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因幡屋ぶろぐ https://blog.goo.ne.jp/inabaya2005kiyoko05

因幡屋の劇評ブログです。 舞台は人生の宝。その印象をより的確により豊かに記せますように。

大部分は劇評ですが、ツイッターでは映画やテレビドラマのこともつぶやいております。 https://twitter.com/inabaya_kiyoko 2年前からはじめた俳句も一生懸命!

因幡屋
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2014/11/08

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  • TBスタジオプロデュース 『夜の辛夷』&『バーサよりよろしく』

    *公式サイトはこちら北区志茂/TBスタジオ7月11日~13日☆第一部:山本周五郎を読むAプロ「鼓くらべ」出演:内山森彦・蒔村三枝子Bプロ「夜の辛夷」出演:神由紀子(朱の会/1,2,2',3,4,5,5',6,7,8,9,10,11,12,13)☆第二部:テネシー・ウィリアムズ作堀内仁訳蒔村三枝子演出内山森彦・声の出演「バーサよりよろしく」Aプロ、Bプロ一部ダブルキャスト山本周五郎2作品を交互に、テネシー・ウィリアムズは同じ作品の2部構成という趣向だ。以下、Bプロ観劇の記録である。音響・照明・美術は得丸伸二。「夜の辛夷」・・・神由紀子にとって、朗読の師匠・阿部壽美子のもとで修業時代から念願の作品であるとのこと。体調不良のため、声の艶や切れ味があと一歩だったところは残念だが、周五郎の「岡場所もの」の代表的な一...TBスタジオプロデュース『夜の辛夷』&『バーサよりよろしく』

  • 唐十郎の演劇 不滅の「迷宮」への扉 明治大学リバティアカデミー《明治大学》連合駿台会寄付講座

    *公式サイトはこちら明治大学駿河台キャンパス/アカデミーホール7月7日19時~20時30分当初予定していた会場が申し込み多数により、大きなホールへ変更された。第1部は伊藤真紀教授(明治大学文学部演劇学専攻・明治大学唐十郎アーカイヴ運営委員会委員長)による唐十郎の功績、唐十郎アーカイヴの取り組み等の紹介、第2部は伊藤教授の司会進行で、佐野史郎(俳優・映画監督・音楽家)、松岡和子(翻訳家・演劇評論家・東京医科大学名誉教授)、久保井研(劇団唐組座長代行・俳優・明治大学唐十郎アーカイヴ運営委員)による鼎談が行われた。唐十郎との関わりは三者三様だ。佐野は劇団シェイクスピア・シアターを経て状況劇場に数年間在籍、退団後はドラマ、映画に多数出演する中、唐十郎作・演出のひとり芝居『マラカス』を演じている。松岡の翻訳家として...唐十郎の演劇不滅の「迷宮」への扉明治大学リバティアカデミー《明治大学》連合駿台会寄付講座

  • 2025年7月の観劇と俳句の予定

    梅雨の実感もないまま、梅雨が明けそうですね。猛暑にゲリラ豪雨、亜熱帯のようです。*明治大学リバティアカデミー《明治大学》連合駿台会寄付講座公式サイトはこちら明治大学駿河台キャンパス/アカデミーホール唐十郎の演劇不滅の「迷宮」への扉当初予定していた会場が申し込み多数で変更されるという盛況。伊藤真紀教授(文学部演劇学専攻・同唐十郎アーカイヴ運営委員会委員長)による唐十郎の功績、明大唐十郎アーカイヴの取り組み等の紹介のあと、佐野史郎(俳優・映画監督・音楽家)、松岡和子((翻訳家・演劇評論家・東京医科大学名誉教授)、久保井研(劇団唐組座長代行・俳優・明治大学唐十郎アーカイヴ運営委員)による鼎談が行われる。*TBスタジオ・プロデュース2本立て公式サイトはこちら北区志茂/TBスタジオ7月11日~13日テネシー・ウィリ...2025年7月の観劇と俳句の予定

  • ブログ引越しの中間報告

    11月18日を以てgooblogがサービスを終了するのに伴い、因幡屋ぶろぐのデータを「はてなブログ」へ引越し(インポート)をはじめました。「データのインポートには数日かかる」とのことでしたが、意外や数時間で済み、ひとまず安堵しているところです。が!現在のblog記事と、インポートされた記事数に差異がある。つまり引越しできていない記事があるらしいのです。いただいたコメントの中にも、反映されていないものを発見しました。さらに、ある舞台の記事を書く場合、その劇団や劇作家の過去の観劇記事をリンクしていますが、gooblogサービスが終わると、それらが無効になるかもしれず、今のうちに「はてなブログ」からせっせと過去記事を拾い、改めてリンクし直すか等々、頭の痛いことです。長年親しんだgooblogへの愛着はありますが...ブログ引越しの中間報告

  • 東京乾電池朗読公演『秘密の花園』

    *唐十郎作柄本明演出公式サイトはこちら下北沢/アトリエ乾電池6月21、22日、28日、29日いずれも14時「1982年初演!本多劇場こけら落とし/2009年スズナリ!角替和枝演出初演から43年の時を経て、あの伝説の舞台がアトリエ乾電池に帰ってきます!!」6月8日の劇団公式Xに、わが目を疑った。東京乾電池はつい先日まで『今は昔、栄養映画館』のツアーをしていたはず。それがすぐに『秘密の花園』とは、アトリエ乾電池が水浸しに?!落ち着いて文面をよく読むと、「朗読公演」とある。「朗読なら・・・」と少し安堵したものの、唐十郎作品1本を通して朗読するのは、本式の芝居よりも別な面で困難があるかもしれない。さまざまな懸念を期待に変えるべく、久しぶりにアトリエ乾電池へ向かった。公演が告知されて間もなく前売完売、当日券は若干枚...東京乾電池朗読公演『秘密の花園』

  • 文学座公演『もうひとりのわたしへ』

    *田村孝裕作五戸真理枝演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA29日までその後岐阜県/可児市文化創造センターala(小劇場)公演ありこれまでのblog記事を検索してみたが、もしかするとこれが初田村作品の観劇かもしれない。主人公椎葉里歩はもうじき40歳、優しい夫と暮らし、子どもはいない。両親も元気で仕事にも特に不満はない・・・と言いつつ、実は不妊治療を受けているが夫は積極的ではなく(理由はあとで明かされる)、両親の仲は険悪、仕事にそれほどやりがいも見いだせない。このままでいいのか?日々さまざまな場面に選択肢があり、迷いと後悔を繰り返す。もし別の選択をしていたら、違う人生があるのではないか。舞台にはある選択をした「りほ」(畑田麻衣子)と、違う選択をした「リホ」(吉野実紗)が登場し、互...文学座公演『もうひとりのわたしへ』

  • 【覚書】六月大歌舞伎 八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助襲名披露

    *公式サイトはこちら歌舞伎座27日まで5月の團菊祭に続いてこの月も襲名披露が行われた。【昼の部】☆「元禄花見踊」・・・出雲阿の国(尾上右近)、名古屋山三(中村隼人)を軸に、元禄の男女が華やかに踊る一幕。尾上眞秀があるバラエティー番組で「(右近は)顔(化粧)がすごくうまい」と言っていた通り、顔はもちろん、すがたや踊りの所作に見惚れる。女形も立ち役も何でもこなす人なのだ。☆「菅原伝授手習鑑」より「車引」・・・梅王丸の六代目尾上菊之助、桜丸の上村吉太朗、松王丸の中村鷹之資いずも初役とのこと。菊之助は小さなからだを精一杯拡げて見得を切る。母方祖父の二代目吉右衛門が得意としていた梅王丸、これから何度も演じる機会があるだろう。杉王丸役の9歳・中村種太郎もよく頑張った。中村又五郎の藤原時平が引き締める。おお、この方も初...【覚書】六月大歌舞伎八代目尾上菊五郎六代目尾上菊之助襲名披露

  • オフィス3〇〇特別公演『少女仮面』

    *唐十郎作渡辺えり演出公式サイトはこちら下北沢/ザ・スズナリ22日終了80年代初頭、はじめて観た唐十郎作品が、渡辺えり(当時渡辺えり子)主演の本作である。今は無い渋谷のパルコパートⅢであった。その後のほんさく観劇の記録はこちら→文学座附属研究所(2019年10月)、トライストーン・エンタテイメント(2020年1月若村麻由美主演)、metro(2020年2月月船さらら主演)、新宿梁山泊(2021年12月李麗仙追悼公演)、ゲッコーパレード(2023年3月出張公演劇場Ⅱ)、一糸座(2023年3月)、劇団唐ゼミ☆(2024年7月)このたび少女・貝は黒島結菜、夢乃、鈴木楓加のトリプルキャスト、甘粕大尉は宮下浩行を主軸に、竹中直人、中村獅童、尾上松也、和田琢磨、稲荷卓央(劇団唐組)、安奈淳が日替わりでゲスト出演する。...オフィス3〇〇特別公演『少女仮面』

  • 劇団俳優座 №359『PERFECT』

    *瀬戸山美咲作・演出公式サイトはこちら俳優座スタジオ19日終了瀬戸山美咲(演出のみも含め)関連のblog記事→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23、24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34)テレビのドキュメンタリー番組のディレクター川上早苗(若井なおみ)は、カメラマンの夫・亮二(千賀功嗣)と不妊治療を巡って諍い、離婚した経験を持つ。このたび、土曜昼の情報番組で、出生前診断に関するコーナーを制作することになり、胎児にダウン症の可能性があると診断された青木美花(天明屋渚)、悠(小泉将臣)夫妻へのインタヴューを行おうとしている。早苗が撮影を依頼したカメラマンは元夫の亮二である。亮二は別れた妻の心象を案じな...劇団俳優座№359『PERFECT』

  • 公開シンポジウム『華岡青洲の妻』の継承と新生―松竹と文学座の競演―

    ☆立教大学江戸川乱歩記念大衆文化センター主催公式サイトはこちら6月15日開催立教大学池袋キャンパス14号館D301教室2025年夏から秋にかけて、有吉佐和子作『華岡青洲の妻』が松竹、文学座で上演されることを受けて公開シンポジウムが開催された。日曜日の静かな大学キャンパス、しかし教室はほぼ満席の盛況だ。①開会挨拶/金子明雄(立教大学文学部文学科日本文学専修教授、江戸川乱歩記念大衆文化研究センター長)②「有吉佐和子と小説としての『華岡青洲の妻』/金子明雄・・・まことに遅ればせながら、有吉佐和子という人の生い立ちや作家として世に出る経緯、作家としての特性などを、このレクチャーにおいて初めて詳しく知ることになった。父親の仕事の関係で、海外生活の経験のある有吉はいわゆる」帰国子女」である。それによって「外部の視点」...公開シンポジウム『華岡青洲の妻』の継承と新生―松竹と文学座の競演―

  • 2025年6月の観劇と俳句の予定

    先月下旬に体調を崩しまして、5月観劇の宿題もいくつか残ったまま、心苦しい限りです。もうしばしお待ちを。まだ本調子ではないので未確定部分もありますが、6月の予定をお知らせいたします。健康を守るにも健康が大事ですね。皆さまもどうかご自愛のほど。*山本さくらパントマイム第53回公演山本さくら作・演出・出演『Harvest実りの刻』公式サイトはこちら6月11日(水)2回公演ザムザ阿佐谷(1,2,3,4,5,6)*劇団俳優座№359瀬戸山美咲作・演出『PERFECT』公式サイトはこちら俳優座スタジオ瀬戸山美咲(演出のみも含め)関連のblog記事→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23、24,25,26,27,28,29,30,31,3...2025年6月の観劇と俳句の予定

  • 【覚書】尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎 尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露 團菊祭五月大歌舞伎

    *公式サイトはこちら歌舞伎座27日終了松竹創立130年、そして尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露の大興行が始まった。やはり襲名披露は特別なもので、劇場に清々しい風が吹き抜けるよう。以下覚書です。【昼の部】☆「寿式三番叟」・・・襲名披露の舞台へ観客を導く厳かな1幕。☆歌舞伎十八番の内「勧進帳」・・・「勧進帳」観劇の記録はこちらのblog記事→NHKEテレ「にっぽんの芸能」より「百花繚乱徹底解剖!勧進帳」その2十三代目市川團十郎が武蔵坊弁慶を勤める「勧進帳」を観るのはこれが初めてか?同世代として幼い頃からともに歩んできた八代目尾上菊五郎への祝福と、これからの希望が滲み出るような弁慶であった。八代目菊五郎の富樫左衛門は端正で美しく、弁慶はじめ家来の献身に心打たれ、涙をこらえる...【覚書】尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露團菊祭五月大歌舞伎

  • 朱の会Vo.l 8『夜叉ヶ池』

    *泉鏡花作夢乃玉堂翻案・脚色神由紀子演出公式サイトはこちら中野スタジオあくとれ(1,2,2',3,4,5,5',6,7,8,9,10,11,12)6月1日終了文学作品の「朗読」公演を継続してきた朱の会が、このたび初めて「芝居」の公演を行った。配役の一部をダブルキャストに、風組と星組の2つの座組が披露され、4日間7回の公演は予約完売の盛況だ。朱の会の歩みが着実に実を結んでいることがわかる。改めて、朗読公演の楽しみとは何だろう?目で読んだ文学作品が、俳優の肉声で読まれることによって変容する様相を聴き、観ることだ。小説の地の文や戯曲のト書きが読まれると、さらに複雑で微妙な広がり、深まりが生まれる。俳優は、役の人物の言葉を発するが、それは本式の舞台での演技と同じではなく、何かしらの距離がある。「〇〇の言葉を発して...朱の会Vo.l8『夜叉ヶ池』

  • 因幡屋通信78号完成

    おかげさまで因幡屋通信最新号の78号が完成し、設置先各劇場への発送がほぼ終わりました。このたびも「ピンク」です。今年1月から4月までの舞台、映画のトピックほか、「今回の一推し」を記しました。お楽しみいただけましたら幸いです。リンクは観劇直後のblog記事です。ご参考までに。【冬から春のトピック】☆1月☆*橋爪功と仲間たち朗読の宴50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙筒井康隆作『関節話法』@三鷹スタジオ円からだの関節を鳴らす癖のある主人公が、関節を鳴らして会話する国へ大使として派遣される。文字通りの「関節話法」が引き起こす騒動を描いた物語だ。作家のワンアイディアに主人公が七転八倒する様相に後半から爆笑続きだが、パタンと扉を閉じるような終幕には寂寥感が漂う。橋爪は造形の準備の手つきを感じさせず、自然に見せ...因幡屋通信78号完成

  • 劇団民藝創立75年『煮えきらない幽霊たち‒蘭学事始浮説』

    *吉永仁郎作丹野郁弓演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA19日まで吉永仁郎は、民藝75年の歴史のなかで最多の13作品の上演があるとのこと。そのうち自分の観劇記録はこちら→『集金旅行』(井伏鱒二原作/2013年9月)、『大正の肖像画』(2015年10月)、『新正午浅草荷風小伝』(2019年4月)、『どん底-1947・東京-』(2021年4月)、『集金旅行』(2021年11月)半数近い作品に出会えたことは幸運であった。本作は1987年に発表、翌1988年、文学座の加藤武の演出で初演されている(未見)。時は江戸時代の半ば過ぎ、18世紀の後半だ。さまざまな肩書きを持ち、縦横無尽の活動を展開する平賀源内(千葉茂則)、親友の医師・杉田玄白(塩田泰久)、蘭学者の前野良沢(横島亘)、若手医師...劇団民藝創立75年『煮えきらない幽霊たち‒蘭学事始浮説』

  • 文学座公演『肝っ玉おっ母とその子供たち』

    *ベルトルト・ブレヒト作岩淵達治訳西本由香上演台本・演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ18日までその後兵庫県/ピッコロシアター公演ありタイトルの「おっ母」は「おっかあ」と発語する。ブレヒト劇は『ガリレイの生涯』を80年代に東京演劇アンサンブル、1999年の柄本明主演版(えびす組劇場見聞録創刊号)、2012年の演劇集団円公演、2013年の文学座公演、『セツアンの善人』を同じく80年代の東京演劇アンサンブル、俳優座の栗原小巻主演版、1999年の松たか子主演版(えびす組劇場見聞録第2号)といくつか観劇しているが、『肝っ玉おっ母~』は俳優座の中村たつ、無名塾の仲代達矢がおっ母役として荷車を引くチラシの印象が強いものの、実際の観劇は今回が初めてとなった。おっ母のアンナ・フィアリングを演じるのは、寺田路恵で...文学座公演『肝っ玉おっ母とその子供たち』

  • 劇団唐組 第75回公演『紙芝居の絵の町で』

    *唐十郎作久保井研+唐十郎演出公式サイトはこちら(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18)唐十郎が旅立って早や1年、今年も唐組の春公演が始まった。神戸は湊川公園で開幕、続く岡山は旭川河畔・京橋河川敷公演を経て新宿・花園神社へ。「唐十郎作品を古典にしない」という久保井の決意をしかと見届けたい。関連記事(一部有料記事)→ステージナタリー、朝日新聞(りれーおぴにおん)、SUUMOジャーナル(劇団員福原由香里文)、毎日新聞、SPACE本作は2006年初演、2014年に再演されたが、自分はこのたびが初見となった。使い捨てコンタクトレンズのセールスマン・牧村真吾(長橋遼也)が肌身離さず持ち歩く『紙芝居集成』には「題名不詳・作者・作画不詳」という謎の1枚が掲載されている...劇団唐組第75回公演『紙芝居の絵の町で』

  • 2025年5月観劇と俳句の予定

    天候不安定ながら新緑が眩しい季節、光を浴びながら劇場の闇へと向かいます。中旬には因幡屋通信最新号の発行を予定しております。観劇の予定は以下の通り。*劇団唐組第75回公演唐十郎作久保井研+唐十郎演出『紙芝居の絵の町で』公式サイトはこちら唐十郎が旅立って早や1年、今年も唐組の春公演が始まった。神戸は湊川公園で開幕、続く岡山は旭川河畔・京橋河川敷公演を経て新宿・花園神社へ。「唐十郎作品を古典にしない」という久保井の決意をしかと見届けたい。関連記事(一部有料記事)→ステージナタリー、朝日新聞(りれーおぴにおん)、SUUMOジャーナル(劇団員福原由香里文。胸を打たれた)、毎日新聞、SPACE*劇団民藝創立75年吉永仁郎作丹野郁弓演出『煮え切らない幽霊たち』公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAY...2025年5月観劇と俳句の予定

  • 演劇集団円「橋爪功と仲間たち 朗読の宴 50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」 『櫻の森の満開の下』

    *坂口安吾作公式サイトはこちら26日のみ三鷹スタジオ円橋爪功出演の観劇記録はこちら→新国立劇場『ゴドーを待ちながら』(2011年4月)、橋爪功×シーラッハ『犯罪|罪悪』(2013年12月)、第5回したまち演劇祭in台東したまちばなしー物語が生まれるところー『おとこのはなし』(2014年9月)、演劇集団円トライアルリーディング公演『虫たちの日』(2020年9月)。1月の筒井康隆、3月の「ひとり語り」に続き、今年に入ってから3度目の橋爪功の朗読公演観劇となった。舞台上手に椅子が1脚あるほかは何もない。橋爪功は椅子にかけて台本を読みはじめるが、やがて立ち上がり、椅子を中央に持って行ったり等々動きの多い朗読である。1時間15分休憩なし。峠に住む山賊は、これまで多くの旅人を身ぐるみ剥いで殺し、連れの女が気に入れば側...演劇集団円「橋爪功と仲間たち朗読の宴50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」『櫻の森の満開の下』

  • 四月大歌舞伎 夜の部

    *公式サイトはこちら歌舞伎座25日終了「彦山権現誓助剱」杉坂墓所、毛谷村の段・・・毛谷村六助を片岡仁左衛門の回を観劇した。主人公の六助は、男前で剣の達人、心優しく母親思い、無礼な仕打ちにも相手を思いやってじっと耐えるが、裏切りや邪悪な行為には敢然と立ち向かう等々、ヒーローが必要とする全てを兼ね備えた上に、成り行き上引き取ってきた子どもを不器用にあやしたり、突如現れた許嫁お園の猛アタックにたじたじしたりなど、可愛らしい面も見せて親しみやすい。観客すべてを虜にしながら、嫌みが全くない。何度観ても胸がすく男ぶりで気持ちが良い。しかし本作の魅力には女武者のお園を演じた片岡孝太郎の技芸が大きな役割を果たしていることに気づいた。器量よしだが、剣の腕前は一流、おまけに力持ちという設定である。細身の女形では無理があり、孝...四月大歌舞伎夜の部

  • 文学座プラチナネクスト十五周年記念公演

    *西川信廣公式サイトはこちら中目黒キンケロシアター14日終了(1,2,3,4,5,6,7,8→注:プラチナネクストの第6期生によるシックスセンスの公演含む)2009年9月、文学座が開設した40歳以上対象の俳優養成コース「プラチナクラス」の卒業生による演劇集団プラチナネクスト(以下ネクスト)が、創立15周年の記念公演を行った。アドバイザーでもある演出家・西川信廣によれば、記念公演は文学座創立3幹事の岸田國士、久保田万太郎、岩田豊雄の作品をとネクストから提案を受け、今回の2作品に絞りこんだとのこと(当日パンフレット掲載)。意欲漲る舞台を観劇した。☆樋口一葉原作『にごりえ』ドラマリーディング久保田万太郎作『おりき』・・・苦界に身を沈める女性たちとその周辺の人々を描いた物語は、今井正監督の『にごりえ』、オペラシア...文学座プラチナネクスト十五周年記念公演

  • スタジオ演劇版 劇団民藝『想い出のチェーホフ』

    *レオニード・A・マリューギン作牧原純訳丹野郁弓演出本作は、チェーホフとその家族、友人が交わした数多くの往復書簡を、劇作家が「一篇の抒情詩のように」(公演チラシ)構成した作品で、劇団民藝は1968年に初演、1971年に再演している(上演年表より/演出はいずれも宇野重吉)。2020年6月~7月、劇団創立70周年を記念して、初演、再演に出演の奈良岡朋子に、樫山文枝、日色ともゑ、伊藤孝雄、小杉勇二、篠田三郎が加わった座組で上演の予定がコロナ禍でとりやめとなった。その後、2023年3月23日、奈良岡が逝去する。それから1年、新たに収録した映像に、奈良岡の舞台音声(1971年3月12日紀伊國屋ホールでの録音)を加えて再構築されたのが、スタジオ演劇版『想い出のチェーホフ』である。昨年初版限定で発売されたDVDをようや...スタジオ演劇版劇団民藝『想い出のチェーホフ』

  • 山の羊舎第10回公演『メリーさんの羊』

    *別役実作山下悟演出公式サイトはこちら(サイト内に「『メリーさんの羊』を上演する会」のプロフィール、上演記録記載あり)下北沢/小劇場楽園6日まで本作観劇のblog記事→2012年11月「中村伸郎とメリーさんの羊」2000年2月観劇の渋谷ジャンジャン閉館公演『メリーさんの羊』は、因幡屋通信5号に「幻ではなかった」の記事あり。本作は昭和の名優・中村伸郎が別役実に「リア王と道化をモチーフに」と新作を依頼し、1984年、今は無き渋谷のジャンジャンで初演された。男1を中村伸郎、男2を三谷昇、女1を井出みな子の座組で1989年まで再演を重ねた。そのうち数回を観劇したことは、観客として生涯の宝である。今回の舞台について、非常に複雑な感覚に陥った。前回観劇の2012年11月「中村伸郎とメリーさんの羊」で抱いた違和感が、別...山の羊舎第10回公演『メリーさんの羊』

  • 2025年4月の観劇と俳句の予定

    新年度が始まります。桜も咲いて心浮き立つ季節ですね。肌寒かったり気温が一気に夏日になるなど天候不安定ですが、仕事も観劇も俳句も元気に取り組めますように。観劇はこちら*山の羊舎第10回公演『メリーさんの羊』別役実作山下悟演出公式サイトはこちら(サイト内に「『メリーさんの羊』を上演する会」のプロフィール、上演記録記載あり)下北沢/小劇場楽園本作観劇のblog記事→2012年11月「中村伸郎とメリーさんの羊」2000年2月観劇の渋谷ジャンジャン閉館公演『メリーさんの羊』は、因幡屋通信5号に「幻ではなかった」の記事あり。*文学座プラチナネクスト十五周年記念公演公式サイトはこちら岸田國士作『速水女塾』・・・きしだ組、くにお組のダブルキャスト樋口一葉原作『にごりえ』ドラマリーディング久保田万太郎作『おりき』演出はいず...2025年4月の観劇と俳句の予定

  • 橋爪功ひとり語り

    *公式サイトはこちら26日のみ武蔵野公会堂橋爪功出演の観劇記録はこちら→新国立劇場『ゴドーを待ちながら』(2011年4月)、橋爪功×シーラッハ『犯罪|罪悪』(2013年12月)、第5回したまち演劇祭in台東したまちばなしー物語が生まれるところー『おとこのはなし』(2014年9月)、演劇集団円トライアルリーディング公演『虫たちの日』(2020年9月)、1月の筒井康隆武蔵野公会堂はかなり年季の入った建物で、客席の椅子が小さく、前席とのあいだも狭いものの、床の勾配は案配良く、両サイドに中二階風の席があるなど、温かみのあるホールだ。1本めは新美南吉『花のき村と盗人たち』。軽快なジャズピアノの音楽とともに橋爪功が登場。物語のあたまは大事な「つかみ」部分であるが、ピアノの音量の加減がやや大きいまま始まり、肝心の語りが...橋爪功ひとり語り

  • 三月大歌舞伎 「仮名手本忠臣蔵」

    *公式サイトはこちら歌舞伎座27日まで通し狂言として「忠臣蔵」が歌舞伎座にかかるのは、2013年以来のこと。Aプロ、Bプロの座組は実に豪華な顔ぶれだ。主役の大星由良之助を片岡仁左衛門、尾上松緑、片岡愛之助の3人がつとめることをはじめ、主要な役のうち多数がダブルキャストで、ベテランはより重厚で滋味深く、若手は意欲を漲らせて清々しい。昼夜ともにBプロを観劇した。本作観劇のblog記事→2006年1月新春浅草歌舞伎、2015年1月新春浅草歌舞伎実際はもっと観ているはず・・・。【昼の部】大序・三段目、四段目道行古式ゆかしく、ゆったりしたテンポと間合いで壮大な物語の幕が開くさまに、背筋も伸びる。高師直の罵詈雑言に耐えかねた塩谷判官が起こした殿中の刃傷事件、続く切腹から城明け渡しまで、怒濤のようでありつつ、じわじわと...三月大歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」

  • 文学座3月アトリエの会『リセット』

    *山崎元晴作西本由香演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ23日まで西本演出の舞台のblog記事→1,2,3,4東日本大震災から14年目の3月11日、ちょうど開演時刻に神宮外苑で防災花火が打ち上げられるため、劇作家と演出家のプレトークが行われた。花火の音が響くなか、二人とも立ったままのトークは、執筆のきっかけや稽古の経緯なども交えながら語りすぎず、感じの良いものであった。この15分によって心を落ち着かせ、静かな期待を抱いて開演に臨むことができた。どこかの家。リビングの椅子に高齢の女性(赤司まり子)が腰掛けており、やってきた若者(比嘉崇貴)が「おばあちゃん」と呼びかけるが、彼女は怪訝な様子である。そこへ娘らしき中年の女性(奥山美代子)がやってきて、若者に「そういうことは止めていただきたい」と訴える。彼...文学座3月アトリエの会『リセット』

  • 名取事務所公演『淵に沈む』

    *内藤裕子作・演出公式サイトはこちら下北沢/小劇場B116日まで(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15)。本作は、2023年2月に発覚した東京都八王子市の精神科病院「滝山病院」で起こった看護師らによる患者の虐待事件(参考)をモチーフに、『灯に佇む』(2021年9月/blog記事)に続く内藤裕子の医療作品第2弾である。今回も当日リーフレットには本作鑑賞にあたっての用語解説などの資料が折り込まれており、作り手の熱意が強く伝わってくる。当日リーフレットによると、内藤裕子が本作のテーマに取り組んだのは2023年2月放送のNHK・ETV特集「死亡退院~精神医療・闇...名取事務所公演『淵に沈む』

  • 若手演出家コンクール2023年度最優秀賞受賞記念公演『そんなつもりじゃない』

    *八代将弥(ILLTOKAIUNDERGROUND)脚本・演出下北沢「劇」小劇場9日まで14日~17日まで名古屋/G/PIT同コンクールこれまでの観劇記事は以下の通り。2011年公演(2010年審査):1,2,3,42013年公演(2012年審査):1,22017年公演(2016年審査):1若手演出家コンクール2023年度最優秀賞を受賞した作品のタイトルが『演出家コンクール最優秀賞受賞予定作品』(未見)。一瞬こちらを目くらませる捻りと企みのあるタイトルだ。「エチュードとメタ構造を用いた創作」を謳うあたりも、手練の趣向を予想させる。演劇公演にはさまざまな困難、想定外のアクシデントがつきものだ。稽古から本番当日、終演まで何が起こるかわからない。特にコロナ禍が始まって今日まで、演劇の作り手にはこちらの想像が及ば...若手演出家コンクール2023年度最優秀賞受賞記念公演『そんなつもりじゃない』

  • 2025年3月の観劇と俳句の予定

    半袖の人を見かけるほどのぽかぽか陽気が、一気に霙や雪に変わる3月です。2月の宿題がまだ終わっておりませんが、今月観劇の予定は次の通り。*若手演出家コンクール2023年度最優秀賞樹上記念公演下北沢「劇」小劇場八代将弥(ILLTOKAIUNDERGROUND)脚本・演出『そんなつもりじゃない』同コンクールこれまでの観劇記事は以下の通り。2011年公演(2010年審査):1,2,3,42013年公演(2012年審査):1,22017年公演(2016年審査):1*名取事務所公演内藤裕子作・演出『淵に沈む』公式サイトはこちら下北沢/小劇場B1(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,...2025年3月の観劇と俳句の予定

  • métro 第14回公演『GIFT』

    *天願大介作・演出公式サイトはこちら下北沢/小劇場楽園3月2日終了月船さらら(1,2,3,4)による演劇ユニットmétroが4年半ぶりに公演を行った。2021年の『痴人の愛』IDIOTS』(谷崎潤一郎原作)公演にあたって、天願大介が語ったことを思い起こす。曰く、「原作者の頭の中に入っていき、記された言葉はもちろん句読点に至るまで、その意味や意図を考え抜き今度は、それを芸能として舞台に立ちあげるべく自分の言葉に置き換え、かつ演出を担う。気が遠くなるような作業であるが、『不思議な作業』」であると。2020年の『少女仮面』(唐十郎作)の際も、助詞のひとつ、句読点のひとつにまで劇作家の意志と意図を読み取り、舞台に立ち上げんとする姿勢には、哲学者、修行者のような知性と厳しさが感じられる。今回は天願大介のオリジナル作...métro第14回公演『GIFT』

  • 【追悼】金子左千夫さん

    昨年10月21日、金子左千夫さんが旅立たれました。金子さんとの出会いは、1997年初夏、開館したばかりの世田谷パブリックシアターの劇評講座です。当時、オペラシアターこんにゃく座の歌役者として舞台に立っておられ、なおかつ劇評というものに関心を持ち、考察や執筆に取り組む存在として、強い印象がありました。劇団では執筆や編集の腕前を買われて劇団史の編纂など、さまざまなお仕事をしていらしたと記憶しています。ごりごりの役者というより、もっと客席に近い、ニュートラルな雰囲気をお持ちでした。こんにゃく座退団後は、座友としてさまざまな活動を展開され、特に「林光・歌の本Ⅰ~Ⅳ<全曲を歌う>」コンサートを継続し、完遂する偉業を成し遂げられました(1,2,3,4,5)。コンサートでは、ソプラノの中馬美和さん、伴奏のピアニスト大坪...【追悼】金子左千夫さん

  • 劇団文化座『にんげんたち~労働運動社始末記』

    *マキノノゾミ作鵜山仁演出公式サイトはこちら俳優座劇場3月2日終了閉場まであと3公演となった俳優座劇場で、長年にわたりたくさんの舞台を上演してきた文化座の万感の思いが溢れる。ロビーには昭和32年(1957年)の『その人を知らず』(三好十郎作佐佐木隆演出)から昨年の『花と龍』(火野葦平原作東憲司脚本鵜山仁演出)まで、ここで上演された全32公演のチラシが年代毎に表と裏どちらも見られるように(これは大事!)掲示されており、劇団と劇場の歴史を振り返ることができる。そのうち自分が観劇したのは、『花と龍』、そして本作のわずか2本であることに衝撃を受けた。今回は前列中央の良席であった。視界を妨げない前列との絶妙な段差や、舞台と客席のほどよい距離感、高さ、場内に満ちる温かさなど、何と心地よい劇場であることか。何度も通った...劇団文化座『にんげんたち~労働運動社始末記』

  • 因幡屋通信77号完成

    おかげさまで因幡屋通信最新号の77号が完成いたしました。設置先各劇場、スペースへ鋭意送付中です。今回はピンク。皆さまのお目にとまりますように、何とぞよろしくお願いいたします。当ぶろぐでも公開いたします。演目のリンクは、観劇後のblog記事です。ご参考までに。******************************暑すぎる夏と短い秋でした7月から12月までの舞台、映画のトピックをお届けいたします【夏から秋のトピック】☆7月☆*劇団唐ゼミ☆第32回公演唐十郎作中野敦之演出『少女仮面』@恵比寿/エコー劇場出産、育児中は制作として劇団を支えてきた椎野裕美子が、春日野八千代役で本格的に俳優復帰を果たした。堂々たるみごとな主役ぶりに舞台には喜びが、客席には祝福が溢れる。改めて『少女仮面』は、作り手のさまざまな意図...因幡屋通信77号完成

  • ティーファクトリー『不思議の国のマーヤ』

    *川村毅作・演出中村蓉振付杉浦英治音楽公式サイトはこちら吉祥寺シアター24日まで(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)今回の新作は、吉祥寺シアターの提案により、「古代インド哲学を、中村蓉振付のダンスで楽しい舞台に」を目指して創り上げたとのこと。中村蓉(公式サイト)はコンテンポラリーダンスだけでなく、二期会オペラの演出や振付、新劇系劇団の公演での振付など、その活動は多岐にわたる。自分が観劇したのは、演劇集団円公演『ペリクリーズ』(中屋敷法仁演出/2023年3月)のみであろうか。改めてblog記事を読み返すと、前半はダンスというよりムーヴ、時には組み体操的な動きに困惑しつつも、後半は物語の進行とともに、俳優の動きを楽しんでいる。にも関わらず、自分が中村蓉を明確に...ティーファクトリー『不思議の国のマーヤ』

  • KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2 『花と龍』

    *火野葦平原作齋藤雅文脚色長塚圭史演出公式サイトはこちら22日まで神奈川芸術劇場その後、富山県のオーバード・ホール、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、福岡県の北九州芸術劇場を巡演『花と龍』は昨年2月の劇団文化座公演の印象が鮮烈で、それから1年足らずで同じ作品に出会えるとは夢にも思わず。新ロイヤル大衆舎は、長塚圭史、山内圭哉、福田転球、大堀こういちによる演劇ユニットで、本作上演の経緯と熱意は演出の長塚のインタヴュー(SPICE)に詳しい。劇場の地元である横浜中華街、元町商店街の協力のもとに設置した屋台、年齢や障がいの有無に関わらず、多くの観客がともに観劇を楽しめる「やさしい鑑賞回」の試みなど、盛りだくさんの企画である。舞台には巨大な三角形の台が置かれ、その周囲に障子、通路が作られている。開演前はその通路...KAAT×新ロイヤル大衆舎vol.2『花と龍』

  • 【覚書】猿若祭二月大歌舞伎

    *公式サイトはこちら25日まで歌舞伎座昨年の猿若祭から早や1年。中村屋一門が総力を結集し、ゆかりの演目、初役の数々に挑戦する。5月の團菊祭や9月の秀山祭と同じく、毎年恒例になると嬉しい。夜の部を観劇した。☆「壇浦兜軍記阿古屋」・・・当blogの「阿古屋」関連記事→NHKEテレ放送「にっぽんの芸能」より坂東玉三郎による芸談「伝心玉三郎かぶき女方考~“壇浦兜軍記阿古屋”~」(2020年4月放送/2018年5月の再放送)、演劇集団円公演『景清』(近松門左衛門原作フジノサツコ作森新太郎演出橋爪功主演2016年11月)女方最高峰の難役を、歌舞伎界の頂点に立つ玉三郎が演じる舞台を観る。そのことに圧倒されるばかり。芸談で説かれた文学性を自分が理解し、味わえるのはいつになるのか。そしてそのとき阿古屋を演じるのは?☆「江島...【覚書】猿若祭二月大歌舞伎

  • 劇団民藝公演『八月の鯨』

    *デイヴィッド・ベリー原作丹野郁弓訳・演出公式サイトはこちら17日まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA舞台劇として1980年に発表された本作は、1987年、往年のハリウッド女優リリアン・ギッシュ、ベティ・デイヴィスの競演で映画化され、日本では1989年に岩波ホールで大ヒットした。民藝では2013年の前回公演から12年ぶりの再演だ。1954年、アメリカはメイン州沿岸の島に暮らすリビー(樫山文枝)とサラ(日色ともゑ)姉妹、幼なじみのティシャ(細川ひさよ)とジョシュア(小杉勇二)、そして元ロシア貴族マラノフ(篠田三郎)が登場する。5人の登場人物のうち、リビーの樫山、ティシャの細川、ジョシュアの小杉の3人が初役である。ゆったりしたテンポ、15分の休憩を挟んで2時間の上演時間はほどよく、観る者を決して急...劇団民藝公演『八月の鯨』

  • MyrtleArts 公演『日の丸とカッポウ着』

    *くるみざわしん作東憲司演出公式サイトはこちら11日終了浅草九劇くるみざわしん作品の観劇は、昨年夏の東京芸術座公演『戻り道を探してミレナとカフカとマルガレーテ』に続いて2作めとなる。地下鉄浅草駅から雷門通り、すしや通りなど賑やかな界隈を過ぎ、浅草六区のやや閑散としたあたりの浅草九劇へ行くのは今回がはじめて。さまざまな劇団、ユニットから多種多彩な俳優たち結集した力強い座組の初日を観劇した。舞台は昭和7年の大阪。「愛国婦人会」の婦人3人が会合を開く。夫はいずれも社会的地位が高く、彼女たちも高価な和服に身を包み、立ち居振る舞いも上流階級の奥さま然としているが、特に会長の桜よし(山像かおり)は極道の姐さんばりの迫力。副会長の市高なお(山本あさみ)、会員の稲多トモ(小林美江)が圧倒されつつ必死で従うところがコミカル...MyrtleArts公演『日の丸とカッポウ着』

  • 2025年2月の観劇と俳句の予定

    2月はにわかに盛りだくさん。仕事は1年でもっとも忙しい時期ゆえ、どうか心身守られますように。すべての舞台の稽古が順調に進み、初日から千秋楽まで無事に幕が開きますように。たくさんの方が劇場を訪れ、豊かな時間を過ごせますように。*MyrtleArts公演くるみざわしん作東憲司演出『日の丸とカッポウ着』公式サイトはこちら浅草九劇*劇団民藝公演デイヴィッド・ベリー原作丹野郁弓訳・演出『八月の鯨』公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA2013年の前回公演から12年ぶりに新しい配役と演出で上演される。*猿若祭二月大歌舞伎公式サイトはこちら昨年の猿若祭から、もう1年経ったのか。夜の部「文七元結」が楽しみ。*KAAT×新ロイヤル大衆舎vol.2火野葦平原作齋藤雅文脚色長塚圭史演出『花と龍』公式サイ...2025年2月の観劇と俳句の予定

  • 【覚書】壽初春大歌舞伎 夜の部

    *公式サイトはこちら歌舞伎座26日終了☆「熊谷陣屋」・・・尾上松緑の熊谷直実。これから何度も観ることになるだろう。源義経役の俳優の声や台詞には少々困惑した。☆「二人椀久」・・・尾上右近の椀久に中村壱太郎の松山太夫は幻想的というより瑞々しく精気に溢れ、それだけにいっそう切なく悲しい。舞踊劇だが何と狂おしい愛の物語であることか。☆「大富豪同心」・・・中村隼人主演でNHKドラマ化された幡大介の小説が歌舞伎座に新作として披露された。武闘派の侠客荒海ノ三右衛門役の松本幸四郎が初演出をつとめる。朝日新聞の劇評では「隼人が切って嵌めたような主役を演じる」とあったが、ほんとうにその通り。江戸の豪商の末孫で、同心株を買い与えられて同心となったが放蕩三昧の八巻卯之吉と、将軍の実弟で志高い剣豪の幸千代という対照的な人物の二役を...【覚書】壽初春大歌舞伎夜の部

  • 【覚書】新春浅草歌舞伎

    *公式サイトはこちら浅草公会堂26日終了今年から座組が大きく変わり、大きな役、難しい役に挑戦する若手俳優の心意気がよりいっそう強く清々しい舞台となった。【昼の部】【夜の部】両方の覚書を少々。☆お年玉ご挨拶浅草歌舞伎恒例の楽しみのひとつ。担当する俳優は紋付き袴に素顔・・・と思っていたら、この日の中村鶴松は鬘も化粧もしっかり整えて登場。すぐ次の「絵本太功記」のお役を控えているためである。第一声は折り目正しく型通りだが、そのあとは開演前の客席をリラックスさせ、楽しい話で大いに盛り上げる。俳優それぞれに工夫があって、共演俳優の裏話や、別の日の【夜の部】担当の尾上左近は、ある俳優に自分のちょっと恥ずかしい話をこの場でネタにされたことへの仕返し(むろん冗談めかして)として相手の話をするなど、新しい趣向?である。今年は...【覚書】新春浅草歌舞伎

  • 演劇集団円「橋爪功と仲間たち 朗読の宴 50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」

    *公式サイトはこちら1月11日(土)14時の回のみ三鷹スタジオ円筒井康隆作「関節話法」橋爪功の舞台の観劇は1982年初夏、当時西新宿・成子坂にあったステージ円での『アトリエ』が最初であった。すでに多くのテレビドラマや映画に出演しており、「ほんものの橋爪功」だと実感した記憶がある。当blogに観劇記録があるのは新国立劇場『ゴドーを待ちながら』(2011年4月)、橋爪功×シーラッハ『犯罪|罪悪』(2013年12月)、第5回したまち演劇祭in台東したまちばなしー物語が生まれるところー『おとこのはなし』(2014年9月)、演劇集団円トライアルリーディング公演『虫たちの日』(2020年9月)・・・ほんとうはもっと観ているはずだが・・・。公演名の通り、橋爪功と劇団員による朗読公演で、昨年4月から毎月1回限り(休みの月...演劇集団円「橋爪功と仲間たち朗読の宴50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」

  • 2025年1月の観劇と俳句の予定

    明けましておめでとうございます。今年もすべての舞台に関わる方々、劇場に訪れる方々の心身が守られ、佳き出会いがありますよう。観劇の予定は次の通りです。今月は歌舞伎公演だけかなと思っていたら、とびきりの1本が観劇はじめとなりました。こいつぁ春から縁起が(演技も)いいわぇ。*演劇集団円「橋爪功と仲間たち朗読の宴50席ニ満タナイ劇空間ニ広ガル朗読ノ小宇宙」公式サイトはこちら1月11日(土)14時の回のみ三鷹スタジオ円昨日から先着順の前売と知ったのが今朝。もう無理かと思ったが予約できました。*新春浅草歌舞伎公式サイトはこちら今年も昼夜参ります。恒例のお年玉ご挨拶も楽しみ。*壽初春大歌舞伎公式サイトはこちら1月2日Eテレ放送の「大富豪同心」を見て、どうしても観劇したくなり。俳句関連の予定は以下の通り。*かさゝぎ勉強会...2025年1月の観劇と俳句の予定

  • 2024年因幡屋演劇賞

    感謝と喜びを以て、この年の因幡屋演劇賞をお届けいたします。リンクは観劇後のblog記事です。ご参考までに。*劇団唐組第73回公演『泥人魚』、第74回公演『動物園が消える日』(唐十郎作久保井研+唐十郎演出)唐十郎が5月4日旅立った。その翌日の『泥人魚』新宿・花園神社初日から、秋の特別講義「唐十郎の演劇世界2024」、「唐さんを追悼する会」、神保町シアターでの唐十郎作品特集(公式サイト)、そして年末のドキュメンタリー映画『シアトリカル』のリバイバル上映まで、あたかも「唐十郎沼」に嵌ったかのように濃密で刺激的な月日であった。唐十郎は今も作り手受け手ともに挑発し、包み込み、歩き続けている。*劇団文化座166『花と龍』(火野葦平原作東憲司脚本、鵜山仁演出)、167『紙ノ旗』(内藤裕子作・演出)、特別公演『しゃぼん玉...2024年因幡屋演劇賞

  • 朱の会小公演4―天切り松 闇がたり 第三巻『宵待草』―

    *公式サイトはこちら阿佐ヶ谷ワークショップ26日、27日(1,2,2',3,4,5,5',6,7,8,9,10,11)2月の「朱語りコンサート」、5月の本公演に続く年末の「小公演」も今年で4回目となった。「小」と銘打っていても、朱の会の誠実かつ果敢な創作の姿勢は変わらない。回を重ねるごとに観客が増え、2日間、3回の公演はほぼ満席の盛況だ。1部は俳優ふたりがそれぞれ小説1篇を読み(演出は語り手に任されたらしい)、2部は浅田次郎の人気シリーズ『天切り松闇がたり』より第三巻「宵待草」を俳優5人が群読する。☆1部・別役実「淋しいおさかな」/平山真理子・・・広い野原でひとり暮らす少女の耳に、遠い海の底で「淋しい」と泣くおさかなの声が聞こえる。少女には「淋しい」という気持ちがわからない。風や月や野良犬に問いかけると、...朱の会小公演4―天切り松闇がたり第三巻『宵待草』―

  • 映画『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』

    *大島新監督公式サイトはこちら東中野ポレポレ28日までその後全国で公開2007年に公開され、第17回日本映画批評家大賞のドキュメンタリー賞を受賞し、その年の「ぴあ満足度ランキング」1位を獲得したドキュメンタリー映画が唐十郎追悼により17年ぶりに再上映の運びとなった。ゆかりの方々が大島監督と語り合うアフタートークも充実の2週間である。カメラは2006年の11月から、翌2007年の年明け、劇団唐組春公演『行商人ネモ』の稽古から4月下旬の大阪公演までの唐十郎と劇団員の日々を追う。同監督の作品は、衆議院議員の小川淳也と周辺の人々を17年に渡って密着した長編ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年公開)、続く『香川1区』(2021年公開)を鑑賞したが、この『シアトリカル』には明らかに違う手つき...映画『シアトリカル唐十郎と劇団唐組の記録』

  • salty rock 27stage『熱海殺人事件』モンテカルロイリュージョン

    *つかこうへい作フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)+こちらも)構成・演出公式サイトはこちら上井草エリア54315日終了同ユニットは今回が初。「ザ・ロンゲスト・スプリング」と「モンテカルロイリュージョン」の交互上演で、後者を観劇した。多くの演劇人に大きな影響を与え続けているつかこうへいの代表作だが、間近の観劇は、2021年秋の文学座アトリエ公演の「えびす組劇場見聞録」第64号に「別人との再会」と題した一文のみか。「モンテカルロイリュージョン」は阿部寛、平栗あつみ、山本亨共演の舞台(1995年秋PARCO劇場?)を観たが、記憶はおぼろげである。今回の構成・演出のフジタタイセイいわく「怒りと悲しみと痛みと、それらをやり過ごすための狂乱と」、「愛と孤独...saltyrock27stage『熱海殺人事件』モンテカルロイリュージョン

  • 劇団新派の子<歳末特別朗読祭> 「さろん・ど・まろん~波乃久里子を聴く宴」

    *公式サイトはこちら代々木上原/ムジカーザ12月12日昼夜2回公演(1,2+因幡屋通信74号)ここ数日にわかに冷え込んできた都心の一角、急な坂の上の小さなホールで行われた一日限りの公演は、寒い夜の温かな夕餉、それを囲む優しい人々の笑顔を思わせる幸せなものであった。☆第一部久里子四段返し・・・波乃久里子の当たり役の舞台から4作を選び、五十嵐あさかのチェロの生演奏とともに聴く試み。チェロの音は人間の声によく馴染むと聞いたが、実際ここまでとは。物語が始まる直前の舞台の空気を整え、観客を劇世界へいざなう。台詞の間合いのほんの一呼吸の音、ときにはボディを軽くこんこんと叩いて楽しげな雰囲気を醸し出すなど、出過ぎず引き過ぎず、佳き調和である。・『大つごもり』樋口一葉原作久保田万太郎脚色第一場杉村春子主演のラジオドラマは...劇団新派の子<歳末特別朗読祭>「さろん・ど・まろん~波乃久里子を聴く宴」

  • 劇団民藝『囲われた空』

    *原作=クリスティン・ルーネンズ原作デジレ・ゲーゼンツヴィ脚色河野哲子訳(『囲われた空もう一人の<ジョジョ・ラビット>』小鳥遊書房刊*同社サイトでは書籍の一部を試し読みできる)丹野郁弓上演台本小笠原響演出『囲われた空』公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA15日まで映画『ジョジョ・ラビット』(2020年公開/アカデミー賞脚色賞受賞)は、第二次大戦中のドイツで、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で奮闘する少年と、彼の空想上のヒトラーとの交流というイマジナリーな趣向で戦時下の人々の姿をコミカルに描きつつ、戦争の残酷さを示した作品である。残念ながら未見だが、ネットの感想や口コミを覗くと、非常に好感度の高い作品として注目を集めたようだ。その映画の原作小説『CagingSkies』(囲われた空...劇団民藝『囲われた空』

  • 2024年12月の観劇と俳句の予定

    このあいだ新しい職場に来たはずなのだが、もう1年とは。観劇の予定は次の通りです。観劇と同じく忘れてはならないのが、映画『シアトリカル唐十郎と劇団唐組の記録』。大島新監督による2007年の作品が、唐十郎追悼により17年ぶりに再上映されます。公式サイトはこちら。*劇団民藝公演原作=クリスティン・ルーネンズ原作デジレ・ゲーゼンツヴィ脚色河野哲子訳(『囲われた空』小鳥遊書房刊)丹野郁弓上演台本小笠原響演出『囲われた空』公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA*劇団新派の子<歳末特別朗読祭>「さろん・ど・まろん~波乃久里子を聴く宴」公式サイトはこちら代々木上原/ムジカーザ(1,2+因幡屋通信74号)わたしの「久里子推し」は始まったばかりだ。これはもう何を置いても。*saltyrock27sta...2024年12月の観劇と俳句の予定

  • 劇団文化座特別公演『しゃぼん玉』

    *乃南アサ原作『しゃぼん玉』(新潮文庫刊)斉藤祐一(文学座)脚本西川信廣(文学座)演出公式サイトはこちら東池袋/あうるすぽっと11月20日、21日12月初旬、沖縄/那覇文化芸術劇場なはーと小劇場、うるま市きむたかホールで上演2017年の初演以来、全国120ステージを巡演した人気作がこのたび東京ファイナル公演を迎えた。自分はこれが初見である。安らぎのない家庭に生まれ育った主人公の翔人(藤原章寛)はひったくりやコンビニ強盗をしながら関東から九州・宮崎まで流れてきた。運転手を刃物で脅して乗ったトラックから放り出されて山中を彷徨ううち、自分を「ぼう」と呼ぶスマ婆さん(佐々木愛)に出会う。怪我をしたスマを家まで送り、病院へ連れて行った翔人は、心配して駆けつけた近所のおばさん三人衆(色違いのエプロンで登場/高村尚枝、...劇団文化座特別公演『しゃぼん玉』

  • SPAIRAL MOON the 49th session 『栗原課長の秘密基地』

    *土屋理敬作秋葉舞滝子演出公式サイトはこちら下北沢「劇」小劇場17日終了(同ユニットでの2019年11月同作のblog記事/当ぶろぐの土屋作品観劇記録は→1,2,3,4,5,6)某出版社の小さな部屋で開催された、歴史ある児童文学「きつつき賞」授賞式の騒動を描いた土屋理敬の傑作戯曲である。授賞式はほんの15分程度で終わるはずだったのに、想定外の問題が次々と発覚して事態は混乱の極みに。授賞式はいつ幕を閉じるのか。きつつき賞は誰に贈られるのか。編集者と審査員、受賞者がおりなす2時間の物語である。役柄と俳優、戯曲と演出のバランスについて考えた。クリハラ課長はビジネス雑誌の鬼編集長だったが、わけあって閑職の児童書部門に左遷された。冒頭、授賞式の準備をしながら部下のアサミが、童話にまつわるクイズを出すのだが、クリハラ...SPAIRALMOONthe49thsession『栗原課長の秘密基地』

  • 第21回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)『お気に召すまま』

    *公式サイトはこちらウィリアム・シェイクスピア原作コラプターズ(学生翻訳チーム)翻訳大友彩優子(文学部4年)演出阿部ひなた(文学部2年)プロデューサー10日終了明治大学アカデミーホールこれまでの観劇記録→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11)9月のラボ公演『番外編・お気に召すまま~ロザリンド・イン・ザ・リング!』(1,2,3,4)今年はラボ公演とはまた別の座組で熱海・逍遥忌記念祭公演『自由太刀余波鋭鋒』(じゆうのたちなごりのきれあじ)、明大附属八王子中学校・高等学校創立40周年記念公演『ロメオ、エンド、ジュリエット』、福井公演『沙翁之明治明治之沙翁』(いずれも未見)を実現し、本編後は父母会交流会記念公演『シーリアとロザリンドモノローグ・ミュージカル』(一般公開はしないがYouTube配信予定)...第21回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)『お気に召すまま』

  • 文学座・紀伊國屋書店提携公演『摂』

    *瀬戸口郁作西川信廣演出公式サイトはこちら11月6日まで紀伊國屋ホール舞台美術家・日本画家である朝倉摂(1922年/大正11年~2014年/平成26年)の評伝劇で、摂の母・朝倉耶麻子(富沢亜古)が語り手となって、おてんばを通り越してやんちゃを尽くす子ども時代から、彫刻家の父・朝倉文夫(原康義)と絶え間なく衝突しながら日本画家として活躍し、結婚、出産ののち、演劇の世界に足を踏み入れてアメリカ留学に旅立つまでの摂(荘田由紀)を描く。絵画、演劇、映画とさまざまな分野の芸術家が登場する群像劇であり、芸術賛歌の物語であると同時に、芸術と政治、芸術家と労働者、芸術と時代など重層的なテーマを提示した社会劇の一面も持つ。朝倉摂が亡くなってから既に10年も経ったことが実感できないのは、2022年に開催された「生誕100年朝...文学座・紀伊國屋書店提携公演『摂』

  • 2024年11月の観劇と俳句の予定

    いつまでも夏が残り、秋が来たかと思ったら、あっという間に10月が終わってしまいました。すぐに立冬です。*文学座紀伊國屋書店提携公演瀬戸口郁作西川信廣演出『摂』公式サイトはこちら紀伊國屋ホール舞台美術家・日本画家である朝倉摂の評伝劇。*第21回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)公式サイトはこちらウィリアム・シェイクスピア原作コラプターズ(学生翻訳チーム)翻訳大友彩優子(文学部4年)演出阿部ひなた(文学部2年)プロデューサー明治大学アカデミーホールこれまでの観劇記録→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11)今年も明大にシェイクスピアの季節の到来だ。9月のラボ公演(1,2,3,4)の良き手応えを携えて、いざ本編へ。*SPAIRALMOONthe49thsession土屋理敬作秋葉舞滝子演出公...2024年11月の観劇と俳句の予定

  • 座・高円寺 秋の劇場18 日本劇作家協会プログラム 劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜/贋作・冬物語』

    *関根信一作・演出公式サイトはこちら座・高円寺111月3日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26)劇団フライングステージは毎年12月末に「gaku-GAY-kai」という盛りだくさんのイベントを行う。シェイクスピアの贋作シリーズは、このイベントが始まりである。当日リーフレットに折り込まれた関根信一の「シェイクスピアと私と私たち」と題した長文のメッセージが非常に興味深い。関根が修業時代に数々のシェイクスピア作品、海外の俳優や演出家との出会いを経て、「gaku-GAY-kai」の贋作シリーズで実際にシェイクスピアを演じることになったという過程は、関根信一という一人の演劇人の人生行路であり、そこにいつのまにか...座・高円寺秋の劇場18日本劇作家協会プログラム劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜/贋作・冬物語』

  • 劇団文化座公演167『紙ノ旗』

    *内藤裕子作・演出公式サイトはこちら26日まで北区田端/文化座アトリエ内藤裕子、さとうゆいの演劇ユニット「greenflowers」(以下グリフラ)で2015年11月初演の作品(その時のblog記事)が文化座のアトリエで蘇った(2019年の東京芸術座の上演(劇団公式サイト)は未見)。硬質な題材をテンポ良く軽快に描く内藤戯曲に、文化座の俳優陣がどう取り組むのか。東京新聞WEBに記事あり(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14)。グリフラの初演から、もう10年近く経過しているとは。自分の観劇ファイルには、初演のチラシや当日リーフレットの他に、「議会を育休で休む」、「...劇団文化座公演167『紙ノ旗』

  • 演劇ユニット鵺的 第18回公演『おまえの血は汚れているか』

    *高木登作寺十吾演出公式サイトはこちら下北沢/ザ・スズナリ27日まで鵺的、高木登関連→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24,25,26)『荒野1/7』(2012年夏)をベースに新たに書き下ろされた作品(blog記事+α)。あれから12年も経ったのか。『荒野1/7』(以後前作)は非常に特殊な事情を抱えた7人のきょうだいが再会し、自分たちの親について、家族について話し合う物語であった。微かに希望を感じさせる終幕ですら痛ましいほどであったが、「この7人には別れたきりになってほしくない」と思い、彼等が自分の心のなかで生きはじめる実感があった。今夜はあの7人に再会するのか、それとも?『おまえの血は汚れているか』は、前作とは...演劇ユニット鵺的第18回公演『おまえの血は汚れているか』

  • 唐十郎さんを追悼する会

    *公式サイトはこちら(明治大学唐十郎アーカイヴ)10月15日(火)猿楽通り特設紅テント劇団唐組観劇の記録(『動物園が消える日』初日含む)→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18)8日の特別講義「唐十郎の演劇世界2024」に続いて、公演中の紅テントでのイベント第2弾。いつもの公演前の賑わいとは少し違う雰囲気のなか、学内外さまざまな年齢層の観客でテント内はほぼ満席となった。唐十郎アーカイヴ委員長の明治大学演劇学専攻・伊藤真紀教授の司会進行のもと、文学部長の田母神顯二郎教授の挨拶に続いて、同大における2012年度の唐十郎の講義「演出論A」第1回資料より抜粋の録音が披露され、懐かしい声と口調にしばし聴き入った。プログラムは以下の通り。舞台には2名の手話通訳者が登...唐十郎さんを追悼する会

  • 名取事務所公演 現代韓国演劇 2作品上演

    *公式サイトはこちら20日まで下北沢小劇場B1観劇順に記載1,『少年Bが棲む家』イ・ボラム作シム・ヂヨン翻訳・ドラマトゥルク宋英徳演出本作は同事務所で2020年に上演され、多くの演劇賞を受賞した(眞鍋卓嗣演出)。自分は今回が初見で、観劇日は翻訳・ドラマトゥルクのシム・ヂヨンによる「プレ・トーク」があり、劇作家が本作を執筆したきっかけ(日本、韓国、アメリカで起こった少年による凶悪犯罪)や上演歴などが語られた。タイトルが「少年A」ではなく、「少年B」であることの理由を聞き、改めて当日リーフレット記載の配役表を見ると、主人公と思しきデファンの他に「少年B」が登場する。これはどういうことなのか。デファンの父役の横山祥二、母役の鬼頭典子が誠実で丁寧な演技で、舞台に安定感をもたらす。食事の際は、まず父親が一口食べ、何...名取事務所公演現代韓国演劇2作品上演

  • 特別講義「唐十郎の演劇世界 2024」

    *公式サイトはこちら(明治大学唐十郎アーカイヴ)10月8日(火)猿楽通り特設紅テント唐組・第74回公演『動物園が消える日』初日観劇の余韻覚めやらぬまま、休演日の紅テントへ。昼間の紅テントは穏やかで、どこかユーモラスでさえある。毎年恒例、公演期間中のテントにおいて、文学部演劇学専攻・伊藤真紀教授の「同時代日本演劇B」の一コマを「特別講義」として、講演と唐十郎作品の朗読ワークショップが行われた(2017年の本作観劇blog記事のなかに、同年のワークショップについての記載あり)。上野の古びたビジネスホテルのロビーの装置を目の前に、客席前から3列目に座ってみた。ここは本番中なら水よけのビニールシートが渡される好位置である。履修の現役学生はもちろん、自分を含め一般社会人の参加もあって、テント内は夜とは違う熱を帯びは...特別講義「唐十郎の演劇世界2024」

  • 劇団唐組・第74回公演『動物園が消える日』

    *唐十郎作久保井研+唐十郎演出公式サイトはこちら猿楽通り特設紅テント(10月20日まで)、雑司ヶ谷・鬼子母神(11月4日まで)(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)今年も唐組の秋は神田猿楽町で始まった。本作は2017年に続いて2度目の観劇になる。特別講義や追悼イベントも楽しみだ(明治大学唐十郎アーカイヴ)。前回の2017年の公演期間中は、冷たい雨の日が続いたことを思い出す。このたびも初日は朝から雨がちで、なぜか雨を呼び込む演目らしい。前回と同じ配役陣はいっそう堅固に舞台の核を作り、そこに新しく配された中堅、若手、客演陣がエネルギーをぶつけて、新鮮で刺激的な座組となった。少々雑な括り方ではあるが、日本人には無くなっていくものへのノスタルジーや愛着が強い気質があ...劇団唐組・第74回公演『動物園が消える日』

  • 2024年10月の観劇と俳句の予定

    ふ週中にまたしても最高気温30度の日があるとの予報に加え、「今年の紅葉は12月から」という噂を聞きました。季節がずれ過ぎています。まずは観劇の予定から。*劇団唐組・第74回公演唐十郎作久保井研+唐十郎演出公式サイトはこちら(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)『動物園が消える日』今年も唐組の秋は猿楽通り沿い特設テントに始まる。本作は2017年に続いて2度目の観劇だ。特別講義や追悼イベントも楽しみ(明治大学唐十郎アーカイヴ)。*名取事務所公演現代韓国演劇2作品上演公式サイトはこちら下北沢小劇場B1『最後の面会―オウム真理教事件―』キム・ミンジョン作シム・ヂヨン翻訳・ドラマトゥルク桐山知也演出『少年Bが棲む家』イ・ボラム作シム・ヂヨン翻訳・ドラマトゥルク宋英徳演...2024年10月の観劇と俳句の予定

  • 劇団民藝公演『ミツバチとさくら』

    *ふたくちつよし作中島裕一郎演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA10月7日まで『あした天気になぁれ』、『霞晴れたら』、『野の花ものがたり』に続いて、ふたくちつよしが民藝に書き下ろしたのは、母とその4人の娘たち、その夫や娘、友人、元教師だった母の教え子たちによる賑やかな会話劇である。自分は2017年の『野の花ものがたり』に次ぐ2作目の観劇となった。ミツバチとさくら。この題名が意味するものは何なのかを、ゆったりと温かく解き明かす物語である。母の松永邦子(樫山文枝)は元中学の教師だったが2年間で結婚退職し、ずっと専業主婦として家族を支えてきた。夫・義彦の七回忌法要を控え、日にちを1週間まちがえてやってきた妹の啓子(白石珠江)、大学でミツバチの研究に勤しむ四女史香(金井由妃)のやりと...劇団民藝公演『ミツバチとさくら』

  • 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎 東京芸術祭 2024 芸劇オータムセレクション 『三人吉三 廓初買』

    *河竹黙阿弥作木ノ下裕一監修・補綴杉原邦生演出(KUNIO)公式サイトはこちら東京芸術劇場プレイハウス30日までその後まつもと市民芸術館、三重会館、兵庫県立芸術文化センターを巡演昨年の『勧進帳』(blog記事、通信75号)の収穫を頼りに、2回の休憩を挟んで5時間20分の長丁場に挑戦した。木ノ下歌舞伎では2014年初演、2015年再演の歩みを進めていたが、コロナ禍のために2020年の再再演は叶わなかった。4年ののち、2020年版台本からの再補綴、再演出を以てこのたびの上演となった。5時間20分の上演時間は歌舞伎公演よりも長く、観劇前は楽しみと同じほど心配もあった。作り手側がSNSなどでしきりに発信していたように「あっという間です」とは言えないものの、終わってみればやはり「あっという間」であるような不思議な感...東京芸術劇場Presents木ノ下歌舞伎東京芸術祭2024芸劇オータムセレクション『三人吉三廓初買』

  • 文学座9月アトリエの会『石を洗う』

    *永山智行(こふく劇場)作五戸真理枝演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ19日終了永山作品観劇の記録→1,2物語は東日本大震災の前の年、2010年に始まる。九州の熊本の小さな村に暮らす人々と、郊外から都心へ通勤する福島出身の男性とその周辺を行き来しながら進行する。開演して観客を戸惑わせるのは、特殊な形式の戯曲である。登場人物はそれぞれ自分の台詞を発語すると同時に、「サエはそう思った」など、ト書きというよりも、まるで小説の地の文を朗読するように、人物の思いや行動、その場の状況などを語るのである。通常ならば、俳優の動きや表情によって認識するものを、「すべて語られている」と言ってもよく、しかし俳優はいずれも朗々と語るというより、わりあい自然な口調で「話す」感じに近いためか、いつのまにか戸惑いから解放され...文学座9月アトリエの会『石を洗う』

  • 因幡屋通信76号完成

    おかげさまで因幡屋通信最新号の76号が完成いたしました。当blogでも公開いたしますので、ぜひお運びくださいませ。リンクは観劇後のblog記事です。ご参考までに。長らく通信を設置していただいておりました愛媛県松山市の「シアターねこ」さまが8月31日を以て閉館されました。長年の活動に敬意を表するとともに、設置のご協力に改めて深く感謝申し上げます。そしてこのたび、北海道札幌市の「扇谷記念スタジオシアターZOO」さまへの再設置、長野県上田市の「犀の角」さまへの新規設置が叶いました。ほんとうにありがとうございます。訪れる方々のお目に留まりますよう…。通信はここから***********************************元日の能登半島地震翌日の航空機炎上事故新しい年は波乱の幕開けでした1月から6月まで...因幡屋通信76号完成

  • 明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)ラボ公演『番外編・お気に召すまま~ロザリンド・イン・ザ・リング!』

    *ウィリアム・シェイクスピア原作猪上混作内山就人演出井上優(文学部教授)総監修「こりっち」掲載の情報はこちら明治大学猿楽町第2校舎1階アートスタジオ8日終了(1,2,3)演劇の上演にはさまざまな困難がある。今回の公演までの紆余曲折は、当日リーフレット掲載の井上優教授の「ご挨拶」に詳しい。本プロジェクト初の本格地方公演を能登演劇堂で行う予定だったところを、1月1日能登半島地震に見阻まれた。ならば例年スタッフのワークショップを兼ねて実施してきたラボ公演をやろう、さて演目は?となったとき、旧知の劇作家・猪上混が2週間で書き上げたという本作を持って現れた…というから、実に不思議な巡り合わせである。その作品とは、今年11月に予定されている第21回MSP『お気に召すまま』のまさに番外編。不幸ないきさつで殺人を犯してし...明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)ラボ公演『番外編・お気に召すまま~ロザリンド・イン・ザ・リング!』

  • 尾上右近自主公演 第八回「研の會」

    *公式サイトはこちら大阪・国立文楽劇場8月31日、9月1日浅草公会堂9月4日、5日公式サイトや歌舞伎俳優名鑑記載のプロフィールを読んでみると、歌舞伎俳優・尾上右近の歩みには、さまざまな葛藤や苦悩があることが想像される。清元宗家七代目・清元延寿太夫の次男として生まれ、曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優の鶴田浩二という血筋から、すでに一種の「二刀流」の芸風を予感させる。曾祖父六代目菊五郎の「鏡獅子」に憧れて歌舞伎俳優を志した。当代菊五郎のもとで修業に励み、本名の岡村研佑の名で2000年に初舞台を踏んで以来、立役と同時に女形もつとめて2005年、二代目尾上右近を襲名、さらに2018年には七代目清元栄寿太夫を襲名している。ここもやはり「二刀流」なのだ。歌舞伎公演はもちろんのこと、昨年夏の『刀剣乱舞』などの...尾上右近自主公演第八回「研の會」

  • 2024年9月の観劇と俳句の予定

    残暑と台風と地震にこれほど翻弄される季節であったかと思いますが、お米が店頭に並ぶのが待ち遠しい9月です。観劇予定は次の通り。*日本新劇俳優協会フェスティバル2024公式サイトはこちら【リーディング2024】『戦争は女の顔をしていない』、『ガザ・モノローグ』【お話を聞く会】講師:河合祥一郎「シェイクスピアの台詞のリズムについて」「サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』は不条理じゃないことについて」協会のイベントは『唐人お吉の神話~「下田のユーディット」・山本有三「女人哀詞」より』(2016年)『ワーニャ伯父さん』(2019年)以来。つい先日ワーニャを演じた髙橋克明の逝去を知った。59歳。これからますます味わいの深まることを楽しみにしていたのに。*尾上右近自主公演第八回「研の會」公式サイトはこちら尾...2024年9月の観劇と俳句の予定

  • 演劇ユニット「クロ・クロ」第13回公演『ギ・ジギ』

    *千頭和直輝脚本・演出公式サイトはこちら荻窪小劇場9月1日終了5月の朱の会Vol.7公演愛の三重奏より、「愛は不思議なもの」のステージにおいて、澄んだ美しい声が記憶に新しい木村優希のホームグラウンドの公演を初観劇。台風10号の接近が案じられながら、夜になると思いのほか雨風弱まり、落ち着いた気持ちで客席に身を置くことができた。このたびの作品の第一のモチーフは「箱庭」である。公演チラシ裏面に「人工的に作られたある程度のまとまりを持った仮想空間。地球規模での天変地異により地上での生活は著しく制限されたため、人々は一生のほとんどを箱庭の中で過ごす様になっている。箱庭同士は道でつながっており、オープンなものもあれば閉鎖的なものもある」と、用語解説が掲載されている。そしてその「箱庭」で生活する人の姿をしたものが「人型...演劇ユニット「クロ・クロ」第13回公演『ギ・ジギ』

  • 東京芸術座公演№107/シアターχ提携公演『戻り道を探して ミレナとカフカとマルガレーテ』

    *くるみざわしん作北原章彦演出公式サイトはこちら両国/シアターχ25日終了(1,2,3)遅ればせながら、劇作家くるみざわしんの作品を初めて観劇した。過去作品についてのネット情報、本作の手応え、そして9月に控えたPカンパニーの作品まで、取り上げる内容や作風など、非常に誠実で硬質な社会派との印象を得た。第二次世界大戦中に亡くなったチェコのジャーナリストであるミレナ・イェシェンスカーが柩から身を起こし、かつての恋人のフランツ・カフカ、収容所で知り合ったドイツ共産党員のマルガレーテ・ブーバー=ノイマンの柩の扉を叩いて眠りを覚まさせる。それについて終了所の監督長や看守たち、医師も柩から出てくる。ミレナの目的は自分を死に追いやったナチスたちへの復讐や懺悔の要求ではない。戦禍に散った人々を悼むとき、「安らかに眠ってくだ...東京芸術座公演№107/シアターχ提携公演『戻り道を探してミレナとカフカとマルガレーテ』

  • 八月納涼歌舞伎 第二部「梅雨小袖昔八丈」より「髪結新三」

    *河竹黙阿弥作公式サイトはこちら歌舞伎座25日終了先に観劇した知己から「勘九郎の新三がすごい。ほんとうの悪人に見える」と聞いて、改めてポスター(上記画像)を眺めてみた。ほんの数回(十八代目中村勘三郎と当代の尾上菊五郎か)しか観劇していないのは、この「髪結新三」の話じたいがあまり好きになれないためである。思い悩む若者につけこんで唆す、騙す、かどわかす手練手管、乱暴で傍若無人の態度や振る舞いは、五七調の名台詞や切れの良い所作で確かに「粋」ではあるが、「小悪党」の可愛げは感じられない。勘三郎は抑えても抑えても愛嬌が滲み出て、「悪党を演じている勘三郎」と受け止めていた記憶がある。今回初役の勘九郎には、一片の愛嬌も感じられない。芯から、ほんとうの悪人に見えるのである。このような芸質を持つ人だったのか。とすれば、先日...八月納涼歌舞伎第二部「梅雨小袖昔八丈」より「髪結新三」

  • 八月納涼歌舞伎 第三部「狐花 葉不見冥府路行」

    *京極夏彦脚本今井豊茂演出・補綴公式サイトはこちら25日まで歌舞伎座題名は「きつねばなはもみずにあのよのみちゆき」と読む。京極夏彦が小説家デヴュー30周年の年に、初めて歌舞伎公演のために書き下ろした。「憑き物落とし」によって事件の真相を解き明かしていく「百鬼夜行」シリーズの主人公・古本屋の店主の京極堂こと中善寺秋彦の曽祖父である中禪寺洲齊(松本幸四郎)が、江戸の作事奉行・上月堅物(中村勘九郎)の屋敷で起こった事件の謎に挑む物語だ。同名小説が開幕直前に刊行され、観てから読むか、読んでから観るかと悩むのもまた一興という盛りだくさんのお披露目となった。サスペンス、ホラー色満載の謎解きの物語なので詳細の記述は憚られるものの、前半の伏線を巧みに展開し、きっちりと回収する見事な構成と、趣向を凝らした舞台装置、美術、音...八月納涼歌舞伎第三部「狐花葉不見冥府路行」

  • ティーファクトリー『路上7 インパーフェクト・デイズ』

    *川村毅作・演出公式サイトはこちら雑遊12日まで(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16)雑遊がオープンした2007年より折に触れ、川村毅作・演出∔小林勝也主演、他のキャストは様々に1時間1幕の芝居が上演され、今回7作めを迎えた。「あまりシャカリキにならず遊ぼうといったコンセプト」(『路上5』当日リーフレット)の通り、作り手の極めて緩くさりげなく、リラックスした姿勢が魅力のシリーズであるが、2011年の東日本大震災をうけた『路上3.11(路上4)』の緊急上演や、コロナ禍が始まった2020年8月の『路上5東京自粛』、その2年後を描いた『路上6そして私たちは生きている』のラインナップには、緩さとさりげなさの中に作り手の創作活動への渇望としたたかさが感じられる。時は2020...ティーファクトリー『路上7インパーフェクト・デイズ』

  • 劇団民藝KEIKOBA公演『真夜中の太陽』

    *谷山浩子原案・音楽工藤千夏作所奏(文学座)演出公式サイトはこちら川崎市麻生区黒川/劇団民藝稽古場7日までシンガーソングライターの谷山浩子による同名の歌をモチーフに工藤千夏が創作した物語は、2009年のプラチナ・ペーパーズ「ラフカット2009」の初演後、2013年の冬、民藝版として上演され、全国を巡演して86ステージを重ねた。このたび文学座の所奏を演出に迎え、配役を一新して再演の運びとなった(Wikipediaに詳しい記述)。民藝初演版で日色ともゑが演じたハツエ役は、中地美佐子と、てがみ座の石村みかのダブルキャスト。以下は石村が出演したBチームの観劇記である。2013年の民藝版初演の際、「本作は劇団の歴史に確かな足跡を残すものになるのではないか。今夜女生徒を演じた若い方々が成長してハツエや山岸先生を演じ、...劇団民藝KEIKOBA公演『真夜中の太陽』

  • 2024年8月の観劇と俳句の予定

    尋常でない暑さが続いています。皆さま、くれぐれも御身大切に。7月の宿題がまだ残っておりますが、今月の観劇予定は以下の通りです。*ティーファクトリー川村毅作・演出小林勝也主演『路上7インパーフェクト・デイズ』公式サイトはこちら雑遊(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16)*八月納涼歌舞伎公式サイトはこちら第二部「梅雨小袖昔八丈」より「神結新三」、「艶紅*接拙」より「紅翫」第三部京極夏彦脚本今井豊茂演出・補綴「狐花」*演劇ユニット「クロ・クロ」第13回公演千頭和直輝脚本・演出『ギ・ジギ』公式サイトはこちら荻窪小劇場・・・5月の朱の会Vol.7公演愛の三重奏「愛は不思議なもの」での、澄んだ美しい声が記憶に新しい木村優希のホームグラウンドの公演。俳句の予定は以下の通りです。既...2024年8月の観劇と俳句の予定

  • 劇団唐ゼミ☆第32回公演『少女仮面』

    *唐十郎作中野敦之演出公式サイトはこちら恵比寿・エコー劇場7月28日終了(1,2,3,4)これまでの本作観劇の記録→文学座附属研究所(2019年10月)、トライストーン・エンタテイメント(2020年1月若村麻由美主演)、metro(2020年2月月船さらら主演)、新宿梁山泊(2021年12月李麗仙追悼公演)、ゲッコーパレード(2023年3月出張公演劇場Ⅱ)、一糸座(2023年3月)唐十郎の初期の代表作であり、1969年の初演から現在に至るまで、アングラ、新劇、プロ、アマチュア問わず、さまざまな座組で上演されてきた『少女仮面』。劇団唐ゼミ☆の看板女優の椎野裕美子が主役の春日野八千代で堂々の復帰を果たし、新たな1ページが加わった。いつもの青テントではなく、恵比寿のエコー劇場での公演であり、考えてみると、昼日中...劇団唐ゼミ☆第32回公演『少女仮面』

  • 文学座公演『オセロー』

    *ウィリアム・シェイクスピア作小田島雄志訳鵜山仁演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA7日終了可児市文化創造センター、長岡リリックホール巡演蜷川幸雄演出の同作品のblog記事→こちら(2007年10月)/昨年観劇した鵜山仁演出のシェイクスピア作品のblog記事→『夏の夜の夢』、『終わりよければすべてよし』&『尺には尺を』NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は身内や同士が次々と謀殺されていく陰惨な展開の中で、横田栄司が演じる和田義盛は剛胆な鎌倉武士であるが、見当外れだったりピントがずれていたりなどの言動が微笑ましく、「癒し系キャラ」として次第に注目と人気が高まっていった。木曽義仲の妻・巴御前に武人として惚れ込み、義仲が討ち死にしたときは、側女ではなく「家人になってくれ」と懇願。頑な...文学座公演『オセロー』

  • 2024年7月の観劇と俳句の予定

    梅雨入りしたと思ったら連日の高温多湿。やがてこれに強い日差しが加わるのですね。昨年以上の暑さになると聞いて、恐怖におののいています。観劇の予定は次の通り。*文学座公演ウィリアム・シェイクスピア作小田島雄志訳鵜山仁演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA『オセロー』・・・蜷川幸雄演出の舞台のblog記事はこちら(2007年10月)。すでに開幕し、評判も上々。病気休養していた横田栄司の復帰が嬉しい。*劇団唐ゼミ☆第32回公演唐十郎作中野敦之演出公式サイトはこちら恵比寿・エコー劇場(1,2,3,4)『少女仮面』・・・唐ゼミ☆があの名作に挑む。これまでの本作観劇の記録→文学座附属研究所(2019年10月)、トライストーン・エンタテイメント(2020年1月若村麻由美主演)、metro(20...2024年7月の観劇と俳句の予定

  • 新国立劇場『デカローグ 1-10 愛と人生の十篇の物語』よりEプロ∔Dプロ

    *クシシュトフ・キェシロフスキ/クシュシュトフ・ピェシェヴィチ原作久山宏一翻訳須貝英上演台本小川絵梨子/上村聡史演出公式サイトはこちら新国立劇場小劇場4月のA,Bプロ、5月のCプロに続いて、Eプロ(9,10)→Dプロ(7,8)の順に観劇。7月15日まで★プログラムE「デカローグ9ある孤独に関する物語」・・・小川演出医師から性的不能であると告げられた夫(伊達暁)。魅力的な妻(万里沙)は変わらず自分を愛すると言う。しかし彼女には既に愛人(宮崎秋人)がいた。夫に宣告する医師は、同じく医師である夫の友人なのだが、彼の造形について、彼が「くそ野郎」であると夫婦ともに認識しているとしても、いささか戯画的である。これは妻の不倫相手の学生についても同じことが言える。また妻が背を向けてから、夫が「もう寝た?」と問いかける場...新国立劇場『デカローグ1-10愛と人生の十篇の物語』よりEプロ∔Dプロ

  • 初夏の新派祭

    *公式サイトはこちら三越劇場23日終了日本橋の三越劇場では何度か観劇しているが、昼間にゆとりをもって訪れるのは初めてかもしれない。思いのほか小ぢんまりした作りながら、二階席の重厚な内装など、落ち着いた雰囲気はとても居心地が良い。『螢』・・・久保田万太郎作成瀬芳一演出これまでの本作観劇の記録は、2003年冬の文学座勉強会(blog記事無し)、2016年夏文学座自主公演、2017年春劇団朋友リーディング公演、2020年秋座☆吉祥天女公演。ときとしげを同じ俳優(河合雪之丞)が早替りの二役で演じる新派型を初めて観る。早替りが自然に進行するよう、家の裏手を設定したり、重一(喜多村緑郎)としげが寄り添い、しげに先へ行くように促したあと、重一が裏窓の明かりをじっと見つめるなど、無言ながら思い入れをしっかりと入れる演出で...初夏の新派祭

  • 山本さくらパントマイム 第32回公演 『WORKS~現在、過去、そして未来へと』

    *山本さくら作・演出・出演公式サイトはこちら6月12日2回公演ザムザ阿佐ヶ谷(1,2,3,4,5)今年も阿佐ヶ谷へうきうきと足を運ぶ季節がやってきた。ステージ中央には味わい深い手書きのプログラムを乗せた譜面台があるのみ。次々に訪れる人で客席はほぼ満席の盛況である。山本さくらの「身体の言葉」による物語の開幕だ(今回は3,4,5が新作)。1,あすなろ魂(スピリット)ステージに登場する山本さくらは、重い扉を開けようとするが叶わない。めげることなくエクササイズを続け、遂に!ジョギングやダンベル、縄跳びはもちろん、プロテイン飲料らしきものを摂取したり、果てはどんぶり飯を平らげ、相撲の稽古までする。これらはすべて道具無しに表現される。電気グルーヴの「あすなろサンシャイン」の歌が流れる中、。「なろうなろう、あすなろ。明...山本さくらパントマイム第32回公演『WORKS~現在、過去、そして未来へと』

  • 2024年6月の観劇と俳句の予定

    九州地方が梅雨入りしました。雨が降ると劇場に運ぶ足も重くなりがちですが、迎える作り手の方々の気づかいや負荷はもっと大変なことでしょう。どちらも心身守られて、最初から最後まで無事に幕が開きますように。*初夏の新派祭公式サイトはこちら三越劇場一、久保田万太郎作成瀬芳一演出『螢』・・・これまでの本作観劇の記録は、2003年冬の文学座勉強会(blog記事無し)、2016年夏文学座自主公演、2017年春劇団朋友リーディング公演、2020年秋座☆吉祥天女公演。このたび「とき」と「しげ」を一人の俳優(河合雪之丞)が二役でつとめる新派型を初めて観劇することになる。二、喜劇『お江戸みやげ』・・・歌舞伎座で中村時蔵がお辻を演じた舞台は、しみじみと味わい深いものであった(こちらもblog記事は無いが、因幡屋通信61号のトピック...2024年6月の観劇と俳句の予定

  • 朱の会Vol.7 愛の三重奏―朗読シリーズ~矢代静一 ―『宮城野』

    *公式サイトはこちら阿佐谷/アートスペース・プロット(1,2,2',3,4,5,5',6,7,8,9,10)6月2日まで回を重ねるごとに新鮮な刺激と深い安定感が増す朱の会が、山本周五郎『三年目』と小川未明『愛は不思議なもの』を茜組、藍組のダブルキャストで、矢代静一『宮城野』を主宰の神由紀子と高井康行で上演する。4日間毎日2回公演というハードなスケジュールだ。観劇した茜組の初日夜の回は満席の盛況である。ステージには箱型の椅子が数脚置かれているが、紫色の絣のような模様のある美しいものだ。出演を予定していた辻田豊が体調不良で降板したが、高橋壮志と羽生直人が代役をつとめて無事に上演が叶った。★小川未明作『愛は不思議なもの』・・・寄る辺のない少女おしず(木村優希)は、奉公先でお守りをしている幼い坊ちゃんを探して、凍...朱の会Vol.7愛の三重奏―朗読シリーズ~矢代静一―『宮城野』

  • 新国立劇場『デカローグ 1-10 愛と人生の十篇の物語』よりCプロ

    *クシシュトフ・キェシロフスキ/クシュシュトフ・ピェシェヴィチ原作久山宏一翻訳須貝英上演台本小川絵梨子/上村聡史演出公式サイトはこちら新国立劇場小劇場4月のA,Bプロに続いて観劇。6月2日終了D、Eプロは6月22日~7月15日上演★プログラムC「デカローグ5ある殺人に関する物語」・・・小川演出ピョトル(渋谷謙人)は努力が実り、弁護士の資格を得る。もうじき初めての子どもが生まれることも併せて、前途は希望に満ちている。20歳の青年ヤツェク(福崎那由他)は乗り込んだタクシーの運転手ヴァルデマル(寺十吾)を撲殺する。ピョトルは殺人の罪で裁判にかけられるヤツェクの弁護を担当するが力及ばず、ヤツェクは死刑判決を受ける。さまざまなテレビドラマで渋谷を見ているが、舞台はこれが初めてである。影のある容貌のためであろうか、癖...新国立劇場『デカローグ1-10愛と人生の十篇の物語』よりCプロ

  • クニモリカンパニー 第1回公演『十二人の怒れる男』

    *レジナルド・ローズ作額田やえ子訳(劇書房刊)川口典成(ドナルカ・パッカーン/川口演出舞台のblog記事→1,2,3,4)演出高田馬場プロトシアター19日終了本作(Wikipedia)は1954年のテレビドラマに始まり、ヘンリー・フォンダ主演の映画にリメイクされて、舞台作品としても繰り返し上演されている法廷劇、議論劇の傑作である。自分の初観劇は1983年の渋谷・パルコパートⅢでの石坂浩二演出版ではないか。たしか1985年の再演以来、記憶にある限り、なぜか一度も観劇していない。ほぼ40年ぶりに怒れる男たちとの再会となった。直前に陪審員2号役の阪本修が体調不良で降板という困難に見舞われ、台詞のカットや変更などを行って『十一人の怒れる男』に改訂しての上演となった。被告人の有罪無罪を数で決定する内容であるから、こ...クニモリカンパニー第1回公演『十二人の怒れる男』

  • 劇団民藝公演『オットーと呼ばれる日本人』

    *木下順二作丹野郁弓演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA26日終了劇団の初演は1962年の宇野重吉演出、同じく宇野演出で66年に再演、2000年には米倉斉加年の演出で三演を重ね、このたび24年ぶりに丹野郁弓が演出を担っての上演となった。押しも押されぬ劇団民藝の財産演目であり、半世紀を超えて取り組み続ける舞台に出会えたことは、観客として幸福であると思う。自分は今回が初めての『オットー~』となった。自分の手元には岩波文庫の『オットーと呼ばれる日本人』がある。2013年上演の『神と人とのあいだ第二部夏・南方のローマンス』、翌年上演の『白い夜の宴』観劇の前後に購入したものと思われる。今回の『オットー~』再演を前に改めてページをめくってみると、ある台詞にアンダーラインが引かれていること...劇団民藝公演『オットーと呼ばれる日本人』

  • 劇団唐組・第73回公演『泥人魚』

    *唐十郎作久保井研+唐十郎演出公式サイトはこちら(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16)既に神戸・湊川公園で開幕し、岡山の旭川河畔・京橋河川敷の公演も盛況のうちに終了して、いよいよ新宿・花園神社にお目見得となる。数々の演劇賞を受賞した2003年の初演は未見。2021年12月の金守珍演出のシアターコクーン版にはなぜか心が入ってゆかずblog記事なし。唐十郎の訃報を知ったのは5月5日(日)朝のネットニュースであった。既に先月から『泥人魚』のツアーは始まっており、その日は新宿・花園神社の初日で、いつもよりも張りつめた空気の中開幕、カーテンコールで座長代行の久保井研の挨拶のあとは拍手が鳴りやまず、あるSNSには「劇場全体が号泣しているようだった」とあった。いつかはこんな日が...劇団唐組・第73回公演『泥人魚』

  • 新国立劇場『デカローグ 1-10 愛と人生の十篇の物語』よりAプロ、Bプロ

    *クシシュトフ・キェシロフスキ/クシュシュトフ・ピェシェヴィチ原作久山宏一翻訳須貝英上演台本小川絵梨子/上村聡史演出公式サイトはこちら新国立劇場小劇場プログラムA∔Bは5月6日終了映画は90年代に公開されたとき、全作観ている。(2021年デジタル・リマスター版公開時の公式サイト)。何かに取り憑かれたかのような気持ちだった。それが舞台化されるとは!本作は旧約聖書の「モーセの十戒」、神がエジプトの支配から脱出した民へ与えた10の戒めがモチーフになっている。公演パンフレットには、翻訳をつとめた久山宏一による映画の成立と十戒の構造についての詳しい寄稿が掲載されている。映画には1話ごとに十戒の文言が添えられているが、今回の舞台にはそれがない。創作側の意図のひとつであろうか。映画は神の戒めに沿って、10の物語を生きる...新国立劇場『デカローグ1-10愛と人生の十篇の物語』よりAプロ、Bプロ

  • 2024年5月観劇と俳句の予定

    急に夏日になったかと思えばセーターがほしいほど肌寒かったり、天候不安定な季節です。公演に関わる方々、訪れる方々の心身が守られ、多くの出会いがありますように。4月の宿題が残っていますが、今月の予定は以下の通りです。既に開幕しているものもあり。*クシシュトフ・キェシロフスキ/クシュシュトフ・ピェシェヴィチ原作久山宏一翻訳須貝英上演台本小川絵梨子/上村聡史演出公式サイトはこちら『デカローグ1-10愛と人生の十篇の物語』新国立劇場小劇場90年代に公開された映画(2021年デジタル・リマスター版公開時の公式サイト)を何かに取り憑かれたかのように全作観た。当時から舞台になることは全く想像しておらず、それだけに不安と期待が募る。まずはプログラムA(デカローグ1ある運命に関する物語∔デカローグ3あるクリスマス・イブに関す...2024年5月観劇と俳句の予定

  • 因幡屋通信75号完成

    因幡屋通信最新号の75号が完成し、設置先劇場、ギャラリー、カフェ各位さま宛に発送いたしました。予定よりかなり相当だいぶ遅れました(汗)。こちらのblogでも公開いたしますので、お読みづらいとは思いますが、どうかご笑覧くださいませ。リンクは観劇直後のblogの記事です。ご参考までに。シアター風姿花伝さまは前回にて、こまばアゴラ劇場さまは今回が最後のお届けになります。長きにわたり、貴重なスペースを拝借し、設置や撤収のお手を取らせましたことに改めて感謝申し上げます。また今回より兵庫県の城崎国際アートセンターさまに再設置が叶いましたこと、ご報告申し上げます。大好きな演目や登場人物がますます好きになった体験記しばしお付き合のほど負けいくさの男たち―富樫左衛門の気持ち東京芸術祭2023芸劇オータムセレクション東京芸術...因幡屋通信75号完成

  • 動物自殺倶楽部 第3回公演『夜会行』

    *高木登(演劇ユニット鵺的/動物自殺倶楽部)作小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)演出公式サイトはこちら下北沢・「劇」小劇場28日終了同ユニットこれまでのblog記事(1,2)鵺的、高木登関連→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24,25,26)2021年夏の鵺的の初演(寺十吾演出)はずっと心に残っている(blog、通信)。劇作家は初演当時から「若手版をやってみたい、演出を女性にまかせたものを観てみたい」という思いがあったとのこと(公演チラシより)。それが実現の運びとなったのは、観客としても嬉しいことであった。公演直前に赤猫座ちこ(牡丹茶房/動物自殺倶楽部)が体調不良により降板という大変なアクシデントに...動物自殺倶楽部第3回公演『夜会行』

  • 2024年4月観劇と俳句の予定

    いつにも増して切ない年度末と慌ただしい年度始めになりそうですが、観劇予定はまだ少なめです。*四月大歌舞伎公式サイトはこちら夜の部片岡仁左衛門と坂東玉三郎の「於染久松色読販」と「神田祭」*劇団夜行列舎第9回公演『ゴーレムの記憶ジャガーの眼編』藤澤邦見と夜行列舎作・演出永野直樹原作公式サイトはこちら*動物自殺倶楽部第3回公演『夜会行』(1,2)高木登(演劇ユニット鵺的/動物自殺倶楽部)作小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)演出公式サイトはこちら鵺的、高木登関連→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24,25,26)2021年夏の鵺的の初演(寺十吾演出)はずっと心に残っている(blog、通信)。演出、俳優、劇場...2024年4月観劇と俳句の予定

  • 劇団唐ゼミ☆第31回公演『鐡假面』

    *唐十郎作中野敦之演出公式サイトはこちら(1,2,3)横浜・大通り公園横浜市技能文化会館前特設劇場24日終了文化庁の海外研修生として1年間過ごしたロンドンから帰国した中野敦之が「この芝居にありったけを叩き込みます」(公演チラシ)とのこと。およそ2年半ぶりの青テントへ喜び勇んで足を運んだ。劇団唐組や唐ゼミ☆の唐十郎作品の公演は、今や欠かせない必修科目であり、自分の演劇人生の大切な宝である。始めはこわごわ、やがて興味津々、テントに足を踏み入れるときの独特の緊張感や間近に見る俳優陣の熱量、皮膜1枚で隔てられた外界の音や空気、それらはやがて終幕の屋台崩しのカタルシスで頂点に達する。屋台崩しは作品によって、その色合いや迫力が異なる。あるときは外界へ勢いよく飛び出し、またあるときは溶け込むように消え去り、向こう側へ行...劇団唐ゼミ☆第31回公演『鐡假面』

  • 『遠き日の落球』

    *川手ふきの脚本桒原秀一(JAPLIN)脚色・演出公式サイトはこちらシアター・アルファ東京24日終了憧れの甲子園出場を目前にしながら、自分が落球したためにチームはサヨナラ負け。野球からも仲間からも遠ざかってしまった主人公が10年後、草野球チームに誘われ、再び野球に打ち込み始める。野球に魅入られた若者たちとその家族、友人、町の人々の交わりを描いた物語は、一部ダブルキャストの総勢29名のにぎやかな座組で、休憩無しの2時間を一気に駆け抜ける。舞台でスポーツを描くことは簡単ではないが、決して大掛かりな舞台美術ではなく、白い箱やドラム缶、ネットなどを無理なく動かし、照明技術を駆使して試合の臨場感だけでなく、居酒屋や主人公の家、友人の職場など、さまざまな場所への転換、時間の経過、幻想との交錯も表現している。終始ボール...『遠き日の落球』

  • 三月大歌舞伎 昼の部「寺子屋」「傾城道成寺」「御浜御殿綱豊卿」

    *公式サイトはこちら東銀座・歌舞伎座26日終了1,「菅原伝授手習鑑」より「寺子屋」・・・本作については、2020年5月放送のNHKEテレ「にっぽんの芸能」の中村吉右衛門、2015年の市川染五郎(現・松本幸四郎)、2016年の中村勘九郎がそれぞれ松王丸を演じた公演のblog記事あり。このたびは尾上菊之助が初役で松王丸を勤めた。公演を前に朝日新聞の「続かぶき特等席」のインタヴューで興味深かったのは、松王丸と妻の千代夫婦、菅秀才の身代わりになる息子の小太郎の家族の有りよう、そして子を持たない武部源蔵と戸浪夫婦について語っていたことだ。いくら主君への忠義とは言え、わが子の命を差し出すことを決意したこと、それをたった九つの子が納得し、「にっこりと笑って潔く首を差し出した」とはたやすく受容できることではない。源蔵夫婦...三月大歌舞伎昼の部「寺子屋」「傾城道成寺」「御浜御殿綱豊卿」

  • 劇団パラドックス定数 第49項『諜報員』

    *野木萌葱作・演出公式サイトはこちら東京芸術劇場シアターイースト(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31)17日終了ドイツ人の父とロシア人の母のあいだに生まれ、ドイツのジャーナリストとして日本へ入国したリヒャルト・ゾルゲの正体はソビエト連邦の諜報員で、その任務は日本の国内施策、外交政策を探ることであった。いわゆる「ゾルゲ事件」(Wikipedia)を題材に、ゾルゲとの関わりを疑われた4人の男たちと、彼等を取り調べる2人の警官の攻防が描かれる。実際の事件と劇作家の妄想が絡み合い、虚実ない交ぜの劇世界が繰り広げられる。題材からして野木萌葱、パラドックス定数の魅力満載と前のめりになるほ...劇団パラドックス定数第49項『諜報員』

  • 共同制作『カタブイ、1995』

    *内藤裕子(演劇集団円)作・演出公式サイトはこちら下北沢/小劇場B118日終了(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)サブタイトルは「~復帰50年企画・共同制作「カタブイ、1972」につづく第2作目~」である。沖縄の本土復帰をテーマに内藤が三部作を書下ろし、沖縄と東京の俳優陣で上演する企画の第2弾は、米兵3人による少女暴行事件が起こった1995年の沖縄が舞台となる。3月1日~6日まで沖縄のひめゆりピースホールで上演ののち、東京・下北沢でお披露目となった。舞台は『カタブイ、1972』と同じ、反戦地主の波平誠治の居間である。あの時とほとんど変わらないように見えるが、正面...共同制作『カタブイ、1995』

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