三十九、そんなある日、「佐伯君だったの」小学四年生の時同じクラスだった安永佳代子で、俺の初恋の相手である。結婚しているので崎川佳代子になっていた。「まさかこの会社に佳代子さんがおるとは思わんやったば…
三十八、 今日は大和屋の入社式である。本社で、百名程の新入社員が、緊張した面持ちで社長の訓示を聞いている。とても初々しい光景である。入社式が終わると一週間の研修が始まる。六人のグループごとに.…
三十七、 大学生活最後の春を迎え、原口と二人で二泊三日の卒業旅行をすることになった。二人で相談した結果。俺の車で岡山県倉敷市に行くことになった。岡山まで二〇〇キロ弱の距離なので、片道八時間あれば…
三十六、三年の単位を無事クリアできて春休みを迎えた。二月に入っても一向に寒さが和らぐことはなかった。相変わらず夜になると、田辺や勝山、それに正治などが集まってくる。今日はこの三人でいる時に柳田が来…
三十五冬休みになり、また花丸デパートの包装センターでアルバイトをすることになった。包装センターでは、雪が配送車にうっすらと積もり、北風が倉庫のドアをけたたましく叩いていた。俺はまたお勝手用品のデ…
三十四、俺は待ち合わせ場所のエポに五分前に着いた。店内はやや暗く黒の色調でまとめられていた。芳醇な珈琲の香りが、俺の鼻に心地よい刺激を与えてくれた。中へ入ると真紀が手を振っている。「おはよう。早う…
三十三夏休みが終わり、九月になっても真夏のような暑さが続いていた。容赦なく照りつける太陽に、シャツの中で汗が飛沫を上げている。俺は労働法の授業を受けるべく足を進めていた。「佐伯—」斜め前から原…
三十二、夏休みは花丸デパートでアルバイトをすることにした。繁忙期なので配送センターでの仕事である。アルバイトはそれぞれの課ごとに振り分けられる。俺はお勝手用品の課だった。同じ倉庫の中に食器課、…
三十一、今年の梅雨はあまり雨が降らなかった。そのせいか夏の強い日差しが早いうちからアスファルトを焼き付けていた。蝉のけたたましい鳴き声も、いつもより早くから聞こえていた。そんな朝、大学でバスを降り…
三十、たまに大学まで愛車のサニークーペに乗っていく。家から大学まで一時間以上かかるので、大学に着いた時にはラジエーターの水はほぼ空になっている。ラジエーターが腐食していて水が漏れるのだ。だから…
二十八、 十一月に入り、コンパのセッティングに駈けずり回った。今回は学生料金が設定されている小料理屋を見つけることが出来た。日程も田代の都合に合わせることができた。前回はテーブル席だったが、今…
二十八、 十一月に入り、コンパのセッティングに駈けずり回った。今回は学生料金が設定されている小料理屋を見つけることが出来た。日程も田代の都合に合わせることができた。前回はテーブル席だったが、今回は…
二十七、夏休みが終わっても俺は魂が抜けた状態のままだった。そんな俺に原口が声をかけてきた。「佐伯、大丈夫や」「全然大丈夫じゃなかばい」「かなり重症のごたーね。やっぱ失恋したとや」「そうたい。失…
二十六、 夏休みになりまたガソリンスタンドのアルバイトに行くことになった。バイトの行き帰りの車の中では、重苦しいため息が車内の空気を深い海の底に沈めていく。この状況を打破しようと俺は仕事に没頭する…
二十五、 しとしとと降る雨に、紫陽花は憂いに満ち、艶やかな光を放っていた。降りやまぬ雨に嘆息し、粘着質の汗が背中にシャツを糊付け始めていた。そんなある日、山崎恵子から一通の手紙が届いた。 佐伯君、…
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