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遠藤雷太のうろうろブログ
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2014/10/06

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  • ままごと『わが星』

    わが星「OURPLANET[DVD]ままごとHEADZわが星柴幸男白水社2024/4/16・地球と月とその家族の在り様を、時報のリズムに乗せて言葉とダンスで表現していく話。話なのかな。・作中で、幼い女の子であるちいちゃん(地球)とその幼馴染の月の関係性を人の一生分一気に見せる。・最初は『わが町』と関係ないのかなと思ったけど、この部分だけ取り出すとやっぱり発想元と思われる。・最初の時報のリズムにあわせて群唱するところは躍動感があってかっこいいんだけど、なかなか話に入っていかないので少し不安になる。・抽象表現が多いと、全体の尺の中でどのくらい進んでいるのかわかりにくいので長く感じやすい。・本作では、ちいちゃんと月の二人の物語が組み込まれていて、そういうストレスは少なかった。・それだけなら良くも悪くも単なる「い...ままごと『わが星』

  • 関根光才監督『太陽の塔』(2018年)

    太陽の塔2024/4/16・岡本太郎の作品や人柄を、10個のキーワードをもとに、様々な立場の人が証言していくドキュメンタリー。・自分にとっての岡本太郎は、幼いころ、テレビで「芸術は爆発だ!」と言っているギョロ目のおじいさん。・後になってたいへん優れた芸術家であり、ただの変わったおじさんではないことに気づかされた感じ。・亡くなったのは1996年だが本作の公開は2018年。東日本大震災後。わりと最近。・最初は万博というテーマで当時の様子を解説していく。・当時も色々あったんだろうけど、カジノの前座として公費を浪費している今の大阪万博と比較すると、盛り上がり方にかなり差があるように見える。・1970年から少しでも進歩しているのか、退化しているのか。・当時の万博のテーマ、科学の発展による「人類の進歩と調和」に岡本自...関根光才監督『太陽の塔』(2018年)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第6話 ある愛に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/4/16望遠鏡で隣の建物の情事を覗き見していた若い男トメクは、覗きの対象の女性マグダと仲良くなるが、性行為がうまくいかなくて自殺未遂する話。解説文の(彼の視姦は性的なものではなく)「むしろ純粋な愛の対象を見守るまなざしとしてのみ心に残る」と自分の印象が全然一致しなくて困る。彼女に会いたいがために、郵便局員が為替関連の書面を偽造するのもやりすぎに思える。好きな人をクレーマーに仕立てたのも陰湿すぎる。1988年のポーランドならOKなんだろうか。女性がそれに対して寛容すぎるのも変な誤解を招きそうだし、あげく手首を切って自殺未遂なんてただひたすら面倒くさい。性交...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第6話ある愛に関する物語

  • ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

    イスラエル軍元兵士が語る非戦論(集英社新書)ダニー・ネフセタイ集英社2024/4/1イスラエル空軍に在籍経験があり、今は日本で家具を作っているイスラエル人が著者。情報量が多い。最初に文章内でちゃんと右派と左派を定義しているところが信頼できる。政治の話題で使われる「右」や「左」は、人によって意味が全然違うので、言葉としての機能を失ってることが多い。本書では言葉を尽くして抑止力としての武装を否定している。キリがないという。アメリカの銃規制みたいだなと思う。自分自身、現時点で日本の非武装化は現実的ではないと思うけど、とりあえず理想を掲げて、そこに近づこうとすることは大事。今は逆行しているのが残念。現実に敗北している。一方で対パレスチナに関するイスラエル人の考え方、気持ちはわかる。肯定はできないけど、身近に同じよ...ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

  • 劇団あはひ『流れる —能“隅田川”より』(2022年)

    2024/4/8・松尾芭蕉と弟子の曾良が川の渡し守のところで、訳あり気な女と舟守と子供に出会う話。・「奥の細道」ではなく、能の「隅田川」がベース。・能という伝統芸能の敷居の高さはいったん脇に置いて素直に会話が楽しい。・ライターの貸し借りだけでひと笑いある。・舟守のところに自分が行くか弟子に行かせるか二人でいくかという、どうでもいいやり取りがおもしろい。・物腰のやわらかな芭蕉になごむ。・曾良は無自覚に失礼な人だと見ていたけど、女性と話す時はちゃんとしている。・アレンジは現代劇風。服装や小道具、言葉遣いや会話も現代人どうしのやり取りに聞こえる。曾良が黒のダウンジャケットを着ている。・「ご当地俳句読み倒れツアー」。・時代感があるのは、川の船着き場みたいな場所だけ。・舞台はモノクロ。きわめてシンプル。・映像でも奥...劇団あはひ『流れる—能“隅田川”より』(2022年)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第5話 ある殺人に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/4/9タクシー運転手を殺した若者が死刑になる話。その若者と、彼の弁護士、被害者の三者の目線で構成されている。若者が凶行に及ぶ過程がよくわからない。たぶん、わざとそういう風に見せている。無軌道な若者がためらいながらも一線を越えるという話は、類型がたくさんありそう。理不尽だけど、不運なタクシー運転手は、あんまり共感できないような人間性でバランスをとっている。十戒で言うと、第6の「人を殺してはいけない」らしい。ただ、殺人NGは一般常識の範囲なので、かえって難しいお題なのかも。どこまで現実に即しているかわからないけど、死刑の準備や段取りが生々しい。日常業務として...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第5話ある殺人に関する物語

  • 黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

    2024/4/8・終戦から復興しつつある日本で、ある老人が水爆や原爆の恐怖から逃れるため家族を連れて南米に逃げようとする話。・今の感覚で見ると、年を取ってから陰謀論に染まってしまい、せっかく築いてきた財産を切り崩していく感じに近いのでわりと共感できる人は多いかもしれない。・ただ、よく見ると結構違う部分もあるので、そのまま入れ替えられるような話でもない。・例えば、戦争からの時間が浅い。終戦から10年。戦争(特に原爆)で人が死ぬということが、今とは比較にならないくらい身近なことだったりする。・彼の恐怖には根拠がある。・未来人である自分は南米に逃げることが正解か不正解か知っているけど、これだって後出しに過ぎない。・家族にジュースをふるまったり、必ずしも悪人というわけではないのが厄介。フード理論的に重要な行動。・...黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

  • 松井周の標本室『標本(複写)』(2021年)

    2024/4/8光合成できる特殊体質だと気づいた俳優が、その後の生き方に悩む話。ほぼ一人語りの進行。演者は金子岳憲さん。客席に向かって劇場やコロナ禍について語り掛けつつ、少しずつフィクションの割合を増やしていく。完全に話に入った後は、複数の登場人物を一人で演じながら進行する。座っていないだけで、落語のテンポ感に近い。主人公を脇に置いて、女性二人がつかみ合い、たたき合いをするシーンも、動作の単純化、取捨選択が巧みで、全くテンポを損なわずに一人二役を演じていた。終盤の、プログラムをミスったMMDキャラみたいな機械的かつ非人間な動きもおもしろかった。「余らせたもの」というキーワードは、あまり理解できなかったけど、突然変異と自然淘汰による進化論的なことなのかなと考えたりした。なので、光合成ができたからって、生き残...松井周の標本室『標本(複写)』(2021年)

  • ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』

    最後にして最初の人類ティルダ・スウィントン2024/4/4作曲家のヨハン・ヨハンソンの音楽と、古典SF小説をもとにした20億年後の人類からのメッセージ、旧ユーゴスラビアの戦争記念碑「スポメニック」の映像を組み合わせた作品。公式HPにもあったけど、物語ではなく、映像と音楽を使った詩でいいんだと思う。スポメニックのことは知らなかったけど、説明がなくても、その奇妙さと大きさに魅了される。たしかにSFっぽい見た目だし、異世界のそういう兵器なんだと言われたら納得してしまうくらい。ネットで画像は見られるけど、大きさあってのものだと思うので、実物を見てみたい。逆によく知っていたら、なんで戦争記念碑と20億年後の未来が融合しているんだろうとノイズになりそう。映っている物体の数々が未来の人類の成れの果てなのかなと考えたりし...ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』

  • クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

    2024/4/2・原爆の父と言われたオッペンハイマーの評伝劇。・180分ある。家でサブスク視聴するには厳しい長さ。こういう作品こそ映画館がはかどる。・せっかくの話題作なのでIMAXにしたけど、会話が9割だったので、そこまでこだわらなくてよかったかも。・ただ、ロスアラモスの原爆実験はすさまじい。クリストファー・ノーランがCGを使わないということくらいは知っていたので、ますます凄みを感じる。・爆発時の数字を聞いて、単に大きな爆弾が炸裂したと思って喜んでいるライト層と、とんでもない異常な規模だとわかる専門家たちの表情の違いも見どころ。・彼のキャリアの振り返りと、戦後の公聴会のシーンが切り替わりながら話が進む。・最初、公聴会で調査しているのは人道的な意味での是非なのかな、ちゃんと検証しているアメリカはえらいなって...クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第4話 ある父と娘に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/29仲良し父娘の娘が、父の机の引き出しから「死後あけること」と書かれた手紙を見つけてしまい、開封するかどうか迷う話。DVDの解説によると、十戒の中の「あなたの父母を敬え」という第五戒がテーマらしい。直接表現しているわけではないので、一致していると言えばしているし、よくわからない。どちらかというと、親とは何かという話。踏み込んだ表現もあるけど、比較的穏当な話だったと思う。過去3回もそうだけど、登場人物の顔が強い。今回も娘の顔が強い。演者はアドリアンナ・ビエェンスカ。名前を覚えられる気がしない。話はとてもシンプルで、なんなら既視感もあるくらいだけど、娘の...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第4話ある父と娘に関する物語

  • 「5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]」

    2024/3/29・デンマークの王子ハムレットが、前王である父親の幽霊からの命令を受け、新しい国王となった叔父に復讐しようとする話。ミュージカル。・役者は男性5人のみ。ハムレットは一人が演じ、他の四人で残りすべての登場人物を演じる。・ハムレットの母親ガートルードや恋人オフィーリアも男性が演じる。恋人同士のやり取りもギャグに逃げず、真正面から演じている。すごく真面目。・登場人物の紹介、関係性、展開、うまく編集されていて2時間弱。わかりやすいのでシェイクスピア作品の入門編としてもおすすめできそう。・ハムレット以外の演者は、一つの役でも異なる演者が担当したりする。なので、衣装が重要。・演じているほうは混乱しないのかなと思ったけど、楠美津香さんみたいな人もいるから今さらか。・着替えは舞台上で見せる方針で、仕草や照...「5GuysShakespeareAct1:[HAMLET]」

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第3話 あるクリスマスイヴに関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/26クリスマスイブの夜、タクシー運転手の男のところに元恋人がやってきて、彼女の現恋人が行方不明になったから一緒に探してほしいと言われる話。…だと思うけど、よくわからない。本編も1時間弱。30分くらい見て話に付いていけず、最初から見直してみたけど、よくわからなかった。主人公の男は妻がいるのに、元カノの頼みに応じて一晩を一緒に過ごす。妻には「車が盗まれたから警察に通報しておいて」という言い訳をする。意味がわからない。妻に内緒にすること、言い訳に盗難被害という嘘をつくこと、実際に警察へ通報させること、どれも飲み込みにくい。一歩間違えたら逮捕されるし、実際逮...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第3話あるクリスマスイヴに関する物語

  • ベン・モンゴメリ『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイ』

    グランマ・ゲイトウッドのロングトレイルベン・モンゴメリ山と溪谷社2024/3/26・1955年、女性で初めて全長3300㎞のアパラチアントレイルを踏破したエマ・ゲイトウッドを紹介するノンフィクション。・当時の彼女は67歳。1955年5月2日から同年9月25日までの146日、起伏の激しい山岳道を、単純計算で1日あたり20~25㎞くらい歩き続けた。・激しい起伏、足場の悪さ、記録的なハリケーン、ガラガラヘビなどの危険な動物たち。・本の大部分はこの最初のトレイルの様子と、彼女の生い立ちの紹介にあてられている。・過酷なトレイルでも、彼女にとっては楽しいことだったらしい。実際、彼女は一回では満足できず、二回目、三回目と挑戦している。・一方で、彼女の生い立ちのほうで語られる、夫からの暴力は目も当てられない状態。・時代背...ベン・モンゴメリ『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイ』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第2話 ある選択に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/26不義による妊娠をしてしまった女が、生むべきかどうか判断するため、意識不明になってしまった夫の主治医から話を聞き出そうとする話。姦淫という十戒らしいテーマ。ただし、十戒に対応しているのは偶像崇拝の禁止らしい。どの部分が対応しているのかはよくわからない。「私は私だけの神を持っている」というセリフなのかな。十戒をそのまま組み込むのではなくて、作り手側が、それに対してどのように考えているかを作品にしている感じ。夫が回復して一緒に暮らせるようになるなら、不義による子供は生めないという考え方って、個人的にはあんまりピンとこない。自分は父親とは血がつながってい...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第2話ある選択に関する物語

  • NODAMAP『赤鬼』

    赤鬼[DVD]野田秀樹、富田靖子、段田安則、アンガスバーネット、AngusBarnettカズモ2024/3/25村の嫌われ者の女が、海から漂着してきた「赤鬼」と出会う話。小さめの演技スペースを客席が囲む会場。四人の俳優が、それぞれのベースの役と、シーンに合わせて様々な村人の役を演じる。切り替えが早く、時々ギャグも入るので、見ているほうも忙しい。演者たちの瞬発力はさすがだし、最前列のお客さんに話しかけたり、バッグをお借りして攻撃したりする。楽しそう。嵐の表現や、ボールとポールで船に見立てるのもちゃんとそのように見える。さすが。赤鬼は外国人のことなのかなと思ったけどそういう感じでもなさそうで、人間として考えていいのか、よくわからなかった。話の筋自体はとてもシンプルなので、何の話かわからなくなるということはない...NODAMAP『赤鬼』

  • ケン・クワピス監督『ロング・トレイル!』(2015年)

    2024/3/24老年の作家が思い立って全長3500㎞のアパラチアントレイルに臨む話。もともとコミュニケーションの苦手な人が、よき理解者と出会って長年一緒に暮らしているうちに、ますます他者との距離感がとりにくくなっている感じが生々しい。相棒は彼よりもヨボヨボのおじいさん。老年だからというより、完全に山歩きをナメていて、踏破できそうな要素が全くない。熊との遭遇や滑落のような絶体絶命のトラブルもどこか呑気。かなり薄められている。熊と対峙して逃げずにちゃんと威嚇したのはよかったけど、人の食い物を奪って去っていくのは餌付けと変わらないのでかなり怖い。アパラチアの熊はそういうものなのか。途中で泊まったホテルはちゃんと料金を払ったんだろうか。諦めさせようとする妻のまわりくどい説得や、途中から同行するうっとうしい女性ハ...ケン・クワピス監督『ロング・トレイル!』(2015年)

  • 岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

    ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義岡真理大和書房2024/3/22今起きているガザの問題、というか今のイスラエルという国家の問題点を解説した本。自分の知識では軽々しく事の是非を判断することはできないけど、態度を保留にすれば中立になれるわけでもない。むずかしい。実際、イスラエルが目指しているのはまさにそこ。周囲の人々に態度を保留させているかぎり、イスラエルはジェノサイド(大量殺戮)を続けられる。なので、病院や難民キャンプを襲っている時点でイスラエルの擁護は厳しい、くらいは言っておきたい。大国アメリカも親イスラエル系のロビイストが力を持っていて、止めるどころか支援を続けている。日本にも似たような話はあって気が滅入る。ユダヤ人の国と言いつつシオニズムは敬虔なユダヤ教徒に認められていないという話、イスラ...岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第1話 運命に関する物語

    2024/3/22モーゼの十戒をモチーフにした短編10作品のうちの一話目。理知を重んじるインテリ親子が、運命からの逆襲に遭う話。理知と信仰の対比(本当に対比になるかどうかはあやしいかも)が軸になっている、哲学的かつ宗教的な話。50分強と短く、単純な構図で、心配していたほどのストレスはない。十戒のひとつ「あなたは私の他になにものも神としてはならない」を犯した親子が悲劇に遭うという道徳的な話に見えなくもないけど、その神やら運命やら何か得体の知れないものに屈服するのか、抗い続けようとするのか、その人の生き方が現れる瞬間を描いた話とも言える。動物がよく出てくる。血の付いた鳩や犬の死体など、人を不安にさせる動物たち。今見るとかなり旧式のパソコンの緑色の光が、人間らしさとの対比のように使われている。派手な装飾はないけ...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第1話運命に関する物語

  • 黒澤明監督『椿三郎』(1962年)

    2024/3/19・椿三十郎を名乗る浪人が、冤罪で拘束された城代家老を救おうとする若者たちを助ける話。・その若者たちが九人もいる。似たような若い武士たちが彼のあとをウロウロついていく。・椿三十郎は若者たちを一人も殺さないようにゴールに導く。ゲームの『レミングス』っぽい。・金魚のフン状態の若者たちの中でも決して埋もれない田中邦衛の顔面力。・96分。時間が短い。内容も軽い。巨匠の作品という感じがしない。・各登場人物の役職や身分がよくわからないまま見ていたけど、その時その時で登場人物たちが何をしたいのかがわかりやすく全然ストレスにならない。・囚われのお姫様ならぬ城代家老のおじいちゃん。命の危機だったのに、己の馬面をネタにしてのほほんと若者たちを笑わせている。胆力があるとも言えるけど、ゆるい。・家族の危機なのに奥...黒澤明監督『椿三郎』(1962年)

  • Nibroll/ミクニヤナイハラプロジェクト『リアルリアリティ』

    2024/3/18プロジェクションマッピングとコンテンポラリーダンスと音楽を組み合わせた舞台芸術。ダンスは演劇ほど演者の表情に焦点がないので、見た目が暗くなりがちなプロジェクションマッピングとは相性がいいのかもしれない。最初パネルに、不自然な姿勢で首を吊る人々の映像がたくさん映し出される。自分にはタイトルと、実際の表現の関係性はよくわからなかったけど、とりあえず生と死のモチーフが繰り返し出てきているよう。数字の海に流されていく死体のようなもの。暴力や戦争のようなもの。棺桶のようなもの。地層のように世代が移り行く感じ。衣裳を脱ぐ動きが多いのも代謝の表現なのか。なので、テニスと新体操っぽい部分は唐突な感じはした。もともとダンスと親和性の高い音楽に、照明効果も加わって多層的に見られる仕組み。というか、照明効果が...Nibroll/ミクニヤナイハラプロジェクト『リアルリアリティ』

  • 山田洋二監督『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1975年)

    2024/3/16・寅次郎が飲み屋で謎の爺さんを拾ってきたことをきっかけに、なぜか市役所の接待を受けたり、金をだまし取られた芸者の話を聞いて、我が事のように怒ったりする話。・最初の夢シーンは『ジョーズ』のパロディ。ジョーズが1975年、本作が1976年。早い。想像していたより死に方が雑すぎて笑った。源公むごい。・こういうバカバカしいシーンの場合、味付け濃いめの渥美清の演技と、自然な感じの倍賞千恵子の演技を並べると、さくらのほうに違和感と面白味を感じてしまう。・寅次郎が目まぐるしい。・甥っ子のお祝いをしてくれる。人からバカにされたと拗ねる。居酒屋で無一文の爺さんを見かけたから立て替えてやる。家に泊めてやる。高名な先生だとわかると金づるにしか見えなくなる。接待を受けたあとにとらやの飯に文句を言ってイヤな顔をさ...山田洋二監督『男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け』(1975年)

  • 根本宗子監督『20歳の花』

    2024/3/1420歳の花が、好きな作家とSNSで交流するようになって、心を乱される話。5分前後のエピソードが10話。演劇ともミュージカルとも連続ドラマとも言えるし、それぞれとはちょっとずつ違うとも言えるような映像作品。赤と青を基調にした美術が賑やかで楽しい。たまたま最近よく見ているマティス感がある。出演している人が根本宗子さんだと勘違いしていて、イメージと違うなと思っていたら、別人だった。演者は田村芽実さんのみ。誇張気味の演技と、コロコロ動く表情がかわいい。そして、ずっとボヤいている。歌もよくなじんでいる。音楽はチャラン・ポ・ランタンの小春さん。配信作品だから尺の自由度は高いと思うけど、あえて短く区切ってオープニングとエンディングの繰り返すことでリズムを作っている。SNSで知り合った人がイメージと違っ...根本宗子監督『20歳の花』

  • 北海道立近代美術館「AINU ART―モレウのうた」

    2024/3/8・モレウ(渦巻の文様)を軸にアイヌ文化の芸術や工芸品を集めた展覧会。・アイヌの文様はかっこいいと思うものの、それほどアイヌ文化に馴染みがないので距離感が難しい。・それこそ『ゴールデンカムイ』のような自然とともに生きているイメージが強いけど、あれは昭和初期の話だし、ステレオタイプの押し付けはあまり良いことではない。・芸術と伝統は、近いところにあるわりに、相性がよくないと思っているので、現代のアイヌ文化ってどんな感じなのか気になっていた。・あと、自分は落書きしたくなると、必ずぐるぐる渦巻を描いてしまうので親近感もある。・と思っていたら、世界のぐるぐるを集めたパネルコーナーもあった。ぐるぐる大好きなのは世界共通らしい。・北海道に住んでいなくても誰もが一度は目にするだろうアイヌの文様が刺繍されたタ...北海道立近代美術館「AINUART―モレウのうた」

  • 株式会社オフィスインベーダー『飛び降りたらトランポリン』

    2024/3/7疫病の感染者を殺す花火を発明した男が、感染者を殲滅したい権力者と、感染者たちの間で板挟みになる話。主人公はヒラガバンナイという発明家で、コロリという病原体、エレキテル、からくり人形の女の子を発明しているという、江戸時代風のファンタジー。コロナ禍以前の2008年の作品で、今はたまたま『オッペンハイマー』が話題。疫病と大量殺人兵器を扱って全体的にコメディタッチなのは、どうしても隔世の感を抱いてしまう。このころは平和だった。たぶん今上演したら全然違うタッチになるんじゃないかと思う。目まぐるしくシーンが変わっているのに、高低の演技スペースとステージの穴もうまく使いこなしていて、転換の手数が多い。演者の技術は全員安定していて、特に刀の使い方が全員すごくきれい。そして速い。ほとんどの感染者が死んだだろ...株式会社オフィスインベーダー『飛び降りたらトランポリン』

  • ペリン・エスマー 監督『リア女王 ~村を巡る陽気なおばちゃん劇団~」(2019年)

    2024/3/6・トルコの辺境の村をめぐって「リア王」の上演を続けるおばちゃんたちを撮影したドキュメンタリー。・リア王なのに結構ゆるい雰囲気。そんなところでセリフの練習をやってるんだというところから始まる。・見た目も言動もおばちゃんとしか言いようがなく、舞台にあがると豹変するという感じでもない。・反面、演劇を上演するまでがとにかくハード。・整備されていない片側崖の山道を延々と移動していたり、遊牧民の小さな集落を訪ねたり。・現地に到着すると、出演者たちが街を歩いて住民とコミュニケーションをとる。・宣伝には違いないんだけど、「よかったら遊びに来て楽しいよ」くらい感じで押しつけがましさがない。・おばちゃんという属性に意味付けし過ぎるのはよくないけど、これがおじさんだったり、テレビタレントや芸術家っぽかったりする...ペリン・エスマー監督『リア女王~村を巡る陽気なおばちゃん劇団~」(2019年)

  • マチルダアパルトマン『すべての朝帰りがいつか報われますように』

    2024/3/5一年前に公園で死んだ一人の男を偲んで、彼と因縁のある女性たちが集まって缶蹴りをする話。夜の公園という、なにかと若者たちをそわそわさせるロケーション。年齢的にも世代的にも缶蹴りはないだろうと思うけど、それをさせてしまう夜の高揚感には何となく覚えがある。ピザは選んでいる時が一番楽しいという話に共感する。何事もサクサク決められる人をうらやましく感じることは多いけど、うだうだ考える楽しさもある。たぶんサービス精神だと思うんだけど、カメラが近めなのと、時間の編集が入っているので、舞台をどうやって使っているのか、場面転換をどう見せているのかがよくわからなかった。個人的な好みかもしれないけど、時間の編集が入ると、演劇を見ている感じが結構目減りする。団体のことも作品の内容も知らなかったけど、とりあえず見て...マチルダアパルトマン『すべての朝帰りがいつか報われますように』

  • 明和電機「ナンセンスマシーン展」(札幌国際芸術祭2024/SIAF2024)

    2024/3/3・明和電機は20年くらい前にCDを買って社歌も歌えるが、最近の活動はよくわからない程度の知識。・お兄さんが定年退職していたのも知らなかった。・筑波大学の学生時代、魚器、EDELWEISS、VOICEMECHANICS、TSUKUBAの各シリーズ。・特に学生自体の創作物が楽しい。・「新しいびっくり箱を作りなさい」という発想を引き出す課題のほうも面白い。・創作ノートの展示を見ると、学生時代から魚器にかけて、世界と自分の間には何かあるのかなど、実に若者らしい問いを持って、創作していたことがわかる。・結果、魚と電気屋に行きつく飛躍。天才。・明和電機を知って10年以上のブランクがあったのに、当時と同じようにその造形にわくわくできた。強い。・魚を殺すことが前提のアートもあって、今の感じからは想像しにく...明和電機「ナンセンスマシーン展」(札幌国際芸術祭2024/SIAF2024)

  • マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

    2024/3/1・仕事を求めてオクラホマ州に移り住むことになったアーネストが、地元の有力者である叔父の言いなりになって、オセージ族の連続殺人計画に飲み込まれていく話。・実際の事件をもとに作られた3時間26分の大長編。・アカデミー賞10部門ノミネートの記念上映で、実際見た人の評判もいい。それなのに、最初の20分くらいは何が起きているのかよくわからず、不安になる。・徐々に登場人物の関係性、凶悪な行為、計画がわかってくるにつれ、話が加速していく。中だるみしなかった。・後日譚の見せ方も好き。もうちょっと見たくなる。・なので実時間ほど長くは感じないんだけど、それでも映画館の環境あっての作品ではある。・オセージ族は、保留地から石油が採掘され、裕福だったため、白人入植者に権利を狙われているという背景。・結構な数のオセー...マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

  • アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

    2024/2/26・帯刀が常識となった令和五年の日本社会で、廃刀令の是非を問うタウンミーティングの様子を描いた話。・『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』と同じ系譜の話。実際、展開も似ている。・登場人物が事件をほぼ他人事として扱う「~優しい日本人」に比べて、各々の信念や利害がしっかりしている。・結果、支持派と否定派の入れ替えによる起伏は少なめで、どちらかというと人物描写に重きを置いている。・裁判員裁判よりもっと非現実的なシチュエーションだからこそ、登場人物の実在感が大切。・肯定派と否定派のバランスをとるのはとても難しいけど、かなり注意深く練りこまれていたと思う。・最初の「刀は日本の心」おじさんの言っている理屈は、そのまんまアメリカの銃規制反対派に置き換えられる。・帯刀という現実の日本人から見るとバカ...アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

  • Mako『保健室からの手紙』

    保健室からの手紙:養護教諭という生き方(エッセイ)Mako2024/2/252023年3月に退職した養護教諭が、34年間の教員生活で培った仕事に対する考え方を、一日の時系列や印象に残ったエピソードとともに書いたエッセイ。前に読んだ養護教諭の方と雰囲気が似ているものの、詳細は結構違うのでたぶん別人。保健室の先生は普段何をやっているのかよくわからないので、こういう具体的な仕事の内容を書いてもらえるとイメージがつかみやすい。ありがたい。事務仕事や直接生徒をケアをする仕事も多いけど、それより、野球のバックアッププレイのような何かあった場合に対応するための仕事が多いように見える。大体は意味がなく終わるけど、これを大事だと思えるかどうかで全然違う環境になりそう。保健室の性質上、生徒に忙しいと思わせてはいけないという話...Mako『保健室からの手紙』

  • ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

    2024/2/22・父親や夫に虐げられながら生きてきたセリーが、いくつかの出会いを経て、自分の居場所を見つける話。・場所はアメリカの海岸沿いにある田舎町。1909年から40年くらいの長期間の話。・登場人物のほとんどが黒人なので人種的な差別は少ないが、とにかく女性の地位が低すぎる社会。・差別される側の人間が差別しないわけではないという、当たり前のことが再確認できる。・若い女性が問答無用で連れていかれるのは、知識としてそういう時代なのはわかっていても、実際に生身の人間同士のやり取りを見ると、相当キツい。・姉妹が仲良しなのでより悲劇性が増す。妹側の視点でもうひとつ話が作れそう。・人種差別描写が少ないと言っても、とても印象的な場面で出てくるので、これはこれで厳しい。・ソフィアの変遷がすばらしい。絶望から復活のとこ...ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

  • ロブ・コーエン監督『ワイルド・スピード』(2001年)

    2024/2/19潜入捜査中の警察官ブライアンが、潜入先のターゲットであるドミニクと仲良くなり、彼にゼロヨンレースので負けた借りを返す話。最初からノリのいい音楽と光沢のあるタイトルロゴ、次々と出てくるきれいな自動車。自動車の話になると、当たり前のように日本企業名が出てくるところに時代を感じる。シーンとシーンのつながりがよくわからないところはあるけど、レースのスピード感は気持ちいいし、お酒でも飲みながら細かいことを気にせずに観るタイプの作品なんだと思う。武装したトレーラーの運転手、どちらかというと被害者側なのに、作品内では悪役になるという変なバランス。不自然なほど顔も映さないのは、観客に感情移入させないためか。反面、ドミニクの仲間たちは、メカニック風の食前のお祈りはおもしろかったし、電子レンジにキレ散らかす...ロブ・コーエン監督『ワイルド・スピード』(2001年)

  • NTL『オセロー』

    2024/2/18・ムーア人の軍人オセローが、腹心のイアーゴーの謀略で妻の不貞を疑い始め、結果みんなが不幸になる話。・オセローの演武から始まる。たぶん、彼の屈強なフィジカル面を示すのは、後の展開との対比として重要。・イアーゴーの間接的に人を不安にさせる言動が巧みなので、四大悲劇では『オセロー』が一番好きだった。・久しぶりに見たら、そのイアーゴーの策略が何でもかんでもうまく行き過ぎていて、逆にノイズになる。・自分の感覚だと「これからこんな悪いことするぞ」と一人語りすると何らかの邪魔が入って頓挫するはず。・彼は悪意の塊だったけど、悪意すらなく彼と同じような言動をとる人は、現実に結構いるような気がする。・舞台演出も衣装も抑制が効き過ぎて見え、中盤くらいまでは少し物足りなく感じてしまう。・途中15分の休憩とスタッ...NTL『オセロー』

  • 名越文代「保健室: 元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ」

    保健室:元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ名越文代2023/2/16社会人経験もあり、1968~1997年まで小学校の養護教諭を務めた名越文代さんの散文集。前半は歳時記と称して、養護教諭の目線で見る小学校の一年間をひと月ごとに軽い筆致でつづっている。現役の養護教諭に向けられて書かれているものだからか、時代が変わっているからなのか、表現の問題なのか、うまく意味をつかめないところもあったが、当時の養護教諭がどういう気持ちで業務にあたっていたのか、共感できるところもある。挨拶ひとつとっても気を遣いながら日々の生活を送っているところが印象的だった。後半は、退職後、社会人学生として大学に再入学した話や留学の話、人形浄瑠璃など。大津市の小学校に勤務されていたとのことで、滋賀県が県内の小学...名越文代「保健室:元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ」

  • 『マティスを旅する』(家庭画報特別編集)

    マティスを旅する家庭画報特別編集世界文化社2024/2/13マティス展の予習がしたくて、たくさんある入門書の一つを読んでみる。最初に彼が「集大成」とした《ヴァンス・ロザリオ礼拝堂》の写真が並ぶ。生誕から順番でもいいけど、わかりやすいところから挙げてくれるのは助かる。ステンドグラスの双子窓《生命の樹》、陶版画《聖ドミニコ》、それらにはさまれるように主祭壇上の磔像とキャンドルスタンド。建築や立体物のイメージはあんまりなかった。上祭服までデザインしていた。ちょっと舞台衣裳っぽいなとおもっていたら、実際にそういう仕事もしていたそうだ。磔像ってこんなに抽象化していいものなんだ。絵柄はふんわりしていて、素人にはわかりやすくすごいとは言いにくい作品が多いけど、斜に構えず受け入れるところから始めたい。昔から何となく好きだ...『マティスを旅する』(家庭画報特別編集)

  • AOAO SAPPORO「にちにちパス」

    2024/2/13・AOAOSAPPOROのフリーパスチケット。・自分が購入したときには、90日間17~22時の期間で利用可能。3500円。・水族館としては小ぶりだけど、施設内にコワーキングスペースがあるとなると、その有益性は一変する。・街中のスタバやドトールに行くような感覚で入れる。・11月上旬に購入して3か月間、画像フォルダを見るかぎり、週1回以上は入っている。・完全に作業場所目当てなのも味気ないし、たぶんそういう意図で販売しているチケットではないから、少しでも馴染もうとクラゲペンを買ったり、シロクマベーカリーで飲食したりする。・クラゲペンはペン先の反対側にクラゲがついていて書くときにすごく揺れる。普通に使いにくい。・イワトビペンギンのパフェは、ココアパウダーがこぼれるのでトレイ必須。・ガチャポンでイ...AOAOSAPPORO「にちにちパス」

  • ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY2)

    2024/2/10・ポッドキャスト番組「オーバー・ザ・サン」の公開イベント。二日目。テーマは《はしゃぐ》。・二人が本人役を演じる寸劇が始まる。寸劇だと思って見ていたら、90分くらい続いた。・今回のイベントの準備期間中、ポッドキャスト収録の舞台裏という設定。・たぶん、お客さんが予想していた、あるいは求めていたのは初日のポッドキャストの延長のような感じだったと思うので、たいそう困惑したはず。・ただ、一日目と二日目にかけられた労力で言えば、一対九くらいの差がある。・セリフ覚えるだけでも相当大変だし、ダンス、マジック、ドラム、一つのイベントに詰め込んではいけない量の新しいことに挑んでいる。・だからひとつひとつの内容というよりも、良い年齢の大人が、なりふり構わず新しいことに挑んでみるというチャレンジ精神のほうを見る...ジェーン・スーと堀井美香の「OVERTHESUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY2)

  • OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』

    2024/2/5・お互い既婚者なのに一夜を共にしてしまった男女が、一年に一度二十五年間、同じホテルにて逢瀬を続ける話。・OrgofA上演の本作は2019年以来2回目の観劇。・開場中、ホテルマン姿の明逸人さんがずっと客席に向かって語り掛けながら、客席の空気をほぐしている。・長尺・翻訳物・ほぼ古典と人を緊張させる要素が多いので、そうやってお客さんにリラックスしてもらうのはコメディにとってとても大切だと思う。・自分が観たのは年代ごとに3組の男女が演じるスペシャル回。六人の演者による二人芝居。・どんな役者でも、一人の役を二十五年分も演じると、絶対に実年齢と合わない年代を演じることになる。・それも役者の腕の見せどころだけど、各年代を実年齢に近い人が演じると、別種の納得感が生まれる。・序盤は本庄一登くんと小野寺愛美さ...OrgofA『SameTime,NextYear-来年の今日もまた-』

  • ジェーン・スー『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』

    揉まれて、ゆるんで、癒されて今夜もカネで解決だ(朝日文庫)ジェーン・スー朝日新聞出版2024/2/5ジェーン・スーさんによるリラクゼーションサロン体験記。内容は『孤独のグルメ』の業種違いバージョンといった感じ。マッサージや整体といった比較的しっかりしたものから、謎の金属の棒や、よくわからないけど小顔になるドライヤー、ショウガにヨモギ、蛇床子なる漢方、スピリチャルの一歩手前、なんなら片足は踏み出しているくらいの怪しげな民間療法も試している。マッサージ自体は好きだし、いろんな形態に興味はある方だと思うけど、そんなに金はかけてられないから、近所の秘境を探索するようなこういう本は楽しかったりする。揉まれる側が施術者の力量を見抜く話はすごくよくわかる。揉まれの名人。それぞれのエピソードが短くて軽い。iPhoneサイ...ジェーン・スー『揉まれて、ゆるんで、癒されて今夜もカネで解決だ』

  • ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督『FLEE フリー』(2021年)

    2024/2/5・アフガニスタンで育ったアミンが亡命したときの様子を振り返る話。・アニメなのは個人が特定されると危険だから。・なので、本作のジャンルはドキュメンタリー。・一昔前のストップモーションアニメみたいに動きがカクカクしているけど、この不穏な題材にはあっている感じ。・政権に対して批判的な言動を示したという理由で彼の父親が逮捕されている。その後、どうなったかは描かれていない。・前に見た『生きのびるために』もアフガニスタンだった。あそこ、もう少し何とかならんのか。・とはいえ、これは本当にヨソの国だけの話なのかな。例えば、戦時中の日本はどうだったのか。・特高、五人組、非国民なんて言葉を連想すると、あんまり違わないような気がする。・歴史は繰り返すと言うし、日本人には亡命先も無さそうだから、なすがままになりそ...ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督『FLEEフリー』(2021年)

  • ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY1)

    2024/2/4・堀井美香さんとジェーン・スーさんが語らうポッドキャスト番組「オーバー・ザ・サン」の公開イベント。配信チケットで視聴。・ほぼ二人の会話とリスナーからのメールだけで毎週毎週1時間前後のエピソードが配信されている。・親戚のおばさんたちの話を聞いているような安心感とは裏腹に、それぞれの固有スキルに基づいたモノの見た方や生き方にいちいち発見があって楽しい。・でも、聞き終わるころには全部忘れちゃってるくらいの軽さ。ストレスがない。・媒体が媒体なのでもっとこじんまりとしたイベントかと思っていたら、本会場の東京を含め、ライブビューイングで全国八か所同時中継。・ステージは回転するし、ミラーボール、派手なかきわり、演出効果もろもろ豪華。・普段は暗く人気のない通勤退勤路のお供として本ポッドキャストを聴いていた...ジェーン・スーと堀井美香の「OVERTHESUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY1)

  • 劇団fireworks『≒生活。』

    2024/2/3・本来なら去年上演されるはずだった作品の振替公演。・札幌で暮らす以外に共通点のない人々が、ある出来事で知り合い、それぞれの生活を少し前進させる話。・地下鉄の再現度が高い。実写ならものすごい手間とお金がかかるようなことを演技と演出だけで見せる。・繰り返すことで生活のリズムも見えてくる。・そんな一地方都市の生活の断片をつなぐ前半。・札幌に住んでいる人なら、ああわかるわかると思える小さいエピソードがたくさん詰め込まれている。・それなら札幌に住んでいない人には伝わらないんじゃないかと言うのはだいぶん野暮で、そういうツッコミには「札幌に住んでいなくても、札幌に住んでいるような感覚を共有できるところがいい」と返せる。・当たり前の話だけど、人生は一回しかないので、自分が住んでいるところ以外には住むことが...劇団fireworks『≒生活。』

  • 「『池袋ポップアップ劇場 season2』Vol.11」

    『池袋ポップアップ劇場season2』Vol.112024/1/29・4団体の20分程度の短編演劇4作品を上演。シンクロ少女『レディ・オブ・イーストタウン』・余命幾ばくもない男が、同郷というだけでほぼ他人の元オリンピック選手に最期を看取ってもらおうとする話。・その奇妙な状況に至る経緯についてはほぼ説明がない。・元選手の女性は50歳を超えて、人生がうまくいっていない。身につまされる。友達できてうれしそう。・「タトゥーと人間性は関係ない!」。たしかに。・ああいう感じで元気なまま死ねるなら悪くなさそう。HYP39Div『万歳夫婦』・夫婦漫才の夫のほうが、妻への嫉妬を拗らせて離婚寸前になるが、妻が陰で夫に尽くしていたことを知って、漫才の本番中に和解を試みる話。・妻役の表情豊さんの声質、圧力がものすごく漫才師っぽく...「『池袋ポップアップ劇場season2』Vol.11」

  • ジェーン・スー『ひとまず上出来 (文春e-book)』

    ひとまず上出来(文春e-book)ジェーン・スー文藝春秋2024/1/28・ある中年女性の心と体に起こっていることを、力強く、かつ繊細に言葉にしたエッセイ集。・著者はジェーン・スーさん。よく出演されているラジオやポッドキャストを拝聴している。・特に通勤時と退勤時には大変お世話になっている。・「あの人の頭の中どうなってるの?」と言いたくなるような人が「まあ、こんな感じですわ」みたいなノリで頭をカパッと開けて見せてくれたような内容。・初期の本に比べてそこまでフックが効いた内容ではないんだけど、読み味が軽くて、次の用事があるまで延々と読んでいられる。・勝手に著者に対して親しみのようなものを感じているせいもあるけど、それにしても文章うまく、あこがれる。・書き出しが一番好きなのは、《あれ、歪んでいませんか?》の回。...ジェーン・スー『ひとまず上出来(文春e-book)』

  • MAM 『初恋と不倫2024』(不帰の初恋、海老名SA)

    2024/1/27・ある男女が、お互いを意識し始めた中学生のころから、大人になってある事件が起きるまでの間に交わされた手紙やメールを読み上げていく話。・小林エレキくんと吉田諒希さんの回。・単純な二人芝居とも朗読劇とも少し違う往復書簡形式。・一対の椅子、コップと水、加湿器。奥中央にお花。シンプルできれい。・本を持つので演者はセリフを覚えなくてもいい。それがラクなのかと言われると、全くそんなことはないということが始まるとすぐにわかる。・舞台上に動きがなく、声に集中せざるを得ない状況だからなのか、場の空気が張りつめている。・そこまで重い話ではないし、戯曲で読んだときにはユーモアを感じたやりとりも深刻な感じがする。・上演中、客席かどこかでビニールか何かがかちゃかちゃ鳴った程度の音も気になるくらい。・あくまで往復書...MAM『初恋と不倫2024』(不帰の初恋、海老名SA)

  • ディーン・フライシャー・キャンプ監督『マルセル 靴をはいた小さな貝』(2023年)

    2024/1/26・ある映像作家が、ドキュメンタリー映画を作るため、巻貝のような不思議な生物マルセルと祖母のコニーの生活を撮影し続ける話。・実写とストップモーションアニメの組み合わせ。・本作の監督が、そのまま映像作家役を演じている。・マルセルは、ある事件で離れ離れになってしまったコミュニティとの再会を望んでいる。・マルセルの見た目。巻貝に足がついている。リアルめの目玉が一つ。たぶん軟体動物。実際に見るとなぜかかわいい。不思議。・最初に字幕で見る。あまりにも話が頭に入ってこなかったので吹き替えで見返したら面白かった。・こちらの体調の問題か、初見と二回目の違いなのか、話のテンポや字幕の問題かもしれない。・ただ、字幕版はマルセルのかわいらしい声色が少しあざとく感じてしまった。・吹替は良くも悪くもフィクション感が...ディーン・フライシャー・キャンプ監督『マルセル靴をはいた小さな貝』(2023年)

  • 坂元裕二『初恋と不倫』

    往復書簡初恋と不倫坂元裕二リトル・モア2024/1/25公演を見に行くにあたって、各回見比べたら面白いかな、それなら戯曲先に読んどこうかなと本を購入。結局、ほとんど時間あわなかった。土日の早い時間はムリ。坂元裕二さんは会話が上手いとよく言われる。情報を出し過ぎず、興味を引く飛躍を使って受け手の集中力を保つ。読んでいて退屈になることがない。往復書簡という、ややトリッキーな形式でも間延びしない。映像作品だったら、決定的なところは見せ場として撮影しなければいけないんだけど、この形式だと結構大胆に省略できる。初恋のほうの女の子の手が気になるけど、決定的なところは言葉にしていない。どちらも内容は面白くて、あっという間に読み終わるんだけど、初恋はちゃんと初恋のことを考えさせられる内容だったのに対して、不倫のほうはこれ...坂元裕二『初恋と不倫』

  • 高橋ユキ『つけびの村』

    つけびの村~山口連続殺人放火事件を追う~(小学館文庫)高橋ユキ小学館2024/1/23フリーライターの高橋ユキさんが山口県で起きた連続殺人放火事件を調査した本。山口県の山奥、8世帯12人が住んでいる集落で5人が殺され、家を放火されている。犯人はすでに逮捕されていて、本書が書かれている間は裁判中。犯行声明としか思えない貼り紙の真相、もうひとつの放火事件、犯人の妄想障害。事件も気になるが筆者も気になる。事件が発生した限界集落には縁もゆかりもないヨソ者がやってきて、事件のことを根掘り葉掘りで聞いて回るところから始まる。当たり前だけど、住人から歓迎されるわけがないし、本になるまでにも何年もかかっている。すぐにはお金にならない。それどころか、赤字なのでは。事件の真相というゴールには、いくら時間をかけてもたどり着けな...高橋ユキ『つけびの村』

  • ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』(1987年)

    2024/1/19・フランスから亡命してきたバベットが、宝くじの当選をきっかけに、自身の料理したい欲と、たぶん自分を受け入れてくれた老姉妹への感謝の気持ちを発露させる話。・最初に年老いた姉妹の慈善活動で始まる。牧師だった父は亡くなっているが、姉妹は善行を続ける。・姉妹それぞれの若いころに経験した、出会いと別れ。・前知識がないまま同じようなことが2回あったので、竹取物語みたいな話かと思った。・のちに将軍となる士官ローレンスと、落ち目のオペラ歌手パパス。どちらも残念な男だったけど、一線は超えない慎ましさもあって嫌いになれない。・あの干し魚は、鳥に狙われたりしないんだろうか。・宗教、貧しい、辺境の地、二人でひとつみたいな老姉妹、出自が謎のフランス人召使いと、不安な組み合わせ。・そこでバベットの宝くじ当選というま...ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』(1987年)

  • 「UNWIND HOTEL&BAR 札幌」

    UNWINDHOTEL&BAR札幌公式HP2024/1/16・いつの間にかソロ活という便利な言葉ができていたので、ライフスタイルホテルに宿泊体験してみる。・ライフスタイルホテルとは、宿泊以外の付加価値を持つようなホテルらしい。言葉と意味あってるのかな。・「UNWINDHOTEL&BAR札幌」は、夕方にワイン飲み放題の時間帯がある。・フロントで鍵をもらって最初のドアを開けると、左手にトイレのドアがある。正面は行き止まりで、右手に風呂のドアがある。・しばらく悩んだ後、正面の壁が引き戸になっていることに気づく。デザインの罠。・引き戸をスライドさせると、まず巨大なキングベッドが目に飛び込んでくる。左手側の壁に100インチのスクリーン。右手側にはL字型の皮(風?)のソファー。・バルミューダの湯沸かしケトルとトースタ...「UNWINDHOTEL&BAR札幌」

  • 舛成孝二監督『宇宙ショーへようこそ』(2010年)

    2024/1/16・ケンカ中の小学生の姉妹とその友人たちが、助けた犬型宇宙人に連れられて宇宙旅行を楽しむうちに、巨大な宇宙ショーの裏にある陰謀に巻き込まれてしまう話。・書いてみると、ちょっと浦島太郎っぽい。・小学生女子の部屋に鉄アレイが見えているシーンは、さりげない人物紹介になっていて好き。・自転車の二人乗り、急な下り坂、T字路、石垣で左右からくる自動車が見えにくいというシチュエーションが怖い。ちゃんと速度落とせ。・子供たちが普通を逸脱していないところが好き。・一番年長と思われるキヨシは実際しっかりしているし、大人にも頼りにされている。いいやつなんだけど、少しだけ背伸びをしている感じが味わいになっている。・「働く」という判断がすぐ出てくるのはすごい。・もう一人の男子、コウジは宇宙が大好き。声変わりもしてい...舛成孝二監督『宇宙ショーへようこそ』(2010年)

  • 竹生企画『火星の二人』

    2024/1/15ジェットコースターの事故で生き残った男の家に、もう一人の生き残りの男が押し掛けてきて、庭に住み着いてしまう話。装置がかっこいい。比較的裕福な家庭の一軒家で、あえて段差を設けて変化をつけている。庭とテントの組合せも楽しい。演技スペースが広いこともあってか、演者さんの移動がすごくパキパキしている。突然の見知らぬ訪問者なのに、当事者の男以外の家族は積極的に受け入れようとする。勝手に家に住み着こうとする赤の他人より、死にそうな目に遭った父親がないがしろにされていて気の毒。信用のない父親表現とは言えるけど、他人を家に引き留める理由にはならないような。怒っている人の怒り加減とか、訪問者が敷地内に住み着こうとするのは双方リスクが高すぎるとか、全体的に出ハケの動機が飲み込みにくかったりで、登場人物の行動...竹生企画『火星の二人』

  • 湯浅政明監督『犬王』(2021年)

    2024/1/15・平家の歴史を唄う琵琶奏者と、有力な猿楽の家に生まれた異形の者が、当時としては斬新すぎる音楽パフォーマンスを披露して人気を得る話。・湯浅監督の作品は『マインド・ゲーム』を見ていた。・話の構造や展開よりも映像表現に特徴のあるイメージ。・本作も映像表現が際立っている。特に水の表現と印象画風の抽象表現、犬王序盤のうねうねした動き。「特に」と書いたのに、全然絞れない。・モネが白内障を患っていたという話を思い出したけど、関係あるのかな。・序盤、室町時代の市井の人たちの生活描写も細かくて楽しい。ほぼ全員、歯並びが悪い。・船が沈没した沼に子供が潜って金目の物を持ち出そうとするのもそれっぽい。・その代わり、音楽パフォーマンスのパートになると急に現代的になる。・どう考えても琵琶と打楽器であんな音にはならな...湯浅政明監督『犬王』(2021年)

  • 岡山学芸館高等学校『骨を蒔く』

    2023上演⑦岡山学芸館高等学校「骨を蒔く」2024/1/13葬儀に集まった親戚たちが集まって、ゲームや葬式の再現をしながら、待ち時間を過ごす話。で、いいのかな。実際劇場で観たら違うんだろうけど、他動画と同様に音声が聞き取りにくいのと、遠目からの見た目に差がないので登場人物の関係性がほぼわからず。細かい話の流れを追うのは早々に諦める。最初はウノで始まって、お葬式の再現が始まる。題材選択が渋すぎる。そしてお葬式の再現具合があまりにも具体的。とても調べているし、マイムも的確。時々出てくる素っ頓狂な動きは、ほんとに度が過ぎていている。前後の関係性は怪しいものの、思いっきり腕の振れている演技は好き。中盤から後半にかけて客席に笑いが起きるのは、序盤の会話部分をしっかりつないだ証。目立たないけど、奥の屏風かふすま風の...岡山学芸館高等学校『骨を蒔く』

  • ティム・バートン監督『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)

    2024/1/12・貧乏な家の少年チャーリーが、不思議なチョコレート工場の招待券を手に入れて、工場長のワンカに工場内を案内される話。・大まかな話の展開は『夢のチョコレート工場』と同じ。・さすがに見た目が新しい。チャーリーの家が傾いている。貧乏表現でも遠目だとおしゃれに見える。・展開は同じでもいろいろ違うところはある。・一番重要そうな違いはワンカの人柄。・ジョニーデップが演じているだけあって、人見知りで繊細そうな性格になっている。・あと、心の傷を抱えている。役者にはあってるけど、「~のはじまり」とはつながっていないような。・最後のひねり方も好きというか、「夢の~」の時よりも腑に落ちる感じ。本作が初見なら見流したくらい自然。・あと、今だったらヤングケアラーとして従事する、かわいそうな子供的な方向で別の描き方が...ティム・バートン監督『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)

  • メル・スチュアート監督『夢のチョコレート工場』(1971年)

    2024/1/10・少年チャーリーが、世界的に人気のチョコレート工場に招待され、工場長のワンカに認められる話。・工場の招待券はたったの五枚。・ワンカのチョコレートは非常に人気があり、謎が多いため、世界中で招待券の争奪戦が発生する。・前半半分は、チャーリーが招待券を獲得して工場に招待されるところまで。・残り招待券の枚数が、カウントダウンの役割も担っていて、見ている側の緊張感を保つのに役立っている。・最初の四枚は、どう見ても性格に難のある子供たちが親の力を利用して獲得する。・厳密には違うかもしれないけど、社長権限で買い占めたチョコレートを従業員に探させる様子がひどい。・たぶんチョコレート本体は廃棄されている。そういう既視感あることをすごい規模でやっていて、見ているだけで罪悪感に苛まれる。・1971年の映画なの...メル・スチュアート監督『夢のチョコレート工場』(1971年)

  • ShowCaseBar「TOY+」〜その1 まだ支度中ですよ〜

    ShowCaseBar「TOY+」〜その1まだ支度中ですよ〜2024/1/9開業準備中のカフェで、たまたまやってきたお客さんを相手に、三人の店員がダンスを披露する話。演劇作品というより、演劇やダンスをする人たちを題材にした映像作品になっている。最初にダンスに対して厳しいダメ出しが行われている様子が映る。最近、演劇の現実の現場でパワハラが話題になることが多いので、ちょっとハラハラする。記号としての鬼演出みたいな表現なんだけど、こういう部分から直していかなきゃいかんのかなと余計なことを考えてしまう。ダンスは、いろんなところで活躍されている方々のようなので、素人が見てもかっこいい以外の感想がむずかしい。二人組が前後の立ち位置で合わせて踊るところは新鮮に感じた。ダンスとダンスの間の極端な掛け合いはにどういう気持ち...ShowCaseBar「TOY+」〜その1まだ支度中ですよ〜

  • 湊寛監督『新根室プロレス物語』

    2024/1/7・プロレスのインディー団体、新根室プロレスの休止と再開を追ったドキュメンタリー。・他に見なきゃいけない映画は結構あるような気もするけど、SNSの告知を見てすぐチケットを購入。・最初に創始者であるサムソン宮本選手と所属選手の紹介。・リングネームのほとんどが何かのパロディ。不穏さと語感の良さで「MCマーシー」と「ロス三浦」が好き。・所属選手のほとんどがプロレスとは無関係の仕事をしている。・「メガネのプリンス」というキャッチフレーズのTOMOYA選手は建築業。メガネ屋ですらないのか。・団体のモットーは「無理しない、ケガしない、明日も仕事だ」。興行も必ずこの言葉で締めくくられる。・作中、何度も何度も同じフレーズが出てくる。・憧れではなく共感。華やかなメジャー団体とは異なる、インディーらしい地に足の...湊寛監督『新根室プロレス物語』

  • ポール・キング監督『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

    2024/1/3・チョコレート職人で魔法使いのウォンカが、街の実力者であるチョコレート業者からの妨害を乗り越えて、自身のチョコレート工場を建てる話。吹き替え。・同原作の別の映画作品は未見。先に見てからの方がいいタイプの作品だとは思うけど、そんなこと言ってたらどんどん先延ばしになってしまう。・しっかりティモシー・シャラメの演技を見るのは初めて。非現実感を違和感なく体現している。・リアリティラインが低く、話の自由度が高すぎて、作り手のセンスに身を任せるしかない。・ウォンカとヌードルがたくさんの風船を持って屋根で踊っているシーンが白眉。・一芸のある弱者が力を合わせて苦境を乗り切ろうとする話は好きだけど、自然にやるのは難しい。・芸人がまるで役に立っていないのも、バランス取りの一つなのかも。そりゃそういう人だってい...ポール・キング監督『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

  • 「サンピアザ水族館」

    2024/1/2・比較的行った記憶がはっきりしているスポットだけど(とはいえ20年くらい前)、珍しく仕事の休みとドニチカきっぷの使える日が重なったので久々に行ってみる。・たしか前はラッコがいたはず。今はいない。ブームが去ったのと飼育コストが高いらしい。寂しい。・それでも電気ウナギの展示やドクターフイッシュの展示で懐かしい気持ちになった。・お客さんでかなり賑わっていた。子連れが多い。・ゴマフアザラシ、ケープペンギン、コツメカワウソの餌やりタイムを見る。・時間帯のせいなのか、どの個体も活発に動き回っていてちょっと展示スペースが窮屈そうに見えた。・ただ、明らかにゴマフアザラシが飼育員さんになついている。くるくる回る、握手をする、芸を披露する、目薬もそれほど苦にしない。狭いながらもそんなにストレスはないのかもしれ...「サンピアザ水族館」

  • 八鍬新之介監督『窓ぎわのトットちゃん』

    2024/1/2・徐々に戦争一色に染まっていく世の中を背景に、後の黒柳徹子である少女トットちゃんがトモエ学園に転入し疎開先に向かうまでの話。・見ている人の評判が軒並み良い。特に『この世界の片隅で』と比較している人が多いらしい。・原作の『窓ぎわのトットちゃん』はたぶん読んだことがない。読んだとしても内容は忘れている。・体調の問題なのかもしれないけど、序盤は話に入っていけず。・つやつやした顔つきと、子供らしさを強調したような喋り方が、自分には苦手だった。・ただ、黒柳徹子なら実際に小さいころからあんな話し方だったような気がしないでもない。・トモエ学園の学校としての位置づけはよくわからないけど、少人数で通常の学校にはうまくなじめない生徒が集まっている感じ。・wikiによると、日本で初めてリトミック教育を実践的に取...八鍬新之介監督『窓ぎわのトットちゃん』

  • パーシー・アドロン監督『バグダッドカフェ』

    2023/12/31・夫と喧嘩別れし、砂漠の真ん中で孤立してしまった女性が、さびれたモーテルに滞在しているうちに、自身と関係者たちの心が改善していく話。・最初はこの大柄なドイツ人女性ジャスミンがまさか重要人物だと思ってなくて、しばらくどこに向かっている話なのかと戸惑う。・いくら回復していく話だからと言って、物語冒頭の人々の荒みっぷりがひどい。・それでいて何か既視感がある。普遍性のあるダメな人たちなんだと思う。・特にモーテルのオーナーであるブレンダは、身近な人を片っ端から攻撃していく。そして返り血を浴びている。・その娘のナメ腐った態度。毒のある生物に唯一の耐性を持つ生物みたいに見える。カクレクマノミ。・ブレンダが掃除している様子が不思議とかわいい。・人との関係性で荒み切ったブレンダと、孤独に傷ついているジャ...パーシー・アドロン監督『バグダッドカフェ』

  • ジョージ・ミラー監督『ハッピー フィート2 踊るペンギンレスキュー隊』(2011年)

    2023/12/29・巨大な氷山が衝突し隔離状態になったコウテイペンギンのコロニーを、前作の主人公マンブルと息子エリックが中心になって解放する話。・異なる立場(というか種族)が一致団結して、大きなトラブルを解決するという構造。・わりとオーソドックスで手堅い様式だと思うけど、どうしてこうなったと思うくらいバランスがよくない。・たぶん一番の原因はオキアミ。・サイズ的に話に絡みようがないし、実際、作り手も持て余していたように見える。・頻繁に出てくるわりに、登場時のエフェクトはワンパターンで、彼らの会話の内容も変わり映えしない。・あそこまでオキアミに人格を持たせるなら、エサである魚類にもちゃんと意思がないとフェアじゃない。・例えば、オキアミの目線で、「どんな種族もみんな仲良く」というペンギンたちの欺瞞を指摘するよ...ジョージ・ミラー監督『ハッピーフィート2踊るペンギンレスキュー隊』(2011年)

  • かみかわ企画『たいせいの舞台 カナダのおはなし 第二部』

    かみかわ企画『たいせいの舞台カナダのおはなし第二部』2023/12/29引き続き、カナダでの体験談。一部二部ともに短い。どうして分けたのかな。野球のバットの持ち方を教えてあげただけで、親に通報された話。状況次第だけど、気の毒。コロナ禍で一年の留学のうち5か月ステイホーム、3か月誰とも話さなかった。ただ、誰とも話せない時期が一番よかったという話。慣れない環境に適用できなくて、留学先で引きこもりになってしまう話はよく聞くけど、コロナ禍なだけで元気はあるので、自分と向き合う時間に使えたのかな。それなら、日本にいてもできたんじゃないかという気もするけど、そんな簡単な話でもない。その場所、その時期じゃないと思いつかないこともある。大きな劇場で無観客、照明と撮影スタッフを集めて、即興要素の強そうな一人語りをする。衝動...かみかわ企画『たいせいの舞台カナダのおはなし第二部』

  • 万博設計『YO RU TO RO TO RO』

    2023/12/26・解体中の巨大モニュメントの工事現場に紛れ込んだ、いろいろな立場の関係者たちが、語らい、惑う話。・とりあえず今準備中の大阪万博を連想してしまうけど、あまり関連はなさそう。再演だし、高さ的に太陽の塔がモチーフだろうし。・一般的ではない感覚かもしれないけど、個人的に工事中の巨大な作りかけの建物が好き。・むき出しの柱や、精密に組み上げられた足場、赤白の巨大なクレーンなどを見ると無条件にわくわくする。・夜中にこっそり入ってみたい、上ってみたい気持ちもわかるので、本作の場面設定はとても魅力的だった。・その工事現場まではわかるけど、架空のキャラクターを模した巨大モニュメントを解体している工事なんて、よくこんな場面設定を思いつくものだ。・着ぐるみの登場人物を出すことで、舞台上では見せられない、巨大モ...万博設計『YORUTOROTORO』

  • 万博設計『鮟鱇婦人』

    2023/12/25病弱な母親を笑顔にするために、落語家になって死神を演じ続ける女の半生を描いた話。86分の一人芝居。長尺。視聴環境の加減でだいぶん聞き逃し、見落としがある感じになってしまった。劇中に落語パートあり。ほぼ一人の登場人物が空気人間と演技する形式だが、後半一人二役以上を演じるパートもある。母親のためとはいえ、芸事に対してどこまで人生をささげられるかという話でもあって、少し前に見たオパンポン創造社の『幸演会』のテーマと少し重なる。作中人物に脚本家や演者を重ねる見方はありきたりだけど、そうとしか言いようのない仕掛け。表現を続けていると、自分の望まぬ形でも、自身の作品が誰かの生きる指標になることもある。死後評価される画家も珍しくないくらいだから、作中の彼女はそれでも幸運なほうだったのかもしれない。も...万博設計『鮟鱇婦人』

  • かみかわ企画『たいせいの舞台 カナダのおはなし 第一部』

    2023/12/25コロナ禍にカナダに行ってきて思ったことを声高に語る話。13分。短い。舞台俳優らしい会場負けしない声量と語り口。内容的には若者が外国に行って思うようにいかなかった話なので、そんなに珍しい題材ではない。カナダでもサドルだけ盗まれることもあるんだというのが発見だった。短い映像なんだけど、ちょこちょこ編集が入っている。視点やモノクロの転換は違和感ないけど、すこしだけ時間が飛ぶような編集はライブ感(≠ライブ)が損なわれる感じがして、個人的にはノイズになってしまった。一人で大きな劇場を借りて、照明や映像スタッフをつけて、しかも無観客でやるようなことなのかどうかはわからないけど、だからこそ伝えられるものがあるのかもしれない。コロナ禍だからこそできたことでもある。なので、企画の立ち上げから劇場やスタッ...かみかわ企画『たいせいの舞台カナダのおはなし第一部』

  • クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン監督『ウィッシュ』

    2023/12/22・魔法使いの治める国に住む少女アーシャが、王に捕らえられた「人々の願いの力」を解放する話。・国民は成人すると国王に自らの願いを差し出す。国王は毎月一人の願いを選んで大衆の前で叶える。・この魔法使いの国王が、欧米のリアリティーショーでよく見かける圧の強いタイプの審査員みたい。・一見、いいことをしているようにも見えるけど、願いを差し出した国民は、その願いを忘れてしまうから、国を支配するための仕組みでもある。・外から見ているとこんな危なっかしい仕組みもないんだけど、内側から見るとわかりにくい。・字幕版で観た。小さな島国の一少女の歌がとにかく上手い。声質から違う。・ただの状況紹介なのに、最初のロサス王国を紹介する歌からすごい物語が始まった感じがする。・国王の正体を知って、追い込まれたアーシャが...クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン監督『ウィッシュ』

  • OrgofA『い防塵の庭』他

    2023/12/20・劇作家の男が、ある秘密を抱えながら、拘置所で死刑囚の女との面会と取材を重ねる話。・配信含めて三回目の観劇。前は2021年と2022年。・前回見たときよりも、最初の入り方が軽い感じ。・今回は仙台、松本公演の報告会を兼ねていたり、会場が専用劇場ではないのでそういうバランスになったと思うけど、題材が重めなぶん今回の入り方が好みだったりする。・舞台装置は従来通り。面会用のアクリル板をはさみ二人が会話する。最小限でたしかにツアー向き。・今回はそんな舞台を囲むように客席が作られている。・自分は比較的二人の顔が見えやすい中央よりの席。窓際のせいか意外なほど腰が冷える。・演出効果は照明くらいで、とにかく演技勝負。・前回から期間が空いているものの、話は大体わかるし、距離も近いので、演技に集中して観るこ...OrgofA『い防塵の庭』他

  • ジョージ・ミラー監督『ハッピーフィート』(2006年)

    2023/12/18・コウテイペンギンのマンブルが、深刻な魚不足の責任を押し付けられてコロニーから追放されるが、追放先で原因と解決策を見つけて帰還する話。・たしかに同じ監督の『マッドマックス怒りのデス・ロード』っぽいと言われるとそんな気もする。少なくとも構成は似ている。・主人公のマンブルだけ成長が遅いのか、羽の生え替りが中途半端でヒナ感を残している。・ペンギン間の描き分けに苦労している感じはする。・若干の違いは感じるものの、見た目だけでは主人公以外のコウテイペンギンの区別がつかない。・現実的にコウテイとアデリーとイワトビが野生下で同じエリアに集まることはあるんだろうか。・歌が下手だと軽んじられるのはともかく、ダンスをすると怒られるという社会が残念すぎる。・手話の歴史の本に書いてあった、身振りは品がないので...ジョージ・ミラー監督『ハッピーフィート』(2006年)

  • サン=テグジュペリ『星の王子さま』

    2023/12/14砂漠に不時着した飛行士が、不思議な少年と出会っていくつかの不思議な星の話を聞く話。話は知っているし、読んでもいると思うけど、ちゃんと読んでたか自信なかったので、内藤濯訳と浅岡夢二訳で読んでみる。有名な「大切なものは目には見えない」という言葉。意外と何度も出てくる。大切なことは繰り返し語るべし。もうだいぶん大人なので、子供には大切なものが見えていて、大人はそれを失っているという話には飽き飽きとしているものの、ひとつの希望で見え方が引っ繰り返るようなエピソードには色々応用できそう。ただのバラと特別なバラとの違い。苦しい状況でもうまく補助線を引くと、感じ方を変えられる。子供と人形の掛け合いが好き。取り上げると泣く。それが幸福なんだという。ほどよい飛躍もある不思議な話なので、折に触れて読み返し...サン=テグジュペリ『星の王子さま』

  • 宮崎県立宮崎南高等学校『誰かのための、 芋けんぴ』

    宮崎県立宮崎南高等学校『誰かのための、芋けんぴ』(OPENREC)2023/12/13学校をサボっている高校生が、偶然出会った仕事ひとやすみ中の父親と、学校の先生と話しているうちに少しだけ前向きな気持ちになる話。本作もセリフがだいぶん聞き取れないので、聞き取れたところをもとに頭の中で補完しつつ見る。2023年は全部こんな感じなのか。タイトルが斬新。バックの大空+少しの雲。幕が上がってセリフのない時間がとても長く続く。とにかく他とは違うことをしてやろうという強い意思を感じる。ツカミ部分が強い。さんざん溜めて、手堅い。構成はシンプルで、笑いの構図を意識した組み立て方が手馴れている。子供に弱音をはく大人の頼りなさが、見ていてつらい。そんなに弱々しくしないと成立しないような話でもないような気はする。何きっかけで彼...宮崎県立宮崎南高等学校『誰かのための、芋けんぴ』

  • 川口潤監督『狂猿』(2021年)

    2023/12/11・プロレスラーでデスマッチファイターの葛西純が、2019年の長期欠場からコロナ自粛明けまでの生活と戦いを映したドキュメンタリー。・個人的にデスマッチは大日本の試合を何回か見ているくらい。プロレス観戦自体だいぶんご無沙汰。・そんな自分でも、クレイジーモンキー葛西純のキャラクターは強烈に印象に残っている。・作中で藤田ミノル選手が言うには、デスマッチの「芸術点が高い」。まさに。・最初は小柄ながらもガタイのいい若手だった。キャリアを重ねていくにつれ、髪型、コンタクト、ゴーグル、時には尻尾、極めつけが文字通り傷だらけの背中。・こんなに見た目の情報量が多い人間はいない。・プロレスは勝てばいいというものではないし、デスマッチは危険であればいいというものでもない。・危険なことをやって、実際に血を流して...川口潤監督『狂猿』(2021年)

  • 大阪府立岸和田高等学校『オドリ ・ バリデ ・ ジュー』

    大阪府立岸和田高等学校『オドリ・バリデ・ジュー』(OPENREC)2023/12/10演劇部の高校生たちが、オーディションに参加する地下アイドルを題材にした演劇作品を作ろうとするがなかなかできない話。一割くらい声が聞き取れない。個人差は多少あるものの、ほぼ録音環境の問題と思われる。オーディション司会者がよりうるさくて聞き取りにくいので、パワハラ感が増している。理解できたところを何となく頭の中でつなげて話を理解しようとする。脚本ができなくてギスギスしているあたりはこういう話の定番だけど、「手伝えることがあったら~」という言葉の欺瞞性を指摘しているのは少ないような気がする。とても内省的な話で、どうして演劇部を続けているのか、どうして演劇をやっているのか、巷の多くの演劇部員が悩んでいるようなことを真正面から受け...大阪府立岸和田高等学校『オドリ・バリデ・ジュー』

  • 野村有志監督『さようなら』(2022年)

    映画『さようなら』予告編その12023/12/8・淡路島の小さな工場で、現状をそこそこ受け入れている社員柴田が、現状に満足できない社員たちによる犯罪計画に振り回される話。・見ていると、昔、自分が出稼ぎで工場勤務していたころを思い出してしまう。・コミュニケーション能力の低いおじさんたちが集まっていて、それゆえにギスギスしていた。・あの狭い社会で関係性が固定しているのはつらい。・そんななか、多少不愉快な思いをしていても、なんとなく受け流せる柴田のような人間も実際いる。生々しい。・不快な職場環境描写とは裏腹に、演劇としての会話劇の面白さをうまいこと映像に移植している。・会話の良さを軸に、見ている人間の意識を先取りしていくようなシーンの繰り返しも心地いい。・加えて映像なので各々の表情がくっきり見える。いぶかしげな...野村有志監督『さようなら』(2022年)

  • 「旭山動物園」

    2023/12/4・行動展示で全国的に注目されて以降、いまだに行ったことのない北海道屈指の有名観光地についに行く。・開園時間にあわせてバスに乗る。平日にも関わらず満席。途中バス停にいた人の乗車を断るくらい、立錐の余地なし。外国の人が多い。・一通り園内を見てまわったものの、滞在時間が決まっていたので細かい解説まで読む余裕がない。2時間半は短い。・主にペンギン館、レッサーパンダ、爬虫類館の三本立て。・ペンギンはキング、ジェンツー、イワトビ、フンボルトの4種類。数が多く、敷地も広い。・うっすら雪の積もった岩肌をヨチヨチ歩く様子と、最低限の動きで縦横無尽に泳ぎ回る水中のギャップ。・もともとペンギンたちは集団で歩く習性があること、人をあまり怖がらないとの解説があり、ペンギンウォークが単なる観光客向けの見世物ではない...「旭山動物園」

  • アリエル・ドウフマン、飯島みどり訳『死と乙女』

    2023/12/5・弦巻楽団の公演を見て、解釈で気になったところがあったので、別の訳者の文庫本を購入する。・解説が充実している。戯曲より長い。・あらためて読み直すと、やはり最後のほうのパウリナ(ポーリャ)の告発が鬼気せまっている。・日常から地獄への移行があまりにもシームレスで、その瞬間、彼女が恐怖を感じることすらない。・おそらく、いろんな社会においても平和を喪失する瞬間ってこんな感じなんだろうと思う。・解説中の「もしも向こうが忘却を要求してくるとするならいったいあなたは許しを代価として支払うことができようか?」は、作中の夫婦関係もそうだし、ほかのいろんな場面で使えそう。許しの対価という考え方。・気になっていたのは、ロベルトの顛末。・ロベルトを演じた井上嵩之君くんの演技に引きずられたところもあったけど、演劇...アリエル・ドウフマン、飯島みどり訳『死と乙女』

  • 弦巻楽団『死と乙女』

    2023/12/3・拷問による心の傷が癒えない女性ポーリナが、かつて自分を拷問した医師ロベルトに、彼女なりの方法で復讐する話。・事実をもとにしたフィクション。三人芝居。・彼女はその医師を拘束し、自白を迫る。・その間、彼女の夫ジェラルドを交えてひたすら激しく重苦しい口論が続く。・膨大なセリフ量をものすごいスピードで繰り出していく役者さんの負荷を考えると、ホントにもうおつかれさまですとしか言いようがない。・法的に裁けないとしても、ある人にとっては間違いのない真実だとわかることはある。・少し前の映画『それでもボクはやっていない』を思い出す。確信しているのは冤罪だから逆なんだけど。・観客として見ていると、彼女が狂っているのか、医師がとぼけているのかわからないバランスで進行する。・特に序盤、拘束して自白を迫るという...弦巻楽団『死と乙女』

  • 金子修介監督『ガメラ2 レギオン襲来』(轟音上映)

    2023/12/1・巨大怪獣ガメラと人間たちが宇宙から飛来してきた怪獣レギオンを撃退しようとする話。・TOHOシネマ、轟音上映初体験。せっかくなのでワイドコンフォートシートを選択。轟音効果は結構感じた。・最初の舞台は札幌市。すすきの。まさに今見ている映画館の建物(当時はロビンソン。懐かしい)が粉々にされていて楽しかった。・ここまで一地方都市にスポットを当ててじっくり描いている映画は多くないと思う。・たしかに「TOHOシネマズすすきの」でのこけら落とし的な上映にはふさわしい(ただ仙台の人は複雑かも)。・レギオンは札幌→仙台→東京と移動していく。だんだんスケールが大きくなっていように舞台を整えられていく。・前作では若干のチープさが客側の安心感につながると思ったけど、今回は身近な場所が舞台になって、臨場感強め。...金子修介監督『ガメラ2レギオン襲来』(轟音上映)

  • 金子修介監督『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)

    2023/11/29・ガメラが、守るべき人間に足を引っ張られながらも、空飛ぶ怪獣ギャオスを撃退する話。・もともと怪獣への興味はそんなにないものの、TOHOシネマすすきのでガメラ2の轟音上映があると聞いて予習してみる。・wikiによると、ガメラシリーズは大きく分けて、1965年~1980年の昭和版、今回観た作品を含む平成三部作、角川時代と三期にわかれているらしい。・平成ガメラと言っても、編集の仕方や登場人物の演技、舞台装置、その他もろもろ、ほどよいチープさを残した昭和風味濃いめの演出で、たぶんこのバランスが正解。・子供のころは建物が崩壊しても人が死んでもどんどんやれやれと楽しんでいたけど、大人になると無駄に共感してしまうので、このくらいのほうが見やすい。・たぶん、演技うまい人ばっかりだったり、無駄にCGでリ...金子修介監督『ガメラ大怪獣空中決戦』(1995年)

  • 『漫画 むかわ竜発掘記: 恐竜研究の最前線と未来がわかる』

    企画・原案:土屋健/監修:小林快次/マンガ:山本佳輝、サイドランチ漫画むかわ竜発掘記:恐竜研究の最前線と未来がわかる健,土屋誠文堂新光社2023/11/27カムイサウルス(通称むかわ竜)の化石がむかわ町穂別で発見され、掘り出されるまでのノンフィクション。現在、AOAOSAPPOROに展示しているカムイサウルスの全身復元骨格標本レプリカを見ながら読む。贅沢。すぐに血導弓(鼻骨の下の小さな骨)の下部が二股になっていないことも確認できる。まず、クビナガリュウは恐竜ではないという初歩的であろう話にビックリする。パニックになる心配しなきゃいけないほど、恐竜かそうでないかで価値が大きく変わるらしい。発掘にあたって町の予算をつけるまでの苦労話や、小林快次教授がチームを組んで発掘完了に至るまで、それぞれ人々の動きがおもし...『漫画むかわ竜発掘記:恐竜研究の最前線と未来がわかる』

  • 「ジョージ・ミラー:FILMMAKERS/名監督ドキュメンタリー<映画製作の舞台裏>」

    ジョージ・ミラー:FILMMAKERS/名監督ドキュメンタリー<映画製作の舞台裏>2023/11/24『マッドマックス怒りのデスロード』のドキュメンタリー映像。短めではあるが、メイキング本で話題にあがっていたようなことを映像でも見ることができる。並べられた絵コンテは圧巻で、先に見ておけば本の理解度も段違いだったと少し後悔する。ブロークンヒルの緑化話も誇張じゃなかった。たしかにこれじゃ無理だ。スタントのガイ・ノリスが色っぽい。既視感あるなと思って記憶をたどると、HBKショーン・マイケルズの感じに似ている。ナディア・タウンゼントがウォーボーイズに課したワークショップ風景。一瞬だけど、個人的なハイライトだった。半裸の屈強な男たちが「ちっちゃなクモさん」で大合唱している。狂信者の集まりということを表現するのに、こ...「ジョージ・ミラー:FILMMAKERS/名監督ドキュメンタリー<映画製作の舞台裏>」

  • カイル・ブキャナン『マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集 血と汗と鉄にまみれた完成までのデス・ロード』

    マッドマックス怒りのデス・ロード口述記録集血と汗と鉄にまみれた完成までのデス・ロードカイル・ブキャナン竹書房2023/11/24・映画『マッドマックス怒りのデス・ロード』の関係者インタビューを構成してまとめた本。・よくドキュメンタリー映像で、様々な関係者の証言を細かくつなげていく見せ方があるけど、本書もそんな感じで作られている。・まず撮影に入るまでが長い。製作会社が変わるくらいなら思いつく範囲だけど、砂漠が緑化して撮影できないとか、どんだけ不運なんだと思ってしまう。・ただ、読んでいると、予定が延長されればされるほど、明らかに作品の内容が濃くなっているのもわかる。・自分の分野に寄せて考えると、演劇の公演中止や延期を体験したことのある人には勇気が出る本だと思う。・いくらアクション映画だからって、一作品まるごと...カイル・ブキャナン『マッドマックス怒りのデス・ロード口述記録集血と汗と鉄にまみれた完成までのデス・ロード』

  • クリス・ヌーナン監督『ベイブ』(1995年)

    2023/11/24家畜として一生を終える予定だった子豚のベイブが、とある牧場に引き取られ、牧場犬ならぬ牧場豚になってコンテストで優勝する話。羊たちをコントロールするために必要なことは威圧や暴力ではなく、会話と共感であるという、北風と太陽のような教訓的な話。古典とは言いにくいけど、すでに30年近く前の作品。評価されているわりによくわからない展開が多い。成体の羊殺しの容疑が子豚にかけられるところ、泥棒犬が小豚に力負けしているところ、飼い主が踊ったら子豚の心の傷が癒えるところなど。会話と共感が大事なのはわかるけど、コンテストの競技性を考えると、合言葉を教えてもらうのはズルなんじゃないか、とかも。こういう動物どうし会話ができるという世界だと、牧羊犬コンテストの競技内容は全く変わってくると思う。家畜ではなく独立し...クリス・ヌーナン監督『ベイブ』(1995年)

  • オパンポン創造社『幸演会』

    2023/11/23・人生停滞気味の青年野村が、「なにがなくとも幸せになれる」と詠いながら裸踊りをするおじさんと出会い、その運営団体である幸演会に加わることで、濃密な人間関係にもまれながら成長していく話。・ゴミ袋や檻(おり)を思わせる台が不規則に置かれた舞台、床には主人公を囲うような円。舞台美術が初期の彼の心象風景をそのまま表している。・主人公のカラフルな衣装も目を引く。アフタートークで話題になっていたけど、様々な人がモザイク状に主人公の人格形成に影響を与えてきたことを思わせる。・最後には脱いでいたから、人とのかかわりは強みでもあるけど、脱却したいしがらみでもあったのかもしれない。・狭い演技スペースのなかを七人の登場人物が複雑に動き続ける。自然で無駄のない動きが美しかった。・スガさんみたいな人はほんと嫌い...オパンポン創造社『幸演会』

  • 星くずロンリネス「くずテレビ」

    2023/11/10・短編演劇4作品、映像作品2作品のオムニバス公演。・オープニングの映像が素敵。20人もの出演者を実在するテレビ番組のパロディ風に紹介する。遠藤洋平くんのどうでしょう風の紹介が好き。もっと売れてほしい。・『緑の神』は、離婚目前のお笑い芸人野上が初心を思い出して窮地を乗り切る話。・若手時と年配時の芸人野上が入れ替わって、老若横並びで進行するのに二人は同価値ではない。わりとシビア。・素晴らしい役者さんを集めて、結構ジャンクな食べ物で繋いでいるところがいい味わいになっている。・お笑い芸人が面白いギャグをするという、作り手にとっては相当難しいシーンで、監修にYes!アキトくんという一線級の芸人を起用しているところがさすが。・『ワイルドシングな恋』は、恋と仕事と家族と趣味との軋轢に苦しんだ末に自分...星くずロンリネス「くずテレビ」

  • 「AOAO SAPPORO」

    2023/11/10・2023年7月にできたばかりの都市型水族館。・よなよなパスという夜間限定のチケットを購入しているので、実はもう4回入っている。・キタイワトビペンギンと、ペンギン最小の種であるフェアリーペンギンがいる。・小樽や登別にいなかった種類なので、ペンギン好きのなかで差別化はできていると思う。・夜に餌やりタイムなどはないので、基本ただ見ているだけ。あと、照明はかなり抑えめ。・キタイワトビペンギンは、ぽってりとしたフォルムがかわいいものの、飾り羽が立派でタラコ唇(嘴)と、わりといかつい顔をしている。・フェアリー(コガタ)ペンギンは臆病で初日は姿を見ることはできなかった。4日目にしてはじめて餌を食べているところを目撃した。前傾気味の歩き方がかわいい。・それぞれ個体識別用のバンドがあるんだけど、暗いし...「AOAOSAPPORO」

  • 演劇家族スイートホーム『いつか、いつだよ』

    2023/11/4・かつて熱血高校生だった社会人が、死神との取引の結果、一高校生としてコロナ自粛期の高校の放送部に送り込まれる話。・告知用の感想文を書いた関係でご招待いただく。・それこそ高校演劇では、すでにコロナ自粛期を扱った名作は結構あって、若いとは言え高校生ならぬ大人たちが、コロナ禍の高校生たちの話をどう仕上がるのか、気にしつつ見る。・実際、高校生がコロナでいろいろ台無しになって辛いというだけの話なら、巧拙の違い以上の意味はないので、むずかしい題材だったと思う。・社会人として一定の知識や常識を身に着けてから、高校生に戻って学生生活をやり直せたら楽しそうではある。誰だって似たようなことを考えたことはあるはず。・本作では、そういう異世界転生の亜種みたいなことはほとんどなく、主人公は高校生のサポートに徹する...演劇家族スイートホーム『いつか、いつだよ』

  • 「おたる水族館」など

    2023/11/2・前々から気になっていたペンギンショーが目当て。・先月ののぼりべつクマ牧場同様、行ったことはあるはずだが行った記憶が全くない。・少しでも観光らしいことがしたくて三角市場で食事。・アザラシショー→ペンギンショー→トドショー→セイウチショー→イルカショーの順番で見て回る。・鰭脚類がだんだん巨大化していく。・海を区切っただけの海獣公園という設備自体の迫力。波が高めだったのでなおさら荒々しい。・セイウチの投げキッス→恥ずかしいポーズ→じゃあねのポーズという構成が完ぺきだった。・トドやセイウチは、飼育員よりはるかに大きい。・愛嬌のある動きはしているものの、別に意味を理解してやっているわけじゃないし、ちょっとした気まぐれでプールに引っ張り込まれたらおしまいだと思うが、怖くないんだろうか。・クマ牧場の...「おたる水族館」など

  • 柿喰う客『八百長デスマッチ』

    2023/10/27言動が完全にシンクロしている小学生男子二人が、ケンカに恋に張り合う話。二人の声が完全に一致して聞こえてくる。説明するだけなら簡単だが、その完全一致を実行できる演者がすごい。すごすぎて怖い。信頼関係あってこそとは言え、地獄のようなことを求めてくる脚本だった。小学生の幼い友情とか、二人で一つになったものの欠落感とか、いろいろポイントになりそうなところはあったけど、なかなか別のことに意識が向かない。まさかずっとこのまま30分やるのかと心配していると、即興(のように見える)の掛け合いが始まって安心する。タイトル的に、こういう何が起きるのかわからない即興風のパートがメインになるんだろうけど、それまでのシンクロ部分の緊張感が強すぎて、見ていると逆に息抜き感覚になる不思議な作品だった。※柿喰う客チャ...柿喰う客『八百長デスマッチ』

  • 北大総合博物館 北大ヒグマ研究グループ「金曜ナイトミュージアム あなたの知らないヒグマのヒミツ」

    2023/10/20北大ヒグマ研究会による、フィールドワークをもとにしたヒグマの紹介。登別のクマ牧場に行ったばかりだったので、知識をより深めるべく参加。基本参加無料で、併設するカフェでワンドリンク注文が条件。ハスカップジュースを飲みながら聴講。北大ヒグマ研究会は50年もの歴史があり、学部生だけでも20人くらいいるとのこと。会場にも青い会員シャツを着たメンバーがたくさんいる。見るからに一大勢力。ヒグマの秘密をいくつか聞いて、質問コーナー。最近、ヒグマが札幌の街中に降りてきているのは、なんとなく開発による環境悪化が原因だと思っていたけど、もっと単純に個体数の増加が大きいではないかという話。この手の発表会には珍しく質問コーナーに入ってから面白かった。フィールドワークの際に、クマ研に伝わる掛け声でクマに出会わない...北大総合博物館北大ヒグマ研究グループ「金曜ナイトミュージアムあなたの知らないヒグマのヒミツ」

  • リチャード・バック『かもめのジョナサン』

    かもめのジョナサンリチャード・バック新潮社2023/10/14カモメのジョナサンが飛行速度を追求していくうちに、時空を超越した存在になる話。名作古典という先入観もあり、ツバメ=愛人みたいなニュアンスで、ジョナサンのことを人間だと思っていた。速さを追求する彼は、群れを追放されてからも、どんどん成長していく。やがてチャンという師匠に出会って、最終的には瞬間移動まで身に着ける。なんだこれ。師匠の名前からして(欧米人が想像する)東洋思想のようなものの影響が入っているような気がする。やがて彼は弟子をとるようになり、ただのスピード狂から師匠的な役割を担うようになる。『トップガンマーベリック』みたいな話だった。そして、かつてチャン師匠がそうしたように、彼は光とともに消滅していく。正直、変な話だと思った。巻末に訳者の五木...リチャード・バック『かもめのジョナサン』

  • 「登別旅行(クマ牧場以外)」

    2023/10/14・クマ牧場に行った後は、天然足湯、大湯沼、石水亭、地獄谷、登別マリンパーク二クスと贅沢で盛り沢山な旅行だった。・盛り沢山すぎて頭のキャパをオーバーしたのか、旅行中ずっと偏頭痛に苦しむ。・とにかく外国人観光客が多い。・登別駅から登別温泉に向かうバスの中はぎゅうぎゅう。みんなスーツケースを持っているのでなおさら。・ただ、おかげで地方の観光地特有のひなびた感じはあまりなく、活気を感じた。・コロナ自粛期は大変だったんだろうな。・石水亭は、自分にとってかなり贅沢な有名ホテル。・部屋は年期を感じたが、夕食も朝食も気合が入ったビュッフェスタイルで、がっつりいただいた。・頭痛で注意散漫だったこともあるが、洗面所のドアが完全に壁になじんでいて、翌朝まで気付かなかった。・地獄谷の遊歩道は体調不良のピークだ...「登別旅行(クマ牧場以外)」

  • 「のぼりべつクマ牧場」

    2023/10/14・最近、クマのニュースをよく目にするし、北海道道民として、もう少しクマのことが知りたくなったので、のぼりべつクマ牧場に行く。・かなり前に行ったことはあるはずだが、まったく内容を覚えていない。・入場はロープウェイを使う。というより、ロープウェイしかない。入園中に機材トラブルなどで降りられなくなったらどうなるんだろうといらぬ心配をしてしまう。・到着すると、柵の内側でコグマたちが遊んでいる。あどけない風に遊んでいるが、体重もありそうだし、爪もしっかりしているのでまともにやりあったら負ける。・クッタラ湖が見える展望台。エスカレーターで上がっていくと、左手はるか下方に湖が見えてくる。高いところが苦手なので、たかがエレベーターでゾクゾクしてしまう。・あまりにも丸い湖の右側半分と、登別港ごしに水平線...「のぼりべつクマ牧場」

  • 第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部 高校演劇発表大会 札幌大谷高校『食卓全景』

    2023/10/4並んでトイレ昼食をとることが習慣の女子三人(実は異母姉妹)が、知り合って、仲良くなって、それぞれ自立していく話、だと思う。テレビドラマ『パパはニュースキャスター』を思い出した四十代は、自分だけではないはず。最初は偶然が過ぎるのとトイレ食事が共感できなかったので入り込みにくかったけど、三人が仲良くなって、漫談を始めるあたりから、尻上がりに面白くなっていく。お互いに依存したり、暴走したり、仲良しだからこそ気になる価値観の違いに悩みながら、長い時間をかけていろいろな経験を重ねていく。結構いろいろなことが起きている作品ではあるけど、一つの劇的なきっかけよりも、日々の積み重ねのなかでいつの間にか成長しているという話なんだと思う。個人的にはそういう成長の仕方のほうが現実に即していると感じる。そんな日...第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部高校演劇発表大会札幌大谷高校『食卓全景』

  • 第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部 高校演劇発表大会 北星学園女子高校演劇部『あたしたちがいくつになっても』

    2023/10/4吹奏楽部で挫折中の女性生徒が周囲の人たちや後輩の励ましで元気を取り戻す話。女子寮の食堂兼談話室みたいなところ。まず装置がすごい。パネルをしっかり並べて、窓にはガラス(的なもの)がはめられており、屋外も効果的に使っていた。キッチンは直接見えないが、配膳口から中の様子がわかる構造。この前、上演した自分の脚本の装置に少し似ている。階段は絶対必要という感じではなかったが、それでも作る謎のこだわりぶりが素敵。お笑いに対するキモの据わり方が出色と言っていいと思う。特に文科系の部員は全身タイツを来ているという謎ルールがとてもバカバカしくて好き。自意識を飼いならすのが難しいはずの高校生なのに、振り切っておどけている。強い。時事ネタも効果的に入れている。除草剤の話も笑った。テニスのサーブがとてもきれいなフ...第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部高校演劇発表大会北星学園女子高校演劇部『あたしたちがいくつになっても』

  • インプロカンパニーPlatform『いと、といと。〜ことりあやとり〜』

    2023/9/29久々にインプロ見たくなって、プラットフォームにアクセスする。観たいときにすぐに観ることができるのはほんとにありがたい。男が30歳までに恋人を見つけないと一生ひとりぼっちというお告げを聞いて、残されたわずかな時間で奔走する話。彼の前には三人の女性が現れるが、運命の女性は一人だけ。それぞれと積み重ねられるエピソードを経て、彼は真の恋人と結ばれることができるのか。インプロスキルが高すぎて、決まっているところと決まっていないところの境目がわかりにくく、つなぎ方もきれい。さすが。運命の人と言われているのに、「高校時代にフラれた女子」「親友のバンド仲間」と並んで「姉」がいつのがおかしい。そして、その姉が思わぬ大活躍をしている。ランダムに出されたキーワード「田中」「モケケピロピロ」が絶妙。無理やりつな...インプロカンパニーPlatform『いと、といと。〜ことりあやとり〜』

  • OrgofA『エアスイミング』

    2023/9/3・四人の女性たちが、いわゆる「普通」ではないとされ、物理的あるいは精神的に隔離され続ける話、だと思う。・実際には二人だったのかもしれないけど、自分の頭の中ではつながらず。ドリスの扱いがよくわからない。・実話がもとになっていると言っても、個人の話というよりは、普通ではないとされる人全般の話になっているので、二人や四人どころの話ではないのかもしれない。・舞台装置がシンプルながら美しい。階段の質感、バスタブの黒かび、傾いた肖像画。・基本的にドーラとペルセポネー、ドルフとポルフの組み合わせの決まった二人の会話が交互に並べられている。・前半は話がどこに向かっているのかよくわからず、付いていくのに苦労する。・もう少し前知識を入れて観たほうが良かったのかもしれない。・二人一組であることを強調するほど、片...OrgofA『エアスイミング』

  • 関容子『名優が語る演技と人生』

    名優が語る演技と人生(文春新書1388)関容子文藝春秋2023/9/1仲代達矢と岩下志麻、鳳欄と松本白鸚、柄本明と白石加代子など、たしかに名優としか言いようのない俳優たちによる対談集。各対談の前に聞き手の関容子による対談の聞きどころから始まる。彼女の紹介文や話題ふり、話の進め方を読んでいると、ほんとに芸事が好きなんだろうなと伝わってくる。映画『切腹』で仲代達矢と丹波哲郎の殺陣は本身だったという豪快な話や、鳳欄が松本白鴎に「舞台でエクスタシーを感じたことがあるか」と聞くところ。いろんな人たちの話に出てくる早稲田小劇場と鈴木忠志の名前。親子役を演じた梶芽衣子と西島秀俊の関係性も面白い。吉行和子と小林薫の対談中に出てくる演出家、久世光彦のエピソードが味わい深い。役者の提案を断らないところ、作品の雰囲気をつかむた...関容子『名優が語る演技と人生』

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