「いいか、おれたちはクラン・五月の薔薇に属している。ただで済むと、思うなよ」「なんだそりゃ?」「レイアティーズ公子が率いる、探索者旅団だよ」 ルサルカの言葉に…
「いいか、おれたちはクラン・五月の薔薇に属している。ただで済むと、思うなよ」「なんだそりゃ?」「レイアティーズ公子が率いる、探索者旅団だよ」 ルサルカの言葉に…
おとこは、おまえは何がいいたいという目でハクを見ている。「独裁国家ではひとの命は畑から取れる程度の価値だったが、ルビャンカの地下で命の価値はもっと安くなる。…
そのケージでは、剣を持ったおとこ同士が切り結んでいる。ルサルカは、薄く笑う。「ここでは法があって無いようなものだからな、ダンジョン探索者同士の揉め事はああし…
ルサルカとハクが通り抜けた後、重々しい音をたてて門が閉ざされる。はあ、とハクは吐息をつく。「なんだか、随分簡単に通れるんだな」「監獄だからな、入るのは簡単だ…
十二月、君は青いパズルだった (講談社ラノベ文庫) [ 神鍵 裕貴 ]楽天市場 ${EVENT_LABEL_01_TEXT} 「監獄?」 ハクは、驚いた声を…
「では、チュドーユドーよ。わたしとかれを、ディアギレフのダンジョンへ運んでくれるか?」 チュドーユドーは、人型から再び竜の姿になるがその大きさは馬程度だろうか…
ハクは左手に鎧通しを戻しながら、顔をしかめる。ルサルカの言葉通りであれば、魔女は廃人になった自分を操るつもりだったのかとこころの中で戦慄した。 首を失った竜…
ブラッドローズと名乗ったものの笑みは、愛らしい少女のそれであったがハクはその笑みがひどく恐ろしく感じる。実際対峙していると、生気を吸い取られているのではない…
海の香り、潮を含んだ風、突き抜ける青い空から降り注ぐ陽の光。ハクは、五感全体で海を感じる。到底これは幻覚の類だとは、思えない。間違いなく、ハクは海辺にきたの…
そうしてハクたちが会話を交わしている間に、クロスカントリー車は闇につつまれた平地を突き抜けていく。やがて、前方に街が見えてきた。 クロスカントリー車は速度を…
ハクはもう、なんでもありかとため息をつくと、前に回ってナビゲータシートに座った。ルサルカは当然のように手を出してきたので、ハクはイグニッションキーを渡す。「…
ハクは、苦笑する。「だが、おれはあと三日で死ぬんじゃあないのか?」 おんなは、喉の奥で笑う。「じゃあ、抱いたんだね」「いや、血を浴びた。多分、ダメなんじゃあ…
よく見ると、後ろのおとこが携帯電話で話をしているようだ。「ま、殺されるんならしかたないけどな。死ぬ前に、煙草を吸ってもいいか?」 黒スーツは、目を細めたがハ…
ハクは、呆れ顔になる。戸惑いながらも、とりあえず両手をあげた。「おれは、イガやコウガの出身じゃあないぜ。ただの平凡な、サラリーマンだ。ついでに言えば、社畜の…
おとこたちの纏う沈黙に不穏なものを感じた彼は、とりあえず手をあげると声をかける。「よお」 なんとも間抜けな声掛けであったが、黒スーツのおとこたちは気にしたふ…
夜は海を静寂で満たし、闇をその奥深くまで溶かし込んでいる。残酷なまでに玲瓏と輝く月は、鋼の質感を海面に与えていた。時折り息を吐くように、白い波が海面を渡って…
「ほう」再び老人の顔に戻った魔神は、値踏みするように黒天狐を眺める。突然、凶悪な風の刃が黒天狐に襲いかかった。地面は引き裂かれて土煙をあげ、森の枝が切り飛ばさ…
灰色のマントを纏いフードで頭を覆った魔道士は、夜空をみあげていた。無慈悲な女王たる月が冴えた輝きを放つ夜空から、八枚の黒い翼を広げた死の天使がごときおとこが降…
ヒースは、eVTOLの操縦桿を握っている。eVTOLは全長七メートルほどの、自動車に似た姿をしていた。だが、車輪のあるべきところにあるのは、四機のサイクロロー…
中央大通りを西側へ入り込むと、官庁街が広がる。その官庁街と商業区域の中間地点には公園があり、噴水がある池やちょっとした森林も公園の中にはあった。昼間はそれなり…
中庭は、爆笑と歓声にのみこまれている。ダンジョン・エクスプローラーやダンジョン・ガイドは、FASTを嫌っていた。自由に生きようとする彼らを、何かと管理しようと…
トキオのその行動はひどく衝動的にみえ、ゆえに皆の意表をついた。トキオは背中に差し込んでいた八式拳銃を抜き放ち、夜空にむかって撃つ。赤い銃火が闇に伸び、獰猛な音…
おんなは、平然と応える。「もちろんギルドはモンスターの部位やアーティファクトを管理しますけど、ダンジョンで得た知識は管理できないのでは?」「ヒースは戦争屋だか…
トキオが少し戸惑ったような笑みを見せるのを意に介していない態度で、トキオに貴婦人がするような礼をしてみせた。「えっと」トキオが何か言おうとしたのを遮るように、…
そこは、吹き抜けで剥き出しの夜空の下に開かれた空間であった。四角い館に囲い込まれた中庭であるが、館の規模が大きいためサッカーグランドほどの規模がある。そしてそ…
アキはやれやれと肩をすくめると、強化ガラスの砕けたケースに向き合う。そこには、確かにグリモワールらしきものがあった。まあ、ようするに禍々しい気配をまとった本が…
古書店には、独特なにおいがただよっている。彼女はそれが、死のにおいなのだと思う。書物に込められた死せる観念が、ゆるやかに立ち上ぼり店内をみたしている。彼女はあ…
ダンジョン・シーカーは、マンティコアの死体に歩み寄ると確認した。とどめをさす必要がないと判断したのかマンティコアから離れ、バイクのところへゆく。レザージャケッ…
チェーンソウはエリカの手から離れ、橋の上に落ちる。エリカは、尻餅をつく。エリカは、なぜか薄く笑った。恐ろしくて気を失いそうであったが、不思議とやりきったような…
「いや、まて」カタギリは、不審げな声をあげる。首を失ったマンティコアは、地に落ちることなく空中に留まっていた。ロミオもあやしく思ったのか、追撃のため再度高周波…
「十分ですよ、あれで。マンティコアは、耐えきれなくなる」長大な高周波チェーンソウを肩に担いだロミオが、口を挟む。「別位相から、我々の位相へと存在を同期させてき…
それは、傷口から膿が流れ落ちるようであった。闇が自身の重みに耐えられなくなり、液状化して崩壊する。エリカは、そんな様を目の当たりにした。黄昏の薄明かりに引きず…
ロミオは、深く頭を下げた。エリカは笑みをカゴメに投げたが、カゴメは多少こわばった微笑でそれに応える。エリカは頭をあげたロミオに、向き合う。「ねえ、撮影していい…
エリカは、少しため息をつく。「逃げられるかしら」ロミオはエリカの問いに、首を横にふった。「場所が、よくありません。橋の上、ですからね。多分もう逃すことはないと…
エリカがロミオに眼差しを、向けた。「不可解、てどういうこと?」カタギリが紫煙を吐きながら、言った。「モンスターを狩るものは、仕留め損ない傷ついたモンスターを逃…
「これは、不味いんじゃあないかな」エリカは、カタギリの言葉に驚いてふりむく。カタギリは、少し蒼ざめた顔に引き攣ったような笑みを浮かべている。彼は、洒落たサファ…
僕はその迷宮にも似た街の中を彼女と共に、歩いていた。逢魔が時は世界をくすんだ色の無い景色に塗り変え、いたる所にうずくまる影が今にも動き出しそうで不安になり、僕…
「まあ、身構えることはないよ、ユーリ君。僕は君と、友達になりたいだけなんだ。今日のところは、ちょっとばかり挨拶にきたというわけだね」そういわれても、どうみても…
そのとき、唐突に目の前の空間に白い輝きが出現する。ユーリは、隣にいるダーナも驚いて前を向いたことに気がついた。雪原の白さをまとう輝きは薄れてゆき、その輝きの中…
ユーリ・ノヴァーリスは、ブリッジで操舵レバーを握っている。パルシファルの減速プロセスは、もう最終段階にはいりつつあった。ブリッジの全天周スクリーンは、天頂付近…
「いやその」フランツは、苦笑を浮かべた。「あれって、つまりルシファー・ファウストのことですよね」ロキは、頷く。ティークは、思わず笑って口を挟んだ。「それはまた…
夜は漆黒の静寂を内に湛え、ゆっくり世界を沈めてゆく。静寂は、至高の音楽であり。沈黙は、神がもたらす至上の啓示となる。獣は狂気の荒野を駆け、屍衣に守られし乙女を…
「作戦開始前の、ブリーフィングをはじめる」いつものように凶悪な表情をしたワルターが、宣言をした。ティークは頷くと、あいかわらず無意味に贅沢な設備が備えられた会…
グスタフは、ため息をつく。「隊長の戦闘記録、気になったんで確認したんですよ。ホワイトファングとの戦闘中の記録は、ノイズ混じりでよく判らなかった」ケンは、笑う。…
エンシエントロード内では、加速は行われず慣性航行となる。よって人工重力は発生しないはずであるが、居住ブロックは船外に放出され船の周りを回転することで人工的な重…
ワルターは、再びユーリのほうへ向き直った。「航海士、ミリタリーモジュールの収容は、完了したのか?」ユーリは、頷く。「損傷を受けた機体を含め、全ミリタリーモジュ…
シルヴィアは、夜の闇が持つ漆黒で染められた細身のドレスで纏った肢体を、パルシファルのブリッジに晒している。ただ大気圏突入型宇宙船のように見事な流線型を持つ彼女…
「ダメージコントロール」ケン・ブラックソードの声に、ヴェリンダが応える。「本機本体の損傷は、ゼロ。まあ、スペースキヤノンの残弾尽きて、スペースアックスもエネル…
ルネ・ジラール連邦艦隊少尉は、網膜投影ディスプレイに映される発着用ハッチを見つめていた。彼のファイター仕様ミリタリーモジュールで構成された小隊八機は、発着用ハ…
「ヴェリンダ、連邦旗艦の発着ハッチの位置を教えてくれ」ケンは、旗艦に手をのばせば届くところまでたどりついていた。旗艦の迎撃用機関砲は、味方を誤爆するのを恐れて…
カール・グスタフの隊は、乱戦に入りつつあった。連邦艦隊の旗艦は、目の前にいる。しかし、旗艦を背負った連邦のミリタリーモジュールが行う防衛戦は、熾烈を極めた。グ…
ケン・ブラックソードは、一編隊八機から追われている。ケンは羽毛で硝子細工を撫でるような繊細さを要求される自機を巧みに操作し、降り注ぐスペースキヤノンの砲弾をか…
常識ではありえない、奇妙なドッグファイトがはじまろうとしている。それはドルーズとウルフバートの間にだけ存在する、暗黙の呼吸に基づく戦闘だ。あまりに予想どおりの…
「ウルフバートと推定される機体を、見つけました」ドルーズは、彼のフェアリーであるミルククラウンの言葉に頷く。ミルククラウンは、ドルーズの視界にウルフバートの映…
「ブラックソード隊、発艦する!」ケンが声をあげると同時に、電磁カタパルトで加速されたミリタリーモジュールは宇宙空間へと飛び出す。連邦軍が散布した微粒子の中に飛…
艦底に巨獣がぶちあたったように、パルシファルは揺れる。全天周スクリーンがホワイトアウトしたのは数秒のことで、スクリーンにはぬばたまの闇が戻っていた。ダーナの叫…
ワルターは刺すように強い眼差しを、ユーリに向ける。「ノヴァーリス航海士、進路を連邦艦隊へ向けろ。第一戦闘速度まで、加速」ユーリはごくりと息をのむと、操舵レバー…
ユーリ・ノヴァーリスは、パルシファルの戦闘艦橋にいた。戦闘艦橋を覆う巨大な全天周型スクリーンの天頂付近に、木星が異様な姿を晒している。その惑星は狂気と混乱を象…
「科学班長、フランツ・フェルディナンド、入ります」フランツは、ロキの「入りたまえ」という返答を待つことなく、入室した。ロキはずっと使っていた艦長室をワルターに…
ミリタリーモジュールを眺めている。機体の装甲には、漆黒の塗装がなされている。夜の闇を切り裂く稲妻のように、金色のストライプがボディに描かれていた。間違いなく、…
凍てついた冬の夜空で輝く星の輝きを宿した瞳で、キルケゴールはシュレーゲルを見つめる。そして、問いを発した。「確か連邦艦隊には、ネームドであろうパイロットがいた…
シュレーゲルは、ブリュンヒルドの作戦室から量子リンクで接続しパルシファルでの会議に参加していた。シュレーゲルから立体映像でパルシファルの乗組員が見えているよう…
ネグリは、鋭い眼差しで嫌そうな顔をするガタリを見つめる。「むろん、ひとりのパイロットが戦況を左右するとは思わないがね。しかし、ずば抜けたパイロットが思わぬ事態…
ネグリは、冷たい怒りを潜ませた声を出す。「戯れ言を許容するのも、時と場合によるぞ。大佐」ガタリは、不思議そうに問い返す。「戯れ言? なぜです? ルシフェルの相…
「敵艦ルシフェルは、我が艦隊インドラクラス六隻、ヴァーハナクラス十隻を一斉射で行動不能に陥れました。戦艦十六隻のバリアをものともせず、電磁パルスを艦体に浴びせ…
フェリックス・ガタリは連邦艦隊旗艦ヴィシュヌの執務室で、ヴァーチャル・コンソールを操作する。殺風景な部屋が、大きなヴァーチャル会議室の映像に切り替わった。そし…
ティークは、その艦長室を贅沢だなと思う。パルシファルは元々洋上艦として造られた船であるため、仮想現実ですませられる部分も物理的に作り込まれていた。その艦長室も…
キルケゴールと呼ばれたおんなは、目を細めケンを見る。キルケゴールの左目は黒い肉眼であるが、右目は機械の義眼であった。右目としてはめ込まれた強化レンズが放つ冷徹…
ケンの言葉に応えるようにフランツは、優雅に一礼をする。「これは失礼をした、ケン・ブラックソード君。それと、僕のことはフランツと呼ぶといいよ!」フランツはまた、…
ダーナはテーブルに身をのりだすと、ぐっとユーリに顔を近づけた。「それでね、ユーリ。この船のメインパイロット、あなたが採用されるのほぼ決まりだから」ユーリは、目…
ケンは、にっと歯を見せて笑い親指をたてる。「よし、ユーリ。メス・デッキに、行こうぜ。そこに皆、集まってる」ユーリは、少し驚いた顔をする。メス・デッキは、下士官…
ユーリ・ノヴァーリスは、パルシファルへと向かうバージに乗っていた。物資の運搬が主な担務であるバージであるから、ひとの乗り心地はあまり考慮されていない。荷物のつ…
フランツは、微笑みながら頷く。「ええ。パルシファルのベースとなったのは、第三帝国と同盟を結んでいた海洋帝国フソウが寄贈したマホロバ級と呼ばれる戦艦だったと聞き…
護衛官が、呆れた声をだす。「よく、あなた方はそんな船を、使おうという気になりましたね」ティークは、笑いながら応える。「この程度の出鱈目さに躊躇いを感じていては…
ティークは、ここは贅沢な部屋だと思う。そこは、パルシファル内のブリーフィングルームであった。宇宙戦艦内のブリーフィングは、VR装備を使いネットワーク上の仮想空…
ホフマンは、闇の中にいた。その闇はとても深く、死そのもののように思える。ホフマンは死とはなるほど、このようなものかと馬鹿げたことを思う。もしかすると自分が死ん…
シュレーゲルは、信じがたいものをみる目で連邦艦隊を見ている。全く打つ手がないほどの無敵さをもった連邦艦隊が、抵抗する術もなく完膚に打ち砕かれていた。シュレーゲ…
ロキは苦笑を浮かべながら、肩を竦めた。「気にするな、フランツ君。どうやらパルシファルは、覚悟を決めたようだ」フランツは、はあ? といったふうに目を見開く。それ…
「インドラクラスから、ビーム砲の砲撃がきます」ヴェルザンディのあげた報告の声とほぼ同時に、全天周スクリーンの天頂付近が七色の光を放つ。無数の虹が砕かれまき散ら…
「ビーム砲、全て直撃ですが、目標に変化はありません」ブリッジの艦長席で、クレルボーはうんざりしたような顔でオペレータの報告を聞いた。突然戦闘宙域に出現したその…
「さすが、わたしの計算は完璧だね」スクルドが、とても上機嫌な声を出す。パルシファルは、見事に連邦艦隊とテラ艦隊の中間地点に出現していた。「ああ、そうだな」フラ…
「戦闘宙域に、小惑星出現」オペレータの報告と共に、フライアの全天周スクリーン天頂部に出現した物体をみて、シュレーゲルは頭を抱える。「うーん、あれはどうやらカイ…
フェリックス・ガタリは連邦艦隊旗艦ヴィシュヌの自室で、もの思いに耽っていた。毛皮に覆われた顔で光る金色の瞳を、三日月のように細めている。ガタリにとって、テラと…
「敵ミリタリーモジュール十六機、ジークルーネに接近中。後二百秒で、戦闘距離に入ります」落日のように赤く輝く薔薇に彩られた顔を、クリス・ローゼンクロイツは少し曇…
ヴェルザンディの切迫した声に、フランツが叫び声を被せる。「王陛下、あなたは脱出を」「馬鹿を、いいたまえ」ロキ王は、落ち着いた声で応える。「テラごと吹き飛ぶのに…
パルシファルのブリッジは、重低音の響きに満ちている。月の光で輝いているかのような白衣を纏ったフランツ・フェルディナンドの周りには、コンソールが光の渦を造り上げ…
「エイリーク、沈みます」オペレータの声に、シュレーゲルは全天周スクリーンを見上げる。連邦艦隊の手前に、星が生まれたかのような明るい輝きがあった。ある意味エイリ…
「よし、ルーイ・ノヴァーリス航海士。よくやってくれた」突然のホフマンが発した言葉に、驚いたルーイは振り向く。ホフマンは、焔に彩られた顔に優しげといってもいい笑…
ごうん、と鈍い衝撃がエイリークにはしる。突然全天周スクリーンが甦り、ヴァーハナクラスの姿が映し出された。鋼鉄のリヴァイアサンを思わせる流線型の船は、もう手をの…
再び、巨大なハンマーで連打されるような衝撃が艦体に走る。ヴァーハナクラスの放った次弾が、全弾エイリークに命中した。全て装甲板に被弾し、艦の機能に影響はない。そ…
ルーイ・ノヴァーリスは、操舵レバーを握りしめヴァーハナクラスへ向かって艦を進める。奇妙な、高揚感があった。胸の奥で火が燃え上がり、その炎が血液とともに全身を駆…
フランツは両手を天にかかげ、高らかに笑う。闇の中で炎が踊るようにフランツの金髪が、揺れる。「さあ、全ての天使たちよ。恐れ、おののくがいい。天より墜ちし輝けるも…
そこは、広く洞窟のように昏い空間であった。その闇の中で、星なき漆黒の夜に輝く月のように白衣を薄明に浮かびあがらせるおとこがいる。フランツ・フェルディナンドで、…
「ロスヴァイゼ、沈みます」ルーイは、悲痛な声で報告する。スクリーンに、爆炎に包まれ崩壊してゆく宇宙戦艦が映し出されていた。宇宙での艦隊戦でビーム砲を受け船が沈…
「ヴァーハナクラスが本艦の射程に入るまで、後二十秒」「全乗組員の退艦を、確認」相次いで、UIの報告が入る。フリードリッヒは、鋭い声で命令を下す。「主砲、発射準…
「ヴァーハナクラス、百二十秒後に本艦主砲の射程に入ります」オペレータの報告を聞き、フリードリッヒは笑みを浮かべる。それはとても満ち足りて、穏やかな笑みであった…
「ヴァーハナクラスが二隻、艦隊の隊列を離れ加速をしています。我が艦隊との接触は三百秒後」オペレータの報告に、シュレーゲルは頷く。平静を保とうとしてはいるが、瞳…
「ロスヴァイゼ、インドラクラスの攻撃を凌ぎました」ルーイ・ノヴァーリスは、情報を解析した結果を報告する。炎を顔に宿したおとこ、ホフマンが頷く。太々しい笑みを、…
赤黒い染みのような爆炎が、スクリーンに広がっていった。「デコイ、全滅です」オペレータの報告に、フリードリッヒは頷く。多少あっけないように感じるが、砲撃に特化し…
フライアの全天周型スクリーンは、三つの光を天頂に映し出している。デコイのバリアは、インドラクラスの主砲直撃に辛うじて耐えたようだ。光は、やがて沈静化していく。…
「ブログリーダー」を活用して、ヒルナギさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。
「いいか、おれたちはクラン・五月の薔薇に属している。ただで済むと、思うなよ」「なんだそりゃ?」「レイアティーズ公子が率いる、探索者旅団だよ」 ルサルカの言葉に…
おとこは、おまえは何がいいたいという目でハクを見ている。「独裁国家ではひとの命は畑から取れる程度の価値だったが、ルビャンカの地下で命の価値はもっと安くなる。…
そのケージでは、剣を持ったおとこ同士が切り結んでいる。ルサルカは、薄く笑う。「ここでは法があって無いようなものだからな、ダンジョン探索者同士の揉め事はああし…
ルサルカとハクが通り抜けた後、重々しい音をたてて門が閉ざされる。はあ、とハクは吐息をつく。「なんだか、随分簡単に通れるんだな」「監獄だからな、入るのは簡単だ…
十二月、君は青いパズルだった (講談社ラノベ文庫) [ 神鍵 裕貴 ]楽天市場 ${EVENT_LABEL_01_TEXT} 「監獄?」 ハクは、驚いた声を…
「では、チュドーユドーよ。わたしとかれを、ディアギレフのダンジョンへ運んでくれるか?」 チュドーユドーは、人型から再び竜の姿になるがその大きさは馬程度だろうか…
ハクは左手に鎧通しを戻しながら、顔をしかめる。ルサルカの言葉通りであれば、魔女は廃人になった自分を操るつもりだったのかとこころの中で戦慄した。 首を失った竜…
ブラッドローズと名乗ったものの笑みは、愛らしい少女のそれであったがハクはその笑みがひどく恐ろしく感じる。実際対峙していると、生気を吸い取られているのではない…
海の香り、潮を含んだ風、突き抜ける青い空から降り注ぐ陽の光。ハクは、五感全体で海を感じる。到底これは幻覚の類だとは、思えない。間違いなく、ハクは海辺にきたの…
そうしてハクたちが会話を交わしている間に、クロスカントリー車は闇につつまれた平地を突き抜けていく。やがて、前方に街が見えてきた。 クロスカントリー車は速度を…
ハクはもう、なんでもありかとため息をつくと、前に回ってナビゲータシートに座った。ルサルカは当然のように手を出してきたので、ハクはイグニッションキーを渡す。「…
ハクは、苦笑する。「だが、おれはあと三日で死ぬんじゃあないのか?」 おんなは、喉の奥で笑う。「じゃあ、抱いたんだね」「いや、血を浴びた。多分、ダメなんじゃあ…
よく見ると、後ろのおとこが携帯電話で話をしているようだ。「ま、殺されるんならしかたないけどな。死ぬ前に、煙草を吸ってもいいか?」 黒スーツは、目を細めたがハ…
ハクは、呆れ顔になる。戸惑いながらも、とりあえず両手をあげた。「おれは、イガやコウガの出身じゃあないぜ。ただの平凡な、サラリーマンだ。ついでに言えば、社畜の…
おとこたちの纏う沈黙に不穏なものを感じた彼は、とりあえず手をあげると声をかける。「よお」 なんとも間抜けな声掛けであったが、黒スーツのおとこたちは気にしたふ…
夜は海を静寂で満たし、闇をその奥深くまで溶かし込んでいる。残酷なまでに玲瓏と輝く月は、鋼の質感を海面に与えていた。時折り息を吐くように、白い波が海面を渡って…
「ほう」再び老人の顔に戻った魔神は、値踏みするように黒天狐を眺める。突然、凶悪な風の刃が黒天狐に襲いかかった。地面は引き裂かれて土煙をあげ、森の枝が切り飛ばさ…
灰色のマントを纏いフードで頭を覆った魔道士は、夜空をみあげていた。無慈悲な女王たる月が冴えた輝きを放つ夜空から、八枚の黒い翼を広げた死の天使がごときおとこが降…
ヒースは、eVTOLの操縦桿を握っている。eVTOLは全長七メートルほどの、自動車に似た姿をしていた。だが、車輪のあるべきところにあるのは、四機のサイクロロー…
中央大通りを西側へ入り込むと、官庁街が広がる。その官庁街と商業区域の中間地点には公園があり、噴水がある池やちょっとした森林も公園の中にはあった。昼間はそれなり…
「ほう」再び老人の顔に戻った魔神は、値踏みするように黒天狐を眺める。突然、凶悪な風の刃が黒天狐に襲いかかった。地面は引き裂かれて土煙をあげ、森の枝が切り飛ばさ…
灰色のマントを纏いフードで頭を覆った魔道士は、夜空をみあげていた。無慈悲な女王たる月が冴えた輝きを放つ夜空から、八枚の黒い翼を広げた死の天使がごときおとこが降…
ヒースは、eVTOLの操縦桿を握っている。eVTOLは全長七メートルほどの、自動車に似た姿をしていた。だが、車輪のあるべきところにあるのは、四機のサイクロロー…
中央大通りを西側へ入り込むと、官庁街が広がる。その官庁街と商業区域の中間地点には公園があり、噴水がある池やちょっとした森林も公園の中にはあった。昼間はそれなり…
中庭は、爆笑と歓声にのみこまれている。ダンジョン・エクスプローラーやダンジョン・ガイドは、FASTを嫌っていた。自由に生きようとする彼らを、何かと管理しようと…
トキオのその行動はひどく衝動的にみえ、ゆえに皆の意表をついた。トキオは背中に差し込んでいた八式拳銃を抜き放ち、夜空にむかって撃つ。赤い銃火が闇に伸び、獰猛な音…
おんなは、平然と応える。「もちろんギルドはモンスターの部位やアーティファクトを管理しますけど、ダンジョンで得た知識は管理できないのでは?」「ヒースは戦争屋だか…
トキオが少し戸惑ったような笑みを見せるのを意に介していない態度で、トキオに貴婦人がするような礼をしてみせた。「えっと」トキオが何か言おうとしたのを遮るように、…
そこは、吹き抜けで剥き出しの夜空の下に開かれた空間であった。四角い館に囲い込まれた中庭であるが、館の規模が大きいためサッカーグランドほどの規模がある。そしてそ…
アキはやれやれと肩をすくめると、強化ガラスの砕けたケースに向き合う。そこには、確かにグリモワールらしきものがあった。まあ、ようするに禍々しい気配をまとった本が…
古書店には、独特なにおいがただよっている。彼女はそれが、死のにおいなのだと思う。書物に込められた死せる観念が、ゆるやかに立ち上ぼり店内をみたしている。彼女はあ…