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夫夫善哉(めおとぜんざい) http://oyatuniku.blog.fc2.com/

オリジナル『夫夫小説』 推奨肉食系時代劇。オールド上海。薩摩藩風男子高。現代モノ。完結作品多数あり!

男と男の情愛やら肉欲やらをはらんだ娯楽小説を目指しております。 キャラの猛禽ケモノ率、高め。衆道色、濃いめ。男臭、きつめ。情愛、うざいほど! 作品は「江戸もの」「上海もの」など。楽しんでもらえたら幸いです。

神永佳
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2011/05/21

1件〜100件

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  • 放鷹<八> 五章完結! ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    「聞かせてくれ」 小家に戻るなり、半太夫は古弦太をうながした。仙蔵も同席している。 兵庫介は半太夫に云われて上座に座ったもののつまらなそうに体を揺らしだし、古弦太が不快そうに濃い眉を寄せる。「順を追って話す」 苦虫を噛み潰す態で話を切り出した。 将軍家への呪詛に関っていると思しき青翁の館に張られた結界を、鵺(ぬえ)の翁たちが解いたこと。呪詛の源を断つため瑞木や太鵬(たほう)、老忍びたちと共に結界内...

  • 放鷹<七> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    「ご無事で」 雪明かりの中、仙蔵がにこにこ顔で歩いてくる。「先にお召し換えを。話はその後にいたしましょう」 仙蔵に促され、半太夫は褌一本の兵庫介を伴い後に続いた。 陰と鷹とのあのような死闘を目前にしても、この男の振る舞いにはなんの乱れも見られない。半太夫を火炙りにすると見せかけて炎と煙で場を掌握し、攪乱して半太夫を逃がし追手をも遮る。仙蔵がなにゆえ火喰いという字(あざな)をもつのか、敵は知らなかっ...

  • 迎春 2022

    遅ればせながら~明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。では。恒例の「昨年は一体なにをやっていたんでしょうね?」です。昨年は、サイト創設十周年の節目でしたので、特別企画『進撃の半兵衛w』を書いたり、『風の道』の五章「放鷹」をスタートさせ、六話までがんばって書き進めましたが、職場のすったもんだで執筆どころではなくなり・・・・・・(;^ω^)会社を辞めてバカンスに突入~~~その勢いで、疑惑...

  • 「ハリエンジュの森」×「疑惑」スペシャルコラボ♡ ハリエンジュの森 それから ~七年目の夏(4)~

    「ヒロは、どっちが好き?」 陽二は、二台のバイクに目顔を向ける。フルカウルの真っ赤なバイクと渋い感じのシルバーのバイクだ。 朝食をとった二人は、ダムへと向かうべく駐車場にいる。涼風が二人の髪を揺らして吹き抜ける。秘境の空は雲ひとつない一面の青だ。日を浴びる梢を揺らして小鳥が囀り、木陰で蝉が鳴きしめている。他の客たちは早朝に発ったようで、駐車場には二人が乗って来たレンタカーと、バイクが二台停まってい...

  • 「ハリエンジュの森」×「疑惑」スペシャルコラボ♡ ハリエンジュの森 それから ~七年目の夏(3)~

    リーリーリーリーリーリーリーリー リーリーリーリーリーリーリーリー 夜も更けて、虫の合唱もいよいよ賑やかになってくる。 博道の頭の後ろで円筒形のナイトランプが灯され、下腹に跨る陽二の裸体が楮色の光に照らしだされる。 和紙シェードごしの柔らかな光を浴びながら、陽二は懸命に腰を振る。騎乗位は、おのれの貧弱な体が曝されるところが難点であるも、感じている博道の顔がよく見えるので、陽二は嫌いではない。後ろ...

  • 「ハリエンジュの森」×「疑惑」スペシャルコラボ♡ ハリエンジュの森 それから ~七年目の夏(2)~

    幸せだなぁ~♪ おれはおまえといる時が一番幸せなんだ~ おれは死ぬまでおまえを離さないぞ~ いいだろう? スパークリング地酒にしたたか酔った博道が、コテージの窓から星を眺めつつ、お祝いカラオケ大会でご隠居さんが歌った“君といつまでも”を上機嫌で歌っている。因みに原曲のセリフは「おれとおまえ」ではなく「僕と君」である。 コテージは母屋から離れているので、陽二は静かにしろと文句は云わない。声のいい...

  • 「ハリエンジュの森」×「疑惑」スペシャルコラボ♡ ハリエンジュの森 それから ~七年目の夏(1)~

    「お疲れさま」 佐伯陽二(さえきようじ)と幸田博道(こうだひろみち)は寛いだ浴衣姿で、冷えたビールをなみなみと注いだジョッキをカチンと合わせ、湯あがりの乾いた喉を潤す。 チリンチリーン、廊下の軒に吊られた風鈴が涼しげな音を奏でる。 越後駒ヶ岳をはじめとする二〇〇〇メートル級の高山に囲まれた盆地の夕暮れは早い。山脈に西日が隠れ、稜線が夕照に染まっている。阿賀野川水系の只見川、北ノ又川の上流に位置し、...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(下-6)

    おれは花籠に乗りかかり、浴衣の襟を左右に引いた。昼間ベロベロに舐めてキスマークをつけまくった小さな乳首が二つ、愛らしい顔を見せる。こいつの乳首(乳輪を含む)が並みより小さいのは、二十年もの間、ワイシャツ越しにこっそり見分していたので承知之助である。その高嶺の乳首に口をつけ、唾液をのせた舌でぐりっと押し潰し、円を描くように転がしつつ、もう片方の乳首を指で挟んで愛撫する。丹精された乳首には成熟したエ...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(下-5)

    「へえ……覚えてた」「まあね」 花籠が、来いよ、というふうにおれへと向き直る。 ヤッター、と小躍りしたいくらいの喜びを、渾身の演技力で顔にも挙動にも出さず、傍らへ行って横になるおれ。花籠がおれの顔を引き寄せてキスする。歯を磨いてよかった。流れのままアダルトなディープキス。 そう、酒に潰れたこいつを介抱したのは二度目である。一度目は二十年前の新人研修の打ち上げの夜。こいつに予約され (笑)、おんぶして終...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(下-4)

    ――そして、スパークリング地酒に潰れた花籠をおんぶして、コテージへ戻るおれ。 十九時を過ぎたばかりだが、盆地なのであたりはもう真っ暗だ。 リーリーリーリーリーリーリーリー 四方八方からの賑やかすぎる虫の声。蛙の声も聞こえる。近くに沼でもあるのかもしれない。心地よい酔いにまかせ、フットライトに照らされた小道を下駄を鳴らして歩む。夏草の香ばしい匂い。夜風がおれの髪を揺らす。桁違いの虫の音に圧されながら...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(下-3)

    ――そして、やっと夕食である。 スーさんから「声かけてね~」と云われていたのに盛って寝落ちし、そのまま温泉へ行ったものだから、結局、蕎麦にありつけなかったおれたちだ。バイクに乗っていると振動のせいか空腹を感じにくくなるのだが、朝メシを食べたきり水しか飲んでいないので腹ペコである。花籠も同様のようだ。 食堂は、母屋の二階にある三十畳ほどの座敷で、グループごとに天然木の座卓が並べられていた。登山組らし...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(下-2)

    ――そして。 怒涛の逆転ホームランを三発打ち上げたおれと花籠は寝落ちしてしまい、夕方になってやっと温泉に浸かった。途中で一度目が覚めたが、花籠が寝ていたのでまた目をつむり、そのまま蕎麦も食べずに大爆睡となったのである。スーさんから内線電話をもらわなかったら、まだ眠りこけていただろう。 遅蒔きながら足を踏み入れた浴場も露天風呂も、他の客と一緒になり、さすがにエロいことはできない。(残念――いや、そうで...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(中)

    バックミラーで、後方のドゥカティを確認する。 おれは相棒を太股で挟んでホールドし、スロットルをあけた。上りであろうと下りであろうと、ブラインドカーブの鉄則はアウト・イン・アウトだ。コーナーに差しかかったらアウトへ。旋回しつつ減速してイン。曲がり切ると同時にアウトへと加速。洗い越しの他にも、スリップの要因となる落葉や苔、小石や砂利にも注意する。雨粒がシールドを叩いて視界がさらに悪化する。バックミラ...

  • 湖上(疑惑2)~10年後の真実~(上)

    ――この夏。 おれは会社を辞めて旅に出る。 ブァァーン ブァァーン ブァァーン ドゥルンドゥルンドゥルンドゥルンドゥルンドゥルン 旅の相棒は、スズキGSX1100Sカタナ。 日本刀の切っ先をイメージしたという美しいスタイリング。色は燻し銀を思わせるシルバー&ブラック。重厚なボディーと重厚な乗り心地。八〇年代の正統派ロードスポーツスピリッツを踏襲しつつ、現代的に洗練されたおれ好みのバイクだ。「久住(くすみ)...

  • 放鷹<六> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    白烟のなかで、半太夫は肩の関節を外して腕縄を抜け、切り進めていた手縄を引き千切った。後ろ腰から爪白を抜き、長躯を畳むがごとく曲げて足縄を切り落とす。音もなく薪の上に降り立った。 仙蔵は始めから、殺す気などなかったらしい。そうでなければ、くそうずと称して火傷薬を掛けたり、足許に濡れた薪を積んだりはしない。逃がすことを想定して、半太夫の腰に爪白を戻し、鬼爪丸を濡れた薪の上に横たえたのだ。さらには外側...

  • 放鷹<五> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    (どうなっているのだ……) 古弦太は、山荘の庭を見渡せる雪を被った木の上にいる。 十三代陰狩の鷹、鷹見頼近の命を受け、兵庫介と半太夫の許へと参じたのだが、その目に映ったのは、兵庫介へと矢が射掛けられ、半太夫が火炙りにされているこの有様だ。「劉元殿ッ!」 よろける法衣姿の入道に、陣笠を被った武士が駆け寄る。膝をついた入道の腹に、粗末な竹槍が突き刺さっている。「おぬれ……謀反人が……」 入道が醜い顔をさらに...

  • お陰さまで10周年\(^o^)/特別企画(?)進撃の半兵衛w

    初夏を迎えた名賀浦の、或うららかな朝。 突如、ズシーン、ズシーンと地が揺れて、舞い上がる土埃にあたりが霞む。「なんでえ、なんでえ! 何が起きたんだい?」 家の軒からわらわらと出てきた町人たちの眼に、天を衝く巨大な肉の柱が二本。しかも柱の上には胴があり、手が二本ついていて頭まである。「でっ、でっかい男だ! でっかい男がいるぞ~~」 そして、船宿の二階の窓から、面倒くさそうに外を窺う伊十郎である。「...

  • 放鷹<四> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    夥しい数の鳥の群れが、黒雲のごとく雪空を覆ってゆく。その追い立てられるかのような翼の背後に、野獣のごとく山を駆ける兵庫介の姿があった。手には竹槍、藁沓こそ履いているが下帯ひとつの裸体である。山の寒気は容赦なく皮膚を刺すも、兵庫介の若い体は汗に濡れ、湯気を上げている。――よいか、ぬしを狩りに来た役人どもが、ぬしの女房を焼き殺そうとしておる。ぬしの不遇も、黒部の爺の怨念も、すべては鷹見の家の勝手が招...

  • 放鷹<三> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    「言い残すことがあれば、伺い申す」 仙蔵が、丸木柱に縛られた半太夫へと近づいてくる。粉雪がまた、ちらちらと舞いだした。 目付一行が到着し、無数の篝火に囲まれた山荘は、真昼のごとく明るい。生垣の外では戦備えをした百人ほどの武士たちが物々しくうごめいている。半太夫は縛られたまま、三尺高いところからそれらを見ていた。もはや見分というより、討伐という風情である。「これは然り。それでは声が出せませぬな」 仙...

  • 放鷹<二> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    切り立った崖に沿う夜の雪路に三つの人影がある。獣でも難渋しそうな険しい路を早い足取りで行く蓑笠姿のいずれもが、上背のある屈強そうな若者だ。「古弦太様、きついようなら、某が独りで参ります」 先をゆく巨漢が、心配顔を振り向ける。石霧組の太鵬(たほう)である。後をゆく男とて六尺を超す大男であるも、それよりさらに二寸ほども背が高い。年は二十とまだ若く、いかつい体躯に似合わず顔はふっくらして愛嬌がある。瘴...

  • 放鷹<一> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    雪は止んでいたが、暗黒の空に初月は見えない。 半太夫は冷え切った痩身を罪人のごとく丸木柱に縛られ、篝火の灯された中庭に居た。その足許に、イ組衆によって薪が積み上げられてゆく。イ組の頭である火喰いの仙蔵は、半太夫を火炙りにするつもりらしい。 半太夫は、三尺ほど高い場所から、生垣を巡らせた八十坪ほどの雪庭を見渡す。薪を積む二人の他に人影はないが、イ組の面子は八人と聞いているから、おそらくどこかに居る...

  • 謹賀新年2021

    明けましておめでとうございます。昨年中はご贔屓を賜り、ありがとうございました。本年もひきつづき、よろしくお願いいたします。明けない夜は無いと言いますが、コロナ禍中でも年は明けるんですね。昨年は世界中がコロナに震撼した未曾有の年でありました。東京オリンピックは延期、私事では、用があって帰省すれど実家の敷居は跨げないという状況がつづいております。今年はごくあたりまえの日常を取り戻せる希望の年であって欲...

  • 月夜と枇杷の実(4)完結!

    「なれば、おれが結びの神か」 伊十郎が振り返って、ニヤッと笑う。 半兵衛は、十四年前の思いから立ち帰った。 薄雲が晴れて、月の光があたりを冴え冴えと照らす。「済まなかったな。折角の逢瀬をぶち壊してしまった」「なんの、半兵衛は嬉しゅうござりましたぞ。お前様に煙たがられているとばかり」「煙たがっておるわ」「左様で」「それゆえ、早う嫁をもろうてやらねばと、戸田の娘を見に行ったのだ」 歩き出した伊十郎が背...

  • 月夜と枇杷の実(3)

    (なにゆえ……) 半兵衛は、伊十郎を追って蒸し暑い戸外へ出た。こともあろうに弥之吉と交合していた隣の部屋に伊十郎が居たのだ。(分からぬ) 遠ざかる白絣の背に、門前町の軒提灯の明かりが淡い火色を揺らして消える。闇にまぎれてゆく若い姿を追いながら、半兵衛は胸中で反芻する。伊十郎は今日、懇意にしている町道場へ行ったはずだった。ゆけば必ず馴染みの門弟たちと夜遅くまで酒盛りとなる。途中で抜けて来たとは思えぬ。...

  • 月夜と枇杷の実(2)

    「して、あの者はよく参るのか?」「いいえ……そんなには……頻繁なときでも……月に一度か二度くらいで……半年ほども姿を見せないときの方が」「お前は此所にきて七年だと申したが、それより前から、あの者と弥之吉は懇ろだったのか?」「へえ……十数年ごしの仲だと……弥之の哥さんは」 襖ごしに響く若い声を聞きながら、弥之吉は枕行燈をそっと灯した。(なにをしに来たのやら?) 若侍はぼそぼそと低く訊ねるばかりで、一向に色っぽい...

  • 月夜と枇杷の実(1)

    「弥之の哥さん。酒ならわたしが——」「いや、おいらがゆくよ。お前は、皆の仕度を手伝っておやり」 奥から出てきた下働きの峰次が、申しわけなさそうな顔をする。 弥之吉は渋い色目の唐桟の裾をまくって、素足に絹緒の下駄を引っかけた。「それじゃあ、あんた。すぐ戻ってくるから、二階へ上がって待っていてくんねえ」 返事をしない大きな背中に笑みをくれ、弥之吉は表へ出た。無愛想なのはいつものことだ。一言も口を利かぬこ...

  • 上海サレル(6)最終回!

    「エル!」 出迎えたエロールを見るなり、ジョンが眼を丸くする。口鬚がなくなっている。「どうだ、若返っただろう?」 すっきりした鼻の下を撫でながらエロールがにやっと笑う。バスを使ったばかりらしく、ローブの胸元に雫がついている。濡れた前髪を無造作に垂らした風貌は学寮にいた頃のようだ。「どういう心境の変化だ? ゆうべは死にそうな顔をしてたのに……」 エロールの背を追って、ジョンが室内に入る。天井から床まで...

  • 上海サレル(5)

    「ここで……三人で……ホテルの客を相手に……売春しているのかい?」「ユーラン、一番稼ぎます。次、ホンウー。ぼく、あまり稼げません」「あの男を……此処へ連れてこようとしていたのかい?」 フェイシェが首を振る。「彼、好き、ありません。チップ沢山、でも乱暴、いやだ云ったら、殴りました。あなた助けてくれた、いい人。三ドルでいいです」「どうして……ぼくが」「あなた、ぼく、やさしいです。眼、合うといつも微笑む。あなた、...

  • 上海サレル(4)

    「ぼくの家」 フェイシェが背を起こして指を差す。大きな柳の木陰に、今にも沈みそうな中国式の古びた小舟が夜霧を纏う昏い水面に浮んでいる。小柄な後ろ姿が、慣れた動作で肩幅ほどの狭くて急な石段を下りる。ぼろ舟の舳先にひょいと飛び乗った。「フェイシェ。明日、食堂で会えるかな?」 エロールは石段の中ほどで訊いた。「顔、治るまで、会えません」 フェイシェが舟の上から首を振る。「だったら、此処に逢いに来ていいか...

  • 上海サレル(3)

    濃厚な緑の息吹と静寂が夜の庭園を包んでいた。 エロールは闇に佇み、物哀しさを噛みしめた。 と、後方から短い叫びが聞こえ、はっとする。耳を澄ますと、苦しげな呻きが途切れ途切れに聞こえてくる。「どうかしましたか?」 声をかけたが返事はない。エロールはベンチから腰をあげ、壁のようにそびえる月桂樹の生垣の向こう側へと走った。四角く刈り込んだ生垣が途切れた所で、飛び出してきた大柄な男とぶつかりそうになる。...

  • 上海サレル(2)

    エロールは、誘われるように敷石を踏んで歩み出した。ひらけた芝庭の先は円錐形の赤松のコニファーが並んでおり、茂みにはオールドローズが強い芳香を放って咲き乱れている。 美しい英国式庭園を有するこのホテルは、元は英国人の船長が中国人の妻と九人の子どもたちの為に建てた私邸であったという。エロールはオールドローズの垣根を見上げながら、英国人社会の強い反対を押し切り中国人女性を妻に迎えた彼の勇気を憧憬の念を...

  • 上海サレル(1)

    舞踏室を後にしたエロールは、客室へ向かう廊下の途中で後ろから抱きつかれた。「上海してやる」 押し殺した低い声だったが、友人のジョン・バーシーだと直ぐにわかった。彼はケンブリッジの学寮の同期生で、卒業後、ロンドンの香港上海銀行に入行し、上海に赴任している。旅行者であるエロールに対して、世話役をかって出ていた。「どこの船に乗せるんだい? 寒い処はご免だよ」 大男のジョンを押し返しながら、エロールは呆...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<14>最終回!

    「伊達さん?」 沈黙する白い横顔をのぞきこみ、おれはぎょっとした。 うっとりとした妖しい眼つき、半開きの脣……(麝香スイッチはいってる〜〜!)「伊達さん、しっかりっ! しっかりしてください〜〜 伊達さんっ!」 伊達さんの肩を猛然とゆすると、伊達さんがはっとしたふうにぴくっと震える。「おれ……また……やった?」「いいえ、セーフです。セ〜〜フ」 伊達さんが両手でピシャリと自分の頬を張る。ズボンの前を全開にし...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<13>

    「かっ……じますか?」「うっ、ん……はあ、感じる」 腰を揺らしながら、伊達さんが切れ切れに云う。 おれは唇を使いつつ、懸命に舌を動かした。キスだけは! キスだけは! 上手になったと褒められたのだっ!「あっ、あっ、あっ、ぁあっ……ダメ、てつ……イクっ!」 白い太股をつっぱらせ、伊達さんがおれの髪をつかんで胴震いする。 おれは———ついに、(呑んだっ〜〜)「ハァ、ハァ……ばか、そんなに、吸うから……ハァ……イっちゃっ...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<12>

    「んじゃ、やるか」 沈黙をやぶって、伊達さんがぽつりと云う。「ならあのう……」「おう」「ならあのう……おれ」「おう」 伊達さんがレジャーシートに大の字になって眼をつぶる。「じゃあ、あのう、ハァ、ハァ……失礼、しますぅ〜〜」 云うが早いか、褌一つの白い体にむしゃぶりつく。すべすべの喉に吸いつき、鎖骨に吸いつき、ハァハァと獣のような息を吐きながら、悲願のかわいらしいちっちゃな乳首に吸いつく。 舌で触るとつん...

  • 謹賀新年2020

    元年が明けて、令和二年となりました。元号を三つ跨ぐなんて、昭和が遠くなってゆく〜〜は、さて置き。昨年中はご贔屓を賜り、心よりお礼を申し上げます。本年も引き続き、お付き合い頂けましたら嬉しいです。さて。今年は久々に関東で年越しをしました。ここ数年、実家に行っておりましたので、年末の掃除は全くしておらず(汗)なもので、今年こそはとマジで掃除をした結果、翌日筋肉痛で動けませんでした(;∇;)(情けなや〜)...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<11>

    「へくしっ!」 寒気にぶるっと身を震わせ、おれはガラス扉を押してオトコメロンの温室に戻った。 室内は土の匂いと植物の匂いで充満しているものの、ガラスを透かせて月光がそそぎ、ほかほかと温かく、布団とまではいかないけれど、レジャーシートと毛布があったはずだ。 おれは寝床をつくるべく、棚からレジャーシートを引っ張り出して、戸口脇の空いているスペースにいそいそと敷いた。 伊達さんは通路にしゃがんでオトコメ...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<10>

    「伊達さん。そういう時は、これからはおれを呼んでください。それから麝香臭が消えるまで、伊達さんは外へ出ちゃ駄目です! 大体そんな大事なこと、どうしておれに云ってくれないんです? 水臭いじゃないですかっ!」「すまん。なんか……カッコ悪くて……怒ってるか?」「怒ってますよ」 おれは低く云った。 飢えた狼のごとく群がってきた密命団の前で、伊達さんがあの大満月蠢惑悪魔になったのではないかと思うと、ドロドロとし...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<9>

    おれは行進する男鹿たちを追いこし、木々におおわれた夜の山道を駆け上がった。冬枯れた梢から洩れる月明かりを頼りに、つまづきながらも上ってゆくと、徐々に笛の音が近づいて、侍ダウンジャケットのバックプリント〈SAMURAI〉の白い文字が鹿影から垣間見える。「伊達さんっ!」 男鹿軍団を掻き分け、伊達さんの横にならぶ。けれども伊達さんは、おれに眼もくれず、横笛を吹き鳴らしながら夜の山道を上ってゆく。「伊達さん!...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<8>

    「謙一。目障りだ、摘みだせ!」 バルコニーから、明智さんの声が飛ぶ。「目障りなら、あなたが摘み出せばよいでしょう。大友くんには文句を云う権利がある」 上杉がきっぱりと返す。明智さんに逆らう上杉をおれは初めて見た。「問答無用と云うわけか」「男鹿に惑わされたあなたと語れるのは、もはや剣のみ」 上杉が侍ダウンジャケットを脱ぎ捨て、竹刀を抜く。表情を消した冷たい顔。こんな上杉、見たことない。「いいだろう」...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<7>

    ケーン! ケーン! ケ〜〜ン! 大満月の光にそまった鶴丸(中央広場)は、数十頭もの男鹿たちでひしめいていた。切なく鳴いては角を突き合わせ、芝を食べたり寝そべったりして我がもの顔でのし歩いている。 晩秋のキンと冷えた、糞尿くさい(麝香くさい)夜気の中、おれと毛利は男鹿をよけて鶴丸を突っきり、冬枯れた林に入った。大満月の光は木々を透かしてさえ、かなり明るく、その分黒々とした影をくっきりと引いて不気...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<6>

    「迎えに?」「そのめえに一つ云っておく。この騒ぎ、おめえの所為だぜ。皆が皆、おめえみてえなわけじゃあねえ。あぶれチゴもいれば、捨てチゴもいる」 毛利が低く云って、おれは息を飲んだ。 《あぶれチゴ》は、文字通りあぶれたチゴのことで学年に四人いる。そして《捨てチゴ》は、契っていながらニセに顧みられないチゴのことだ。(別所は……捨てチゴなのか?) 別所のニセの曽我部さんは、前遊撃隊士だ。ごつくて一見怖そう...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<5>

    「ふっ……ざけんなっ!」 腕をつっぱらせて押し返す。けれども奴は、もの凄い力でおれを押さえつけ、毟る勢いでおれのベルトを外そうとする。「やめろっ! はなせっ!」 闇の中で揉み合い、膝で蹴る。 奴が、うっと呻いて、おれの腰から手を離す。「はァ、はァ……ふ、ざけんな馬鹿っ!」 苛立ちと自己嫌悪に、おれは怒鳴った。手探りでベッドから降り、壁をつたって廊下へ出る。 と、背後からタックルされ、つんのめって廊下に...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<4>

    恐ろしいほど巨大な、無気味なほど蒼い大満月が、晩秋の夜空に上る。 ケーン! 秩父麝香男鹿が、月に向って力強く哭く。 ケーン! (やりてえ!) ケーン! (やりてえ!) ケ〜〜〜ン! (やりてえぇぇよぉぉ〜〜〜〜!) 朗読テープのおかげでバイリンガル脳になったらしいおれには、男鹿の声がはっきり聞こえた。 あたり一面ものすごい糞尿臭というか、ケモノ臭というか、矢を射るかのような凄まじい麝香臭にむせ返...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<3>

    「けど……毛利が」 おれはてっきり武翔が夜襲をしかけてくるのかと。(確かに、夜襲時に戒厳令を布いたら闘えないよな……)「戒厳令は布かないよ。それぞれが侍として自身を律していれば、問題は起こらないはずなんだ」「なら、なんで毛利があそこまで?」「毛利くんが懸念したのは、今夜が大満月だからだよ」 上杉が重い溜息をついて腕を組む。「戒厳令とまではいかなくとも、戸外へ出るのは自粛した方がいいね」「戸外?」「うん...

  • 男道Ⅶ 男鹿用心<2>

    「……ないね」 探知機を動かしながら、上杉が云う。「そんなはずはない!」 おれは鼻の穴を膨らませて云った。 翌日の放課後である。窓の外は晩秋の早い夕暮れが迫りつつあり、カラスたちが哭きながらせわしなく羽ばたいている。「けど、反応しないよ。これ警視庁が使っている最新型なんだけどな」 おれの部屋を見回しながら、上杉が溜息をつく。色白のきりっとした賢そうな顔に銀縁眼鏡をかけている。中肉中背でどちらかと云え...

  • 男鹿用心<1>

    山里は 秋こそことにわびしけれ 鹿の鳴く音に 目をさましつつ 詠み人知らず『古今和歌集』 〈鹿〉は、秋の季語だ。 なぜかと云えば、秋は鹿の恋の季節(交尾の季節)。男鹿は独特の澄んだ高い声で鳴き、角を突き合わせて、恋と縄張りの為に闘うので他の動物たちより目立ったらしい。 だから昔から、秋といえば男鹿。 そして、ここ秩父山中にある全寮制男子校、武徳学園も秋といえば、《男鹿》なのである———が、し...

  • 伊十郎、執念の鯉もよう<後之三> 完結♡

    「おおおおおおお」 伊十郎は瞠目したまま吼えた。光の尾を引く小竜の体長は、二丈(約6.06メートル)ほどもあろうか。薄闇に朱金の鱗がきらきらと輝いて眩いばかりである。と、向きを変え、伊十郎へと真っ向迫ってくる。「おッ」 声を放った刹那、伊十郎は小竜がおのれの躰を通り抜けるのがわかった。次の刹那、伊十郎は戸外にいた。小竜の背につかまり、夜空を飛翔している。少しふっくらした月が、薄雲の流れる夜空に掛かって...

  • 伊十郎、執念の鯉もよう<後之二>

    「天狗は、そう申していた」「天狗……おぬしを育てたと云う?」「まだ鼻血が止まらぬのか?」 鯉蔵が案じるように眉根を寄せる。 伊十郎は眼を泳がせながらうなずいた。鯉蔵の背中のそれが痣ではなく、生きている竜であることは確かに伊十郎を驚かせたが、鬼火島の轟音とどろく潮の渦を鎮めた鯉蔵であれば、竜の化身であったとて今更驚きはしない。それより背を向けて立つ鯉蔵の、小豆色の下帯を結んだ小さな白い尻臀に新たな鼻血...

  • 伊十郎、執念の鯉もよう<後之一>

    男を抱くのは初めてではない。数こそ少ないが、陰間あがりの玄人から一通りのことは教わった。とはいえ、まな板に乗っただけ、と云えなくもない。いや、最後は伊十郎が主導を握り、男たちを悦ばせてやった。いや、上手におだてられ、そうなるよう仕向けられただけ、だったのやもしれぬ。何にせよ相手は陰間あがりであるから、そこらへんを歩いているふつうの男とちがってなよやかで、言葉も所作も万事がやさしく色っぽかった。 ...

  • 伊十郎、執念の鯉もよう<中>

    「おや、鷹見様。ずいぶん遅い御戻りで」 浄雲寺の門前で、檀家の寄合から戻ってきたという住職とばったり会う。五ツ半(午後九時)を過ぎていたから、互いに提灯を下げている。「知人の家でいささか馳走になり申した」 伊十郎は隠さずに返した。珠之助を送っていった筑前守の屋敷で、その筑前守と鉢合わせし、そのままぜひ礼をしたいと引き留められたのである。「それはようござりましたな」 老住職が鷹揚に返す。伊十郎の持つ...

  • 伊十郎、執念の鯉もよう<上>

    鷹見伊十郎が、木船町にさしかかったのは、夕暮れ近くになってからである。 木船町と坂町の境となる山那彦神社の参道は梅の木が多数植えられ、咲き出した白梅が、日の傾きだした往来を春めいた甘やかな芳香で満たしていた。 春と云ってもまだ雪のちらつく時節であるから、伊十郎は編笠を被り、着流した黒羽二重の小袖に江戸風の万筋文様を染めぬいた灰青の長羽織をつけていた。肩まで伸びた断髪を首の後ろで結わえ、白献上の帯...

  • 花月夜<後>―兵庫とお半シリーズ・七郎次外伝―

    (※注)登場する七郎次の女房名は「半太夫」ですが、『兵庫とお半』の「半太夫」と混同しそうなので「七郎次」と表記しております。 ややこしくてすみません。(;´∀`) 山を覆っていた瘴気が払われ、枝葉を透かせて十三夜月の明るい光が差していた。 七郎次は気を失った玄也を両の腕に抱いて、荷を置いた山道へと戻る。(お軽くなった……) もともと丈夫な質ではない上に、体力のみならず精神力をも酷使する陰狩の旅を、七...

  • 花月夜<前>―兵庫とお半シリーズ・七郎次外伝―

    (※注)登場する七郎次の女房名は「半太夫」ですが、『兵庫とお半』の「半太夫」と混同しそうなので「七郎次」と表記しております。 ややこしくてすみません。(;´∀`) 「行く」 荒れた山道を歩んでいた玄也が、ふいに声を発して立ち止る。 道を塞ぐ枝草を払いながら先を歩いていた七郎次は、六つ若い、おのが主へと振り返った。空には十三夜月が掛かっていたが原生する巨木と伸び放題の枝々に遮られ、その白い、凛々しい...

  • 薩摩秩父カルテット+御館様♪(Slow Luv♡勝手に応援企画)

    (薩摩秩父カルテット+御館様?) おれは配られたチラシに見入る。(カルテットって……四人組のことだよな?)(プラスおやかた様って……なに?) 貸し切りバスに揺られながら、おれは首を傾げる。 車窓の外は雨――雨――雨―― 久しぶりの東京は鈍よりした雨雲に覆われ、時折強く降る雨に濡れて、暗くじめっとしている。 ヨハネス・ブラームス作 ピアノ五重奏曲ヘ短調作品34
 数多のピアノ五重奏曲の中でも最高傑作と評される...

  • 暗黒 <十一> 四章完結! ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    「開けてはならぬ!」 古弦太の背後から、刃のごとく鋭い、冴えた声音が飛んだ。棺桶をとり囲む者どもの、血走った眸子が一斉にそちらを見、次の瞬間、ぞっと肌を粟立てる。 いつから居たのか、古弦太のすぐ後ろ、一間ほど離れた先に供を従えた若武者が立っている。色の白い、ほっそりした若者である。総髪にしているも、火影にうかぶやさしげな貌は若衆といっても通ることだろう。ふっくらと織った明るい色目の上等な小袖に綾織...

  • ばれんたいん秘話♡或日の野廻り組(完結編)

    神永です。ヴァレンタインデイ、過ぎてしまいましたね……( ;∀;)間に合いませんでしたが、めげずにお届けいたします。さて。『或日の野廻り組』 ☜覚えておられますか?前編(?)をお届けしてから、早六年っ!!!今年こそはと思いつつ、なかなかお届けすることができなかった後編を、前編ともども一挙掲載いたします。楽しんでいただけましたら、嬉しいです(≧◇≦) 或日の野廻り組(ばれんたいん秘話) ちよこらあとなる品...

  • 『読みたいCP投票企画』発表!ヾ( ̄∇ ̄=ノ ☆*:.。.

    神永です。「迎春2019」の記事から唐突に生まれた『読みたいCP投票企画』(笑)投票期間が終了しましたので、結果発表させていただきますね。総投票数、656票。スゴイです。そしてチャンピオンCPに輝いたのは、なんと「鷹見玄也と七郎次」☆*:.。. 順位は以下の通り。1位 鷹見玄也と七郎次「陰狩の鷹」200票 2位 久住と花籠「疑惑」85票 3位 羽仁とゆき「かくれ家」71票 4位 柘とリュイ「上海的情人」67票5位 ...

  • 伊十郎への100の質問<ファイナル> ―鷹見伊十郎シリーズ―

    またしても、あっという間に日々が過ぎ、スポンサー広告が出てしまいました〜(;^ω^) リアルはすっかり日常ですが、「読みたいCP投票企画\(◎o◎)/」が思いの外盛り上がっていて楽しませていただいております。 現在の断トツトップCPは、なんと「鷹見玄也と七郎次」!!! まさに意外(笑) あのどシリアスなスプラッタ―時代劇『風の道』を楽しんでくださっている方が思っているより多いということでしょうか? しかも「序章...

  • 読みたいCP投票企画\(◎o◎)/

    神永です。「迎春2019」の記事を書きながら、ふいに思い立った『読みたいCP投票企画』(笑)お急ぎでなかったら、ぜひ投票していってください。・〆切は二月三日の節分まで。・投票は一日一回五票です。・選択肢に読みたいCPがないときは、「新しい選択肢」の欄に書き込んでください。・コメント歓迎\(^o^)/投票数の多かったCPの短編をお届けします .。.:*どのCPが読みたいチャンピオンに輝くのか、楽しみに待ってます~~(^.^)/~...

  • 迎春 2019

    昨年中はご贔屓を賜り、心よりお礼を申し上げます。のろのろ更新ではありますが、本年も引きつづき、お付き合いいただけたら嬉しいです。さて。私の年末は、実家でひたすら障子張り(;^ω^) 古い家なので、一部屋につき、窓面と廊下面の二面の障子戸があり、それぞれ二枚組なので計四枚。茶の間は窓面が二間なので障子戸四枚、廊下の雪見障子とあわせると六枚。客間、寝室、姉の部屋、母の寝室に納戸。すべてを全張替したわけではな...

  • 暗黒 <十> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    (なにゆえ……イ組が?) 半太夫は眉根を寄せる。楢芝衆頭目直属のイ組は、鷹見家当主の影守として集められた格別の組である。その頭である火喰いの仙蔵が現れるなど――「飛丸。わしが良いというまで、部屋を出てはならぬ」 緊張する飛丸を残し、半太夫は手燭を持って、小さいながら式台を設けた表玄関へ向かった。通常、忍びは表玄関など使わぬ。公の用向きか、身分の高い武家の名代であるときを除いて――(江戸の殿の遣い?) 式...

  • 暗黒 <九> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    半太夫は下肢にこびりついた血糊を拭い、裂傷を負った箇所に木菟がつくった霊薬を塗った。痛みはあるも、耐えられぬものではない。一刻も早く、雨月丸に連れ攫われた兵庫介を見つけださねばならぬのだ。 呪法印を記した胸に武具を仕込んだ胴衣をつけ、身支度を始める。木菟によれば、雨月丸は青翁を操り、西の丸の若君を呪詛するほどの妖力をもっているという。今の兵庫介では太刀打ちできぬと――「兵庫介様……」 胸の痛みを絞り...

  • 暗黒 <八> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    館の外より、太鼓の音が聞こえだす。瞬く間に時は過ぎ、期限の半刻(一時間)になろうとしているらしい。打ち鳴らされる太鼓は、それを報せる合図だ。「古弦太様。退いてくださりませ。もはや刻限、瘴気の毒にやられ申す!」 躍り掛かって来る喰鬼を斬り払いつつ、瑞木(みずき)が叫ぶ。忍びは白兵戦などやらぬものだが、瑞木はそれに長けている。天井も壁も破壊された祈り堂は、結界に封じられる前の、人と喰鬼の壮絶な争いを...

  • 伊十郎への100の質問<其之五> ―鷹見伊十郎シリーズ―

    あっという間に一か月…(;^ω^) じりじりと書いてはいるんですけれど、ね。週末ごとになにかしら所用があり、思うようにはかどりません。 てなわけで、『暗黒 八』に代わって、久々に『伊十郎への100の質問』をお届けします。とはいえ、<其之四>をお届けしてから、なんと二年十カ月……(;´∀`) 忘れちまった方はコチラから → <其之一> 時は、鬼火島での死闘のあと。 満身創痍の伊十郎は、網代の荘で半兵衛に見張られな...

  • 暗黒 <七> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    半太夫は、血が煮え立つほどの怒りを感じた。骸を辱める屍鬼の呪と、真を踏みにじる真逆の呪に縛られた黒部伝右衛門の無念―― 眸子を燃やして睨み据えると、雨月丸の女人のごとくやさしげな口許に冷笑がうかぶ。「意地を張ったとて、どうにもならぬ。聞き入れぬと申すなら、黒部同様、その身は屍鬼となり、里は滅びる。それでも構わぬと?」「構わぬ! おのれも里も滅ぼうと鷹は飛ばす! それが我ら楢芝ものの誇りじゃ!」「愚...

  • 暗黒 <六> ―風の道(兵庫とお半シリーズ)―

    腹のなかで、蛇が蠢いている。 胎蛇の術で腹中に取り込んだ、あの白蛇だ。(調べはもう……済んだのではなかったのか?) 半太夫は苦痛に身をよじった。蛇が蠢くたびに、躯の芯部に焼けるような痛みが走る。ふいに大きく揺さぶられ、「ああッ……」 半太夫は眼を開けた。霞む視界に行燈明かりが見える。半太夫はおのれが何処にいるのか判らなかった。それどころか、おのれの身に何が起こっているのかも。 半太夫はなにも身につけ...

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