ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズ喫茶『松和』は仮想喫茶店。大好きなジャズや70年代ロックの話題など、音楽三昧な日々をどうぞ。
3日ほど前まで、しばらくの間、冷たい北西の季節風が吹き荒れ、外出するのが憚られた。とにかく冷える。気温は上がらない。そんな日に外出〜散歩なんて、とんでもない。風邪をひいたらどうするんだ、ということで、暖房の効いた室内で、終日、読書とジャズ鑑賞に勤しむことになる。こんな真冬の冷え冷えした日の昼下がり、暖かい室内で聴くジャズは、意外とECMレコードの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」な即興演奏メ...
ラルフ・アレッシは、1963年3月5日、米国SFO生まれ。今年で61歳の大ベテラン・トランペッターである。が、これまでかなりマイナーな存在だった。というか、僕はこのアルバムで出会うまで、アレッシの名前に馴染みが無かった。それもそのはずで、アレッシは基本的に学者であり研究者。カリフォルニア芸術大学で、ジャズ・トランペット演奏で学士号、ジャズ・ベース演奏で修士号を取得している。そして、教育者として、...
ちょっと「デュオ」づいている。ジャズのユニットの最小単位の「デュオ」。双方のテクニックと音楽性のバランスがバッチリ取れると、一人では出せない、スケールの広い、ダイナミズム溢れる、奥行きのある即興演奏を実現することが出来る演奏編成。二人というシンプルな編成なので、音が重なるのは最小限。個々の音の一つ一つをしっかり確認できるのも「デュオ」の良いところ。Bill Charlap & Renee Ros...
Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)は「ジャズ・ギターの創始者」とされる。ジャンゴ・ラインハルトは1910年、ベルギー生まれ。父母ともに旅芸人の音楽家&ダンサー、つまりジプシー。旅から旅へのキャラバン育ち。ジャンゴの音楽性に、この「ジプシーのキャラバン育ち」の影響は明らかで、汎欧州的、欧州の様々な国の音楽の要素が混ざった、ユニークな音楽性がジャンゴのギターの個性。18歳の...
形体が全く異なるのだが、ピアノとギターは良く似た性格の楽器である。ピアノとギターは音のスケールも似通っている。ギターについては、単音のみならず和音も出る。アルペジオも出来る。弦を掻きむしることもできるし、和音をストロークで連続することで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。ピアノについては、和音と単音を右手と左手に分けて別々に同時に出せるし、リズム部と旋律部を同時に奏でることが出来る。...
1960年代は、1950年代のハードバップをベースとした「ジャズの多様化」の時代だった。エンターテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、イージーリスニング・ジャズ。アーティステック志向としては、モード・ジャズ、フリー・ジャズ。聴く側の嗜好と演奏する側の志向とで、様々なバリエーションのジャズが展開された。この「ジャズの多様化」は、1960年代以降、意外と綿々と続いている。19...
ジャズ盤の鑑賞については、昔のハードバップやモードを聴くこともあるが、最近の、現代のジャズの新盤も努めて聴く様にしている。1970年代においては「ジャズは死んだ」として、現代のジャズはジャズで無い、とし、コルトレーン逝去前のジャズをジャズとして、1950〜60年代のジャズしか聴かないジャズ者の方々もいたみたいだが、それはかなり極端な見解だろう。21世紀に入った現在から以前のジャズを聴き直すと、コ...
『Return To Forever』と『Light As A Feather』の名盤2枚で、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」を表現したチック・コリア。しかし、音楽性のバリエーションが豊かなチックは、その傍らで、メインストリーム系の純ジャズにも、しっかりと手を染めている。ただし、チックは旧来のハードバップをなぞることは無い。必ず、新し...
大傑作『Return To Forever』の録音が1972年2月、リリースが1972年9月。次作の録音が1972年10月。『Return To Forever』のアルバムとしての出来と評判を確認して、満を持しての次作の録音である。この次作、チックの、そして、バンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)」の揺るぎない自信が満ち溢れた傑作に仕上がった。Chick Corea & Ret...
ECMでの録音、マンフレート・アイヒャーとの出会い、欧州ジャズとの触れ合い。このあたりが良かったのだろうか。チック・コリアは、自由度の高い硬派なモード・ジャズ〜フリー・ジャズへの傾倒から、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」に転身した。Chick Corea『Return to Forever』(写真左)。1972年2月の録音。ちなみにパ...
ハービー・ハンコックは「2つの顔」を持つ。一つは、メインストリーム系、アコピをモーダルに弾きまくるバリバリ硬派な「純ジャズ志向」、もう一つは、判り易くてポップな、エレピやシンセを駆使した「ジャズ・ファンク志向」。どちらの顔も超一流。どちらの志向も、ジャズ史に残る立派な成果をしっかりと残している。Herbie Hancock『The Piano』(写真左)。1978年10月25–26日の録音。ちな...
Cedar Walton(シダー・ウォルトン)のリーダー作を追いかけている。存在はジャズを聴き始めた頃から知っていた。が、ビッグネームから追いかけていって、ウォルトンに辿り着くのに30年かかった。そして、今、記事を書く為に聴き直しを進めている。順にウォルトンのリーダー作を聴いていると、やはり、ウォルトンは優れたジャズ・ピアニストの一人だった、と再認識させられる。Cedar Walton『East...
ハービー・ハンコックのリーダー作の落穂拾い。当ブログで記事にしていないリーダー作はあるのか、と調べてみたら、まだまだあるんですね、これが。ハービーについては、評論記事のコンプリートを目指しているので、記事にしていないリーダー作を順に聴き直している。Herbie Hancock『Directstep』(写真左)。1978年10月17–18日の録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock...
マイルス・デイヴィスは、1991年9月28日に鬼籍に入っている。65歳。ジャズマンとしては早すぎる逝去であった。マイルスは、正式にリリースされた音源として、1991年2月までスタジオ録音を、1991年7月までライヴ録音を残している。1991年9月初旬、定期検査の為、サンタモニカの自宅近くのセントジョンズ病院に入院。入院時に脳内出血を引き起こし昏睡状態になり、その後、1991年9月28日午前10時...
晩年のマイルス・ディヴィスの聴き直し。この盤は1985年に録音されながら、4年ほどお蔵入りしていた、マイルスにとって「曰く付き」の企画盤。マイルスのアルバムは録音されたらなるべく時を置かずにリリースされていたのだが、この盤は違う。どうも、録音当時のコロンビア・レコードと契約などでもめていたらしく、リリースは1989年になっている。Miles Davis『Aura』(写真左)。1985年1月31日...
中間派トロンボーンの代表格、ベニー・グリーン。リーダー作の多くをブルーノートからリリースしており、その内容はどれもが優れたもの。中間派、つまりはスイングとハードバップの間。スイングの雰囲気を残しつつ、ロング・レンジのアドリブ・ソロを展開する。と言って、ハードバップの様に切れ味良く、丁々発止としたアグレッシブなソロでは無く、スイングの雰囲気を踏襲した、味のあるミドル・テンポの小粋で聴き心地の良いソ...
トロンボーンのホンワカした丸いフレーズと力感のある低音のブリリアントな響きが好きだ。ビ・バップからハードバップ畑には、J.J.ジョンソン、カーティス・フラーらがいる。また、スイング・ジャズからハードバップ手前まで進化した「中間派」には、ベニー・グリーンがいる。特に、中間派のベニー・グリーンについては、ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブ...
ジャズマンにとって、一流の証の一つに「ウィズ・ストリングス」がある。「ウィズ・ストリングス」とは、オーケストラをバックにしたインプロビゼーション。ストリングスは楽譜でガッチリ固められた定型の演奏。反対に、ジャズマンは即興演奏をメインとして演奏。定型のストリングスをバックに、いかに即興演奏を展開し、自らの個性を表出するか。それは一流のジャズマンでないと出来ない「技」である。Zoot Sims『Wa...
我が国の20世紀のジャズ盤紹介は、少し偏っていたように思う。特にテナー・サックスについては、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズばかり。ちょっとマニアックなところで、ウェイン・ショーター。テナー・サックスは、ジャズ演奏者の中でも数が多い楽器にも関わらず、コルトレーン、ロリンズ、ショーター以上、終わり、という感じの紹介が多かった。でも、実は、テナー・サックス奏者については、聴き応えのある、個性溢...
アート・ファーマーの好盤を聴き進めている。ジャズを本格的に聴き始めた頃から、ずっと聴いてきた、お気に入りのトランペッターなのだが、意外と当ブログの記事になっていない好盤がまだまだ沢山ある。ファーマーについては、ジャズ盤紹介本に載らないリーダー作にも優れたものが多い。Art Farmer『Perception』(写真左)。1961年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh...
アート・ファーマーは、ジャズ・トランペッターとしてお気に入りの一人。ジャズを聴き始めた頃から、ずっとファーマーのトランペット&フリューゲルホーンを聴いてきた。アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」がずっとお気に入り。Art farmer Quartet featuring Jim Hall『Live at the Hal...
コルトレーンに関する記事の改訂を行なっている。とにかく、当ブログでのコルトレーンの記事は古いものがほとんど。10年以上前のものが大多数で、内容的にも整理されていないものもあり、もう一度、見直さないとなあ、ということで、今回の改訂作業である。コルトレーンはリーダー作で演奏する場合は、基本的には「我が道を行く」タイプで、サイドマンの音を聴きながら、自分の音を調節したりは滅多にしないタイプ。とにかく、...
演歌の代表的女性歌手・八代亜紀さんが昨年12月30日に逝去していたとの報道が流れた。なんてことだ。八代亜紀さんは、1973年に「なみだ恋」のヒットででメジャーに。その後「愛の終着駅」「もう一度逢いたい」「おんな港町」「舟唄」など数々のヒット曲をリリース、1980年には「雨の慕情」で第22回日本レコード大賞の大賞を受賞している。とにかく歌が上手い。声量、テクニック、申し分なく、演歌がメインでありな...
10歳代後半以降、マイルス・ディヴィスが大のお気に入りゆえ、ジャズ・トランペットについては、かなり昔から聴き親しんでいる。トランペットという楽器の性格上、サックスの様に激情にまかせて、長々とフリーキーに吹き続けることが不得手。肉声よりもキーが高音なので、大きな音はかなり耳障りにもなる。よって、ジャズ・トランペッターは正統派、純ジャズ志向が大多数。それでいて、音色や吹き方、表現がそれぞれ個性があ...
ジャズは「純ジャズ」ばかりでは無い。「純ジャズ」に8ビートを導入、ロックの要素を融合したクロスオーバー・ジャズ、そこから、ソフト&メロウ、そして、アーバンな要素を加えて一世を風靡したフュージョン・ジャズ。そして、フュージョン・ジャズの流麗さ、聴き心地の良さを強調したスムース・ジャズ。ジャズ盤を聴いて楽しむのは、基本、純ジャズがメインなんだが、ここバーチャル音楽喫茶『松和』は、クロスオーバー&フュ...
コルトレーンの共演盤はフリー&スピリチュアル志向のものは「それなり」に評価されているが、ハードバップ時代の共演盤については評価が芳しくない傾向にある。特に、20世紀の我が国の評論にその傾向が強い。どうも、コルトレーンには「共演」が許されていない感じなのだ(笑)。『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Ken...
アトランティック・レコード時代のコルトレーンは、シーツ・オブ・サウンドを吹きまくったり、モード・ジャズやソプラノ・サックスにチャレンジするリーダー作は評価が高いが、それ以外のリーダー作については評価がイマイチ。20世紀の時代では、我が国でその傾向は顕著で、我が国のコルトレーン盤の紹介本では、評価は「けちょんけちょん」である。今となっては、どうして、そんな評価になるのか、その真意はよくわからないが...
今年の冬は暖冬傾向だとは言うが基本的には冬、当然、寒い日が続く。寒い日には暖かい部屋でジャズを聴く、と言うのが定番なんだが、聴くジャズもクールなジャズは心までがクールになりそうでちょっと。ファンキーでソウルフルなジャズが温まって良い。と言うことで、この冬は「エディ・ハリス」を集中して聴き直している。「趣味が悪いなあ」と言う声が聞こえてきそうなんだが、それもそのはず。エディ・ハリスは、ソウルフルで...
1950年代「ハードバップ・マイルス」の良き相棒、レッド・ガーランド。ガーランドのピアノはシンプルでバップでブルージー。バックに回れば伴奏上手。フロント管を引き立て鼓舞する、合いの手を打つような、シンプルなピアノ。そんなガーランド。意外とハードバップ時代のコルトレーンのバッキングにも、上質の「伴奏上手の妙」を発揮する。Red Garland『Soul Junction』(写真左)。1957年11...
明けましておめでとうございます。今年最初のブログ記事は、コルトレーン記事のリニューアルからスタート。コルトレーン関連の記事については、2010年代前半に書かれた記事が多く、今を去ること10年以上になる。10年以上にもなると、自分のジャズの「聴き耳」も進歩しているので、昔、聴けなかった音が聴けたり、昔、気が付かなかったフレーズや展開、アレンジに気がついたりする。John Coltrane『Tran...
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ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立...
ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。Art Blakey & The Jazz Mess...
レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。Enrico Rava『...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」があった。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。Wolfgang D...
今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Mai...
小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで32枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは2枚。今回はキース・ジャレットの登場。 Keith Jarrett『The Köln Concert』(写真左)。1975年1月24日、当時の西ドイツ、ケル...
この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで31枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは3枚。Chick Corea『Return to F...
まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本...
フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g)...
フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパ...
我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容...
ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone...
ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と...
この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (ke...
「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。K...
「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左...
1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生...
ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演...
ジュリアン・ラージの『View with a Room』は傑作だった。ラージとフリゼールのギター2本の絡みが素晴らしく、官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」というラージのギターの独特な個性全開。フォーキーで、どこか懐かしい、哀愁感漂う米国ルーツ・ミュージックの音要素を融合して、ジャズのフォーマットに乗せる「アメリカーナ」でジャジーな音世界は見事だった。Julian L...
ドナルド・バードは「機を見て敏なる」トランペッターだった。トランペッターとして、テクニックは優秀、端正でブリリアントで理知的な吹奏。破綻無く、激情に駆られて吹きまくることなく、理知的な自己コントロールの下、常に水準以上のバップなトランペットを吹き上げる。そんなドナルド・バード、ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース、その後、ファンキー・ジャズに手を染め...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のギターの音世界が好きで、1970年代から、ずっとジョンアバのアルバムを追いかけている。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。John Abercrombie『Current Event...
僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。Chick Corea...
チック・コリアのリーダー作の「落穂拾い」。当ブログに、まだ記事化していないチックのリーダー作を順に聴き直している。意外とソロ・ピアノ集が多く、記事化されていない。あまり興味が湧かなかったかとも思ったのだが、聴き直してみると、どのアルバムもチックの個性が散りばめられていて、聴き応えのあるものばかりである。Chick Corea『Children's Songs』(写真左)。1983年7月の録音。E...
チック・コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブは凄く相性が良い。ジャズ特有のファンキー色を限りなく押さえ、ブルージーでマイナーな展開を限りなく押さえ、硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し、現代音楽の様なアブストラクトな面を覗かせながら、メロディアスで流麗なフレーズを展開する。楽器は違えど、音の性質は同類の二人。Chick Corea & Gary Burton『Lyric Sui...
向井滋春は、和ジャズを代表するトロンボーン奏者の一人。1976年に初リーダー作『For My Little Bird』でデビュー。当初は、コンテンポラリーな純ジャズがメイン。しかし、1979年、約1年間、NYに在住した折にフュージョン・ジャズに触発される。そして、いきなり、フュージョン・ジャズに転身する。向井滋春『Spacing Out』(写真左)。1977年9月28日、日本コロムビア第1スタジ...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。...
1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Ti...
1973年、一旦解散したマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。その後、まもなく、リーダーのティム・ハウザーは、ローレル・マッセ、ジャニス・シーゲルと出会う。そして、アラン・ポールを紹介され、新生マントラを立ち上げることを決意、『The Manhattan Transfer (Atlantic, 1975) 』(左をクリック)で再デビュー...
マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)は、1969年にティム・ハウザー(Tim Hauser)が中心となり結成したジャズ・コーラス・グループ。マントラと言えば、1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル(1979年からシェリル・ベンティーン)、ローレル・マッセーの4人組という印象だが、これは再結成後...
シビアで硬派で「即興が命」の純ジャズを聴き続けた合間、耳休めにウエストコースト・ジャズを聴くことが多い。ウエストコースト・ジャズは、1950年代後半から1960年代全般にかけて、米国西海岸、ロスアンゼルス、サンフランシスコを中心に流行ったジャズの演奏トレンド。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演...
リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、バークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは、学者然とした「理詰め」の雰囲気が強い。ピアノの個性は、リリカルで耽美的、そして「多弁」。ハイテクニックを駆使して、多弁なフレーズを弾き...
ジャズ・インストを聴き続けた合間、耳休めに女性ジャズ・ボーカルを聴くことが多い。もともとジャズ・ボーカルは得意では無い。流石に、レジェンド級の、低めの声で唸るような、こぶし豊かな、日本で言う「演歌系」のような本格派の女性ボーカルは得意では無い。聴くには聴くが、申し訳ないが、ジャズ・ボーカルの勉強の為に聴くことがほとんどで、ジャズ・インストの合間の「耳休め」に聴くことは無い。合間の「耳休め...
現代のジャズ・シーンにおいては、ギタリスト人材が豊富に感じる。そんな中でも、突出した存在の一人が、ジュリアン・ラージ。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。音の志向は、現代のコンテンポラリーなジャズ・ギターで、パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、過去のレジェンド級のコンテンポラリー...
ボブ・ジェームスは、クロスオーバー〜フュージョン〜スムース・ジャズにおける、僕の一番のお気に入りアーティスト。10歳代半ばから、ずっとリアルタイムで、ボブ・ジェームスを聴き続けている。彼自身のキャリアは、60年を越える。フォープレイが解散状態に陥ってからは、自身のピアノ・トリオでの活動が目立っていた感がある。Bob James『Jazz Hands』(写真左)。2023年10月のリリース。ボブ・...
今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」。ヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)もそんな「ニューフェース」の一人。ヴィジェイ・アイヤーは、1971年10月生まれ。初リーダー作が1995年。アイヤーが24歳の頃。以降、アイヤーのリーダー作は、20枚以上を超える。が、我が国では、なかなか人気が出ない。僕は全く知らなかった。アイヤーの名前を知るようになったのは、2014年か...
コロナ禍をやり過ごし、現代のジャズについては、順調にニューリリースを継続している。安堵である。この5年ほどの傾向として、今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」の好盤リリースが目につく。そんな「遅れてきた」ニューフェースなジャズマン達は、20歳代後半から30歳台にも、コンスタントにリーダー作をリリースしたりと、ジャズの第一線で活動していた。が、その情報が何故か埋もれていたみ...
ジャズの楽器の中での「絶滅危惧種」の一つ、ヴァイブ(ヴィブラフォン)。スイング時代には、ライオネル・ハンプトン。ハードバップ期には、ミルト・ジャクソンがモダン・ジャズ・ヴァイブを確立した。エディ・コスタ、デイブ・パイク、ヴィクター・フェルドマン、レッド・ノーヴォらが後に続く。そして、ハードバップ後期には、レム・ウィンチェスター、ゲイリー・バートン、ボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ジャズの多様化の時...