その日わたしが帰宅してドアを開こうとした時のことであった。いきなり隣のドアが開いた。おどろいた女の目がじっとわたしを見ていて離れない。そこまで驚かせてす...
自転車と環境について考えるサイトです
自然と人間の健康な環境づくりと都市建設をめざし、自然科学者、建築家、環境デザイナー各位のご指導も賜りながら、サイクリストが政治参加するチャンスとしましょう!
その日わたしが帰宅してドアを開こうとした時のことであった。いきなり隣のドアが開いた。おどろいた女の目がじっとわたしを見ていて離れない。そこまで驚かせてす...
さび錆は赤く浮かんで見えるがその裏には黒い錆が沈んでいる浮いた女に沈む男も浮いた分だけ沈んで錆びているので浮いた分だけでなく沈んだ分も掘りださなければなら...
岬工場 高木敏克 薄暮が迫ってくると遠くに光が点りはじめる。小さな光が命の在りか示すのだが、岬の闇がまっすぐ伸びて島につなが...
風の闇をのぞけ 村上春樹の「風の歌を聴け」のはじめのほうに野井戸の闇を覗く少女が出てくる。実は風の歌はそこから聴こえてくるのだ。その穴はぽっかり空いた心の...
今日は神戸珈琲物語で長田高校の先輩詩人に会ってきました。甲子園出場記念の帽子をプレゼントして戴いた。詩の根拠について楽しい語らいの茶話会となりました。大阪...
宮川に沿ってその家に行く途中に何本かの橋が架かり道から浮いたように高くこんなに浮いたり沈んだりして下には鉄筋の骨が埋まっている 風に晒されて地表は柔らかく...
六甲耳鳴りのする高度でヒルクライマーたちが蝶々を追っている雷雲が追ってくる山肌を包むように包囲しようとして包囲されていたのだたしかに山は鳴っている解放区な...
琴掛柳の影にはいくつかの死角があり止まったままの時間に躓くことがある空とともに私が映る床屋の水盤に鋏が解体されてふたつのナイフになる 風の吹く砂漠は布に...
あまりにも寒いので毛皮をかぶり羊になろうとした時のことであった若い時の革ジャンは記憶だけが重かった結末しか覚えていない悪夢のように 現実のような夢というも...
詩の会も終わって、二次会も終わって、地下鉄山手線の入り口で解散になった時に、シナトラに行かない?とサユリはいったのでみんなが振り向いた。黙って消えればよい...
風景の隙間では記憶の世界から夢の世界に時間が流れて南の銀色の海は朝から傾いている この乱雑な再開発の斜面の神戸にも山村の名残の坂道が続...
さび錆は赤く浮かんで見えるがその裏には黒い錆が沈んでいる浮いた女に沈む男も浮いた分だけ沈んで錆びているので浮いた分だけでなく沈んだ分も掘りださなければなら...
高橋は蛇の木峠のトンネルを出たところで右目の端に黒い石積みのダムを見つけて目が眩み、ハンドルを切り損ねて車体をバウンドさせて横転し、バイクは空中に舞い、...
ドライブウェイを登ってくる時には確かに見えていたのに、下るときにはなぜか見えなくなる石積みのダムがある。老人の話によると、その昔その谷には山間の部族がひっ...
ドゥニーズの部屋 水滴が玉になって転がるようなパリジェンヌのフランス語は耳に届くだけではなく胸に響く快さをもっている。ドゥニーズが喋るとそれだけでフランス...
サンマロへの道(1) 「久しぶりにお父さんがブルターニュから来るわ。飼っている大兎のお肉も持って来てくれるの」洋子さんからも少しは聞いていたけどドゥニーズ...
サンマロへの道(2) モンサンミッシェルで宿を取らなかったのは誤りであった。確かにあそこでは宿が取れたはずだ。海に浮かぶ寺院を背にしながら、どうしても振り...
サンマロへの道(3) リチャード・パーカー今という時間がいつまでも続く未来のやってこないノッペラボーの道だった。ようやくたど...
調査員Rの報告 保険会社はいくら保管金を支払っても損をしない金融組織になっている。支払い保険料は後...
エッセイ賞入選作の通知が届きました。
機関代理店がなぜ悪いかというと、自由競争を排除しているからである。企業が内部に保険代理店を作り、保険料の一部が手数料として戻ってくるとなると、代理店間の...
ダウンヒル 高木敏克 子供たちの声が消えると坂の上からカンカンが転...
ヒルクライマー 髙木敏克女は死ぬ前に話しておきたいことがあるといって、毎晩 ねるまで ねたまま上になり下になり...
共同保険とは何か? この取材は主人公のX研究員の報告として創作された小説のプロットなので、事実調査ではありません。作家の単なる想像力の産物です。 この話は...
出向社員の驚くべき発言 潜入記者の聞き込み調査――――小説―――――フィクションです 「なるほど、機関代理店のカラクリについてはだいぶん解ってきました。...
機関代理店への徹底追及潜入記者の決死の取材報告 ――――小説―――――― 機関代理店は、企業の「自己物件代理店」「別動体代理店」英語で...
出向社員の実態―――――侵入記者の聞き込み取材――――小説今回の事件では、大手損保2社の出向社員がそれぞれ3名だったのに、1社は37名だった。この異常な出...
機関代理店と保険バブルの関係 (潜入記者の報告)ーーー小説のプロット 保険契約企業が自ら保険代理店を始めるというのはどういう事なのか?まず考えられることは...
保険金詐欺の真犯人は誰か?(潜入記者の報告) これは小説のシナリオです。 損害保険会社は大企業から保険契約を得るために「機関代理店...
保険とリスクマネジメント 日本では保険といえば、リスクマネジメントの一手段として定着し、リスクを軽減したり転嫁したりするものだと考えられているが、これは保...
タイミング・リスクマネジメント 阪神淡路大震災においては市長も罹災し、市庁舎には出てこれなかった。司令塔の不在のまま、意思決定はなされず、救護活動、防災活...
反抗的人間L‘HOMME REVOLTEbyAlvert Camus このレポートは自分が文学作品を書くためのものです。 総 論 「革命家とは、す...
黒田喜夫「詩と反詩」の世界 読書会レジュメ by髙木敏克 黒田喜夫年譜 月十日闘いつ黒田喜夫(本名)父母父系は山形県西村山郡紫橋村中郷(現在河江市)...
悲劇メディア2023・4・23 カルメン1・ プロロゴス エウリピデスの悲劇「メディア」は紀元前431年の春、大ディオニソス祭において上演された。紀元前...
サンマロへの道 「久しぶりにお父さんがブルターニュから来るわ。飼っている大兎のお肉も持って来てくれるの」洋子さんからも少しは聞いていたけどドゥニーズお父さ...
墓をさがす 高木敏克梅の開花を追いながら川沿いを自慢の自転車で走っていると、谷間の懐かしい路地に迷い込んでしまっ...
ドゥニーズの部屋 水滴が玉になって転がるようなパリジェンヌのフランス語は耳に届くだけではなく胸に響く快さをもっている。ドゥニーズが喋るとそれだけでフランス...
瓦礫砂漠 砂漠にサイクリストが足をつく見渡せば地平を瓦礫が覆っているタイヤは砂に沈むが瓦礫は超えるのでたいていの道は瓦礫砂漠に描かれる...
沼島 白骨に夜行貝が静かに語り始める寒天状の午後孤島ではビニール傘が全員にゆきわたる少女たちが拝むのは海底から立ち上がる立石やがてそれを中心に空が回り始め...
河面 なまぬるい水が寒天のうすみどりで固まり少年は真っ逆さまに閉じ込められている水底に潜んで川海老を見上げると川面に自分の顔が映っている 水中の緑より夜の...
銀行の廊下 高木敏克銀行の廊下の突き当たりに古い水槽がありなまぬるい水が寒天の薄緑色に固まり長い藻が水面までのびる無名の昼過ぎ初老の男が茶柱のように立たさ...
樹の記憶 髙木敏克 森は脳の形をしていて鳥たちは森に記憶している森は考えることができるので老人は森に近づき樹になりたがる 島から渡っ...
成層圏 立体地図を片手に私は朝の散歩をする切り通しの橋の下をわたしは流れ透視する地図と風景をかさねて百閒の二の足を踏まない三の足で歩いてゆく&n...
水蜘蛛 わたしが生まれた谷は東にひらけ銀色の湾が太陽をはねかえしていた城は遠く時間のかなたにあり水脈の水時計が時をおとして城はもうも...
銀行の廊下 高木敏克銀行の廊下の突き当たりに古い水槽がありなまぬるい水が寒天の薄緑色に固まり長い藻が水面までのびる無名の昼過ぎ初老の男が茶柱のよ...
水蜘蛛 わたしが生まれた谷は東にひらけ銀色の湾が太陽をはねかえしていた城は遠く時間のかなたにあり水脈の水時計が時をおとしてもうもどらない 水に沈み土に沈...
霧 窓の外には微かに海と島影が見えていた。その影が島のものなのか半島のものなのか、Rにはわからなかった。山から降りてきた冷気が海峡の温かい海面の上で大量...
風景の割れ目 髙木敏克 確かに、私はあのダムを見過ごしています。高速道路では脇見運転は危険だし、あのダムが私...
グリングラス 「自由は隠さなければ得られないようです。すべての本分は隠れて果たさなければならないようです。つまり、すべては裏作業ということです。逆にいいま...
ブルーブラック 髙木敏克 闇の向こう側では、窓の中で少年が鴉の顔に見入っていた。乾き切...
星の丘 猫の谷 谷から見上げると空は紫色に燃えているように見えた。鳥の群れがねぐらを捜して飛んでいった。丘陵地帯の丘の一つがまるで手つかずの自然林のまま...
無花果 この町では光がどこまでも染み込んでいるように見えた。大地までも光を含んで赤く見えた。物陰には闇の換わりに藤色の気体が立ち込めているように見えた。...
月と泳ぐ 髙木敏克 懐かしい光に照らさ...
月に酔う 髙木敏克 ...
等高線 高木敏克 獣道のような狭くて荒れた林道から斜めに下ったところで道はアスファルトになったが、海まで滑落...
風景の隙間(1) それは、いくつかの台風が通り過ぎ、急に寒くなりはじめた秋口のことだった。いかにも曖昧な風体の青年が、なんとなく自分に似た性格の不思議な街...
詩集について、それは小説のように一つの作品となるように編集しなければならないと佐々木幹郎は言う。未発表の中也の詩篇を編集して一冊の詩集に仕上げるのは一人の...
ロシアのウクライナ侵攻以降世界の二極化がとても深刻になってきました。直継伸彦の「光る声」は1956年のソビエトのハンガリー侵攻を契機に書かれた小説です。...
EDGAR ALLAN POEの詩RAVENの意味はカラスで、ヨーロッパ・北アジア・北米に住む大鴉あるいは渡り鴉と呼ばれるカラスのことである。日本でレイバ...
私事で始まるが、文学や哲学に興味を持ちはじめた少年のころ、祖母がよく言ったものだ。「小説家と哲学者だけにはならんでおくれ。文学や哲学を書いたり読んだりす...
山々の神社の神主たちが降りてきてベースボールをはじめたら白い袖をひらひらと木の靴を脱ぎ棄てて白球はフィールドを駆け巡る大きなうちわで天狗がさわぎ山伏たちが...
猫を飼う 真夜中に目覚めると何やら獣の匂いがするもう一人の自分の匂いに驚いて目が覚めたのかわたしは猫に飼われているようだ 人間という嘘の空気を着ていた...
人猫 谷の東向きの斜面に下に猫の喜びそうな日当たりの良い草原があった。民家は斜面のずっと上の方にあり、草原には垣根もなく小さな門と猫小屋があった。小屋と...
もう誰もが知っているはずのことを、あらためて聞くのはほんとに勇気のいることだ。しかも恥ずかしくて質問が不十分だと、相手は十分には応えてくれない。なま返...
蜂男 野原の中をぬいぐるみの男が歩いてくるのかと思った。灰色の頭部はのっぺらぼうで、顔がどちらを向いているのか分らない。Rたちが立ちすくんでいると、腰まで...
立体式養豚場 綴れ織りの下りの八番目のコーナーにその異様な工作物はあった。隙間だらけの建物は階数が不明であり、大きさも不明に見えた。遠近感を失った僕は眩...
羊の歌 綴れ織りの急斜面を走り終えると急に視界が開けて一面の緑が僕達を迎えてくれた。なだらかな牧草地を僕たちの自転車はブンブン騒ぎながら下っていった。曇空...
長田神社の横を流れる宮川という深い川には細長い鉄の橋がかかっていて光の子幼稚園は金網に囲まれた教会の中にあった橋の手前から見ていると金網の向こうの背もた...
耳鳴りのする高度でヒルクライマーたちが蝶々をおっている雷雲がせまってくる山肌を包むように 包囲されていたのだたしかに包囲しようとして 解放区なんて包囲さ...
ジーパンの膝小僧から糸が出ているので引っ張っていたら、どうやら繊維質の自分の体がほどけているのであった。最近、乾燥肌がすすんでいると思っていた矢先の出来事...
茶色い駅 茶色い駅は錆びた鉄骨でできていて、エレベーターもエスカレーターも機械仕掛けがよく見える。鉄粉は人間にはりつくと血の色になるが、血もまた鉄でできて...
アボリジニーそもそも外来人が在来種の保護活動に躍起になっているというのも変な話ですね。在来人がどれだけ殺されてここが外来人種の国になってしまったのかという...
これで問題が解決したわけではない時が解決してくれるというのは本当かなぜ生きるのかもそうなのか生まれることがすべての解決らしいが問いはアメーバーのように繁殖...
サングラスをかけてトンネルに突っ込むと真っ暗闇でセンターラインが消える闇の中で瞳孔を開くと生きていけるし瞳孔が開くと死んでいることもある いずれにせよロ...
太陽をさらに上から照らす光があり朝がやってくるもうひとつの現実が毎朝あらわれて生まれ変わってゆく人生は昨日を捨てながら回ってゆく私を前に押し出すものは何か...
フランキンセンスは食べ物ではない。乳の香りと書いて乳香だ。エチオピアの乳香が届いたがアマゾンで買えた。今から乳香に酔って詩と小説を書くのだ。
フェズ・エル・バリは迷宮都市である明らかにこの都市の内観面積は外観面積より広い外から見るより、中に入った方が広いのだそれは路地に迷うからだけではない風と音...
ホワイトビルは裁判所や市役所などに近く、弁護士や会計士さんが多く入ってます。そこで私は爽やかに働いているのですが、改めてそう言われました。ビルの入り口です...
等高線 すっかり暮れてしまった山道で僕は道に迷ったみたいだ。自転車のライトはしっかり充電してきたのでまだまだもちそうだ。それに道は平坦で舗装もよく、も...
極めつき!夏の名句100選 「四時」 永末恵子 16句 山笑ういつも誰かの居たところ 手を入れて悼む三月伽藍かな スープにはなにも映らず鳥の恋 耳鳴りの奥...
高木敏克わたしも家内も人混みが好きでない。二人はサンドウィッチを食べながら人を避けて海岸に向かい、浜風の通り道を探していた。...
高木敏克 トルコ行きの船の時刻表についてはアテネに滞在する間に地下鉄でピレウス港まで見に行った。切符売り場は波止場にあった...
高木敏克船は闇に浮かんでいる。海面は薄い膜となって溶けている。それなのに工場の音がする。船底の蒸気とともにあの世の音がきこえてくる。眠れそうにもないの...
プロローグ アイスキュロスの「縛られたプロメテウス」からギリシャ悲劇を読み始めると、なかなか入っていけないまどろっこしさを感じる人もいるのではないか...
等高線 すっかり暮れてしまった山道で僕は道に迷ったみたいだ。自転車のライトはしっかり充電してきたのでまだまだもちそうだ。それに道は平坦で舗装もよく、も...
髙木敏克 髙木敏克4月16日に京都駅前「花の舞」で同人誌「時刻表」の終刊打ち上げの会合が執り行われました。
Toshikatsu Takagi退職記 ご挨拶 神戸から大阪までの湾をめぐりコンクリート・ジャングルの中の事務所で一日過ごし、夕刻になると再び湾をめぐり...
高木敏克 トルコ行きの船の時刻表についてはアテネに滞在する間に地下鉄でピレウス港まで見に行った。切符売り場は波止場にあっ...
Un iKAPPA 髙木敏克 ある日の朝、散歩していた時の話だが、カッパを見た。そいつは頭の上に水のたまった皿を乗せていて、頭を...
お盆に仏壇を整理していると、引き出しの奥から小さな冊子がまた出てきた。海運会社が出版した記念誌で、子供のころに一度読んだことがあるが、誰かが奥の方に突っ込...
記憶の森 神撫(かんなで)の丘陵地帯には小さな森がたくさんあった。それがある日とつぜん破壊されはじめた。山の上にディーゼル・エンジンの狼煙が上がり...
神々の丘 髙木敏克 「なんだか、このあたり、あなたと昔行ったことのあるどこかの国の島の迷路に似てるわねえ。でも、えーと、名前が思い出...
プロメテウス 髙木敏克 いくら行っても同じところに戻ってくるところに隠れている魔物は何かドライブウェイが等高線に重なってい...
蜘蛛と玉虫と 髙木敏克 肩幅しかない石段をすれ違ったものがいる影法師だとすると風小僧の小さな影だ忘れら...
発光樹林帯 機内アナウンスに起こされた。飛行機はゆっくりと成田空港に近づいてゆく。雲海を突き抜けると機体の底を破って発光樹林帯が見えてくる。遠い記憶の底...
発色 髙木敏克 砂丘の喫茶店は化石になった骨のように乾いていた。中に入ると内壁は粗末な板張りであった。窓は一つ...
世界中に飢餓が広がる中、食料自給力が恐ろしく低い日本においては万一ことが起これば人類史上例を見ない飢餓地獄の蓋がひらくはずである。黒田喜夫の「死にいたる...
高木敏克1.ティトレリ カフカを読みはじめると、カフカの小説以外何も読む必要がなくなるような気がする時がある。気が付くとカフカが限りなく自由に書けば書くほ...
離島の処刑場にやって来た旅人は死刑を執行しようとする将校に尋ねた。「この男は処刑されることを知っているのですか?」将校は傲慢に次のように返答した。「知ら...
異貌の発覚―――黒田喜夫試論 黒田喜夫の書いたものを改めて読み返すということは、書かれた時代にもどって読み返すことではない。書かれたものを正しく理解しよう...
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その日わたしが帰宅してドアを開こうとした時のことであった。いきなり隣のドアが開いた。おどろいた女の目がじっとわたしを見ていて離れない。そこまで驚かせてす...
さび錆は赤く浮かんで見えるがその裏には黒い錆が沈んでいる浮いた女に沈む男も浮いた分だけ沈んで錆びているので浮いた分だけでなく沈んだ分も掘りださなければなら...
岬工場 高木敏克 薄暮が迫ってくると遠くに光が点りはじめる。小さな光が命の在りか示すのだが、岬の闇がまっすぐ伸びて島につなが...
風の闇をのぞけ 村上春樹の「風の歌を聴け」のはじめのほうに野井戸の闇を覗く少女が出てくる。実は風の歌はそこから聴こえてくるのだ。その穴はぽっかり空いた心の...
今日は神戸珈琲物語で長田高校の先輩詩人に会ってきました。甲子園出場記念の帽子をプレゼントして戴いた。詩の根拠について楽しい語らいの茶話会となりました。大阪...
宮川に沿ってその家に行く途中に何本かの橋が架かり道から浮いたように高くこんなに浮いたり沈んだりして下には鉄筋の骨が埋まっている 風に晒されて地表は柔らかく...
六甲耳鳴りのする高度でヒルクライマーたちが蝶々を追っている雷雲が追ってくる山肌を包むように包囲しようとして包囲されていたのだたしかに山は鳴っている解放区な...
琴掛柳の影にはいくつかの死角があり止まったままの時間に躓くことがある空とともに私が映る床屋の水盤に鋏が解体されてふたつのナイフになる 風の吹く砂漠は布に...
あまりにも寒いので毛皮をかぶり羊になろうとした時のことであった若い時の革ジャンは記憶だけが重かった結末しか覚えていない悪夢のように 現実のような夢というも...
詩の会も終わって、二次会も終わって、地下鉄山手線の入り口で解散になった時に、シナトラに行かない?とサユリはいったのでみんなが振り向いた。黙って消えればよい...
風景の隙間では記憶の世界から夢の世界に時間が流れて南の銀色の海は朝から傾いている この乱雑な再開発の斜面の神戸にも山村の名残の坂道が続...
さび錆は赤く浮かんで見えるがその裏には黒い錆が沈んでいる浮いた女に沈む男も浮いた分だけ沈んで錆びているので浮いた分だけでなく沈んだ分も掘りださなければなら...
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ドライブウェイを登ってくる時には確かに見えていたのに、下るときにはなぜか見えなくなる石積みのダムがある。老人の話によると、その昔その谷には山間の部族がひっ...
ドゥニーズの部屋 水滴が玉になって転がるようなパリジェンヌのフランス語は耳に届くだけではなく胸に響く快さをもっている。ドゥニーズが喋るとそれだけでフランス...
サンマロへの道(1) 「久しぶりにお父さんがブルターニュから来るわ。飼っている大兎のお肉も持って来てくれるの」洋子さんからも少しは聞いていたけどドゥニーズ...
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サンマロへの道(3) リチャード・パーカー今という時間がいつまでも続く未来のやってこないノッペラボーの道だった。ようやくたど...
調査員Rの報告 保険会社はいくら保管金を支払っても損をしない金融組織になっている。支払い保険料は後...
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成層圏 立体地図を片手に私は朝の散歩をする切り通しの橋の下をわたしは流れ透視する地図と風景をかさねて百閒の二の足を踏まない三の足で歩いてゆく&n...
水蜘蛛 わたしが生まれた谷は東にひらけ銀色の湾が太陽をはねかえしていた城は遠く時間のかなたにあり水脈の水時計が時をおとして城はもうも...
銀行の廊下 高木敏克銀行の廊下の突き当たりに古い水槽がありなまぬるい水が寒天の薄緑色に固まり長い藻が水面までのびる無名の昼過ぎ初老の男が茶柱のよ...
水蜘蛛 わたしが生まれた谷は東にひらけ銀色の湾が太陽をはねかえしていた城は遠く時間のかなたにあり水脈の水時計が時をおとしてもうもどらない 水に沈み土に沈...