今日の「お気に入り」は、今読み進めている本の中から、備忘のため、抜き書きした、読み応えのある文章。引用はじめ。「主殿は夜具の上に起き直り、右腕で脇息に凭(もた)れていた。十帖(じょう)ほどのその座敷は、寝間ではなく、客との対談にも使っているとみえ、本床には書の大副(たいふく)が掛けてあり、香炉からは薄く煙がゆらめいていた。青銅の火鉢が一つあるだけで、庭に面した障子があけてあるため、戸外と同じくらい空気が冷えてい、正坐している主水正は、手足の指先から、寒さが全身にしみとおるのを感じた。『そうか、殿は御無事だったか』と主殿は乾いた声で云った、『それはよかった、ごようすを聞かせてもらおう』主水正は語った。麻布の下屋敷で会ったときの飛騨守昌治の云ったことや、動作などについて、できるだけ詳しく話した。主殿は非常に感...阿部重か阿波重かLongGood-bye2024・04・20