chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 下野竜也/日本フィル

    日本フィルの12月の横浜定期は恒例の「第九」。今年の指揮者は下野竜也だ。前プロにオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲が演奏された。なんとも懐かしい。昭和レトロの曲といったら言い過ぎだろうか。何十年ぶりかに聴いた。活力ある音楽と演奏に元気が出た。休憩後は「第九」。第1主題がパンチのきいた音で鳴る。下野竜也の「第九」を象徴するかのような音だ。以後明確なリズムで音楽が進行する。幽玄さを気取るところは皆無だ。音楽の流れが明晰だ。だが不満も感じた。音楽の熱が次第に上がることがないのだ。言い換えれば、音楽があるところで急に深まるような感覚がない。第2楽章は歯切れの良いリズムが一貫する。それはそれで面白い。そのような演奏で聴くと、リズムだけで音楽を書いたベートーヴェンという作曲家に驚嘆する。他のだれも...下野竜也/日本フィル

  • B→C 葵トリオ

    葵トリオがB→Cに出演した。1曲目はシュニトケのピアノ三重奏曲。原曲は弦楽三重奏曲だったそうだ。シュニトケ自身がピアノ三重奏曲に編曲した。原曲は1985年の作曲、ピアノ三重奏曲は1992年の編曲。シュニトケ最晩年の作品だ。2楽章構成で、2楽章とも緩徐楽章だ。武満徹のピアノ曲「2つのレント」を思い出す。シュニトケのこの曲は沈鬱な楽想が基調だが、時々激情的なパッセージが駆け抜ける。同じような楽章を2つ続けて聴くと、最後はすべてが語り尽くされた感が残る。シュニトケはなぜこの曲を書いたのだろう。最晩年のシュニトケの心境の表れだろうか。2曲目は細川俊夫の「メモリー――尹伊桑の追憶に」。同じ沈鬱な音楽でも、細川俊夫の音楽はシュニトケの音楽となんと違うのだろう。薄く張った透明な音。時間が止まったような感覚だ。大事な人が...B→C葵トリオ

  • ルイージ/N響

    ルイージ指揮N響の定期演奏会Cプロ。曲目はリストの交響詩「タッソー」と「ファウスト交響曲」。リストの管弦楽曲を再認識する良い機会だ。1曲目の交響詩「タッソー」は弦楽器の暗い音色から始まる。やがてバス・クラリネットがテーマを吹く。鬱屈したテーマだ。それにしてもテーマを提示するのがバス・クラリネットであることにハッとする。ちょっと珍しい。演奏は情感豊かだった。曲はその後、明るさを増し、最後は交響詩「プレリュード」を思わせる勝利の音楽になる。N響の金管楽器が輝かしい。広瀬大介氏のプログラムノーツによると、リストには交響詩が13曲あるそうだ(その他に交響曲が2曲ある)。その全部は聴いていないが、「タッソー」や「プレリュード」から類推するに、リストの管弦楽曲にはひとつの“色”がありそうだ。それは暗い色だが、どこかに...ルイージ/N響

  • METライブビューイング「グラウンデッド 翼を折られたパイロット」

    ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)の新制作「グラウンデッド翼を折られたパイロット」。イラク戦争に従軍する女性パイロット・ジェスは、休暇でワイオミングに帰ったときに、牧場主のエリックと出会い、一夜を共にする。ジェスは妊娠する。ジェスはエリックと結婚し、休職する。子育てが終わり、復職すると、司令官からドローンの操縦への転属を命じられる。ラスヴェガスの近郊でモニターを見ながらドローンを操縦する。ジェスは敵の大物を見つける。攻撃しようとしたそのときに‥。興味深い点は、戦闘機に乗っていたときのジェスと、ドローンを操縦するようになってからのジェスとの対比だ。戦闘機に乗っていたときのジェスは、敵の攻撃にさらされ、死と隣り合わせだった。一方、ドローンを操縦するようになったジェスは、死の危険がなくなり、勤務が終わ...METライブビューイング「グラウンデッド翼を折られたパイロット」

  • ノット/東響

    ノット指揮東響の定期演奏会。曲目はシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲は、今年がシェーンベルクの生誕150年なので、その記念でもあるだろう。ヴァイオリン独奏はアヴァ・バハリ。スウェーデン出身の若い女性奏者だ。難曲といわれるこの曲を顔色ひとつ変えないで弾く。昔だったら顔をひきつらせて弾くところだ。時代は変わったと痛感する。そのように弾かれたこの曲は、精妙な音の連なりに聴こえた。かつての苦渋に満ちた音楽ではなく、むしろ透明な音楽。この曲はそういう曲だったのかと目をみはる。この曲で今も鮮明に記憶に残るのは、2019年1月に聴いたコパチンスカヤの独奏、大野和士指揮都響の演奏だ。あのときのコパチンスカヤの独奏は驚きの連続だった。この曲がこんなに...ノット/東響

  • 鈴木優人/読響

    鈴木優人指揮読響の定期演奏会。プログラムはベリオの「シンフォニア」とモーツァルトの「レクイエム」。まずベリオから。ベリオは1925年生まれ、2003年没だ。来年は生誕100年のアニヴァーサリーイヤーに当たる。今回の「シンフォニア」はそのプレ企画かもしれない。シャープで色彩豊かな演奏だった。鈴木優人の現代音楽への適性をあらためて感じた。「シンフォニア」の第3楽章はマーラーの交響曲第2番「復活」の第3楽章(「子供の魔法の角笛」の中の「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」による)をベースにする。今回の演奏は、マーラーの音楽が横方向に流れ、そこにさまざまな引用がコラージュ的に浮き沈みする演奏ではなく、それらのコラージュが縦方向に切断され、その切断面が見えるような演奏だった。結果、整然とした流れではなく、収拾のつ...鈴木優人/読響

  • ルイージ/N響

    ファビオ・ルイージ指揮N響のAプロ。1曲目はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死。ルイージのワーグナーなので期待したが、オペラ的な盛り上がりに欠けた。当日のメインの曲目(後述するが、シェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」)に重点が置かれ、1曲目は十分に力が入らなかったのだろうか。2曲目はリヒャルト・シュトラウスの歌曲を5曲。ソプラノのクリスティアーネ・カルクの独唱。私事だが、カルクは以前聴いたことがある。2016年10月にベルリン・フィルの定期演奏会に行ったとき、モーツァルトのオペラ・アリアとコンサート・アリアを各1曲歌った。とくにコンサート・アリアがドラマティックな歌唱だった。指揮はイヴァン・フィッシャーだった。今回もそのときの印象と変わらないが、カルクは声量の豊かさで聴か...ルイージ/N響

  • カプワ/日本フィル

    日本フィルの東京定期。当初は沖澤のどかが指揮する予定だったが、出産予定のため、パヴェウ・カプワに代わった。カプワの生年はプロフィールに記載がないが、まだ30代前半くらいの若い指揮者だ。出身はポーランド。クラクフ音楽院で指揮を学んだ。コンクールの優勝歴はとくに記載されていない。ワルシャワ・フィルをはじめ、ヨーロッパ内のオーケストラを振っている。日本ではまったく無名だ。で、どんな指揮者だったか。結論からいうと、意外に逸材かもしれない。インキネンを発掘したときと似たような感覚がある。日本フィルのカプワの起用は成功したと思う。プログラムは沖澤のどかのプログラムを引き継いだ。1曲目はブラームスのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏はセドリック・ティベルギアン。しみじみした内向的な演奏だ。ばりばり弾くヴィルトゥオーゾ・タイ...カプワ/日本フィル

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、Enoの音楽日記さんをフォローしませんか?

ハンドル名
Enoの音楽日記さん
ブログタイトル
Enoの音楽日記
フォロー
Enoの音楽日記

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用