春の訪れと共に秩父札所34か所を巡る巡礼者の姿を観る機会が増えてくるようで、耕地を歩み、秩父札所3番の岩本山常泉寺へ向かう一団の姿がありました。この常泉寺の観音堂は小堂ですが細部まで作りこまれた彫刻が見事です。明治時代に神仏分離政策のもと、秩父神社から移転したとされます。江戸時代までは多くの神社にも薬師堂などの仏堂が造られており、当時の秩父札所巡礼者は秩父神社や三峯神社への参詣も順路のうちでした。 この観音堂の向拝から海老虹梁の彫刻は迫力のある龍、獅子、象などの霊獣が巡らされています。作者は飯田和泉とされ、飯田は熊谷市河原明戸出身の彫刻師です。熊谷市内には近代までに多くの名工が現れていますが、飯田家は代々飯田和泉守と名乗った宮大工です。各地の寺社に手がけた彫刻が残されていますので、参詣の際には見比べてみてください。
秩父市内に鎮座する秩父神社本殿は、その見事な彫刻と漆による極彩色の装飾により字埼玉県内でも優れた寺社建築のひとつとして知られ、埼玉県指定文化財にもなっています。古くは知々夫国造が置かれ胸刺国造とは別に置かれていた古代の國とされ、三峯神社と共にヤマトタケルノミコトも来訪したとの伝承を持っています。本殿を取り囲む壁面の大羽目目彫刻には左甚五郎作と伝わる霊獣や三猿などの彫刻が配置されていますが、繋ぎ龍のある東面では漆装飾の補修作業が行われていました。 妻沼聖天山本殿彫刻の補修にもかかわったおなじみの会社が施工していました。特別な技術を持つこの会社は日本全国を巡り文化財の保存作業を行っています。文化財はそれ自体が貴重なものですが、これを守り伝えた先人、熟練の技術者、援助する市民等の想いもまた貴重なものと思います。補修作業は数年後か数十年後にまたやってきます。現在の私たちは未来の私たちに、..
モーリス・ユトリロ《サン・リュスティック通り、モンマルトル、冬》(1933) 長島記念館石蔵にある美術展示室。中央の絵画がユトリロ作品。 20世紀前半のフランスで活躍した画家モーリス・ユトリロの絵画が、熊谷市の長島記念館で展示されています。昨年、長島記念館を管理する公益財団法人長島記念財団が、ユトリロの絵画「サン・リュスティック通り、モンマルトル、冬」を購入し、1933年頃に制作された縦61×横50センチの油彩画です。来年春まで1年間の展示を予定しています。 ユトリロ(1883〜1955)は、パリ出身で生まれ育ったモンマルトルの街路風景などの作品を多数描き、「エコール・ド・パリ」の筆頭格として活躍しました。影響を受けた画家も多く、独特の筆致に対する評価は高いものがあります。 長島記念館は埼玉銀行(現在の埼玉りそな銀行)頭取を務めた長島恭助..
モーリス・ユトリロ《サン・リュスティック通り、モンマルトル、冬》(1933) 長島記念館石蔵にある美術展示室。中央の絵画がユトリロ作品。 20世紀前半のフランスで活躍した画家モーリス・ユトリロの絵画が、熊谷市の長島記念館で展示されています。昨年、長島記念館を管理する公益財団法人長島記念財団が、ユトリロの絵画「サン・リュスティック通り、モンマルトル、冬」を購入し、1933年頃に制作された縦61×横50センチの油彩画です。来年春まで1年間の展示を予定しています。 ユトリロ(1883〜1955)は、パリ出身で生まれ育ったモンマルトルの街路風景などの作品を多数描き、「エコール・ド・パリ」の筆頭格として活躍しました。影響を受けた画家も多く、独特の筆致に対する評価は高いものがあります。 長島記念館は埼玉銀行(現在の埼玉りそな銀行)頭取を務めた長島..
熊谷市千代の江南文化財センター相向かいにある江南総合文化会館「ピピア」の桜がほぼ満開を迎えています。菜の花も咲き誇っています。薄紅と黄色のコントラストが美しいです。平坦なイメージがある平野地の熊谷の中にあって、千代地区のある江南地域は傾斜地も多く、咲き方や植生が多様な桜を目にすることができます。どうぞ江南の春にお越しください。
撮影:篠田孟宣さん 熊谷市三ヶ尻にある三ヶ尻八幡神社の桜が間も無く見頃を迎えようとしています。 本日3月25日10時から新嘗祭に繋がる祈年祭という祭典が行われます。 三ケ尻八幡神社は、源頼義・義家親子が鎌倉の鶴岡八幡宮の遥拝所として天喜4年(1056)に創建したと伝わるほか、鶴岡八幡宮の社領となった寿永2年(1183)に創建したともいわれています。江戸時代には三ヶ尻村の鎮守となっており、明治5年村社に列格、明治41年字八幡鎮座の神明神社と字中鎮座の天神社(いずれも村社)を合祀、以後村内の多くの社を合祀した歴史があります。
世間の心配をよそに、春の訪れ桜咲くころに至りました。入学式を前にことしのさくらはいち早く花開いています。市内でもすでに各所から開花情報が寄せられていますが、冑山の根岸家長屋門のさくらも23日の状況で5分咲きといったところです。例年より十日は早いように感じられます。でも、建築から約160年を経ている長屋門を背景に花ひらく桜は、なにか明るい気分にさせてくれます。 桜に誘われた幾人かが訪れていました。長屋門の中に資料展示室が設けられていますから、お気軽に観覧くださいと思わず声かけてしまうほど良い時に恵まれました。邸宅の見学はご遠慮いただいていますが、長屋門の展示室のみは公開されています。根岸家や冑山の歴史も紹介されていますので、お立ち寄りください。 根岸家長屋門(熊谷市指定文化財) 前のさくら開花状況
仁王門前の桜 国宝「歓喜院聖天堂」と桜 国宝「歓喜院聖天堂」のある妻沼聖天山境内に咲く桜、ソメイヨシノが見頃を迎えています。春を迎える妻沼聖天山をお楽しみください。新型コロナウイルスによるイベント等の中止が重なっていますが、その対策をしながら気分転換に街散策はいかがでしょうか。
熊谷市指定文化財・天然記念物「くろがねもち」の解説板の設置を行った作業は先日の文化財日記でお伝えしたところですが、旧来あった柱状の文化財解説標柱は木製で経年で腐りが入り、昨年度に撤去しました。しかしながら、その木製の標柱を支えていた基礎の部分はコンクリートで容易には撤去が難しかったことから、そのままの状況でした。この度、専門の工具を用いてコンクリートを砕く撤去作業を実施しました。地中のコンクリート撤去の難しさを感じる作業となりましたが、約1時間で無事に終了しました。
熊谷ラグビー場 ロシア対サモア戦 記念講座「ロシア文学のレガシーに触れる」
2019年のラグビーワールドカップに合わせて開催した記念講座「ロシア文学のレガシーに触れる」と「星溪園ワールドカップ茶会」の様子をYouTubeの江南文化財センターのサイトにおいて公開しています。ロシアの小説家ドストエフスキーをテーマにした講演会です。また特別公開したロシア人画家の絵画作品についても紹介しています。どうぞお楽しみください。
熊谷型紙「岸家」関連資料フォーラム 「熊谷染のデザインに触れる」
熊谷市名勝「星溪園」で開催した「熊谷型紙「岸家」関連資料フォーラム 」の様子をYouTubeの江南文化財センターサイトで公開しています。「熊谷染のデザインに触れる」をテーマに熊谷染型紙について対談しています。どうぞご参照ください。
熊谷デジタルミュージアムでの洋画家「山下仙之助」絵画85点の特別公開
絵画の紹介 作品リスト YouTubeで配信されている動画 https://www.youtube.com/watch?v=7idPyl4GYv4 「熊谷デジタルミュージアム」の絵画室に、熊谷出身の画家で戦後の郷土美術家として熊谷と浦和を拠点に活動を進めていた画家・山下仙之助が描いた絵画85点を一般公開を始めました。 現在、新型コロナウイルス感染拡大対策による県内外の博物館・美術館の休館及び展覧会中止等の影響から美術品や絵画に触れ合うことが減少している状況の中、インターネットやスマートフォンを介して絵画を鑑賞できる機会としてお楽しみいただけたらと思います。 また、2019年12月、坂東洋画会結成100周年記念「山下仙之助絵画展―日常の美と印象派の系譜」を熊谷市緑化センターで開催しました。今回の企画の一つとして、その展覧会での展示..
今回で、連続しての池上遺跡についての記事は終わりになります。 平成30年度から令和元年度の2か年にわたり発掘調査を実施し、池上遺跡周辺についての多くの情報を得ることができました。 昨年度については、古墳時代前期に水辺の祭祀を行ったことを示す木製品の検出、同時期の土器に付着した炭化米が確認され、周辺で稲作を行っていたことが分かりました。 また、今年度は、弥生時代中期の最古級の方形周溝墓の確認、「官」、「宮」などの墨書土器の検出など非常に貴重な調査となりました。 このように注目される池上遺跡は、熊谷市が計画する道の駅整備に向けて、来年度から最大4年間の事前発掘調査を実施いたします。 年間を通じ、大変な調査となることが想定されますが、池上遺跡の全体像を把握することができるため、かなり注目に値する調査になります。今後の池上遺跡についての情報をお伝えいたしますので、引き続きよろ..
今回は水に関わる祭祀についていくつかお話いたします。 この池上遺跡は、その名のとおり水に関する地名です。池上は低地の各所に池が存在していたことからついた名であると想定でき、昭和初期には複数の沼があったことを近隣の古老から聞き、現在でも「湯釜」などの地名が残っていることから、水の豊富な場所であったことが窺えます。 このことは、これまでの2年間の池上遺跡の発掘調査で身をもって体験することになりました。 現在でも、この池上地区は地下水が豊富で発掘調査時は毎朝の調査区の水抜きから始まります。夏季期間や、台風の時期では一面が湖のような様相になります。 水没した発掘調査地点 このような場所で昔は、祭祀をおこなっていたと考えられます。今回の調査ではそれに関わる祭祀遺構がいくつか検出しています。湧泉痕がある方形の土坑があり、そこから桃の種、墨書土器、臼玉が検出しています。これらが出..
池上遺跡について3回目の記事です。 今回は、河川跡から検出した墨書土器について紹介します。 本調査で、弥生時代から江戸時代にかけての遺構、遺物が検出しています。弥生や古墳時代の遺構は河川跡によって切られており、その河川跡からは多量の土器が確認されました。堆積状況から河川の氾濫によるものと考えれ、検出遺物から奈良、平安時代(8世紀後半から9世紀初頭)と判断できました。 そのうち数点からは、須恵器坏の底部に墨で文字を残した「墨書土器」が確認されました。 書かれた文字は、「宮」もしくは「官」や、「●刀自」、「豊」などで、「宮」もしくは「官」はこれまでに4点検出しています。 この池上遺跡はかつての埼玉郡の西端に位置しており、これまでに、この埼玉郡の郡衙(役所)は熊谷市域に存在すると考えられており、池上遺跡やこの遺跡の北に位置する北島遺跡も候補に挙がっています。 今..
今回の調査では、もっとも古くで弥生時代中期の方形周溝墓が検出しています。 過去の調査では、数百メートル西の国道17号バイパスを造る際の発掘調査(小敷田遺跡)では、関東最古級の方形周溝墓が3基検出していますが、今回の調査の方形周溝墓はこれよりも古い時期と考えられます。 調査範囲幅が極小なこと、古墳時代以降の遺構が重複していることから、正確な基数は確定できないが、少なくとも3基以上は確認されています。 墓域等の詳細なデータを得ることは、今後の調査に期待することになりますが、当時の墓制を知る上で大変貴重な成果と言えます。 方形周溝墓(白線部分) 弥生土器(周溝墓検出遺物)
今回は祭祀遺構についていくつかお話いたします。 この池上遺跡は、その名のとおり水に関する地名です。池上は低地の各所に池が存在していたことからついた名であると想定でき、現在でも「湯釜」などの地名が残っていることから、水の豊富な場所であったことが窺えます。 また、
本日から数回に分けて、令和元年度調査の池上遺跡発掘調査成果についてお伝えいたします。 本調査は、昨年から2か年に分けて実施しているもので、今月の3月末をもって終了になる事業です。 事業は、埼玉県が主体となって実施している市内池上地区のほ場整備事業で、発掘調査はその内、水路部分の調査です。今年度は10月から実施し、現在佳境に入っております。 これまでの調査で、弥生時代中期から江戸時代にわたる遺構、遺物が検出されており、河川跡、沼跡、溝跡、掘立柱建物跡、方形周溝墓、祭祀遺構、土坑、ピットなどが確認されています。 上空からの調査区風景 遺物検出状況
星宮地区文化財マイスター養成講座「熊谷市星宮地区の文化財」レクチャー動画
熊谷市下川上の星宮公民館及び近隣の宝乗院愛染堂で開催した星宮地区文化財マイスター養成講座「熊谷市星宮地区の文化財」でのレクチャーの様子を収録し公開しています。地域の文化財や歴史探訪のガイド案内としてご利用ください。受講されたメンバーは星宮地区文化財マイスターとして星宮地区の歴史紹介や現地案内などを担当していただく予定です。
熊谷市鎌倉町に所在する石上寺の本堂東側、旧熊谷堤上にある熊谷桜(クマガイザクラ)が開花し、七分咲きの状況になっています。岡安住職によると、例年より10日ほど早い開花状況で、まもなく満開を迎えるとのことです。地球温暖化などの影響があるのかも知れません。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。市内各地の河津桜も通常より早く満開している地域もあり、これから引き継いで咲くソメイヨシノも早咲きとなることが予想されます。春の到来を待ちましょう。
熊谷市指定有形民俗文化財「石像十三仏」解説板 熊谷市指定天然記念物「くろがねもち」解説板 熊谷市指定名勝「長島記念館・邸宅」解説板の設置。左側がオスカー・ラヴィさん。 熊谷市池上地区の梅岩院にある熊谷市指定有形民俗文化財「石像十三仏」、肥塚地区にある市指定天然記念物「くろがねもち」、小八林地区にある市指定名勝「長島記念館・邸宅」の市内3カ所に解説板を設置しました。設置作業では、熊谷市内の企業で研修しているフランス人のオスカー・ラヴィさんが参加し、熊谷市における文化財に関連した業務に興味深く取り組んでいました。
熊谷市名勝「星溪園」企画展「屏風の文化史―犀東と出雲―漢詩人・国府犀東と出雲の文化交流をめぐって」
熊谷市名勝「星溪園」積翠閣ギャラリーにおいて、大正時代に史蹟名勝天然記念物保存法の制定に関わった漢詩人・国府犀東の揮毫漢詩が含まれる屏風を初公開します。加えて、俳人・河東碧梧桐の揮毫俳句を含む屏風を併せた2点を特別公開しています。 とき:令和2年3月1日(日)〜4月26日(日) 午前9時〜午後5時(休園日:毎週月曜日) ところ:星溪園積翠閣ギャラリー(熊谷市鎌倉町32) 入場無料 概要: 1919年の史蹟名勝天然記念物保存法の制定に関わり国内の文化財記念物保存の基礎を作った国府犀東(1873-1950)の漢詩や出雲大社神職・北島斉孝の書などを含む屏風(六曲一双屏風H137×W280cm)を初公開します。国府が出雲の日御碕(ひのみざき)を訪れた際に詠んだ漢詩をはじめ、国府と出雲大社の影響関係を知ることができる内容です。加えて、俳人・河..
2019年12月8日に熊谷市西城の長慶寺で開催された「長慶寺・北関東社寺彫刻シンポジウム」のうち、安井住職による趣旨説明「長慶寺薬師堂及び建造物の歴史概要」についてYouTubeサイトにて動画を公開しています。シンポジウムではそのほか講演会とトークセッションが開催されました。その様子につきましては今回の公開後、随時アップしていきます。ご参照ください。
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