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2014/02/19

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  • マモルくん

    <長男としての責務→久しく為さば須らく→カインとアベル>※異物挿入 守から「今日そっち行っていい?」とメールがきた。今日は残業もなく早く帰れそうだから飯に誘ってみた。すぐに返信がきて、待ち合わせの場所と時間が決まった。 絶対残業しませんオーラを出しながらちゃんと定時に仕事を終わらせて帰り支度をする。隣の角田が「今日飲みいく?」と声をかけてきたが「やめとく」と断った。俺が彼女と別れてから何かと誘ってく...

  • 妄想4(2/2)

    <1>ベランダのような狭い場所に野口くんはいた。「こんな場所があったんですね」 と外に出る。野口くんが一瞬迷惑そうな顔をしたのを見てしまい、次の言葉が見つからない。緊張から体が熱くなって袖をまくる。「大丈夫ですか」 顔の赤い僕を見て酔っていると思ったのだろう。実際たくさん飲んだけど酒に強いほうでまったく平気だ。大丈夫ですかなんて野口くんから言われたのが嬉しくて「飲み過ぎたみたいです」と嘘をついた。...

  • 妄想4(1/2)

    <妄想→妄想2→妄想3>※課長目線 朝の通勤ラッシュは何年経とうが慣れることがない。ぎゅうぎゅうのすし詰め状態で誰かに足を踏まれたり鞄をぶつけられたり思わぬ至近距離で顔を見合わせ気まずい時間を過ごしたり。とにかく目的の駅まで心を無にするしかない。 吊革につかまり興味もない吊り広告や電光掲示板を見ていたら、尻のあたりで何かがもぞもぞと動く。後ろの誰かが体勢を整えようとしているのかと思ったが違う。痴漢だ...

  • 妄想3

    <妄想→妄想2> 本社からやってきた新しい課長は胸板の厚いガチムチで、女だけじゃなく男からもモテそうなタイプだった。しかも前任の課長のように部下のミスを頭ごなしに怒鳴りつけるようなことはせずまず聞きとりをして原因を突き止めると再発防止の対策を一緒に考えてくれる、上司としても頼りがいのあるイケてる男だった。 案の定女性社員はほとんど全員が新しい課長に夢中になり、最近俺の妄想のネタとして活躍中の久保田...

  • 休止のお知らせ

    お疲れさまです!いつも本当にありがとうございます!突然ではございますが、このブログはしばらく休止に入ります。過去作ばかり更新していてですでに休止と言えなくもない状態でしたが、表に出せるストックがついに底をついてしまったので今後更新できるものが何もなくなってしまいました。加えて、これまで逃げ回っていた現実問題と真剣に向き合わないといけなくなってしまいまして、今までのように「なに書こっかな」とパソコン...

  • 幕間

    <大嫌い→さかしまなダンディ> シャーペンの芯がノートの上を淀みなく滑る心地よい音を立てながら、頬杖の秋山が勉強に集中している。レポートの提出が近づくといつもこれだから今日もそうなのだろう。 学校から帰ってきた俺はそれを邪魔しないよう静かに奥の和室へ移動して鞄をおろした。手を洗いながら今日の晩飯何にしようと冷蔵庫の中を思い出そうと試みる。「おかえり」 豚の生姜焼きにしようと思っていたら不意に隣の部...

  • MR(2/2)

    <1>「はい?」 俺は自分の間抜け面を指差した。乃木がコクンと頷く。「お、俺も脱ぐんですか?」「そうですよ、窪田くん一人じゃ寂しいでしょうから」 といつもの微笑を浮かべる。俺は冷や汗を流した。接待で裸になったことは何度もある。いまさら抵抗もない。だが今回の相手はホモの乃木だ。裸を見てくる視線の意味合いが全然違う。さすがの俺も躊躇してしまった。そんな俺を窪田が非難がましい目で見てくる。やればいいんだ...

  • MR(1/2)

    ※初出2009年 俺が、新人の窪田も接待に同席しますと伝えると「わかりました」と、あいかわらず抑揚のない声が受話口から聞こえてきた。 電話の相手はうちと長く付き合いのある総合病院に勤務する医師の乃木先生で、同じ男として嫉妬せずにいられないほど整った顔立ちをしているのだが感情の変化に乏しく、こちらの冗談にも愛想笑いを口の端に浮かべる程度で、営業の人間としては、大変、やりにくい相手だ。 乃木はまだ三十歳で...

  • 秘密の遊び

    オンボロの廃ビル。立ち入り禁止の立て札を無視して入った先で俺は沢村を見つけた。 沢村は整って中性的な顔立ち、細い体、優しくて柔らかな声――女だけじゃなく、男が見ても妙にドキドキする奴だ。明るくて気さく、性格もいいから誰からも好かれる。クラスの奴らから「キモい」だの「暗い」だの言われている俺とは正反対。おまけに沢村は成績がよくて運動神経もいい。神様は不公平だとつくづく思う。もっとも俺は神様なんて信じ...

  • 正気の人

    (初出2010年) 廊下を歩きながら江川英生は腕時計を見た。部活動で残っていた生徒もあらかた帰宅した時間だ。 江川は棟の端に位置する化学室の扉を開けた。クラスの生徒に放課後、実験をしたいからとせがまれ、教室を貸してやっていたのだ。ちなみに江川は古典の担当である。まだ年が若く、生徒からは馴れ合いと親しみをこめて「英生先生」と呼ばれている。 物音で振り返った生徒が「いいタイミングに来ましたね」と微笑んだ...

  • Reverb(5/5)

    <1→2→3→4> 秋名と広岡が仲直りしたのは『事件』の二週間前のことだ。美原が二人に口添えをした結果だ。 松田に気付かれないよう細心の注意を払いながら、広岡にいじめを唆したのは松田だとさりげなく秋名に伝えた。広岡には松田が秋名を陥れようとしたのは何か理由があるんじゃないかとほのめかした。 その後も松田の目を盗んでは秋名の怒りを煽り、広岡には利用されたままじゃ馬鹿だと気付くよう誘導した。共通の敵を作...

  • Reverb(4/5)

    <1→2→3>「広岡と付き合ってるのか?」 体育の授業が終わり、教室で着替えていると松田が話しかけてきた。小学生のころ背丈は同じくらいだったはずだがいまは美原が見下ろすかたちになる。「どうしてそう思うんだ?」 狡賢そうな目から視線を逸らした。 これが同族嫌悪というやつなのかわからないが、美原は松田のことが虫唾が走るほど嫌いだった。 授業中や休み時間、常に松田の視線を感じていた。不愉快だと睨み付けても...

  • Reverb(3/5)

    <1→2> 入学式が終わり、新しいクラスメイトとともに教室へ入った。顔見知りが数人いる。前の席に座る生徒も同じ小学校だったやつで、うしろが美原だとわかると話しかけてきた。「どうしたんだよ、その顔」 あの夜壁で擦りむいた顔の傷は瘡蓋になってまだ残っていた。「暴走自転車にひかれかけた」「なんだそれ」 と笑う。なにも可笑しくなんかない。なぜ笑っているんだこの馬鹿は。 美原は冷め切った表情でクラスを見渡し...

  • Reverb(2/5)

    <1> 六年の始め、給食を食べ終わった自由時間のことだった。クラスメイトに囲まれて談笑していた美原のもとへ、二人組の女の子が慌てて駆け寄ってきた。「美原くん、どうしよう大変なの!」 クラスのなかではあまり目立たないタイプの女の子たちだ。こういうタイプは些細なことにも傷つきやすい。美原は意識的に優しい眼差しを二人に向けた。「どうしたの」「うちのクラスの男子が勝手に屋上に行っちゃった」「屋上に? 鍵が...

  • リバーブ(1/5)

    <「スタンドバイミー」番外、美原の過去の悪行編>※美原がドクズ。胸糞、閲覧注意。BLじゃない。 美原恵一は幼いころから自分が優秀だと自覚があった。学校のクラスメイトが馬鹿にみえて仕方なかった。言葉1つ、行動1つで簡単に操れる連中だった。 くだらないことで一喜一憂し大騒ぎをする。それに同調する教師も馬鹿だ。なのに最後には大人であり教師であるという矜持を守るために矛盾する言動で攻撃してくるのでより質が悪...

  • スタンドバイミー(12/12)

    <1→2→3→4→5→6→7→8→9→10→11> 次の休み、ある程度の荷物を持っていったん家に帰った。久し振りの我が家。懐かしいはずが他人の家の匂いがする。窓をあけて空気を入れ替える。潮の匂いは、海から引き上げられたときの、ぐったりする美原の姿を呼び起こした。 小学生の頃は美原に振り回されっぱなしだった。大人になってもそれはかわらなかったが、美原も岸本に会ってから人生を狂わされていた。地下の券売機の前で会わな...

  • スタンドバイミー(11/12)

    <1→2→3→4→5→6→7→8→9→10> ギプスにラップを巻き、その上からタオルを巻いてさらにビニールの袋をかぶせて口を縛る。浴槽のふちに足を乗せてシャワーを浴びる。これでギプスが濡れることはほぼ防げる。退院して一週間した頃に見つけ出した入浴方法だ。さっと体を洗い、風呂を出た。 先にシャワーを浴びた美原はテレビを見ていた。その前に腰掛け一緒にテレビを見る。夜の報道番組。上の空で内容がまったく頭に入って来...

  • スタンドバイミー(10/12)

    <1→2→3→4→5→6→7→8→9> 退院して二週間が経った。通院以外での外出もするようになり、松葉杖を使って移動することにも慣れてきた。背中と足の傷もかさぶたで塞がり、今は痛みよりも痒みに悩まされている。 最近美原は忙しいようで帰りが遅い。別にそういう決まりを作ったわけではないが、夕食は美原が帰ってくるのを待ってしまう。一人で先に食べるのもなんだか味気ないし、仕事中の美原より先に食べるのも悪い気がする...

  • スタンドバイミー(9/12)

    <1→2→3→4→5→6→7→8> 三日後には退院になった。治療のために通院しなくてはならないが、人の気配が常にある病室で過ごすことが苦痛だった岸本には通院の面倒のほうが気楽だった。退院の日には美原が迎えに来てくれた。また仕事を休ませてしまったことが申し訳なくて謝ると「気にするな」の一言だった。 慣れない松葉杖で外に出る。美原がタクシーを呼びとめ荷物をトランクに積んだ。肩を借りてタクシーに乗り込む。岸本...

  • スタンドバイミー(8/12)

    <1→2→3→4→5→6→7> 岸本が意識を取り戻したのは翌日の昼過ぎのことだった。見知らぬ天井、一方は壁、残りはカーテンで囲まれたベッドの上で目を覚まし、当然ながら自分の置かれている状況が理解出来なかった。 カーテンの向こうからかすかに物音が聞こえてくる。消毒液のような匂い。病院のようだと気付いたが、自分がここにいる理由がわからない。起き上がろうとしたが思うように体が動かず不安になり始めた時、静かにカ...

  • スタンドバイミー(7/12)

    <1→2→3→4→5→6> 小夜子が来た三日後の朝、岸本の携帯電話が鳴った。洗濯物を干していた岸本ははじめそれに気がつかなかった。部屋に戻りようやく着信に気付いて慌てて電話に出た。『早く出ろ』 繋がるなり不機嫌な声が耳に吹き込まれる。聞き間違えることのない声と高圧的な口調。「ご、ごめん、えと、おはよう」 条件反射のように言葉を詰まらせながら間が抜けた挨拶をした。美原の声を聞くのはずいぶん久し振りで懐か...

  • スタンドバイミー(6/12)

    <1→2→3→4→5> 休日に衣替えをしていたら美原の服が出てきた。美原は冬の着替えだけを持って出て行ったのでそれ以外は岸本の部屋に置きっぱなしだ。それを取りにくることもないし連絡もないので、岸本も処分に困りそのまま置いていた。 冬に美原が出て行ってから春になった今まで一切連絡はない。気がかりではあったが岸本から連絡はしなかった。美原がそれをてぐすね引いて待っているような気がして電話したくなかったのだ...

  • スタンドバイミー(5/12)

    <1→2→3→4> マンションの駐車場に車を止め、助手席からおりた美原に肩を貸してエレベーターに乗り込んだ。顔色の悪い美原を抱え部屋の前についた。鍵をあけ中に入る。靴を脱ごうとしたとき美原が抱きついてきた。「ちょ、ちょっと、美原、大丈夫?」 正面から抱きしめられる格好になり、岸本は顔を赤くしながら美原の背中を軽く叩いた。頬に美原の頬が触れ合う。艶めかしい感触に羞恥がわきあがる。「美原、とりあえず中に...

  • スタンドバイミー(4/12)

    <1→2→3> 学生たちの夏休みが終わり残暑厳しい毎日が続く。美原が家に来て一ヶ月近くが経っていた。 美原はあっさり地方銀行に再就職した。「また平からだ」 と美原は愚痴った。前の仕事場ではそれなりに出世していたのだろう。 岸本の仕事時間も朝から昼にシフトして出勤前に掃除と洗濯をし、朝夕の食事は美原の担当になった。料理が初めてだという美原の腕前はこの一ヶ月でかなり上達した。今はまだ買ってきた料理の本を...

  • スタンドバイミー(3/12)

    <1→2>「起きろ、岸本」 声と一緒に体を揺さぶられ、もう長いこと人に起こしてもらったことのなかった岸本は驚いて目を覚ました。スーツ姿の男が目に飛び込んでくる。寝起きの頭では咄嗟に状況を把握できずうろたえたが、数秒でなんとか思い出した。昨日美原と偶然会って家に泊めてやったのだ。「出かけるぞ、用意しろ」「え…っ」 時計を見ると六時半。いつもならまだ寝ている時間だ。「どこに…」「散歩だ。昨日来るとき潮の...

  • スタンドバイミー(2/12)

    <1> 翌日、美原の態度はいつも通りだった。山下にからかわれる岸本をいつも通り美原がかばった。あの帰り道の美原はなんだったのだろう。岸本はそれを忘れられなかった。自分が何か悪いことをしてしまったのだろうか。その原因を必死に考えていた。「花火大会、一緒に行こうか」 一学期最後の日、帰り道に美原から誘われた。「一緒に行く人いないんだろ。僕と一緒に行こう」「……うん、行く」「じゃあ前の日に連絡するよ」 美...

  • スタンドバイミー(1/12)

    ※キスどまり、攻めが性格悪いド畜生(初出2009年) 昨夜つい寝煙草で枕を焦がしてしまった。きな臭いにおいで目が覚め、枕に2センチほどの焦げあとを見た時はヒヤリとした。有給消化のため今日は塾講師の仕事が休みなので岸本は枕を買いに出かけることにした。 岸本は人ゴミが苦手だった。たくさんいる人の中で自分が一番下等な人間のような気がしてくるからだ。極端に自信がなく、人一倍自意識過剰なのだった。枕を選んでいる時...

  • 淫果

    ※中華風なんちゃってファンタジー 仙人から武踏の教典を賜るため、ヤオシはかの霊山に、数名の共を従えやってきた。都を出立してもう十日になる。標高を稼ぐにつれ休憩場所も確保できないほど密な竹林に行く手を遮られて苦労した。「ヤオシ様、いったいどこまで行けば仙人に会えるのでしょう」 共の一人、ユンミが、額の汗を拭って兄弟子に訊ねた。同行者唯一の女性だが、武踏の使い手として他の同行者より強く、今回の旅にも自...

  • 狼少年(2/2)

    <1> 翌日、先輩はさっそくやってきた。今日は昨日と違って素面。コートのポケットに両手を突っ込んで玄関に立つ先輩がなぜかニヤニヤ笑っている。不気味でわけをたずねた。「今日もいると思って」「どういう意味ですか、僕が自分の家にいちゃいけませんか」「おまが本当にモテるなら仕事終わってまっすぐ帰ってこないだろ」 昨夜の意味深な台詞もこのことを言っていたのか。そんなことを考え付く先輩に呆れてしまう。「僕は時...

  • 狼少年(1/2)

    ※キスどまり 零時をまわってそろそろ寝ようかという時、アパートの扉を叩く不規則な音が聞こえた。毎度のことなので誰か確認しないで扉をあけた。冬の冷たい外気が開けた扉から入りこんでくる。「肉まん買って来たぞ、食うだろ」 白い頬、鼻だけ赤くして、大学のときの先輩がコンビニの袋を掲げて笑う。目つきがトロンとしてゆっくり噛み締めるような瞬きをする。玄関に漂う酒の匂い。今日も飲んで来たようだ。「またなにかあっ...

  • 手紙(5/5)

    <1→2→3→4> 朝になってシャワーを浴びた。髭も剃って身なりを整えスーツに着替えて家を出た。電車に揺られ聖也と待ち合わせをしたことのある懐かしい駅に降り立ち、そこからタクシーに乗りかえた。 このあたりだという場所で下してもらい、そこから住所表記を頼りに聖也の家を探し出した。表札に「森岡」と見つけてほっとすると同時に胸が軋んだ。深呼吸をしてからインターフォンを鳴らす。「はい」と女性の声が聞こえた。...

  • 手紙(4/5)

  • 手紙(3/5)

    <1→2> 夏休みに入って最初の週末、聖也は家族と一緒に北海道へ旅立った。 約束通り毎日連絡をくれる。俺が「聞かせて」と言えば律儀に「好きだよ」と言ってくれる。 会いたい。会いたい。会いたい。 声だけじゃ足りない。会って顔を見たい。抱きしめたい。キスしたい。直接好きだよと言って欲しい。 電話のたびに「あと何日で帰って来る?」と質問した。答えが一日ずつ減っていく。残り5日くらいからもどかしくてたまら...

  • 手紙(2/5)

    <1> 今日は聖也とデートの日。少し早めに待ち合わせの駅についた。聖也の地元の駅と言うだけで俺には特別な場所になる。券売機の横にある掲示板の前で待っていたら明るい日差しのなか駆けて来る聖也を見つけた。「遅れてごめん!」「ばか、走るなっ」 聖也を制止しつつ俺の方も駆け寄った。近くに来てイメージのかわった聖也に気付いた。「髪……」「切ったんだ」 下を向くたび目にかかった前髪は眉の上まで短くなっている。...

  • 手紙(1/5)

    ※死ネタ、嫌な予感がしたらそっ閉じ推奨。(初出2014年) 明日は休みだと酒をがぶ飲みした。毎年この時期がくると気持ちが沈む。ハイペースで飲んであっという間に酔いつぶれた。 俺を気にかけてくれる同僚の腕を「一人で平気だ」と振り切り、ふらふら歩いていたらすれ違い様肩がぶつかっただのと因縁吹っかけられて気が付いたら路地裏で大の字になっていた。 立ち上がるとあちこち痛んで電車で帰るのは諦めてタクシーをつかま...

  • ぼくら(4/4)

    <1→2→3> 緊張のせいで僕の顔色は真っ白になっていた。それを見て他のみんなが苦笑する。リラックスさせようと色々言葉をかけてくれるがそのどれもが僕の耳をすり抜け頭に残らない。上の空の会話は噛み合わなくて、みんなの苦笑は心配顔にかわっていった。 本番直前、不安になる僕の背中を遠藤さんが思い切り叩いてきた。「ド素人が力むな。誰もお前に期待してないから安心しな」 ニヤッと笑い舞台へと出て行く。そうだ、誰...

  • 公開終了のお知らせ

    お疲れさまです、いつもお世話になっております!突然ではありますが、「君が笑った、明日は晴れ」を9月25日で公開終了することにいたしました。長くなったので以下折りたたみます。...

  • ぼくら(3/4)

    <1→2> 翌日、僕はまた早めにオペラ座館に入り、姿を見せないファントムの個人指導を受けた。その日の通し稽古は失敗せずに撮影出来た。井出さんが「上出来、上出来」と褒めてくれるのは心苦しかった。「これくらい出来て当然」遠藤さんのツッコミがむしろ有難い。 映像を見ながら最終チェック。本番までもう時間がない。みんなの顔も真剣そのもの。稽古に余念がない。出番のない僕は裏方として小道具チェックに勤しんだ。 ...

  • ぼくら(2/4)

    <1> 飲食店のバイトを終え、家に戻ってシャワーを浴びてからオペラ座館へ急いだ。今日の練習開始は21時から。まだ二時間弱ある。管理のおじさんに「早いね」といわれながら中に入れてもらう。鞄を床に放り投げ舞台に立った。せっかくシャワーを浴びたのに走ってきたせいで汗をかいていた。 人の気配がまったくない。物音一つ聞こえない。ファントムはまだ来ていないのだろうか。それとも僕をからかっただけで本気じゃなかった...

  • ぼくら(1/4)

    ※挿入ってない(初出2009年?) ここは劇団「ぼくら」の稽古場。看板俳優の遠藤理久が、次回公演の見せ場である長台詞を完璧に言い終わり、台本上、暗転となったところで休憩に入った。「おい、雑用! 俺のドリンク持って来い!」 一番下っ端の僕は慌てて長テーブルの上から遠藤さんのドリンクを探し出し持って行った。受け取った遠藤さんは、「気がつかねえ新人だな。先輩の一挙手一投足を見逃すんじゃねえよ、バカ。言われる...

  • worn out(2/2)

    <1> 冬休みになった。 親は田舎に帰る予定を立てていたが、俺は一人家に残ると言い張った。もちろん児嶋を呼んで二人きりで思う存分イチャイチャするためだ。 無駄遣いするなと三日分の生活費を渡すと両親は田舎へ向かった。俺がそのことを伝えると児嶋はすぐにやってきた。俺たちはさっそくいやらしい行為を始めた。終わったあとはふたりで風呂に入った。 湯船につかる児嶋に見せつけるように肛門にシャワーを当てた。「...

  • worn out(1/2)

    ※性的しごき、アンハピエン 俺と児嶋のいかがわしい関係は、高校一年、野球部の夏合宿がきっかけで始まった。 ※ ※ ※ 練習が終わった夜、俺たちは先輩たちの命令で強制的にマスをかかされた。先輩曰く、それは野球部に代々伝わる伝統なのだそうだ。 初日はまず二年の先輩が一人、俺たちの目の前で下半身を露出させ、お手本としてセンズリをかいた。別の人がタイムウォッチでそのタイムを計る。そしてお手本の人が射精までにか...

  • 確信

    【大学生編】→目次※出会ってすぐの頃次の講義までの空き時間を、校庭のベンチで友達の賀来と喋って時間を潰していたら「五代くん!」と弾んだ声がした。見て確かめるまでもなく、五代には声の主が誰だかかわかった。ここ最近、図書室でよく会う先輩。大学内ではその整った容姿で有名な人。「こんにちは、駿河さん」満面の笑みで近づいて来る秋邑に五代は会釈した。「今日は教授に会いに来たんだ。卒論のことで。そのあとちょっと調...

  • 相思幻影2

    【大学生編】→目次※小ネタ「インフルエンザ」のちょっと不思議ネタ、秋邑Ver.中学/校から帰ってきた秋邑は制服を着替えてソファに寝転がった。今日はこのあとクラスの仲間たちと遊びにいく予定だ。その中にはいま秋邑がいいなと思っている女の子もいる。彼女のほうからも好意的な笑顔や眼差しを向けられている気がする。付き合いたいだとか、友達を抜け出したいとは、いまはまだ思わない。もう少し、このくすぐったい関係を楽しん...

  • after

    【大学生編】→目次※五代と出会ったあと五代と離れている間、自分は半分死んでいるも同然だ、と大げさでもなんでもなく、秋邑は本気でそう思う。常に視界に入れていたい。体に触れていたい。五代を感じていたい。誰かに対し、ここまで強く依存したことも、独占欲を持ったこともない。五代だけが特別だった。だからかなりの自制心を持って過度な連絡は控えている。本当は毎分メールしたいし、毎時電話で声を聞きたい。講義も一週間に...

  • before

    【大学生編】→目次※五代に出会う前あまり密な交流は避けて、広く浅い付き合いを心がける秋邑は男女問わずよく遊びに誘われる。今日も飲みに行こうと誘われて男女数人で居酒屋へ向かった。秋邑としては特定の誰かと親しくなりすぎないよう、男女関係なく全員と会話して良い関係を築こうとしていたが、秋邑の隣は女子が入れ代わり立ち代わりしてしかも質問攻めにしてくるから落ち着いて話しもできない。逃げるようにトイレに立ち、そ...

  • 完全敗北

    【大学生編】→目次※「横恋慕」隼人視点バイトが終わった夜、隼人はコンビニで酒を買いこんだ。今日は金曜日。きっと駿河は五代のアパートにいるはずだ。駿河の顔を見たい。2人きりの時間を邪魔してやりたい。そんな動機で五代のアパートへ原付を走らせた。ボロいアパートの古めかしい呼び鈴をジリリを押すと五代が顔を出し、隼人だとわかるとため息をついた。「何時だと思ってるんだ」「飲もうぜ、一緒に」どうせ断られるに決まっ...

  • 隣人S

    【大学生編】→目次※隣人目線今日もまた、隣の部屋に来訪者。無趣味だった佐藤にできた密かな愉しみ。※ ※ ※引っ越してきたとき、律儀に挨拶をしてきた青年。顔にはまだ幼さが残っていて、おそらく進学のため一人暮らしを始めたばかりの大学生。のしの巻かれた洗剤をこちらへ渡しながら「五代です」と名乗った。ボロいアパートの戸口を塞ぐ大柄な体。軽く癖のある髪、黒縁の眼鏡、彫りは深いが表情はないに等しい。不愛想な学生、...

  • 同棲したい

    【大学生編】→目次大学を卒業し、単純に五代と会う時間が減った。深刻な五代不足に陥ったある夜、連絡なしに五代の家を訪ね泊まったこともあった。慣れない仕事、新しく築かなくてはいけない人間関係、そのなかですり減る神経。思っていたより疲弊していたようで、五代の迷惑を省みない行動だった。いきなりやってきた秋邑を家に招き入れ、「お疲れのようですね。今日は泊まっていきますか?」と自分から言ってくれた五代には感謝...

  • 雷の夜に

    【社会人編】→目次雷の音で五代は目を覚ました。瞼を閉じる前に隣へ手を伸ばすが、あるはずの温もりを見つけられずに体を起こした。秋邑がいた場所はすでに冷たくなっていた。五代は寝室を出た。真っ暗なリビングに雷光が射し込む。カーテンが開かれた場所で秋邑が膝を抱えていた。隙間から空を見上げて少し遅れてやってきた雷鳴を聞いている。間隔は短くて近いとわかる。「なにしてるんですか」言いながら秋邑に覆いかぶさるよう...

  • 留守番

    【大学生編】→目次せっかくの日曜だというのに、秋邑は一人、五代のアパートで留守番をしていた。五代は今日、大学の仲間たちと遊びに出かけているのだ。きっと帰りは遅くて午前様になるだろう。五代の交友関係を狭めることはしたくない。だから快く笑顔で送り出した。五代も同じようにしてくれるからだ。それが少し寂しいなんて、贅沢な悩みというやつだ。朝から洗濯機をまわし、部屋に掃除機をかける。ベランダはないので他の部...

  • 相思幻影

    【大学生編】→目次(小ネタ「インフルエンザ」のちょっと不思議ネタ)インフルエンザにかかるなんて小/学生以来だった。大学で流行っているらしいと聞いていたから、熱が出てもしやと思い、そのあとすぐ毎日顔を合わせる秋邑の身を案じた。朝一で近くの病院に行き、そこでインフルエンザだと診断された。病院を出てすぐ五代は秋邑にメールを入れた。インフルエンザになってしまったこと、うつしてしまったかもしれないことを詫びつ...

  • 雨の日、部屋の中で

    【社会人編】→目次五代を誘ったのは自分からだったが、まさかこんな風に抱かれるなんて思ってもみなかった。窓ガラスに押し付けられた顔。荒い呼吸に合わせて白く曇る。視線を少し動かせば、眼下に住宅が立ち並んでいるのが見える。その一つの窓に人影がよぎった。「どうしました?」驚いて五代を強く締め付けてしまい、背後から秋邑を侵す五代が声をかけてきた。「まっ、窓に……誰かが……見えた、からぁっ…ぁ…」「見られるかもって...

  • 醍醐味

    <利害の一致→凹の懊悩→メリクリあけおめ→利害関係の終了>※ほぼ健全 今年配属された新入社員と一緒に先輩が横一列に並んで、「名古屋から戻って参りました。心機一転頑張りますのでご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」と誰よりも新入社員らしい挨拶をしてかつての同僚たちから失笑を買っていた。 そんな先輩を呆れて眺めながら、以前と変わらない様子が嬉しくて、やっと帰ってきてくれたんだと実感したらむずむずする...

  • 陣中見舞い(3/3)

    <1→2>五代の肌に直接触れるのは、酔った五代の寝込みを襲ったあの日以来だ。ダメもとでした告白を受け入れて、しかもキスまでさせてくれるようになっただけでも信じらない僥倖なのに、自分がいま五代の服を脱がせているなんて夢の出来事のようだった。「ほんとにいいの?」「嫌ならやめますか?」「やめない!」秋邑の即答に五代が小さく笑う。思わずキスしていた。告白以来、五代に許しをもらわずにしたキスはこれが初めて。...

  • 陣中見舞い(2/3)

    <1>五代からジーンズを借りた。ウエストはベルトでなんとかなったものの、足の長さまではどうにもならず、男の矜持をいささか傷つけられながら裾を折ることで対応した。夕方に、晩ご飯の材料調達のため、二人で近くのスーパーへ出向いた。並んでスーパーまでの道を歩きながら、秋邑は幸せを噛みしめていた。──これって同棲してるみたいだ。夕飯を何にするか相談するだけ、スーパーで商品をカゴに入れるだけ、一緒に食後のデザー...

  • 陣中見舞い(1/3)

    【大学生編】→目次レポートに励む五代のために差し入れを持って五代のアパートへ向かった。年代物のインターフォンをジリリと鳴らせば中から「開いてますよ」と声がする。「お邪魔しまーす」五代に告白を受け入れてもらって付き合いだしてからというもの、秋邑はせっせと五代のアパートへ通い妻を続けていた。マナーとして行く前には連絡を入れるので、慣れてきた五代も秋邑が来るとわかっていると鍵をあけておいてくれるようにな...

  • 告白

    【大学生編】→目次五代を犯したのはつい先日のこと。申し訳ないことをしたと、死ぬほど後悔した。もう二度と会うことも話をすることも触れることもないだろう。五代のそばにもいられない。大学も辞めなくてはいけないかもしれない。いろんな覚悟をしたのに、まさか許してもらえるなんて思ってもいなかった。しかも事のあと「一緒にメシでも行きましょう」と誘ってくれたのだ。予想外すぎて緊張の糸が切れた秋邑は五代の前で泣きじ...

  • 寝ても覚めても

    【社会人編】→目次秋邑が口づけすると五代がふっと微笑んだ。「またですか?」と言いつつ、秋邑の体を抱え込み、布団のなかで足を割って間に入ってくる。「もう一回したい」「仕方ありませんね」五代が布団の中へもぐりこむ。秋邑のペニスが熱い口腔内に包まれた。「あ、あぁ……」ペニスに五代の舌が絡みつき、時折強く吸いあげられた。次第に硬く大きくなる。指が後孔に触れた。ぴくん、と秋邑の体が反応を見せる。ゆっくりと五代...

  • ライバル登場

    【社会人編】→目次休日、二人で出かけようと駐車場へ行くと、車の下で猫が鳴いていた。「まだ子供ですね」五代が車の下をのぞきこむと、猫は「ニャー」と鳴きながら五代に体を擦りつけてきた。人に懐いている。「よしよし、どこから来たんだ?」五代に頭を撫でられて猫は嬉しそうにのどを鳴らした。「五代くん、猫好きなんだ?」「実家で昔飼ってました」しっぽをピンと伸ばしてスリスリと五代に纏わりつく。時折、立ったままの秋...

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