孤火の森 第2回
孤火の森(こびのもり)第2回精緻な金細工が置かれた豪奢な部屋、高い天井には弧を描いた何枚もの絹の布が、まだ肌寒い季節だというのに全開にされた窓から入る風に揺れている。バルコニーに置かれたテーブルに金杯がコトリと置かれた。「それで?逃がしたと言うのか?」絹で出来た衣装に身を包み、左の瞼の目尻辺りでカーブを作って前髪を下ろし、そのまま高く括った金色の長い髪の毛には髪飾りが揺れ、露(あらわ)にされた耳には大きな金細工の耳環(じかん)が揺れている。「はっ、ですが、森に入る手前で見つけまして」すでに背中にも額にも大量の汗が流れている。「森に入らなければいいとでも言うのか?」「そ、それは・・・」「よい、下がれ」「はっ・・・」命が繋がった。子供二人如きにこの命を取られては、何のために今までやってきたか分かったものではな...孤火の森第2回
2024/06/28 20:53