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因幡屋ぶろぐ https://blog.goo.ne.jp/inabaya2005kiyoko05

因幡屋の劇評ブログです。 舞台は人生の宝。その印象をより的確により豊かに記せますように。

大部分は劇評ですが、ツイッターでは映画やテレビドラマのこともつぶやいております。 https://twitter.com/inabaya_kiyoko 2年前からはじめた俳句も一生懸命!

因幡屋
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中原区
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柳井市
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2014/11/08

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  • 2024年4月観劇と俳句の予定

    いつにも増して切ない年度末と慌ただしい年度始めになりそうですが、観劇予定はまだ少なめです。*四月大歌舞伎公式サイトはこちら夜の部片岡仁左衛門と坂東玉三郎の「於染久松色読販」と「神田祭」*劇団夜行列舎第9回公演『ゴーレムの記憶ジャガーの眼編』藤澤邦見と夜行列舎作・演出永野直樹原作公式サイトはこちら*動物自殺倶楽部第3回公演『夜会行』(1,2)高木登(演劇ユニット鵺的/動物自殺倶楽部)作小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)演出公式サイトはこちら鵺的、高木登関連→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24,25,26)2021年夏の鵺的の初演(寺十吾演出)はずっと心に残っている(blog、通信)。演出、俳優、劇場...2024年4月観劇と俳句の予定

  • 劇団唐ゼミ☆第31回公演『鐡假面』

    *唐十郎作中野敦之演出公式サイトはこちら(1,2,3)横浜・大通り公園横浜市技能文化会館前特設劇場24日終了文化庁の海外研修生として1年間過ごしたロンドンから帰国した中野敦之が「この芝居にありったけを叩き込みます」(公演チラシ)とのこと。およそ2年半ぶりの青テントへ喜び勇んで足を運んだ。劇団唐組や唐ゼミ☆の唐十郎作品の公演は、今や欠かせない必修科目であり、自分の演劇人生の大切な宝である。始めはこわごわ、やがて興味津々、テントに足を踏み入れるときの独特の緊張感や間近に見る俳優陣の熱量、皮膜1枚で隔てられた外界の音や空気、それらはやがて終幕の屋台崩しのカタルシスで頂点に達する。屋台崩しは作品によって、その色合いや迫力が異なる。あるときは外界へ勢いよく飛び出し、またあるときは溶け込むように消え去り、向こう側へ行...劇団唐ゼミ☆第31回公演『鐡假面』

  • 『遠き日の落球』

    *川手ふきの脚本桒原秀一(JAPLIN)脚色・演出公式サイトはこちらシアター・アルファ東京24日終了憧れの甲子園出場を目前にしながら、自分が落球したためにチームはサヨナラ負け。野球からも仲間からも遠ざかってしまった主人公が10年後、草野球チームに誘われ、再び野球に打ち込み始める。野球に魅入られた若者たちとその家族、友人、町の人々の交わりを描いた物語は、一部ダブルキャストの総勢29名のにぎやかな座組で、休憩無しの2時間を一気に駆け抜ける。舞台でスポーツを描くことは簡単ではないが、決して大掛かりな舞台美術ではなく、白い箱やドラム缶、ネットなどを無理なく動かし、照明技術を駆使して試合の臨場感だけでなく、居酒屋や主人公の家、友人の職場など、さまざまな場所への転換、時間の経過、幻想との交錯も表現している。終始ボール...『遠き日の落球』

  • 三月大歌舞伎 昼の部「寺子屋」「傾城道成寺」「御浜御殿綱豊卿」

    *公式サイトはこちら東銀座・歌舞伎座26日終了1,「菅原伝授手習鑑」より「寺子屋」・・・本作については、2020年5月放送のNHKEテレ「にっぽんの芸能」の中村吉右衛門、2015年の市川染五郎(現・松本幸四郎)、2016年の中村勘九郎がそれぞれ松王丸を演じた公演のblog記事あり。このたびは尾上菊之助が初役で松王丸を勤めた。公演を前に朝日新聞の「続かぶき特等席」のインタヴューで興味深かったのは、松王丸と妻の千代夫婦、菅秀才の身代わりになる息子の小太郎の家族の有りよう、そして子を持たない武部源蔵と戸浪夫婦について語っていたことだ。いくら主君への忠義とは言え、わが子の命を差し出すことを決意したこと、それをたった九つの子が納得し、「にっこりと笑って潔く首を差し出した」とはたやすく受容できることではない。源蔵夫婦...三月大歌舞伎昼の部「寺子屋」「傾城道成寺」「御浜御殿綱豊卿」

  • 劇団パラドックス定数 第49項『諜報員』

    *野木萌葱作・演出公式サイトはこちら東京芸術劇場シアターイースト(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31)17日終了ドイツ人の父とロシア人の母のあいだに生まれ、ドイツのジャーナリストとして日本へ入国したリヒャルト・ゾルゲの正体はソビエト連邦の諜報員で、その任務は日本の国内施策、外交政策を探ることであった。いわゆる「ゾルゲ事件」(Wikipedia)を題材に、ゾルゲとの関わりを疑われた4人の男たちと、彼等を取り調べる2人の警官の攻防が描かれる。実際の事件と劇作家の妄想が絡み合い、虚実ない交ぜの劇世界が繰り広げられる。題材からして野木萌葱、パラドックス定数の魅力満載と前のめりになるほ...劇団パラドックス定数第49項『諜報員』

  • 共同制作『カタブイ、1995』

    *内藤裕子(演劇集団円)作・演出公式サイトはこちら下北沢/小劇場B118日終了(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)サブタイトルは「~復帰50年企画・共同制作「カタブイ、1972」につづく第2作目~」である。沖縄の本土復帰をテーマに内藤が三部作を書下ろし、沖縄と東京の俳優陣で上演する企画の第2弾は、米兵3人による少女暴行事件が起こった1995年の沖縄が舞台となる。3月1日~6日まで沖縄のひめゆりピースホールで上演ののち、東京・下北沢でお披露目となった。舞台は『カタブイ、1972』と同じ、反戦地主の波平誠治の居間である。あの時とほとんど変わらないように見えるが、正面...共同制作『カタブイ、1995』

  • 文学座3月アトリエの会『アンドーラ 十二場からなる戯曲』

    *マックス・フリッシュ作長田紫乃訳西本由香演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ26日まで戦後スイスを代表する作家マックス・フリッシュがドイツ語で書き、教科書にも掲載されている作品とのこと(公演チラシ)。市川明翻訳版(松本工房)を一読、文学座のアトリエにぴったりの作品だと期待が高まった。平和で敬虔なキリスト教国のアンドーラだが、となりの「黒い国」ではユダヤ人が虐殺され、戦争の足音がすぐそこまで来ている。アンドリは「黒い国」で教師に救われ、彼とその妻、娘バブリーンと家族同然のように暮らしている。教師はユダヤ人の子を救い出した立派な人物だと称賛されている。アンドリは、家具職人になってバブリーンとの結婚を望む。実の兄妹ではないから問題ないはずだが、父である教師はふたりの結婚を許そうとしない。自分がユダヤ人...文学座3月アトリエの会『アンドーラ十二場からなる戯曲』

  • 劇団フライングステージ第49回公演『こころ、心、ココロ 日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語』

    舞台と客席がともに歩む*座・高円寺春の劇場29日本劇作家協会プログラム関根信一作・演出公式サイトはこちら座・高円寺10日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25)サブタイトルの通り、日本のゲイとその家族や友人の物語を100年と少しの年月に渡り、オムニバス形式で描いた舞台である。劇団は1992年の旗揚げから32年、自分が同劇団の公演に初めて足を運んだのは2005年だ。A、Bプログラムが交互上演され、劇団の活動の集大成であると同時に再編成であり、新たなる劇世界の始まりを予感させる好企画となった。A第一部名も無き時代(1914年~1970年)・・・夏目漱石の『こころ』がぜんたいを貫く大きなモチーフになっている。1,漱...劇団フライングステージ第49回公演『こころ、心、ココロ日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語』

  • ライブ版 2024年春 ひな祭り公演『西瓜とゲートル』第2弾

    *桑原茂夫原作(『西瓜とゲートルオノレを失った男とオノレをつらぬいた女』から)・脚本天願大介演出月船さらら、外波山文明出演山崎ハコ特別出演四家卯大音楽SPACE雑遊ギャラリーB13月2日~3日母の遺品のなかから出てきた小さな手帳に記されていたのは、夫が出征したあとの子どもたちと八百屋の店を守り抜いた戦中戦後の日々の記録だった。それを丹念に読み込み、当時の世相や用語、出来事の背景などについて注釈を加えた原作は、市井の人々の暮らしや心の様相を活写する素晴らしいドキュメンタリーであり、新たなる戦前とささやかれる流れに断固抵抗する作者の気概あふれる一冊である。2021年秋の第1弾を見逃してしまったので、今回は是非にと足を運んだ。第一部は母(月船さらら)が、自分の手記を読むかたちで進行する。意外や白ブラウスともんぺ...ライブ版2024年春ひな祭り公演『西瓜とゲートル』第2弾

  • 2024年3月の観劇と俳句の予定

    あれよあれよという間に観劇の予定がどんどん増えております。*ライブ版2024年春ひな祭り公演『西瓜とゲートル』第2弾桑原茂夫原作(『西瓜とゲートルオノレを失った男とオノレをつらぬいた女』から)・脚本天願大介演出月船さらら、外波山文明出演山崎ハコ特別出演四家卯大音楽SPACE雑遊ギャラリーB13月2日~3日母の遺品のなかから出てきた小さな手帳に記されていたのは、夫が出征したあとの子どもたちと八百屋の店を守り抜いた戦中戦後の日々の記録だった。それを丹念に読み込み、当時の世相や用語、出来事の背景などについて注釈を加えた原作は、市井の人々の暮らしや心の様相を活写する素晴らしいドキュメンタリーであり、新たなる戦前とささやかれる流れに断固抵抗する作者の気概あふれる一冊である。2021年秋の第1弾を見逃してしまったので...2024年3月の観劇と俳句の予定

  • くちびるの会 第8弾『猛獣のくちづけ』

    *山本タカ作・演出須貝英執筆サポート公式サイトはこちら第34回下北沢演劇祭参加作品下北沢OFFOFF劇場27日終了山本タカ作品のblog記事(2013年まで→1,2,3,4,5,6,7,8,9)(2014年以降→1,2,3,4,5,6,7,8,9)公演チラシや当日リーフレットにある通り、本作は2018年の仙台の演劇フェスティバルで初演され、東京でも上演した約40分の短編である(東京初演は「くちびるの展会」における短編3本立ての最後の作品)。2020年再演の予定がコロナ禍で中止となり、4年後の2024年2月、1時間40分の長編作品としてお目見得となったという経緯がある。初演のblog記事を改めて読み返すと、2年半ぶりのくちびるの会観劇でもあり、山本タカが劇作家として大きく変容しようとしていること、まさかの「...くちびるの会第8弾『猛獣のくちづけ』

  • 猿若祭二月大歌舞伎

    *公式サイトはこちら歌舞伎座26日まで十八代目中村勘三郎の十三回忌の記念興行。1階ロビーには遺影と花、香が焚かれ、画像を撮るより先に、まずは手を合わせた。中村屋一門を中心に所縁の演目がずらりと並び、初役に挑む役者をベテランが支え、素晴らしい公演となった。若手の活躍はもちろんだが、昼夜ともに中村歌六が滋味深く、「この方がいれば大丈夫」と思わせる。【昼の部】☆「新版歌祭文野崎村」・・・十八代目が「三番目の息子」と愛しみ育んだ中村鶴松がお光をつとめた。許婚久松(七之助)との祝言を前に浮き浮きと大根を膾に刻む鮮やかな手つき、久松が奉公先で恋仲となったお染(中村児太郎)へ嫉妬する場面も可愛らしい。それだけに恋を諦めて尼となった姿は壮絶ですらあり、久松とお染を気丈に見送りながらも、ぱたりと数珠を落し、「ととさん」と久...猿若祭二月大歌舞伎

  • 劇団文化座 166『花と龍』

    *火野葦平原作東憲司(劇団桟敷童子)脚本鵜山仁(文学座)演出2024年都民芸術フェスティバル参加公演公式サイトはこちら六本木/俳優座劇場3月3日まで明治の終わりから昭和まで、北九州若松港を舞台に港湾労働の近代化の時代を力いっぱい生き抜いた玉井金五郎と妻マン、その家族はじめ周辺の人々を描いた大河小説が『花と龍』である。作家火野葦平が両親と長男である自身を実名で登場させた。原作のあとがき(昭和28年5月)に、最後の行を書き終えたとき不覚にも落涙したとある。あとがきの結びにも「―駄目だ。また涙が出て来た」とあり、作家の一念が熱く伝わってくる(玉井金五郎の甥は、アフガニスタンの村々に井戸を掘り、多くの人に慕われた医師・中村哲氏である)。『花と龍』と言えばさまざまな俳優、監督の手で映像化され、村田英雄による歌も有名...劇団文化座166『花と龍』

  • 劇団民藝公演『やさしい猫』

    開幕を寿ぐ*中島京子原作『やさしい猫』(中央公論新社刊)小池倫代脚本丹野郁弓演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA11日終了関係者に体調不良があり、3日の初日が8日に延長された。無事に開幕後は満席の盛況。劇場は舞台を待ちかねる観客の熱気に満ちていた。中島京子の『やさしい猫』は、シングルマザーの保育士ミユキとスリランカ人青年クマラの出会いから結婚を外国人の在留資格認定問題を軸に、ミユキの娘マヤの視点から語られた長編小説だ。読売新聞夕刊に連載ののち2021年刊行、多くの賞を受賞し、NHKでテレビドラマ化もされている(未見)。先が気になってどんどんページをめくりながら、読み進むのが怖くなるほど物語に引き込まれた。素晴らしい小説だ。しかしドラマに対して否定的な意見が少なくない。不法滞在...劇団民藝公演『やさしい猫』

  • 朱語りコンサート第一弾

    満佐子の爪先の気持ち*公式サイトはこちら2月4日(日)1回のみかふぇ&ほーるwith遊朱の会これまでのblog記事→(1,2,2',3,4,5,5',6,7,8,9)神由紀子主宰の朱の会による新企画である。出演は声優・ナレーターの横田砂選(よこたさえり)、講談と落語の二刀流で活動する釈亭あさ鯉、「言の葉だこっと」朗読会にキーボード伴奏者としてだけでなく、俳優としても出演してきた小山美幸で、いずれも朱の会初参加である。講談と外国の短編、そして三島由紀夫の短編というメリハリのある構成の朗読会に、客席数25のかふぇ&ほーるwith遊の空間がよく合っており、休憩を挟んで2時間弱の佳きひと時となった。☆第一部釈亭あさ鯉/赤穂義士伝『赤垣源蔵徳利の別れ』・・・「赤穂義士伝」のなかでは最もよく語られる読み物のひとつであ...朱語りコンサート第一弾

  • 2024年2月の観劇と俳句の予定

    いつになく重苦しい幕開けとなった新しい年、慌ただしく1月は行きました。能登半島地震被災地の復旧と復興、被災された方々を心に覚えてひたすら祈ります。日本大歳時記の「春浅し」の項に石田波郷の「春浅し相見て癒えし同病者」が紹介されており、解説文には「冬を抜け出た生命の、まだひりひりといたみやすい敏感な若々しさをこの語は暗示する」とありました。何度も読み返しています。2024年2月観劇と俳句の予定は以下の通りです。*劇団民藝公演『やさしい猫』中島京子原作『やさしい猫』(中央公論新社刊)小池倫代脚本丹野郁弓演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA中島京子の『やさしい猫』は、シングルマザーの保育士ミユキとスリランカ人青年クマラの出会いから結婚を外国人の在留資格認定問題を軸に、ミユキの娘マヤの...2024年2月の観劇と俳句の予定

  • 『みえないくに』/日本劇団協議会主催「日本の演劇人を育てるプロジェクト」文化庁 海外研修の成果公演

    みえないくにの言葉を手渡す*鈴木アツト作・演出公式サイトはこちら東京芸術劇場シアターイースト21日終了鈴木アツト作品のblog記事→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31)公益社団法人日本劇団協議会主催「日本の演劇人を育てるプロジェクト」文化庁海外研修の成果公演…という長い前書きだが、今回の公演は文字通り、鈴木アツトが海外で学んできた成果を披露するものだ。劇団の公演とは異なるプレッシャーや困難もあったろうが、期待に応える気持ちの良い舞台であった。鈴木は「国家と芸術家シリーズ」など、外国の実在の人物を題材にした作品を続けて発表してきたが、今回は国土の多くが砂漠であり、人口60万の...『みえないくに』/日本劇団協議会主催「日本の演劇人を育てるプロジェクト」文化庁海外研修の成果公演

  • ティーファクトリー『ヘルマン』

    *川村毅構成・演出公式サイトはこちら吉祥寺シアター28日までヘルマン・ヘッセを題材に、「複数の小説からのイメージ、さらに俳優の身体性、映像を使用しての、ポスト・ドラマとしてヘッセを蘇らせようと思う」(公演チラシより)とのこと。『荒野のリア』(未見)以来10年ぶりのティーファクトリー出演の麿赤児を主演に迎え、共演は元宝塚トップスターであり、退団後は『唐版滝の白糸』(唐十郎作蜷川幸雄演出)はじめ舞台を中心に活躍中の大空ゆうひ、青年座映画放送部所属で、さまざまなドラマや舞台への出演が続く横井翔二郎ほか、ほぼ全員がティーファクトリー初参加の座組であるとのこと(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15)。舞台には大きな座椅子と白い台のようなものがふたつ置かれているのみ。ガランとして無機...ティーファクトリー『ヘルマン』

  • 新春浅草歌舞伎2024

    *公式サイトはこちら浅草公会堂26日まで若手俳優の登竜門である新春浅草歌舞伎だが、今回出演する9人中、一番年長の尾上松也を筆頭に7人が「卒業」するとのこと。若手が次々に飛び込み、初役、難役に挑戦するこの公演は、実は歌舞伎座や国立劇場よりも楽しみに喜び勇んで出かけてゆくのだが、旅立ちを見送る淋しさを覚えたのは今年が初めてだ。実際はもっと観ているはずだがblog記事は少ない(2006年、2011年、2013年、2015年)。嬉しかったのは恒例の「お年玉〈年始ご挨拶〉」が4年ぶりに復活したことだ。これは開演前に出演俳優が日替わりで素顔と紋付き袴で登場し、観客に挨拶することだ。始めこそ折り目正しい「口上」の調子で始まるが、そこからのマイクの使い分け、先輩方の苦労や苦心、これから始まる演目の見どころなども解説して客...新春浅草歌舞伎2024

  • 新春アニバーサリー公演~文学を奏でる~

    「鼓くらべ」~受け手として第二章へ~*ヴォイスケ主催飯島晶子構成紀尾井小ホール公式サイトはこちら1月8日1回のみ飯島晶子、小磯一斉朗読谷川謙作ピアノ堅田喜三代小鼓2024年初観劇は、主催も会場も初めてのところとなった。「幸せは声に宿る」をテーマに幅広いジャンルの文学作品の朗読を手掛けるヴォイスケ主催の飯島晶子、俳優、声優、朗読指導者として活動する小磯一斉の朗読に谷川賢作のピアノ、堅田喜三代の小鼓が加わった、「文学を奏でる」ステージである。冒頭は飯島が客席へ新年と来場御礼の挨拶。続いて谷川賢作の父である谷川俊太郎の詩「あかんぼがいる」を朗読した。初孫(賢作氏の娘)が生まれて、いつもと違う新年の心持が綴られた詩である。賢作も「こんにちは赤ちゃん」を控えめなタッチで爪弾いて音を添える。素晴らしい詩であり、本主催...新春アニバーサリー公演~文学を奏でる~

  • 2024年1月の観劇と俳句の予定

    明けましておめでとうございます。元旦に能登半島地震、翌2日は航空機事故と大波乱の年明けとなりました。地震の報道には言葉を失い、自分が安全な場所で温かく満たされて過ごしていることに心が塞ぎます。被災された方々が少しでも早く日常を取り戻せることを祈るばかりです。どうかどうか温かく心穏やかに…。観劇の予定は以下の通りです。昨年因幡屋通信74号で「劇団新派の波乃久里子推し」を決意しながら、日程がほぼ昼公演の三越劇場『東京物語』には足を運べそうになく、配信(あれば)視聴になりそうです。*新春アニバーサリー公演~文学を奏でる~ヴォイスケ主催1月8日1回のみ紀尾井小ホール公式サイトはこちら石崎洋司「西行鼓が滝」、山本周五郎「鼓くらべ」後者は朱の会vol.3公演の群読を聴いて以来となる。*新春浅草歌舞伎2024歌舞伎座や...2024年1月の観劇と俳句の予定

  • 2023年因幡屋演劇賞

    年末恒例の因幡屋演劇賞を発表いたします。賞金や表彰式はありませんが、しがらみの忖度も無し。それだけが自慢で誇り。感謝と喜びを込めて以下の舞台に。リンクは観劇直後のblog記事です。・秋田雨雀・土方与志記念青年劇場第129回公演紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA瀬戸山美咲作大谷賢治郎演出『行きたい場所をどうぞ』・演劇集団円∔シアターχ提携公演ウィリアム・シェイクスピア作安西徹雄翻訳中屋敷法仁(柿喰う客)演出『ペリクリーズ』&円・こどもステージ№41國吉咲貴(くによし組)作後藤彩乃演出『ぼくは人魚』いずれも両国/シアターχ・演劇ユニット新派の子特別企画「さろん・ど・まろん」抜粋再編集朗読劇より北條秀司作齋藤雅文構成・演出『太夫さん』代々木上原/ムジカーサ&河竹登志夫「作者の家」より齋藤雅文脚本・演出...2023年因幡屋演劇賞

  • ネコティアーデコンサート 第1回

    *金子左千夫、中馬美和、大坪夕美出演ティアラこうとう12月26日のみこの不思議な響きのコンサート名は、フランツ・シューベルトの友人たちが集まって、彼の歌やピアノ曲を奏でながら踊ったり食べたり飲んだり等々に興じていた「シュベルティアーデ」に由来するとのこと。公演チラシに「金子左千夫が知り合いの音楽家・友人知人をたぶらかし、好きなことを好き放題にやりましょう、というコンサートなのである」とある通り、演奏者はネコこと金子はじめ、これまでに「林光・歌の本Ⅰ~Ⅳ全曲を歌う」の演奏を果たした盟友たち、ソプラノの中馬美和、ピアニストの大坪夕美という最強の3名だ(1,2,3,4)。プログラム前半は、林光が作曲した全国さまざまな小中高校の「校歌」から選りすぐりの9曲が歌われた。以前も聴いた東京都足立区竹ノ塚北小学校の「きょ...ネコティアーデコンサート第1回

  • 演劇ユニット鵺的第十七回公演『天使の群像』

    *高木登作小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)演出公式サイトはこちら下北沢/ザ・スズナリ29日まで(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24,25)学校というコミュニティー、そして教師という職業は、どんどんますます難しく厄介なものになっていると思う。鵺的がそれをどう描くのか。上演時間は休憩無しの150分という長尺との情報に慄きつつも楽しみに。ずっと学校嫌いだった道原(堤千穂)は、働いていた小さな商社が倒産し、仕方なく都立高校の「臨時的代用教員」に。生徒同士の恋のトラブルから、告白した男子生徒の村田が不登校になり、問題を解決できなかった担任教師が休職中というクラスを受け持つことになった道原は、周囲の教師たち、...演劇ユニット鵺的第十七回公演『天使の群像』

  • 劇団民藝『巨匠―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』

    *木下順二作丹野郁弓演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA17日までシェイクスピアの『マクベス』初日を迎える劇場の楽屋で、主演の俳優(神敏将)と演出家(齊藤尊史)は、ある場面の演技を巡って議論になる。俳優は20年前、戦争中の体験したある出来事を語り始めた。1944年、ワルシャワ蜂起に対するナチス・ドイツの弾圧から女教師(細川ひさよ)、前町長(小杉勇二)、ピアニスト(花城大恵)、医師(天津民生)、老人(西川明)らが郊外の小学校に身を隠している。逃げ込んできた若い俳優(神敏将)に、老人は自分が舞台の俳優であること、これまで多くの作品に出演してきたことを熱く語る。そこへゲシュタポ(橋本潤)が兵士たちと通訳(山本哲也)を連れて現れた。レジスタンスによる鉄道爆破の報復として、4人の知識人...劇団民藝『巨匠―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』

  • 2023年12月の観劇と俳句の予定

    このあいだまであんなに暑かったのに、季節はちゃんと冬になりました。12月の観劇予定は少なめです。1本1本を大切に。*劇団民藝木下順二作丹野郁弓演出『巨匠―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』公式サイトはこちら本作は1997年に大滝秀治主演版を観劇して以来となる。*十二月大歌舞伎より第三部公式サイトはこちら坂東玉三郎演出の「天守物語」。俳句の予定は以下の通り。*かさゝぎ俳句勉強会・・・枕詞「」、季語「年の夜」*十六夜句会・・・「クリスマス」全般、「鍋」全般*金星句会・・・「熱燗」「梟」(ふくろう)2023年12月の観劇と俳句の予定

  • 演劇集団円『グレンギャリー・グレンロス』

    *デイヴィッド・マメット作芦沢みどり翻訳内藤裕子演出公式サイトはこちら俳優座劇場11月26日終了(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)昨年『ソハ、福ノ倚ルトコロ』、『カタブイ1972』(いずれも作・演出)で高い評価を得た内藤裕子が挑んだのは、デイヴィッド・マメットがピューリッツア賞文学賞を受賞した、アメリカはシカゴの不動産業界でのし上がりたいともがき苦しむ男たちの丁々発止の物語である。幕開け、かつてトップセールスマンだったシェリー・レヴィーン(金田明夫)が、営業責任者のウィリアムソン(清田智彦)と飲食店で向き合っている。営業成績が落ちて崖っぷちのレヴィーンは解雇を恐れ、...演劇集団円『グレンギャリー・グレンロス』

  • 新国立劇場 シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『終わりよければすべてよし』&『尺には尺を』

    *小田島雄志翻訳鵜山仁演出公式サイトはこちら新国立劇場中劇場19日終了2009年の歴史劇上演に始まった新国立劇場シェイクスピアシリーズだが、観劇したのは2012年の『リチャード三世』のみ。敷居が高かったのか、自分にはあまり馴染みのないシリーズであったが、今回のダークコメディ2本立てからは演出と主演陣の経験値と熱意が伝わり、これまで足を運ばなかったことを少々後悔している。俳優は必要以上に声を張り上げることなく、観る(聴く)側も疲れず、落ち着いた心持であった。『終わりよければすべてよし』→『尺には尺を』の順に観劇し、これまでに体験したことのない不思議な感覚を持った。悲劇ではないが、大騒動が何とか収まり、晴れやかな婚儀の大団円でもないのである。「問題劇」と言われている通り、「いや、ちょっと待ってくれ」と疑問が湧...新国立劇場シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『終わりよければすべてよし』&『尺には尺を』

  • 因幡屋通信74号完成&ぶろぐ公開

    遅れに遅れましたが、因幡屋通信74号が完成し、各設置先へ発送いたしました。今回より、福岡県福岡市博多区の「冷泉荘」さまにも設置が叶いまして、ご理解ご協力に心より感謝申し上げます。以下全文をアップいたします。リンクは観劇後のblog記事です。ご参考までに。***************************大変な「推し」に出会いました劇団新派の波乃久里子です新しい演劇歴始まりの予感をどうぞ久里子的リアリズム演劇ユニット新派の子特別企画~さろん・ど・まろん~北條秀司作齋藤雅文構成・演出『太夫さん』代々木上原/ムジカーサ「新派の子」は、劇団新派文芸部所属の劇作家・演出家の齋藤雅文が代表を務める演劇ユニットである。2020年10月に結成された。劇団の伝統を重んじつつ、コロナ禍における新たな活動を展開している。今...因幡屋通信74号完成&ぶろぐ公開

  • 明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP) 第20回公演『ハムレット』

    *原作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:コラプターズ(学生翻訳チーム)プロデューサー:宮嵜明理(文学部2年)演出:髙橋奏(文学部3年)監修:西沢栄治(JAMSESSION)公式サイトはこちら明治大学駿河台キャンパス/アカデミーコモン3階アカデミーホール(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)6日終了公演会場のアカデミーコモン地下1階の博物館では、特別展示「MSP20年の軌跡」が12月16日まで開催中。いろいろな座組で観ているはずだが、意外や本ぶろぐに記事がある『ハムレット』そのものは、藤原竜也主演版(2015年2月/蜷川幸雄演出)と、KUNIO11『ハムレット』(2014年/杉原邦生演出)の2本であった。『ハムレット』をモチーフとした作品の観劇はいくつもあり、9月上演のMSPラボ公演『新ハムレット』(...明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)第20回公演『ハムレット』

  • 2023年11月の観劇と俳句の予定

    もうじき立冬というのに、町ゆく人のなかには半袖もノースリーブもちらほらというおかしな11月です。まだ10月の課題が残っていますが、観劇の予定は以下の通りです。*明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)第20回公演『ハムレット』(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)原作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:コラプターズ(学生翻訳チーム)プロデューサー:宮嵜明理(文学部2年)演出:髙橋奏(文学部3年)監修:西沢栄治(JAMSESSION)公式サイトはこちら公演会場のアカデミーコモン地下1階の博物館では、特別展示「MSP20年の軌跡」が同時開催中。*新国立劇場シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『終わりよければすべてよし』&『尺には尺を』小田島雄志翻訳鵜山仁演出公式サイトはこちら迷ったが通し券を申し込ん...2023年11月の観劇と俳句の予定

  • 劇団唐組 第72回公演『糸女郎』

    *唐十郎作久保井研+唐十郎演出公式サイトはこちら10月21日まで猿楽通り沿い特設紅テント10月27日~11月5日まで雑司ヶ谷・鬼子母神(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15)代理出産を扱った舞台として即座に思い浮かんだのが鈴木アツト作・演出の『グローバル・ベイビー・ファクトリー』である(2012年12月/第18回劇作家協会新人戯曲賞審査前のプレヴュー・リーディング、2014年3月/劇団印象第19回公演『グローバル・ベイビー・ファクトリー』、2015年8月/劇団印象第21回公演『グローバル・ベイビー・ファクトリー2』)。2015年の公演の際は、劇団チョコレートケーキの日澤雄介演出によるリーディング公演があり、それが劇団唐組の大鶴美仁音を観た最初の舞台であった(残念ながらbl...劇団唐組第72回公演『糸女郎』

  • 新宿梁山泊 第76回公演 『少女都市からの呼び声』≪若衆公演≫

    *唐十郎作金守珍演出公式サイトはこちら下北沢/ザ・スズナリ19日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9)同作品観劇の過去記録→新宿梁山第62回公演(2018年3月)、2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業(2019年12月)、唐組第66回公演(2021年1月)∔因幡屋通信68号、新宿梁山泊第74回公演テント版(2023年6月)10月12日から15日まで第75回公演『失われた歴史を探して』(金義卿作金守珍演出)を、そして同じザ・スズナリで17日から19日まで第76回公演として『少女都市からの呼び声』が連続上演された。しかも後者は18日に3回、19日に2回公演を行うという大変なスケジュールである。そこは文字通り若衆公演の強みであろうか。田口役の柴野航輝、雪子役の矢内有紗、有沢役の二條正士、ビン子...新宿梁山泊第76回公演『少女都市からの呼び声』≪若衆公演≫

  • 演劇ユニット新派の子 錦秋公演『新編 糸桜』

    *河竹黙阿弥没後百三十年河竹登志夫「作者の家」より齋藤雅文脚本・演出公式サイトはこちら日本橋公会堂(日本橋劇場)10月12日、13日自分の新派観劇歴はこちら→1,2,3,4,5,6,7,8,9春に観劇した特別企画さろん・ど・まろんの『太夫さん』が素晴らしく、今回も迷わず予約した。地下鉄水天宮前駅から徒歩3分の日本橋公会堂の4階、5階が「日本橋劇場」だ。2階席には手すりや前方の席と区切られた台のようなものがあって、舞台前方の見切れが心配だったが、そこにも配慮した舞台の作りで、ほぼ全景を観ることができた。もはや記憶が曖昧なのだが、同じ原作を基にした舞台『糸女』(1998年2月みなと座第14回公演西舘好子プロデュース久保田千太郎脚本西川信廣演出東京芸術劇場・中ホール)を観劇している。三田和代が主演を勤めた。初演...演劇ユニット新派の子錦秋公演『新編糸桜』

  • studio salt第23回公演 式 三部作 第一話『挙式-山下順平 編-』

    *椎名泉水作・演出公式サイトはこちらラゾーナ川崎プラザソル9日終了(1,2,3,4,5,6,6`,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24)今回の会場であるラゾーナ川崎プラザソルを結婚披露宴会場に見立てた公演だ。場内には丸い宴席テーブルが設置され、観客は披露宴の招待客として席に着く。ステージには雛壇があり、根本修幣(堂本修平)がキーボードの生演奏で出迎えてくれる。飲食はさすがにできず、飲み物はペットボトルの水、コース料理のメニューの写真が配られる。コロナ禍にも配慮しながら、なかなか手の込んだ作りだ。劇団公式サイトには、公演前から「山下順平の死ぬまで日記」の連載が始まっており、本作の主人公山下順平(浅生礼史)が共に暮らす大切な存在があること、余命告...studiosalt第23回公演式三部作第一話『挙式-山下順平編-』

  • 2023年10月の観劇と俳句の予定

    ほんとうに秋になったのでしょうか、からだも心も半信半疑です。観劇の予定は以下の通り。*studiosalt椎名泉水作・演出式三部作『挙式-山下順平編』公式サイトはこちら(1,2,3,4,5,6,6`,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24)今年、劇団結成20周年を迎える記念公演。ソルトの歩みは、自分が小劇場公演の観劇、通信やブログを続けてきた年月に重なる。今回は結婚披露宴形式のテーブルを囲む座席になるとのこと。少しお洒落していきましょう。*演劇ユニット新派の子錦秋公演河竹黙阿弥没後130年河竹登志夫「作者の家」より齋藤雅文脚本・演出新編『糸桜』公式サイトはこちら春に観劇した特別企画さろん・ど・まろんの『太夫さん』の手応えが忘れられず、迷わず予約...2023年10月の観劇と俳句の予定

  • 劇団文化座公演165 シアターχ提携公演『好日』

    *三好十郎作西川信廣(文学座)演出公式サイトはこちら両国・シアターχ10月1日終了合同公演を含めた文化座の三好十郎作品観劇の記事→『稲葉小僧』、『廃墟』、『その人を知らず』、『夢たち』、『炎の人』劇団民藝公演『ローズのジレンマ』は、喜劇作家ニール・サイモンが最晩年に、穏やかで温かな大人のラブコメディとして、自らの劇作家人生の集大成を示したのに対し、劇団文化座の『好日』は、劇作家三好十郎が劇作にも人生にも悪戦苦闘するさまを包み隠さず、しかも自分自身を主人公にし、役名もずばり「三好十郎」として舞台に登場させるという作品だ。公演チラシには、「生前未発表戯曲、本邦初公演!」の文字が躍る。執筆は1941年6月、物語の設定は前年の梅雨の頃である。日中戦争は泥沼化し、やがて太平洋戦争へ突入する。明るくなりそうもない。三...劇団文化座公演165シアターχ提携公演『好日』

  • 文学座9月アトリエの会『アナトミー・オブ・ア・スーサイド-死と生をめぐる重奏曲-』

    *アリス・バーチ作關智子訳生田みゆき(1,2,3,4,5,6,7,8)演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ9月29日終了。本作は2021年2月、国際演劇協会日本センター主催「ワールド・シアター・ラボ」において、『自殺の解剖学』としてリーディング公演が行われ(未見)、このたび同じ生田みゆきの演出によって本式の上演の運びとなった。しかし複数名の体調不良者発生のため初日が2度に渡って延期され、当初11日~23日の公演期間が、20日~29日と大幅な変更を余儀なくされた。それでも公演が実現したのは会場が劇団のアトリエであること、そして何より、関係者の想像を絶する労苦の賜物だ。改めて心から祝福を贈りたい。さて本作には「死と生を巡る重奏曲」というサブタイトルがあり、これは戯曲の構成、劇作家の意図や思想を簡潔に言...文学座9月アトリエの会『アナトミー・オブ・ア・スーサイド-死と生をめぐる重奏曲-』

  • 劇団民藝公演『ローズのジレンマ』

    *ニール・サイモン作長木彩訳田中麻衣子演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA10月1日まで劇団民藝が初めてサイモン戯曲に取り組んだ。2018年、91歳で亡くなったサイモンが、作家活動の最晩年と言ってよい2003年に発表した本作である。演出は『地熱』(三好十郎作2021年2月)、『パレードを待ちながら』(ジョン・マレル作吉原豊司訳2021年9月)に続いて3作めとなる田中麻衣子である。ピューリッツアー賞を受賞するほど実力も人気もある作家ローズ・スタイナー(樫山文枝)は、最愛の伴侶で、同じ作家のウォルシュ・マクラーレン(篠田三郎)が心臓発作で急逝して以来5年間、新作を書いていない。同じく作家で助手を務めるアーリーン(桜井明美)は破産の危機を訴えるが、ローズは聞く耳を持たない。毎日のよ...劇団民藝公演『ローズのジレンマ』

  • 東京芸術劇場2023 芸劇オータムコレクション 東京芸術劇場Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』

    *東京芸術劇場2023芸劇オータムコレクション東京芸術劇場Presents木ノ下裕一監修・補綴杉原邦生(KUNIO1,2,3,4,5)演出・美術公式サイトはこちら24日まで東京芸術劇場シアターイーストその後、那覇文化芸術劇場なはーと大劇場、長野県上田市/サントミューゼ、岡山芸術創造劇場ハレノワ小劇場、山口情報芸術センタースタジオA、水戸芸術館ACM劇場、京都芸術劇場春秋座を巡演先日参加した早稲田大学演劇博物館主催の「ドーナツプロジェクト」の木ノ下裕一の講座があまりにおもしろく、終了後の休憩時間に速攻予約、遅ればせながら「キノカブ」観劇デヴューとなった(※今回の公演ではスイング俳優である佐藤俊彦、大知出演の回もあり)。歌舞伎の『勧進帳』は、数ある作品のなかでも随一の人気演目である。自分にもこれまで観劇した大...東京芸術劇場2023芸劇オータムコレクション東京芸術劇場Presents木ノ下歌舞伎『勧進帳』

  • 朱の会小公演Vol.3―浅田次郎『夜の遊園地』―

    *神由紀子構成・演出余田崇徳音楽公式サイトはこちら(1,2,2',3,4,5,5',6,7,8)阿佐ヶ谷ワークショップ18日~19日2日間3回の公演はほぼ満席の盛況とのこと。2017年の旗揚げから回を重ねるごとに着実に歩んできたことの証左である。途中10分の休憩を挟んで2時間と少し、充実の初日を観劇した。【第1部】*小川未明作『野ばら』安藤俊昭この作品は、人形劇団ひとみ座の公演で観劇したはずなのだが(2016年2月)、『赤い蝋燭と人魚』の印象が強かったためだろうか、blogには記載していない。国境を定めた石碑を守る大きな国の老兵士と小さな国の青年兵士が心を通わせるが、両国のあいだに戦争がはじまる。抑制の手つきを感じさせないほど淡々とした文章で、別れの愁嘆場や青年の死を予感した老人の慟哭の場は無い。それだけ...朱の会小公演Vol.3―浅田次郎『夜の遊園地』―

  • 劇団東京夜光『fragment』

    *川名幸宏作・演出公式サイトはこちら(川名作・演出、演出のみも含め1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)18日終了吉祥寺シアター複数の公演関係者に体調不良が確認されて8日の初日が延期、12日に再開するも出演俳優のひとりが体調を崩し、主宰の川名が代役をつとめて千秋楽までを乗り切った。死にもの狂いの奮闘だったことだろう。客席から敬意を表したい。ローチケ演劇部掲載の川名のインターヴューには、吉祥寺シアターでの上演を前に吉祥寺について詳しく調べ、本作の構想を練った経緯が詳しく語られている。「住みたい街」として常に上位にランキングされる吉祥寺だが、太平洋戦争当時、軍需工場が多くあったため、B29による東京空襲の最初の標的となった。現在の賑わいからは想像もできない戦争の影を秘めた街だったのだ。学生時代の演劇仲間が...劇団東京夜光『fragment』

  • 第20回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)・ラボ公演『新ハムレット』

    *太宰治作養父明音演出宮嵜明理プロデューサー新井ひかる(文学部卒)テキスト井上優(明治大学文学部教授)テキスト/総監修公式サイトはこちら明治大学猿楽町第2校舎1Fアートスタジオ10日終了これまでのラボ公演については、2022年9月観劇の『短夜、夢ふたつ』のblog記事にリンクあり。本作は2017年夏、MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン公演で観劇し、良き手応えを得ている(blog記事)。11月の本公演『ハムレット』の前哨戦となる今回の公演は、悪天候の中金曜夜に開幕、盛況により増席の上に追加公演が決まり、土日は11時/14時/18時の3公演となった。スタジオの中央にパッチワークのような模様のカーペット(いわゆる絨毯ではなく、もっと硬いものであろう)が敷かれたところが演技スペースだ。それを囲むように客...第20回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)・ラボ公演『新ハムレット』

  • 2023年9月の観劇と俳句の予定

    いったいいつまで暑いのか…。一昨日見た映画『福田村事件』(森達也監督/公式サイトはこちら)に甚く打ちのめされ(いい意味です)、心も頭も迷走中の9月はじめです。観劇の予定は次の通り。*第20回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)・ラボ公演太宰治作養父明音演出『新ハムレット』公式サイトはこちらこれまでのラボ公演については、2022年9月観劇の『短夜、夢ふたつ』のblog記事にリンクあり。今年6月のPARCO劇場公演『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』が某新聞劇評で「企画自体が無謀だった」と酷評されていたのは記憶に新しい。本作は2017年夏、MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン公演で一度観劇しているが(blog記事)、さて今年はどのような舞台になるのだろうか。*劇団東京夜光川...2023年9月の観劇と俳句の予定

  • 玄海灘を上演する会主催 異文化を愉しむ会提携『玄海灘』

    *玄海灘を上演する会主催異文化を愉しむ会提携金達寿原作有吉朝子(劇団劇作家/有吉作品過去記事→1,2,3,4)脚色志賀澤子(東京演劇アンサンブル)演出調布市せんがわ劇場9月3日まで本作は2022年7月、第15回シアターχ国際舞台芸術祭2022において、有吉朝子脚色、萩原萌(劇団新人会)、松田崇、二宮聡構成・出演で上演されている(未見)。「玄海灘を上演する会『金達寿『玄界灘』より』というタイトルなどから、劇作家が脚色した戯曲を3名の俳優が共同で構成・演出し、上演したものであろうか。1年後の夏、志賀澤子を演出に迎え、さまざまな劇団やユニットの総勢15名の俳優陣による、まさに満を持しての本格上演だ(シアターχ出演の松田、萩原、二宮は今回も出演)。主催者のサイトの「企画趣旨」からは、原作への並々ならぬ熱意が伝わる...玄海灘を上演する会主催異文化を愉しむ会提携『玄海灘』

  • 演劇仲間ことのみ 第7回公演『輸血』

    *坂口安吾作桑原睦(東京演劇アンサンブル)演出公式サイトはこちらstudioZAP!21日まで坂口安吾作品の最初の観劇は、1980年代はじめに東京演劇アンサンブル公演の『櫻の森の満開の下』であった。美しくも恐ろしい幻想物語で、異次元空間に誘われた不思議な感覚がいまだに残っている。今回の『輸血』の演出が東京演劇アンサンブルの桑原睦であることに、ある種の「縁」を覚える。続いて2015年秋、板橋ビューネ2015でのフジタタイセイ上演台本・演出による劇団肋骨蜜柑同好会の『散る日本』であるが、将棋の対局とプロレスの試合が合体したかのような朗読劇で、あっけにとられつつ大いに楽しんだ。『輸血』は坂口安吾が唯一完成させた戯曲であり、およそ芝居らしからぬ題名だが、その辺りが別役実風でもある。戯曲が大変おもしろい。姉(照井麻...演劇仲間ことのみ第7回公演『輸血』

  • 劇団民藝公演 KEIKOBA『善人たち』

    *遠藤周作作小笠原響演出公式サイトはこちら川崎市黒川・劇団民藝稽古場13日終了2021年12月、長崎市遠藤周作文学館で未発表の直筆戯曲数本が見つかった。そのうち、遠藤文学の最も主要なテーマが凝縮された作品として研究者の注目を集めているのが『善人たち』であり、さらに劇団民藝に書き下ろされたものであったという(公演チラシより)、大変な作品である。長い年月眠っていた戯曲が発見され、遠藤周作生誕100年の年に初演されるのは偶然ではなく、何か大いなるものの取り計らい、導きが感じられる。アメリカ東部の町オールバレイを舞台に、牧師になるという志を抱く日本人青年と、彼を受け入れたロジャーズ一家、教会の人々の温かな交わりが、日米開戦よって崩壊していく物語。信仰と現実の人間、日本人とキリスト教について生涯問い続けた遠藤文学の...劇団民藝公演KEIKOBA『善人たち』

  • 2023年8月の観劇と俳句の予定

    連日災害級、命の危険に関わる暑さが続いております。頭も心も茹だりそうですが、おいしい水を飲んでひといき入れ、観劇と作句を続けます。観劇の予定は以下の通り、劇団民藝の『善人たち』は本日(8/2)プレヴュー公演でした。*劇団民藝公演KEIKOBA遠藤周作作小笠原響演出『善人たち』公式サイトはこちら川崎市黒川・劇団民藝稽古場2021年12月に長崎市遠藤周作文学館で見つかった未発表の直筆戯曲数本のうち、遠藤文学の最も主要なテーマが凝縮された作品として研究者の注目を集めている本作は、劇団民藝に書き下ろされたものとのこと(公演チラシより)。ぞくぞく、いやどきどきする。*演劇仲間ことのみ第7回公演坂口安吾作桑原陸(東京演劇アンサンブル)演出『輸血』公式サイトはこちらstudioZAP!昨年コロナ禍で中止を余儀なくされた...2023年8月の観劇と俳句の予定

  • 劇団印象-indian elephant- 20周年記念 第30回公演『犬と独裁者』

    *鈴木アツト作・演出公式サイトはこちら30日まで下北沢・駅前劇場(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30)ウクライナのキーウに生まれ、革命時代のソ連で活動した劇作家・小説家のミハイル・ブルガーコフ(1891-1940Wikipedia)が主人公である。『巨匠とマルガリータ』、『犬の心臓』などで知られるが、1927年ころから反革命、反体制の思想ゆえ作品が発表できずに不遇な日々を送った。今回の『犬と独裁者』は、1938年、ブルガーコフがモスクワ芸術座からスターリン(1878-1953Wikipedia)の評伝劇執筆の依頼を受けるところから始まり、心身を病んで亡くなるまでの2年間が描かれる。...劇団印象-indianelephant-20周年記念第30回公演『犬と独裁者』

  • ドラマティックリーディング『十三夜』&トークセッション

    *樋口一葉原作湯川せとな構成・演出公式Twitter2023年度港区男女平等参画センター助成事業オフィスプラズマ企画・製作港区立男女平等参画センター1Fリーブラホール7月15日、16日の2回公演これまでの『十三夜』と関連作品観劇の記録はこちら→文学座勉強会(2003年1月/当blog開設前@旧モリヤビル)、第15回みつわ会公演(2012年3月@六行会ホール)、文学座有志による朗読公演(2014年9月@一葉記念館)、「リーディング新派inエンパク」(2021年12月@早稲田大学大隈記念講堂小講堂)、MSPラボ公演『短夜、夢ふたつ』(2022年9月@アートスタジオ)『十三夜』を原文のまま読むことと、観世葉子の出演に観劇を即決した。観世はNHK朝の連続テレビ小説『おしん』(1983年4月~1984年3月放送)で...ドラマティックリーディング『十三夜』&トークセッション

  • 劇団俳優座特別公演 戦争とは…Vol.29『ボタン穴から見た戦争』

    *スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作三浦みどり翻訳菅田華絵構成・演出石塚まみ音楽(作曲・キーボード・歌)公式サイトはこちら俳優座スタジオ17日まで「20代から90代までの俳優たちが紡ぐ、未来への系譜」とチラシにある通り、居並ぶベテラン勢の顔ぶれが素晴らしい。1995年から続いているリーディングシリーズに足を運ぶことも、俳優座スタジオでの観劇もやっとこれが初めてである。俳優座劇場が2025年4月末日で閉館になることは残念でたまらないが、1本1本の舞台を大切に受け止め、考えよう。劇場右手のドアからエレベーターに乗り、5階にあるのが俳優座スタジオ(稽古場)である。思ったより天井が高いこともあって開放感がある。長い年月、たくさんの俳優、スタッフがここで舞台作りに勤しんできたことが肌で感じ取れる親密な空間だ。舞...劇団俳優座特別公演戦争とは…Vol.29『ボタン穴から見た戦争』

  • 文学座公演『夏の夜の夢』

    *ウィリアム・シェイクスピア原作小田島雄志訳鵜山仁演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA7日まで舞台には演技エリアを囲むように、大中小の白い額縁が置かれている。劇世界に奥行を生むと同時に、複数の世界が入り乱れ、劇中劇など入れ子式の構造を示すものか(舞台美術・乗峯雅寛)。奥にはドラムなどの楽器が置かれ、音楽担当の芳垣安洋と高良久美子が生演奏を行う。人間界は白を基調としたシンプルな衣装(原まさみ)、声を張り上げることなく、台詞をきちんと聴かせるところに文学座らしい安定感があり、よき導入である。今回の特徴のひとつは、アテネの職人たちが妖精役を兼ねるところだ。ベテランの今村俊一、横山祥二、大原康裕、石川武を軸に、中堅の清水圭吾はまとめ役の大工クインス役だが、先輩方に手を焼くところがおも...文学座公演『夏の夜の夢』

  • 新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀件縁桐(つきのつるぎ えにしのきりのは)』

    *「刀剣乱舞ONLINE」(Wikipedia)原案松岡亮脚本尾上菊之丞、尾上松也演出公式サイトはこちら新橋演舞場27日まで「あの〝刀剣乱舞〟がついに歌舞伎の世界に出陣!」というチラシの見出しがどういうことなのか、Wikipediaの情報はあまりに膨大でとても把握できない。新橋演舞場に入るのに、右手奥の小さな祠あたりまで並ぶことや、入場してパンフレットを買おうとしたら、現金払いのみのコーナーには早くも長蛇の列。劇場スタッフに「d払いのできるところは?」と聞くと、「あちこちに」という要領を得ない回答。2階にそれらしき場所があったので並ぼうと思ったら、ここはグッズ購入の列なのだと。階段にも列ができており、これは休憩中のお弁当予約の方々…といった具合に、これまで体験したことのない熱狂ぶりに右往左往しつつ、ようや...新作歌舞伎『刀剣乱舞月刀件縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』

  • 劇団文化座公演164『旅立つ家族』

    *金義卿原作李惠貞翻訳金守珍・佐々木愛脚色金守珍演出公式サイトはこちらあうるすぽっと7月2日終了後、9月26日まで四国、首都圏・関越、秋田はじめ東北から北海道ツアー2014年の初演が好評を博し、全国公演を重ねた作品が、新しいキャストで再演された。新宿梁山泊主宰の金守珍が脚色、演出を担う。照明・映像、舞台美術や振付、殺陣、衣装などのスタッフには新宿梁山泊公演お馴染みの名前が並ぶ。公演パンフレット掲載の演劇ジャーナリスト・山田勝仁の寄稿「アングラと新劇の幸福な出会い」のタイトルの通り、両劇団の強い信頼関係が窺われる。同じくパンフレット掲載の佐々木愛の寄稿によれば、佐々木は新宿梁山泊の魅力に引き込まれ、関西の在日コリアンのことを描いた『百年~風の仲間たち』の初演を観劇して、「もうこの人の力をお借りするしかない」...劇団文化座公演164『旅立つ家族』

  • 2023年7月観劇と俳句の予定

    早くも1年の半分が過ぎました。観劇の予定は以下の通り。既に開幕している公演もあります。*劇団文化座公演164『旅立つ家族』金義卿原作李惠貞翻訳金守珍・佐々木愛脚色金守珍演出公式サイトはこちらあうるすぽっと2014年に初演され、好評を博した作品が新しいキャストで再演される。*新作歌舞伎『刀剣乱舞』『刀剣乱舞ONLINE』原案松岡亮脚本尾上菊之丞・尾上松也演出公式サイトはこちら新橋演舞場刀剣ブームを巻き起こしただけでなく、舞台やアニメ、映画と次々に取り上げられている人気ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』がついに新作歌舞伎として上演…というチラシの惹句もよく理解できない門外漢であるが、まずは体験してみることに。*文学座公演『夏の夜の夢』ウィリアム・シェイクスピア原作小田島雄志訳鵜山仁演出公式サイトはこちら紀伊國屋サ...2023年7月観劇と俳句の予定

  • 新宿梁山泊 第74回公演『少女都市からの呼び声』

    *唐十郎作金守珍演出公式サイトはこちら新宿・花園神社境内特設紫テント25日終了(1,2,3,4,5,6,7,8)同作品観劇の過去記録→新宿梁山第62回公演(2018年3月)、2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業(2019年12月)、唐組第66回公演(2021年1月)∔因幡屋通信68号公演パンフレット表紙には、タイトルの前に「テント版」と明記されている。本作の基となったのは、1969年12月に渋谷金王神社で上演された『少女都市』である。これが最初の産声であるが、その後『少女都市』は不思議な経緯を経て次々に生まれ変わることになる。80年代に入り、当時まだ研究生だった金守珍、六平直政による『少女都市』の舞台を唐十郎が甚く喜び、場面を書き加えて再構成、1985年11月、状況劇場若衆公演と銘打ち、新宿...新宿梁山泊第74回公演『少女都市からの呼び声』

  • T Crossroad《花鳥風月》そして春『カミの森』

    *座・高円寺夏の劇場06川村毅作・演出公式サイトはこちら2021年冬上演の「2020年の世界」観劇の記録→1,2,32022年「夏」→1,2同「秋」座・高円寺111日終了TCrossroad短編戯曲集《花鳥風月》春夏秋冬で1年に渡り、「スタートラフ」として試演が続けられていた『カミの森』の完成版がお目見えとなった。「春」は見逃し、「夏」と「秋」を観劇しているが、物語の新たな展開に身を乗り出したところで「今回はここまで」となるたび、もどかしい思いを重ねてきた。早く続きを観たい。本編に先駆けて観劇した若手劇作家による同テーマの新作戯曲リーディングの印象を大切にしつつ、ひんやりした空気の客席に身を置く。舞台は薄暗い。中央に大きな切り株のようなものがどっしりと置かれ、周囲には木製の丸い腰かけが点在する。後方全体は...TCrossroad《花鳥風月》そして春『カミの森』

  • ティーファクトリー②短編戯曲《花鳥風月》

    *ティーファクトリー座・高円寺夏の劇場06―TCrossroad《花鳥風月》そして春より公式サイトはこちら2021年冬上演の「2020年の世界」観劇の記録→1,2,32022年「夏」→1,2同「秋」昨年春夏秋冬に開催した短編戯曲祭で「スタートラフ」として書き進められた戯曲がいよいよ完成版『カミの森』として登場。さらに《花鳥風月》集大成として、参加作品から3作品【1】と、『カミの森』と同テーマの参加劇作家による新作リーディング2作品【2】が上演される。『カミの森』に先駆けて【2】を観劇した。演出はいずれも川村毅。天井が高く、奥行きもある舞台には切株のようなものが並ぶ。その前に椅子を置くだけのシンプルで贅沢なリーディングだ。俳優は白いブラウスやTシャツに黒のスカートやパンツの衣装。*波田野淳紘作『聖地と流血』...ティーファクトリー②短編戯曲《花鳥風月》

  • 山本さくらパントマイム 第51回公演 『DOOR― 扉にまつわる物語』

    *公式サイトはこちらザムザ阿佐谷6月7日昼2回夜公演(1,2,3,4)山本さくらが作り、構成・演出し出演する年に一度のパントマイム公演。リアル観劇は何と4年ぶりとなった。オンライン視聴ならではの魅力もあり、よき手応えを得ていたが、ザムザ阿佐谷の石の階段を地下に降り、木の温もりのある客席に座ると懐かしさが込み上げてきた。舞台中央には椅子が一つ。「DOOR」と書いためくりが置かれている。暗闇の持つ味わいや匂いに開演前の心身が落ち着き、期待が高まる。プログラムは「開かない!/手紙/開かない??/箱男/開かない!?/智恵の輪/開かない!!!/DOOR」とある。ひとつ終わると暗転し、女性スタッフが椅子に置かれためくりを1枚めくると、新しいタイトルが出て次々に披露される作りだ。デザートを楽しみにうちへ帰った子どもが、...山本さくらパントマイム第51回公演『DOOR―扉にまつわる物語』

  • 日本のラジオ 『ココノイエノシュジンハビョウキデス』

    *こまばアゴラ劇場主催プログラム屋代秀樹作・演出公式サイトはこちらこまばアゴラ劇場4日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)2015年秋、東中野・RAFTの初演は今でも心に残る(因幡屋通信52号)。今回は鶏組と犬組のダブルキャスト。後者を観劇した。どこかの町の古本屋の暗がりで息をひそめているかのような東中野・RAFTでの初演から8年、今回のこまばアゴラ劇場は舞台と客席が分離されているが、上手の店の入り口、下手の店主夫妻の部屋へつながるドアの向こうの様子をさまざまに想像させる。閉塞感はもちろんあるのだが、別の場所の情景や、人々がこれまで生きてきた時間へと劇世界が広がり、深まってゆく感覚を得たのである。このたびの再演は鶏組、犬組のダブルキャストである。4人の...日本のラジオ『ココノイエノシュジンハビョウキデス』

  • 2023年6月の観劇と俳句の予定

    ほとんど毎朝、何等かの事情で電車は遅延し、接近中の台風と梅雨前線の影響で明日の夕方から警報レベルの大雨との予報。梨園を揺るがす澤瀉屋の事件に心は重苦しい。代役を務めた若手の驚異的な奮闘と、それを支え、守り立てた共演者、スタッフの方々の献身に感嘆するばかりです。少しでもよい方向に収まりますよう。6月の観劇は前半に集中しています。すでに開幕した公演もあり。*こまばアゴラ劇場主催プログラム日本のラジオ屋代秀樹作・演出『ココノイエノシュジンハビョウキデス』公式サイトはこちら2015年秋、東中野RAFTの初演は今でも心に残る(因幡屋通信52号)。今回は鶏組と犬組のダブルキャスト。後者を観劇します。(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17)*ティーファクトリー川村毅作・演出...2023年6月の観劇と俳句の予定

  • 劇団民藝公演『カストリ・エレジー』

    *鐘下辰男作シライケイタ演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA6月4日までシライケイタ関連観劇記事(1,2,3,4)スタインベックの小説『二十日鼠と人間』を基に、太平洋戦争後の日本社会を描いた本作は、鐘下辰男が主宰するTHE・ガジラが1994年初演、1998年には新国立劇場で再演された。自分はいずれも未見である。改めて鐘下辰男関連の観劇blog記事を追ってみると、もっとも間近で文学座公演『寒花』(2019年3月西川信廣演出)、グループる・ばる公演『高橋さんの作り方』演出(2010年5月土屋理敬作)、『死の棘』構成・脚本・演出(2005年7月島尾敏雄原作)に留まっている。話題作を次々に発表し、多くの演劇賞を受賞した90年代以降の観劇の記憶をたどってみると、演出のみも含めて『闇の枕...劇団民藝公演『カストリ・エレジー』

  • 因幡屋通信73号ぶろぐ公開

    遅れに遅れて因幡屋通信最新号の73号がようやく完成し、各設置先へ発送いたしました。今回は2022年後半のトピックに続いてこの年の因幡屋演劇賞、2023年の冬から春のトピックをまとめて記しました。何とぞご笑覧くださいませ。観劇後にblogをアップしたものについてはリンクをしてあります。ご参考までに。今号より「NPO法人阿佐ヶ谷ワークショップ」さまにも設置していただくことになりました。ご理解とご協力に感謝いたします。2022年【秋から冬のトピック】☆9月☆*文学座公演秋元松代作松本祐子演出『マニラ瑞穂記』文学座アトリエ明治時代後期、スペイン統治下のフィリピン・マニラの日本領事館を舞台に、軍人や領事、娼婦に女衒、さらにフィリピンの独立運動に加わる日本人志士らが歴史の荒波に翻弄されながらぶつかり合い、それぞれの道...因幡屋通信73号ぶろぐ公開

  • 唐組・第71回公演『透明人間』

    唐十郎作久保井研+唐十郎演出『透明人間』公式サイトはこちら(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14)新宿・花園神社にて観劇4月22日、岡山市旭川河畔・京橋河川敷で初日を迎え、神戸・湊川公園の上演も無事に終わって5月6日から新宿・花園神社へ。その後雑司ヶ谷・鬼子母神から再び花園神社へ戻り、6月11日、長野市城山公園ふれあい広場でフィナーレとなる。1990年初演からこのたびで6回目。久保井研の演出家デヴュー作品(1998年)でもあり、唐組の財産演目だ。自分は2015年版が初見であり、このときはほぼ30年ぶりの紅テント観劇(そのときのblog記事)とあって、あれから8年が過ぎたことに愕然としつつ、4年ぶりに桟敷席になったテントの前から4番めに腰を下ろした。エンタメ情報サイト「メディアス...唐組・第71回公演『透明人間』

  • 文学座公演『地獄のオルフェウス』

    *テネシー・ウィリアムズ作広田敦郎訳松本祐子演出公式サイトはこちら信濃町・文学座アトリエ23日まで本邦初演は1961年、杉村春子主演による文学座公演とのこと。自分は文学座の倉野章子主演のTPT公演(『地獄のオルフェ』2000年秋こりっち掲載ページには配役もきちんと出ており、大変有益)を観劇して以来となる。松本祐子演出の舞台では、昨年9月の『マニラ瑞穂記』、同じテネシー・ウィリアムズの2010年秋、新国立劇場小劇場上演の『やけたトタン屋根の上の猫』が記憶に残る。アメリカ南部の田舎町の雑貨店を舞台に、自由に羽ばたきたいと切望する魂が、因習と偏見と暴力によって無残に踏みにじられるさまを容赦なく描く。休憩を挟んでおよそ3時間の大作である。名越志保は、その顔立ちや芸風から「和物」のイメージが強い。特に2000年12...文学座公演『地獄のオルフェウス』

  • 岸田今日子記念 円・こどもステージ№41 演劇集団円+シアターχ提携公演『ぼくは人魚』

    *國吉咲貴作後藤彩乃(1,2)演出公式サイトはこちら7日まで両国・シアターχ2018年上演の『はだかナおうさま』と同じ作と演出による童話あそびシリーズ第二弾である。公演チラシには「本当の私って、なんだろう?」のキャッチコピー。深淵で哲学的なメッセージが潜む80分の舞台である。本作は観客にさまざまな疑問を抱かせる。まずはタイトルの「ぼくは人魚」である。アンデルセンの童話『人魚姫』の影響であることはまちがいないが、わたしたちの心には「人魚は人魚姫なのだから女性なのだ」という強固な概念があることに気づかされる。ならば「ぼく」とは誰だろう?公演チラシに掲載の物語のあらすじによれば、好奇心旺盛な人魚のカイリが陸に憧れ、15歳になった日、魔女に「足をください」と頼み込む。魔女は足の代償としてカイリの「私」を貰うと告げ...岸田今日子記念円・こどもステージ№41演劇集団円+シアターχ提携公演『ぼくは人魚』

  • 2023年5月観劇と俳句の予定

    ずっと寒かったのが急に暑くなり、また寒くなった4月が終わって若葉の美しい季節に。観劇は前半多めです。作り手も受け手も心身守られますように。*岸田今日子記念円・こどもステージ№41演劇集団円+シアターχ提携公演國吉咲貴作後藤彩乃(1,2)演出『ぼくは人魚』公式サイトはこちら2018年上演の『はだかのおうさま』(残念未見)と同じ作と演出による童話あそびシリーズ第二弾とのこと。楽しいゴールデンウイークの幕開けになりますように。*團菊祭五月大歌舞伎公式サイトはこちらお友だちが3階B席の最前列を取ってくれまして、昼の部を観劇することに。自分が初めて歌舞伎座に足を踏み入れたのは1985年、十二代目團十郎の襲名披露興行で、そのとき観たのが「若き日の信長」だったことを思い出す。今回は十二世市川團十郎十年祭として、十三代目...2023年5月観劇と俳句の予定

  • 演劇ユニット新派の子特別企画 Salom De Marron~さろん・ど・まろん~ 『明治の雪』『太夫さん』

    *北條秀司作齋藤雅文演出公式サイトはこちら4月13日昼夜2回代々木上原・MUSICASA(ムジカーザ)自分の新派観劇歴はこちら→1,2,3,4,5,6,7,8「まろん」とは波乃久里子が甥御たち(中村勘九郎、七之助)から付けられた愛らしい綽名だ。そのまた息子たち(中村勘太郎、長三郎)は「まろん婆」(まろんば)と呼んでいると聞いたのは「徹子の部屋」であったか。演劇ユニット劇団新派の子は、同劇団文芸部の劇作家・演出家の齋藤雅文を代表に、2020年10月3日結成された。コロナ禍最中の危機的な状況にあって、新派の伝統を重んじながら、新たな演劇活動を追求する志を持つ。これまで2度の公演を行っており、自分はいずれも未見である(公式サイトより1,2)。このたびは齋藤の「久里子さんの声を聞きたい」との切なる願いで実現した一...演劇ユニット新派の子特別企画SalomDeMarron~さろん・ど・まろん~『明治の雪』『太夫さん』

  • 朱の会Vol.6 劇的立体朗読―怪異と幽玄ノ譚―雨月物語と小泉八雲の世界

    *神由紀子構成・演出公式サイトはこちら中野あくとれ9日終了(1,2,2',3,4,5,5',6,7)小説や詩歌を読むと、心の中にいろいろなイメージが沸き、どんどん膨らんでゆく。「この人物にはあの俳優がぴったり」、「クライマックスはこんな音楽が合いそう」等々、さながら脳内ドラマ劇場の様相だ。しかしそれを実際に具現化し、舞台作品として構成するのは至難の業ではないだろうか。朱の会の主宰・神由紀子は、それが出来る演劇人であることを確信した今回の公演であった。前半は短編を6本、10分の休憩を挟んで後半は短編2本と中編1本と、これまでに増して盛りだくさんのプログラムである。さらに今回はプロローグとエピローグが加わり、この形式は2年前同じ中野あくとれでのVol.4公演と同様だ。作者の異なる作品を次々に披露しながら、公演...朱の会Vol.6劇的立体朗読―怪異と幽玄ノ譚―雨月物語と小泉八雲の世界

  • 2023年4月の観劇と俳句の予定

    新年度が始まりました。観劇の予定は次の通り。*朱の会Vol.6劇的立体朗読―怪異と幽玄ノ譚―雨月物語と小泉八雲の世界神由紀子構成・演出公式サイトはこちら(1,2,2',3,4,5,6,7)*演劇ユニット新派の子特別企画SalomDeMarron~さろん・ど・まろん~『明治の雪』『太夫さん(こったいさん)』北條秀司作齋藤雅文演出公式サイトはこちら4月13日のみ代々木上原・MUSICASA(ムジカーザ)*四月大歌舞伎第二部この月から二部制に戻ったため平日の観劇ができなくなったのは残念だが、昨年病気療養で中止された片岡仁左衛門と坂東玉三郎顔合わせの「与話情浮名櫛」がとにかく楽しみ・・・と言っていたら仁左衛門が体調不良で5日から7日まで休演!代役は立てず、夜の部まるごと上演中止とは穏やかではない。尾上松緑、左近親...2023年4月の観劇と俳句の予定

  • 追悼 奈良岡朋子さん

    俳優・奈良岡朋子さんが3月23日(木)逝去された由、代表を務めていた劇団民藝より発表がありました。93歳。天寿を全うされたのですね。しかしわたしはまだまだ奈良岡さんの舞台を観て、考え、学んで書かなければならなかった。俳優・奈良岡朋子と客席の自分との物語は未完のままです。不勉強な者からの追悼として「えびす組劇場見聞録」第42号(2013年12月)を転載いたします。奈良岡さん出演の舞台観劇記録はこちら→1,2,3,4,5,6,7『物語がはじまった~奈良岡朋子のこれまでとこれから~』俳優と観客とのかかわりは不思議だ。自分の意志とは関係なく出会いがおとずれ、いつのまにか自分とその人と、ふたりだけの物語を綴ってゆく。奈良岡朋子。昨年12月1日に83歳の誕生日を迎えた。大滝秀治亡きあと劇団民藝代表として200名近い大...追悼奈良岡朋子さん

  • パラドックス定数 第48項『四兄弟』

    *野木萌葱作・演出公式サイトはこちらシアター風姿花伝26日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30)公演チラシの表は明らかに日本ではない外国の街並み、裏はこれも外国であろう、一面の向日葵畑のセピア色の写真である。さらに表には地球らしき丸いものを囲む4人の人間、燃える火やハート、骨付きの肉のイラスト。裏には「暗い。寒い。腹が減った/このままでは死ぬ。」等々、切羽詰まったつぶやきが詩のように記されている。物語冒頭、父親に支配され、暗闇で寒さと飢えに苦しみながら生き延びるためにあることを決意する四兄弟の台詞である。いつの時代かもどこの国かも特定せず、固有名詞を一切出さないで進行する野木萌...パラドックス定数第48項『四兄弟』

  • ゲッコーパレード出張公演 劇場Ⅱ『少女仮面』

    *唐十郎作黒田瑞仁演出崎田ゆかり主宰・出演公式サイトはこちら下北沢・OFFOFFシアター19日終了劇場に入って驚いた。対面式の場内が大胆に作りかえられ、客席が演技エリアを三方から緩く囲んでいる。OFFOFF劇場でこういうことが可能とは!客席案内のスタッフのほかに、開演前のおよそ30分、出演俳優が一人またひとりと演技エリアに登場し、椅子にかけたり床に座ったり、天井の照明を確認するようなしぐさをしたりなど、微妙な雰囲気を醸し出す。はじめて観劇する劇団だ。劇団名の由来、埼玉県蕨市の旧加藤家住宅を拠点とした多彩な活動歴、それに加えて「出張公演」と銘打った今回の『少女仮面』上演など、公式サイトや公演の当日リーフレットからは、演劇に対する情熱、決意が強く伝わってくる。前記の劇場内の改造、開演前の趣向ともに、非常に意欲...ゲッコーパレード出張公演劇場Ⅱ『少女仮面』

  • 糸あやつり人形 一糸座『少女仮面』

    *唐十郎作天野天街(少年王者舘)演出公式サイトはこちら21日まで赤坂レッドシアターまずは因幡屋の『少女仮面』観劇記録をおさらい。blog記事をリンクいたします。①1982年7月小林勝也演出渡辺えり(当時渡辺えり子)、森下愛子、佐古正人(当時佐古雅誉)他出演渋谷パルコパート3②2019年10月文学座附属研究所研修科の発表会小林勝也演出文学座新モリヤビル③2020年1月トライストーン・エンタテイメント公演杉原邦生演出若村麻由美主演シアタートラムに続いて、③2020年2月月船さらら主宰métro公演天願大介演出月船さらら主演中野・テアトルBONBON④2021年12月新宿梁山泊李麗仙追悼特別公演金守珍演出水嶋カンナ主演芝居砦満天星当初は2020年5月の上演が、コロナ禍や主宰の江戸伝内の病気療養で二度に渡って延期...糸あやつり人形一糸座『少女仮面』

  • 文学座3月アトリエの会『挿話(エピソオド)~A Tropical Fantasy~』

    *加藤道夫作的早演出公式サイトはこちら信濃町・文学座アトリエ26日まで劇作家の加藤道夫が第二次世界大戦末期、陸軍省の通訳官としてニューギニアのソロンという集落で敗戦までを過した体験を基に書き上げた作品とのこと。文学座が1949年三越劇場で初演した。加藤の薫陶を受けた文学座の座友で俳優の川辺久造が、本作上演のために座内勉強会を立ち上げ、2016年6月、演出の的早孝起、俳優の林秀樹、沢田冬樹、横山祥二によるリーディング公演が行われた(未見)。今年1月から3月にかけての文学座通信にはこの経緯が詳しく紹介されており、リーディング公演の当日パンフレット掲載の川辺の寄稿からは、加藤道夫を「劇詩人」として敬愛してやまず、『挿話』の上演への情熱と志が伝わる。それを受けての3月アトリエ公演、作り手の熱意は察するに余りある。...文学座3月アトリエの会『挿話(エピソオド)~ATropicalFantasy~』

  • 演劇ユニット鵺的 第16回公演『デラシネ』

    *高木登作寺十吾(tsumazukinoishi)演出公式サイトはこちら(安心して観劇するための注意事項記載)新宿シアタートップス12日終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24)昨年は映画や演劇業界でハラスメントの告発が相次いだ。現場では然るべくガイドラインを作成し、対策を講じていることを表明している(鵺的のステートメントはこちら)。鵺的最新作は業界の大御所的存在の男性脚本家飛鳥井宏道(佐瀬弘幸)と、彼の作品に心酔して弟子入りし、脚本家デヴューを目指す女性たち、そして彼の妻と娘をめぐる物語である。何かを表現し、発表しようとする行為が危険を孕むこと、関わる人々を否応なく襲い、時には人生を台無しにするほどでありながら...演劇ユニット鵺的第16回公演『デラシネ』

  • 演劇集団円+シアターχ提携公演『ペリクリーズ』

    *W・シェイクスピア作安西徹雄翻訳中屋敷法仁(柿喰う客)演出公式サイトはこちら両国・シアターχ8日終了本作とはじめて出会ったのは2003年、蜷川幸雄演出による彩の国さいたま芸術劇場の公演である。もう20年も前のことだ。蜷川は戦火の只中にあるどこかの国へやってきた旅の一座による一夜の芝居という外枠を作り、冒頭、爆音が響く中、逃げまどい傷ついて疲弊しきった人々を一人また一人と登場させた。台詞は一切無い。やがて人々は舞台に一列に並び、客席に向かって静かに頭を下げた。「今宵限りの芝居を御覧じろ」ということだ。客席からは拍手が起こり、この趣向を、一座の人々を受け入れたとの応答に、早くも胸が高鳴ったことを思い出す。家族再会の大団円ののち、人々は戦乱の止まぬ地からいずことも知れず、再び旅立ってゆく。喜びに溢れる終幕が夢...演劇集団円+シアターχ提携公演『ペリクリーズ』

  • 2023年3月の観劇と俳句の予定

    2月の宿題がまだ残っていますが、3月の予定は以下の通りです。*演劇集団円+シアターχ提携公演『ペリクリーズ』W・シェイクスピア作安西徹雄翻訳中屋敷法仁(柿喰う客)公式サイトはこちら過酷な運命に翻弄された男が家族に再会するまでの奇跡の物語が日本で初めて上演されたのは、1976年演劇集団円であった!(未見)自分は2003年、蜷川幸雄演出の舞台以来の観劇となる。*演劇ユニット鵺的第16回公演『デラシネ』(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23,24)高木登作寺十吾(tsumazukinoishi)演出公式サイトはこちら(安心して観劇するための注意事項記載)懐かしい新宿シアタートップスに再び足を運べるのは嬉しい限り。飲食店の入った...2023年3月の観劇と俳句の予定

  • 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場 第129回公演『行きたい場所をどうぞ』

    *瀬戸山美咲作大谷賢治郎演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA28日終了瀬戸山美咲作品(演出のみ含め)観劇の記録→(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23、24,25,26,27,28,29,30,31,32,33)スーパーや量販店のセルフレジ、ファミリレストランやチェーン飲食店でのタブレット注文は当たり前。オムライスを席まで運ぶどころか、将棋やチェスの試合で名人を凌ぐAIロボットが登場するほどだ。春近い2月末、青年劇場が上演したのは、AIロボットと女子高校生が「行きたい場所」を探して旅をする物語だ。細木を組み立てた大きな柱が数本立つシンプルな舞台に、白やグレー、黒などモノトーンの衣装をつけた俳優が...秋田雨雀・土方与志記念青年劇場第129回公演『行きたい場所をどうぞ』

  • 名取事務所公演 パレスチナ演劇シリーズ『占領の囚人たち』

    *公式サイトはこちら下北沢「劇」小劇場26日終了ユダヤ系イスラエル人作家エイナット・ヴァイツマンがパレスチナ人の囚人たち(元・現在いずれも)と作り上げたドキュメンタリー演劇『PrisonersoftheOccupation』、ヴァイツマンとSNS投稿が原因で逮捕、収監された詩人ダーリーン・タートゥールによる独白劇『I,DareenT.』が本邦初演の運びとなった。日本の制作者陣が現地での滞在制作を行い、パレスチナ人俳優のカーメル・バーシャーを日本に迎えての上演である。翻訳・ドラマトゥルクは渡辺真帆、演出は文学座の生田みゆき(1,2,3,4,5,6,7)。生田は2020年2月の同事務所パレスチナ演劇上演シリーズで『帽子と予言者』『鳥が鳴き止む時-占領下のラマッラー-』2本立ての演出を担っている。「パレスチナ演...名取事務所公演パレスチナ演劇シリーズ『占領の囚人たち』

  • PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』

    *三谷幸喜作・演出公式サイトはこちらPARCO劇場3月5日までその後新潟、松本、大阪、宮城、兵庫、那覇を巡演。1996年初演、1998年アンコール上演され、大評判を得た西村まさ彦(当時雅彦)と近藤芳正共演の舞台(山田和也演出)の観劇は叶わなかったが、テレビの舞台中継の録画を繰り返し視聴した。PARCO劇場開場50周年記念シリーズと銘打った25年ぶりの再演は、検閲官向坂を内野聖陽、劇作家椿を瀬戸康史が演じ、三谷みずからが演出する。無駄や隙のない演出に俳優ふたりが見事に応え、台詞の間合いや緩急、表情や仕草の一つひとつが舞台に良きリズムを生み、客席も大いにわく。ただし前記のように録画を何度も視聴したため、物語の流れ、やりとりなど覚えてしまっている場面も少なからず。初観劇の新鮮な驚きやおかしみはなく、周囲ほど笑え...PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『笑の大学』

  • 劇団民藝公演『ノア美容室』

    *ナガイヒデミ作中島裕一郎演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA19日まで『送り火』(2017年)、『白い花』(2020年)に続くナガイヒデミ3作めの民藝書下ろしは、瀬戸内のとある農村の小さなパーマ屋「ノア美容室」が舞台である。時は2013年夏、美容師の櫟木(くぬぎ)緑(日色ともゑ)と農家の主婦である馴染み客のあかり(船坂博子)が鏡を覗き込みながらのやりとりに始まる。―初日を迎えたばかりの公演です。これからご覧になる方はご注意を―床の掃除やこまごまとした手伝いをしているのは住み込み修行時代からの緑の後輩弓岡麻帆(白石珠江)だ。「新道を使えば車で40分」のところで美容室を経営している。そこへ緑の孫・名越映子(加來梨夏子)が「ただいま」と言ってやってきた。四国は愛媛のことばはゆった...劇団民藝公演『ノア美容室』

  • 東京芸術座 アトリエ公演№45『おんやりょう』

    *内藤裕子作・演出公式サイトはこちら上井草・東京芸術座アトリエ(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ4作含むgreenflowers公演の記録、劇団内外作・演出および演出1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11)昨年の演劇集団円公演『ソハ、福ノヨルトコロ』が紀伊国屋演劇賞個人賞、名取事務所公演『カタブイ、1972』が鶴屋南北戯曲賞を受賞するなど、内藤裕子は評伝劇、社会問題劇の方向へ舵を切りつつあるが、2017年4月初演の東京芸術座アトリエ公演『おんやりょう』は、社会で懸命に働く人々の奮闘を綿密な現場の取材に裏打ちされた細やかで温かな眼差しで描いた佳品である。6年後の2023年2月、一部の配役や登場人物の設定を変更して、物語の時は初演の2017年4月、桜の季節そのままに再演された。西武新...東京芸術座アトリエ公演№45『おんやりょう』

  • 唐組若手公演・第70回公演『赤い靴』

    *唐十郎作加藤野奈演出久保井研監修公式サイトはこちら下北沢・駅前劇場5日まで2023都民芸術フェスティバル、第33回下北沢演劇祭参加(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)本作の上演歴を少し調べてみると、初演は1996年秋。当時渋谷のさくら通り沿いにあった映画館の渋谷ユーロスペース2を「幻想劇場館」として上演されており、林海象監督、唐十郎脚本・主演の映画『海ほおずき』上映との連携公演であった。その後2002年冬に阿佐谷のスタジオ・アルスノーヴァでの新人公演、春には横浜赤レンガ倉庫1号館開館記念公演が行われたとのこと。いずれも紅テントではなく映画館やスタジオ、劇場といった「箱もの」で、若手公演第二弾と銘打った今回も、下北沢・駅前劇場である。これは偶然なのか、作品の持つ必然性なのか。前回...唐組若手公演・第70回公演『赤い靴』

  • 2023年2月の観劇と俳句の予定

    第8波が収まったのか、それとも次なる波の前なのか。こんな思いをもう3年もしているのですね。昨年の今ごろは自宅療養中でしたが、つい昨日のことのようでもあり、遠い昔のようにも思えます。舞台の作り手、受け手ともに心身が守られますように。*唐組若手公演第70回公演唐十郎作加藤野奈演出久保井研監修『赤い靴』公式サイトはこちら下北沢・駅前劇場(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13)一昨年冬の若手公演第一弾『少女都市からの呼び声』の印象は今でも鮮烈だ(blog、通信)。今回は中堅の加藤野奈が演出を担う。監修の久保井研は公演チラシに「さあ、行け/思う存分、暴れてこい!」と檄を飛ばす。こちらも確と臨みます。*東京芸術座アトリエ公演№45内藤裕子作・演出『おんやりょう』公式サイトはこちら上井草・東京芸術...2023年2月の観劇と俳句の予定

  • 演劇集団Ring-Bong 第10回公演 『さなぎになりたい子どもたち』

    *座・高円寺冬の劇場22日本劇作家協会プログラム山谷典子作(1,2,3,4)藤井ごう演出公式サイトはこちら座・高円寺122日(日)終了2021年4月から2022年3月まで、東京都世田谷区の公立中学の保健室を主な舞台とし、教師と生徒、その親など総勢12名が登場し、コロナ禍真っ只中における子どもと大人、社会、この国のありようを炙り出し、問いかける物語だ。休憩無しの約2時間10分、客席は息をつめて舞台の人々を見守り、その声に耳を傾ける。作り手の誠実な姿勢が伝わり、劇場は温かな空気に包まれた。元看護師だった養護教諭の高岡美穂(鬼頭典子/文学座)が誰かと電話で話す場面に始まるが、ここで早くも彼女がただごとではない状況に置かれているらしい不穏な滑り出しである。鬼頭典子は前回公演の『みえないランドセル』の助産師、また名...演劇集団Ring-Bong第10回公演『さなぎになりたい子どもたち』

  • 2023年1月の観劇と俳句の予定

    明けましておめでとうございます。親戚友人知人にコロナ感染の知らせ続々におののく年末年始、インフルエンザも猛威を振るっており、気の抜けない日々が続きます。舞台の作り手の方々、そして劇場に足を運ぶ方々いずれも、どうか心身守られますよう。年明けは劇団東京乾電池公演『十二人の怒れる男』を早々に見逃したのが残念です。*新春浅草花形歌舞伎・・・お正月の浅草歌舞伎が3年ぶりに開幕。第2部の「傾城反魂香」、「連獅子」の観劇を予定しています。浅草散策も楽しみたいところですが、しばし我慢ですね。*RingBong公演山谷典子作(1,2,3,4)藤井ごう演出『さなぎになりたいどもたち』座・高円寺・・・悩む人に対して、「人生はいつでも、いつからでもやり直しができる」と励まし、またそうできる社会でなければと思います。公演チラシには...2023年1月の観劇と俳句の予定

  • 2022年因幡屋演劇賞

    いつになく早い年末の訪れに寄せて、以下感謝と喜びを以て発表いたします。タイトルには観劇後のblog記事をリンクしておりますので、よろしかったらご参考までに。☆演劇集団円公演マーティン・マクドナー作小川絵梨子役寺十吾演出『ピローマン』@俳優座劇場・・・こんなに陰鬱で残虐な物語なのに、待った甲斐があったと晴れやかな気持ちで帰路に着く。自分を変にしてくれる芝居が好きだ。☆朱の回第5回公演藤沢周平作神由紀子構成・演出『朝焼け』@野方・BookTradeCaféどうひん・・・節目の5回公演で、本ユニットのひとつの達成点を示す舞台。11月には早々のアンコール公演、先日の小公演Vol.2「太宰治特集」も盛況に終わり、着実な歩みを示した。☆六月大歌舞伎有吉佐和子作齋藤雅文演出/坂東玉三郎演出『ふるあめりかに袖はぬらさじ』...2022年因幡屋演劇賞

  • 朱の会小公演Vol.2「太宰治特集」

    *公式サイトはこちら(1,2,2',3,4,5,6)阿佐谷ワークショップ24、25日2回公演先月アンコール公演∔有吉朝子作品を披露したばかりの朱の会による太宰治3作品の朗読公演。今回は佐藤史織による津軽三味線演奏も加わった。☆『眉山』・・・「これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未だ発せられない前のお話である」というはじまりに、「もしやコロナ禍の?」とドキリとするが、本作は1948年(昭和23年)3月「小説新潮」に発表された短編小説である。時代は敗戦から数年後、帝都座の裏にある若松屋という飲み屋の常連である作家の「僕」が思い出を語る形式だ。高井康行がひとりで朗読する。若松屋にはトシちゃんという若い女中がいる。文学が好きだからと作家たちの宴席に首を突っ込み、知ったかぶりの無智な発言から「眉山」と綽名が付いた。客...朱の会小公演Vol.2「太宰治特集」

  • 【追悼】西村博子さん

    12月14日、新宿タイニイアリスのオーナーで演劇研究者の西村博子さんが逝去されました。出会いは2007年6月、劇団印象公演『父産』(「とうさん」/鈴木アツト作・演出)がきっかけです。「因幡屋ぶろぐ」の観劇記事をアリスのHPにリンクしてくださって、メールのやりとりがあり、そのすぐあとでしたか、別の劇団の公演に再びアリスへ行って終演後に階段を上っていたとき、「もしかして宮本さん?」と呼び止められたのです。どうしておわかりになったのですかとたまげていると、「わたし、こういうの、わかるの」とにっこり。それがご縁になって、アリスに乗り込んでくるイキのいい若手劇団に次々と出会えたこと、特に大阪の劇団Mayとの出会いは大きかった(2015年3月、最後のアリスフェスティバル公演記事→『零度の掌』)。舞台の勢いに負けまいと...【追悼】西村博子さん

  • 劇団劇作家主催12月公演/平林たい子没後50周年記念 『世界が私を嫌っても』

    *有吉朝子(1,2,3)作西本由香(文学座)演出公式サイトはこちら(劇団劇作家1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)下落合/TACCS117918日終了本作は「日本の劇」戯曲賞2020において佳作に選出、翌年9月、南河内万歳一座の内藤裕敬の演出による成果発表のリーディング公演を経て、このたび「劇団劇作家主催の公演としては、初めての台本を持たずに演じる形式」(当日パンフレット掲載の有吉の挨拶文)で上演の運びとなった。舞台には数本のグレーの柱、その前に平台が少し斜めの向きに置かれている。この台を主な演技エリアとして、たい子の故郷である信州諏訪から東京、駅の待合室や書店、座敷等々、屋内外自在にどんどん変わってゆく。大正6年(1917年)、主人公のたい子が12歳の夏にはじまり、戦中戦後を経て昭和3...劇団劇作家主催12月公演/平林たい子没後50周年記念『世界が私を嫌っても』

  • 復帰50年企画・共同制作『カタブイ、1972』

    *ACO沖縄/名取事務所共同制作内藤裕子作・演出公式サイトはこちら11月30日~12月4日沖縄・ひめゆりピースホール12月15日~18日下北沢・小劇場B1沖縄でタクシー運転手をしながらさとうきび農家を営む波平誠治と家族の1971年12月から翌1972年5月15日までの物語(内藤裕子関連のblog記事→『かっぽれ!』シリーズ、他1,2,3,4,5)である。観劇当日は名取事務所プロデューサーの名取敏行によるプレトークが行われ、本作企画の経緯や今後の予定などが淡々と語られた。本作が内藤裕子による家族劇3部作の第1弾であり、1995年、2025年と続く企画であることがしっかりと心に刻みつけられての開幕。期待が高まる。「カタブイ」とは「片降り」であり、片側だけ雨が降ることを指す。こちら側は大雨が降っているのに、向こ...復帰50年企画・共同制作『カタブイ、1972』

  • 動物自殺倶楽部第2回公演 『凪の果て』

    *高木登(演劇ユニット鵺的)作小崎愛美里(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)演出公式サイトはこちら雑遊18日まで高木登作品の過去記事→23が動物自殺倶楽部の旗揚げ公演記事(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21+α,22,23)ステージには椅子が3脚、客席に対して斜めの向きに置かれている。ある弁護士事務所の一室。妻の市原茜(三浦葵/劇団いいのか・・・?)は離婚に応じない。彼女が雇った弁護士の笹井(函波窓/ヒノカサの虜)は切れ者のの印象だ。対する夫の市原丈留(たける・橋本恵一郎)には愛人がおり、彼女と再婚するためにひたすら離婚を願っている。彼の側の弁護士稗田晶子(赤猫座ちこ/牡丹茶房・動物自殺倶楽部)はまだ若いが、誠実な姿勢が感じられる。...動物自殺倶楽部第2回公演『凪の果て』

  • 文学座12月アトリエの会 『文、分、異聞』

    *原田ゆう作所奏演出公式サイトはこちら信濃町/文学座アトリエ15日までタイトルは「ぶんぶんいぶん」と読む。休憩無し、1時間55分。年初に福田恆存はじめ29名の脱退者を出した1963年(昭和38年)の11月20日、東京・信濃町の文学座では、当時文学座文芸演出部に籍を置いていた三島由紀夫が書き下ろした『喜びの琴』の翌64年の正月公演の是非を巡って議論が紛糾、さらなる分裂の危機を迎えようとしていた。幹部俳優や総務部、研究生ながら主役に抜擢された若者などが喧々諤々の議論を展開する。イヌイさん、スギムラさん、ナガオカさんなどと呼び合うやりとりは、「史実を基にしたフィクション」ではなく、まさに実在の人物が実名で登場する「ドキュメンタリー演劇か」と身構えたが、いくら60年前とは言え髪型や服装など、あの杉村春子先生とは似...文学座12月アトリエの会『文、分、異聞』

  • 劇団民藝公演 『モデレート・ソプラノ』

    *デイヴィッド・ヘア作丹野郁弓訳・演出公式サイトはこちら紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA10日終了デイヴィッド・ヘア作品の観劇歴を振り返ると(記載はいずれも「デヴィッド・ヘア」)『スタッフ・ハプンズ』(2006年燐光群坂手洋二演出)、ドラマリーディング『パーマネント・ウェイ』(2008年同渡辺美佐子が主演した2005年の観劇のblog記事無し。因幡屋通信22号に劇評記載)、映画『スカイライト』(2015年ナショナルシアターライヴ)、『ブルールーム』(2016年PLAY/GROUNDvol.0井上裕朗演出ver.A)、ドキュメンタリー要素の濃厚な鋭い筆致、複雑なドラマ性など幅が広く、奥の深い作風である。今回の『モデレート・ソプラノ』はナチスドイツが台頭する1930年代に始まり、戦後の50年代、6...劇団民藝公演『モデレート・ソプラノ』

  • 2022年12月の観劇と俳句の予定

    11月の宿題がまだ残っているのですが、12月の予定を先にアップします。カレンダーが最後の1枚になると、やらねばならないこと山積なのに、あれもこれもまだだよという焦燥感がいっそう募ります。慌てず落ち着いて一つひとつ大事に。*劇団民藝公演デイヴィッド・ヘア作丹野郁弓訳・演出『モデレート・ソプラノ』デイヴィッド・ヘアのヒット作の本邦初演。1930年代から戦後、そしてまた30年代に戻るという重層的な構造とのこと。*文学座12月アトリエの会原田ゆう作所奏演出『文、分、異聞』舞台は1963年の文学座。年初に大量の脱退者を出した劇団で、翌年の正月公演である三島由紀夫の書下ろし『喜びの琴』上演の是非をめぐって紛糾、再び分裂の危機を迎えている。「宙づりになった作品に、研究生という名の宙ぶらりんの若者たちが揺さぶられ、未来に...2022年12月の観劇と俳句の予定

  • ティーファクトリー T Crossroad 短編戯曲祭《花鳥風月》「秋」Dプロ+Iプロ

    ☆公式サイトはこちら川村毅演出雑遊27日終了2021年冬上演の「2020年の世界」観劇の記録→1,2,32022年「夏」→1,2戯曲が観客の前で産声をあげ、育ちゆくプロセスを味わうシリーズの「秋」は全9作品。ようやく駆け込んだ千秋楽の客席はキャンセル待ちの出る盛況だ。☆Dプロ竹田行人作『淡い月』雨あがりの朝、高校教師の水川りん(山崎美貴)が、出席日数が足りない受け持ちの生徒・月下亜和(和田真季乃)の家を訪ね、母親と話がしたいと言う。亜和は母親はまだ寝ていると答えるが、何となく雰囲気がおかしい。やがて出た来た中学生の妹のチエ(石森咲妃)は姉と正反対で、りんへの挨拶の言葉づかいも立ち居振る舞いも申し分ない優等生である。チラシにはりんの年齢が28歳と明記されており、演じる山崎とはいささか差があるものの不自然では...ティーファクトリーTCrossroad短編戯曲祭《花鳥風月》「秋」Dプロ+Iプロ

  • PLAN39 『クドい十二人の女』

    *表情豊脚本・演出公式サイトはこちら富士見台/アルネ54327日終了ある劇団が新作公演のために合宿を行おうとしている。集まってくるのは劇団員はじめオーディションの合格者や主宰の作・演出家「表情豊」から声を掛けられた女優たち、主宰のマネージャー、合宿所の管理人の合わせて12人だ。タイトルの通り、「クドい」女たちが繰り広げる2時間弱の群像劇だ。昨年中止となった公演に出演者が再び集結し、上演の運びになったとのこと。ひとしおであろう関係者の喜びと熱気が爆発する舞台であった。演劇業界の裏事情や創作現場の事情を容赦なく晒しつつ、そこに吸い寄せられてしまう人々のどうしようもない性(さが)がぶつかり合って大騒動が展開する。女たちをここまで狂わせ、混乱させる「豊さん」とは、いったいどういう人物なのかが物語の重要な軸なのだが...PLAN39『クドい十二人の女』

  • 朱の会公演―朱の会アンコール+有吉朝子作品

    *公式サイトはこちら(1,2,2',3,4,5)阿佐谷/アートスペース・プロット11月22日2回公演劇団劇作家(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)の有吉朝子(1,2)の新作『波津子―レディの肖像』と、今年5月の本公演で好評を得た藤沢周平『朝焼け』がリーディング上演された。構成、演出はいずれも主宰の神由紀子。夜の部を観劇した。第1部有吉朝子作『波津子―レディの肖像』…『月・白き水晶の夜』を二人芝居として書き下ろした新作である。関東大震災から1年後の大正13年の秋、東京府立精神病院の一室が舞台である。そこは自分をレディと呼ばせている女性患者の個室らしい。彼女は明治政府の高官・九鬼隆一のかつての妻であり、近代日本美術の先駆者である岡倉覚三(天心)の愛人であった星崎波津子(神由紀子)である。そ...朱の会公演―朱の会アンコール+有吉朝子作品

  • 二兎社公演46 『歌わせたい男たち』

    *永井愛作・演出公式サイトはこちら11月13日埼玉で初日、東京芸術劇場シアターイースト公演は12月11日までその後来年2月まで愛知、滋賀、山形、兵庫、長野、福岡、岩手をツアー(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)2005年秋の初演(blog記事)は第5回朝日舞台芸術賞グランプリ、第13回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞するなど高い評価を得た。2008年の再演を経て14年ぶりのお目見得だ。2008年3月。卒業式を2時間後に控えた都立高校の保健室が舞台である。シャンソン歌手に見切りをつけ、音楽講師となって間もない仲ミチル(キムラ緑子)は、卒業式でのピアノ伴奏に四苦八苦。コンタクトレンズを落し、眩暈に襲われて保健室で休んでいるところへ、養護教諭の按部(うらじぬの)、校長(相島一之)、紋付き袴の衣...二兎社公演46『歌わせたい男たち』

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