…

  • 日系アメリカ人と結婚し、アメリカでバイリンガル教育を目指す―ゴキタ絵美『うちの息子はバカリンガル』

    あらすじ・概要 仕事でアメリカに渡り、日系アメリカ人と結婚した著者。ふたりの息子にも恵まれた。著者は息子たちにバイリンガルになってほしいと日本語を教え続けるが、うまくいかないことも多く……。バイリンガル育児や、アメリカでの子育てを描いたコミックエッセイ。 日本とは違うアメリカの学校事情 日系アメリカ人と日本人との結婚、ルーツは同じだが育ちは全く違うふたりが夫婦になり子育てをするというのが面白かったです。 著者は、子どもをバイリンガルに育てようとするもうまくいかず、口げんかでは母語が英語である夫に負け、悔しさを感じながら英語を学びます。 ユーモラスな語り口でありながら、異文化が共存する家族で起こ…

  • 「多いのに法整備や交通網が遅れている」日本の自転車事情―馬場直子『自転車に冷たい国、ニッポン――安心して走れる街へ』

    あらすじ・概要 自転車大国である日本だが、実は自転車にまつわる法整備や、自転車が走りやすい交通設備の点では遅れている。自転車事故を減らすためにはどうすればいいのか。海外の事例や、日本での成功例を挙げつつ、日本の自転車のこれからを考える。 ヘルメット努力義務以外にやらなければならないことはいろいろある ヘルメットの努力義務化など、自転車に対する政策の変化を感じたので手にとってみたのですが、まだまだ行政としてはやることがあると感じました。 自転車は交通網の中では比較的弱者ですが、それでも自転車同士、あるいは自転車と歩行者で事故を起こしてしまうことは多いです。著者は道路のつくりというインフラの面から…

  • 旅行をテーマにしたコミックエッセイおすすめ21選

    ChatGTPに提案されたまとめ記事を書くシリーズ、今回は旅行がテーマのコミックエッセイのおすすめ記事です。 3つの宗教が混じり合う聖地へ『イスラエルに行ってみた 旅行記コミックエッセイ』 バックパッカーとしてイスラエルに行ってみたいと思っていた著者。しかしイスラエルに入国後、敵対する国に行けなくなる場合がある。アラブの他の地域を巡ったあと、ようやくたどり着いたイスラエルは、3つの宗教の対立を象徴するような場所だった。 イスラエル自体はユダヤ人の国ですが、実際のところキリスト教徒やイスラム教徒多く住んでおり、その上多数の宗派に別れています。そんな他宗教の町で、ひりつくような勢力争いをしながらエ…

  • 美学の視点から見る視覚障害の人の世界のとらえ方―伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

    あらすじ・概要 生物学の道を諦め、美学を志した著者は、障害を持つ人、特に視覚障害を持つ人の世界の認識に興味を抱く。「見える」ことが前提の社会で、「見えない」人たちはどのようにして周りの状況をとらえているのか。 「違いを面白がる」という可能性 私の知識が福祉寄りのため、著者の意見に賛成できない部分もあります。例えば失明をきっかけに引きこもりになってしまう人も多いため、著者の研究に協力できる視覚障害者は、精神的に元気な人が多いでしょう。障害を負うことはつらいことなので、精神的に元気な人に合わせすぎるのもどうかと思いますし。 ただ、違いを面白がることで、「助ける・助けられる」という関係を打ち破ること…

  • ジャック・オ・蘭たんの「ツイステッドワンダーランド」実況を見たメモ

    「ツイステの内容は気になるんだけどゲームをやっている時間がないんだよな……」と言うと、友人にジャック・オ・蘭たんさんの実況動画を勧められました。 それを見た感想と記録です。 まず『ツイステッドワンダーランド』というゲームがどういうものか説明します。 『ツイステッドワンダーランド』に登場するのはディズニー映画の「悪役(ヴィラン)」からインスパイアされた男性キャラクターたちです。男体化や擬人化のように見えるけれども厳密にはそうではないらしいです。 キャラクターはヴィランに限らず、ヴィランの周りのキャラクターや、作品における重要なアイテムが元ネタの場合もあります。アラジンの王様がモチーフのカリムや、…

  • 平凡な召使いが魔法使いの教育を受けて王様になる―『王様の剣』

    あらすじ・概要 ワートことアーサーは、養い親の息子の召使いとして暮らしていた。ある日ワートはマーリンという魔法使いと出会う。未来を見たことがあるというマーリンは、ワートに現代的な学問を教え、暴力ではなく知恵で困難を乗り切る方法を教えようとする。ワートは戸惑いながらもマーリンに学ぶが……。 価値観古いけどだらだら見る分にはいい すごく面白いわけではないですが、だらだら見る分にはいいかなという映画です。 脚本は正直ガバガバで、起承転結がちゃんとしていないし、肝心のワートが剣を引き抜くくだりも唐突で今までのストーリーとあまり関係がありません。 いわゆる「おばさん」属性に対する態度もひどいです。かわい…

  • 鬼の歴史と女性やマイノリティと鬼との関係―小山聡子『鬼と日本人の歴史』

    あらすじ・概要 日本人に怖れられ、またユーモラスに描かれてきた「鬼」。その存在はどうやって確立し、文化の中でどう扱われてきたのか。中国から入ってきた鬼の概念から、節分の成立、鬼とマイノリティの関係など、鬼と日本人の歴史について語る本。 女性に押し付けられた「鬼」の概念 若者向け新書レーベルでありながら、鬼と差別の関係について突っ込んだ話をしていて好感を持ちました。そのあたりをあやふやにして書く学者も多いですからね。 怪異や妖怪、人ならざるものの表現は、その当時マイノリティだったり、抑圧されていたりする属性と深く結びついています。 障害を持つ子どもが鬼子とされ、凶兆として恐れられ、親に捨てられる…

  • 倫理のない世界で妄執的な作画の良さが光る―『ふしぎの国のアリス』

    あらすじ・概要 少女、アリスはある日時計を持って走る白うさぎを目撃し、その後を追う。穴に落ちてたどり着いた先は、おかしな動物や人間だらけの世界だった。体が大きくなったり小さくなったりし、マッドハッターのお茶会に参加し、たどり着いた場所はハートの女王の城。アリスは女王とクロケーをするが……。 徹底したナンセンスさの中に作画のすごさを感じる 元々の原作に倫理がないのもあるでしょうが、今のディズニーでは考えられないほど倫理のないシーンが多くて驚いてしまいました。 セイウチが牡蠣を騙し討ちして食べてしまったり、ドードーがアリスのいる家を焼こうとしたり、歌の中身もだいぶどうかしていました。 動物がキャラ…

  • 死にかけの女性にガチ恋する主人公が世界を救う―橘公司『王様のプロポーズ 極彩の魔女』

    あらすじ・概要 瀕死状態の女性に一目惚れした少年、無色。無色はその最強の魔術師女性彩禍と融合してしまった。彩禍を守るため、魔術師の学校に入学することを受け入れた無色は、最強の能力に戸惑いながらも彩禍として生活する。 リアリティはないが作品の中では辻褄が合っている 超絶美女とはいえ、死にかけの女性にガチ恋する主人公無色がヤバい男すぎて笑いました。 恋愛としてのリアリティはないんですが、無色が彩禍にガチ恋することによっていろいろな展開に説明がつくようになっています。 彩禍を殺しかけた犯人を探します→彩禍のことを好きだから協力します。 世界の命運をかけて戦います→彩禍のことが好きだから彼女の守る世界…

  • 嘘つきな偽霊感少女が幽霊と一緒に除霊―『さびしがりゴースト』

    novelgame.jp あらすじ・概要 主人公、うららはクラスメイトに霊感があるふりをし、周りの気を引いていた。そんな折、うららは幽霊の恋(こい)に出会う。恋に除霊を手伝わせることで、うららは本物の霊感少女のように振る舞う。しかしうららの前に本物の霊能力者が現れて……。 癖のあるエンディングがよかった ほぼ一本道のノベルゲームで、最後だけ選択肢で分岐します。プレイする小説といったところ。 ホラーな描写はほとんどありませんが、一瞬だけ怖いシーンがあります。 主人公、うららが承認欲求に飢えており、なおかつ調子よく恋を利用するところに笑ってしまいました。でも青少年ってこんなものだよな、とも思います…

  • 図書委員男子ふたりの謎解きと繊細な友情―米澤穂信『本と鍵の季節』

    あらすじ・概要 「僕」こと堀川と松倉は、図書委員の高校生。堀川は、松倉と一緒に学校や町で起こる小さな謎を解いていくこととなる。開かずの金庫の鍵を開け、自殺した学生が読んでいた本を探すなどするうちに、堀川は松倉の態度に違和感を持つ。やがて松倉の抱えている謎を知ったとき、堀川は……。

  • 結城紬について知るPR漫画―細川貂々『てんてんと歩くキモノみち 紬からはじめました』

    あらすじ・概要 着物にあこがれながらも、その難しさに挫折していた著者。そんな中、結城紬の関係者に漫画の依頼を受ける。結城紬の肯定や特徴について学び、ついには結城紬を着ることに。結城紬に関わる人たちの悩み、そして結城紬を後世に伝えようとする活動とは……。 文化財になることのデメリット 著者が結城紬関係者から依頼を受けて執筆した、いわばPR漫画のようなものなのですが、それでも結構知らないことが多くて面白かったです。 ただタイトルで「結城紬」の漫画であることがわからないので、そこはタイトル詐欺ですね。 面白かったのは結城紬が文化財に指定されることによって、結城紬の価格が高騰してしまい、「贅沢品」とし…

  • 自死遺族の苦しみとこれからできる支援―杉山春『自死は、向き合える 遺族を支える、社会で紡ぐ』

    、 あらすじ・概要 生きる苦しみによって自ら命を断ってしまう人がいる。自死の悲しみは、当事者だけではなく家族も襲う。自死遺族たちが受けた差別や社会への疎外感、また対策について述べる。自死する人を減らし、自死遺族たちを支援するために、社会は何ができるのだろうか。 自死遺族たちが受けた差別がつらい かなり重たい内容の本で、得に自死遺族たちが受けた差別やいわれのない噂については心が詰まりました。 「家族が自死に追い込んだのではないか」と疑われたり、自死について語ろうとしたときに相手にかたくなに拒否されたり、読むだけで悲しい気持ちになりました。 本の中で繰り返し語られているのは自死遺族同士のコミュニケ…

  • 発達障害の夫が壊れかけた家族を再構築する―遠藤光太『僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語』

    あらすじ・概要 大学を出てすぐに若くして結婚し、子どもをもうけた著者。しかし強いうつ症状に襲われ、復帰と休職を繰り返してしまう。家族がばらばらになりそうな中、著者は自分が発達障害であることを知った。発達障害の特性を考えながら、家族を再構築していく作業が始まった。 発達障害者も家族と一緒にいられるという救い 社会人として、労働者として世の中に適応することができずに、うつで家で療養せざるをえなかった著者。「男は外に出て家族を養わなければならない」「既婚の男がアルバイトをしているなんて恥ずかしいことだ」と自分自身のテンプレートな男性観にも悩まされます。 ある程度社会に適応することができていた時期もあ…

  • 食品アレルギーの子どもを育てる上での悲喜こもごも―カラスヤサトシ『0歳からのアレルギー戦記~牛乳・卵・小麦がダメ!』

    あらすじ・概要 結婚して子どもをもうけた著者。しかしその子どもには食品アレルギーがあった。アレルゲンを含む食品を避けたり、気軽に他人と食事できなかったり、アレルギーの子どもと暮らすことは大変なことも多く……。 食品アレルギーの子どもと暮らす人ならではのストーリー 興味深かったのは子どもがアレルギーと診断されて複数の医療機関を受信した著者の妻が、そこで一切統一されていない助言を受けたシーンでした。 ステロイドはどんどん使うべき、あるいは使うべきではない。そしてアレルゲンとなる食品は少しずつ食べさせるべきである、あるいは一切食べさせてはいけない。 このような医療機関の意見が一致しないところを見ると…

  • 介護殺人の恐ろしさと、防ぐために世の中は何ができるか―毎日新聞大阪社会部取材班『介護殺人 追い詰められた家族の告白』

    あらすじ・概要 社会問題になっている介護のこと、そして思いつめた結果介護していた相手を殺害してしまう人がいる。毎日新聞大阪社会部取材班は、介護殺人をしてしまった人々に取材を申し込んだ。重たい口を開いた彼らが語るのは、壮絶な介護の実態だった。加害者の立場から介護殺人防止を考える本。 加害者はもちろん自分が介護した相手のことについて話したくないので、何度も取材を申し込む取材班に対して冷たい反応をする人も少なくありません。それでも勇気を出して介護殺人について語ってくれた人たちがいてくれてよかったと思います。 印象的だったのは、介護殺人をしてしまった人の多くは、真面目に介護を行い介護する相手を深く愛し…

  • 大阪環状線に謎のおばけが現れるオカルトSF―白井弓子『大阪環状結都市』

    あらすじ・概要 大阪で警察官として働いていた森かなたは、大阪環状線を監視し守るOシステムで「何か」を見てしまう。その「何か」は「みぎわもん」と呼ばれる大阪に現れる超常のものだった。かなたはみぎわもんをめぐる戦いに巻き込まれていくが、それにはかなたの行方不明になった妹、しおりも関係しているようで……。 大阪ネタがニッチなローカルオカルトSF 大阪ローカルSFということで一度読んでみたかったんですが、思った以上に大阪要素が濃いです。マチカネワニ(大阪大学敷地内で見つかったワニの化石)とか、鶴橋駅で「ヨーデル食べ放題」のチャイムが流れるとか、某アイドルがやっているひらパー兄さんとか、ちょっと笑ってし…

  • トンチキとリアルが交差する京都ファンタジー―森見登見彦『夜は短し歩けよ乙女』

    あらすじ・概要 とある乙女に一目ぼれした「私」。「私」は乙女の視界に入ろうと彼女を追いかける。一方乙女も、夜を歩くうちに京都で起こる不思議なできごとに巻き込まれ、その中で大活躍する。 小説でないと生まれえないシーンがある 基本的にリアリティのないトンチキファンタジーなのですが、ところどころに京都での大学生生活の丁寧な描写があり、幻想と現実を行き来する話でした。 あり得ない展開を何度も重ねながら、古本市に並んでいる本のタイトルの「らしさ」だったり、大学の学園祭の「ありそう」な展示だったり、ふとしたときに現実と繋がる感覚を持ってしまいます。そういう瞬間はどきっとしました。 絶対に現実に起こりえない…

  • 科学者だって間違うしその場の雰囲気に流される―藤野豊『強制不妊と優生保護法 "公益"に奪われたいのち』

    あらすじ・概要 障害者やハンセン病の人々に不妊手術を施した悪法、優生保護法。その法律はどのように作られ、どのような歴史をたどったのか。優生保護法の現在までを振り返りながら、優生主義の恐ろしさ、愚かさを伝える本。 科学者だって過ちを犯す 薄い本ですが、なかなかつらい内容の本でした。 歴史に残る悪法である優生保護法の成立から、その運用の歴史が書かれています。 優生保護法の影響を受けたのは、知的・精神障害の人、ハンセン病の人、水俣病の人など多岐に渡ります。特に水俣病と優生保護法に関係があるとは知らなかったので、その部分は興味深く読みました。公害でひどい目に遭った上に子どもを生むことにまで干渉されるの…

  • コンビニ夜勤をする吸血鬼が女子高生の問題を解決―和ヶ原聡司『ドラキュラやきん!』

    あらすじ・概要 吸血鬼の虎木は、コンビニ夜勤をしながら人間世界で生活していた。そんな虎木の家にシスターが転がり込んでくる。彼女、アイリスは人ではない存在「ファントム」を狩る存在だった。そんな中、コンビニ店長の娘が怪しげなライブハウスに通っていることが判明し……。 現代に生きる吸血鬼が事件解決 コメディかと思ったらどちらかというと事件ものでした。 虎木が家に転がり込んできたヒロイン、アイリスと共に怪しげなライブハウスにのめり込む女子高生を助けます。 ヒロインのアイリスが年下の女の子には優しく、お姉さんの立場で接するのがよかったです。ちゃんと自分は助ける側であるという自覚のある女性っていいなと思い…

  • 子育てをテーマにしたコミックエッセイおすすめ27選

    ChatGTPに提案されたまとめ記事を書いてみようシリーズ、今回は子育てをテーマにしたコミックエッセイおすすめまとめです。 私が福祉や障害のある子どもの生活に興味があるので、そういうコミックエッセイが多くなっています。 職場復帰後奔走する女性と、働く母親への差別『いけいけどんどん!ワーママ奮闘記』 小六にして中学受験をしたいと言い出した息子を応援する夫婦―細川貂々『なぜか突然、中学受験』 ダウン症の子育てを明るいコメディタッチで描く『ユンタのゆっくり成長期 ダウン症児を育てています』 親のもやもやがわかっていたたまれなくなってきた『ママぽよ アンとリュウ 就職できるかな?』 だめだけど自分に酔…

  • 政治学者が学問的正論が通用しない「PTA」の世界で気づいたこと―岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』

    あらすじ・概要 政治学者・岡田憲治は他人からの強い推薦によってPTA会長になるが、そこは非効率、非論理的な活動に満ち溢れていた。会長としてPTAのスリム化を目指すが、そんな著者に反発する人も多く……。保護者による「自治」の中で、人間同士の政治を考える実録エッセイ。 正論だけでは回らない実際の日常の政治 政治学者である著者がPTA改革に挑戦する話ですが、単純な「賢い俺と無知蒙昧な人々」という構図ではなく、ややこしい人と人が共存する難しさが描かれています。 著者の提案に対して「やったことがない」「今までしてきたことを簡単に変えていいのか」と反発する人々。その姿は愚かに見えますが、読み進めるうちに単…

  • 「政治をやる障害者」が語る戦略的にマイノリティ向け制度を作る方法―伊藤芳浩『マイノリティ・マーケティング――少数者が社会を変える』

    あらすじ・概要 聴覚障害者として、NPO「インフォメーションギャップバスター」で活動してきた著者。この団体は聴覚障害者向けの電話リレーサービスや東京オリンピック開閉会式におけるテレビ放送の手話通訳の導入を実現させてきた。300人に1人の聴覚障害者が、自分たちのための政策を実現していくための方法とは……。

  • 職場復帰後奔走する女性と、働く母親への差別―あい『いけいけどんどん!ワーママ奮闘記』

    あらすじ・概要 育児休暇の後、会社に復帰することになった著者、子どもと長く過ごせなくなることを悲しく思いながらも、好きなデザインの仕事を必死で頑張る。ときに夫といさかいながらも、何とか仕事を続ける一方、職場からは収入の当てにしていた手当をなくされてしまい……。 働く女性への差別ってこういうものなんだなあ 表紙から子どもによってドタバタしているだけのコミックエッセイかと思ったら、働く女性の今現在の状況について考えさせられる内容でした。 育児休暇から復帰し、ときに夫ともめたり、子どもと長く過ごせないことにネガティブになったりしつつも、何とか「ワーママ」として滑り出したように見えました。 しかし会社…

  • サロメ嬢のダンガンロンパ実況を完走したメモ

    元々はあまりゲーム実況を見なかったのですが、最近は心境の変化があって見るようになりました。 ゲーム実況はおそらく自分ではクリアできない、あるいは自分からやらないような作品のものしか見ません。自分でやるならなるべくネタバレなしでやりたいからです。 サロメ嬢が、「おそらく自分ではやらないだろうなあ」と思っていたゲーム、ダンガンロンパを実況していたので視聴しました。 www.youtube.com サロメ嬢のことを知らない人たちにざっくり説明すると、サロメ嬢はにじさんじのバーチャルYouTuberであり、ゲーム実況を主なコンテンツとしています。 そしてダンガンロンパは「超高校級の〇〇」と呼ばれる学生…

  • 小六にして中学受験をしたいと言い出した息子を応援する夫婦―細川貂々『なぜか突然、中学受験』

    あらすじ・概要 漫画家・イラストレーターの細川貂々と専業主夫のツレの間に生まれた息子、ちーと君。小学6年生になった彼は突然中学受験をしたいと言い出す。戸惑いながらも、夫妻は息子の受験勉強を応援するために奔走する。 本人がやりたいことをどう応援するか お受験の話というと、「子どもにいい学校に行かせたい」と意気込む保護者のに気おされて、ちょっと距離を置いていたんですが、この本は楽しく読めました。 まず親がいい学校に行かせたいからではなく、子どもが「中学受験をしたい」と言い出したところから始まります。当時は小学6年生の一学期が終わったころ、細川貂々夫妻は中学受験について全く準備をしておらず、息子のそ…

  • もっと童話要素の強いまま突っ走ってくれればよかったのに―三方行成『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』

    あらすじ・概要 遠い未来、人間が人格をデジタル世界にコピーしたり複製したりが可能になった。「トランスヒューマン」と呼ばれるようになった人類は電脳世界と現実世界の両方で新しい人生を謳歌する。そんな中に、姫君や翁がいて……SF世界で童話パロディをする連作短編集。

  • 古代日本の世界で少数民族の少女と大王の血を引く男が出会う―円堂豆子『雲神様の箱』

    あらすじ・概要 双子の姉の罪をかぶって土雲の一族を追い出され、雄日子という男に仕えることになったセイレン。セイレンは固定観念に囚われない雄日子の人格に惹かれていく。一方で、大王の政治に不満を持った人々によって、政治の世界は不穏さを増していた。

  • 清少納言から中宮定子への熱烈な主従愛―冲方丁『はなとゆめ』

    あらすじ・概要 宮中に出仕することになった清少納言は、そこで中宮定子の聡明さ、優雅さに惹かれる。中宮定子や貴人たちとの交流に、頭のいい清少納言は機転を利かせて雅に答え、それを評価される。しかし次第に、藤原道長の権力が、中宮定子にまつわる人々を脅かし始める。 思い出が今を肯定してくれる 恋かと思うくらいに熱烈に中宮定子を愛する清少納言、しかし彼女にも夫がいるし定子は一条帝の正妻です。 もうここまで来ると男女CPを前提にした百合という気がしてきます。 実際、清少納言は「中宮の心を独占してみたい」という思考に近いところに至ります。異性愛の規範にどっぷりつかりながらも、定子という女性に焦がれあこがれ、…

  • 「わたし」が小さくなって大冒険―田中ロミオ『人類は衰退しました2』

    あらすじ・概要 妖精さんが作った計量スプーンを手に入れた「わたし」。それを頭につっこむと、みるみるうちに体が小さくなった。「わたし」は小さいまま外の世界で大冒険をする。「わたし」と「助手さん」の出会いを描くタイムスリップストーリー含む二編を収録。

  • 子どもになった親のために施設探し―細川貂々『親が子どもになるころに――てんてん、介護問題に直面す。』

    あらすじ・概要 漫画家の著者にはひとり暮らしの父がいた。仕事を続けまめに掃除をし、生活を続けていた。しかしあるときから認知症の兆候が見え始め、施設に入れることを考え始める。施設探しの日々、ままならない父親の行動を描きながら、子どもが老いた親を世話することを考える。

  • 男性の視点から男性の暴力を阻止するためにできること―多賀太・伊藤公雄・安藤哲也『男性の非暴力宣言 ホワイトリボン・キャンペーン』

    あらすじ・概要 性的暴行、DV、セクハラなど、女性はさまざまな暴力にさらされている。しかしそれに異議を唱えるのは、同じ女性ばかりだった。ホワイトリボン・キャンペーンは男性が当事者として男性の暴力に反対し、女性や子どもへの暴力をなくそうと活動する取り組みである。

  • ネガティブな漫画家が自分語りをしつつ楽な生き方を模索する―菊池真理子『生きやすい』

    あらすじ・概要 漫画でルポルタージュを描くことを仕事にしている著者、菊池真理子。しかしその内面はネガティブで、漠然とした生きづらさに悩まされていた。過剰な繊細さ、人付き合いへの疲労、本音を言うことへの抵抗など、著者自身が自分のネガティブさを紐解いていくコミックエッセイ。

  • 介護職はなぜ不足しているのかと、日本の介護のこれから―結城康博『介護職がいなくなる ケアの現場で何が起きているのか』

    あらすじ・概要 少子高齢化によって、介護需要は高まる一方なのに、介護の仕事をする若者は増えない。労働条件の悪さや、介護施設内での暴力、介護施設でのパワハラ・セクハラ、外国人介護職への支援の乏しさなど、現状の問題を語る。介護から見えてくる、高齢化社会の困難さとは……。

  • 映画化された小説おすすめ15選

    ChatGTPに「読書ブログのまとめ記事のアイデアを出してください」と頼んだら「映画化された小説のおすすめ」を提案されたのでまとめました。 そういえば今まで書いたことのなかったまとめでしたね。提案されるまで気づきませんでした。 以下、映画化された作品から面白かったものをピックアップしたまとめです。 大阪を舞台に営まれる男女の愛と葛藤『ジョゼと虎と魚たち』 親がカルト宗教にハマってしまった子どもが星を見上げる『星の子』 目がボタンの母親、という破壊力『コララインとボタンの魔女』 小学生3人組はおじいさんの死ぬところが見たくて家を覗く―湯本香樹実『夏の庭』 平凡なゲーム好きの少年が父の家出をきっか…

  • 障害者の大量殺人事件から優生思想に警鐘を鳴らす―保坂展人『相模原事件とヘイトクライム』

    あらすじ・概要 障害者施設で19人が殺害された相模原障害者施設殺傷事件。その事件は多くの障害者とその家族、支援者らに衝撃を与えた。著者は障害のある人の意見を聞いたり、過去の優生思想が起こした事件を語ったりして、優生思想の罠に囚われないよう警鐘を鳴らす。 尊厳を信じない人に尊厳をどう説明すればいいのか 話が色々なところに飛ぶので一冊の本としてはまとまりがないのですが、それでもいろいろ考えさせられるところのある本でした。 相模原事件の容疑者の書いた文章から、被害者の家族の思い、障害を持って暮らす人々の反応、そして過去の優生思想が起こした事件について書かれています。 後半はナチスが起こした障害者を抹…

  • ダウン症の子育てを明るいコメディタッチで描く―たちばなかおる『ユンタのゆっくり成長期 ダウン症児を育てています』

    あらすじ・概要 長男として授かった赤ちゃんはダウン症児だった……。行政や福祉の力を借りつつ、発達がゆっくりの子どもを家族で見守る。ダウン症の子育ての理不尽なところ、うまくいかないところを描きながらも、コメディタッチで進行するコミックエッセイ。

  • 人類が衰退した世界でのほのぼのブラックSF―田中ロミオ『人類は衰退しました』

    あらすじ・概要 人類最後の最高学府を卒業し、故郷に戻ってきた「わたし」。そこで調停官という仕事に就くが、実質お飾りの役職らしい。調停官の「わたし」は今地球を支配する新人類、「妖精さん」にコンタクトを取り、交流していくが……。

  • チョコレートを取り上げられた国を救うソシャゲ風のノベルゲーム―『ショコラティックウォーズ』

    novelgame.jp あらすじ・概要 チョコレートが大好きな女性ショコラは、ロマーノ王国でチョコレート禁止法が布かれていることを知る。天才ショコラティエのヴァレンタイン率いる革命軍に参加したショコラは、王城に向かって王と対峙する。しかし王国は思った以上の問題を抱えているようで……。 ノベルゲームにソーシャルゲーム風の戦闘が加えられたゲームです。基本は明るいトンチキコメディなんですが、話の節々に強い趣味を感じて面白かったです。 特に印象的だったのは天才的な兄とそれには少し劣る弟の面倒くさい感情です。全てにおいて有能すぎて自分を見失い、悪役ぶってしまう兄、そしてそんな兄を超えたいと思いながら超…

  • ベビーシッターになった保育士の奮闘記―さいおなお『3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記』

    あらすじ・概要 保育士だったが、日々の雑務に追われ、「もっと子どもと向き合う仕事がしたい」とベビーシッターになった著者。ベビーシッターの仕事の内容から、子どもと付き合う上での悩み、保護者とのやりとりなど、子どもを世話する仕事について語る。 実際に仕事をしている人ならではの視点がある ベビーシッターになる人はどういう経緯があるのだろうと思っていたので、参考になる漫画でした。 著者はもともと保育士でしたが、保育士の仕事は子どもを相手する以外の雑務が多く、もっと子どもと向き合う仕事がしたいと考えていました。そしてベビーシッターに転職し、個人で子どもを世話する仕事を始めます。 保育所へ送迎する仕事が多…

  • 実際に培養肉を研究する学者が語る培養肉の将来性と課題―竹内昌治・日比野愛子『培養肉とは何か?』

    あらすじ・概要 畜産による環境汚染や、動物福祉の問題から注目され始めた培養肉。日本国内で培養肉の研究を行っている著者が、研究の進捗状況とこれからの課題、さらには培養肉を研究するメリットを語る。「動物を殺さない肉」が描き出す、未来の社会とは……。 培養肉を研究している人間だからこそ語れる本 著者が実際に培養肉を研究している側なだけあって、具体的な話が知れて面白かったです。たとえば培養肉の研究と言ってもさまざまなものがあって、ミンチ型かステーキ型か、あるいは植物由来の物質を混ぜるかどうかなど、方向性に違いがあります。 そして培養肉を研究する上での困難も書かれています。そもそも培養肉の存在を前提とす…

  • 贋札を作る能力で同胞を救うトンチキギャグ経済漫画―住吉九『ハイパーインフレーション』

    あらすじ・概要 技術の遅れたカブールの民として生まれたルークは、支配者であるヴィクト人を騙して金銭を得ていた。命の危機によってルークは神から特別な力をもらう。それは、「生殖能力の代わりに、贋札を作る能力を得る」ことだった。無限に生成される贋札を武器に、ルークは奪われた姉を取り返そうとする。 倫理のない作品をどう作るか、のひとつの答え トンチキギャグ漫画なんですが経済について深く学べて面白かったです。どういうこと? 主人公のルークは贋札を体から出す能力を持っており、その能力を使って姉のハルを助け、ひいてはカブール人を差別から救おうとします。 贋札はほぼ本物と変わりありませんが、ただひとつ、番号だ…

  • イスラム教徒の男性と結婚したらカルチャーショックを受けた―ハスナ『笑える 腹立つ イスラム夫と共存中』

    あらすじ・概要 海外旅行をしていた著者は、それがきっかけでイスラム教徒の男性と結婚することになる。神を信じる男と信じない女、文化の違いは大きくて……。コミカルな描写ながらもイスラーム文化と日本文化を比較するコミックエッセイ。 私たちと違った倫理で生きる人たちの話 描写される文化は日本人の感覚からするとかなり倫理のないものもあります。婚前交渉すると村八分のようになったり、男尊女卑だったり。 しかし著者の夫やその家族は、当たり前のようにその文化を受け入れており、(不信心な方である著者の夫さえも)神の存在を疑いません。 神を信じるゆえに、喜捨の行動もためらいなく取ります。貧しい人に食べ物を上げたりお…

  • 採集や狩猟をして暮らし、のちに迫害された北海道の先住民たち―時空旅人編集部『今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人の歴史と文化』

    あらすじ・概要 かつて東北から北海道、樺太や千島列島にかけて暮らしていた民族、アイヌ。北の大地で、狩猟と採集の生活をしていた人々とは……。その宗教観や、食べ物や着るものなどの文化、そして日本との歴史を一冊にまとめた本。 日本に似ているようでがっつり違う宗教観・霊魂観 北海道の冬の寒さからなんとなく厳しい暮らしを想像していたのですが、開拓前の北海道は狩猟できる獣も食べられる野生動物も豊富で、あまり食べるのには困らなかったようです。美化しているところはあるかもしれませんが、狩猟生活=貧しいというものでもないんですね。 アイヌ文化は万物に霊が宿るというアミニズム的な価値観は日本と同じですが、霊魂観や…

  • 日本の法律やシステムのせいで困難に立たされた外国人たち―安田菜津紀『隣人のあなた 「移民社会」日本でいま起きていること』

    あらすじ・概要 日本に逃れてきた難民、働きにやってきた技能実習生など、日本には様々な外国人や外国にルーツを持つ人々がいる。しかし一部の人たちは日本の法律やシステムのせいで、苦境に立たされている。困難に巻き込まれた日本に住む外国人たちを紹介し、日本社会の排他性を問い直す。

  • 自分の価値観を否定する痛みを乗り越えて真実を知る―立岩陽一郎・楊井人文『ファクトチェックとは何か』

    あらすじ・概要 フェイクニュースが話題になる昨今、ニュースや政治家の発言の真偽をチェックする「ファクトチェック」が注目されている。人々が正しい情報にアクセスするには、過去の発言や出典をチェックするファクトチェッカーの存在が必要である。海外の事例も紹介し、日本のこれからのファクトチェックについて語る本。

  • インターネットでニュースを見るのをやめました。

    特別お題「今だから話せること」 インターネットでニュースを見るのをやめました。 ニュースサイトをチェックするのもやめたし、Twitterで流れてくるいろいろなニュース記事をクリックすることもほとんどなくなりました。よっぽど気になるニュースなら別ですが、それ以外の記事は完全にスルーしています。 とはいえ、時事問題について興味がなくなったわけではありません。 気になることは本を読んで調べることにしました。 図書館で新書や岩波ブックレットを借りて来たり、電子書籍を買ったり、KindleUnlimitedを使って関連の本を探したりしています。 インターネットでニュースを見るのをやめた一番の大きな理由は…

  • 障害児向けのおもちゃ制作に携わった著者が誰もが使いやすい道具について語る―星川安之『アクセシブルデザインの発想 不便さから生まれる「便利製品」』

    あらすじ・概要 障害のある子どものためのおもちゃを作っていた著者は、その流れでみんなが使える商品、アクセシブルデザインに携わることになる。少しの工夫で使える人が増える、アクセシブルデザインの中身とは……。 「できるだけ多くの人が使える道具」をどう作るか 著者はかつて障害のある子どものためのおもちゃを作っており、その経験から日用品のアクセシブルデザインに携わるようになります。 前半の、障害のある子どものためのおもちゃの歴史、そして誰でも使えるデザインを広めようとする人々の努力は面白かったです。この本は薄いからダイジェストですが、詳しい話も聞いてみたいです。 驚いたのは、歩道と車道の段差の高さもア…

  • 東京の「女性の貧困」を追う上で見えてきたもの―中村淳彦『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』

    あらすじ・概要 かつてアダルトビデオや風俗のライターをしていた著者は、女性編集者と組んで東京に住む人々の貧困を取材する。風俗で働く女子大生、生活がままならないシングルマザー、障害年金で暮らす障害者など、困窮する女性たちは今何を語るのか。 正論では何も解決しない貧困の問題 著者はアダルトビデオや風俗のライターとして働いていた経歴があり、あなたも搾取する側だったじゃないかというところはあるのですが、そういう著者だからこそ書けるものでもあるのだろうなと思います。 登場する女性たちは、客観的に見れば明らかに間違いだろうという選択をしてしまった人も多いです。しかし著者は、アドバイスも意見もなるべくせずに…

  • 長い長い時間夜のファミレスに閉じ込められて脱出を図る―『ファミレスを享受せよ』

    oissisui.itch.io あらすじ・概要 夜のファミリーレストラン「ムーンパレス」にやってきた主人公は、そのファミリーレストランに閉じ込められてしまう。そこには自分以外の閉じ込められた人たちがいた。主人公はムーンパレスにいる人たちと会話を繰り返し、長い時間をかけて脱出方法を探る。 ファミレスに閉じ込められて暇を持て余すADV ファミレスに閉じ込められて死ぬこともできず、ただただドリンクバーを飲みながら同じく閉じ込められた人と話し、暇を持て余すゲームです。 会話を進めるごとに、少しずつキャラクターの背景もわかってきます。そしてクライマックスになると、キャラクター同士の関係が明かされます。…

  • 双極性障害の夫を支えるうちに妻がうつになってしまった―彩原ゆず『夫婦で心を病みました 優しい夫が双極性障害を発症したあの日から』

    あらすじ・概要 仕事のストレスでうつになってしまった夫、休息を経て少しずつよくなっていくが、しばらくして夫に異変が訪れる。浪費をし、常にいらだちものに当たるようになり、ついに著者にも手を上げるようになった。追い詰められた著者は、自分も自殺を考えるようになり、抗うつ剤を飲むようになった。

  • 社会に氾濫する居場所のない人を排除するオブジェ―五十嵐太郎『誰のための排除アート? 不寛容と自己責任論』

    あらすじ・概要 ベンチに寝そべられなくする、開いている土地にホームレスが段ボールハウスを作れなくする、若者がたまらないようオブジェを置くなど、「邪魔者」を排除する排除アート。それらはどのように設置され、社会にどのような影響を与えているのか。町にある排除アートから、現代の不寛容を見る本。 芸術家から怒りの声が出ている 世の中のベンチがだんだんそういう形になってきているのは知っていましたが、「排除アート」という言葉や概念に対して、多くの芸術家たちが怒りを覚えていることに驚きました。でも考えてみると、当然かもしれません。 芸術家の人たちの中には、芸術を通して弱い人の存在を取り上げたいという人もいるだ…

  • クロネコメンバーズの自宅で送り状発行サービスで送り状を作った話

    とらのあなに荷物を送りました その際、ヤマト運輸の送り状作成サービスを使ってみました。今回はそのレポートです。 用意するもの クロネコメンバーズのアカウント パソコンorスマホ A4のコピー用紙 個人用プリンター はさみorカッター 手順 まずはこのページから送り状を発行する→送り状発行システムC2をクリックします。 www.kuronekoyamato.co.jp あとは必要事項を記入していきます。 住所に名前が必須なのですが、とらのあなの納品先住所には氏名がないので、「担当者様」としておきました。 一度入力した住所は保存しておけるので、よく使う住所であれば保存しておくのがいいかも。 入力が…

  • マジョリティの人間が「小さな差別」を軽く考えるのはどうかと思う―鈴木大介『ネット右翼になった父』

    あらすじ・概要 父を亡くした著者は、ネット右翼的な思想に傾倒した父について記事に書く。しかしその後、自分は父のことを本当に知っているのかと疑問を持った。家族に聞き取りを行い、父の過去を紐解くにつれて、父親の本当の姿が見えてきた。

  • 抑圧された中華系女性がマルチバースからすべてを得、娘を救う―『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

    あらすじ・概要 中華系移民のエヴリンは、夫ウェイモンドとともに税金の申請をしようとしていた。その途中で、ウェイモンドが別人のように変貌し、彼女にマルチバースを救ってほしいと頼む。彼はアルファ・レイモンド、他の世界からやってきた人間だった。エヴリンは事件に巻き込まれながらもマルチバースから力を借り、覚醒していく。

  • 最近読んだ本・漫画・ゲームの感想(20230303)

    記事を立てるほどではない感想のまとめです。 斉藤環・内田良『いじめ加害者にどう対応するか 処罰と被害者優先のケア』 最上うみみ『お酒で壊れた人が集まる場所で』 木﨑ちあき『博多豚骨ラーメンズ』 岬鷺宮『日和ちゃんのお願いは絶対』 井上純一『月とにほんご 中国語嫁日本語学校日記』 町田洋『惑星9の休日』 貴戸理恵『「コミュニケーション力がない」と悩むまえに――生きづらさを考える』 蛸山めがね『てくてく巡礼〜秩父札所三十四ヶ所観音霊場&三峯神社〜』 『レディ・ブルー』 八目迷『夏へのトンネル、さよならの出口』 斉藤環・内田良『いじめ加害者にどう対応するか 処罰と被害者優先のケア』 いじめられた側が…

  • 大阪を舞台に営まれる男女の愛と葛藤―田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』

    あらすじ・概要 車いすで暮らすジョゼは、同棲し自分を世話する恒夫を「管理人」と呼ぶ。奔放でわがままで、でもどこか憶病なジョゼは恒夫とさまざまなところへ行く。ふたりの微妙な関係はどうなるのか……。表題作ほか、大阪の男女の営みを描く短編集。

  • 双極性障害の母を支えた著者と家族の物語―まりげ『700日間の絶望トンネル』

    あらすじ・概要 別居している母が自殺未遂をしたという報告を受け、著者は混乱する。どうやら母は双極性障害だということがわかり、入院治療ののち、著者の近くで暮らすこととなった。しかし母親の躁うつの波に振り回され、著者は苦悩する。

  • 自称HSPの人を狙うエセ科学や詐欺、カルト団体に警鐘を鳴らす―飯村周平『HSPブームの功罪を問う』

    あらすじ・概要 一般的な人よりも敏感な人たちを指す、「High Sensitive Person」略してHSP。HSPという言葉で救われた人もいる一方で、発達障害の人への蔑視や、HSPを巡る怪しげなビジネスなど、よくない傾向も見られる。日本におけるHSP研究者である著者が、HSPの今と問題点を解説する。

  • アルコール依存症になったOLの妹との共依存と卒業―かどなしまる『人生が一度めちゃめちゃになったアルコール依存症OLの話』

    あらすじ・概要 社会人として事務の仕事をするも、職場の人間関係の悪さから、ストレスをため込んでいた著者。「お酒を飲んでから出勤すると平気」ということに気づき、飲酒をしてから仕事をするようになる。同居の双子の妹と諍い、家に帰れなくなっても、それでもお酒をやめられない著者は……。

  • 九州の炭鉱で働いていた人々が語る、生き延びるための物語―上野英信『地の底の笑い話』

    あらすじ・概要 九州の炭鉱では、今では考えられないほど過酷な労働が行われ、多くの男女がそれに従事していた。仕事の合間に語られるのは、幽霊の話、怠け者の話、ケツワリ(脱走)の話。労働者がろくに守られなかった時代、使用者に支配される中で、生き延びるために語られた物語を取り上げる。

ブログリーダー」を活用して、かずらさんをフォローしませんか?

ハンドル名
かずらさん
ブログタイトル
ブックワームのひとりごと
フォロー
ブックワームのひとりごと

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用