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大福 りす
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2011/01/21

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  • 孤火の森 第11回

    『孤火の森』目次『孤火の森』第1回から第10回までの目次は以下の『孤火の森』リンクページからお願いいたします。『孤火の森』リンクページ孤火の森(こびのもり)第11回お頭の部屋の中に入り腰を落ち着かせたところに、ポポが皿に乗せた魚の干し物と水の入った瓶を抱えて入ってきた。お頭が瓶を受け取ると隅に置いていた木椀二つに水を入れる。「ポポもここに居ろ」どういうことだと上目遣いにお頭を見たが、サイネムの前に木椀を置いたお頭が目顔で座れと言う。お頭の斜め前にサイネムが座っている。仕方なく、そのサイネムの正面から少し外れるところに腰を下ろした。お頭が木椀の中の水を飲み干し、魚の干し物に手を伸ばした。一つを取るとサイネムの前に皿を滑らせたがサイネムが首を振った。「水は頂くが、そちらはいい」「腹が空いてないのか?」「わたし...孤火の森第11回

  • 孤火の森 目次

    『孤火の森』目次第1回・第2回・第3回・第4回・第5回・第6回・第7回・第8回・第9回・第10回孤火の森目次

  • 孤火の森 第10回

    孤火の森(こびのもり)第10回産屋の外から聞こえる剣戟(けんげき)の音がかなり近くなってきている。森の民の呪によって同士討ちをさせていたが、女王に呼ばれたサイネムが引いてからそうではなくなった。敵に強力な呪を持つ呪師が居た。それが大きく響いた。たとえ呪師といえど街の民の呪師などに破られる森の民の呪ではない。だが森の民達がどれだけ幻影を見せ迷いの道に入らせても同士討ちをさせても、疲れた森の民達の呪ではその呪師によって破られ始めていた。頼みの綱はサイネムの呪力だけだったが、そのサイネムが女王に呼ばれた。女王に呼ばれれば応えるのは当たり前だがこの戦いのさなかである、だが迷うことは無かった。サイネムにも分かっていた、あまりにも兵の数が多すぎる一人ではもう手が回らないと。湧いて出てくる虫のように次から次と兵が森の中...孤火の森第10回

  • 孤火の森 第9回

    孤火の森(こびのもり)第9回「さっき言ってただろ、お頭を置いてここを離れたって」「ああ」「天幕まで行ってたんだ。そこで兵たちの話を聞いた。明日森が襲われる」「・・・」タンパクは黙ってしまったがお頭が目を剥いた。それに気付かず若頭が話を進める。「前に長たちが集まってそのことを話した」「・・・聞いてる」「それじゃあ、なにを言いたいか分かるだろう」今でこそ遠回りをしている兵だが、森を制圧すれば一番の近道を通って森と街を行き来する。それは石の群れの領域を兵が歩くということ。今お頭の群れが兵たちが通るたびに姿を隠している生活と同じことを、終わりの分からない日々送らなければいけないということ。「夜が明けたら動くようだ。小さな森だそうだな、制圧に一日もかからないだろう」制圧が終われば沢山の兵がこの辺りを歩くということ。...孤火の森第9回

  • 孤火の森 第8回

    孤火の森(こびのもり)第8回若頭が目を眇めた。走っていた足を止め、岩の陰に隠れながら徐々に足を進めていく。「やっぱり・・・」天幕であった。篝火がある。歩哨(ほしょう)らしき姿が見えるがそれだけでは無い。何人もの兵の姿がある。「何をしている・・・」こんな夜ならば歩哨だけが外にいるはず。あとの者は眠りについている時間であるはず。若頭の経験から森を襲うのであれば朝のはず。経験と言ってもたったの一回だけだが、あの時には朝から騒ぎを耳にした。夜襲ではなかった。きっと森の民より夜目が利かない街の民、というのが大きかったのだろう。場所は森の中だ、森の民は朝であれ昼であれ夜であれ目を瞑ってでも戦えただろう。それを思うと街の民である兵に有利な朝を選んだのだろう。そこから考えるに夜襲をかけるはずはない。それなのにどうしてこん...孤火の森第8回

  • 孤火の森 第7回

    孤火の森(こびのもり)第7回男が両手に抱えていた赤子をお頭に差し出した。『我が森の御子だ』『森の御子?』『女王になるべき御子、そして女王を支えるべく為に生まれた御子』『森の御子って・・・どっちかが森の女王になる御子ってことか?』生まれたての子だ、顔だけではどちらが女なのかは分からない。『そうだ』『双子・・・ってことか』男がお頭の手の中に双子を置いた。『おい、いったいなんだっていうんだ』受け取る気など無かったが、手の中に収められればつい抱えてしまう。『女王に息がなくなった』『え・・・』『森は眠りに入った』『眠り・・・』『仮死状態のようなものだ』『そんな・・・いったい、どうして』『女王の御子を育ててくれ』あの時、この男は女王の口添えがあったと言っていた。だがその前にこの男は少年お頭をここで死なせるには戸惑いが...孤火の森第7回

  • 孤火の森 第6回

    孤火の森(こびのもり)第6回小さい時にブブが『ブブもあれ欲しい!』と、ポポの股を指さしては何度も言っていた。お頭は『今度山の中で見つけたら持って帰ってブブに付けてやる』と言っていたが、今はもうお頭の言っていたことが冗談だと分かっている。「女になったって・・・」どういうことだ、とは訊けなかった。ブブの小さな背中が震えている。(ブブ・・・)ブブの背中ってこんなに小さかったのか?こんなに頼りなかったのか?「籠を片付けてきな。ああ、アタシのも一緒にな」「・・・ブブ」どうしてもっと心の底から仲良く出来なかったのか、どうしてもっとブブのことを分かろうとしなかったのか。「ほら、さっさと行きな」サビネコに肩を持たれて方向を百八十度変えられた、ポンと尻を叩かれた。でも動くことが出来ない。「何やってんだよ!男だろが!しっかり...孤火の森第6回

  • 孤火の森 第5回

    孤火の森(こびのもり)第5回今までにたった一つ制圧された森がある。その森の一番近くに住んでいるのがお頭たちの群れである。自然と長たちの目が若頭に向く。森が制圧された時、若頭はまだ十五の歳だった。丁度その頃にお頭と知り合いそのままお頭に付いたのだが、その後お頭から目をかけられた。当時の若頭は単なる大人と子供の狭間にいる不安定な時期の存在ではなく、冷静に物事を見ることが出来ていたのをお頭が見抜いたのだった。若頭が長たちに頷くと、自分たちの過去の生活を説明する。『州兵が制圧を始めようとした時には、まだ俺はあの辺りのことをよく知らず細かい所の記憶が曖昧なんですけど、制圧には何年も要したようです』若頭の覚えている限りでは、制圧前、森に行くには遠回りになるというのに、毎回若頭たちの塒(ねぐら)である岩屋の近くを通り、...孤火の森第5回

  • 孤火の森 第4回

    孤火の森(こびのもり)第4回従者たちがいつ怒りを買うかと怯えながら、撒き散らされた葡萄酒を拭き金杯を片付けている。新しい葡萄酒を用意するのは側仕えに任せたいが、今この部屋に側仕えが居ない。置き方が悪いとでも言われ怒りを買うだろうかと思いながら、震える手で新しい金杯に葡萄酒を入れ恐る恐るセイナカルの前に置く。(森の民たちに新しく女王を擁立しようとする動きは見られない)どこの森にも簡単に中に入ることなど出来ない。それどころか簡単に近づく事さえ出来ない。遠目からではあるが、各森に配置している州兵からは他の森の民が入ったとも、森から出たとも報告はない。森の民がどうやって連絡を取り合っているのかは分からないが、女王の居たあの森を制圧したあの日、森の中をどれだけ探しても御子を探すことは出来なかった。他の森に逃げたのか...孤火の森第4回

  • 孤火の森 第3回

    孤火の森(こびのもり)第3回「ブブが堪(こら)えたんだ、短気を起こすんじゃない、応えてやりな」「・・・分かってるよ」不貞腐れた顔でポポが答える。この時のことはここで終わりにすればいいのだろうが、市に座ってまだ間がない。まだまだここに座って薬草を売らなければいけない。そうなると再び州兵に問われるかもしれない。「兵が森って言ってたけど?何か心当たりがあるかい?」「・・・無くは、ない」でもそれは一年も前の事。最初に顔を見られたかもしれない。それにブブが何度か振り返ってはいた。その時に顔を見られたのだろうか。でも、それでも一年以上前だ。未だにそのことを根に持っているというのだろうか。それにしても・・・ヤマネコがこうして訊いてくるということは、お頭も若頭もあの時のことを仲間たちに言っていなかったのか。ポポが一年前の...孤火の森第3回

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