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大福 りす
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2011/01/21

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  • 孤火の森 第2回

    孤火の森(こびのもり)第2回精緻な金細工が置かれた豪奢な部屋、高い天井には弧を描いた何枚もの絹の布が、まだ肌寒い季節だというのに全開にされた窓から入る風に揺れている。バルコニーに置かれたテーブルに金杯がコトリと置かれた。「それで?逃がしたと言うのか?」絹で出来た衣装に身を包み、左の瞼の目尻辺りでカーブを作って前髪を下ろし、そのまま高く括った金色の長い髪の毛には髪飾りが揺れ、露(あらわ)にされた耳には大きな金細工の耳環(じかん)が揺れている。「はっ、ですが、森に入る手前で見つけまして」すでに背中にも額にも大量の汗が流れている。「森に入らなければいいとでも言うのか?」「そ、それは・・・」「よい、下がれ」「はっ・・・」命が繋がった。子供二人如きにこの命を取られては、何のために今までやってきたか分かったものではな...孤火の森第2回

  • 孤火の森 第1回

    孤火の森第1回下生えの草がそよ吹く風に身体を預けゆらゆらと揺れている。深く息を吸えば少し冷たいが、その分ゆらゆらと揺れている爽やかな緑に満ちた空気が口腔一杯に広がることだろう。そこは山の中の広い草原、どこまで走ってもずっと緑が続いていくようにさえ感じる穏やかで豊かな草原である。草原から四方を見渡すと遠くに連山が見える。それだけ山に囲まれた草原。その中で昔は草原の奥に大きな森が泰然としていた。だが今その森は森とは言えない姿をしている。白い月が顔を出してきた。いくらかすると月夜の刻となる。広い草原の中、一ケ所を除くと全く同じ姿をした二つの小さな影が下生えの草を蹴って走っている。右前の衿合わせの裾は尻をすっぽりと隠し帯の代わりに縄を巻き、その下には膝下迄の筒の下衣を穿いている。足元はわらじが簡単に脱げないように...孤火の森第1回

  • ハラカルラ を書き終えて

    ハラカルラをお読みいただき、本当に有難う御座いました。八、九年ほど前に、いつかこの世と重なっている水の世界を書きたいと思い始めましたが、そう思っただけで想像は広がりませんでした。六年ほど前、夜車を運転している時、ふと、今度書く主人公の名前は”水無瀬”という名前にしよう、と頭に浮かびました。そしていつかは忘れましたが”クナイ”の登場する場面をいつかは書きたいとも思っていました。以上三つが重なり、ハラカルラが出来ました。いつも何かを書く時には、あるシーンが浮かび、そこから考えがスタートをするのですが、ハラカルラを書くにあたり、一番最初に浮かんだのは、目の端に何かが見えるというシーンでした。そこからストーリーがスタートしました。次回から書くお話しほど、あまり生みの苦しみはありませんでしたが、ハラカルラを荒らすの...ハラカルラを書き終えて

  • ハラカルラ 第72 最終回

    『ハラカルラ』目次『ハラカルラ』第1回から第70回までの目次は以下の『ハラカルラ』リンクページからお願いいたします。『ハラカルラ』リンクページハラカルラ第72最終回「では今日からよろしくです、黒門の皆さん。で、俺は黒門の守り人になったんだから、守り人として黒門の皆さんに言わせてもらいます」黒門の誰もが何のことだという顔をしている。「青門と仲良くしてください。コレが二つ目の話しです」高崎が驚いた顔をしている。「水無ちゃ・・・水無瀬もそうだし、青門の守り人もそうですけど、守り人は門同士の争いを良しとはしていません。いま白門に守り人は居ませんからこれは守り人の総意です」(戸田君・・・)「戸田は昔の話を聞かなかったのか」思わずプラスティック面が下を向く。「聞いてますよ、守り人になれば一番に聞かされるんだから。でも...ハラカルラ第72最終回

  • ハラカルラ 第71回

    『ハラカルラ』目次『ハラカルラ』第1回から第70回までの目次は以下の『ハラカルラ』リンクページからお願いいたします。『ハラカルラ』リンクページハラカルラ第71回守り人としてこれで終わりと言えばいいのだろうが、このことを切っ掛けに放ってはおけないことが発生してしまっていた。「確か一番最初にこちら側に来てくださった方ですよね」水無瀬は玻璃の声に気付いていないのだろうか、それとも気付いていて敢えて知らないふりをしているのだろうか。白々しく言う水無瀬に玻璃が応える。「ああ、一ノ瀬玻璃だ」「では一ノ瀬さん・・・ああっと、一緒に来た方の中にも一ノ瀬さんがいらっしゃいますので、下のお名前、玻璃さんとお呼びしてもいいですか?」この言い方・・・やはり玻璃が名乗る前から気が付いていたな、かなりの狸か、などと思う玻璃であるが、...ハラカルラ第71回

  • ハラカルラ 第70回

    『ハラカルラ』目次『ハラカルラ』第1回から第60回までの目次は以下の『ハラカルラ』リンクページからお願いいたします。『ハラカルラ』リンクページハラカルラ第70回「僕がハラカルラの水を動かしました、その水の力で押し戻されてきたんです。ここは白門の村でもありますがハラカルラでもあります。それくらいご存知でしょう」余裕綽々を見せて言うが心の中では、良かったー、良かったーと叫んでいる。白烏に教えてもらった二つ目の理由は、守り人の存在を、力を見せる、そして最後の理由は村とハラカルラの繋がりを切に感じさせるため。「あなたたちは高校生ではありません、ここに居てもらいます」長をはじめ誰もが息を呑んでいる。水無瀬の言う通り村とハラカルラは重なっているのだから、ここは村でもありハラカルラでもある。それは知っているが、ハラカル...ハラカルラ第70回

  • ハラカルラ 第69回

    『ハラカルラ』目次『ハラカルラ』第1回から第60回までの目次は以下の『ハラカルラ』リンクページからお願いいたします。『ハラカルラ』リンクページハラカルラ第69回水無瀬が先頭を切って村に入った。潤璃が考えるにこれから作業に入る時間になるはずだということだったが、まさにその通りで村の中を何人もが農具を担いで歩いている。その中の何人かが、集団の足音に気づいて振り返る。「み、水無瀬!」水無瀬の知らない顔である。一ノ瀬誠や後藤智一の時もそうだったが、水無瀬は顔を見たことがないのに相手は水無瀬の顔を知っている。どこで見ていたのだろうかと思う。数人の男が水無瀬の名を呼んだことで気付いていなかった者達も振り返りだした。そして口々に水無瀬の名を言い、その内に後ろに居る者達にも気付いてきたようである。「潤、璃・・・か?どうし...ハラカルラ第69回

  • ハラカルラ 第68回

    『ハラカルラ』目次『ハラカルラ』第1回から第60回までの目次は以下の『ハラカルラ』リンクページからお願いいたします。『ハラカルラ』リンクページハラカルラ第68回「彩音を?」昨日訪ねるつもりだったが、どこか胸糞悪く今日の朝、木更彩音の家を訪ねた。その時に聞いた話では噂の色恋ごとというのは全くの出鱈目で、どこからそんな噂が出たのかと母親が憤慨していた。木更彩音が村を出た理由は大学を出て大企業で働きたかったということで、今でも結婚もせず大企業で働いているということであった。『確かに農作業やないけど、それでも働くことが好きな子なんに色恋やなんて、誰がそんなことを言ったんか!』この時は憤慨が治まることなく、すごすごと木更の家を出たが、またやって来なければならない羽目になってしまった。その日の夕刻、長の家を訪ね木更彩...ハラカルラ第68回

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