chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
Riche Amateur https://nina313.hatenablog.com/

海外文学(とくにフランス文学)を中心とした読書ブログです。英文書や仏文書の記事も掲載しています。

nina313
フォロー
住所
アラブ首長国連邦
出身
清瀬市
ブログ村参加

2014/12/12

arrow_drop_down
  • こころ

    谷川俊太郎がいなかったら、現代詩、いや、もっと広義に詩そのものが、われわれにとってこれほど身近なものでなかったことは疑いない。そんなことを考えたのは、たまたま手に入ったこの本が、谷川俊太郎にとっていったい何冊目の詩集なのかを調べようとして、とてもじゃないが調べきれない、ということに気づいたからである。このひと、いったい何冊の詩集を出しているんだろう。思えば、ここで最後に谷川俊太郎の本を紹介したのは、もう6年も前だが、あのときの『詩の本』は、過去の作品をまとめた選集の趣が強く、新作詩集というのではなかった。そういう選集をも含めたら、ほんとうにもう、何冊あるのかなんて数えきれない。詩との距離感を考…

  • このごろ、「この詩人がいい、あの詩人もいい」、と、立てつづけに詩集の紹介ばかりしてきたが、いま、そのことをちょっとだけ後悔している。詩というのは、書かれていることの即効性が重視される散文とは大きく異なり、あとになってから響いてくるものも、とても多いからだ。第一印象ならぬ、「第二印象」とでも呼ぼうか。だから、性急に印象を書き留めるのは、あまり薦められたことではない。音楽をイメージしてもらったら、きっとわかりやすいだろう。最初に聴いたときにはあまりピンとこなかったものが、繰り返し聴いているうちにどんどん好きになっていって、やがては自分の一部にさえなってしまう。このマンデリシュタームの詩集を読んでい…

  • わたしを束ねないで

    先日まとめ買いした童話屋詩文庫は三冊、山之口貘の『桃の花が咲いていた』、岸田衿子の『いそがなくてもいいんだよ』、それからこの本、新川和江の『わたしを束ねないで』だった。前者二人は思潮社の現代詩文庫などには入っていないので、ちょっと「発掘」のような気分で読み進めることができたのだが、この新川和江に対しては、事情がちがっていた。まとまった詩集を読んでみたいと、かねてから考えていた詩人だったこともあり、ページを開くまえから身構えてしまっていたのだ。好きになれなかったらどうしようと、すこしばかり不安でもあった。でも、十秒もかからなかった。本を開いて、そんな不安が杞憂でしかなかったのが証明されるまでには…

  • イタリアの詩人たち

    このごろの更新傾向を見ていただくとすぐにわかるとおり、いま、詩を読むのがとても楽しい。いや、詩はもともと好きなのだが、日本語でよく「現代詩」と呼称される、一見ルールもなにもないように見える言葉たちの自由さに、最近ひたすら驚かされているのだ。詩、というと、ペソアやプレヴェールのような幸福な例外も存在するとはいえ、海外ではどうしても韻律や形式美が追求され、それらを追求しないものは軽く見られがちである。だが、日本語においては、短歌と俳句という超短詩が形式美の部分を引き受けてくれているからか、その短さには合致しないような詩情の迸りに対しても、懐が深い。これは海外の詩が翻訳されているときにも同様に感じら…

  • いそがなくてもいいんだよ

    しばらくぶりの更新。といってもたかだか四日ぶりで、ふだんのわたしの更新頻度を知るひとは、こいつ気でも狂ったか、と思っていることだろう。ちょっと事情を説明すると、断食月中は、あらゆる会社の勤務時間を短くするように、と、当地の労働法で定められているため、平時よりも早く仕事を切りあげることができるのだ。しかし、同僚たちはみんなやたらと仕事熱心な連中なので、まずわたしが立ちあがって「帰ろうぜ」と言わなくてはならない。だから多少仕事が残ってしまっていても職場を去るようにしているのだが、それでも外出先では日中、コーヒーを飲んだり煙草を吸ったりができないため、自然、それらを求めて自宅に直帰することになる。ニ…

  • 私人

    国内にいるあいだに入手した、ブロツキーによるノーベル文学賞受賞講演。荻窪にある馴染みの古本屋さん、ささま書店で購入し、帰りのバスのなか、酔うかもしれないという不安を抱えながら読みはじめ、最後のほうはバスではなく、ブロツキーに酔っていた。こんなに薄い単行本、なかなか目にすることもなさそうなもの(ぜんぶで60ページくらいしかない。しかもその半分は「訳注」と「解説」)。だが、その内容は浅薄とは徹底的に無縁、独立した一冊としてこれを刊行したのは、まちがいなく出版社の英断だった。 私人―ノーベル賞受賞講演 作者: ヨシフブロツキイ,沼野充義 出版社/メーカー: 群像社 発売日: 1996/11 メディア…

  • 桃の花が咲いていた

    もう詩以外のどんなものも読みたくない、というときには、目に入るすべての文字が詩に見えてくる。「ぼくが欲しいのは毒だけだ、詩を飲むに飲むこと」(マヤコフスキー『背骨のフルート』より)。今日は仕事をさっさと切りあげ、日没まで家で煙草を吸ってから、断食明けの喧騒のさなか、詩集を求めて書店へと向かった。それはかつて自分が働いていた書店で、その日本語書籍の棚には、わたしが注文したまま買い手を見つけられずにいる本が、まだたくさん残っている。いや、返品できるものなら、後任のひとがすでにあらかた返品してしまっている。わたしがつくった詩の棚に残っているのは、もはや返品不可能な出版社の本ばかり。詩集よりも売りやす…

  • すみれの花の砂糖づけ

    中東に住んでいるひとならだれでも知っているとおり、イスラム教国では先日より断食月(ラマダン)に入っている。お日さまが出ているあいだは飲食禁止、という、あれである。日中はレストランなども閉まってしまうので、わたしのような非イスラム教徒にとっても、まったく無関係というわけにはいかない。わたしはもともと食が細い人間なので(一日一食で足りる)、日中に飲み食いできないというのは、べつに大した問題ではないのだが、ここに、「日中は公共の場で煙草を吸ってはいけない」という条項が付け加えられるために、事情が変わってくる。なにせ、煙草が吸えないと、息をしている気がしないのだ。というわけで、断食月中は、いつも以上に…

  • コルカタ

    小池昌代という詩人の存在が、わたしのなかで大きくなりつづけている。友人に教えてもらった『通勤電車でよむ詩集』および『恋愛詩集』があまりにすばらしかったので、日本を出るほんとうに直前、そのとき立ち寄ることのできた書店の詩の棚から、彼女の著作をすべて購入したのだ。といっても、在庫していたのは二冊だけで、詩集はこの一冊のみ、もう一冊は評論である。評論のほうはスーツケースに入りきらなかったので、滞在中に購入したたくさんの本とともに、これから航空便で送ってもらう予定だ。インドを訪ねた詩人の印象を綴った詩集、『コルカタ』。 コルカタ 作者: 小池昌代 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2010/04 …

  • 恋愛詩集

    わたしが書店で働くようになったのは18歳のときのこと、その後いろいろと店や担当分野を遍歴し、ついに書店を去ったのは昨年、つまり29歳のときだったが、十年以上もブックカバーをかける側の人間でありつづけたこともあってか、わたしはもう自分の本にはカバーをかけなくなってしまっている。国内の書店で「カバーをおかけしますか?」と尋ねられると、反射的に「いえ、結構です」と答える癖がついてしまっているのだ。そもそも、ここ数年はずっと海外暮らしなので、公共の場で開いていたって、わたしがなんの本を読んでいるかを判別できるひとなど、周りにはいやしない。だから先日の帰国の折、友人に薦められてこの本を購入したときにも、…

  • 通勤電車でよむ詩集

    先日国内にいたとき、仕事の予定が思ったよりも早く済んだおかげで、次の予定まで、ふいに二時間ほどの空き時間ができた。ふだんのわたしだったら喫茶店に直行、鞄のなかの本を貪るように読むところなのだが、この日鞄に入っていた本たちはどれも内容が重たすぎて、二時間しか読めないのでは読み耽る気になれない。折しもそのときにいた場所は新宿だった。それなら、と書店に入っていき、信頼の置ける友人に、「二時間で読めるおすすめ本ちょうだい」と言ってみたら、紆余曲折の末に渡されたのはこの本だった。 通勤電車でよむ詩集 (生活人新書) 作者: 小池昌代 出版社/メーカー: 日本放送出版協会 発売日: 2009/09 メディ…

  • きみを嫌いな奴はクズだよ

    刊行されていることは知りつつも、手に取ろうか迷っていた一冊。信頼する友人の「このひと、うまくなってるよ」という一言に後押しされて、結局購入した。書店を出てすぐの喫茶店にて二時間ほどで読み終え、その後、日本から中東に戻る飛行機のなかでもう一回、そしていまパラパラと三度目を読み終えた。 きみを嫌いな奴はクズだよ (現代歌人シリーズ12) 作者: 木下龍也 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2016/04/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』書肆侃侃房、2016年。

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、nina313さんをフォローしませんか?

ハンドル名
nina313さん
ブログタイトル
Riche Amateur
フォロー
Riche Amateur

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用