ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズ喫茶『松和』は仮想喫茶店。大好きなジャズや70年代ロックの話題など、音楽三昧な日々をどうぞ。
久々に「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」のリーダー作を一気に聴き直したくなった。ミンガスのキャリア初期の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』 を聴いて、雄大なオーケストラルな音世界、正統なモダン・ジャズのアレンジを踏襲した重厚な音作り、しっかりと統率されたグループ・サウンド、に感じ入って以来、節目節目でミンガス・ジャズを聴いてきた。僕はミンガス...
この盤が「フリー・ジャズ」の原点だ、とするのには違和感がある。この盤を聴けば「フリー・ジャズがなんたるかが判る」なんてことは無い。そんなにジャズは単純なものでは無いし、甘いものでも無い。作った本人からすれば、一応「ハーモロディクス理論」というものに則った結果だというし、演奏を聴けば、必要最低限の「重要な何らかの決めごと」が演奏の底にあるのが判る。それでなければ、旋律を持った「音楽的な演奏」が成立...
夏はラテン・ジャズが良い。エアコンの効いた涼しい部屋の中で聴くラテン・ジャズは格別のものがある。こってこてラテンな音楽は、ねっとり暑苦しくていけないのだが、シャープなアレンジに乗った、切れ味良く軽快なラテン・ジャズは聴いていて気持ちが良い。ラテンなフレーズには「キメ」のフレーズがあるのだが、それがバッチリ決まると爽快である。Chano Dominguez, Rubem Dantas & ...
モード・ジャズあるいはモーダル・ジャズ(modal Jazz)は、コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏されるジャズ。モダン・ジャズのサブ・ジャンルのひとつ。旋法とは、旋律の背後に働く音の力学。 旋法は主音あるいは中心音、終止音、音域などの規定を含む(Wikipedia より抜粋)。モード奏法は、それまでのジャズ、いわゆる、ビ・バップ〜ハードバップにおける「コード進行によって限定される、アド...
バド・パウエルは、モダン・ジャズ・ピアノの祖であり、ピアノ・トリオ・スタイルを確立させた、つまり「ピアノ+ベース+ドラム」の現代のピアノ・トリオ編成を定着させたピアニスト。ジャズ・ピアノを知る上では避けては通れないピアニストであり、パウエルのピアノを理解しておかないと、他のピアニストの個性や特徴が判らなくなる。といって、パウエルのどのアルバムを聴けば良いのか、迷うところではある。ルーストの『バド...
ジャズ・ピアノについては、ジャズの基本楽器のひとつとして、粛々と伝統は引き継がれている。フュージョン・ジャズのブームの時も、電子ピアノやシンセなど、鍵盤楽器の系譜はしっかりと引き継がれている。1980年代半ばの純ジャズ復古のムーヴィメント以降は、堅調に若手ピアニストが出てきて、現代においても、ジャズ・ピアニストはコンスタントに活躍している。Bill Charlap(ビル・チャーラップ)。1966...
2週間ほど前に、Roy Eldridge, Dizzy Gillespie, Harry Edison『Tour De Force』について語ったのだが、この盤、録音も良くて、難しいことを考える事無く、リラックスして聴ける、聴いて気持ちがスカッとなるジャズ盤。そういえば、ディジー・ガレスピーとロイ・エルドリッジが組んだ、同じ様なトランペット・バトルな盤があったなあ、と思い立った。Roy Eldr...
とにかく暑い。3日ほど前までは不安定な天候で「前の梅雨明け宣言は間違いやったな」と思っていたら、一昨日辺りから、晴れるようになったら、途端に湿度過多の酷い暑さがやってきた。前の梅雨明け宣言時は、これほど湿度は高くなかったのだが、今は朝から外出を憚るような、異常なほどの湿度の多さ。これでは、ジャズ鑑賞もままならない。Pasquale Grasso『Be-Bop!』(写真左)。2022年6月のリリー...
最近のECMレコードは、欧州各国の優れたジャズマンのみならず、米国の中堅クラスの優れたジャズマンのアルバムを制作している。以前は米国のジャズについては、ECMレコードの「音志向」に合わないところがあって、米国のジャズマンは、ECMレコードでのアルバム制作は希だった。ただ、最近は、例えば、ヴィジェィ・アイヤー、クレイグ・テイボーン等など、米国ジャズの中堅ジャズマンが続々とECMと契約して、優れた内...
マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。拠点はノルウェーのオスロ。北欧ジャズの拠点でもある。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。21世紀に入ってもなお、ECMレーベルは活発な活...
エルヴィン・ジョーンズのドラミングがお気に入りである。もともとは、ジャズを聴き始めた頃、ジョン・コールトレーンの「伝説のクインテット」の諸作を聴く中で、ドラムのパフォーマンスがとても気に入って、そのドラムを叩いているのが「エルヴィン・ジョーンズ」だった。それ以降、40年以上が経過した今でも、エルヴィン・ジョーンズのドラミングはお気に入りである。Elvin Jones『Dear John C.』(...
Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)は、僕の大好きなバンドの一つ。ドラマーのアート・ブレイキーが主宰するバンドで、1955年に旗揚げ、1990年にリーダーのブレイキーが亡くなるまでの、35年間の長きに渡って、第一線で活躍した。ジャズ・メッセンジャーズは、有望新人の登竜門的なバンドで、35年の活動期間の間に、相当数の...
ジャズ盤をいろいろ聴いていると、たまに「これ何」と聴き耳を立てる異色盤が出てくる。特に、1960年代後半、ジャズがポップス&ロックの潮流に押されて、人気のポップ音楽から聴き手を限定するマニアックな音楽になりつつあった頃、何とか、ポップス&ロックのファンに訴求する「カヴァー・ジャズ」が流行した。つまり、当時流行っていたポップス曲やロック曲をジャズにカヴァーしてアルバム化する訳だが、ポップス曲やロッ...
最近、天候が不安定な千葉県北西部地方。梅雨明けしたのは良いが、その後、1週間ほど酷暑の日が続いたと思ったら、一転、2週間前の土曜日辺りから、ほどんど晴れない、雨模様の日々、そして、いきなりゲリラ豪雨と、特にこの2週間、戻り梅雨のような状態になって鬱陶しい。おまけに天気予報が当たらない。その日になっても予報が当たらないなんて、どんな予報システムをしているのやら。鬱陶しい不安定な日に加えて、湿度が異...
先々週の土曜日より、梅雨が戻った様な、イマイチの天気がずっと続いている千葉県北西部地方。一昨日からは定期的にゲリラ豪雨に見舞われて、ゴーッという雨の音にビックリしたりする。天気が悪いのに加えて、湿度が異常に高い。少し、家事で動いたら、汗が噴き出てくる。こういう時、気持ちがスカッとするジャズを聴きたくなる。Roy Eldridge, Dizzy Gillespie, Harry Edison『To...
「小粋なジャズ」を探し当てては聴いている。そもそも「小粋」とはどういう意か。辞書を紐解くと「どことなく粋(気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること)なこと。洗練されていること」とある。ジャズで言うと、米国のウエストコースト・ジャズ(西海岸ジャズ)がそんな感じかな。洗練されていて、垢抜けていて、仄かな色気がある。うん、米国西海岸ジャズがズバリかな(笑)。『Herbi...
「小粋なジャズ」盤を探しては聴いている。ネットを徘徊していて「The Roy Haynes Trio」の盤に引っ掛かった。「The Roy Haynes Trio」と言えば『We Three』という名盤がある。こちらは、ベースにポール・チェンバース、ピアノにフィニアス・ニューボーンJr.。錚々たるメンバーなんだが、もう一つ「The Roy Haynes Trio」の盤があるのか、と思わずチョイス、...
男性ジャズ・ボーカルについては、一に「フランク・シナトラ」、二に「チェット・ベイカー」、そして、三に「メル・トーメ」。この3人がずっとお気に入りである。シナトラは小学校の時代からラジオで聴き親しんでいたので「別格」なのだが、チェット・ベーカーは、ジャズを聴き初めてから、最初に好きになった男性ボーカリストである。チェットの人生は「破天荒」そのもので、若かりし頃は天才プレイヤーで、ルックスも良く、女...
2021年2月9日、チック・コリアは永眠した。79歳であった。それから、既に1年5ヶ月が経過しった。チックがあの世に旅立ったことが、今でも信じられず、まだ、元気にピアノを弾いている様な気がしてならない。今年2月9日の一周忌に合わせて、チック・コリア・トリビュート盤がリリースされているのを見ると、やっぱり、チックはあの世に旅立ったんやな、としみじみしてしまう。Steve Gadd & Mi...
今日は猛暑がぶり返した千葉県北西部地方。湿度も高くて、朝からグロッキー気味。これだけ暑いとシビアなジャズは聴けない。ボサノバ・ジャズも良いんだが、選盤としては「ありきたり」。最近、ネットを徘徊していて、この人のアルバムを見つけた。ルイ・アームストロング、愛称は「サッチモ」。久し振りに、サッチモのボーカルを聴きたくなった。Louis Armstrong『What a wonderful world...
1970年代、和ジャズのピアニストは、管楽器に比べて、地味な存在が多かった。皆、テクニックは優秀、個性もしっかり備えているのにも関わらず、米国本場の有名ピアニストが常に優先され、もてはやされた。酷い時は、ちょっと聴いただけで、米国本場のピアニストの物真似、と揶揄されたこともある。しかし、皆、一流のジャズ・ピアニストであったと思っている。しかも、シッカリとした個性を兼ね備えていたと思う。それでも、...
ダニロ・ペレス(Danilo Pérez)は、パナマ出身のジャズ・ピアニスト。1965年12月29日生まれなので、現在56歳。耽美的でリリカルな現代ジャズ・ピアニストの中堅的存在。リーダー作は、1993年以降、現在まで10数枚。どちらかと言えば、サイドマンとしての客演アルバムが多い。ウェイン・ショーターとの共演を始め、レジェンド級のジャズマンとの共演も多い。僕は、ショーターのリーダー作でペレスの名...
ラリー・コリエル(Larry Coryell)。米国のフュージョン・ギタリスト。1970年代から1980年代半ばにかけて、我が国ではクロスオーバー・ジャズ〜フュージョン・ジャズの人気ギタリストとして君臨。何故か、1980年代半ば以降、我が国では人気が急速に衰え、1990年代では、知る人ぞ知るクロスオーバー・ギタリストになっていた。恐らく、日本のレコード会社と未契約のレーベルからのリリースだったの...
アーロン・パークス(Aaron Parks)。1983年10月、シアトルの生まれ。16歳でNYに移り、マンハッタン音楽学校に編入。18歳の時、ケニー・バロンの推薦でテレンス・ブランチャードのバンドに参加。24歳でブルーノートから『Invisible Cinema』でメジャーデビュー。2010年代は、ECMレーベルに所属。現代ジャズにおける「リリカルで耽美的なピアノ」の代表格。Aaron Park...
マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。拠点はノルウェーのオスロ。北欧ジャズの拠点でもある。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。このECMについては、1970年代後半、僕がジャ...
ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)のギターがお気に入りである。初めて、ジョンスコを聴いたのが1979年。確か『John Scofield Live』だった。独特の捻れたエレギの音。間と音の伸びを活かした、音のスペースが絶妙なアドリブ展開。1回聴いただけで、ぞっこん、である。当時のジャズ・ギターの世界の中でも、ジョンスコは、ジョン・アバークロンビーと双璧の「尖...
「音の魔術師」の異名を取った。伝説のアレンジャー、ギル・エヴァンス(ギル・エヴァンス)。アレンジのベースは「ビッグバンド」。しかし、そのビッグバンドの楽器の編成、音の重ね方、ユニゾン&ハーモニー、どれもがユニーク。他のビッグバンドには無い音が個性。そして、ソロイストの演奏スペースの広さ。アドリブ展開の自由度の高さが二つ目の個性。『The Individualism of Gil Evans』(写...
ビッグバンドについては、実はこの人のビッグバンドが一番のお気に入り。ギル・エヴァンス(Gil Evans)である。「音の魔術師」の異名を取った。伝説のアレンジャーである。生前は「清貧のアーティスト」だったそうで、その才能と実績に見合う収入は確保されてなかったト聞く。しかし、彼のアレンジ&オーケストレーションは限りなくアーティスティック。ギル・エヴァンスのアレンジについては、まず、各楽器のハーモニ...
暑い。とにかく暑い。酷暑である。この3日間、日中、外出するのは憚れる。夜になっても熱帯夜の連続。エアコンが無ければ、とうの昔に干上がっている(笑)。来週月曜日以降は、台風の影響で天気が悪化し、陽射しが滞るので、酷暑は一旦回避出来るとのこと。ほんまかいな、とも思うが、台風の影響が出てくることは間違い無い。これだけ暑くて湿度が高くなると、エアコンの効いている部屋の中とは言え、熱気溢れるジャズや、難度...
エレクトリック・マイルス、マイルス・デイヴィスのエレ・ジャズ時代のアルバムを順に聴き直している。今の耳で聴き直してみると、10〜15年前には聴こえなかった音や見逃していた音が聴けたりして、意外と面白い。現代ジャズでは、エレクトリック・ジャズは、ジャズの1ジャンルとして認められていて、意外とエレ・ジャズをやるジャズマンは結構いる。その現代のエレ・ジャズの担い手は、皆、エレ・マイルスの音世界をしっか...
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ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立...
ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。Art Blakey & The Jazz Mess...
レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。Enrico Rava『...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」があった。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。Wolfgang D...
今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Mai...
小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで32枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは2枚。今回はキース・ジャレットの登場。 Keith Jarrett『The Köln Concert』(写真左)。1975年1月24日、当時の西ドイツ、ケル...
この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで31枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは3枚。Chick Corea『Return to F...
まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本...
フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g)...
フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパ...
我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容...
ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone...
ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と...
この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (ke...
「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。K...
「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左...
1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生...
ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演...
漆黒ブルージーな、黒い情感のレジェンド・ピアニスト、マル・ウォルドロン。初期の「マル4部作」を聴くことで、マルの個性の基本部分が理解できる。そんな、マルの個性を理解する上で”便利”な「マル4部作」。今日は、そんな4部作のラスト盤を取り上げる。Mal Waldron『Mal/4; Trio』(写真左)。1958年9月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Addiso...
マル・ウォルドロン(Mal Waldron)は、漆黒ブルージーな、黒い情感のレジェンド・ピアニスト。2002年12月に逝去しているので、逝去後、既に20年以上が経過したことになる。もう、そんなになるのか。マルのピアノは個性的。硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの...
ブレッカー兄弟が立ち上げ、エレ・ジャズ・ファンクの代表的バンドとして、一世を風靡した「ブレッカー・ブラザーズ」。1994年にて活動を停止、2007年には、弟のマイケルが骨髄異形性症候群から進行した白血病によって逝去。このマイケルの逝去によって、「ブレッカー・ブラザーズ」は永久に活動停止となった。The Brecker Brothers『Out of the Loop』(写真左)。1992年4月〜...
そろそろ、日野皓正の「渡米後」のフュージョン・ジャズからコンテンポラリー・ジャズについて、このブログでコメントせんとなあ、と最近、思い始めた。和フュージョン・ジャズを語る上では、日野皓正のフュージョン・ジャズ盤は避けて通れない。日野皓正『Daydream』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、日野皓正 (cor, flh), Dave Liebman (ts), John Trop...
初代「John Abercrombie Quartet」について、昨日の続きを。ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレッド・アイヒャーとリッチー・バイラークとの喧嘩の件、この双方が最終的に決別したのが、初代「John Abercrombie Quartet」の3枚目のアルバムの録音時のことであったらしい。John Abercrombie Quartet 『M』(写真左)。1980年11月...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のリーダー作のディスコグラフィーと、このブログでのジョンアバのリーダー作の記事化の有無をチェックしていて、あるパーソネルのECMレーベルでのリーダー作のみが廃盤になっているのに気がついた。ジョンアバは長年、ECMレーベルのハウス・ギタリストの位置付けだっただけに不思議なことである。どうも、よくよく見てると、リッチー・バイラークが入っているパーソネ...
ジュリアン・ラージの『View with a Room』は傑作だった。ラージとフリゼールのギター2本の絡みが素晴らしく、官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」というラージのギターの独特な個性全開。フォーキーで、どこか懐かしい、哀愁感漂う米国ルーツ・ミュージックの音要素を融合して、ジャズのフォーマットに乗せる「アメリカーナ」でジャジーな音世界は見事だった。Julian L...
ドナルド・バードは「機を見て敏なる」トランペッターだった。トランペッターとして、テクニックは優秀、端正でブリリアントで理知的な吹奏。破綻無く、激情に駆られて吹きまくることなく、理知的な自己コントロールの下、常に水準以上のバップなトランペットを吹き上げる。そんなドナルド・バード、ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース、その後、ファンキー・ジャズに手を染め...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のギターの音世界が好きで、1970年代から、ずっとジョンアバのアルバムを追いかけている。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。John Abercrombie『Current Event...
僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。Chick Corea...
チック・コリアのリーダー作の「落穂拾い」。当ブログに、まだ記事化していないチックのリーダー作を順に聴き直している。意外とソロ・ピアノ集が多く、記事化されていない。あまり興味が湧かなかったかとも思ったのだが、聴き直してみると、どのアルバムもチックの個性が散りばめられていて、聴き応えのあるものばかりである。Chick Corea『Children's Songs』(写真左)。1983年7月の録音。E...
チック・コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブは凄く相性が良い。ジャズ特有のファンキー色を限りなく押さえ、ブルージーでマイナーな展開を限りなく押さえ、硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し、現代音楽の様なアブストラクトな面を覗かせながら、メロディアスで流麗なフレーズを展開する。楽器は違えど、音の性質は同類の二人。Chick Corea & Gary Burton『Lyric Sui...
向井滋春は、和ジャズを代表するトロンボーン奏者の一人。1976年に初リーダー作『For My Little Bird』でデビュー。当初は、コンテンポラリーな純ジャズがメイン。しかし、1979年、約1年間、NYに在住した折にフュージョン・ジャズに触発される。そして、いきなり、フュージョン・ジャズに転身する。向井滋春『Spacing Out』(写真左)。1977年9月28日、日本コロムビア第1スタジ...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。...
1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Ti...
1973年、一旦解散したマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。その後、まもなく、リーダーのティム・ハウザーは、ローレル・マッセ、ジャニス・シーゲルと出会う。そして、アラン・ポールを紹介され、新生マントラを立ち上げることを決意、『The Manhattan Transfer (Atlantic, 1975) 』(左をクリック)で再デビュー...
マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)は、1969年にティム・ハウザー(Tim Hauser)が中心となり結成したジャズ・コーラス・グループ。マントラと言えば、1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル(1979年からシェリル・ベンティーン)、ローレル・マッセーの4人組という印象だが、これは再結成後...
シビアで硬派で「即興が命」の純ジャズを聴き続けた合間、耳休めにウエストコースト・ジャズを聴くことが多い。ウエストコースト・ジャズは、1950年代後半から1960年代全般にかけて、米国西海岸、ロスアンゼルス、サンフランシスコを中心に流行ったジャズの演奏トレンド。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演...
リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、バークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは、学者然とした「理詰め」の雰囲気が強い。ピアノの個性は、リリカルで耽美的、そして「多弁」。ハイテクニックを駆使して、多弁なフレーズを弾き...