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青硝子ノ山羊ノ子 https://grapemoon.jugem.jp/

小説置場。オリジナル世界のファンタジーものですが、大人がほぼ出てきません。少年少女ものです。

自作のファンタジー小説「Ourselves」。長いです。

紺色仔扉
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2011/05/18

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  • Ourselves 131-2

    —ああ、なんてことかしら、頭が痛いわ。シュルセルはなきべそをかいていた。—どうして姉さんったらいっつもこう、無計画なのかしら、胃も痛くなってきたわ。ああどうしよう。シュルセルは頭をふるふると振って、自分にできる精一杯で自分を支えて、乳姉に対

  • Ourselves 131

     二、夢 少年が、まるで長い間止めていた息を吐き出すかのようにぜえぜえと喘ぐのを、ディルキエはきょとんとした顔で眺めていた。少年は呼吸を整えると、困惑したような目でキッと睨んできた。「あなた、なんなんですか…!どういう神

  • Ourselves 130

     一、ダゲル 【世界のことを知るために、我々はまず、ある一つの物語を語らなければならない。 ある一人の少年の、世界への呪いを受け止めなければならない。 彼の者ほどに世界の理不尽を一身に受けている者はなし。 彼の者を本当に

  • Ourselves 129

      第二章 篝火 シリアの回廊が、他の二人にとってどんな世界だったのかは、カナタにはわからない。けれど少なくともカナタにとっては、そこはただの美術館のような陳腐な空間だった。けれど、そこに並べられた絵も、詩も、

  • Ourselves 128

      一、明瞭 それは、ただの願望だったかもしれないし、諦めだったかもしれない。せめてもの慰みだったのかもしれない。夢だ、これは夢なのだな、と初めからわかっていた。世界には、ラベンドューラの花の、淡い紫の花粉が、

  • Ourselves 127-3

     しばらくふらふらと歩いているうちに、だんだんと馬鹿らしくなってきた。自分はなんて阿呆なんだろう。なんだかどうでもいいことでどうでもいい落ち込み方をしている。気を取り直して花束を置いて行った場所に戻ると、なぜかそこにまた白髪頭が座

  • Ourselves 127-2

     リアトは洞窟の傍に腰かけて、眠っていた。まったく、身重だと言うのに体を冷やす真似をする。ハジュナが傍に寄ると、リアトはぱちり、と目を開けた。くっきりとした綺麗な目がこちらを見る。「ああ、花の匂いがすると思ったら、それだったの」リ

  • Ourselves 127

      一、水晶 何というか、拍子抜けした。何やってるの?と言いたい。けれどまともに言葉を出したこともない身としては、ぽかん、と口を開けたまま立っておくしかできない。いや、何をやっているのかくらいは見ればわかること

  • Ourselves 126-3

     「君達は・・・」声を振り絞った。「君達は、みんなダゲルのことが嫌いなの?混血児なのに?ダゲルは君たちにとって悪なの?」タシュアは眉をひそめた。「どう考えても善ではねーだろーよ」タシュアは肩をすくめる。「ま、僕達みんなそれなりにい

  • Ourselves 126-2

      後は結局、適当にピアニアの後をついて回って、適当に離れて自分の好きなようにするだけだ。いつも変らなかった。ただそこにここ数日はカナタを見舞うのも日課のようなものになっている。カナタは貧血らしいものを起こしてからずっと

  • Ourselves 126

     第一章    瑠璃石 一、原石 シェリバール達をかくまって、既に五回は朝を迎えた。洞窟の中から出て外に洗濯物を干しているピアニアを、ハレは椅子で片膝つきながらぼんやりと

  • Ourselves 125-2

     ドアドルクと暮らすようになって、リーヤは初めて心から落ち着くと言うことを知った。今まで誰といてもどこか落ち着かなかった心が満たされる。なぜかは分からない。少なくとも彼が自分に子供への愛情を向けてくれていることは感じられた。けれど

  • Ourselves 125

     第十部 破片 あの時、おれは。 うれしかったよ。 君が忘れても、別にいいから。おれが覚えているから。だから、 どうか。      

  • Ourselves 124

     五、布片 「どうしちゃったのかな?」困ったように黙り込んでしまったシェリバールと、素知らぬ顔で黙々と食事を続けるリアトに、リュウリはわざと強引ににこにこと屈託なく笑いながら話しかけた。—おとなってほんとうに面倒な人たち

  • Ourselves 123-4

    「体はあそこにあって、ちゃんと精神も体と共にあって。なのに存在だけがここに迷い込んでる。君に引き寄せられたんだ。そうだ、僕を模写するために。かつてあいつがそうしたように」「ソミア?」ヤエは思い出しかけている記憶を頼りにその名前を呟く。けれど

  • Ourselves 123-3

     「あなたは・・・まさか、人に見せている顔と本性が違うとか、そういうことなの?」「は?」ヤエがきょとん、とする。「別の人間として生きることを強いられたとか、そういうことなのかしら?まるでちぐはぐだわ。貴方は今、私に貴方自身の話をし

  • Ourselves 123-2

     「冷たいです。こういうのは、初めて食べました。おいしい」「フォユルはよく冷やした方がおいしいんですって。ピアニアの得意料理よ」リアトは、かちり、と小さな音を立ててれんげを置いた。「ブライアンの民」リアトが静かにヤエを見据える。今

  • Ourselves 123-1

      四、紙片 ハレがカナタを抱きかかえて帰ってきたのを見て、シェリバールはなぜかものすごく複雑な気持ちになった。どうでもいいことだがまず自分にはあんな風に軽々と持ち上げられないだろうな、と言うことと、カナタの髪

  • Ourselves 122-7

     『ああヘリフェリドゥナ。君だけが今もこの階差に縛られ続けている。もう意味のないことなのに。かわいそう。かわいそう。君が君の消えない執着のせいで作り上げたこの歪みを僕は憎めない。君が引きずり込んだすべてを愛している。だって僕らは一

  • Ourselves 122-6

     頭が痛い。気が狂いそうだ。自分の記憶ではないものに浸食されていく。どうしてわたしばかりこんな目にあわなければいけないの。勝手だわ。勝手よ。ガニュメディリジア、あんたは結局いつだって身勝手なんじゃない。カナタの手を、そっと誰かが引

  • Ourselves 122-5

     「ディルキエの乳妹が、その子孫にこの話を語り継いだ。これは、門外不出の言い伝えだ。なぜ歴史に残されなかったかと言えば、それは、ディルキエとダゲルが、残らないことを願い死んでいったからだ。けれど、僕の祖先であるシュルセルが、自分の

  • Oueselves 122-4

    シェリバールが耐えきれなくなったのと、タシュアが嘆息したのはほぼ同時だった。「あのさぁ、それ冗談のつもり?」「面白くないか」「ちっとも面白かねえよ。あほか」ハレはにやり、と笑う。「よし、合っているかどうか知らんが、僕の観察結果教えてやろう」

  • Ourselves 122-3

     「シェリバール、だったっけ?めっちゃいい名前じゃん。けど同時にめっちゃ恥ずかしい名前してんね、あんた」「そう、かな?」「まあ、ものっすごく頭がいい奴ならあんたのその名前であんたのこと推測できるかもな。僕の場合は後付け。先にあんた

  • Ourselves 122-2

     よくよく観察してみれば、タシュアの髪は一般人にしては色が独特で綺麗すぎるとわかった。こんな緑にしか見えない頭、他に持つ人間を見たことがない。肌の露出している腕も、細めではあるがしっかり筋肉がついていた。一般人にしては妙に均整のと

  • Ourselves 122

     三、破片 ようやくカナタの小言が止んで、シェリバールはふう、と小さく息をついた。カナタは目に若干涙を浮かべて口を押さえている。そしてなぜかしかめ面を赤らめた。「カナタ?」ヤエがのんびりと言う。カナタは小さく、「舌を噛ん

  • Ourselves 121-2

     **********—なんだかなあ・・・。ピアニアが織った絨毯の上で丁寧に靴の泥を落としているハレの後ろ姿を見ながら、タシュアは何とも言えない気持ちになった。なんだかんだで神経質で気難しくて我儘・・・というと言いすぎかもしれない

  • Ourselves 121

     二、切片 「なあ、これどうする?」「それは右の籠に入れて」「これは?」「それも右」「ほーい」タシュアはピアニアの言葉通りに摘み取った野草を網籠にどさどさと流し込んだ。それを見てハレが少し顔をしかめる。「おい、もう少しど

  • Ourselves 120

      第二章 雨 一、欠片 「また雨かぁ…」空を見上げたまま、目を細める。霧雨にも近いそのしぶきは、皮膚に当たってとても気持ちがいいけれど、目にちかちかと入ってくるのは少しだけうっとうしい。この地域は雨

  • Ourselves 119

      「顔が死んでるけど、どうしたの?」レスレズの声に、はっと我にかえる。レスレズはつまらなさそうに、ルシファの注いだ茶をすすっていた。足を組んで、退屈そうに茶菓子を口にほうり入れる。「さっきから君、なんか上の空だよ。まる

  • Ourselves 118

     六、映る 「る、るる、るし、るしふぁ」リコットの蚊の鳴くような声に、ルシファは無表情に振り返った。目が合うと、肩を跳ねさせてリコットは顔を真っ赤にして俯く。このどもりと挙動不審はこの娘のためにもどうにかならないものか、

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