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東の遊覧船 http://momomin0206.blog.fc2.com/

東方神起、ユノとチャンミンが主役の妄想ホミンBL小説です。R18仕様記事有り。

こんな設定のこんな2人ならいいな(≧∇≦)という妄想を小説仕立てにしたサイトです。切ないシーンも多いですが、甘くなるためには欠かせません^ ^キャラ設定はホストや教師、これからもいろんな職業についてもらう予定です(笑)メインは会話でお話が繋がっていきます。 現実世界から逃避して美しい2人に癒されたくて書いています

百海
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2015/10/01

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  • あなたのとなり完〜続・夜香花

    快晴の日Changmin's Cafeのドアには可憐な花のリースが掲げられていた。店の中も色とりどりの花で埋め尽くされているクラブイーストのホスト、上客の女性たちテミン、ミノ、シウォン、ヒチョルカフェのバイトたち、そしてパティシエ華やかに正装した面々が、楽しそうにカフェに入っていく中で出迎えたのは お揃いのタキシードを着たユノとチャンミンだった艶めくシルバーのシルク襟元にはしっとりとした黒いビロードシンプルな...

  • あなたのとなり19〜続・夜香花

    「ほんとうに僕は…なんて言ったらいいのか」Changmin's Cafeが開店する前の誰もいない店内ソユルが店の入り口で項垂れて立ちすくんでいる向かいに立つチャンミンが優しく微笑んでいる「その時のこと、あんまり覚えてないから、僕」「そんな…」優しさで覚えてないなんて言ってくれるのだろうかソユルは思ったどうかしてたあの夜はほんとうにどうかしてた許される出来事ではなかったはずなのに目の前のチャンミンは笑っている「僕の...

  • あなたのとなり18〜続・夜香花

    ユノとチャンミンとソユル3人の身体が交差してそのタイミングを見逃さなかったユノが瞬時にソユルと向き合う形になったユノはソユルの耳元でささやいた「お前に罪を犯させたくない」何かに取り憑かれていたようなソユルの表情が目覚めたようにハッとして、泣きそうなそれに変わった「あ…」「わかるよな、オレの言ってることが」「…ユノ…さん…」震えるソユルの手からカシャリと音がしてキラリと光るナイフが落ちたソユルの手首はユ...

  • あなたのとなり17〜続・夜香花

    2人は裏の空き地に出たチャンミンはずっと泣いている怖かった思いとユノに会いたかった思いとそして安心して一気に解けた緊張と「ごめんなさい…ごめんなさい…僕…」「怖かっただろもう大丈夫だ」「僕は…ほんとに…うう…」泣いてよろけそうになるチャンミンをユノが支えた「とりあえず泣くだけ泣け」ユノは優しく笑ったチャンミンはしゃくりあげている「ユノ、怒ってるでしょう?」「……」ユノはため息をついた優しい表情が真剣なそれ...

  • あなたのとなり16〜続・夜香花

    クラブイーストは開店準備が始まった珍しくオーナーのヒチョルが顔を出していたソユルは面接の時に会ったきりのヒチョルに挨拶をした「なかなか頑張ってるらしいじゃねぇかユノの面倒見はどうだ?」「はい、いろいろと教えてもらっています」「そっか、ま、がんばって」「はい!」ソユルの肩をヒチョルはポンポンと叩いた出勤してきたユノがなぜかソワソワとしているのがソユルは気になったヒチョルがなにやら険しい顔つきでユノを...

  • あなたのとなり15〜続・夜香花

    チャンミンはむっくりとベッドに起き上がったジヨンのマンションの別室客用の寝室がある豪華な高層マンションだったジヨンってなにをしてるんだろう人懐こいジヨンに誘われるがまま泊まらせてもらってバイトまで紹介してもらって…ジヨンのことは何も聞いてないま、そんなもんかなチャンミンはベッドから出て窓から街を見渡したユノ…僕たちのマンションはどの辺だろうかユノは何をしているだろうスマホはずっと電源を入れていないユ...

  • あなたのとなり14〜続・夜香花

    クラブイーストの仕事がおわり事務所に入ろうとするユノにソユルが声をかけた「あの…ユノさん」「ん?」「もう、帰りますか?」「帰るけどなに?話があるの?」「はい、ちょっと相談が…」ソユルも仕事が少し慣れてきてなにか新たな悩みが出てきたのかもしれないユノは優しく微笑んだ「いいよ、少し話を聞くよ」「すみません…」ソユルはペコリと頭を下げた「事務所で、いい?とりあえず、だれも入らないようにしておく」「はい」ユ...

  • あなたのとなり13〜続・夜香花

    チャンミンは今夜も先日と同じイテウォンの店でジヨンやいろんな女や男たちと騒いでいたチャンミンにとって、馴染みつつある友達と言えたユノとケンカをして飛び出して来たチャンミンを救ってくれた新しい仲間明け方、ウロウロとしていたチャンミンをジヨンが見つけて、家に泊めてくれたのだ「カフェが休みなら、ちょうどいいじゃないボクのところにしばらくいたらいいよ。カレシとの冷却期間ってことでね?」チャンミンはジヨンの...

  • あなたのとなり12〜続・夜香花

    翌朝、二日酔いで少し遅めに起きてしまったチャンミンベッドからむっくり起きあがり時計をみて驚いた横にはいつものようにユノが寝息をたてている昨夜どうやってここにたどり着いたのか思い出そうとしても思い出せないけれど隣にユノがいるということは特になにも問題なく、自分は帰宅したのだろうそう思ったチャンミンは急いで身支度を整えた眠るユノのそばにあった自分の腕時計を取るときにふと、ユノが寝ぼけてなにか言った?「...

  • あなたのとなり11〜続・夜香花

    チャンミンは通りに出てタクシーを拾った振り向いたけれど、ユノが追ってくる気配はないマンションのエントランスに灯る照明がポツリとチャンミンを見送っている。なぜかとても寂しげな光景だったもう、追っても来ないんだ僕がどこに行こうと、なにも気にしちゃいないんだ少し喉の奥がツンとしたチャンミンはタクシーに乗り込むと行先を聞かれた行先と言われても…この時間でどこか入れる店があるとするとイテウォンあたりか…「イテ...

  • あなたのとなり10〜続・夜香花

    その夜はチャンミンはまわりのホストのフォローにまわっていた。人手が足りないとは言っても特に指名があるわけでもなかったので、そんな役回りだった。ふと、客の楽しそうな笑い声に振り向くとそこにはソユルとユノがテーブルについていた何か失敗をしたソユルがテーブルを拭いているひたすら詫びるソユルを、優しい目で見守る女たちそんなソユルをユノがさりげなくフォローしている様が女たちの心を和ませているのだろう師弟愛そ...

  • あなたのとなり9〜続・夜香花

    それからテミンは店に顔を出さなくなった連絡はきちんと入っているようでヒチョルに言わせると「修行に出ている」というチャンミンはまたカフェに戻り、クリスマスへ向けてケーキのデザインに取り組もうとしていた。元々、ホストの仕事がすごく好きだという訳ではない。ケーキを3タイプ考案して、その飾り付けや、ケーキに合うドリンクを考えているこの時間のほうが、チャンミンは好きだ。バイトの面々やパティシエも、チャンミン...

  • あなたのとなり8〜続・夜香花

    今夜はひさしぶりにイテウォンから流れてきたチャンミン贔屓の客たちが来ていたチャンミンが獲得した顧客だ少し派手に出迎える連れられて初めて来た仲間もいるらしく重厚な作りの店内を口を開けて見回している「いらっしゃいませ!今夜ボクがいるの知ってた?」「カフェ休みだったからこっちにいるかなーって思ってぇ」「急に来てくれてサプライズみたいうれしいなぁ」「チャンミン飲も!今夜はボトルいれちゃうよ」クラブイースト...

  • あなたのとなり7〜続・夜香花

    ソユルはクラブイーストの仕事に慣れ接客もかなり上手くなってきた収入はさすがにまだ上がらず店に出る時はいつも店のスーツを借りていたこんな高級な店に合うスーツなんてソユルが持っているわけがないあるとき、ユノが出勤前に会おうと言ってきたソユルの心は踊ったユノはあきらかに自分を特別に可愛がってくれているそれが伝わってきてソユルのテンションはあがるユノはソユルにスーツを作ってやるために行きつけのオーダーの店...

  • あなたのとなり6〜続・夜香花

    最後の客が引いて、クラブイーストはやっと閉店になったソユルは新人らしく片付けと掃除に勤しんでいた昨日より張り切っているユノは不思議そうにあたりをみまわしてからシウォンに話しかけた「おつかれ、シウォンチャンミンは?」「早くに帰ったよ」「帰った?」「指名もなかったし明日、カフェをみたいからって」「そうか…」ユノはチャンミンの気持ちが気になった指名がなかったから…寂しい気持ちで1人帰らせてしまったのではな...

  • あなたのとなり5〜続・夜香花

    ソユルは言葉を発することができずに立ち竦んだその人はスッと椅子から立ち上がりゆっくりと振り向いた背が高い厚みがあるけれどスッキリとした身体を上質なスーツが包んでいた自分のカフスを整えながら優しげに微笑むその人の全身から発するものはいったいなんだろう心臓のドキドキが止まらないこのまま倒れてしまうのではないかそんな気がしてきてソユルは冷や汗が出てきたその人はゆっくりと近づいてくる圧倒的なオーラだ見事な...

  • あなたのとなり4〜続・夜香花

    「なるほどね」昼間の明るいカフェでジーンズにリネンシャツというカジュアルなスタイルのユノがソーダのグラスをテーブルに置いたその節だったセクシーな指がグラスから離れる美しい所作を隣でチャンミンが眺めていたユノはスニーカーを履いた脚を組み替えたジーンズの裾から覗く細い足首がセクシーだ目の前のシウォンも胸元のあいた薄いセーターでカジュアルな昼間のスタイルだったチャンミンのプラチナブロンドがよく晴れた今日...

  • あなたのとなり3〜続・夜香花

    「今夜からお世話になります、パク・ソユルです」ヒチョルは驚いたようにソユルを見つめたシウォンは少し得意げな表情でヒチョルの顔を覗きこんだ「なかなかいいだろ?ん?」「なかなかなんてもんじゃねぇな」値踏みされているような視線にソユルはたじろいだまだ少年の面影が残る清潔感のある美しい青年ソユル清廉とした面持ちだけれど釣り上がった眉がりりしく、どこか男らしい強さも持ち合わせていた「流行の男の子じゃないとこ...

  • あなたのとなり2〜続・夜香花

    その日、ユノがカフェの仕事から戻るとチャンミンの姿が見えなかったまだ寝ているのかと思いユノは寝室を覗いたチャンミンがいたチャンミンは真っ黒なパーカーを頭から深く被り電気もつけず、暗闇の中でこちらに背を向けてじっとしてベッドに座っているのが見えた「チャンミン?」「……」返事はなかった「どうした?何かあった?」ユノの心に黒い不安が立ち込めるいつも、なにをしていてもユノはチャンミンのことが心配だった2人が...

  • あなたのとなり1〜続・夜香花

    流行は短いスパンで変わるものだ時と共に街の空気が変わるそれはあっという間だ気づけば、「流行りの男」というのも様変わりして女を相手にする生業では、みんなが上手くその変化についていこうとした。ある意味、その変化について行かなければこの夜の世界ではあっという間に淘汰されてしまうソウルで5本の指に入る「クラブイースト」も例外ではなかった。いわゆる「大人の男」が流行った頃とは変わって今は「可愛い男」が流れの...

  • 手を繋いで 完

    店のドアが開くと、風がふわっと入ってきた愛おしい待ち焦がれたその姿が風と共に入ってきた何度も夢に見た笑顔だった恋しくて、思い出すたびに泣いていた愛おしい笑顔だった「ただいま、チャンミン」忘れたくても忘れられなかったその優しく低い声がチャンミンの心に響くせっかく近づいてきてくれるその姿が涙で滲んで見えない「ユノさん…」愛おしい名を呼ぶ声はすでに涙が混じって…言葉にならないチャンミンはずっと心に決めてい...

  • 手を繋いで 34

    民宿の仕事をひととおり終えたユノは浜辺にシートをひいて、ひとり寝そべり、空を見ていた風は秋の香りを孕んで浜辺の人影もめっきり少なくなったそろそろ、この民宿での仕事は終わりに近づいている契約は来週までサンウとミヒの小さな愛の出来事を側で見守ってからユノの心はずっとザワついているなぜかユノの気持ちは焦りを感じていた旅をしている意味もわからなくなってきたような気がするだからといってバニョレに帰るのは怖い...

  • 手を繋いで 33

    ユノがバニョレを離れて数ヶ月が過ぎた宿代わりに、あちこちのリゾートで短期のバイトをしながら旅を続けていた孤独な旅のつもりだったけれど意外と人との出会いは多かったその紹介で次のバイト先が見つかることなどもあった今は、海沿いのリゾートの小さな民宿でバイトをしているハイシーズンを迎え、民宿は大忙しだユノは料理の手伝いもこなしながら民宿のオーナー夫婦の子供の面倒も見ていた特に末っ子の男の子、サンウがやたら...

  • 手を繋いで 32

    チャンミンは自分の気持ちをまっさらにしようと思ったユノがどうだとかヨジンがどうだとか今はそのすべてをまっさらにしてとにかく、ピュアな状態でドフンを感じようと思ったそれは、ユノへの愛をしっかりと自分で認めるためでもあったその日、ヒチョルが車で迎えに来てくれた「おはようございます今日はありがとうございます」「うん、ま、これはミッションだから」ヒチョルがあえて義務的に言ってくれたのがチャンミンにはありが...

  • 手を繋いで 31

    ユノは大通りに出るまで、ミラーを見ないようにした遠くなっていくバニョレを見たくなかった心が…チャンミンのいるバニョレから離れられない自分で決めて離れたくせにすでにこんなんでどうする?アクセルを踏むとエンジンが怒ったような音を出すしっかりしろよ、俺ユノは少し走っただけで、結構遠くまで来ることができた道路も空いていたし、バイクの調子もよかったユノは川沿いの雑草が生えた河川敷にバイクを停めて草の上に直に...

  • 手を繋いで 30

    晴れた朝ユノは革のライダーパンツとブーツを履いていた上はTシャツだったいよいよ、ユノがこの店を離れるのだその日のユノはあまりに眩しすぎた細くて長い脚に、革のライダーパンツがしっくりと馴染みその鍛えられた上半身は、革のハードさに負けない迫力があったチャンミンはわざとなんでもない風に装ったいつもの通りに行動した店の外を掃除して窓を拭いた一生懸命にこなしたユノだけが、なにか言いたげにチャンミンのまわりを...

  • 手を繋いで 29

    ユノはヒチョルと午後遅めのランチをとっていた店を任せるにあたって打ち合わせすることがたくさんあった「本当に助かるヒチョルがいてくれてよかった」「大丈夫、片手間にやらせてもらうから」ユノは笑った「片手間は困るなちゃんとヒチョルの収入にもなるんだぞ」「テミンとチャンミンに大体は任せるよ」「ヒチョル…」「悪いが…チャンミンを雇わないっていうお前のわがままは聞けないチャンミンの意志に任せるよ」「……」「そのか...

  • 手を繋いで 28

    それからも淡々と、バニョレは営まれたいつもと変わらない風景に見えてそれでもバニョレは変化していたユノは店をヒチョルに任せる手続きなどに忙しくなりたまにリゾート地から電話がはいることもあったそんなユノを、チャンミンは何も言わずに見守っていた日ごとに寂しさが募りチャンミンはユノの気持ちを覆すことができなかった自分が悔しくてたまらなかった。ユノは自分の出発の準備が整うにつれてチャンミンの事が心配で、少し...

  • 手を繋いで 27

    バニョレへ向かう朝の道ユノはスマホの着信をタップした「はい」「ユノさん、いいバイク見つかりましたお待たせしちゃってすみませんでした!」「え?」いきなりのバイク屋からの元気な声「後で画像添付してメールします。この金額でこのスペックはなかなか出ないですよ。もし、よかったら先に押さえておこうかと思って連絡したんですけど」「あ…えっと…」「お待たせしてたんで、まずユノさんにお知らせしなきゃと思って」「……」「...

  • 手を繋いで 26

    しばらく、ブラウンのフォトフレームを見つめていたチャンミンは思い立って3階のユノの部屋へ行ったインターフォンを押すとひょいとユノが顔をだした黒い短パンにオリーブ色のカットソー姿でシャワーを浴びたばかりのようだ「チャンミン…」「あの、ちょっといいですか?」チャンミンがそう言うと、ユノは困ったような表情をした「すぐに済みます。どうしても聞いてほしいことがあるんです」チャンミンの真剣な瞳をユノは直視できず...

  • 手を繋いで 25

    チャンミンとヨジンを送りだして2人がカフェへと向かう後ろ姿をユノは心配そうに見つめていたそんなユノの肩を誰かがポンと叩いたびっくりして振り向くと、そこにはヒチョルがいた「ちょっとだけ話したい店の中でいいんだけど、忙しいか?」「あ…入って」ヒチョルは少し現実離れした重大な話を順序立てて、ゆっくりと説明した棚の服をもう畳む事なくユノは一点を見つめていた「…生きて…るんだ」落ち着いているように見えてユノの指...

  • 手を繋いで 24

    パニョレのセールも終わり近所の大学も試験休みに入り店に訪れる客の数は落ち着いてきたテミンは少し遅めにやってきていきなりユノとチャンミンに挨拶をした本当に突然の挨拶だった「僕、イタリアに帰る」「え?帰るって…テミンくん…」「なんだよ、突然帰るなんて」ユノが驚いて、テミンの手を取ったテミンがその手をギュッと握り返す「だってもう店に三人もいらないでしょ」「だけど…急すぎるよ」「ユノ、寂しい?」「寂しいよ、...

  • 手を繋いで 23

    ヒチョルは2人をアパートの前に下ろして帰っていった泣いたまま眠っていたチャンミンは目が腫れていた起き抜けの顔が子供みたいだいろいろと気持ちを吐き出したので少し不安定なのではないかとユノは心配した「しばらく一緒にいてやるから」ユノはチャンミンの部屋のドアを開けてやり一緒に部屋に入った「すみません…」チャンミンはぽつりとつぶやくとトボトボと自分の部屋に入っていった「さっき、ヒチョルにコンビニ寄ってもらっ...

  • 手を繋いで 22

    チャンミンは決心したドフンにユノを紹介するんだ今…僕が大好きな人ごめんね、そして、思い出をありがとうどうか僕を許して、そして見守って空は雲ひとつない青い空爽やかな風が吹くいい天気ドフンの墓参りに行く時はいつも良い天気だった同じアパートの3階に住むユノが1階のチャンミンの部屋を訪れたチャンミンは既に準備を整え、ユノを待っていた白いコットンパンツにブルーのリネンシャツ襟元がクタッとしているせいでチャンミ...

  • 手を繋いで 21

    チャンミンは以前と大きく変わったユノとの関係をテミンに知られまいと必死だったどうにも恥ずかしいし、テミンはいい気持ちがしないだろうそれでも、テミンはすべてをお見通しだった「僕、お昼ここで店みてるから2人でランチしてきてー」そんな風に、チャンミンとユノを2人にしようとしたりした。以前のようなチャンミンに挑む感じが見られない黙ってても醸し出す甘い空気にテミンもユノを諦めたのだろうかそうだとすると、少しテ...

  • 手を繋いで 20

    「おかわり頂戴」ヒチョルが空のグラスをバーテンダーに差し出した「同じので」「かしこまりました」「あと、こいつに何か甘いやつ」「お酒ですか?アーモンドのチョコかけですか?」「すいませんね、チョコのほう」ヒチョルの注文にバーテンダーがにこやかに微笑んだユノがふーっとため息をついた「勝てないな…俺。ドラマみたいな過去だった」「うーん…そうねぇ」「で、そのキム・ドフンていうのが、ヒチョルの友達だったんだろ」...

  • 手を繋いで 19

    キスをした時に少しだけ期待したいつか、こんな風にチャンミンを抱ける日がくるのかとまたこんな風に愛する者の手を強く握りしめてもうどこへも行かないようにしっかりと繋ぎとめておきたくなる俺に俺の身体に俺の心にもう、どこへも行かないでこのまま、俺のそばにずっといてほしい俺はそのためなら、なんでもするチャンミン…何を望んでいる?俺に…何をしてほしい?息遣いは次第に荒く、激しくなるごめんね…ドフン朦朧としたチャ...

  • 手を繋いで 18

    自分のことをユノに話したほうがよいとテミンに言われたけれどチャンミンは自分のことを話すよりユノの事をもっと知りたいと思った自分の夢より、好きな人…それも片思いの…その人の最期を看取ることを選んだユノの想いを聞きたかったユノの言葉でその日の営業が終わり売り上げの計算と服の片付けいつもの作業の途中で、テミンがリュックを背負ったユノがそんなテミンに声をかけた「もう帰るのか?」「うん、仕事の途中なのにごめん...

  • 手を繋いで 17

    よく晴れた朝だったユノとキスをした翌朝意外にもすっかり熱が下がっていたチャンミンはどんよりとした重苦しい気持ちの中、洗面台に立った。鏡の中の病み上がりの自分チャンミンはそっと自分の唇を撫でた昨夜のユノの唇の感触を思い出したいと思ったドフンへの罪悪感を払拭するためにあの甘い時間をもう一度思い出したいはぁーっとため息をついてチャンミンはいつものように顔を洗い歯を磨いて身支度を整えた紅茶とパンと少しのフ...

  • 手を繋いで 16

    ユノは荒くなる息を落ち着かせながらそっと静かに唇を離したそれでも尚、ユノの大きな手はチャンミンの後頭部を支えたままだった至近距離にあるユノの真剣なまなざしをチャンミンは真正面から受け止めることができず思わず目を逸らしてしまったその仕草が儚げで、ユノの心を奪う「今の…イヤじゃなかったと思っていい?」ユノの声は掠れていて、そして甘く優しいチャンミンは目を閉じて、コクリとうなずいたドフン…ごめん…そう心が...

  • 手を繋いで 15

    チャンミンは何事もなかったように仕事に戻った平静を装っているけれど、手が震えているユノさんが…そうだなんて…そして…僕と同じように…過去に傷を持っているテミンが楽しそうに接客をしている横でチャンミンはひたすら棚の服を畳んでいた額に汗が滲んできたユノが自分と同じ嗜好であることにチャンミンの心はまだ動揺している平行線であるはずの自分たちの関係に突然道が開けたような、そんな感覚に陥ってしまうそして、ユノがゆ...

  • 手を繋いで 14

    翌日、なんとか気持ちを整え割と穏やかな気持ちで出勤したチャンミンはいつものように、店の前の掃除から一日がはじまったユノの方は正直言って、チャンミンのことが気になり昨夜はよく眠れなかったけれど、いつも通りに出勤したチャンミンを見てほっと胸を撫で下ろした眠れなかったことなど悟られないようにユノは表情を一旦整え、店の奥から出てきた「おはよ、早いねチャンミン」「あ、おはようございます」ユノは今日もカッコい...

  • 手を繋いで 13

    ヒチョルと別れてユノはアパートへ戻ってきた3階の自分の部屋に行く前に1階の端っこにある、チャンミンの部屋をチラリと見た灯りがついているまだ起きているのかなぜ、さっきは泣いていたのだろうチャンミンはテミンに嫉妬したのだと一瞬、自惚れてしまった自分だけどよく考えたら、ヒチョルの言う通りだ純粋でまっすぐなチャンミンのことだきっと、テミンにいろいろ言われてやる気が折れてしまったのかもしれない売り上げ集計も、...

  • 手を繋いで 12

    店が終わって、ユノとチャンミンはパソコンに向かって今日の売り上げを確認していた2人でモニターを見ながらチャンミンが一生懸命説明をしている。ユノはモニターを見ているようでどっちかというと、説明をしているチャンミンを見つめている方が多いそんな様子をテミンは何も言わずに見ていたけれど我慢できなくなって口を挟んだ「ユノ、ちゃんと売り上げ確認してるの?」思わず言ってしまう「してるよ、今日はなかなかの売り上げ...

  • 手を繋いで 11

    休日の翌朝今日からユノの店「バニョレ」は季節の変わり目のセールがはじまる小さい店だけれど、楽しみにしてくれている客もいるウィンドウにはユノとチャンミンで作った「SALE」のバナーが大きくひとつ貼ってあるよく見るとモザイク処理を施した凝った造りで2人で夜遅くまで紙をちぎっては貼り付けながら作った力作だチャンミンは窓を拭きながら眩しそうにそのバナーを見つめたこれは、2人で作ったのだいろんな話をしながらユノさ...

  • 手を繋いで 10

    店の定休日チャンミンはドフンの墓を訪れたユノの店へ面接に行く前に来てからだから1ヶ月ぶりだ花を買う時になぜか、いつもより大きな花束を買った墓地へと上がる坂がいつもより勾配がきつく感じるドフンの墓標の前に立ち、膝まずき花を添えるけれど、チャンミンは墓標から目を逸らしてしまったなぜか、ドフンの墓標を直視できない後ろめたいような感情がチャンミンを支配するチャンミンの額に汗が光る心に焦りを感じ、気持ちが落...

  • 手を繋いで 9

    コーヒーのいい香りがしてきたユノは器用に大きなマグカップを2つ片手にもち、もう片方の手で店から持ってきた書類を手にローテーブルまで来た「まずは飲んで」「はい、すみません、いただきます」チャンミンはマグカップを両手で包むように持ち唇をすぼめてコーヒーをすすったそんなチャンミンの可愛い仕草に心奪われながらユノもコーヒーを一口すすったカップを置いたチャンミンの目が輝いている「美味しいです、すごく」「すご...

  • 手を繋いで 8

    次の日、仕事が終わりチャンミンはセールの準備をしなければと思っていたガーランドを作ったりするとユノは言っていたけれどいろいろと手伝いたい「あの、どうしますか?ガーランドとか作るって」「うん、悪いけどオレんちに来てもらっていいか」「え?ユノさんの…家に?」「ここじゃ場所がないし、隣のカフェでいろいろ広げるわけにもいかないし」「はぁ、ま、そうですね」「俺の家、ここからすぐなんだよ」バタバタと店を片付け...

  • 手を繋いで 7

    翌々日「おはようございます」チャンミンが普通に出勤した「おはよう…」想像していたより明るいチャンミンにユノは驚いたもう、今日は出勤してこないのではないかとユノは恐れていた飲みに行こうと誘ってしまいかなり強めに拒絶されてしかも酔って電話をかけるという最悪な行動自分の電話番号を登録しろと叫んでたとヒチョルに聞いた本当に…最悪…「掃除しちゃいますね」明るい笑顔でチャンミンはいつものように店の前を掃除しだし...

  • 手を繋いで 6

    それから、店の定休日まで5日間チャンミンはよく働いた朝から掃除をしてレジはほぼ完璧にできるようになったし服のたたみ方も、ユノに教わりながら少しずつ覚え始めている今日も店が終わってからチャンミンの方からたたみ方を練習したいのだとユノに申し出たユノは笑顔で快諾した「こうやって…先に肩の線を合わせると簡単だろ」「はい」見様見真似でチャンミンも服を畳む「速く畳まなくてもいいんだよ」ユノはそう言ってくれたユノ...

  • 手を繋いで 5

    チャンミンのバイト第一日目が終わった夕方にかけては大学の授業帰りの生徒が結構訪れてレジだけとはいえ、チャンミンは忙しかった外はもう暗くて20時を閉店とする店はやっと客足が少なくなったユノは店の札をclosedに変えて、カーテンを閉めた「思ったより忙しかっただろ?」「はい、計算を間違えてないか気になります」「そう?」「結構現金のお客さんが多くて」「学生ばかりだからねこれから、売り上げを計算するよ」「はい」現...

  • 手を繋いで 4

    チャンミンは慌てた「いつまでも掃除してちゃダメですよねすみません」「コーヒー飲もう」「はい?」これから開店して仕事がはじまる、という気分だったチャンミンはいきなりのコーヒータイムに驚いた「開店してもしばらくは誰も来ないよ隣のカフェにいれば、お客が来ればわかるし」「あ、そうですか…はい」チャンミンはユノの後について隣のカフェに入った隣のカフェもまだオープンしたばかりで客は自分たちだけだ「オッパおはよ...

  • 手を繋いで 3

    翌朝、ユノはいつもより少し早めに店に出向いた窓の内側のカーテンを思いきり開けたけれどcloseの札はまだそのままにしておいたチャンミンにレジのことなどを教えるのにあたって開店準備の時間を多めにとりたいユノの心は、弾んでいた今日からあのチャンミンと一緒に自分の店で仕事ができると思うと嬉しかったやがて、チャンミンがやってきた予定の時間より少し早いガラス戸の外で戸惑っているようだどうやって入ればいいのか、わ...

  • 手を繋いで 2

    一目惚れ…だった店に入ってきたチャンミンを見た時にもうそれを自覚せざるをえなかった 予定の時間より少し早めに、店のガラス戸が開いた狭い店には、面接をするスペースどころか座るところもない店のフロアと、奥の倉庫だけ倉庫と行っても、家庭のウォークインクローゼットくらいの広さしかない倉庫で片付けをしていたユノは人の気配に、フロアに顔を出したそこにいたのはまさに…天使だった天使は不安そうに…そこに立っていた縋...

  • 手を繋いで 1

    愛するひとのその手を離してはいけない…とチャンミンは思った愛するひとのその手を離してやればよかった…とユノは思った チャンミンがユノを知ったのはマップアプリのストリートビューの中だった…間接照明をひとつつけているだけの、暗い部屋ひとりぼっちには慣れっこの夜チャンミンがこの部屋へ引っ越してきたのはごく最近だなるべく人との接触を避けてひとりアパートでエンジニアの仕事をしていたネットで仕事をもらい、ネット...

  • 宴のあと

    壁一面がガラス張りの店内漆黒の夜空の下には、きらびやかなソウルの夜景が広がっているまるで一枚の大きな絵画のようなその景色をユノは革張のソファにゆったりと腰掛けて眺めていた友人が貸し切りで借りてくれた、店の大きなパーティスペースつい30分ほど前まで、この部屋には100人を超える客が騒めき、飲み食いをし、歌を歌っていた仲間たちがユノの誕生日を祝って催してくれたパーティだったさっきまでは室内が明る過ぎてこの...

  • この世の果て 完

    チャンミンは全身が映る鏡で自分の服装をチェックしたかつて、ユノの前でよく着ていた服を選んだ白いコットンのパンツに紺色のセーターベージュのダウンジャケットこの組み合わせはユノと少しカジュアルに出かける時によくしていたスタイルだ思い出してくれるだろうか自分を愛してくれたことを思い出すだろうかユノを失ってからその面影を消すためにユノの持ち物はすべて処分してもらったけれどこの1週間かけて、部屋を整えたリネ...

  • この世の果て 39

    殺風景な会議室に1人待つチャンミンなかなかイ・ユアンは姿を見せないどうしたのだろうか窓の外を見るといつものビルばかりの風景だ見慣れたこの景色はついこの間までグレーのデッサン画のようにしか見えなかったのに今日は色づいて見えるから不思議だコツコツとノックの音がしてチャンミンはハッとした「ど、どうぞ」さっとドアが開いてユアンの長身が覗く「…失礼します」「あ……」チャンミンは慌てて、オフィス机の方にユアンを誘...

  • この世の果て 38

    チャンミンはいつになく緊張していた今日ははじめて、イ・ユアンと対峙する日だグループの社長が開発反対派と直に会うなんていかがなものかと、社内ではそんな意見が多かったけれど、反対派の方としてみれば敵の将軍が自ら出向いて来る、ということならこちらも誠実に向き合う、という心づもりでいた会社の大きな会議室で対峙することとなった思ったより大勢でおしかけてきた反対派のほとんどを外に出してチャンミンは反対派の幹部...

  • この世の果て 37

    ドンホは息をのんだチャンミンの瞳が悲しげに輝いてドンホを責めるように見つめるあまりに真剣なチャンミンにドンホは視線を逸らすことができない「ユノを…どこにやったの…」「チャンミン…」ドンホもしっかりとチャンミンを見つめてゆっくりと話しはじめる「じゃあ、聞くけど」「なに?」「2人とも…あの時、生き返ったとして…」「……」「元の生活に戻れたと思う?」「……戻れたよ、もちろん」「ユノ先輩は…僕に頭をさげに来た」「……...

  • この世の果て 36

    イ・ユアン報告書のタイトルに書かれた名前チャンミンは食い入るようにその書類を一語一句逃さぬように読み進めていったあの漁村で生まれた男ではなかった読み進めていくうちに書類を持つチャンミンの手が震える2年前ふらりとあの村にやってきた男車で山の中まで連れて行かれそこで降ろされて、一人でここまで下りて来たなどと言っていたらしい身分証などはないイ・ユアンという名前は…最初は不審に思われたこの男を村の長老が引き...

  • この世の果て 35

    チャンミンが、何度か自らの命を絶とうと試みたのはユノの元へ行きたいそれがただひとつの理由だったもうドンホはチャンミンに薬草を処方することはないチャンミンは他の方法で願いを叶えたくてもその立場がそれを許してはくれなかった同族で占めた会社の管理者たちにとって坊ちゃん育ちのお飾り上役は都合がいい何かの時には責任を押し付けて追い出せばいいのだ死なせるわけにはいかないチャンミンのまわりにはぴったりと護衛が付...

  • この世の果て 34

    パク刑事は、署の自分のデスクでひとりタバコを吸いながら、考え事をしていたもうすぐ定年を迎えるパク刑事のデスクにはそのための書類が積まれていた長年の刑事生活の中で意に沿わない仕事もいろいろとあったたとえば、あのユノとチャンミン子供が自分を守ろうとした行動がユノの年齢がちょっと刑の対象になったからといってそこまで突き詰めないといけなかったのか雇われの身で大人の自分がそこを守ってやれないことに歯痒さを感...

  • この世の果て 33

    「チャンミン、リゾートの候補地は下見に行く?俺たちは契約の方に立ち会えばいいと思っていたけど一回現地を見てほしいって」「僕たちで行きましょうか」「1泊くらいしか時間はとれないから効率よく見ないとだけど」専務の肩書を持つチャンミンが仕事の場なのに、どうしても笑を隠せないユノと2人でリゾートの下見ということが嬉しくて仕方ない「一泊だけど、居心地のいいホテルを探しておきます」「コテージ取ったよ」「え?ユノ...

  • この世の果て 32

    ユノはパク刑事に警告をしなければならないと焦ったチャンミンがまたパク刑事を排除しようとしているドンホへそのことを相談しているに違いないのだ車に乗るため、駐車場へ向かうとちょうどチャンミンが車を使って帰ってきたところだったユノを見つけて、チャンミンの顔がパァーッと明るくなったこんなに大人になった今でもチャンミンはユノを見ると嬉しそうに笑うその笑顔は子供のように可愛い そんなにも俺を見つけると嬉しいか...

  • この世の果て 31

    ソン医師からの報告書をパク刑事はコーヒーを飲みながら眺めていた難しい話はよくわからないこれは自分の領域ではなく別の部署に回そうパサッと書類をテーブルに戻しパク刑事は、先日自分を訪ねてきたある男を思い返していたチェ・ドンホ「名前はそうでも、君は韓国人ではないね」「難民だったのを今のご主人に引き取っていただきました」「ほぅ、なぜ君を?」「え?」意外なパク刑事の言葉にドンホは顔をあげた「いや、なぜわざわ...

  • この世の果て 30

    チャンミンが病院に戻ると血相を変えてユノが駆けつけたところだった「チャンミン!」「母さんが、死んだよ」ひどく落ち着いたチャンミンがユノの手をとる「ごめんね、ヒョン」「……」病室が並ぶ廊下でユノはまじまじとチャンミンを見つめた信じられない、と言いたげなユノの表情それは、美しいチャンミンの恐ろしい仕業に対してだ「ちょっとおいで、チャンミン」ユノはチャンミンの手を引いて廊下の隅に来た誰にも聞こえないように...

  • この世の果て 29

    「ドンホ?どうしたの、その顔」チャンミンが驚いたようにドンホを見た「ユノ先輩に殴られたよ」さらりとドンホは答えた「え?ヒョンに?どうして?」チャンミンは一瞬驚いたユノが誰かを殴るなんてことは初めてだ「…あ…まさか」「バレてるよ、ユノ先輩には。チャンミンが何をしようとしてるか」「……」チャンミンが不安そうな顔をした「それでも…チャンミンを庇おうと…」「僕を庇う?」「悪いのは、この僕ってことで。チャンミンは...

  • この世の果て 28

    今朝もチャンミンは自分の洗面のついでに母の歯ブラシに小さなスプレィで液体をかけるなんてことはない、すでに毎朝のルーティーンのひとつだ「母さん、今日も仕事休み?」「ええ、だるくて…どうしたのかしら」「お医者様はなんて言ってるの?」「いろいろな数値は確かに悪いけれどその原因がわからないって」「もう少し、きちんと調べたほうがいいんじゃない?」「そうね…」チャンミンはベッドに横になる母をチラッとみやり大学へ...

  • この世の果て 27

    出勤したユノは愕然とした「ごめんな、ユノくん、すごく良く働いてくれてたのに」「あの…よく意味がわからないんですけどどうして僕がクビなんですか?」「君さ、いいとこの坊ちゃんだったんだね」「……」「こんなところで、働かなくたって大丈夫でしょもう、こっちが拉致したみたいな言い方されてさ」「誰に…何を言われたんですか」「君のママ」「あ……」「辞めさせてくれってさ」「あ、母は僕が説得しますからですから、あの…」「...

  • この世の果て 26

    母からチャンミンに話があるという進学の事でチャンミンの意向を聞きたいらしいそれはチャンミンにとって、嫌な予感しかなく母の自室に行く足取りは重い「そろそろ大学を決めないといけないわね」「僕、このまま付属の大学に行くから」母は、大学のパンフレットをめくる手をとめてチャンミンを見た「チャンミンたら、おかしなことを言うのね」「なにか、おかしい?」「そんなこと、許されるわけないじゃないの」「どういうこと?」...

  • この世の果て 25

    泊まりたいのを我慢してチャンミンはユノの部屋から出て行くユノが駅まで送ろうとするのをチャンミンはやんわりと拒否した「明日、仕事でしょう?」「だから?」「だから…ヒョンはもう寝なよ」ユノは笑う「何言ってんの、お前」「だってさ…」「ギリギリまで一緒にいたいのは…俺」「……」「終電なんかで帰ったら、母さんが心配するから早く駅に行こう」2人は連れ立って駅まで歩くゴミが風に舞うような町決して品の良い町ではないその...

  • この世の果て 24

    遊具で遊ぶ子供たちをチャンミンが無表情で見つめているユノが一通り、母に言われた話をした2人の関係を知られていることロンドンへの留学という名目で2人を離そうとしていること「そんなこと…僕が耐えられると思う?」「……俺だって、耐えられない」「それでもヒョンはロンドンに行くつもりなんだね」「俺…母さんを裏切るわけには行かないと思ってるでも…」でも、と言ったユノをチャンミンが見た「チャンミン、俺、大学に行くのは...

  • この世の果て 23

    母は今日も出勤していた専業主婦で、傲慢な夫の元でビクビクしながら暮らしていた日々が嘘のようだ仕事はやりがいもあり次第に、チャンミンとユノに会社を引き渡すことが惜しくなってきたりもしている自分も何かしらの地位をもらってこれからも張り切って仕事がしたいそう思っていた1人でランチをすることにも慣れたそれはとても自立してカッコいいことに思えて気分がいい今日も、洒落たカフェで簡単なランチをとる「あら?お母様...

  • この世の果て 22

    チェ・ドンホはユノに呼び出されたランチの時間がはずれたレストランの個室たぶん、特別に開けてもらったのだろう自分の連絡先をどうやって知ったのかチャンミンが教えるとは思えずあのユンホ先輩なら喜んで教える人間もいるだろうけれど自分の連絡先なんていったいどのくらいの生徒が知っていたというのか「科学部の部長に無理言って教えてもらったんだ悪く思わないでほしい」それがユノの答えだった凛とした佇まい男でも惚れ惚れ...

  • この世の果て 21

    電話の向こうでチャンミンは泣きわめいていた「落ち着いて、チャンミン」声にならない叫び声をあげるチャンミンにドンホの声は届かない「いい?よく聞いて!」ドンホがさらに大きな声を出すとチャンミンは少しだけ黙った電話の向こうから強い呼気の音がする「救急車は呼ばないで心臓が動いているのは確認したね?」「う、うん…」「家には誰もいない?」「お手伝いさんとか…いるけど」「気付かれてない?」「うん」「そのまま待って...

  • この世の果て 20

    季節が変わり、父の容体は次第に悪くなってきた原因を探ってもわからず薬を変えても一向に良くなる気配はなかった身体機能の様々な数値がゆっくりと落ちていく、という調子で医師たちも原因を断定できずにいた父はもう文字盤で意思表示をする、などということもできず、ただ息をしているという状態だった結局、パク刑事もどうすることもできずチャンミンたちを気にかけながらも日々の仕事に追われて時が過ぎていたそうして、また冷...

  • この世の果て 19

    ドンホはゴムの手袋をはめて丹念に薬草を選別していた主人から頼まれたいくつかの茶や軟膏を作るためにそして、チャンミンのためにチャンミンはドンホの作業を少し離れた場所でじっと見ていたドンホはチャンミンが衝動的に事件を起こしてしまうのではないかと恐れ、放っておくことができなかったそんな危うさがチャンミンにはあったのだドンホはチャンミンのために結局は、力を貸したチャンミンが犯罪者になってしまうのなら自分が...

  • この世の果て 18

    帰宅したユノとチャンミンを母が出迎えたその顔が緊張している「どうしたの?母さん」「刑事さんが…いらしてるのよ」「……」母の笑顔が引きつっていたリビングに入ると、パク刑事がソファから立ち上がった「やぁ、ユンホ君、チャンミン君すっかり大人になって」「……」チャンミンは挨拶をせずに、なんてことない風にソファに足を組んで座ったユノは訝し気な表情で軽く頭をさげた母がお茶をいれながら話はじめる「なにかね、お父様が...

  • この世の果て 17

    ユノのベッドの中でチャンミンは目覚めたとてもじゃないけれど身体中が痛くて起き上がれない「イタタ…」ぐーっと伸びをしたチャンミンはそんな自分に苦笑するなんとも言えず…幸せだふと見ると隣にいたはずのユノはいなかったシャワーの音が聞こえているユノの音だ…チャンミンは薄っすらと微笑むこの上ない幸せな気持ちが溢れてまた布団に潜り込んだユノがシャワーから出てきてベッドに近いた「チャンミン?」ユノの長い指が布団を...

  • この世の果て 16

    チャンミンと連れ立って帰宅したユノ時間が経つにつれ落ち込みがひどくなり早々に自室に入ろうとしたチャンミンが、そっと引き留める「ヒョン、ドンホのことは本当に大丈夫だから僕が勉強サボってたからヒョンが怒ったとかなにかそんな風に話しておくよ」「……ああ、頼む申し訳なく思ってると、伝えてくれるか?」「その…ミンスさんのフォローはヒョンに任せるけど」「ミンス?…ああ、うん」チャンミンは呆れたようにため息をついた...

  • この世の果て 15

    「ねぇ、ユノ」「なに?」一生懸命に財布を選ぶユノの側で退屈そうにミンスが声をかけた週末のショッピングモールは家族連れやカップル、学生のグループなどでごった返している店内にはクリスマスソングが響き渡り赤、緑、金色に彩られた飾りつけが煌くユノはチャンミンへのクリスマスプレゼントを選ぶのに熱中していた。お目当ては財布だった「さっきから、私はその黒いのがいいって言ってるけど」「でもさ、これ、小銭入れが狭い...

  • この世の果て 14

    ドンホはこのところ、毎日ドキドキしながら、下校するそれは…「おーい、ドンホ」いきなり呼び掛けられてドンホは驚いて振り返ったみれば、あのチャンミンがドンホに向かってにこやかに微笑みかけている「チャ、チャンミン…」まただ…今日もまたチャンミンが自分に声をかける「こっち来いよ!」仲間に囲まれて、校庭で話をしているチャンミンがなぜ自分を呼んでいるのかドンホはチャンミンが理解できないその証拠に、チャンミンの周...

  • この世の果て 13

    チャンミンはいつものように仲間たちに囲まれて下校するワイワイと楽しそうに本当は…ユノとミンスに会わないように気を使いながら歩を緩めたり、少し急いだりいつまでたっても、2人を冷静に見ることができず2人の仲良さそうな姿には慣れることができないチャンミンだったそのうち、仲間の1人が、科学部の活動をするドンホに気づいた「またドンホのやつ、汚い草をいっぱい拾ってる」チャンミンがふと見るとドンホは籐でできたカゴに...

  • この世の果て 12

    季節の変わり目のせいかチャンミンは発熱をして寝込んでしまった今月の父の見舞いには体調を崩していたチャンミンは同行せずユノと母だけで見舞いに行った帰宅したユノは寝ているチャンミンの様子を見に行った発熱をして、顔色が優れないチャンミンの寝顔をユノはじっと見つめた思わずその丸い頬に触れそうになりその手を止めた思い直して汗で額に張り付いた前髪をそっとかきあげてやり、手をあててみたまだ少し熱いうん、と言って...

  • この世の果て 11

    母が少し苛立っている「2人ともよく聞いて」それは食卓の席だった「お父様、少しだけ回復の兆しがあるらしいの」「……」ユノとチャンミンは固まった箸を持つ手が止まる「ずっとリハビリをしているとは聞いていたけどね」「……」「そうは言っても、完全に元に戻るなんて思えない。心配することないわ」母は自分に言い聞かせるようにつぶやく「……」「ただ…意志表示なんかできるようになったら困るわね」「……どうしたらいい?」ユノが母...

  • この世の果て 10

    ミンスとユノの付き合いは学生らしく爽やかに続いた本当にユノはミンスとのデートにチャンミンを連れて行くことがあった。チャンミンも、毎回断るのもいかがなものかと思われたとえば映画とか、あまり2人に関わらなくて良さそうな誘いには乗ったりもしていたけれどそれだって、チャンミンにとっては苦痛以外のなにものでもない時間何が苦痛かといえば青年へと成長したユノは男らしい精悍さに溢れ、爽やかな色気があって眩しいくら...

  • この世の果て 9

    チャンミンはめでたくユノと同じ名門校に合格し晴れて、中学生となったいつのまにか、チャンミンも少年から成長しただ可愛い男の子から、美しい貴公子のような青年へと変貌を遂げていた身長の伸びが凄まじくユノとほとんど変わらないところまで成長した。「ヒョン、待ってよ」「遅刻するぞ、チャンミン」「膝が痛くて、早く歩けないよ」「急に大きくなったからじゃないか?」「成長痛ってやつかな」「そうだと思う。いくら成長期っ...

  • この世の果て 8

    数日たって、母は父の担当医から呼ばれた神妙な面持ちの担当医から聞かされたのは父の命は助かった。けれど、いわゆる打ち所が悪いという状態で首から下が全く動かすことができなくなった。首も動かせず、話をすることもできないというそんな話だった。家族としては衝撃的な話のはずで担当医は言葉を選んで、わかりやすくマイルドに話したつもりだったが比較的、母の態度は落ち着いていた「治る…の…ですか?」「なんとも言えません...

  • この世の果て 7

    病院の待合室のベンチ夜で真っ暗なそこは、非常灯だけがやけに眩しくあたりを照らす「いいかい?チャンミン」ユノはコソコソとチャンミンに話したチャンミンがまん丸の目でユノをしっかりと見つめるユノの言葉をひとことも聞き漏らすまいとするように真剣な表情でユノを見つめたユノはごくりと唾を飲み込んだそしてポケットから小さな紙切れを取り出すとゆっくりと広げて、小さな声で読み始めた「僕たちは、僕の部屋で2人で寝てい...

  • この世の果て 6

    〜〜現在チャンミンは冷たいドリンクをユノに渡した「まずは、火照った身体を冷やして、水分補給してください」「サンキュ」ユノはチャンミンからドリンクを受け取ると蓋を開けて、そのまま飲み干した顎をあげて、ドリンクを飲むユノをチャンミンはじっと見つめたその長い首には汗が光り、その喉は美しく波打ちながら飲料がユノの体内に流れ込んでいく様をチャンミンは見つめた「さ、チャンミンは何が食べたい?」2人は地下の駐車...

  • この世の果て 5

    今夜はいつもと違った空気の食卓だった。父が仕事関係で飲みに行っているとのことで穏やかな夕食だ母とユノとチャンミン今日あった出来事などを楽しく話して笑顔溢れる食卓だった父がいないと、こうも家の雰囲気が変わるものなのかチャンミンは幼心にそれを感じとっていた「今夜はユノヒョンと一緒に寝るからね!」いつもは言えないその一言を今夜は大きな声で言ってみるチャンミン「今夜はですって?今夜だけじゃないでしょ?いつ...

  • この世の果て 4

    チャンミンが大暴れしたことでユノと父が険悪な空気になったことは印象が薄まりそれからも変わらぬ日々が続いたいや、少し空気は変わった父もユノには自分の考えを押し付けるだけの帝王学が通じなくなり、イライラする反面たまに理路整然と口ごたえをするようになったユノを父は満足げに見ていたゆくゆくは子会社をユノにまかせチャンミンの後ろ盾としていけそうだ。父にとってのユノはそれ以上でも、それ以下でもなかった父はユノ...

  • この世の果て 3

    食事のマナーというものは皆が気持ちよく食事をするためのものそういった概念は父親にはなかった食事のマナーとは、自らの育ちの良さとその毛並みの良さをアピールする例えれば上質なスーツと同じだったそれを幼いユノとチャンミンにも厳しく躾けたナイフとフォークの持ち方食事を口に持っていく所作それが上手くできないと叱咤されるそれに加えて食事の合間に次々と父から質問をされうまくかわしながら食事をする口に食べ物が残っ...

  • この世の果て 2

    チャンミンの母とユノの母は名門の旧家に生まれ、なに不自由なく育った姉妹だった。実業家の男性と結婚が決まったチャンミンの母の影で姉は、ある企業の若き重役と恋に落ちていたそれは妻子ある男性だった姉は不倫関係にあるその男性の子を身籠ってしまい、体裁を気にした両親や親戚によって、遠い地へと隔離されそこで生み育てたのがユノだったユノの母は、実家の世話になることを嫌い、1人でユノを育てようと頑張ってはみたもの...

  • この世の果て

    この想いの終点はどこなのだろうあなたを想う心はあまりに熱く深く、重い透明で透きとおるダイヤモンドより硬いこの想いは氷のナイフとなってやがては自分をもキズつけるだろう何が正しくて、何が間違っているのかそれさえ僕にはわからないひとつだけ言えるのはユノ…あなたを死ぬほど愛してるこの世の果てがたとえ地獄であったとしてもどこまでもあなたと落ちていくそれが僕の極上の幸せだこの想いの終着駅はどこなのだろう心とか...

  • ラグーパスタの夜

    「アハハハ」その独特な笑い声が部屋に響くユノはスマホを覗き込んで、楽しそうに笑っているチャンミンは今食べ終わったばかりのパスタ皿をキッチンに片付けている「なにがそんなにおかしいんですか?」片付けの手を休めることなくチャンミンが問いかける「インスタ見たヤツに、バレてる」「なにが?」「この位置からチャンミンを撮れるのは180cm超えのヤツだってさ」「なるほど」「ノロけるなってさ」「惚気てなんていませんと伝...

  • 花をあげよう 完

    〜ユノside〜温かいコーヒーの香りに俺はベッドで薄らと目を開けた香ばしいベーコンの香りとトーストされたバターの香りがそれに混じるベッドに寝たまま、片目で部屋を見回すとロングTシャツから、すんなりと伸びた細くて長い脚が目に入ったふんふんと楽しそうに鼻歌をハミングしながらチャンミンが忙しそうにキッチンで何かしているベッドの側には昨日俺が買ってきた花がコップに活けられているキッチンにも、テーブルにもそれは...

  • 花をあげよう 13

    チャンミンが中庭に行くと真ん中のベンチに座っていたユノが立ち上がったスッと背の高いユノ綺麗に整えられた花壇には色とりどりの花が植えてあった「ユノさん…」ユノの顔が少し緊張しているように見える「忙しかった?呼び出して大丈夫?」「はい…大丈夫です」ユノがベンチに座ったのでチャンミンもその横に少し距離を置いてすわったその距離が、チャンミンの気持ちを表しているようでユノは少し落ち込むけれど、気を取り直してユ...

  • 花をあげよう 12

    その日、チャンミンはスヨンに了解を得て花屋のバイトを休んだアレンジメント教室でイベントがあり、その準備を手伝う為だったいろいろと忙しくしてユノのことを考えないようにしたいとそんな思いもあって、手伝いを引き受けたイベントの趣旨も共感できた敷居が高そうなフラワーアレンジメントが手軽にできることを、みんなに知ってもらうためのイベント。チャンミンは先週教室でイベントの主催者から声をかけられたのだ「チャンミ...

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