◇『巨匠とマルガリータ(上)』著者:ブルガーコフ訳者:水野忠夫2015.6岩波書店刊近代ロシア文学の巨匠の一人ブルガーコフの代表作。死後26年経って完訳が出版された。彼の作品はスターリン時代にあって何度も出版が拒否された。大作「巨匠とマルガリータ」もゴルバチョフのペレストロイカによってようやく日の目を見たのである。出版社は幻想小説とうたっているが、確かに時空の飛躍と奇想天外なシチュエーションの展開で気も動転し息もつかせないことしばしばであるが、幻想的というよりは創作世界の中に巧みにリアルな世界(当時のロシアにおける政治的・思想的現実社会)を組み込ませる韜晦の手立てと見ても良いかもしれない。時空の飛躍とパトリョーシカのようなキリスト神話の登場、劇画のような黒魔術団の暗躍などが軽快かつコミカルな文体で流されて...ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ(上)』